説明

燃料電池システム

【課題】 電圧制御を良好に行いつつ、良好なシステム効率を達成する。
【解決手段】 本発明の燃料電池システムは、モータと並列に接続された燃料電池及び蓄電装置と、モータと燃料電池との間の第一電圧変換器と、モータと蓄電装置との間の第二電圧変換器と、第一及び第二電圧変換器とモータとの間の負荷回路と、制御部と、を備えている。制御部は、燃料電池の端子電圧をVFC、蓄電装置の端子電圧をVBAT、モータにおける必要なトルクを確保しつつシステム損失が最小になるように設定された負荷回路の入力端子電圧である負荷回路入力下限電圧をVM_min、とすると、VFC>VM_minかつVFC>VBAT+αの条件が成立する場合には第一電圧変換器による昇圧動作を停止させる一方、かかる条件が成立しない場合には第一電圧変換器による昇圧動作の停止を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池から出力された電力をモータに供給する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとして、燃料電池及び蓄電装置(二次電池等)をモータに並列に接続し、モータと燃料電池との間に昇圧型のDC−DCコンバータ(以下、「FC昇圧コンバータ」と称する。)を設けるとともに、モータと蓄電装置との間に昇圧型のDC−DCコンバータ(以下、「バッテリ昇圧コンバータ」と称する。)を設けたものが知られている(例えば、特開2007−318938号公報等参照。)。さらに、かかるシステムにおいて、状況に応じて、FC昇圧コンバータやバッテリ昇圧コンバータにおける昇圧動作を停止させる構成のものが知られている(例えば、特開2007−209161号公報、特開2010−45889号公報、特開2010−124689号公報、等参照。)。
【発明の概要】
【0003】
上記のような従来のシステムにおいて、不用意に上述の各コンバータにおける昇圧動作を停止させると、かえってシステム内における電圧制御に破綻を来し、場合によっては過電流や過電圧の発生を招来するおそれがあった。本発明は、かかる課題を解決するためになされたものである。
【0004】
本発明の燃料電池システムは、モータと、燃料電池と、蓄電装置と、第一電圧変換器と、第二電圧変換器と、負荷回路と、制御部と、を備えていて、前記燃料電池及び/又は前記蓄電装置から出力された電力を、前記負荷回路を介して前記モータに供給するようになっている(例えば、本出願人の先願である特開2009−165244号公報参照。)。なお、前記燃料電池は、「燃料電池スタック」と称されることもある。
【0005】
前記燃料電池及び前記蓄電装置は、前記モータと並列に接続されている。前記第一電圧変換器は、前記モータと前記燃料電池との間に設けられた電圧変換器(昇圧型DC−DCコンバータ)であって、入力された前記燃料電池の端子電圧を昇圧して出力するようになっている。同様に、前記第二電圧変換器は、前記モータと前記蓄電装置との間に設けられた電圧変換器(昇圧型DC−DCコンバータ)であって、入力された前記蓄電装置の端子電圧を昇圧して出力するようになっている。前記負荷回路は、前記第一電圧変換器及び前記第二電圧変換器と前記モータとの間に設けられている。前記制御部は、当該燃料電池システムにおける各部の動作を制御するように設けられている。
【0006】
本発明の特徴は、前記制御部が、以下の通り動作するようになっていることにある:
前記燃料電池の前記端子電圧をVFC
前記蓄電装置の前記端子電圧をVBAT
前記モータにおける必要なトルクを確保しつつ当該燃料電池システムにおける損失が最小になるように設定された、前記負荷回路の入力端子電圧である、負荷回路入力下限電圧をVM_min
条件(1)…VFC>VM_min
条件(2)…VFC>VBAT+α(αは符号が正の定数)
とすると、
前記条件(1)が成立しかつ前記条件(2)が成立する場合には、前記第一電圧変換器による昇圧動作を停止させて前記燃料電池の出力を直接的に前記負荷回路に伝達する一方、
前記条件(1)又は前記条件(2)の少なくともいずれか一方が成立しない場合には、前記第一電圧変換器による昇圧動作の停止を禁止する。
【0007】
前記条件(1)が成立する場合、前記燃料電池の前記端子電圧の方が、前記負荷回路入力下限電圧(前記モータにおける必要なトルクを確保しつつ当該燃料電池システムにおける損失が最小になるように設定された前記負荷回路の前記入力端子電圧)よりも高い。よって、この場合、前記燃料電池の前記端子電圧を昇圧することなく直接的に前記燃料電池の出力を前記負荷回路の入力端子に伝達することが、可能である。
【0008】
ここで、前記条件(2)における「VBAT+α」は、具体的には、前記蓄電装置の前記端子電圧がVBATであるときにおける、昇圧型の前記第二電圧変換器による電圧制御が可能な下限電圧(本出願人の先願に係る特開2010−273496号公報における「昇圧可能な最低電圧」)に相当するものである。すなわち、前記条件(2)が成立する場合、前記第二電圧変換器の入力側の電圧に対して、当該第二電圧変換器の出力側の電圧が、安定的に昇圧制御可能な関係になっている。このため、前記条件(2)が成立する場合、前記第一電圧変換器による昇圧動作が停止されても(すなわち前記負荷回路の前記入力端子電圧が昇圧型の前記第一電圧変換器による電圧制御を受けていない状態であっても)、前記負荷回路の前記入力端子電圧は、昇圧型の前記第二電圧変換器による安定的な電圧制御を受けることが可能である。
【0009】
そこで、本発明の燃料電池システムにおいては、前記条件(1)が成立しかつ前記条件(2)が成立する場合には、前記第一電圧変換器による昇圧動作が停止される。すると、前記負荷回路の前記入力端子は、前記燃料電池と電気的に直結される。また、前記燃料電池の出力は、前記第一電圧変換器におけるスイッチング動作を経ることなく、直接的に前記負荷回路の前記入力端子に伝達可能となる。
【0010】
よって、上述の構成を備えた本発明の燃料電池システムによれば、前記第一電圧変換器におけるスイッチング損失が低減され、以てシステム効率が向上する。また、前記負荷回路の前記入力端子電圧、及び当該入力端子と電気的に直結された状態の前記燃料電池における前記端子電圧が、前記第二電圧変換器によって、安定的に制御され得る。
【0011】
一方、前記条件(1)が成立しない場合、前記燃料電池の前記端子電圧を昇圧する必要がある。また、前記条件(1)が成立していても前記条件(2)が成立しない場合、前記第一電圧変換器を停止させると、前記第二電圧変換器の入力側の電圧に対して、当該第二電圧変換器の出力側の電圧が、安定的に昇圧制御可能な関係にならない。このため、前記条件(2)が成立しない場合に前記第一電圧変換器を停止させてしまうと、前記負荷回路の前記入力端子電圧、及び当該入力端子と電気的に直結された状態の前記燃料電池における前記端子電圧は、安定的な電圧制御を受けることができない。
【0012】
そこで、本発明の燃料電池システムにおいては、前記条件(1)又は前記条件(2)の少なくともいずれか一方が成立しない場合には、前記第一電圧変換器による昇圧動作の停止が禁止される。このとき、前記負荷回路の前記入力端子電圧は、前記第一電圧変換器(及び前記第二電圧変換器)の動作による電圧制御を受ける。
【0013】
このように、かかる構成を備えた本発明の燃料電池システムによれば、前記負荷回路の前記入力端子電圧や、前記燃料電池の前記端子電圧が、良好に制御されるとともに、良好なシステム効率が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の燃料電池システムの一実施形態及びこれを搭載した車両の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示されているFC昇圧コンバータの電気回路構成を示す図である。
【図3】図3は、図1に示されている制御部内のROMに格納されている、負荷回路入力下限電圧VM_minの取得のためのマップの概略を示す図である。
【図4】図4は、図3に示されている負荷回路入力下限電圧VM_minの取得のためのマップの導出過程を説明するための参考図である。
【図5】図5は、図3に示されている負荷回路入力下限電圧VM_minの取得のためのマップの導出過程を説明するための参考図である。
【図6】図6は、図1に示されている制御部内のCPUによって実行される、FC昇圧コンバータの動作制御処理の一具体例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。本実施形態に対して施され得る各種の変更(変形例:modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
【0016】
[システムの構成]
図1は、本発明の燃料電池システムの一実施形態及びこれを搭載した車両WVの概略構成を示す図である。この車両WVには、本実施形態に係る燃料電池システム10が搭載されている。本実施形態の燃料電池システム10は、燃料電池11と、FC昇圧コンバータ12と、バッテリ13と、バッテリ昇圧コンバータ14と、インバータ15と、モータ16と、水素タンク17と、コンプレッサ18と、制御部20と、を備えている。この燃料電池システム10は、燃料電池11及び/又はバッテリ13から出力された電力を、インバータ15を介してモータ16に供給することで、駆動輪Wを駆動するようになっている
【0017】
燃料電池11は、FC昇圧コンバータ12を介して、インバータ15と電気的に接続されている。また、バッテリ13は、バッテリ昇圧コンバータ14を介して、インバータ15と電気的に接続されている。本発明の負荷回路に相当するインバータ15は、FC昇圧コンバータ12及びバッテリ昇圧コンバータ14と、モータ16と、の間に設けられている。すなわち、燃料電池11及びバッテリ13は、インバータ15及びモータ16と並列に接続されている。
【0018】
本発明の第一電圧変換器に相当するFC昇圧コンバータ12は、昇圧型DC−DCコンバータであって、入力された燃料電池11の端子電圧を昇圧してインバータ15側に出力可能に構成されている。図2は、図1に示されているFC昇圧コンバータ12の電気回路構成を示す図である。なお、図2においては、図示の簡略化のため、バッテリ13及びバッテリ昇圧コンバータ14については図示が省略されているものとする。
【0019】
図2に示されているように、このFC昇圧コンバータ12は、昇圧動作時にはスイッチング素子S1におけるスイッチングデューティ比を調整することで昇圧比を変更可能であるとともに、昇圧動作の停止時にはコイルL1及びダイオードD5を介して燃料電池11の端子電圧を直接的にインバータ15に伝達可能に構成されている(なお、図2に示されている電気回路構成を見れば、当業者であればFC昇圧コンバータ12が具体的にどのように動作するものであるかは容易に理解可能であるが、必要であれば、特開2009−165244号公報等を参照。)。
【0020】
再び図1を参照すると、本発明の第二電圧変換器に相当するバッテリ昇圧コンバータ14は、昇圧型DC−DCコンバータであって、入力されたバッテリ13の端子電圧を昇圧してインバータ15側に出力可能に構成されている。
【0021】
制御部(ECU)20は、燃料電池システム10における各部の動作を制御するための、いわゆるマイクロコンピュータであって、CPUと、ROMと、RAMと、バックアップRAMと、インターフェースと、これらを接続する双方向バスと、を備えている。ROMには、CPUが実行するルーチン(プログラム)、及びこのルーチンの実行時に参照されるテーブル(ルックアップテーブル、マップ)、等が、予め格納されている。
【0022】
制御部20は、上述のインターフェースを介して、燃料電池11やバッテリ13に設けられている図示しないセンサ(電流センサや電圧センサ等)や、モータ16に設けられている図示しない回転数センサや、アクセルペダルセンサ21等の、各種センサ類と電気的に接続されている。また、制御部20は、FC昇圧コンバータ12、バッテリ昇圧コンバータ14、インバータ15、及びモータ16と、上述のインターフェースを介して電気的に接続されていて、これらの動作を制御するようになっている。さらに、制御部20は、燃料ガス供給系(水素タンク17に設けられた図示しない開閉弁等)や酸化ガス供給系(コンプレッサ18等)と電気的に接続されていて、これらの動作を制御するようになっている。
【0023】
[システムの動作の概要]
制御部20は、モータ回転数やアクセルペダルセンサ21によって検知されたアクセルペダル操作量等に基づいて、燃料電池システム10全体の要求電力(車両走行電力と補機電力との合計値)を算出するとともに、燃料電池11とバッテリ13とのそれぞれの出力電力の配分を決定する。また、制御部20は、燃料電池11の発電量が目標電力に一致するように燃料ガス供給系や酸化ガス供給系を制御するとともに、FC昇圧コンバータ12やバッテリ昇圧コンバータ14を制御して燃料電池11の運転ポイント(端子電圧及び出力電流)を制御する。さらに、制御部20は、アクセルペダル操作量等に応じた目標トルクが得られるように、インバータ15を介して、モータ16の出力トルク及び回転数を制御する。
【0024】
本実施形態の燃料電池システム10においては、燃料電池11とインバータ15との間にFC昇圧コンバータ12が設けられているため、燃料電池11の端子電圧を昇圧してインバータ15(モータ16)に供給することが可能である。このため、燃料電池11における、セル積層枚数の低減等による小型化が図られる。これにより、車両WVの重量が低減され、以て車両WVのエネルギー効率の向上が更に促進される。
【0025】
ところで、かかる燃料電池システム10においては、発電可能な燃料電池11が、モータ16のメイン電力源となっている。したがって、燃料電池11とインバータ15との間に介在するFC昇圧コンバータ12における電力損失を低減することが、燃料電池システム10全体の効率向上に大きく寄与すると考えられる。そこで、本実施形態の燃料電池システム10においては、FC昇圧コンバータ12の間欠運転制御を行うことで、FC昇圧コンバータ12におけるスイッチング損失が可及的に抑制される。これにより、システム効率が向上する。
【0026】
ここで、FC昇圧コンバータ12の間欠運転制御における、FC昇圧コンバータ12の昇圧動作を停止させる条件は、以下の条件(1)及び(2)の双方が成立することである。一方、条件(1)又は条件(2)の少なくともいずれか一方が成立しない場合には、FC昇圧コンバータ12による昇圧動作の停止が禁止される(すなわち、FC昇圧コンバータ12における昇圧動作が維持される。)。
条件(1)…VFC>VM_min
条件(2)…VFC>VBAT+α
【0027】
上記条件中、VFCは燃料電池11の端子電圧、VBATはバッテリ13の端子電圧、VM_minは負荷回路入力下限電圧、αは符号が正の定数である。負荷回路入力下限電圧VM_minは、モータ16における必要なトルクを確保しつつ、当該燃料電池システム10における損失が最小になるように設定された、インバータ15の入力端子電圧である。
【0028】
図3は、図1に示されている制御部20内のROMに格納されている、負荷回路入力下限電圧VM_minの取得のためのマップの概略を示す図である。なお、図3中、横軸はモータ回転数N、縦軸はモータトルクTをそれぞれ示し、最も右上側の点線はモータ16における発生可能な最大トルク線を示すものである。図3に示されているように、負荷回路入力下限電圧VM_minは、モータ回転数NとモータトルクTとに基づいて、図3に示されているようなマップから取得される。
【0029】
図4及び図5は、図3に示されている負荷回路入力下限電圧VM_minの取得のためのマップの導出過程を説明するための参考図である。図3に示されているようなマップは、インバータ15の入力端子電圧であるインバータ電圧VMとモータ回転数Nとに応じたモータ16の発生可能な上限トルク(図4参照:図4中の実線は、図3に示されている最大トルク線と同一である。)と、燃料電池11の各運転ポイントにおける燃料電池システム10の損失特性と、に基づいて、計算上求められる。
【0030】
ここで、FC昇圧コンバータ12やバッテリ昇圧コンバータ14やインバータ15におけるスイッチング損失は、印加電圧が低いほど小さい。また、モータ16における鉄損(ヒステリシス損及び渦電流損)もまた、印加電圧が低いほど小さい。すなわち、スイッチング損失及び鉄損の観点からは、インバータ電圧VMが低いほど損失が小さくなる。
【0031】
一方、図5は、各インバータ電圧VMの値における最も効率の高い運転ポイントを等高線で示す図である。この図5から明らかなように、インバータ電圧VMを低くすることで、逆に、電流が大きくなることによる損失(例えば銅損)の増大が発生する場合もある。さらに、FC昇圧コンバータ12に設けられたリレー等の各回路要素によって定められる、連続定格電流の制約も存在する。
【0032】
したがって、概念的には、以下のようにして負荷回路入力下限電圧VM_minが求められる。まず、現在のモータ回転数N及び要求トルクTと、図4に示されているマップと、上述の連続定格電流とから、モータ16の駆動のために必要最低限のインバータ電圧VM1(要求トルクTが得られ且つ電流が連続定格値を超えない程度で最も低くすることができるインバータ電圧VM)が決定される。そして、かかるインバータ電圧VM1と、各運転ポイントにおける損失特性(図5等)と、に基づいて、負荷回路入力下限電圧VM_minが算出される。具体的には、例えば、上述のようにして決定されたインバータ電圧VM1よりも電圧を微小量ΔVM上げた場合にシステム効率が向上する場合には、当該ΔVMを加えた新たな値を新たなインバータ電圧VM1とし、これを繰り返すことによって、最終的に負荷回路入力下限電圧VM_minが求められる。すなわち、図3のマップは、図4のマップを図5のマップ等によって修正したものである、ということができる。
【0033】
[動作の具体例]
図6は、図1に示されている制御部20内のCPU(以下、単に「CPU」と称する。)によって実行される、FC昇圧コンバータ12の動作制御処理の一具体例を示すフローチャートである。なお、図6のフローチャートにおいて、「ステップ」は「S」と略記されている。
【0034】
CPUは、図6に示されているFC昇圧コンバータ制御ルーチン600を、所定時間毎に実行する。かかるルーチン600の実行が開始されると、まず、CPUは、ステップ610において、現在のモータ回転数Nやアクセルペダル操作量等に基づいて、モータトルクTを算出する。次に、CPUは、ステップ620において、上述のように、モータ回転数NとモータトルクTとに基づいて、負荷回路入力下限電圧VM_minを取得する。続いて、CPUは、ステップ630において燃料電池端子電圧VFCを取得するとともに、ステップ640においてバッテリ端子電圧VBATを取得する。
【0035】
その後、CPUは、ステップ650において、上述の条件(1)が成立するか否かを判定する。この条件(1)が成立する場合(ステップ650=Yes)、処理がステップ660に進行して、CPUは上述の条件(2)が成立するか否かを判定する。この条件(2)が成立する場合(ステップ660=Yes)、処理がステップ670に進行して、CPUは、FC昇圧コンバータ12におけるスイッチング動作を停止させ、本ルーチンを一旦終了する。一方、条件(1)又は条件(2)の少なくともいずれか一方が成立しない場合、処理がステップ680に進行して、CPUは、FC昇圧コンバータ12におけるスイッチング動作の停止を禁止し、本ルーチンを一旦終了する。
【0036】
[作用・効果]
条件(1)が成立する場合、すなわち、燃料電池端子電圧VFCの方が負荷回路入力下限電圧VM_minよりも高い場合、FC昇圧コンバータ12による昇圧動作を停止して(すなわち燃料電池11の端子電圧を昇圧することなく)、燃料電池11の出力を直接的にインバータ15の入力端子に伝達することが可能である。
【0037】
また、条件(2)が成立する場合、バッテリ昇圧コンバータ14の入力側の電圧に対して、当該バッテリ昇圧コンバータ14の出力側の電圧が、安定的に昇圧制御可能な関係になっている。このため、条件(2)が成立する場合、FC昇圧コンバータ12による昇圧動作が停止されても(すなわちインバータ15の入力端子電圧が昇圧型のFC昇圧コンバータ12による電圧制御を受けていない状態であっても)、インバータ15の入力端子電圧は、昇圧型のバッテリ昇圧コンバータ14による安定的な電圧制御を受けることが可能である。
【0038】
そこで、本実施形態の燃料電池システム10においては、条件(1)が成立しかつ条件(2)が成立する場合には、FC昇圧コンバータ12による昇圧動作が停止され、燃料電池11の出力が直接的にインバータ15に伝達される。これにより、FC昇圧コンバータ12にて本来生じるはずのスイッチング損失が低減され、以てシステム効率が向上する。また、インバータ15の入力端子電圧、及び当該入力端子と電気的に直結された状態の燃料電池11における端子電圧が、バッテリ昇圧コンバータ14によって、安定的に制御され得る。
【0039】
一方、条件(1)が成立しない場合、燃料電池11の端子電圧を昇圧する必要がある。また、条件(1)が成立していても条件(2)が成立しない場合、バッテリ昇圧コンバータ14の入力側の電圧に対して、当該バッテリ昇圧コンバータ14の出力側の電圧が、安定的に昇圧制御可能な関係にならない。このため、条件(2)が成立しない場合にFCコンバータ12を停止させてしまうと、インバータ15の入力端子電圧、及び当該入力端子と電気的に直結された状態の燃料電池11における端子電圧は、安定的な電圧制御を受けることができない。
【0040】
そこで、本実施形態の燃料電池システム10においては、条件(1)又は条件(2)の少なくともいずれか一方が成立しない場合には、FC昇圧コンバータ12による昇圧動作の停止が禁止される。よって、この場合、インバータ15の入力端子電圧は、FC昇圧コンバータ12(及びバッテリ昇圧コンバータ14)の動作による電圧制御を受ける。
【0041】
このように、本実施形態の燃料電池システム10によれば、インバータ15の入力端子電圧や、燃料電池11の端子電圧が、良好に制御されるとともに、良好なシステム効率が達成される。また、燃料電池11やバッテリ13に接続された電圧変換器として、昇圧型のDC−DCコンバータを用いることで、装置内部のスイッチング素子の数を可及的に少なくすることができ、装置構成の簡略化及びさらなるシステム効率の向上が図られる。
【0042】
[変形例の例示列挙]
なお、上述の実施形態は、上述した通り、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の代表的な実施形態を単に例示したものにすぎない。よって、本発明はもとより上述の実施形態に何ら限定されるものではない。したがって、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、上述の実施形態に対して種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0043】
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたものに限定されるものではない。また、複数の変形例が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0044】
本発明(特に、本発明の課題を解決するための手段を構成する各構成要素における、作用的・機能的に表現されているもの)は、上述の実施形態や、下記変形例の記載に基づいて限定解釈されてはならない。このような限定解釈は、(先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、許されない。
【0045】
本発明は、上述の実施形態にて開示された具体的な装置構成に限定されない。例えば、本発明は、燃料電池システムを搭載した車両に限定されない。また、本発明の「蓄電装置」は、バッテリに何ら限定されない。具体的には、例えば、「蓄電装置」として、キャパシタ等が利用可能である。さらに、複数の燃料電池スタックや複数の蓄電装置が設けられた構成に対しても、本発明は好適に適用可能である。
【0046】
本発明は、上記の実施形態にて開示された具体的な処理に限定されない。例えば、マップで取得されたパラメータは、計算によって求めることも可能である。
【0047】
燃料電池11の運転ポイント(特に端子電圧)を良好に制御するためには、燃料電池11にて出力が生じるときにはバッテリ昇圧コンバータ14が常時動作していることが好ましい。これにより、燃料電池11の端子電圧が開放端子電圧近傍まで上昇することによるシンタリングの発生等の不具合の発生が、可及的に回避される。かかる観点からは、燃料電池11にて出力が生じるときは、バッテリ昇圧コンバータ14による電圧制御が可能な下限電圧よりもインバータ15の入力端子電圧の方が低くならないように、燃料電池システム10が制御されることが好ましい。
【0048】
その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の範囲内に含まれることは当然である。また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。さらに、本明細書にて引用した各公報の内容(明細書及び図面を含む)は、本明細書の一部を構成するものとして援用され得る。
【符号の説明】
【0049】
10…燃料電池システム WV…車両 W …駆動輪
11…燃料電池 12…FC昇圧コンバータ 13…バッテリ
14…バッテリ昇圧コンバータ 15…インバータ 16…モータ
17…水素タンク 18…コンプレッサ
20…制御部 21…アクセルペダルセンサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2007−209161号公報
【特許文献2】特開2007−318938号公報
【特許文献3】特開2010−45889号公報
【特許文献4】特開2010−124689号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータと並列に接続された燃料電池及び蓄電装置と、
前記モータと前記燃料電池との間に設けられていて、入力された前記燃料電池の端子電圧を昇圧して出力する、第一電圧変換器と、
前記モータと前記蓄電装置との間に設けられていて、入力された前記蓄電装置の端子電圧を昇圧して出力する、第二電圧変換器と、
前記第一電圧変換器及び前記第二電圧変換器と前記モータとの間に設けられた、負荷回路と、
を含み、前記燃料電池及び/又は前記蓄電装置から出力された電力を、前記負荷回路を介して前記モータに供給する、燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の前記端子電圧をVFC、前記蓄電装置の前記端子電圧をVBAT、前記モータにおける必要なトルクを確保しつつ当該燃料電池システムにおける損失が最小になるように設定された前記負荷回路の入力端子電圧である負荷回路入力下限電圧をVM_min、とすると、VFC>VM_minかつVFC>VBAT+α(αは符号が正の定数:VBAT+αは、前記蓄電装置の前記端子電圧がVBATであるときにおける、昇圧型の前記第二電圧変換器による電圧制御が可能な下限電圧に相当する。)の条件が成立する場合には前記第一電圧変換器による昇圧動作を停止させて前記燃料電池の出力を直接的に前記負荷回路に伝達する一方、前記条件が成立しない場合には前記第一電圧変換器による昇圧動作の停止を禁止する、制御部を備えたことを特徴とする、燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の、燃料電池システムであって、
前記条件におけるVBAT+αは、昇圧型の前記第二電圧変換器による電圧制御が可能な下限電圧であることを特徴とする、燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−13171(P2013−13171A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142546(P2011−142546)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】