燃料電池スタック並びにその製造方法
【課題】製品のコストアップを抑え、発電性能が高い燃料電池のスタック並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】対の電極触媒層5A、5Cで電解質膜4を挟んで構成した電解質膜電極積層体3をさらにその両側からガス流路8A、8Cを画成する第一、第二セパレータ7A、7Cで挟むことによって燃料電池セル2を構成し、積層された複数の燃料電池セル2を挟持する対の集電板14を備え、この集電板14を介して燃料電池セル2の起電力を取り出す燃料電池スタック1において、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14との接触部位の一部を互いに接合する。
【解決手段】対の電極触媒層5A、5Cで電解質膜4を挟んで構成した電解質膜電極積層体3をさらにその両側からガス流路8A、8Cを画成する第一、第二セパレータ7A、7Cで挟むことによって燃料電池セル2を構成し、積層された複数の燃料電池セル2を挟持する対の集電板14を備え、この集電板14を介して燃料電池セル2の起電力を取り出す燃料電池スタック1において、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14との接触部位の一部を互いに接合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタック並びにその製造方法に関し、特に、セパレータを金属板で
構成するのに好適な燃料電池スタック並びにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜を備え、この電解質膜を挟んで設けられる一対の電極のうちアノードに燃料ガスを供給するとともに、他方のカソードに酸化剤ガスを供給し、電解質膜の表面で生じる電気化学反応を利用して発電するものである。
【0003】
1つの燃料電池セルは、一対の電極触媒層で電解質膜を挟んで構成する電解質膜電極積層体(MEA)と、電解質膜電極積層体の両側にガス流路を画成するセパレータとを備える。
【0004】
セパレータは燃料ガスあるいは酸化剤ガスを流通させるガス流路を画成するとともに、温調媒体を流通させる温調媒体流路を画成する。
【0005】
また、セパレータは、各燃料電池セルの電極触媒層から出力を取り出す導電経路を兼ねるため、全体が導電性の材料で構成される。
【0006】
燃料電池スタックは、必要とする出力電圧に相当する数の燃料電池セルが直列に積層されるとともに、積層方向の両端に対の集電板が配置されて、各燃料電池セルの発電出力が各集電板から取り出される。
【0007】
従来、燃料電池用のセパレータは耐食性と導電性を兼ね備えたカーボン製のものが用いられてきたが、近年、金属製セパレータを用いて製品のコストダウンをはかるとともに、セパレータを薄肉化して出力密度を向上させる燃料電池構造が、例えば特許文献1〜4にあるように、種々提案されている。
【0008】
特許文献1には、ステンレス鋼板の表面にクラッドされたチタン又はチタン合金による耐食被覆処理層を形成したセパレータが開示されている。
【0009】
特許文献2には、ステンレス鋼板の表面に貴金属メッキ層からなる耐食被覆処理層が形成したセパレータが開示されている。
【0010】
特許文献3には、ステンレス鋼板の表面にチタンコーティング層からなる耐食被覆処理層を形成したセパレータが開示されている。
【0011】
特許文献4には、金属板の表面に貴金属メッキ層からなる耐食被覆処理層を形成したセパレータが開示されている。
【0012】
特許文献5には、燃料電池スタックを加熱するヒータを備えるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−002411号公報
【特許文献2】特開2005−190968号公報
【特許文献3】特開2005−276807号公報
【特許文献4】特開2005−317479号公報
【特許文献5】特開2004−111200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、このような従来の燃料電池スタックにあっては、金属製セパレータと集電板が互いに接触する部位を持つため、この間の導電性または熱伝導性が低下し、発電性能が低下したり、ヒータ性能が低下する可能性があった。
【0015】
また、金属製セパレータや集電板の表面に耐食被覆処理層が形成される場合、高価な貴金属の使用量が増え、製品のコストアップを招くという問題点があった。
【0016】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、製品のコストアップを抑え、発電性能が高い燃料電池のスタック並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、対の電極触媒層で電解質膜を挟んで構成した電解質膜電極積層体をさらにその両側からガス流路を画成する金属製セパレータで挟むことによって燃料電池セルを構成し、これら積層された複数の燃料電池セルを挟持する対の集電板を備え、この集電板を介して燃料電池セルの起電力を取り出す燃料電池スタック並びにその製造方法に適用する。
【0018】
そして、セパレータと集電板との接触部位の少なくとも一部を互いに接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、パレータを集電板に接合する接合部によってセパレータと集電板の間の貫通電気抵抗を低減し、燃料電池スタックの発電性能を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態を示す燃料電池スタックの斜視図。
【図2】同じく燃料電池スタックの側面図。
【図3】同じく燃料電池スタックの断面図。
【図4】同じく第一、第二セパレータの断面図。
【図5】同じく集電板と第一、第二セパレータの断面図。
【図6】同じく集電板と第一、第二セパレータの製造工程を示す図。
【図7】同じく集電板と第一、第二セパレータの斜視図。
【図8】同じく溶接面積割合と第一、第二セパレータと集電板の間の貫通電気抵抗の関係を示す特性図。
【図9】同じく面圧と第一、第二セパレータと集電板の間の貫通電気抵抗の関係を示す特性図。
【図10】同じく電解質膜電極積層体の構成図。
【図11】同じく集電板と電解質膜電極積層体の斜視図。
【図12】同じく背面の表面粗さと第一、第二セパレータの貫通電気抵抗の関係を示す特性図。
【図13】同じく集電板と第一、第二セパレータの断面図。
【図14】同じく集電板と第一、第二セパレータの断面図。
【図15】同じく燃料電池スタックの断面図。
【図16】同じく集電板と第一、第二セパレータの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の燃料電池スタック並びにその製造方法の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの斜視図であり、図2は燃料電池スタックの側面図である。図1、図2に示すように、燃料電池スタック1は、複数の燃料電池セル2を直列に積層するとともに、積層方向の両端に対の集電板14と絶縁板15とエンドプレート16を配置して、複数本のタイロッド13が各エンドプレート16を引き寄せることにより各燃料電池セル2の積層方向に締め付け荷重が付与される。
【0023】
なお、自動車に搭載される燃料電池にあっては、燃料電池スタック1は例えば300〜400個の燃料電池セル2が直列に積層される。
【0024】
一方のエンドプレート16にはカソードガス入口51、温調媒体入口52、アノードガス入口53、カソードガス出口54、温調媒体出口55、アノード出口56が開口し、これらに図示しない配管が接続される。
【0025】
各集電板14は、例えば銅板等のガス不透過な金属部材によって形成され、それぞれの出力端子14A、14Bを介して燃料スタック1で生じた起電力が取り出される。
【0026】
図3に示すように、燃料電池スタック1の両端部に配置される燃料電池セル2の第一、第二セパレータ(エンドセパレータ)7A、7Cは各集電板14に当接し、燃料電池スタック1の起電力が各集電板14に導かれる。
【0027】
各集電板14と各エンドプレート16の間に絶縁板15が介装され、両者間が絶縁される。
【0028】
なお、各エンドプレート16が絶縁材で形成されている場合、絶縁板15を廃止することが可能である。また、各エンドプレートを導電材で形成し、集電板の機能を持たせることも可能である。
【0029】
燃料電池スタック1はその両端部で各集電板14を加熱する対の電熱ヒータ17を備える。ヒータ17は図示しないリード線を介してコントローラに接続される。コントローラは燃料電池の冷間時起動等に各ヒータ17を通電し、ヒータ17の発熱によって集電板14を加熱し、エンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)を速やかに昇温することで燃料電池スタック1の発電性能を速やかに高めるようになっている。
【0030】
図3に示すように、単位ユニットとして設けられる燃料電池セル2は、一対の電極触媒層5A、5Cで電解質膜4を挟んで構成した電解質膜電極積層体(MEA)3と、電解質膜電極積層体3の両側にガス流路8A、8Cを画成する第一、第二セパレータ(セパレータ)7A、7Cとを備える。
【0031】
電解質膜電極積層体3は、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜4を備え、この電解質膜4の反応領域の両面に各極の電極触媒層5A、5Cを配置し、さらにこれらを挟持するように各極のガス拡散層6A、6Cを配置して構成される。電極触媒層5A、5Cは例えば白金または白金と他の金属からなる合金によって形成される。ガス拡散層6A、6Cは例えばカーボンクロス、カーボンペーパ、あるいはカーボンフェルト等、ガス拡散性と導電性を有する材料によって構成される。
【0032】
燃料電池は、電解質膜4を挟んで設けられる一方のアノードに燃料ガスを供給するとともに、他方のカソードに酸化剤ガスを供給することにより、電解質膜4の表面で下記の(1)、(2)式で表される反応がそれぞれ行われて発電する。
アノード反応:H2 → 2H+ + 2e− …(1)
カソード反応:2H+ + 2e− + (1/2)O2 → H2O …(2)
電解質膜電極積層体3の両側には電解質膜4の反応領域を囲む周辺領域にガスケットが配置され、第一、第二セパレータ7A、7Cはこのガスケット18A、18Cを介して電解質膜電極積層体3を挟持する。
【0033】
第一セパレータ7Aとガス拡散層6Aの間にアノードガスを導くガス流路8Aが画成される。アノードガスとして例えば水素ガスを図示しない入口マニホールドからガス流路8Aに導入し、このガス流路8Aを通してガス拡散層6Aに供給し、反応に利用されなかったガスを出口マニホールドに排出する。
【0034】
第二セパレータ7Cとガス拡散層6Cの間にカソードガスを導くガス流路8Cが画成される。カソードガスとして例えば空気を入口マニホールドからガス流路8Cに導入して、ガス流路8Cを通してガス拡散層6Cに供給し、反応に利用されなかったガスを出口マニホールドに排出する。
【0035】
第一、第二セパレータ7A、7Cの間には温調媒体を流通させる温調媒体流路9が画成される。温調媒体流路9は温調媒体として例えば冷却水を入口マニホールドから導入して第一、第二セパレータ7A、7Cの間を通して出口マニホールドに排出する。温調媒体は第一、第二セパレータ7A、7Cを介して反応熱を吸収し、燃料電池スタック1を冷却する。
【0036】
また、第一、第二セパレータ7A、7Cの間にも図示しないガスケットが介装され、温調媒体の漏洩防止がはられる。
【0037】
なお、温調媒体は、高い電気抵抗値を有することが望ましく、自動車に搭載される燃料電池にあっては、寒冷地でも凍結しない不凍液を用いる。
【0038】
金属板からなる第一、第二セパレータ7A、7Cは、燃料電池の作動条件や電池内環境を考慮して、例えば、SUS316Lのステンレス鋼が使用される。
【0039】
なお、第一、第二セパレータ7A、7Cの基材は、これに限らず、Fe、Ni、Crの少なくとも一つ以上を主成分とするステンレス鋼であるか、Al、Ti、Cu、Zn、Mg、Mn、Pb、Au、Ag、Pt、Pd、Ru、W、Ni、Cr、Sn、Feの単体もしくはこれらを主成分とする合金としても良い。
【0040】
第一、第二セパレータ7A、7Cは、流路等の形状を型彫りした金型により金属板をプレス成形することにより製作される。この金属板の厚さは、例えば、0.1〜1.0[mm]程度に設定される。
【0041】
図4は第一、第二セパレータ7A、7C単体の断面図である。第一、第二セパレータ7A、7Cは波板状に形成され、ガス拡散層6A、6Cに隣接する凸部21と、隣接する燃料電池セル2のセパレータ7A、7Cと隣接する凸部22とが交互に並ぶように形成される。各凸部21、22の間に画成される各ガス流路8A、8C、温調媒体流路9の流路幅は例えば、0.1〜5.0[mm]程度に設定される。
【0042】
第一、第二セパレータ7A、7Cは電解質膜電極積層体3に対峙する反応側表面25と、その反対側の背面26とを有し、各反応側表面25によって各ガス流路8A、8Cが画成される一方、背面26によって温調媒体流路9が画成される。
【0043】
ステンレス鋼を基材とする第一、第二セパレータ7A、7Cは、各反応側表面25のみに耐食被覆処理層27を形成し、各背面26には耐食被覆処理層を形成しないものとする。
【0044】
反応側表面25に施される耐食被覆処理層27は、例えば金(Au)からなり、その厚さを5μm程度とする金メッキ層を形成し、燃料電池特有の強酸性環境、特に硫酸酸性環境での耐食性を確保する。
【0045】
なお、反応側表面25に施される耐食被覆処理層27は、金メッキ層に限らず、耐食性向上のための、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)を用いたコーティングもしくは表面改質処理によって形成しても良い。
【0046】
一方、第一、第二セパレータ7A、7Cの各背面26にはこの耐食被覆処理層が形成されず、その表層に酸化皮膜が形成される。隣接する燃料電池セル2の第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26同士を溶接部10により接合する。この溶接部10は電極触媒層5A、5Cに挟まれる反応領域に形成される。
【0047】
背面26の表層に形成される酸化皮膜は、絶縁性を持つ被膜であるが、隣接する燃料電池セル2の第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26同士を溶接部10により接合する。溶接部10では第一、第二セパレータ7A、7C間の接触電気抵抗が発生せず、第一、第二セパレータ7A、7Cの貫通電気抵抗を低減し、燃料電池の発電性能を高められる。
【0048】
金属板をプレス成形することにより形成される各凸部21、22は、平面状に延びるリブ平面部21a、22aと、このリブ平面部21a、22aの端部で円弧状に曲折するリブ角部21b、22bを有する。
【0049】
溶接部10は、各ガス流路8A、8Cを画成する溝底となるリブ平面部21a同士を溶接する。
【0050】
燃料電池スタック1の両端部に配置される燃料電池セル2の第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26を各集電板14に対して接合する接合部として溶接部11を備える。溶接部11では第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の接触電気抵抗が発生せず、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の貫通電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の発電性能を高められるとともに、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の熱伝導抵抗を低減し、ヒータ17の発熱によるエンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)の昇温を効率良く行うことができる。
【0051】
図5に示すように、溶接部11は、各ガス流路8A、8Cを画成する溝底となるリブ平面部21aを集電板14に溶接する。
【0052】
集電板14には第一、第二セパレータ7A、7Cに対する対向面29に温調媒体流路9を画成する複数の溝41を形成する。温調媒体流路9は第一、第二セパレータ7A、7Cの各溝23と集電板14の溝41の間に画成される。
【0053】
集電板14の溝41の開口幅を第一、第二セパレータ7A、7Cの各溝23の開口幅より小さく設定する。これにより、集電板14の各溝41の間に形成されるリブ平面部42aの幅w4は、第一、第二セパレータ7A、7Cの各溝23の間に形成されるリブ平面部21aの幅w3より大きく形成される。
【0054】
第一、第二セパレータ7A、7Cの各溝23の深さd2と集電板14の各溝41の深さd1の比は4:1〜1:2の間に設定する。例えば、d1を0.3mm、d2を0.4mmとする。これにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間を流れる温調媒体の流量が調整され、燃料電池スタック1の温度が適度に保たれる。
【0055】
ヒータ17はエンドプレート16に形成された凹部45に収められ、ヒータ17の端面17Aは絶縁板15に当接する。ヒータ17と凹部45と集電板14の間に熱伝導材として目地埋め材を充填し、ヒータ17まわりの熱接触抵抗を低減する。
【0056】
ヒータ17は複数に分割され、各ヒータ17が溶接部11と燃料電池セル2の積層方向について直線上に並ぶように配置される。絶縁板15と集電板14を介して各溶接部11に対峙するように配置される。
【0057】
第一、第二セパレータ7A、7Cを互いに接合する方法または第一、第二セパレータ7A、7Cを各集電板14に接合する方法としては、アーク溶接、レーザ溶接、ティグ溶接、マグ溶接、ミグ溶接、プラズマ溶接、電子ビーム溶接など種々の溶接形態で実施できる。また、第一、第二セパレータ7A、7Cを集電板14に接合する方法として、ロウ付けを行うことも可能である。
【0058】
溶接部11は、第一、第二セパレータ7A、7Cを各反応側表面25側から加熱して第一、第二セパレータ7A、7Cを各集電板14に溶接する。溶接部11は集電板14に位置するその先端幅w2が、第一、第二セパレータ7A、7Cに位置するその基端幅w1より小さくなる。溶接部11の溶接深さhを大きく設定することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の電気抵抗と熱伝導抵抗が低減される。
【0059】
第一、第二セパレータ7A、7Cと前記集電板14を溶接した後、溶接部11およびその周辺部に熱処理を行うことにより、その表面に不働態皮膜28を形成する。この熱処理を行う方法として、溶接後の第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14を炉内に入れて例えば80℃〜200℃の範囲で加熱する。なお、この熱処理をする方法としては、例えばレーザビームを照射する方法や他の加熱方法を用いても良い。
【0060】
なお、不働態皮膜28を形成する方法としては、他の加熱方法を用いても良い。
【0061】
図6の(a),(b),(c)は、燃料電池スタック1の製造工程を示し、以下これについて説明する。
【0062】
まず、図4の(a)に示すように、基材31に耐食被覆処理層27を形成した金属板32を形成する。
【0063】
次に、図4の(b)に示すように、金属板32をプレス成形して第一、第二セパレータ7A、7Cを形成する。
【0064】
次に、図4の(c)に示すように、第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26を集電板14に溶接部11により接合する。
【0065】
このようにして第一、第二セパレータ7A、7Cを集電板14に一体化したアッセンブリが形成される。
【0066】
なお、燃料電池スタック1の製造工程は、これに限らず、基材31をプレス成型した後に、基材31に耐食被覆処理層27を形成しても良い。
【0067】
以上のように構成されて、次に作用及び効果について説明する。
【0068】
第一、第二セパレータ7A、7Cにおいて電解質膜電極積層体3に対峙する反応側表面25は、高温、高加湿、酸性雰囲気下における耐食性が要求される。これに対処して各反応側表面25に酸化劣化しにくい耐食被覆処理層27を形成することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cの基材となるステンレス鋼が保護され、十分な耐食性が確保される。耐食被覆処理層27を介して各反応側表面25の導電性が維持されることにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと電解質膜電極積層体3の接触電気抵抗が小さく保たれる。
【0069】
溶接部11は溶接時の熱影響により組織変化および応力の残留による耐食性低下が起こる。このため、カソード側の第二セパレータ7Cの反応側表面25にあっては溶接部11とその周辺部で耐食被覆処理層27が損傷されるが、溶接部11およびその周辺部に熱処理を行うことにより、その表面に不働態皮膜28が形成され、溶接時に生じた組織変化および応力の残留による耐食性低下の影響を軽減する。
【0070】
第一、第二セパレータ7A、7Cにおいて温調媒体流路9を画成する背面26は、上記反応側表面25に比べて要求される耐食性が低い。これに対応して、各背面26には耐食被覆処理層を形成しないため、第一、第二セパレータ7A、7Cの両面25、26に耐食被覆処理層を形成する従来構造に比べて耐食被覆処理層27を形成する工数が減るとともに、耐食被覆処理層27に用いられる貴金属の使用量が減らされ、製品のコストダウンがはかれる。
【0071】
各背面26にはこの耐食被覆処理層が形成されないものの、この背面26は燃料電池の作動中に温調媒体流路9を流れる冷却水(温調媒体)にさらされることにより、その表層に酸化皮膜が形成される不働態処理が行われ、その耐食性が高められる。
【0072】
背面26の表層に形成される酸化皮膜は、絶縁性の被膜であるが、第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26を各集電板14に溶接部11により接合するため、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の発電性能を高められる。
【0073】
集電板14に温調媒体流路9を画成する複数の溝41を形成することにより、温調媒体流路9の断面積の設定自由度を拡大する。
【0074】
集電板14の各溝41の間に形成されるリブ平面部42aの幅w4を第一、第二セパレータ7A、7Cのリブ平面部21aの幅w3より大きく形成することにより、溶接時に集電板14のリブ平面部42aに対するリブ平面部21aの位置に若干のズレが生じても、リブ平面部21aがリブ平面部42aに対峙し、両者間の溶接が確実に行われる。
【0075】
なお、集電板14の各溝41を廃止しても温調媒体の流量が十分に確保される場合は、集電板14の第一、第二セパレータ7A、7Cに対峙する部位を平面状に形成しても良い。
【0076】
氷点下雰囲気で燃料電池を起動させるとき、各燃料電池セル2において残存した水が凍結している場合、ガス拡散層9A、9Cの多孔質部が氷によって塞がれ、ガス拡散性が阻害されると、供給した反応ガス量に相当する出力を取り出すことができない。各燃料電池セル2は自己発熱によって昇温するが、燃料電池スタック1の両端部に配置された各燃料電池セル2は熱容量の大きいエンドプレート16等に自己発熱量が奪われるため、中央部の燃料電池セル2に比べて昇温が遅れる。
【0077】
そこで、氷点下雰囲気で燃料電池を起動させる際、ヒータ17を通電するとともに、燃料電池スタック1を発電させ、燃料電池スタック1の昇温を促す。
【0078】
ヒータ17の発熱は集電板14を介して燃料電池スタック1の両端部に伝えられるが、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14を溶接部11により接合するため、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の熱伝導抵抗が低減され、ヒータ17の発熱が効率よくエンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)に伝えられ、燃料電池スタック1の全体が氷点以上に昇温するのに要する時間を短縮できる。
【0079】
第一、第二セパレータ7A、7Cは各ガス流路8A、8Cを画成する溝底となるリブ平面部21aを集電板14に溶接することにより、集電板14との熱伝導抵抗が低減され、ヒータ17の発熱によって燃料電池スタック1の両端部に配置されるガス拡散層9A、9Cの昇温を効率良く行うことができる。また、溶接部11が電解質膜電極積層体3から離れて相対的に腐食しにくい部位に形成されるため、溶接部11によって耐食被覆処理層27が損傷されても、腐食性能の低下を小さくに抑えられる。
【0080】
ヒータ17と溶接部11が燃料電池セル2の積層方向について直線上に並ぶように配置することにより、ヒータ17から燃料電池スタック1の両端部に配置される第一、第二セパレータ7A、7Cへの伝熱経路を短縮し、各燃料電池セル2の昇温を効率良く行うことができる。
【0081】
また、溶接部11により第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14が一体化するため、両者の位置にズレが生じることが防止されるとともに、燃料電池スタック1の部品数を減らし、組み立て性を高められる。
【0082】
(実施例1)
図7に示すように、前記第一、第二セパレータ7A、7Cに各凸部21、22の大きさ、プレス後の反り形状等に応じて直線状のライン溶接部35、点状のドット溶接部36を任意に配置したものを実施例1とする。
【0083】
第一、第二セパレータ7A、7Cによって画成される各流路8A、8C、9が直線状に延びている場合に各凸部21と集電板14が隙間なく接しているが、例えばサーペンタイン形状の場合に各凸部21と集電板14の間に隙間が部分的に生じる可能性がある。こうした第一、第二セパレータ7A、7Cの接触部分の分布状態に応じてライン溶接部35、ドット溶接部36を適宜組み合わせて配置する。
【0084】
第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の接触面積に対して溶接部11の溶接面積(接合面積)が占める割合を溶接面積割合(接合面積割合)とすると、この溶接面積割合を5%以上に設定する。
【0085】
溶接部11は各リブ平面部21aの全域を接合することにより、各リブ平面部21aの間にて隙間腐食が生じることを抑えられる。
【0086】
図8は第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14を所定の荷重で圧縮した状態で、溶接面積割合を変えて第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の貫通電気抵抗を測定した実験結果を示す。この図8の特性図から、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の接触電気抵抗は、溶接面積割合が0%となる溶接無しの状態で大きく、溶接面積割合が5%に達するまで急に低下し、溶接面積割合が5%を超えて100%に達するまで緩やかに低下することがわかる。すなわち、溶接面積割合の5%がこの特性の変化点となる。したがって、溶接面積割合を5%に設定することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の貫通電気抵抗を十分に低減することと、溶接工数を少なくして生産性を高めることを両立できる。
【0087】
図9は第一、第二セパレータ7A、7C間の面圧を変化させて第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の貫通電気抵抗を測定した実験結果を示す。図9において、aの特性は第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14が溶接面積割合50%で溶接されているもの、bの特性は第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14が溶接されていないものである。この図9の特性図から、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14が溶接されるものは、溶接されていないものに比べて抵抗を大幅に低減するとともに、面圧の変化に対する抵抗の変化が小さいことがわかる。
【0088】
(実施例2)
第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の間において電流密度が相対的に高い部位に第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の溶接部11を多く分布させたものを実施例2とする。
【0089】
図10は電解質膜電極積層体3の概略構成図である。図10において、59はガス流路8Aの入口マニホールド、60はガス流路8Aの出口マニホールド、61はガス流路8Cの入口マニホールド、62はガス流路8Cの出口マニホールド、63は温調媒体流路9の入口マニホールド、64は温調媒体流路9の出口マニホールド、65はガスケットである。
【0090】
本実施例では、電流密度が電解質膜電極積層体3の反応面57においてその中央部57Aでその周辺部57Bより高くなることに対応して、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の溶接部11の分布密度を反応面中央部57Aに対峙する領域を反応面周辺部57Bに対峙する領域より高くする。
【0091】
これにより、反応面57における電流密度の分布状況に対応して第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の導電性を高められ、燃料電池スタック1の起電力を効率良く取り出すことができる。
【0092】
(実施例3)
図11に示すように、集電板14に電力を取り出す各ボス部67を備え、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の溶接部11の分布密度をボス部67に対峙する領域57Cを反応面57に対峙する他の領域より高くするものを実施例3とする。
【0093】
複数のボス部67は集電板14の端面から突出し、エンドプレート16を貫通して電池スタック1の起電力を取り出すようになっている。
【0094】
この場合、電流密度が電解質膜電極積層体3の反応面57においてボス部67に対峙する領域57Cで高くなる分布状況に対応して第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の導電性を高めることにより、燃料電池スタック1の起電力を効率良く取り出すことができる。
【0095】
(実施例4)
前記第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と前記集電板14の対向面29を酸性溶液で洗浄することにより表層の酸化皮膜を除去した後、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14を溶接したものを実施例4とする。
【0096】
この場合、第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の酸化皮膜を除去して溶接することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の起電力を効率良く取り出すことができる。
【0097】
(実施例5)
前記第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26の酸化皮膜と前記集電板14の対向面29の酸化皮膜をそれぞれ除去した後、第一、第二セパレータ7A、7Cと前記集電板14を溶接したものを実施例5とする。
【0098】
本実施例における酸化皮膜を除去する方法は、第一、第二セパレータ7A、7Cと前記集電板14の基材を酸性溶液に浸漬し、基材自体に所定の電位をかけることで実施される。
【0099】
この場合も、第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の酸化皮膜を除去して溶接することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の起電力を効率良く取り出すことができる。
【0100】
(実施例6)
前記第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と前記集電板14の対向面29の酸化皮膜を機械加工により削って除去した後、第一、第二セパレータ7A、7Cと前記集電板14を溶接したものを実施例6とする。
【0101】
第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26の表面粗さは温調媒体流路9に囲まれる部位では所定の表面粗さX−2(図12参照)として導電性と熱伝導性を高める一方、ガスケットに対峙する部位では表面粗さをX−2より小さい値にしてシール性を高める構成とする。
【0102】
図12は2つの金属X、Yからなる第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26の表面粗さを変化させて第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の貫通電気抵抗を測定した実験結果を示す。これから金属X、Yの材料違いによる抵抗値の絶対差は存在するが、両金属X、Yにおいて表目粗さに対する抵抗値の感度がある。金属Xは表面粗さX−2にて抵抗値が最小となる。
【0103】
第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の表面粗さを適度に高めることにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の接触電気抵抗を有効に低減することができるとともに、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の接触熱抵抗を低減し、ヒータ17の発熱によってエンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)の昇温を効率良く行うことができる。
【0104】
また、第一、第二セパレータ7A、7Cの集電板14に対する接触面の面粗度を例えばRa1.5程度に設定し、他の部位より粗くしても良い。
【0105】
(実施例7)
前記第一、第二セパレータ7A、7Cと前記集電板14を所定の荷重で圧縮した状態で、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14を溶接したものを実施例7とする。
【0106】
溶接部11から最も離れた反応エリアの任意の位置における第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の貫通電気抵抗が所定値(例えば200mΩcm2)以下となるように溶接部11を配置する。これにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の貫通電気抵抗を有効に低下させることができるとともに、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の接触熱抵抗を低減し、ヒータ17の発熱によってエンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)の昇温を効率良く行うことができる。
【0107】
(実施例8)
図13に示すように、前記第一、第二セパレータ7A、7Cの前記集電板14に対峙する背面26に耐食被覆処理層71を形成するものを実施例8とする。
【0108】
この場合、耐食被覆処理層71によって第一、第二セパレータ7A、7Cの耐食性を高められるとともに、耐食被覆処理層71として導電性の高い例えば金メッキ層を形成することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を有効に低減することができる。
【0109】
(実施例9)
図14に示すように、前記集電板14の前記第一、第二セパレータ7A、7Cに対する対向面29に耐食被覆処理層72を形成するものを実施例9とする。
【0110】
この場合、集電板14の耐食性を高められるとともに、耐食被覆処理層72として導電性の高い例えば金メッキ層を形成することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を有効に低減することができる。
【0111】
(実施例10)
常温雰囲気にてレーザビームを第一、第二セパレータ7A、7Cを各反応側表面25側に照射して溶接部11を形成した後、耐食処理として、レーザビームを溶接部11の表面および溶接部11の周辺部に対して照射することにより、その照射部を80℃〜200℃の範囲で加熱し、その照射部に不働態皮膜28を形成したものを実施例10とする。
【0112】
この耐食処理として、溶接後にレーザビームをその出力を連続的に下げて照射し、その照射部に不働態皮膜28を形成する。このようにレーザビームをその出力を変えて照射することにより溶接処理とその不働態皮膜28を形成する熱処理が連続して行われ、この処理工数を削減できる。さらに、レーザビームにより照射範囲を溶接部11とその周辺に限定しているため、第一、第二セパレータ7A、7Cへの熱影響を抑えられる。
【0113】
また、この耐食処理として、溶接後にレーザビームをその焦点範囲を連続的に広げて照射し、その照射部に不働態皮膜28を形成しても良い。この場合、レーザビームをその焦点範囲を変えて照射することにより溶接処理とその不働態皮膜28を形成する熱処理が連続して行われ、この処理工数を削減できる。さらに、レーザビームにより照射範囲を溶接部11とその周辺部に限定しているため、第一、第二セパレータ7A、7Cへの熱影響を抑えられる。
【0114】
(実施例11)
図15に示す実施例は、単一のヒータ17を各集電板14とエンドプレート16の間に介装し、各集電板14にヒータ17が収まる凹部45が形成される一方、エンドプレート16にヒータ17が収まる凹部46が形成されるものである。
【0115】
ヒータ17は図10に示す電解質膜電極積層体3の反応面中央部57Aに対峙するように配置され、ヒータ17の発熱によってこの反応面中央部57Aの昇温を促すようになっている。
【0116】
(実施例12)
図16に示す実施例は、複数のヒータ17を各集電板14とエンドプレート16の間に介装するものである。
【0117】
各ヒータ17は各溶接部11に対峙し、ヒータ17と溶接部11が燃料電池セル2の積層方向について直線上に並ぶように配置されることにより、ヒータ17から燃料電池スタック1の両端部に配置される第一、第二セパレータ7A、7Cへの伝熱経路を短縮し、各燃料電池セル2の昇温を効率良く行うことができる。
【0118】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0119】
(ア)対の電極触媒層5A、5Cで電解質膜4を挟んで構成した電解質膜電極積層体3をさらにその両側からガス流路8A、8Cを画成する第一、第二セパレータ7A、7Cで挟むことによって燃料電池セル2を構成し、積層された複数の燃料電池セル2を挟持する対の集電板14を備え、この集電板14を介して燃料電池セル2の起電力を取り出す燃料電池スタック1において、第一、第二セパレータ7A、7Cを集電板14との接触部位の少なくとも一部を互いに接合する接合部(溶接部11)を備える。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の貫通電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の発電性能を高められる。
【0120】
(イ)集電板14を加熱するヒータ17を備え、第一、第二セパレータ7A、7Cを集電板14に接合する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の発電性能を高められるとともに、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の熱伝導抵抗を低減し、ヒータ17の発熱によってエンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)の昇温を効率良く行うことができる。
【0121】
(ウ)第一、第二セパレータ7A、7Cを集電板14に溶接し、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の接触面積に対する溶接面積割合を5%以上に設定する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cの抵抗を低減し、燃料電池の発電性能を高められる。
【0122】
(エ)発電時に第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の間において電流密度が相対的に高い部位に第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の溶接部11を多く分布させる。このため、電流密度の分布状況に対応して第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の間の導電性を高められ、燃料電池スタック1の起電力を効率良く取り出すことができる。
【0123】
(オ)第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の溶接部11の分布密度を電解質膜電極積層体3の反応面中央部57Aに対峙する領域を反応面周辺部57Bに対峙する領域より高くする。このため、電解質膜電極積層体3の反応面57における電流密度の分布状況に対応して第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の導電性を高められ、燃料電池スタック1の起電力を効率良く取り出すことができる。
【0124】
(カ)集電板14に電力を取り出すボス部67を備え、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の溶接部11の分布密度をボス部67に対峙する領域57Cで他の領域より高くする。このため、集電板14における電流密度の分布状況に対応して第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の導電性を高められ、燃料電池スタック1の起電力を効率良く取り出すことができる。
【0125】
(キ)第一、第二セパレータ7A、7Cを加熱して集電板14に溶接する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の溶接を確実に行うことができる。
【0126】
(ク)第一、第二セパレータ7A、7Cの各ガス流路8A、8Cを画成する溝底となるリブ平面部21aを集電板14に溶接する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14との熱伝導抵抗を低減し、燃料電池スタック1の両端部に配置されるガス拡散層9A、9Cの昇温を効率良く行うことができる。また、溶接部11が電解質膜電極積層体3から離れて相対的に腐食しにくい部位に形成されることにより、溶接部11によって耐食被覆処理層27が損傷されても、腐食性能の低下を小さくに抑えられる。
【0127】
(ケ)集電板14に温調媒体流路9を画成する溝41を形成する。このため、温調媒体流路9の断面積の設定自由度が拡大し、両端部の燃料電池セル2の温度調整の最適化が可能となる。
【0128】
(コ)集電板14の各溝41の間に形成されるリブ平面部42aの幅w4を第一、第二セパレータ7A、7Cの各溝23の間に形成されるリブ平面部21aの幅w3より大きく形成する。このため、溶接時に集電板14のリブ平面部42aに対するリブ平面部21aの位置に若干のズレが生じても、リブ平面部21aがリブ平面部42aに対峙し、溶接が確実に行われる。
【0129】
(サ)第一、第二セパレータ7A、7Cの電解質膜電極積層体3に対峙する反応側表面25に耐食被覆処理層27を形成する。このため、耐食被覆処理層27によって第一、第二セパレータ7A、7Cの耐食性を確保するとともに、第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26に耐食被覆処理層27を形成する工数を減らして製品のコストダウンがはかれる。第一、第二セパレータ7A、7Cを集電板14に接合したため、第一、第二セパレータ7A、7Cは耐食被覆処理層27が形成されない背面26と集電板14間の電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の発電性能を高められる。
【0130】
(シ)金属製の第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の間に温調媒体流路9を形成し、互いに対峙する第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の少なくとも一方に耐食被覆処理層71を形成する。このため、耐食被覆処理層71によって第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の耐食性を高められるとともに、導電性の高い耐食被覆処理層71を形成することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を低減することができる。
【0131】
(ス)第一、第二セパレータ7A、7Cを加熱して集電板14に溶接した後、少なくとも溶接部11の表面に耐食処理を施す。このため、溶接部11が形成されることによって耐食被覆処理層27が損傷されるが、少なくとも溶接部11の表面に耐食処理を施すことにより、ここに腐食が生じることを抑えられ、溶接部11の腐食による金属イオンの溶出を防止できる。
【0132】
(セ)第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14同士を所定の荷重で圧縮した状態で両者を溶接する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の発電性能を高められるとともに、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の接触熱抵抗を低減し、ヒータ17の発熱によってエンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)の昇温を効率良く行うことができる。
【0133】
(ソ)第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の少なくとも一方の表層の酸化皮膜を除去した後に両者を溶接する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を低減することができる。
【0134】
(タ)第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の少なくとも一方を酸性溶液で洗浄して酸化皮膜を除去した後に両者を溶接する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を低減することができる。
【0135】
(チ)第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の少なくとも一方を酸性溶液中で所定の電位をかけて酸化皮膜を除去した後に両者を溶接する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を低減することができる。
【0136】
(ツ)第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の少なくとも一方の酸化皮膜を削って除去した後に両者を溶接する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の発電性能を高められるとともに、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の熱伝導抵抗を低減し、ヒータ17の発熱によってエンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)の昇温を効率良く行うことができる。
【0137】
(テ)第一、第二セパレータ7A、7Cを集電板14に接合する接合部(溶接部11)をヒータ17と燃料電池セル2の積層方向について直線上に並ぶように配置する。このため、ヒータ17から燃料電池スタック1の両端部に配置される第一、第二セパレータ7A、7Cへの伝熱経路を短縮し、各燃料電池セル2の昇温を効率良く行うことができる。
【0138】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の
変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0139】
1 燃料電池スタック
2 燃料電池セル
3 電解質膜電極積層体
4 電解質膜
5A、5C 電極触媒層
7A、7C 第一、第二セパレータ
8A、8C ガス流路
9 温調媒体流路
11 溶接部(接合部)
14 集電板
15 絶縁板
16 エンドプレート
17 ヒータ
25 反応側表面
26 背面
27 耐食被覆処理層
21a リブ平面部
41 溝
42a リブ平面部
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタック並びにその製造方法に関し、特に、セパレータを金属板で
構成するのに好適な燃料電池スタック並びにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜を備え、この電解質膜を挟んで設けられる一対の電極のうちアノードに燃料ガスを供給するとともに、他方のカソードに酸化剤ガスを供給し、電解質膜の表面で生じる電気化学反応を利用して発電するものである。
【0003】
1つの燃料電池セルは、一対の電極触媒層で電解質膜を挟んで構成する電解質膜電極積層体(MEA)と、電解質膜電極積層体の両側にガス流路を画成するセパレータとを備える。
【0004】
セパレータは燃料ガスあるいは酸化剤ガスを流通させるガス流路を画成するとともに、温調媒体を流通させる温調媒体流路を画成する。
【0005】
また、セパレータは、各燃料電池セルの電極触媒層から出力を取り出す導電経路を兼ねるため、全体が導電性の材料で構成される。
【0006】
燃料電池スタックは、必要とする出力電圧に相当する数の燃料電池セルが直列に積層されるとともに、積層方向の両端に対の集電板が配置されて、各燃料電池セルの発電出力が各集電板から取り出される。
【0007】
従来、燃料電池用のセパレータは耐食性と導電性を兼ね備えたカーボン製のものが用いられてきたが、近年、金属製セパレータを用いて製品のコストダウンをはかるとともに、セパレータを薄肉化して出力密度を向上させる燃料電池構造が、例えば特許文献1〜4にあるように、種々提案されている。
【0008】
特許文献1には、ステンレス鋼板の表面にクラッドされたチタン又はチタン合金による耐食被覆処理層を形成したセパレータが開示されている。
【0009】
特許文献2には、ステンレス鋼板の表面に貴金属メッキ層からなる耐食被覆処理層が形成したセパレータが開示されている。
【0010】
特許文献3には、ステンレス鋼板の表面にチタンコーティング層からなる耐食被覆処理層を形成したセパレータが開示されている。
【0011】
特許文献4には、金属板の表面に貴金属メッキ層からなる耐食被覆処理層を形成したセパレータが開示されている。
【0012】
特許文献5には、燃料電池スタックを加熱するヒータを備えるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−002411号公報
【特許文献2】特開2005−190968号公報
【特許文献3】特開2005−276807号公報
【特許文献4】特開2005−317479号公報
【特許文献5】特開2004−111200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、このような従来の燃料電池スタックにあっては、金属製セパレータと集電板が互いに接触する部位を持つため、この間の導電性または熱伝導性が低下し、発電性能が低下したり、ヒータ性能が低下する可能性があった。
【0015】
また、金属製セパレータや集電板の表面に耐食被覆処理層が形成される場合、高価な貴金属の使用量が増え、製品のコストアップを招くという問題点があった。
【0016】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、製品のコストアップを抑え、発電性能が高い燃料電池のスタック並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、対の電極触媒層で電解質膜を挟んで構成した電解質膜電極積層体をさらにその両側からガス流路を画成する金属製セパレータで挟むことによって燃料電池セルを構成し、これら積層された複数の燃料電池セルを挟持する対の集電板を備え、この集電板を介して燃料電池セルの起電力を取り出す燃料電池スタック並びにその製造方法に適用する。
【0018】
そして、セパレータと集電板との接触部位の少なくとも一部を互いに接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、パレータを集電板に接合する接合部によってセパレータと集電板の間の貫通電気抵抗を低減し、燃料電池スタックの発電性能を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態を示す燃料電池スタックの斜視図。
【図2】同じく燃料電池スタックの側面図。
【図3】同じく燃料電池スタックの断面図。
【図4】同じく第一、第二セパレータの断面図。
【図5】同じく集電板と第一、第二セパレータの断面図。
【図6】同じく集電板と第一、第二セパレータの製造工程を示す図。
【図7】同じく集電板と第一、第二セパレータの斜視図。
【図8】同じく溶接面積割合と第一、第二セパレータと集電板の間の貫通電気抵抗の関係を示す特性図。
【図9】同じく面圧と第一、第二セパレータと集電板の間の貫通電気抵抗の関係を示す特性図。
【図10】同じく電解質膜電極積層体の構成図。
【図11】同じく集電板と電解質膜電極積層体の斜視図。
【図12】同じく背面の表面粗さと第一、第二セパレータの貫通電気抵抗の関係を示す特性図。
【図13】同じく集電板と第一、第二セパレータの断面図。
【図14】同じく集電板と第一、第二セパレータの断面図。
【図15】同じく燃料電池スタックの断面図。
【図16】同じく集電板と第一、第二セパレータの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の燃料電池スタック並びにその製造方法の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの斜視図であり、図2は燃料電池スタックの側面図である。図1、図2に示すように、燃料電池スタック1は、複数の燃料電池セル2を直列に積層するとともに、積層方向の両端に対の集電板14と絶縁板15とエンドプレート16を配置して、複数本のタイロッド13が各エンドプレート16を引き寄せることにより各燃料電池セル2の積層方向に締め付け荷重が付与される。
【0023】
なお、自動車に搭載される燃料電池にあっては、燃料電池スタック1は例えば300〜400個の燃料電池セル2が直列に積層される。
【0024】
一方のエンドプレート16にはカソードガス入口51、温調媒体入口52、アノードガス入口53、カソードガス出口54、温調媒体出口55、アノード出口56が開口し、これらに図示しない配管が接続される。
【0025】
各集電板14は、例えば銅板等のガス不透過な金属部材によって形成され、それぞれの出力端子14A、14Bを介して燃料スタック1で生じた起電力が取り出される。
【0026】
図3に示すように、燃料電池スタック1の両端部に配置される燃料電池セル2の第一、第二セパレータ(エンドセパレータ)7A、7Cは各集電板14に当接し、燃料電池スタック1の起電力が各集電板14に導かれる。
【0027】
各集電板14と各エンドプレート16の間に絶縁板15が介装され、両者間が絶縁される。
【0028】
なお、各エンドプレート16が絶縁材で形成されている場合、絶縁板15を廃止することが可能である。また、各エンドプレートを導電材で形成し、集電板の機能を持たせることも可能である。
【0029】
燃料電池スタック1はその両端部で各集電板14を加熱する対の電熱ヒータ17を備える。ヒータ17は図示しないリード線を介してコントローラに接続される。コントローラは燃料電池の冷間時起動等に各ヒータ17を通電し、ヒータ17の発熱によって集電板14を加熱し、エンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)を速やかに昇温することで燃料電池スタック1の発電性能を速やかに高めるようになっている。
【0030】
図3に示すように、単位ユニットとして設けられる燃料電池セル2は、一対の電極触媒層5A、5Cで電解質膜4を挟んで構成した電解質膜電極積層体(MEA)3と、電解質膜電極積層体3の両側にガス流路8A、8Cを画成する第一、第二セパレータ(セパレータ)7A、7Cとを備える。
【0031】
電解質膜電極積層体3は、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜4を備え、この電解質膜4の反応領域の両面に各極の電極触媒層5A、5Cを配置し、さらにこれらを挟持するように各極のガス拡散層6A、6Cを配置して構成される。電極触媒層5A、5Cは例えば白金または白金と他の金属からなる合金によって形成される。ガス拡散層6A、6Cは例えばカーボンクロス、カーボンペーパ、あるいはカーボンフェルト等、ガス拡散性と導電性を有する材料によって構成される。
【0032】
燃料電池は、電解質膜4を挟んで設けられる一方のアノードに燃料ガスを供給するとともに、他方のカソードに酸化剤ガスを供給することにより、電解質膜4の表面で下記の(1)、(2)式で表される反応がそれぞれ行われて発電する。
アノード反応:H2 → 2H+ + 2e− …(1)
カソード反応:2H+ + 2e− + (1/2)O2 → H2O …(2)
電解質膜電極積層体3の両側には電解質膜4の反応領域を囲む周辺領域にガスケットが配置され、第一、第二セパレータ7A、7Cはこのガスケット18A、18Cを介して電解質膜電極積層体3を挟持する。
【0033】
第一セパレータ7Aとガス拡散層6Aの間にアノードガスを導くガス流路8Aが画成される。アノードガスとして例えば水素ガスを図示しない入口マニホールドからガス流路8Aに導入し、このガス流路8Aを通してガス拡散層6Aに供給し、反応に利用されなかったガスを出口マニホールドに排出する。
【0034】
第二セパレータ7Cとガス拡散層6Cの間にカソードガスを導くガス流路8Cが画成される。カソードガスとして例えば空気を入口マニホールドからガス流路8Cに導入して、ガス流路8Cを通してガス拡散層6Cに供給し、反応に利用されなかったガスを出口マニホールドに排出する。
【0035】
第一、第二セパレータ7A、7Cの間には温調媒体を流通させる温調媒体流路9が画成される。温調媒体流路9は温調媒体として例えば冷却水を入口マニホールドから導入して第一、第二セパレータ7A、7Cの間を通して出口マニホールドに排出する。温調媒体は第一、第二セパレータ7A、7Cを介して反応熱を吸収し、燃料電池スタック1を冷却する。
【0036】
また、第一、第二セパレータ7A、7Cの間にも図示しないガスケットが介装され、温調媒体の漏洩防止がはられる。
【0037】
なお、温調媒体は、高い電気抵抗値を有することが望ましく、自動車に搭載される燃料電池にあっては、寒冷地でも凍結しない不凍液を用いる。
【0038】
金属板からなる第一、第二セパレータ7A、7Cは、燃料電池の作動条件や電池内環境を考慮して、例えば、SUS316Lのステンレス鋼が使用される。
【0039】
なお、第一、第二セパレータ7A、7Cの基材は、これに限らず、Fe、Ni、Crの少なくとも一つ以上を主成分とするステンレス鋼であるか、Al、Ti、Cu、Zn、Mg、Mn、Pb、Au、Ag、Pt、Pd、Ru、W、Ni、Cr、Sn、Feの単体もしくはこれらを主成分とする合金としても良い。
【0040】
第一、第二セパレータ7A、7Cは、流路等の形状を型彫りした金型により金属板をプレス成形することにより製作される。この金属板の厚さは、例えば、0.1〜1.0[mm]程度に設定される。
【0041】
図4は第一、第二セパレータ7A、7C単体の断面図である。第一、第二セパレータ7A、7Cは波板状に形成され、ガス拡散層6A、6Cに隣接する凸部21と、隣接する燃料電池セル2のセパレータ7A、7Cと隣接する凸部22とが交互に並ぶように形成される。各凸部21、22の間に画成される各ガス流路8A、8C、温調媒体流路9の流路幅は例えば、0.1〜5.0[mm]程度に設定される。
【0042】
第一、第二セパレータ7A、7Cは電解質膜電極積層体3に対峙する反応側表面25と、その反対側の背面26とを有し、各反応側表面25によって各ガス流路8A、8Cが画成される一方、背面26によって温調媒体流路9が画成される。
【0043】
ステンレス鋼を基材とする第一、第二セパレータ7A、7Cは、各反応側表面25のみに耐食被覆処理層27を形成し、各背面26には耐食被覆処理層を形成しないものとする。
【0044】
反応側表面25に施される耐食被覆処理層27は、例えば金(Au)からなり、その厚さを5μm程度とする金メッキ層を形成し、燃料電池特有の強酸性環境、特に硫酸酸性環境での耐食性を確保する。
【0045】
なお、反応側表面25に施される耐食被覆処理層27は、金メッキ層に限らず、耐食性向上のための、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)を用いたコーティングもしくは表面改質処理によって形成しても良い。
【0046】
一方、第一、第二セパレータ7A、7Cの各背面26にはこの耐食被覆処理層が形成されず、その表層に酸化皮膜が形成される。隣接する燃料電池セル2の第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26同士を溶接部10により接合する。この溶接部10は電極触媒層5A、5Cに挟まれる反応領域に形成される。
【0047】
背面26の表層に形成される酸化皮膜は、絶縁性を持つ被膜であるが、隣接する燃料電池セル2の第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26同士を溶接部10により接合する。溶接部10では第一、第二セパレータ7A、7C間の接触電気抵抗が発生せず、第一、第二セパレータ7A、7Cの貫通電気抵抗を低減し、燃料電池の発電性能を高められる。
【0048】
金属板をプレス成形することにより形成される各凸部21、22は、平面状に延びるリブ平面部21a、22aと、このリブ平面部21a、22aの端部で円弧状に曲折するリブ角部21b、22bを有する。
【0049】
溶接部10は、各ガス流路8A、8Cを画成する溝底となるリブ平面部21a同士を溶接する。
【0050】
燃料電池スタック1の両端部に配置される燃料電池セル2の第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26を各集電板14に対して接合する接合部として溶接部11を備える。溶接部11では第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の接触電気抵抗が発生せず、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の貫通電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の発電性能を高められるとともに、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の熱伝導抵抗を低減し、ヒータ17の発熱によるエンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)の昇温を効率良く行うことができる。
【0051】
図5に示すように、溶接部11は、各ガス流路8A、8Cを画成する溝底となるリブ平面部21aを集電板14に溶接する。
【0052】
集電板14には第一、第二セパレータ7A、7Cに対する対向面29に温調媒体流路9を画成する複数の溝41を形成する。温調媒体流路9は第一、第二セパレータ7A、7Cの各溝23と集電板14の溝41の間に画成される。
【0053】
集電板14の溝41の開口幅を第一、第二セパレータ7A、7Cの各溝23の開口幅より小さく設定する。これにより、集電板14の各溝41の間に形成されるリブ平面部42aの幅w4は、第一、第二セパレータ7A、7Cの各溝23の間に形成されるリブ平面部21aの幅w3より大きく形成される。
【0054】
第一、第二セパレータ7A、7Cの各溝23の深さd2と集電板14の各溝41の深さd1の比は4:1〜1:2の間に設定する。例えば、d1を0.3mm、d2を0.4mmとする。これにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間を流れる温調媒体の流量が調整され、燃料電池スタック1の温度が適度に保たれる。
【0055】
ヒータ17はエンドプレート16に形成された凹部45に収められ、ヒータ17の端面17Aは絶縁板15に当接する。ヒータ17と凹部45と集電板14の間に熱伝導材として目地埋め材を充填し、ヒータ17まわりの熱接触抵抗を低減する。
【0056】
ヒータ17は複数に分割され、各ヒータ17が溶接部11と燃料電池セル2の積層方向について直線上に並ぶように配置される。絶縁板15と集電板14を介して各溶接部11に対峙するように配置される。
【0057】
第一、第二セパレータ7A、7Cを互いに接合する方法または第一、第二セパレータ7A、7Cを各集電板14に接合する方法としては、アーク溶接、レーザ溶接、ティグ溶接、マグ溶接、ミグ溶接、プラズマ溶接、電子ビーム溶接など種々の溶接形態で実施できる。また、第一、第二セパレータ7A、7Cを集電板14に接合する方法として、ロウ付けを行うことも可能である。
【0058】
溶接部11は、第一、第二セパレータ7A、7Cを各反応側表面25側から加熱して第一、第二セパレータ7A、7Cを各集電板14に溶接する。溶接部11は集電板14に位置するその先端幅w2が、第一、第二セパレータ7A、7Cに位置するその基端幅w1より小さくなる。溶接部11の溶接深さhを大きく設定することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の電気抵抗と熱伝導抵抗が低減される。
【0059】
第一、第二セパレータ7A、7Cと前記集電板14を溶接した後、溶接部11およびその周辺部に熱処理を行うことにより、その表面に不働態皮膜28を形成する。この熱処理を行う方法として、溶接後の第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14を炉内に入れて例えば80℃〜200℃の範囲で加熱する。なお、この熱処理をする方法としては、例えばレーザビームを照射する方法や他の加熱方法を用いても良い。
【0060】
なお、不働態皮膜28を形成する方法としては、他の加熱方法を用いても良い。
【0061】
図6の(a),(b),(c)は、燃料電池スタック1の製造工程を示し、以下これについて説明する。
【0062】
まず、図4の(a)に示すように、基材31に耐食被覆処理層27を形成した金属板32を形成する。
【0063】
次に、図4の(b)に示すように、金属板32をプレス成形して第一、第二セパレータ7A、7Cを形成する。
【0064】
次に、図4の(c)に示すように、第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26を集電板14に溶接部11により接合する。
【0065】
このようにして第一、第二セパレータ7A、7Cを集電板14に一体化したアッセンブリが形成される。
【0066】
なお、燃料電池スタック1の製造工程は、これに限らず、基材31をプレス成型した後に、基材31に耐食被覆処理層27を形成しても良い。
【0067】
以上のように構成されて、次に作用及び効果について説明する。
【0068】
第一、第二セパレータ7A、7Cにおいて電解質膜電極積層体3に対峙する反応側表面25は、高温、高加湿、酸性雰囲気下における耐食性が要求される。これに対処して各反応側表面25に酸化劣化しにくい耐食被覆処理層27を形成することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cの基材となるステンレス鋼が保護され、十分な耐食性が確保される。耐食被覆処理層27を介して各反応側表面25の導電性が維持されることにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと電解質膜電極積層体3の接触電気抵抗が小さく保たれる。
【0069】
溶接部11は溶接時の熱影響により組織変化および応力の残留による耐食性低下が起こる。このため、カソード側の第二セパレータ7Cの反応側表面25にあっては溶接部11とその周辺部で耐食被覆処理層27が損傷されるが、溶接部11およびその周辺部に熱処理を行うことにより、その表面に不働態皮膜28が形成され、溶接時に生じた組織変化および応力の残留による耐食性低下の影響を軽減する。
【0070】
第一、第二セパレータ7A、7Cにおいて温調媒体流路9を画成する背面26は、上記反応側表面25に比べて要求される耐食性が低い。これに対応して、各背面26には耐食被覆処理層を形成しないため、第一、第二セパレータ7A、7Cの両面25、26に耐食被覆処理層を形成する従来構造に比べて耐食被覆処理層27を形成する工数が減るとともに、耐食被覆処理層27に用いられる貴金属の使用量が減らされ、製品のコストダウンがはかれる。
【0071】
各背面26にはこの耐食被覆処理層が形成されないものの、この背面26は燃料電池の作動中に温調媒体流路9を流れる冷却水(温調媒体)にさらされることにより、その表層に酸化皮膜が形成される不働態処理が行われ、その耐食性が高められる。
【0072】
背面26の表層に形成される酸化皮膜は、絶縁性の被膜であるが、第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26を各集電板14に溶接部11により接合するため、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の発電性能を高められる。
【0073】
集電板14に温調媒体流路9を画成する複数の溝41を形成することにより、温調媒体流路9の断面積の設定自由度を拡大する。
【0074】
集電板14の各溝41の間に形成されるリブ平面部42aの幅w4を第一、第二セパレータ7A、7Cのリブ平面部21aの幅w3より大きく形成することにより、溶接時に集電板14のリブ平面部42aに対するリブ平面部21aの位置に若干のズレが生じても、リブ平面部21aがリブ平面部42aに対峙し、両者間の溶接が確実に行われる。
【0075】
なお、集電板14の各溝41を廃止しても温調媒体の流量が十分に確保される場合は、集電板14の第一、第二セパレータ7A、7Cに対峙する部位を平面状に形成しても良い。
【0076】
氷点下雰囲気で燃料電池を起動させるとき、各燃料電池セル2において残存した水が凍結している場合、ガス拡散層9A、9Cの多孔質部が氷によって塞がれ、ガス拡散性が阻害されると、供給した反応ガス量に相当する出力を取り出すことができない。各燃料電池セル2は自己発熱によって昇温するが、燃料電池スタック1の両端部に配置された各燃料電池セル2は熱容量の大きいエンドプレート16等に自己発熱量が奪われるため、中央部の燃料電池セル2に比べて昇温が遅れる。
【0077】
そこで、氷点下雰囲気で燃料電池を起動させる際、ヒータ17を通電するとともに、燃料電池スタック1を発電させ、燃料電池スタック1の昇温を促す。
【0078】
ヒータ17の発熱は集電板14を介して燃料電池スタック1の両端部に伝えられるが、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14を溶接部11により接合するため、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の熱伝導抵抗が低減され、ヒータ17の発熱が効率よくエンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)に伝えられ、燃料電池スタック1の全体が氷点以上に昇温するのに要する時間を短縮できる。
【0079】
第一、第二セパレータ7A、7Cは各ガス流路8A、8Cを画成する溝底となるリブ平面部21aを集電板14に溶接することにより、集電板14との熱伝導抵抗が低減され、ヒータ17の発熱によって燃料電池スタック1の両端部に配置されるガス拡散層9A、9Cの昇温を効率良く行うことができる。また、溶接部11が電解質膜電極積層体3から離れて相対的に腐食しにくい部位に形成されるため、溶接部11によって耐食被覆処理層27が損傷されても、腐食性能の低下を小さくに抑えられる。
【0080】
ヒータ17と溶接部11が燃料電池セル2の積層方向について直線上に並ぶように配置することにより、ヒータ17から燃料電池スタック1の両端部に配置される第一、第二セパレータ7A、7Cへの伝熱経路を短縮し、各燃料電池セル2の昇温を効率良く行うことができる。
【0081】
また、溶接部11により第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14が一体化するため、両者の位置にズレが生じることが防止されるとともに、燃料電池スタック1の部品数を減らし、組み立て性を高められる。
【0082】
(実施例1)
図7に示すように、前記第一、第二セパレータ7A、7Cに各凸部21、22の大きさ、プレス後の反り形状等に応じて直線状のライン溶接部35、点状のドット溶接部36を任意に配置したものを実施例1とする。
【0083】
第一、第二セパレータ7A、7Cによって画成される各流路8A、8C、9が直線状に延びている場合に各凸部21と集電板14が隙間なく接しているが、例えばサーペンタイン形状の場合に各凸部21と集電板14の間に隙間が部分的に生じる可能性がある。こうした第一、第二セパレータ7A、7Cの接触部分の分布状態に応じてライン溶接部35、ドット溶接部36を適宜組み合わせて配置する。
【0084】
第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の接触面積に対して溶接部11の溶接面積(接合面積)が占める割合を溶接面積割合(接合面積割合)とすると、この溶接面積割合を5%以上に設定する。
【0085】
溶接部11は各リブ平面部21aの全域を接合することにより、各リブ平面部21aの間にて隙間腐食が生じることを抑えられる。
【0086】
図8は第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14を所定の荷重で圧縮した状態で、溶接面積割合を変えて第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の貫通電気抵抗を測定した実験結果を示す。この図8の特性図から、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の接触電気抵抗は、溶接面積割合が0%となる溶接無しの状態で大きく、溶接面積割合が5%に達するまで急に低下し、溶接面積割合が5%を超えて100%に達するまで緩やかに低下することがわかる。すなわち、溶接面積割合の5%がこの特性の変化点となる。したがって、溶接面積割合を5%に設定することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の貫通電気抵抗を十分に低減することと、溶接工数を少なくして生産性を高めることを両立できる。
【0087】
図9は第一、第二セパレータ7A、7C間の面圧を変化させて第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の貫通電気抵抗を測定した実験結果を示す。図9において、aの特性は第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14が溶接面積割合50%で溶接されているもの、bの特性は第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14が溶接されていないものである。この図9の特性図から、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14が溶接されるものは、溶接されていないものに比べて抵抗を大幅に低減するとともに、面圧の変化に対する抵抗の変化が小さいことがわかる。
【0088】
(実施例2)
第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の間において電流密度が相対的に高い部位に第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の溶接部11を多く分布させたものを実施例2とする。
【0089】
図10は電解質膜電極積層体3の概略構成図である。図10において、59はガス流路8Aの入口マニホールド、60はガス流路8Aの出口マニホールド、61はガス流路8Cの入口マニホールド、62はガス流路8Cの出口マニホールド、63は温調媒体流路9の入口マニホールド、64は温調媒体流路9の出口マニホールド、65はガスケットである。
【0090】
本実施例では、電流密度が電解質膜電極積層体3の反応面57においてその中央部57Aでその周辺部57Bより高くなることに対応して、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の溶接部11の分布密度を反応面中央部57Aに対峙する領域を反応面周辺部57Bに対峙する領域より高くする。
【0091】
これにより、反応面57における電流密度の分布状況に対応して第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の導電性を高められ、燃料電池スタック1の起電力を効率良く取り出すことができる。
【0092】
(実施例3)
図11に示すように、集電板14に電力を取り出す各ボス部67を備え、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の溶接部11の分布密度をボス部67に対峙する領域57Cを反応面57に対峙する他の領域より高くするものを実施例3とする。
【0093】
複数のボス部67は集電板14の端面から突出し、エンドプレート16を貫通して電池スタック1の起電力を取り出すようになっている。
【0094】
この場合、電流密度が電解質膜電極積層体3の反応面57においてボス部67に対峙する領域57Cで高くなる分布状況に対応して第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の導電性を高めることにより、燃料電池スタック1の起電力を効率良く取り出すことができる。
【0095】
(実施例4)
前記第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と前記集電板14の対向面29を酸性溶液で洗浄することにより表層の酸化皮膜を除去した後、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14を溶接したものを実施例4とする。
【0096】
この場合、第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の酸化皮膜を除去して溶接することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の起電力を効率良く取り出すことができる。
【0097】
(実施例5)
前記第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26の酸化皮膜と前記集電板14の対向面29の酸化皮膜をそれぞれ除去した後、第一、第二セパレータ7A、7Cと前記集電板14を溶接したものを実施例5とする。
【0098】
本実施例における酸化皮膜を除去する方法は、第一、第二セパレータ7A、7Cと前記集電板14の基材を酸性溶液に浸漬し、基材自体に所定の電位をかけることで実施される。
【0099】
この場合も、第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の酸化皮膜を除去して溶接することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の起電力を効率良く取り出すことができる。
【0100】
(実施例6)
前記第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と前記集電板14の対向面29の酸化皮膜を機械加工により削って除去した後、第一、第二セパレータ7A、7Cと前記集電板14を溶接したものを実施例6とする。
【0101】
第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26の表面粗さは温調媒体流路9に囲まれる部位では所定の表面粗さX−2(図12参照)として導電性と熱伝導性を高める一方、ガスケットに対峙する部位では表面粗さをX−2より小さい値にしてシール性を高める構成とする。
【0102】
図12は2つの金属X、Yからなる第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26の表面粗さを変化させて第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の貫通電気抵抗を測定した実験結果を示す。これから金属X、Yの材料違いによる抵抗値の絶対差は存在するが、両金属X、Yにおいて表目粗さに対する抵抗値の感度がある。金属Xは表面粗さX−2にて抵抗値が最小となる。
【0103】
第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の表面粗さを適度に高めることにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の接触電気抵抗を有効に低減することができるとともに、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の接触熱抵抗を低減し、ヒータ17の発熱によってエンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)の昇温を効率良く行うことができる。
【0104】
また、第一、第二セパレータ7A、7Cの集電板14に対する接触面の面粗度を例えばRa1.5程度に設定し、他の部位より粗くしても良い。
【0105】
(実施例7)
前記第一、第二セパレータ7A、7Cと前記集電板14を所定の荷重で圧縮した状態で、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14を溶接したものを実施例7とする。
【0106】
溶接部11から最も離れた反応エリアの任意の位置における第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の貫通電気抵抗が所定値(例えば200mΩcm2)以下となるように溶接部11を配置する。これにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の貫通電気抵抗を有効に低下させることができるとともに、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の接触熱抵抗を低減し、ヒータ17の発熱によってエンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)の昇温を効率良く行うことができる。
【0107】
(実施例8)
図13に示すように、前記第一、第二セパレータ7A、7Cの前記集電板14に対峙する背面26に耐食被覆処理層71を形成するものを実施例8とする。
【0108】
この場合、耐食被覆処理層71によって第一、第二セパレータ7A、7Cの耐食性を高められるとともに、耐食被覆処理層71として導電性の高い例えば金メッキ層を形成することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を有効に低減することができる。
【0109】
(実施例9)
図14に示すように、前記集電板14の前記第一、第二セパレータ7A、7Cに対する対向面29に耐食被覆処理層72を形成するものを実施例9とする。
【0110】
この場合、集電板14の耐食性を高められるとともに、耐食被覆処理層72として導電性の高い例えば金メッキ層を形成することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を有効に低減することができる。
【0111】
(実施例10)
常温雰囲気にてレーザビームを第一、第二セパレータ7A、7Cを各反応側表面25側に照射して溶接部11を形成した後、耐食処理として、レーザビームを溶接部11の表面および溶接部11の周辺部に対して照射することにより、その照射部を80℃〜200℃の範囲で加熱し、その照射部に不働態皮膜28を形成したものを実施例10とする。
【0112】
この耐食処理として、溶接後にレーザビームをその出力を連続的に下げて照射し、その照射部に不働態皮膜28を形成する。このようにレーザビームをその出力を変えて照射することにより溶接処理とその不働態皮膜28を形成する熱処理が連続して行われ、この処理工数を削減できる。さらに、レーザビームにより照射範囲を溶接部11とその周辺に限定しているため、第一、第二セパレータ7A、7Cへの熱影響を抑えられる。
【0113】
また、この耐食処理として、溶接後にレーザビームをその焦点範囲を連続的に広げて照射し、その照射部に不働態皮膜28を形成しても良い。この場合、レーザビームをその焦点範囲を変えて照射することにより溶接処理とその不働態皮膜28を形成する熱処理が連続して行われ、この処理工数を削減できる。さらに、レーザビームにより照射範囲を溶接部11とその周辺部に限定しているため、第一、第二セパレータ7A、7Cへの熱影響を抑えられる。
【0114】
(実施例11)
図15に示す実施例は、単一のヒータ17を各集電板14とエンドプレート16の間に介装し、各集電板14にヒータ17が収まる凹部45が形成される一方、エンドプレート16にヒータ17が収まる凹部46が形成されるものである。
【0115】
ヒータ17は図10に示す電解質膜電極積層体3の反応面中央部57Aに対峙するように配置され、ヒータ17の発熱によってこの反応面中央部57Aの昇温を促すようになっている。
【0116】
(実施例12)
図16に示す実施例は、複数のヒータ17を各集電板14とエンドプレート16の間に介装するものである。
【0117】
各ヒータ17は各溶接部11に対峙し、ヒータ17と溶接部11が燃料電池セル2の積層方向について直線上に並ぶように配置されることにより、ヒータ17から燃料電池スタック1の両端部に配置される第一、第二セパレータ7A、7Cへの伝熱経路を短縮し、各燃料電池セル2の昇温を効率良く行うことができる。
【0118】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0119】
(ア)対の電極触媒層5A、5Cで電解質膜4を挟んで構成した電解質膜電極積層体3をさらにその両側からガス流路8A、8Cを画成する第一、第二セパレータ7A、7Cで挟むことによって燃料電池セル2を構成し、積層された複数の燃料電池セル2を挟持する対の集電板14を備え、この集電板14を介して燃料電池セル2の起電力を取り出す燃料電池スタック1において、第一、第二セパレータ7A、7Cを集電板14との接触部位の少なくとも一部を互いに接合する接合部(溶接部11)を備える。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の貫通電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の発電性能を高められる。
【0120】
(イ)集電板14を加熱するヒータ17を備え、第一、第二セパレータ7A、7Cを集電板14に接合する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の発電性能を高められるとともに、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の熱伝導抵抗を低減し、ヒータ17の発熱によってエンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)の昇温を効率良く行うことができる。
【0121】
(ウ)第一、第二セパレータ7A、7Cを集電板14に溶接し、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の接触面積に対する溶接面積割合を5%以上に設定する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cの抵抗を低減し、燃料電池の発電性能を高められる。
【0122】
(エ)発電時に第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の間において電流密度が相対的に高い部位に第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の溶接部11を多く分布させる。このため、電流密度の分布状況に対応して第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の間の導電性を高められ、燃料電池スタック1の起電力を効率良く取り出すことができる。
【0123】
(オ)第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の溶接部11の分布密度を電解質膜電極積層体3の反応面中央部57Aに対峙する領域を反応面周辺部57Bに対峙する領域より高くする。このため、電解質膜電極積層体3の反応面57における電流密度の分布状況に対応して第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の導電性を高められ、燃料電池スタック1の起電力を効率良く取り出すことができる。
【0124】
(カ)集電板14に電力を取り出すボス部67を備え、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の溶接部11の分布密度をボス部67に対峙する領域57Cで他の領域より高くする。このため、集電板14における電流密度の分布状況に対応して第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の導電性を高められ、燃料電池スタック1の起電力を効率良く取り出すことができる。
【0125】
(キ)第一、第二セパレータ7A、7Cを加熱して集電板14に溶接する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の溶接を確実に行うことができる。
【0126】
(ク)第一、第二セパレータ7A、7Cの各ガス流路8A、8Cを画成する溝底となるリブ平面部21aを集電板14に溶接する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14との熱伝導抵抗を低減し、燃料電池スタック1の両端部に配置されるガス拡散層9A、9Cの昇温を効率良く行うことができる。また、溶接部11が電解質膜電極積層体3から離れて相対的に腐食しにくい部位に形成されることにより、溶接部11によって耐食被覆処理層27が損傷されても、腐食性能の低下を小さくに抑えられる。
【0127】
(ケ)集電板14に温調媒体流路9を画成する溝41を形成する。このため、温調媒体流路9の断面積の設定自由度が拡大し、両端部の燃料電池セル2の温度調整の最適化が可能となる。
【0128】
(コ)集電板14の各溝41の間に形成されるリブ平面部42aの幅w4を第一、第二セパレータ7A、7Cの各溝23の間に形成されるリブ平面部21aの幅w3より大きく形成する。このため、溶接時に集電板14のリブ平面部42aに対するリブ平面部21aの位置に若干のズレが生じても、リブ平面部21aがリブ平面部42aに対峙し、溶接が確実に行われる。
【0129】
(サ)第一、第二セパレータ7A、7Cの電解質膜電極積層体3に対峙する反応側表面25に耐食被覆処理層27を形成する。このため、耐食被覆処理層27によって第一、第二セパレータ7A、7Cの耐食性を確保するとともに、第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26に耐食被覆処理層27を形成する工数を減らして製品のコストダウンがはかれる。第一、第二セパレータ7A、7Cを集電板14に接合したため、第一、第二セパレータ7A、7Cは耐食被覆処理層27が形成されない背面26と集電板14間の電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の発電性能を高められる。
【0130】
(シ)金属製の第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14の間に温調媒体流路9を形成し、互いに対峙する第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の少なくとも一方に耐食被覆処理層71を形成する。このため、耐食被覆処理層71によって第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の耐食性を高められるとともに、導電性の高い耐食被覆処理層71を形成することにより、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を低減することができる。
【0131】
(ス)第一、第二セパレータ7A、7Cを加熱して集電板14に溶接した後、少なくとも溶接部11の表面に耐食処理を施す。このため、溶接部11が形成されることによって耐食被覆処理層27が損傷されるが、少なくとも溶接部11の表面に耐食処理を施すことにより、ここに腐食が生じることを抑えられ、溶接部11の腐食による金属イオンの溶出を防止できる。
【0132】
(セ)第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14同士を所定の荷重で圧縮した状態で両者を溶接する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の発電性能を高められるとともに、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の接触熱抵抗を低減し、ヒータ17の発熱によってエンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)の昇温を効率良く行うことができる。
【0133】
(ソ)第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の少なくとも一方の表層の酸化皮膜を除去した後に両者を溶接する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を低減することができる。
【0134】
(タ)第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の少なくとも一方を酸性溶液で洗浄して酸化皮膜を除去した後に両者を溶接する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を低減することができる。
【0135】
(チ)第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の少なくとも一方を酸性溶液中で所定の電位をかけて酸化皮膜を除去した後に両者を溶接する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと集電板14間の接触電気抵抗を低減することができる。
【0136】
(ツ)第一、第二セパレータ7A、7Cの背面26と集電板14の対向面29の少なくとも一方の酸化皮膜を削って除去した後に両者を溶接する。このため、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の電気抵抗を低減し、燃料電池スタック1の発電性能を高められるとともに、第一、第二セパレータ7A、7Cと各集電板14間の熱伝導抵抗を低減し、ヒータ17の発熱によってエンドセパレータ(第一、第二セパレータ7A、7C)の昇温を効率良く行うことができる。
【0137】
(テ)第一、第二セパレータ7A、7Cを集電板14に接合する接合部(溶接部11)をヒータ17と燃料電池セル2の積層方向について直線上に並ぶように配置する。このため、ヒータ17から燃料電池スタック1の両端部に配置される第一、第二セパレータ7A、7Cへの伝熱経路を短縮し、各燃料電池セル2の昇温を効率良く行うことができる。
【0138】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の
変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0139】
1 燃料電池スタック
2 燃料電池セル
3 電解質膜電極積層体
4 電解質膜
5A、5C 電極触媒層
7A、7C 第一、第二セパレータ
8A、8C ガス流路
9 温調媒体流路
11 溶接部(接合部)
14 集電板
15 絶縁板
16 エンドプレート
17 ヒータ
25 反応側表面
26 背面
27 耐食被覆処理層
21a リブ平面部
41 溝
42a リブ平面部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対の電極触媒層で電解質膜を挟んで構成した電解質膜電極積層体をさらにその両側からガス流路を画成する金属製セパレータで挟むことによって燃料電池セルを構成し、これら積層された複数の燃料電池セルを挟持する対の集電板を備え、この集電板を介して燃料電池セルの起電力を取り出す燃料電池スタックにおいて、
前記セパレータと前記集電板との接触部位の少なくとも一部を互いに接合する接合部を備えたことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
前記集電板を加熱するヒータを備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記セパレータと前記集電板の接触面積に対して前記接合部の占める接合面積割合を5%以上に設定したことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
発電時に前記セパレータと前記集電板の間において電流密度が相対的に高い部位に前記接合部を多く分布させたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項5】
前記接合部の分布密度を前記電解質膜電極積層体の反応面中央部に対峙する領域を反応面周辺部に対峙する領域より高くしたことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池スタック。
【請求項6】
前記集電板に電力を取り出すボス部を備え、前記接合部の分布密度をこのボス部に対峙する領域で他の領域より高くしたことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池スタック。
【請求項7】
前記接合部として前記セパレータを加熱して前記集電板に溶接した溶接部を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項8】
前記接合部として前記セパレータの前記ガス流路を画成する溝底となるリブ平面部を前記集電板に溶接した溶接部を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項9】
前記集電板と前記セパレータの間に温調媒体を流通させる温調媒体流路を備え、前記集電板にこの温調媒体流路を画成する溝を形成したことを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項10】
前記集電板の各溝の間に形成されるリブ平面部の幅w4を前記セパレータの前記ガス流路を画成する各溝の間に形成されるリブ平面部の幅w3より大きく形成したことを特徴とする請求項9に記載の燃料電池スタック。
【請求項11】
前記セパレータの前記電解質膜電極積層体に対峙する反応側表面に耐食被覆処理層を形成したことを特徴とする請求項1から10のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項12】
前記セパレータと前記集電板の間に温調媒体流路を形成し、互いに対峙する前記セパレータの背面と前記集電板の対向面の少なくとも一方に耐食被覆処理層を形成したことを特徴とする請求項1から10のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項13】
前記接合部として前記セパレータを加熱して集電板に溶接する溶接部を備え、少なくともこの溶接部の表面に耐食処理を施したことを特徴とする請求項1から12のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項14】
前記接合部として前記セパレータと前記集電板同士を圧縮した状態で両者を溶接したことを特徴とする請求項1から13のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項15】
前記接合部として互いに対峙する前記セパレータの背面と前記集電板の対向面の少なくとも一方の表層の酸化皮膜を除去した後に両者を溶接したことを特徴とする請求項1から14のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項16】
前記接合部として互いに対峙する前記セパレータの背面と前記集電板の対向面の少なくとも一方を酸性溶液で洗浄して酸化皮膜を除去した後に両者を溶接したことを特徴とする請求項15に記載の燃料電池スタック。
【請求項17】
前記接合部として互いに対峙する前記セパレータの背面と前記集電板の対向面の少なくとも一方を酸性溶液中で所定の電位をかけて酸化皮膜を除去した後に両者を溶接したことを特徴とする請求項15に記載の燃料電池スタック。
【請求項18】
前記接合部として互いに対峙する前記セパレータの背面と前記集電板の対向面の少なくとも一方を削って酸化皮膜除去した後に両者を溶接したことを特徴とする請求項15に記載の燃料電池スタック。
【請求項19】
前記集電板を加熱するヒータを備え、前記接合部を前記燃料電池セルの積層方向についてこのヒータと直線上に並ぶように配置したことを特徴とする請求項1から18のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項20】
対の電極触媒層で電解質膜を挟んで構成した電解質膜電極積層体をさらにその両側からガス流路を画成する金属製セパレータで挟むことによって燃料電池セルを構成し、積層された複数の燃料電池セルを挟持する対の集電板を備え、この集電板を介して燃料電池セルの起電力を取り出す燃料電池スタックの製造方法において、
前記セパレータを前記集電板との接触部位の少なくとも一部を互いに接合することを特徴とする燃料電池スタックの製造方法。
【請求項1】
対の電極触媒層で電解質膜を挟んで構成した電解質膜電極積層体をさらにその両側からガス流路を画成する金属製セパレータで挟むことによって燃料電池セルを構成し、これら積層された複数の燃料電池セルを挟持する対の集電板を備え、この集電板を介して燃料電池セルの起電力を取り出す燃料電池スタックにおいて、
前記セパレータと前記集電板との接触部位の少なくとも一部を互いに接合する接合部を備えたことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
前記集電板を加熱するヒータを備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記セパレータと前記集電板の接触面積に対して前記接合部の占める接合面積割合を5%以上に設定したことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
発電時に前記セパレータと前記集電板の間において電流密度が相対的に高い部位に前記接合部を多く分布させたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項5】
前記接合部の分布密度を前記電解質膜電極積層体の反応面中央部に対峙する領域を反応面周辺部に対峙する領域より高くしたことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池スタック。
【請求項6】
前記集電板に電力を取り出すボス部を備え、前記接合部の分布密度をこのボス部に対峙する領域で他の領域より高くしたことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池スタック。
【請求項7】
前記接合部として前記セパレータを加熱して前記集電板に溶接した溶接部を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項8】
前記接合部として前記セパレータの前記ガス流路を画成する溝底となるリブ平面部を前記集電板に溶接した溶接部を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項9】
前記集電板と前記セパレータの間に温調媒体を流通させる温調媒体流路を備え、前記集電板にこの温調媒体流路を画成する溝を形成したことを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項10】
前記集電板の各溝の間に形成されるリブ平面部の幅w4を前記セパレータの前記ガス流路を画成する各溝の間に形成されるリブ平面部の幅w3より大きく形成したことを特徴とする請求項9に記載の燃料電池スタック。
【請求項11】
前記セパレータの前記電解質膜電極積層体に対峙する反応側表面に耐食被覆処理層を形成したことを特徴とする請求項1から10のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項12】
前記セパレータと前記集電板の間に温調媒体流路を形成し、互いに対峙する前記セパレータの背面と前記集電板の対向面の少なくとも一方に耐食被覆処理層を形成したことを特徴とする請求項1から10のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項13】
前記接合部として前記セパレータを加熱して集電板に溶接する溶接部を備え、少なくともこの溶接部の表面に耐食処理を施したことを特徴とする請求項1から12のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項14】
前記接合部として前記セパレータと前記集電板同士を圧縮した状態で両者を溶接したことを特徴とする請求項1から13のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項15】
前記接合部として互いに対峙する前記セパレータの背面と前記集電板の対向面の少なくとも一方の表層の酸化皮膜を除去した後に両者を溶接したことを特徴とする請求項1から14のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項16】
前記接合部として互いに対峙する前記セパレータの背面と前記集電板の対向面の少なくとも一方を酸性溶液で洗浄して酸化皮膜を除去した後に両者を溶接したことを特徴とする請求項15に記載の燃料電池スタック。
【請求項17】
前記接合部として互いに対峙する前記セパレータの背面と前記集電板の対向面の少なくとも一方を酸性溶液中で所定の電位をかけて酸化皮膜を除去した後に両者を溶接したことを特徴とする請求項15に記載の燃料電池スタック。
【請求項18】
前記接合部として互いに対峙する前記セパレータの背面と前記集電板の対向面の少なくとも一方を削って酸化皮膜除去した後に両者を溶接したことを特徴とする請求項15に記載の燃料電池スタック。
【請求項19】
前記集電板を加熱するヒータを備え、前記接合部を前記燃料電池セルの積層方向についてこのヒータと直線上に並ぶように配置したことを特徴とする請求項1から18のいずれか一つに記載の燃料電池スタック。
【請求項20】
対の電極触媒層で電解質膜を挟んで構成した電解質膜電極積層体をさらにその両側からガス流路を画成する金属製セパレータで挟むことによって燃料電池セルを構成し、積層された複数の燃料電池セルを挟持する対の集電板を備え、この集電板を介して燃料電池セルの起電力を取り出す燃料電池スタックの製造方法において、
前記セパレータを前記集電板との接触部位の少なくとも一部を互いに接合することを特徴とする燃料電池スタックの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図11】
【公開番号】特開2012−212684(P2012−212684A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150301(P2012−150301)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【分割の表示】特願2006−136952(P2006−136952)の分割
【原出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【分割の表示】特願2006−136952(P2006−136952)の分割
【原出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]