説明

燃料電池システム

【課題】ガス漏れ判定を燃料電池の間欠運転時に実行した場合であっても燃料電池の劣化を抑制させる。
【解決手段】燃料電池2の運転モードが通常運転モードから間欠運転モードに移行すると、制御部5は、開回路電圧回避処理を開始し、電流センサAによって検出された燃料電池2の出力電流値が回避処理終了閾値以下になった後に、ガス漏れ判定処理を実行する。この判定処理でガス漏れが発生していると判定した場合に、酸化ガスの供給を停止させたまま水素ガスの供給を再開させ、DC/DCコンバータ91への指令電圧に開回路電圧を設定し、再度、ガス漏れ判定処理を実行する。この判定処理でガス漏れが発生していると判定した場合に、ガス漏れ警報を出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、反応ガスである燃料ガスと酸化ガスの電気化学反応によって発電する燃料電池をエネルギ源として用いる燃料電池システムの開発が行われている。このような燃料電池システムでは、安全性の確保の観点等から、燃料ガスがガス配管や燃料電池から漏洩していないかどうかを監視する必要がある。下記特許文献1に記載の燃料電池システムでは、燃料電池の発電動作時のみならず間欠運転時(発電停止時)にも燃料ガス漏れ判定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−185886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料ガス漏れ判定を燃料電池の間欠運転時に実行する場合に、燃料電池の出力電流を強制的に0Aにすることで燃料ガスの消費量を考慮することなく容易に実行することができるようになる。しかしながら、間欠運転に移行した直後に燃料電池の出力電流を強制的に0Aにしてしまうと、燃料電池の出力電圧が開回路電圧(OCV)に達した状態が継続してしまうおそれがあり、その場合には燃料電池が劣化してしまう。
【0005】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、燃料ガス漏れ判定を燃料電池の間欠運転時に実行した場合であっても燃料電池の劣化を抑制させることができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明に係る燃料電池システムは、燃料ガスおよび酸化ガスの供給を受けて当該燃料ガスおよび酸化ガスの電気化学反応により電力を発生する燃料電池を有する燃料電池システムであって、燃料電池の間欠運転時に、燃料電池システムにおける燃料ガス漏れの有無を判定する漏れ判定手段と、酸化ガスの供給を停止させて燃料電池の出力電流を徐々に減少させていく開回路電圧回避処理を実行する回避処理実行手段と、を備え、上記漏れ判定手段は、開回路電圧回避処理が終了した後に、燃料ガス漏れの有無を判定することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、燃料電池の間欠運転時において、酸化ガスの供給を停止させて燃料電池の出力電流を徐々に減少させていく開回路電圧回避処理が終了した後に、燃料ガス漏れの有無を判定することができるため、燃料電池の出力電圧が開回路電圧に到達してしまうことを防止することができる。したがって、燃料ガス漏れ判定を燃料電池の間欠運転時に実行した場合であっても燃料電池の劣化を抑制させることができる。
【0008】
上記燃料電池システムにおいて、上記回避処理実行手段は、燃料電池の出力電流が所定の回避処理終了閾値以下になった場合に、開回路電圧回避処理が終了したと判定することができる。
【0009】
このようにすることで、出力電流が流れたことに起因する燃料ガスの圧力低下量を考慮することなく燃料ガス漏れ判定を行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る燃料電池システムは、燃料ガスおよび酸化ガスの供給を受けて当該燃料ガスおよび酸化ガスの電気化学反応により電力を発生する燃料電池を有する燃料電池システムであって、燃料電池の間欠運転時に、燃料電池システムにおける燃料ガス漏れの有無を判定する漏れ判定手段と、酸化ガスの供給を停止させて燃料電池の出力電流を徐々に減少させていく開回路電圧回避処理を実行する回避処理実行手段と、を備え、上記漏れ判定手段は、開回路電圧回避処理が実行されているときに、燃料ガス漏れの有無を判定することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、燃料電池の間欠運転時において、酸化ガスの供給を停止させて燃料電池の出力電流を徐々に減少させていく開回路電圧回避処理が実行されているときに、燃料ガス漏れの有無を判定することができるため、燃料電池の出力電圧が開回路電圧に到達してしまうことを防止することができる。したがって、燃料ガス漏れ判定を燃料電池の間欠運転時に実行した場合であっても燃料電池の劣化を抑制させることができる。また、開回路電圧回避処理の実行と並行させて燃料ガス漏れ判定を行うことができる。
【0012】
上記燃料電池システムにおいて、上記ガス漏れ判定手段は、燃料ガス漏れの有無を判定するための所定の漏れ判定閾値を燃料電池の出力電力量に応じて補正したうえで、燃料ガス漏れの有無を判定することができる。
【0013】
このようにすることで、開回路電圧回避処理の実行と並行させて燃料ガス漏れ判定を行った場合でも、燃料ガス漏れ判定を精度よく行うことができる。
【0014】
上記燃料電池システムにおいて、上記ガス漏れ判定手段は、燃料ガスを供給する燃料ガス供給機構内における圧力変化が漏れ判定閾値よりも大きい場合に、燃料ガス漏れが有ると判定することができる。
【0015】
このようにすることで、漏れ判定閾値を変更することによって燃料ガス漏れ判定の精度を調整させることができる。
【0016】
上記燃料電池システムにおいて、上記ガス漏れ判定手段が、燃料ガス漏れが有ると判定した場合に、酸化ガスの供給の停止をさせ、燃料電池に燃料ガスを供給させ、燃料電池の出力電流が流れることのない状態に変更させたうえで、再度、燃料ガス漏れの有無を判定することができる。
【0017】
このようにすることで、例えば、電流センサの故障等により燃料ガス漏れが有ると誤判定された場合であっても、出力電流が流れない状態で再度燃料ガス漏れ判定を行うことができるため、燃料ガス漏れ判定の精度をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、燃料ガス漏れ判定を燃料電池の間欠運転時に実行した場合であっても燃料電池の劣化を抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】各実施形態における燃料電池システムを模式的に示す構成図である。
【図2】各実施形態における開回路電圧回避処理およびガス漏れ判定処理を実行するタイミングを説明するためのグラフである。
【図3】第1実施形態における燃料電池の間欠運転時ガス漏れ判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】第2実施形態における燃料電池の間欠運転時ガス漏れ判定処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る燃料電池システムの好適な実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る燃料電池システムを燃料電池車両(FCHV;Fuel Cell Hybrid Vehicle)の車載発電システムとして用いた場合について説明する。
[第1実施形態]
【0021】
図1を参照して、第1実施形態における燃料電池システムの構成について説明する。図1は、第1実施形態における燃料電池システムを模式的に示した構成図である。
【0022】
同図に示すように、燃料電池システム1は、反応ガスである酸化ガスと燃料ガスの電気化学反応により電力を発生する燃料電池2と、酸化ガスとしての空気を燃料電池2に供給する酸化ガス配管系3と、燃料ガスとしての水素を燃料電池2に供給する水素ガス配管系4と、システム全体を統括制御する制御部5とを有する。燃料電池2および水素ガス配管系4により水素ガス供給機構(燃料ガス供給機構)が構成される。
【0023】
燃料電池2は、反応ガスの供給を受けて発電する複数の単セルを積層したスタック構造により構成される。燃料電池2で発電された直流電力の一部は、DC/DCコンバータ91によって降圧され、バッテリーである二次電池92に充電される。トラクションインバータ93は、燃料電池2と二次電池92の双方またはいずれか一方から供給される直流電力を交流電力に変換し、トラクションモータ94に交流電力を供給する。燃料電池2には、燃料電池2の出力電圧を検出する電圧センサVと、燃料電池2の出力電流を検出する電流センサAが設けられている。
【0024】
酸化ガス配管系3は、フィルタ30を介して取り込まれた空気を圧縮し、酸化ガスとしての圧縮空気を送出するコンプレッサ31と、酸化ガスを燃料電池2に供給するための空気供給流路32と、燃料電池2から排出された酸化オフガスを排出するための空気排出流路33とを有する。空気供給流路32および空気排出流路33には、コンプレッサ31から圧送された酸化ガスを燃料電池2から排出された酸化オフガスを用いて加湿する加湿器34が設けられている。この加湿器34で水分交換等された酸化オフガスは、最終的に排ガスとしてシステム外の大気中に排気される。
【0025】
水素ガス配管系4は、高圧(例えば、70MPa)の水素ガスを貯留した燃料供給源としての水素タンク40と、水素タンク40の水素ガスを燃料電池2に供給するための燃料供給流路としての水素供給流路41と、燃料電池2から排出された水素オフガスを水素供給流路41に戻すための循環流路42とを有する。なお、水素ガス配管系4は、本発明における燃料供給系の一実施形態である。本実施形態における水素タンク40に代えて、例えば、水蒸気を利用して炭化水素系燃料を水素リッチな燃料ガスに改質する改質器と、この改質器で改質された燃料ガスを高圧状態にして蓄圧する高圧ガスタンクとを燃料供給源として採用することができる。また、水素吸蔵合金を有するタンクを燃料供給源として採用することもできる。
【0026】
水素供給流路41には、水素タンク40からの水素ガスの供給を遮断または許容する主止弁43と、水素ガスの圧力を予め設定した二次圧に調圧するレギュレータ44と、水素供給流路41から燃料電池2への水素ガスの供給を遮断または許容する第一遮断弁45と、燃料電池2から循環流路42への水素オフガスの流出を遮断または許容する第二遮断弁46と、が設けられている。また、第一遮断弁45の下流側には、水素ガス供給機構内における水素ガスの圧力を検出する圧力センサPが設けられている。
【0027】
循環流路42には、循環流路42内の水素オフガスを加圧して水素供給流路41側へ送り出す水素ポンプ47が設けられている。また、循環流路42には、気液分離器48及び排気排水弁49を介して排出流路50が接続されている。気液分離器48は、水素オフガスから水分を回収する。排気排水弁49は、制御部5からの指令に従って、気液分離器48で回収された水分と循環流路42内の不純物を含む水素オフガスとを排出(パージ)する。排気排水弁49から排出された水素オフガスは、希釈器51によって希釈されて空気排出流路33内の酸化オフガスと合流する。
【0028】
制御部5は、燃料電池車両に設けられた加速操作部材(アクセル等)の操作量を検出し、加速要求値(例えば、トラクションモータ94等の電力消費装置からの要求発電量)等の制御情報を受けて、システム内の各種機器の動作を制御する。なお、電力消費装置には、トラクションモータ94の他に、例えば、燃料電池2を作動させるために必要な補機装置(例えばコンプレッサ31や水素ポンプ47のモータ等)、車両の走行に関与する各種装置(変速機、車輪制御装置、操舵装置、懸架装置等)で使用されるアクチュエータ、乗員空間の空調装置(エアコン)、照明、オーディオ等が含まれる。
【0029】
制御部5は、燃料電池2の運転モードが、通常運転モードから間欠運転モードに移行したときに、後述する開回路電圧回避処理を開始させ、この開回路電圧回避処理が終了した後に、燃料電池システムにおける水素ガス漏れの有無を判定するガス漏れ判定処理を実行する。
【0030】
間欠運転モードとは、例えば、アイドリング時、低速走行時または回生制動時等のように低負荷運転時に燃料電池2の発電を一時休止させ、二次電池92等の蓄電手段から負荷(車両モータ等)に電力を供給させる運転モードをいう。
【0031】
開回路電圧回避処理は、燃料電池2への酸化ガスの供給を停止させることで燃料電池2の出力電流を徐々に減少させていく処理である。このような処理を間欠運転モード移行時に行うことで、燃料電池2の出力電流を徐々に減少させながら出力させていくことができるため、出力電圧の上昇を抑制することができ、出力電圧が開回路電圧に到達してしまう事態を回避することができる。
【0032】
開回路電圧回避処理が終了したか否かは、燃料電池2の出力電流が所定の回避処理終了閾値以下になったか否かにより決定される。つまり、燃料電池2の出力電流が所定の回避処理終了閾値以下になった場合に開回路電圧回避処理が終了したと判定され、ガス漏れ判定処理が実行されることになる。この回避処理終了閾値は、開回路電圧回避処理が終了したか否かを判定する際の閾値である。ガス漏れ判定の精度をより高めるためには、回避処理終了閾値を0Aに設定することが好ましい。ただし、必ずしも0Aに設定する必要はなく、設定した閾値における出力電流によって生じ得る圧力低下量がガス漏れ判定に影響を及ぼさない圧力低下量となる範囲内において回避処理終了閾値を設定することができる。
【0033】
ガス漏れ判定処理としては、従来の燃料電池システムで採用されている各種のガス漏れ判定処理を適用することができる。例えば、以下のガス漏れ判定処理を適用することができる。まず、第一遮断弁45および第二遮断弁46を閉じることで第一遮断弁45と第二遮断弁46との間で形成される閉空間の圧力変化を圧力センサPによって検出させ、この検出結果を用いてガス漏れ量を測定する。そして、測定したガス漏れ量が、予め登録されている所定の漏れ判定閾値よりも大きい場合には、水素ガス配管系4で水素ガスのガス漏れが発生していると判定する。一方、ガス漏れ量が、漏れ判定閾値以下である場合には、水素ガス配管系4で水素ガスのガス漏れが発生していないと判定する。
【0034】
制御部5は、ガス漏れ判定処理で水素ガスのガス漏れが発生していると判定した場合に、ガス漏れの再判定処理を以下の手順で行う。最初に、燃料電池2への酸化ガスの供給を停止させたまま水素ガスの供給を再開させる。続いて、燃料電池2の出力電流が流れることのない状態に変更させる。そして、再度、上述したガス漏れ判定処理を実行する。燃料電池2の出力電流が流れることのない状態としては、例えば、燃料電池2の出力電圧を、燃料電池の最高出力電圧となる開回路電圧(開放端電圧)に変更させて、燃料電池の出力電流を物理的に停止させることが該当する。これにより、例えば、電流センサAの故障によりガス漏れであると誤判定された場合であっても、電流が流れない状態で再度ガス漏れ判定を行うことができるため、ガス漏れ判定の精度をより高めることができる。
【0035】
図2を参照して、上述した開回路電圧回避処理およびガス漏れ判定処理を実行するタイミングについて説明する。図2に示す上段のグラフは、燃料電池2の出力電圧値の推移を表すグラフであり、中段のグラフは、燃料電池2の出力電流値の推移を表すグラフであり、下段のグラフは、水素タンク40から供給される水素ガスの圧力値の推移を表すグラフである。図2に示すt1は、燃料電池2の運転モードが通常運転モードから間欠運転モードに移行したタイミングであり、t2は、燃料電池2の出力電流が所定の回避処理終了閾値以下になったタイミングである。つまり、符号200で示される期間に開回路電圧回避処理が実行され、符号100で示される期間にガス漏れ判定処理が実行される。
【0036】
ここで、制御部5は、物理的には、例えば、CPUと、CPUで処理される制御プログラムや制御データを記憶するROMやHDDと、主として制御処理のための各種作業領域として使用されるRAMと、入出力インターフェースとを有する。これらの要素は、互いにバスを介して接続されている。入出力インターフェースには、圧力センサP、電流センサAおよび電圧センサV等の各種センサが接続されているとともに、コンプレッサ31、主止弁43、第一遮断弁45、第二遮断弁46、水素ポンプ47および排気排水弁49等を駆動させるための各種ドライバが接続されている。
【0037】
CPUは、ROMに記憶された制御プログラムに従って、入出力インターフェースを介して圧力センサPや電流センサA、電圧センサVでの検出結果を受信し、RAM内の各種データ等を用いて処理することで、燃料電池システム1の間欠運転時ガス漏れ判定処理を制御する。また、CPUは、入出力インターフェースを介して各種ドライバに制御信号を出力することにより、燃料電池システム1全体を制御する。
【0038】
次に、図3に示すフローチャートを用いて、第1実施形態における燃料電池システムの間欠運転時ガス漏れ判定処理について説明する。
【0039】
最初に、燃料電池2の運転モードが通常運転モードから間欠運転モードに移行すると(ステップS101)、制御部5は、開回路電圧回避処理を実行する(ステップS102)。これにより、酸化ガスの供給が停止され、燃料電池2の出力電流が徐々に低下する。
【0040】
続いて、制御部5は、電流センサAによって検出された燃料電池2の出力電流値が回避処理終了閾値以下であるか否かを判定する(ステップS103)。この判定がNOである場合(ステップS103;NO)には、ステップS103の判定を繰り返し行う。
【0041】
一方、上記ステップS103で燃料電池2の出力電流値が回避処理終了閾値以下であると判定された場合(ステップS103;YES)に、制御部5は、ガス漏れ判定処理を実行し(ステップS104)、ガス漏れが発生したか否かを判定する(ステップS105)。この判定がNOである場合(ステップS105;NO)には、間欠運転時ガス漏れ判定処理を終了する。
【0042】
一方、上記ステップS105でガス漏れが発生したと判定された場合(ステップS105;YES)に、制御部5は、酸化ガスの供給を停止させたまま水素ガスの供給を再開させ(ステップS106)、DC/DCコンバータ91への指令電圧に開回路電圧を設定してDC/DCコンバータ91に送出する(ステップS107)。
【0043】
続いて、制御部5は、ガス漏れ判定処理を実行し(ステップS108)、ガス漏れが発生したか否かを判定する(ステップS109)。この判定がNOである場合(ステップS109;NO)には、間欠運転時ガス漏れ判定処理を終了する。
【0044】
一方、上記ステップS109でガス漏れが発生したと判定された場合(ステップS109;YES)に、制御部5は、ガス漏れ警報を出力させる(ステップS110)。
【0045】
上述してきたように、第1実施形態における燃料電池システム1によれば、燃料電池2の間欠運転時において、酸化ガスの供給を停止させて燃料電池2の出力電流を徐々に減少させていく開回路電圧回避処理が終了した後に、ガス漏れの有無を判定させることができるため、燃料電池2の出力電圧が継続して開回路電圧に到達してしまうことを防止することができるとともに、出力電流が流れたことに起因する水素ガスの圧力低下量を考慮することなくガス漏れ判定を行うことができる。これにより、ガス漏れ判定を燃料電池2の間欠運転時に実行した場合であっても燃料電池2の劣化を抑制させることができるとともに、ガス漏れ判定の精度をより向上させることができる。
【0046】
また、ガス漏れの再判定処理を行うことができるため、例えば、電流センサの故障等によりガス漏れが有ると誤判定された場合であっても、出力電流が流れない状態で再度、ガス漏れ判定を行うことができるため、ガス漏れ判定の精度をより向上させることができる。
[第2実施形態]
【0047】
本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、第1実施形態では、開回路電圧回避処理が終了してからガス漏れ判定処理を行っているのに対し、第2実施形態では、開回路電圧回避処理を実行しているときに、ガス漏れ判定処理を行う点で異なる。図2を参照して具体的に説明する。第1実施形態では、符号200で示される期間に開回路電圧回避処理を実行し、符号100で示される期間にガス漏れ判定処理を実行していたのに対し、第2実施形態では、符号200で示される期間に開回路電圧回避処理およびガス漏れ判定処理の双方を実行する点で異なる。
【0048】
第2実施形態における燃料電池システムの構成は、図1に示す第1実施形態における燃料電池システムの構成と同様であるため、その説明については省略する。以下においては、主に第1実施形態との相違点について説明する。
【0049】
制御部5は、燃料電池2の運転モードが、通常運転モードから間欠運転モードに移行したときに、開回路電圧回避処理を開始させるとともに、ガス漏れ判定処理を実行する。
【0050】
制御部5は、水素ガス漏れの有無を判定するための漏れ判定閾値を燃料電池2の出力電流に応じて補正したうえで、水素ガス漏れの有無を判定する。具体的には、出力電流を用いて水素ガスの消費量を算出し、この消費量を用いて、出力電流が流れたことに起因する水素ガスの圧力低下量を算出する。そして、この圧力低下量を用いて漏れ判定閾値を補正する。具体的には、予め登録されている所定の漏れ判定閾値に対して、算出した出力電流による圧力低下量分の圧力値を加算することで、漏れ判定閾値を補正する。
【0051】
制御部5は、水素ガスを供給する水素ガス供給機構内における圧力低下量が補正後の漏れ判定閾値よりも大きい場合に、水素ガス漏れが発生していると判定する。
【0052】
次に、図4に示すフローチャートを用いて、第2実施形態における燃料電池システムの間欠運転時ガス漏れ判定処理について説明する。なお、図4に示すステップS207〜S211の各処理は、第1実施形態において説明したステップS106〜S110の各処理(図3参照)と、それぞれ同様の処理にあたるため、第2実施形態に特有の処理であるステップS201〜S206の処理について以下に説明する。
【0053】
最初に、燃料電池2の運転モードが通常運転モードから間欠運転モードに移行すると(ステップS201)、制御部5は、開回路電圧回避処理を実行する(ステップS202)。これにより、酸化ガスの供給が停止され、燃料電池2の出力電流が徐々に低下する。
【0054】
続いて、制御部5は、電流センサAによって検出された燃料電池2の出力電流値を用いて、水素ガスの消費量を算出するとともに、この水素ガスの消費量を用いて出力電流値に起因する水素ガスの圧力低下量を算出する(ステップS203)。制御部5は、この圧力低下量を用いて漏れ判定閾値を補正する(ステップS204)。
【0055】
続いて、制御部5は、ガス漏れ判定処理を実行し(ステップS205)、ガス漏れが発生したか否かを判定する(ステップS206)。この判定がNOである場合(ステップS206;NO)には、間欠運転時ガス漏れ判定処理を終了する。
【0056】
一方、上記ステップS206でガス漏れが発生したと判定された場合(ステップS206;YES)には、上述したステップS106〜S110の各処理と同様にしてガス漏れ再判定処理を行う(ステップS207〜S211)。
【0057】
上述してきたように、第2実施形態における燃料電池システム1によれば、燃料電池2の間欠運転時において、酸化ガスの供給を停止させて燃料電池2の出力電流を徐々に減少させていく開回路電圧回避処理を実行しているときに、ガス漏れの有無を判定させることができるため、燃料電池2の出力電圧が継続して開回路電圧に到達してしまうことを防止することができるとともに、ガス漏れ判定を間欠運転に移行した直後から開始させることができる。これにより、ガス漏れ判定を燃料電池2の間欠運転時に実行した場合であっても燃料電池2の劣化を抑制させることができるとともに、ガス漏れ判定をより早期に開始させることができる。
【0058】
なお、上述した第2実施形態では、漏れ判定閾値を補正する際に、出力電流に基づいて圧力低下量を算出しているが、出力電圧に基づいて圧力低下量を算出してもよい。すなわち、出力電力量に基づいて圧力低下量を算出することができる。
【0059】
また、上述した各実施形態においては、本発明に係る燃料電池システムを燃料電池車両に搭載した場合について説明しているが、燃料電池車両以外の各種移動体(ロボット、船舶、航空機等)にも本発明に係る燃料電池システムを適用することができる。また、本発明に係る燃料電池システムを、建物(住宅、ビル等)用の発電設備として用いられる定置用発電システムに適用することもできる。
【符号の説明】
【0060】
1…燃料電池システム、2…燃料電池、3…酸化ガス配管系、4…水素ガス配管系、5…制御部、30…フィルタ、31…コンプレッサ、32…空気供給流路、33…空気排出流路、34…加湿器、40…水素タンク、41…水素供給流路、42…循環流路、43…主止弁、44…レギュレータ、45…第一遮断弁、46…第二遮断弁、47…水素ポンプ、48…気液分離器、49…排気排水弁、50…排出流路、51…希釈器、91…DC/DCコンバータ、92…二次電池、93…トラクションインバータ、94…トラクションモータ、V…電圧センサ、A…電流センサ、P…圧力センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスおよび酸化ガスの供給を受けて当該燃料ガスおよび酸化ガスの電気化学反応により電力を発生する燃料電池を有する燃料電池システムであって、
前記燃料電池の間欠運転時に、前記燃料電池システムにおける燃料ガス漏れの有無を判定する漏れ判定手段と、
前記酸化ガスの供給を停止させて前記燃料電池の出力電流を徐々に減少させていく開回路電圧回避処理を実行する回避処理実行手段と、を備え、
前記漏れ判定手段は、前記開回路電圧回避処理が終了した後に、前記燃料ガス漏れの有無を判定することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記回避処理実行手段は、前記燃料電池の出力電流が所定の回避処理終了閾値以下になった場合に、前記開回路電圧回避処理が終了したと判定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
燃料ガスおよび酸化ガスの供給を受けて当該燃料ガスおよび酸化ガスの電気化学反応により電力を発生する燃料電池を有する燃料電池システムであって、
前記燃料電池の間欠運転時に、前記燃料電池システムにおける燃料ガス漏れの有無を判定する漏れ判定手段と、
前記酸化ガスの供給を停止させて前記燃料電池の出力電流を徐々に減少させていく開回路電圧回避処理を実行する回避処理実行手段と、を備え、
前記漏れ判定手段は、前記開回路電圧回避処理が実行されているときに、前記燃料ガス漏れの有無を判定することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
前記ガス漏れ判定手段は、前記燃料ガス漏れの有無を判定するための所定の漏れ判定閾値を前記燃料電池の出力電力量に応じて補正したうえで、前記燃料ガス漏れの有無を判定することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記ガス漏れ判定手段は、前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給機構内における圧力変化が前記漏れ判定閾値よりも大きい場合に、前記燃料ガス漏れが有ると判定することを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記ガス漏れ判定手段が、前記燃料ガス漏れが有ると判定した場合に、前記酸化ガスの供給を停止させ、前記燃料電池に前記燃料ガスを供給させ、前記燃料電池の出力電流が流れることのない状態に変更させたうえで、再度、前記燃料ガス漏れの有無を判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−33765(P2013−33765A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−251230(P2012−251230)
【出願日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【分割の表示】特願2007−263240(P2007−263240)の分割
【原出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】