説明

燃料電池スタックの積層荷重調整装置

【課題】積層体の締め付け荷重調整を簡単且つ良好に行うとともに、調芯機能を有して撓み等の低減を図ることを可能にする。
【解決手段】積層荷重調整装置10は、燃料電池スタック12を構成するエンドプレート44aと絶縁プレート42aとの間に配設される。積層荷重調整装置10は、互いに逆方向に傾斜する傾斜面58a、58bを有する一対の傾斜部材50a、50bと、右ねじ部材60a及び左ねじ部材60bを有し、一方向の回転によって前記一対の傾斜部材50a、50bを互いに近接する方向に移動させるとともに、他方向の回転によって前記一対の傾斜部材50a、50bを互いに離間する方向に移動させる移動機構52と、前記一対の傾斜部材50a、50bと単位セル14との間に配置され、前記一対の傾斜部材50a、50bの移動作用下に前記単位セル14の積層方向に移動する押圧部材54とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質の両側に一対の電極を設けた電解質・電極構造体とセパレータとを有する複数の単位セルが積層される積層体を備え、前記積層体の積層方向両端には、エンドプレートが配設される燃料電池スタックの積層荷重調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜(電解質)を採用している。この電解質膜の両側にアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、セパレータによって挟持することにより燃料電池(単位セル)が構成されている。
【0003】
通常、この燃料電池は、所望の発電力を得るために、所定数(例えば、数十〜数百)だけ積層した燃料電池スタックとして使用されている。この燃料電池スタックは、燃料電池の内部抵抗の増大や反応ガスのシール性の低下等を阻止するために、積層されている各燃料電池同士を確実に加圧保持する必要がある。
【0004】
このため、例えば、特許文献1に開示されている平板形固体電解質燃料電池では、図9に示すように、底板1と、この底板1の両端から直立する側板2a、2bとからなる保持枠3を備えている。
【0005】
底板1には、水平方向に単電池を積層したスタック4が載置されるとともに、前記スタック4の端面に重ねられた傾斜面5aを有する締付板5と側板2aとの間には、楔状の傾斜板6が挿入されている。そして、傾斜板6に重りが載せられることにより、下向きの荷重を傾斜面5aを介して水平方向の力を生じさせ、この力によってスタック4を締め付けている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−188023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1では、傾斜面5aを有する単一の締付板5の押圧作用下にスタック4を締め付けるため、前記スタック4を積層方向に均等に押圧することができないおそれがある。特に、傾斜面5aから離間する底板1側では、スタック4に所望の締め付け力が付与され難くなり、前記スタック4に撓みが発生し易いという問題がある。しかも、締付板5の平行度を維持することが困難になり、調芯機能を有することができず、外部からの衝撃や振動に対する揺れを有効に抑制することが困難になるという問題がある。
【0008】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、積層体の締め付け荷重調整を簡単且つ良好に行うとともに、調芯機能を有して撓み等の低減を図ることが可能な高品質な燃料電池スタックの積層荷重調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電解質膜の両側に一対の電極を設けた電解質・電極構造体とセパレータを有する複数の単位セルが積層される積層体を備え、前記積層体の積層方向両端には、エンドプレートが配設される燃料電池スタックの積層荷重調整装置に関するものである。
【0010】
この積層荷重調整装置は、少なくとも一方のエンドプレートの内側に配置され、前記エンドプレートの面方向に移動可能で且つ互いに逆方向に傾斜する傾斜面を有する一対の傾斜部材と、右ねじ部及び左ねじ部を有し、一方向の回転によって前記一対の傾斜部材を互いに近接する方向に移動させるとともに、他方向の回転によって前記一対の傾斜部材を互いに離間する方向に移動させる移動機構と、前記一対の傾斜部材と前記積層体との間に配置され、前記一対の傾斜部材の移動作用下に前記積層体の積層方向に移動する押圧部材とを備えている。
【0011】
また、移動機構は、一方の傾斜部材に固定される右ねじ部と、他方の傾斜部材に固定される左ねじ部と、前記右ねじ部及び前記左ねじ部が一体に螺合するとともに、回転操作されるナット部とを備えることが好ましい。
【0012】
さらに、エンドプレートには、ナット部を外方から回転操作するための開口部が形成されることが好ましい。
【0013】
さらにまた、移動機構は、一方の傾斜部材に螺合される右ねじ部及び他方の傾斜部材に螺合される左ねじ部が一体に連結される連結棒体と、前記連結棒体の端部に設けられ、該連結棒体を回転操作する操作部とを備えることが好ましい。
【0014】
また、押圧部材は、一対の傾斜部材の各傾斜面に当接する傾斜面を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、移動機構を一方向に回転させると、一対の傾斜部材が互いに近接する方向に移動するため、前記一対の傾斜部材の傾斜面に当接する押圧部材は、平行度を維持した状態で積層体の積層方向一方に移動する。さらに、移動機構を他方向に回転させると、一対の傾斜部材が互いに離間する方向に移動するため、前記一対の傾斜部材の傾斜面に当接する押圧部材は、平行度を維持した状態で積層体の積層方向他方に移動する。
【0016】
従って、移動機構を回転させるだけで、押圧部材が平行度を維持した状態で、積層方向に進退することができる。これにより、押圧部材を介して積層体の締め付け荷重調整を簡単且つ良好に行うとともに、調芯機能を有して撓み等の低減を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る積層荷重調整装置10を組み込む燃料電池スタック12の概略斜視説明図であり、図2は、前記燃料電池スタック12の側面説明図である。
【0018】
燃料電池スタック12は、例えば、車載用として使用される。この燃料電池スタック12は、複数の単位セル14が矢印A方向に積層された積層体を構成する。図3に示すように、単位セル14は、電解質膜・電極構造体16と、前記電解質膜・電極構造体16を挟持する第1セパレータ18及び第2セパレータ20とを有する。第1セパレータ18及び第2セパレータ20は、カーボンセパレータ又は金属セパレータにより構成される。
【0019】
第1セパレータ18及び第2セパレータ20は、縦長形状を有するとともに、長辺が重力方向(矢印C方向)に向かい且つ短辺が水平方向(矢印B方向)に向かうように構成される。
【0020】
単位セル14の長辺方向の上端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス供給連通孔22a、及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔24aが設けられる。
【0021】
単位セル14の長辺方向の下端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを排出するための燃料ガス排出連通孔24b、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出連通孔22bが設けられる。
【0022】
単位セル14の短辺方向(矢印B方向)の一端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、冷却媒体を供給するための冷却媒体供給連通孔26aが設けられるとともに、前記単位セル14の短辺方向の他端縁部には、前記冷却媒体を排出するための冷却媒体排出連通孔26bが設けられる。
【0023】
電解質膜・電極構造体16は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜28と、前記固体高分子電解質膜28を挟持するカソード側電極30及びアノード側電極32とを備える。
【0024】
カソード側電極30及びアノード側電極32は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布して形成される電極触媒層(図示せず)とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜28の両面に形成される。
【0025】
第1セパレータ18の電解質膜・電極構造体16に向かう面18aには、酸化剤ガス供給連通孔22aと酸化剤ガス排出連通孔22bとを連通する酸化剤ガス流路34が形成される。酸化剤ガス流路34は、矢印C方向(鉛直方向)に延在する。
【0026】
第2セパレータ20の電解質膜・電極構造体16に向かう面20aには、燃料ガス供給連通孔24aと燃料ガス排出連通孔24bとを連通する燃料ガス流路36が形成される。燃料ガス流路36は、矢印C方向に延在する。
【0027】
第2セパレータ20の面20bと、第1セパレータ18の面18bとの間には、冷却媒体供給連通孔26aと冷却媒体排出連通孔26bとに連通する冷却媒体流路38が形成される。冷却媒体流路38は、矢印B方向に延在する。
【0028】
電解質膜・電極構造体16と第1セパレータ18及び第2セパレータ20との間、並びに互いに隣接する前記第1セパレータ18と前記第2セパレータ20との間(隣接する単位セル14間)には、図示しないが、シール部材が配設される。
【0029】
図1及び図2に示すように、単位セル14の積層方向両端には、ターミナルプレート40a、40b、絶縁プレート42a、42b及びエンドプレート44a、44bが外方に向かって配設される。エンドプレート44a、44bは、例えば、アルミニウムやマグネシウム等の軽金属で構成される。
【0030】
燃料電池スタック12では、例えば、長方形状に構成されるエンドプレート44a、44bが、矢印A方向に延在する複数のタイロッド46により一体的に締め付け保持される。なお、燃料電池スタック12は、エンドプレート44a、44bを端板として含む箱状ケーシング(図示せず)により一体的に保持してもよい。
【0031】
積層荷重調整装置10は、エンドプレート44aと絶縁プレート42aとの間に配設される。この積層荷重調整装置10は、図1、図2及び図4に示すように、エンドプレート44aの内側面に摺接して配置され、互いに対称形状を有する一対の傾斜部材50a、50bと、前記傾斜部材50a、50bを互いに近接する方向及び離間する方向に一体に移動させる移動機構52と、前記傾斜部材50a、50bと絶縁プレート42aとの間に配置され、該傾斜部材50a、50bの移動作用下に、複数の単位セル14の積層方向(矢印A方向)に移動する押圧部材54とを備える。
【0032】
傾斜部材50a、50bは、略楔形状を有する。上方に配置される傾斜部材50aは、エンドプレート44aに隣接する摺動面56aを有するとともに、この摺動面56aの反対側には、押圧部材54に対向する傾斜面58aが設けられる。この傾斜面58aは、鉛直下方向に向かってエンドプレート44a側に傾斜する。
【0033】
下方に配置される傾斜部材50bは、エンドプレート44aに摺接する摺動面56bを有するとともに、この摺動面56bとは反対側には、押圧部材54に対向して傾斜面58bが設けられる。傾斜面58bは、傾斜面58aとは逆方向に、すなわち、鉛直上方向に向かってエンドプレート44a側に傾斜する。
【0034】
移動機構52は、傾斜部材50a内に埋設され、下端部が前記傾斜部材50aから下方に延在する一以上、例えば、2本の右ねじ部材60aと、傾斜部材50b内に埋設され、上端部が前記傾斜部材50bから上方に延在する一以上、例えば、2本の左ねじ部材60bと、前記右ねじ部材60a及び前記左ねじ部材60bを一体に螺合する2つのナット部材62とを備える(所謂、ターンバックル)。ナット部材62は、例えば、外周が6角形状を有することにより、スパナ(図示せず)を介して回転操作が簡素化される。
【0035】
なお、傾斜部材50a、50bは、それぞれ2本の右ねじ部材60a及び2本の左ねじ部材60bに対応して左右に分割(例えば、2分割)されていてもよい。
【0036】
エンドプレート44aには、各ナット部材62を外部から回転操作可能な2つの開口部64が形成される。押圧部材54は、単位セル14側に平坦面66を有するとともに、傾斜部材50a、50b側には、それぞれの傾斜面58a、58bに対応する傾斜面68a、68bを有する。
【0037】
図示しないが、エンドプレート44bの左右両端縁部には、冷却媒体供給連通孔26aと冷却媒体排出連通孔26bとが設けられる。エンドプレート44bの上下両端縁部には、酸化剤ガス供給連通孔22a、燃料ガス供給連通孔24a、酸化剤ガス排出連通孔22b及び燃料ガス排出連通孔24bが設けられる。
【0038】
このように構成される燃料電池スタック12の動作について、以下に説明する。
【0039】
先ず、図1に示すように、燃料電池スタック12では、エンドプレート44b側から酸素含有ガス等の酸化剤ガスと、水素含有ガス等の燃料ガスと、純水やエチレングリコール等の冷却媒体とが供給される。
【0040】
図3に示すように、酸化剤ガスは、各単位セル14を構成する酸化剤ガス供給連通孔22aから第1セパレータ18の酸化剤ガス流路34に導入され、電解質膜・電極構造体16のカソード側電極30に沿って鉛直下方向に移動する。一方、燃料ガスは、各単位セル14を構成する燃料ガス供給連通孔24aから第2セパレータ20の燃料ガス流路36に導入され、電解質膜・電極構造体16のアノード側電極32に沿って鉛直下方向に移動する。
【0041】
上記のように、各電解質膜・電極構造体16では、カソード側電極30に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極32に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0042】
次いで、カソード側電極30に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出連通孔22bからエンドプレート44b側に排出される。同様に、アノード側電極32に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス排出連通孔24bからエンドプレート44b側に排出される。
【0043】
また、冷却媒体は、第1及び第2セパレータ18、20間の冷却媒体流路38に導入される。この冷却媒体は、矢印B方向(水平方向)に沿って流動し、電解質膜・電極構造体16を冷却した後、冷却媒体排出連通孔26bからエンドプレート44b側に排出される。
【0044】
この場合、第1の実施形態では、燃料電池スタック12内に積層荷重調整装置10を備えている。この積層荷重調整装置10では、移動機構52を構成する各ナット部材62が、エンドプレート44aの各開口部64を介して一方向に回転されると、前記ナット部材62に螺合する右ねじ部材60aは、例えば、鉛直下方向に移動し、前記右ねじ部材60aが埋設される傾斜部材50aは、鉛直下方向に移動する(図5参照)。
【0045】
一方、ナット部材62に螺合する左ねじ部材60bは、右ねじ部材60aとは逆方向に、すなわち、鉛直上方向に移動する。このため、左ねじ部材60bが埋設される傾斜部材50bは、鉛直上方向に移動する(図5参照)。
【0046】
従って、一対の傾斜部材50a、50bは、互いに近接する方向に移動し、前記傾斜部材50a、50bの傾斜面58a、58bに当接する傾斜面68a、68bを有する押圧部材54は、平行度を維持した状態で、複数の単位セル14の積層方向一方(エンドプレート44b側)に移動する。これにより、押圧部材54は、一対の傾斜部材50a、50bの移動作用下に、複数の単位セル14の締め付け荷重調整を簡単且つ良好に行うことができるという効果が得られる。
【0047】
しかも、上下一対の傾斜部材50a、50bは、互いに対称形状に配置されている。このため、押圧部材54が積層方向に対して揺動することを抑制するとともに、傾斜部材50a、50bの楔形状による調芯機能を発揮することができる。従って、複数の単位セル14は、積層方向に対して互いに平行移動を維持することが可能になり、例えば、撓み等の発生を可及的に阻止して円滑且つ良好に締め付け荷重調整が遂行されるという利点がある。これにより、高品質な燃料電池スタック12を容易に得ることができる。
【0048】
なお、積層荷重調整装置10による締め付け荷重を緩和する際には、ナット部材62を逆方向に回転させ、このナット部材62に螺合する右ねじ部材60a及び左ねじ部材60bを互いに離間する方向に移動させる。このため、一対の傾斜部材50a、50bは、互いに離間する方向に移動し、押圧部材54がエンドプレート44a側に移動して締め付け荷重の緩和が行われる。
【0049】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る積層荷重調整装置80の概略斜視説明図であり、図7は、前記積層荷重調整装置80の側面説明図である。なお、第1の実施形態に係る積層荷重調整装置10及び燃料電池スタック12と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0050】
積層荷重調整装置80は、一対の傾斜部材82a、82bと、移動機構84と、押圧部材54とを備える。上方の傾斜部材82aには、鉛直方向に貫通して一以上、例えば、2本のねじ孔86aが設けられるとともに、下方の傾斜部材82bには、前記ねじ孔86aと同軸上に且つ逆ねじである2本のねじ孔86bが、鉛直方向に貫通形成される。
【0051】
移動機構84は、傾斜部材82aのねじ孔86aに螺合される右ねじ部88a及び傾斜部材82bのねじ孔86bに螺合される左ねじ部88bが一体に連結された連結棒体90を備える。各連結棒体90の端部には、前記連結棒体90を回転操作するつまみ部(操作部)92が設けられる。
【0052】
このように構成される第2の実施形態では、移動機構84を構成するつまみ部92が一方向に回転されると、連結棒体90に設けられている右ねじ部88a及び左ねじ部88bが一方向に回転する。従って、右ねじ部88aが螺合するねじ孔86aを設けた傾斜部材82aと、左ねじ部88bに螺合するねじ孔86bを設けた傾斜部材82bとは、例えば、互いに近接する方向に移動する。
【0053】
このため、傾斜部材82a、82bの傾斜面58a、58bの押圧作用下に、押圧部材54は、各単位セル14を締め付ける方向に移動し、前記単位セル14に締め付け荷重を付与する。その際、押圧部材54は、平行移動を維持して積層方向に確実に移動することができ、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0054】
また、第2の実施形態では、操作部であるつまみ部92が連結棒体90の端部に設けられており、例えば、エンドプレート44aには、このつまみ部92を露呈させるための開口部が不要になるという利点がある。
【0055】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る積層荷重調整装置100を組み込む燃料電池スタック12の側面説明図である。なお、第2の実施形態に係る積層荷重調整装置80及び燃料電池スタック12と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0056】
積層荷重調整装置100は、一対の傾斜部材82a、82bと、移動機構84と、エンドプレート102とを備える。エンドプレート102は、単位セル14に向かって傾斜面68a、68bを有する一方、傾斜部材82a、82bは、傾斜面58a、58bを前記傾斜面68a、68bに対向して配置される。
【0057】
このように構成される第3の実施形態では、移動機構84を構成するつまみ部92が一方向に回転されると、連結棒体90に設けられている右ねじ部88a及び左ねじ部88bが一方向に回転する。従って、傾斜部材82a及び傾斜部材82bは、例えば、互いに近接する方向に移動する。このため、傾斜部材82a、82bの傾斜面58a、58bとエンドプレート102の傾斜面68a、68bとの押圧作用下に、前記傾斜部材82a及び前記傾斜部材82bは、各単位セル14を締め付ける方向に移動する。
【0058】
これにより、第3の実施形態では、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0059】
なお、第1〜第3の実施形態では、上下に一対の傾斜部材50a、50bと82a、82bとを備えているが、これに限定されるものではない。例えば、左右に一対の傾斜部材(図示せず)を配設してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る積層荷重調整装置を組み込む燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池スタックの側面説明図である。
【図3】前記燃料電池スタックを構成する単位セルの分解斜視図である。
【図4】前記積層荷重調整装置の要部斜視説明図である。
【図5】前記積層荷重調整装置の動作説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る積層荷重調整装置の要部斜視説明図である。
【図7】前記積層荷重調整装置の側面説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る積層荷重調整装置を組み込む燃料電池スタックの側面説明図である。
【図9】特許文献1に開示されている平板形固体電解質燃料電池の説明図である。
【符号の説明】
【0061】
10、80、100…積層荷重調整装置 12…燃料電池スタック
14…単位セル 16…電解質膜・電極構造体
18、20…セパレータ 28…固体高分子電解質膜
30…カソード側電極 32…アノード側電極
40a、40b…ターミナルプレート 42a、42b…絶縁プレート
44a、44b、102…エンドプレート
50a、50b、82a、82b…傾斜部材
52、84…移動機構 54…押圧部材
58a、58b…傾斜面 60a、88a…右ねじ部材
60b、88b…左ねじ部材 62…ナット部材
64…開口部 86a、86b…ねじ孔
90…連結棒体 92…つまみ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の両側に一対の電極を設けた電解質・電極構造体とセパレータとを有する複数の単位セルが積層される積層体を備え、前記積層体の積層方向両端には、エンドプレートが配設される燃料電池スタックの積層荷重調整装置であって、
少なくとも一方の前記エンドプレートの内側に配置され、前記エンドプレートの面方向に移動可能で且つ互いに逆方向に傾斜する傾斜面を有する一対の傾斜部材と、
右ねじ部及び左ねじ部を有し、一方向の回転によって前記一対の傾斜部材を互いに近接する方向に移動させるとともに、他方向の回転によって前記一対の傾斜部材を互いに離間する方向に移動させる移動機構と、
前記一対の傾斜部材と前記積層体との間に配置され、前記一対の傾斜部材の移動作用下に前記積層体の積層方向に移動する押圧部材と、
を備えることを特徴とする燃料電池スタックの積層荷重調整装置。
【請求項2】
請求項1記載の積層荷重調整装置において、前記移動機構は、一方の前記傾斜部材に固定される前記右ねじ部と、
他方の前記傾斜部材に固定される前記左ねじ部と、
前記右ねじ部及び前記左ねじ部が一体に螺合するとともに、回転操作されるナット部と、
を備えることを特徴とする燃料電池スタックの積層荷重調整装置。
【請求項3】
請求項2記載の積層荷重調整装置において、前記エンドプレートには、前記ナット部を外方から回転操作するための開口部が形成されることを特徴とする燃料電池スタックの積層荷重調整装置。
【請求項4】
請求項1記載の積層荷重調整装置において、前記移動機構は、一方の前記傾斜部材に螺合される前記右ねじ部及び他方の前記傾斜部材に螺合される前記左ねじ部が一体に連結される連結棒体と、
前記連結棒体の端部に設けられ、該連結棒体を回転操作する操作部と、
を備えることを特徴とする燃料電池スタックの積層荷重調整装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層荷重調整装置において、前記押圧部材は、前記一対の傾斜部材の各傾斜面に当接する傾斜面を有することを特徴とする燃料電池スタックの積層荷重調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−140666(P2010−140666A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313364(P2008−313364)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】