説明

燃料電池スタック

【課題】簡単且つコンパクトな構成で、固体酸化物形燃料電池内の異なる部位にそれぞれ所望の締め付け荷重を確実に付与するとともに、放熱を抑制して高効率な発電を遂行可能にする。
【解決手段】燃料電池スタック10は、積層体36を載置する下部エンドプレート38と、前記積層体36に積層方向に沿って荷重を付与する荷重プレート46と、前記荷重プレート46と前記積層体36との間に配置され、アルミナ繊維とバーミキュライトとの複合層を有する燃料電池保持部44とを備える。燃料電池保持部44は、挟持部35に電解質・電極接合体20に対応して積層方向に荷重を付与する第1保持部44aと、反応ガス供給部37に前記積層方向に荷重を付与する第2保持部44bとを有するとともに、前記第1保持部44aは、前記第2保持部44bよりも密度が小さく設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される固体酸化物形燃料電池を備え、複数の前記固体酸化物形燃料電池が積層される積層体を有する燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、電解質に酸化物イオン導電体、例えば、安定化ジルコニアを用いており、この電解質の両側にアノード電極及びカソード電極を配設した電解質・電極接合体(MEA)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持している。この燃料電池は、通常、電解質・電極接合体とセパレータとが所定数だけ積層された燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
この種の燃料電池スタックでは、効率的に出力電圧を得るために、燃料電池同士を所望の加圧状態で積層させる必要がある。さらに、反応ガス、例えば、燃料ガス及び空気の漏れを可及的に阻止するために、積層方向に加圧して反応ガスマニホールドを確実にシールする必要がある。
【0004】
このため、例えば、特許文献1に開示されている平板型固体酸化物形燃料電池では、図16に示すように、セルスタック1aと、前記セルスタック1aの周囲に配設され、各単セル2aに対して燃料ガス、酸化剤ガスの給排気を行う4つのマニホールドM1〜M4とを備えている。
【0005】
セルスタック1aは、第1の加圧機構3aによって加圧される一方、各マニホールドM1〜M4は、第2の加圧機構4aによって加圧されるように構成されている。第一の加圧機構3aは、加圧手段としての圧縮ばね5aを備えるとともに、第2の加圧機構4aは、加圧手段としての圧縮ばね6aを備えている。
【0006】
また、特許文献2に開示されている燃料電池は、図17に示すように、発電セル1bを一対のセパレータ2bにより挟持したユニット3bが、多数積層されるとともに、積層方向両端(上下両端)には、上締付板4bと下締付板5bとが配設されている。上締付板4bの中央部には、発電セル1bの外形よりも大きな丸孔6bが設けられており、この丸孔6bには、錘7bが載置されている。
【0007】
上締付板4bと下締付板5bとは、複数のボルト8bにより締め付けられて、ユニット3bには、積層方向の締め付け荷重が付与されている。一方、錘7bによる荷重により、ユニット3bを構成する複数の発電要素は、互いに密着されている。
【0008】
さらにまた、特許文献3に開示されているセルスタックは、導電性ボルトに接続される第1のエンドプレートと、別の導電性ボルトに接続される第2のエンドプレートとの間に配置される少なくとも1つの電気化学セルを有するセルスタックである。
【0009】
このセルスタックは、ハウジングと、該セルスタックをこのハウジングに固定して支持する手段と、セルスタック全体に一定の機械的荷重を保持する手段とを有している。そして、一定の荷重を保持する手段は、セルスタックとハウジング壁との間にある空間に挿入される少なくとも1つの弾性パッドを備えている。弾性パッドは、例えば、シリコンパッドであり、絶縁性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−339035号公報
【特許文献2】特開2007−73359号公報
【特許文献3】特表2009−500525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の特許文献1では、燃料電池の運転温度が相当に高温である。従って、セルスタック1aを加圧する第1の加圧機構3aを構成する圧縮ばね5aは、高温に耐えるセラミックス材料、例えば、窒化けい素を使用する必要がある。このため、第1の加圧機構3aのコストが高騰するという問題がある。
【0012】
しかも、圧縮ばね5aとしてセラミックスばねが用いられるため、破損等が惹起し易くなるというおそれがあるとともに、スタック上部からの放熱が大きくなるという問題がある。
【0013】
また、上記の特許文献2では、上締付板4bの中央部に形成された丸孔6bに錘7bが配置されて、積層方向の荷重を増やすように構成される。これにより、燃料電池全体が相当に大型化且つ重量物化してしまう。
【0014】
しかも、錘7bの熱容量が大きく、燃料電池の起動時や負荷変動時の追従性が低下し、迅速に対応することができないという不具合がある。さらに、錘7bは、熱伝導の大きな金属であり、熱引きによって燃料電池上部からの放熱が大きくなるという問題がある。
【0015】
さらにまた、上記の特許文献3では、弾性パッドは、シリコンや高分子材料等の樹脂系材料で形成されるため、材料の耐熱性が低下してしまう。これにより、特に、高温作動の固体酸化物形燃料電池には、良好に適用することができないという問題がある。
【0016】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単且つコンパクトな構成で、固体酸化物形燃料電池内の異なる部位に、それぞれ所望の締め付け荷重を確実に付与するとともに、放熱を抑制して高効率な発電が遂行可能な燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される固体酸化物形燃料電池を備え、複数の前記固体酸化物形燃料電池が積層される積層体を有する燃料電池スタックに関するものである。
【0018】
この燃料電池スタックでは、セパレータは、電解質・電極接合体を挟持するとともに、アノード電極の電極面に沿って燃料ガスを供給する燃料ガス通路、及びカソード電極の電極面に沿って酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路が、個別に設けられる挟持部と、少なくとも前記燃料ガスを前記燃料ガス通路に供給するための燃料ガス供給連通孔、又は前記酸化剤ガスを前記酸化剤ガス通路に供給するための酸化剤ガス供給連通孔が、積層方向に形成される反応ガス供給部とを備えている。
【0019】
そして、燃料電池スタックは、積層体の積層方向一端に配置される基台部と、前記積層体の積層方向他端に配置され、該積層体に積層方向に沿って荷重を付与する架台部と、前記架台部と前記積層体との間に配置され、アルミナ繊維とバーミキュライトとの複合材を有する燃料電池保持部とを備えている。
【0020】
燃料電池保持部は、挟持部に電解質・電極接合体に対応して積層方向に荷重を付与する第1保持部と、反応ガス供給部に前記積層方向に荷重を付与する第2保持部とを有するとともに、前記第1保持部は、前記第2保持部よりも密度が小さく設定されている。
【0021】
また、この燃料電池スタックでは、第1保持部は、第2保持部よりもバーミキュライトの含有量が少ないことが好ましい。このため、第1保持部は、第2保持部に比べて高温時の膨張率が小さく、電解質・電極接合体に過大な荷重が付与されることがない。従って、第1保持部は、電解質・電極接合体とセパレータとの密着性を向上させる一方、前記電解質・電極接合体の損傷を可及的に阻止することができ、効率的な発電及び集電が遂行される。
【0022】
さらに、この燃料電池スタックでは、第1保持部は、第2保持部よりも複合材の密度が小さいことが好ましい。これにより、第1保持部は、電解質・電極接合体に過大な荷重を付与することがなく、前記電解質・電極接合体とセパレータとの密着性を向上させるとともに、前記電解質・電極接合体の損傷を可及的に阻止することができ、効率的な発電及び集電が遂行される。
【0023】
さらにまた、この燃料電池スタックでは、燃料電池保持部は、アルミナ繊維により構成されるアルミナ層と、複合材により構成される複合層とを備えるとともに、前記アルミナ層は、積層体側に配置され且つ前記複合層は、架台部側に配置されることが好ましい。
【0024】
アルミナ繊維は、弾性を有するとともに、高温における耐久性に優れる。しかも、アルミナ繊維は、断熱性及び絶縁性を有しており、アルミナ層は、高温で運転される積層体の端部に良好に配置可能となる。一方、バーミキュライトは、アルミナ繊維に比べて高温耐久性が低いものの、高温時の熱膨張率が大きい。
【0025】
このため、複合層は、架台部側に配置されることにより、バーミキュライトが積層体からの温度に直接曝されることがない。しかも、バーミキュライトが熱膨張することにより、複合層は、燃料電池スタックの温度変化に容易に追従して、積層体に所望の締め付け荷重を確実に付与することができる。
【0026】
また、この燃料電池スタックでは、架台部は、基台部と平行に配置されるプレート部材であり、前記プレート部材と前記基台部とは、複数のボルトを介して積層方向に締め付け保持されることが好ましい。
【0027】
従って、積層方向に長尺なボルト自体が、高温時に軸方向に伸びても、複合層が膨張して各固体酸化物形燃料電池に所望の締め付け荷重を確実に付与することが可能になる。これにより、燃料電池スタック全体の発電性能の向上が容易に図られる。
【0028】
さらに、この燃料電池スタックでは、架台部は、積層体を収容するボックスの底部により構成されるとともに、前記ボックスの開口側端部は、基台部に隣接して複数のボルトを介し積層方向に締め付け保持されることが好ましい。
【0029】
このため、ボックス自体が、高温時に積層方向に伸びても、複合層が膨張して各固体酸化物形燃料電池に所望の締め付け荷重を確実に付与することができる。従って、燃料電池スタック全体の発電性能の向上が容易に図られる。
【0030】
さらにまた、この燃料電池スタックでは、電解質・電極接合体は、アノード電極の厚さ方向の寸法がカソード電極及び電解質の厚さ方向の寸法よりも大きなアノード電極支持型セルであるとともに、前記カソード電極の表面積は、前記電解質の表面積よりも小さく設定されることが好ましい。
【0031】
これにより、電解質・電極接合体の周縁部の厚さが薄くなるため、第2保持部による前記電解質・電極接合体への荷重の影響が軽減される。このため、電解質・電極接合体の損傷を可及的に阻止することができ、前記電解質・電極接合体の耐久性の向上が図られる。
【0032】
また、この燃料電池スタックでは、電解質・電極接合体は、電解質の厚さ方向の寸法がアノード電極及びカソード電極の厚さ方向の寸法よりも大きな電解質支持型セルであるとともに、少なくとも前記アノード電極の表面積又は前記カソード電極の表面積は、前記電解質の表面積よりも小さく設定されることが好ましい。
【0033】
従って、電解質・電極接合体の周縁部の厚さが薄くなるため、第2保持部による前記電解質・電極接合体への荷重の影響が軽減される。これにより、電解質・電極接合体の損傷を可及的に阻止することができ、前記電解質・電極接合体の耐久性の向上が図られる。
【0034】
さらに、この燃料電池スタックでは、固体酸化物形燃料電池は、平板積層型固体酸化物形燃料電池であることが好ましい。このため、特に、平板型SOFC(固体酸化物形燃料電池)のような高温型燃料電池に好適に適用することが可能になる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、アルミナ繊維は、弾性を有するとともに、高温における耐久性に優れる。しかも、断熱性及び絶縁性を有している。一方、バーミキュライトは、高温時の膨張率が大きい。このため、複合層は、耐熱性、断熱性及び熱膨張性に優れ、燃料電池スタックの温度変化に容易に追従して、積層体に所望の締め付け荷重を確実に付与することができる。従って、燃料電池スタックの積層荷重が一定化され、発電性能の向上が図られる。
【0036】
さらに、燃料電池スタックからの放熱を良好に抑制することが可能になるとともに、熱自立の促進が図られる。ここで、熱自立とは、外部から熱を付与することなく、自ら発生する熱により良好な運転が可能になる状態をいう。
【0037】
しかも、挟持部に電解質・電極接合体に対応して積層方向に荷重を付与する第1保持部は、反応ガス供給部に前記積層方向に荷重を付与する第2保持部よりも密度が小さく設定されている。これにより、反応ガス供給部には、比較的大きな荷重が付与されるため、前記反応ガス供給部のシール性を良好に維持することが可能になる。一方、電解質・電極接合体には、挟持部との密着性を高める程度の比較的小さな荷重を付与することができる。従って、電解質・電極接合体の損傷を可及的に阻止するとともに、効率的な発電及び集電が遂行される。
【0038】
このため、簡単且つコンパクトな構成で、固体酸化物形燃料電池の異なる部位にそれぞれ所望の締め付け荷重を確実に付与するとともに、放熱を抑制して高効率な燃料電池スタックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池スタックの一部分解斜視説明図である。
【図3】前記燃料電池スタックを構成する固体酸化物形燃料電池の分解斜視説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタックの一部分解斜視説明図である。
【図5】前記燃料電池スタックの概略断面説明図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタックの概略断面説明図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池スタックの一部分解斜視説明図である。
【図8】前記燃料電池スタックの概略断面説明図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る燃料電池スタックの概略断面説明図である。
【図10】本発明の第6の実施形態に係る燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図11】前記燃料電池スタックの一部分解斜視説明図である。
【図12】前記燃料電池スタックを構成する固体酸化物形燃料電池の分解斜視説明図である。
【図13】前記固体酸化物形燃料電池を構成する第2プレートの説明図である。
【図14】前記燃料電池スタックの一部断面平面説明図である。
【図15】本発明の第7の実施形態に係る燃料電池スタックの概略断面説明図である。
【図16】特許文献1の平板型固体酸化物形燃料電池の断面説明図である。
【図17】特許文献2の燃料電池の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタック10は、複数の固体酸化物形燃料電池12を矢印C方向(鉛直方向)に積層して構成される。この燃料電池スタック10は、定置用の他、車載用等の種々の用途に用いられている。固体酸化物形燃料電池12は、燃料ガス(水素含有ガス、例えば、水素ガスにメタン、一酸化炭素が混合した気体)と酸化剤ガス(空気)との電気化学反応により発電する。
【0041】
固体酸化物形燃料電池12は、図3に示すように、例えば、安定化ジルコニア等の酸化物イオン導電体で構成される電解質(電解質板)14の両面に、カソード電極16及びアノード電極18が設けられた電解質・電極接合体(MEA)20を備える。
【0042】
電解質・電極接合体20は、アノード電極18の厚さ方向の寸法がカソード電極16及び電解質14の厚さ方向の寸法よりも大きなアノード電極支持型セルであるとともに、前記カソード電極16の表面積は、前記電解質14の表面積よりも小さく設定される。カソード電極16には、集電体19が積層される。集電体19は、カソード電極16と略同一の寸法に設定され、例えば、ニッケル等の金属からなる発泡金属や金属メッシュ等により構成される。
【0043】
電解質・電極接合体20は、矩形状(長方形状又は正方形状)に形成されるとともに、少なくとも外周端面部には、酸化剤ガス及び燃料ガスの進入や排出を阻止するためにバリアー層(図示せず)が設けられている。
【0044】
固体酸化物形燃料電池12は、一対のセパレータ(インターコネクタ)22間に、シール部材24a、24b及び金属プレート25を介装して単一の電解質・電極接合体20を挟んで構成される。セパレータ22は、例えば、ステンレス合金等の板金で構成される一方、シール部材24a、24bは、例えば、マイカ材やセラミック材等の地殻成分系素材、ガラス系素材、粘土とプラスチックの複合素材で形成される。
【0045】
金属プレート25は、フレーム形状を有し、内部に形成される開口部25aは、カソード電極16よりも大きく且つ電解質14よりも小さく構成される。金属プレート25は、開口部25aの周壁部が、電解質14の周縁部に積層されることにより、カソード側とアノード側との間におけるガスシール機能を有する。
【0046】
セパレータ22は、長方形状(又は正方形状)を有しており、長辺方向(矢印A方向)一端側には、複数、例えば、3つの酸化剤ガス供給連通孔26aが短辺方向(矢印B方向)に配列して形成される。セパレータ22の長辺方向他端側には、矢印B方向に配列して、例えば、3つの酸化剤ガス排出連通孔26bが形成される。
【0047】
セパレータ22の短辺方向(矢印B方向)一端側には、例えば、3つの燃料ガス供給連通孔28aが矢印A方向に配列して形成される。セパレータ22の短辺方向他端側には、例えば、3つの燃料ガス排出連通孔28bが矢印A方向に配列して形成される。
【0048】
なお、上記の構成とは逆に、セパレータ22の長辺方向両端側に、3つの燃料ガス供給連通孔28aと3つの燃料ガス排出連通孔28bとを設ける一方、前記セパレータ22の短辺方向両端側に、3つの酸化剤ガス供給連通孔26aと3つの酸化剤ガス排出連通孔26bとを設けてもよい。
【0049】
セパレータ22において、電解質・電極接合体20のカソード電極16に対向する面22aに、前記カソード電極16の電極面に沿って酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス通路30が形成される。酸化剤ガス通路30は、矢印A方向に延在する複数本の流路溝により構成されるとともに、両端が酸化剤ガス供給連通孔26a及び酸化剤ガス排出連通孔26bの近傍で終端する。
【0050】
セパレータ22において、電解質・電極接合体20を構成するアノード電極18に対向する面22bには、前記アノード電極18の電極面に沿って燃料ガスを供給するための燃料ガス通路32が形成される。
【0051】
燃料ガス通路32は、矢印B方向に延在する複数の流路溝により構成されるとともに、両端が、燃料ガス供給連通孔28a及び燃料ガス排出連通孔28bに連通する。
【0052】
シール部材24a、24bには、酸化剤ガス供給連通孔26a、酸化剤ガス排出連通孔26b、燃料ガス供給連通孔28a及び燃料ガス排出連通孔28bが形成される。シール部材24aには、各酸化剤ガス供給連通孔26aと酸化剤ガス通路30とを連通するための入口連結路34aと、各酸化剤ガス排出連通孔26bと前記酸化剤ガス通路30とを連通する出口連結路34bとが形成される。
【0053】
セパレータ22は、電解質・電極接合体20を挟持するとともに、燃料ガス通路32及び酸化剤ガス通路30が個別に設けられる挟持部35と、酸化剤ガス供給連通孔26a、酸化剤ガス排出連通孔26b、燃料ガス供給連通孔28a及び燃料ガス排出連通孔28bが積層方向に形成される反応ガス供給部37とを備える。
【0054】
図1及び図2に示すように、複数の固体酸化物形燃料電池12は、矢印C方向に積層されることにより、積層体36が構成される。積層体36は、前記積層体36の積層方向下端(一端)に配置される下部エンドプレート(基台部)38上に載置される。
【0055】
下部エンドプレート38は、矢印A方向及び矢印B方向の寸法が、積層体36の各寸法よりも大きな寸法に設定されるとともに、酸化剤ガス供給連通孔26a、酸化剤ガス排出連通孔26b、燃料ガス供給連通孔28a及び燃料ガス排出連通孔28bが形成される(図2参照)。
【0056】
下部エンドプレート38には、周辺部に沿って複数のねじ孔40が形成される。ねじ孔40は、例えば、下部エンドプレート38の四隅近傍及び各辺の略中央部に形成される。なお、下部エンドプレート38には、図示しないが、酸化剤ガス及び燃料ガスの供給及び排出を行うためのマニホールドが装着される。
【0057】
積層体36の積層方向上端(他端)には、上部エンドプレート42が配置される。上部エンドプレート42の矢印A方向及び矢印B方向の寸法は、積層体36の各寸法と同寸法に設定されるとともに、前記上部エンドプレート42は、長方形状(又は正方形状)の平板で構成される。
【0058】
上部エンドプレート42上には、燃料電池保持部44と荷重プレート(架台部)46とが積層される。荷重プレート46の周縁部に孔部48が形成され、前記孔部48にボルト50が挿入されるとともに、前記ボルト50は、下部エンドプレート38のねじ孔40にねじ込まれる。
【0059】
燃料電池保持部44は、挟持部35に電解質・電極接合体20に対応して積層方向に荷重を付与する第1保持部44aと、反応ガス供給部37に前記積層方向に荷重を付与する第2保持部44bとを有するとともに、前記第1保持部44aは、前記第2保持部44bよりも密度が小さく設定される。
【0060】
具体的には、燃料電池保持部44は、アルミナ層52と、第1保持部44aを構成する第1複合層54aと、第2保持部44bを構成する第2複合層54bとを備える。第1複合層54aと第2複合層54bとは、一体に構成されて全体として長方形状を有し、この長方形状の中央側には、電解質・電極接合体20の形状に対応する前記第1複合層54aが設けられる一方、該第1複合層54aを周回して反応ガス供給部37に対応する額縁状の前記第2複合層54bが設けられる。
【0061】
アルミナ層52は、アルミナ繊維により構成される。このアルミナ層52は、具体的には、結晶質アルミナ繊維に有機バインダーを含浸させて厚さ方向に圧縮し、前記有機バインダーの溶媒部を乾燥により除去することにより形成される。アルミナ層52は、アルミナ繊維により弾性を有するとともに、高温における耐久性に優れ、しかも断熱性及び絶縁性を有している。
【0062】
第1複合層54a及び第2複合層54bは、アルミナ繊維とバーミキュライトとの複合材を有する。第1複合層54a及び第2複合層54bは、バーミキュライトの粒子を、結晶質アルミナ繊維を含むスラリー中に分散させるとともに、上記のアルミナ層52と同様に製造される。第1複合層54aは、第2複合層54bよりもバーミキュライトの含有量が少なく設定される。
【0063】
電解質・電極接合体20は、例えば、ニッケル系耐熱合金製のボルト50に比べて比較的熱膨張率の小さな材料が使用される。このため、高温時にボルト50が軸方向に伸びても、アルミナ層52自体の弾性によって積層体36の締め付け荷重が低下することを抑制する機能を有する。
【0064】
バーミキュライトは、高温で比較的大きく膨張する性質を有している。このバーミキュライトの膨張率は、ボルト50の膨張率よりも大きいため、高温時における積層体36の締め付け荷重の低下を一層確実に抑制する機能を有する。しかも、第1複合層54aは、第2複合層54bよりもバーミキュライトの含有量が少なく設定されるため、電解質・電極接合体20に積層方向に付与される荷重は、反応ガス供給部37に前記積層方向に付与される荷重よりも小さくなる。
【0065】
アルミナ層52は、積層体36側、すなわち、上部エンドプレート42に隣接して配置される一方、第1複合層54a及び第2複合層54bは、荷重プレート46に隣接して配置される。
【0066】
燃料電池スタック10を組み立てる際には、下部エンドプレート38上に積層体36が載置された後、この積層体36上には、上部エンドプレート42が配置される。上部エンドプレート42上には、アルミナ層52と第1複合層54a及び第2複合層54bとが、それぞれ所定の厚さずつ載置された後、荷重プレート46が配置される。
【0067】
次いで、複数のボルト50が、荷重プレート46の各孔部48に挿入され、先端部が、下部エンドプレート38の各ねじ孔40にねじ込まれる。このため、積層体36に積層方向の荷重が付与されるとともに、燃料電池保持部44に圧縮荷重が付与される。
【0068】
燃料電池保持部44では、アルミナ層52と第1複合層54a及び第2複合層54bとが圧縮される。そして、燃料電池保持部44により、積層体36に必要な面圧を発生させる締め付け荷重が得られた際に、ボルト50の締め付けが終了され、燃料電池スタック10の組み立て作業が完了する。
【0069】
このように構成される燃料電池スタック10の動作について、以下に説明する。
【0070】
図2に示すように、燃料電池スタック10を構成する下部エンドプレート38には、図示しないマニホールドを介して燃料ガス(例えば、水素ガス)と酸化剤ガスである、例えば、空気とが供給される。空気は、酸化剤ガス供給連通孔26aに沿って鉛直上方向に移動する。
【0071】
各固体酸化物形燃料電池12では、図3に示すように、シール部材24aの酸化剤ガス供給連通孔26aに連通する入口連結路34aを通って、セパレータ22の酸化剤ガス通路30に供給される。空気は、酸化剤ガス通路30を矢印A方向に移動しながら、電解質・電極接合体20のカソード電極16に供給された後、酸化剤ガス排出連通孔26bに排出される。
【0072】
一方、燃料ガスは、燃料ガス供給連通孔28aに沿って鉛直上方向に移動し、各固体酸化物形燃料電池12を構成するセパレータ22の燃料ガス通路32に供給される。燃料ガスは、燃料ガス通路32に沿って矢印B方向に移動しながら、電解質・電極接合体20のアノード電極18に供給された後、燃料ガス排出連通孔28bに排出される。
【0073】
従って、電解質・電極接合体20では、アノード電極18に燃料ガスが供給されるとともに、カソード電極16に空気が供給される。これにより、酸化物イオンが、電解質14を通ってアノード電極18に移動し、化学反応により発電が行われる。
【0074】
この場合、第1の実施形態では、上部エンドプレート42と荷重プレート46との間に、燃料電池保持部44が配置されるとともに、前記燃料電池保持部44は、アルミナ層52と第1複合層54a及び第2複合層54bとを備えている。
【0075】
第1複合層54a及び第2複合層54bは、弾性を有し、高温における耐久性、断熱性及び絶縁性に優れるアルミナ繊維と、高温時の熱膨張率が大きいバーミキュライトとを有している。このため、第1複合層54a及び第2複合層54bは、耐熱性、断熱性及び熱膨張性に優れ、燃料電池スタック10の温度変化に容易に追従して、積層体36に所望の締め付け荷重を確実に付与することができる。従って、燃料電池スタック10の積層荷重が一定化され、発電性能の向上が図られる。
【0076】
具体的には、ボルト50は、例えば、ニッケル系耐熱合金等の線膨張係数の大きな材料で構成されており、電解質・電極接合体20に比べて熱膨張が相当に大きい。従って、高温時には、積層体36の積層方向の伸びに対してボルト50の伸びが大きくなり、前記積層体36に付与される締め付け荷重が低下し易くなる。
【0077】
その際、バーミキュライトは、高温時の熱膨張がボルト50の軸方向の伸びよりも大きい。これにより、積層体36の締め付け荷重が低下をすることを、良好に抑制することが可能になる。
【0078】
しかも、挟持部35に電解質・電極接合体20に対応して積層方向に所望の荷重P1を付与する第1保持部44aは、反応ガス供給部37に前記積層方向に所望の荷重P2(P1<P2)を付与する第2保持部44bよりも密度が小さく設定されている。
【0079】
さらに、燃料電池スタック10からの放熱を良好に抑制することが可能になるとともに、熱自立の促進が図られる。ここで、熱自立とは、外部から熱を付与することなく、自ら発生する熱により良好な運転が可能になる状態をいう。
【0080】
これにより、反応ガス供給部37には、比較的大きな荷重が付与されるため、前記反応ガス供給部37のシール性を良好に維持することが可能になる。一方、電解質・電極接合体20には、挟持部35との密着性を高める程度の比較的小さな荷重を付与することができる。従って、電解質・電極接合体20の損傷を可及的に阻止するとともに、効率的な発電及び集電が遂行される。
【0081】
このため、簡単且つコンパクトな構成で、固体酸化物形燃料電池12の異なる部位にそれぞれ所望の締め付け荷重を確実に付与するとともに、放熱を抑制して高効率な燃料電池スタック10を提供することができる。
【0082】
また、第1の実施形態では、第1保持部44aを構成する第1複合層54aは、第2保持部44bを構成する第2複合層54bよりもバーミキュライトの含有量が少なく設定されている。従って、第1保持部44aは、第2保持部44bに比べて高温時の膨張率が小さく、電解質・電極接合体20に過大な荷重が付与されることがない。これにより、第1保持部44aは、電解質・電極接合体20とセパレータ22との密着性を向上させる一方、前記電解質・電極接合体20の損傷を可及的に阻止することができ、効率的な発電及び集電が遂行される。
【0083】
さらに、燃料電池保持部44は、アルミナ繊維により構成されるアルミナ層52と、複合材により構成される第1複合層54a及び第2複合層54bとを備えるとともに、前記アルミナ層52は、積層体36側に配置され且つ前記第1複合層54a及び前記第2複合層54bは、荷重プレート46側に配置されている。
【0084】
アルミナ繊維は、弾性を有するとともに、高温における耐久性に優れる。しかも、アルミナ繊維は、断熱性及び絶縁性を有しており、アルミナ層52は、高温で運転される積層体36の端部に良好に配置可能となる。
【0085】
一方、バーミキュライトは、アルミナ繊維に比べて高温耐久性が低いものの、高温時の熱膨張率が大きい。このため、第1複合層54a及び第2複合層54bは、荷重プレート46側に配置されることにより、バーミキュライトが積層体36からの温度に直接曝されることがない。しかも、バーミキュライトが熱膨張することにより、第1複合層54a及び第2複合層54bは、燃料電池スタック10の温度変化に容易に追従して、積層体36に所望の締め付け荷重を確実に付与することができる。
【0086】
また、荷重プレート46は、下部エンドプレート38と平行に配置されるプレート部材であり、前記荷重プレート46と前記下部エンドプレート38とは、複数のボルト50を介して積層方向に締め付け保持されている。
【0087】
従って、積層方向に長尺なボルト50自体が、高温時に軸方向に伸びても、第1複合層54a及び第2複合層54bが膨張して各固体酸化物形燃料電池12に所望の締め付け荷重を確実に付与することが可能になる。これにより、燃料電池スタック10全体の発電性能の向上が容易に図られる。
【0088】
さらに、電解質・電極接合体20は、アノード電極18の厚さ方向の寸法がカソード電極16及び電解質14の厚さ方向の寸法よりも大きなアノード電極支持型セルであるとともに、前記カソード電極16の表面積は、前記電解質14の表面積よりも小さく設定されている。
【0089】
このため、電解質・電極接合体20の周縁部の厚さが薄くなるため、第2保持部44bによる前記電解質・電極接合体20への荷重の影響が軽減される。従って、電解質・電極接合体20の損傷を可及的に阻止することができ、前記電解質・電極接合体20の耐久性の向上が図られる。
【0090】
一方、電解質・電極接合体20は、アノード電極支持型セルに代えて、電解質14の厚さ方向の寸法がアノード電極18及びカソード電極16の厚さ方向の寸法よりも大きな電解質支持型セルを用いるとともに、少なくとも前記アノード電極18の表面積又は前記カソード電極16の表面積は、前記電解質14の表面積よりも小さく設定されることができる。
【0091】
これにより、電解質・電極接合体20の周縁部の厚さが薄くなるため、第2保持部44bによる前記電解質・電極接合体20への荷重の影響が軽減される。このため、電解質・電極接合体20の損傷を可及的に阻止することができ、前記電解質・電極接合体20の耐久性の向上が図られる。
【0092】
さらにまた、燃料電池スタック10では、固体酸化物形燃料電池12が、平板積層型固体酸化物形燃料電池である。これにより、特に、平板型固体酸化物形燃料電池のような高温型燃料電池に有効に用いることができる。
【0093】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタック60の一部分解斜視説明図である。
【0094】
なお、第1の実施形態に係る燃料電池スタック10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3以降の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。さらに、第2以降の実施形態では、架台部としてボックスを用いて説明するが、これに限定されるものではなく、第1の実施形態の荷重プレート46及びボルト50を採用することも可能である。
【0095】
燃料電池スタック60では、図4及び図5に示すように、第1の実施形態の荷重プレート46に変えてボックス62を備える。ボックス62は、例えば、フェライト系ステンレスで構成されており、開口側端部には、外方に突出するフランジ部64が設けられフランジ部64には、複数の孔部66が形成される。
【0096】
下部エンドプレート38上には、シール部材68を介して積層体36が載置される。シール部材68は、額縁状を有するとともに、複数の孔部70が、孔部66と同軸上に形成される。
【0097】
孔部66、70には、ボルト72が一体に挿入され、このボルト72が、下部エンドプレート38のねじ孔40にねじ込まれることにより、ボックス62の底部(架台部)62aが燃料電池保持部44を積層方向に押圧する。
【0098】
このように構成される第2の実施形態では、第1複合層54a及び第2複合層54bを構成するバーミキュライトの熱膨張率は、ボックス62の熱膨張率よりも大きい。このため、特に、高温時におけるボックス62の伸びによる積層体36の締め付け荷重の低下を良好に阻止することができる。これにより、所望の部位にそれぞれ所望の締め付け荷重を確実に付与して、燃料電池スタック60全体の発電性能の向上が容易に図られる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0099】
しかも、第2の実施形態では、ボックス62は、安価で且つ線膨張係数が小さいフェライト系ステンレスで構成されており、積層体36との熱膨張差を小さくすることが可能になる。従って、高温時の荷重低下を一層低減することが可能になる。その上、耐熱合金の使用量を少なくすることができ、燃料電池スタック60を経済的に構成することが可能になる。
【0100】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタック80の概略断面説明図である。
【0101】
燃料電池スタック80は、アルミナ層52を用いておらず、上部エンドプレート42上には、複合材(第1複合層54a及び第2複合層54b)が直接載置される。これにより、第3の実施形態では、上記の第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0102】
なお、第1の実施形態においても同様に、アルミナ層52を不要にすることができる一方、以下に説明する第4以降の実施形態においても、同様に構成することが可能である。
【0103】
図7は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池スタック90の一部分解斜視説明図である。
【0104】
図7及び図8に示すように、燃料電池スタック90では、上部エンドプレート42上には、燃料電池保持部92とボックス62の底部62aとが積層される。燃料電池保持部92は、挟持部35に電解質・電極接合体20に対応して積層方向に荷重を付与する第1保持部92aと、反応ガス供給部37に前記積層方向に荷重を付与する第2保持部92bとを有するとともに、前記第1保持部92aは、前記第2保持部92bよりも密度が小さく設定される。
【0105】
第1保持部92aは、電解質・電極接合体20の形状に対応する第1複合層94aを備える。第2保持部92bは、第1複合層94aを収容するとともに、反応ガス供給部37に対応する額縁状の2枚の第2複合層94b、94bを備える。
【0106】
第1複合層94aと2枚の第2複合層94b、94bとは、外部荷重が付与されない状態で、それぞれ異なる高さに設定される。ボックス62内に積層体36が収容された際、第1複合層94aと2枚の第2複合層94b、94bとは、同一の厚さに圧縮されている。すなわち、第1複合層94aは、挟持部35に電解質・電極接合体20に対応して積層方向に所望の荷重P1を付与する一方、前記第1複合層94aよりも大きく圧縮される第2複合層94b、94bは、反応ガス供給部37に前記積層方向に所望の荷重P2(P1<P2)を付与する。
【0107】
このように、第4の実施形態では、挟持部35に電解質・電極接合体20に対応して積層方向に所望の荷重P1を付与する第1保持部92aは、反応ガス供給部37に前記積層方向に所望の荷重P2(P1<P2)を付与する第2保持部92bよりも密度が小さく設定されている。
【0108】
これにより、簡単且つコンパクトな構成で、固体酸化物形燃料電池12の異なる部位にそれぞれ所望の締め付け荷重を確実に付与するとともに、放熱を抑制して高効率化が遂行される等、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られる。しかも、1枚の第1複合層94aと2枚の第2複合層94b、94bとを個別に用意すればよく、構成及び作業の簡素化が容易に図られる。なお、第2複合層94bは、2枚の積層物として構成しているが、例えば、3枚以上の積層物や1枚の肉厚な複合層で構成してもよい。
【0109】
図9は、本発明の第5の実施形態に係る燃料電池スタック100の概略断面説明図である。
【0110】
燃料電池スタック100は、ボックス102を備えるとともに、前記ボックス102内には、燃料電池保持部104が配設される。ボックス102の底部102aには、電解質・電極接合体20の形状に対応する凹部102bが設けられ、前記底部102a及び前記凹部102bにより、架台部が構成される。
【0111】
燃料電池保持部104は、挟持部35に電解質・電極接合体20に対応して積層方向に荷重を付与する第1保持部104aと、反応ガス供給部37に前記積層方向に荷重を付与する第2保持部104bとを有するとともに、前記第1保持部104aは、前記第2保持部104bよりも密度が小さく設定される。
【0112】
第1保持部104aは、第1複合層106aを設ける一方、第2保持部104bは、第2複合層106bを設ける。第1複合層106aと第2複合層106bとは、外部荷重が付与されない状態で、同一の高さに設定される。ボックス102内に積層体36が収容された際、第1複合層106aと第2複合層106bとは、それぞれ異なる厚さに圧縮されている。
【0113】
すなわち、第1複合層106aは、ボックス102の凹部102bに収容されるため、第2複合層106bよりも圧縮量が少なくなり、第1保持部104aは、第2保持部104bよりも密度が小さく設定される。
【0114】
このため、第1複合層106aは、挟持部35に電解質・電極接合体20に対応して積層方向に所望の荷重P1を付与する一方、第2複合層106bは、反応ガス供給部37に前記積層方向に所望の荷重P2(P1<P2)を付与する。
【0115】
このように、第5の実施形態では、挟持部35に電解質・電極接合体20に対応して積層方向に所望の荷重P1を付与する第1保持部104aは、反応ガス供給部37に前記積層方向に所望の荷重P2(P1<P2)を付与する第2保持部104bよりも密度が小さく設定されている。
【0116】
これにより、簡単且つコンパクトな構成で、固体酸化物形燃料電池12の異なる部位にそれぞれ所望の締め付け荷重を確実に付与するとともに、放熱を抑制して高効率化が遂行される等、上記の第1〜第4の実施形態と同様の効果が得られる。
【0117】
図10は、本発明の第6の実施形態に係る燃料電池スタック110の概略斜視説明図である。
【0118】
図10及び図11に示すように、燃料電池スタック110は、矢印C方向に積層される複数の固体酸化物形燃料電池112を備え、複数の前記固体酸化物形燃料電池112が鉛直方向(矢印C方向)に積層されて積層体114が構成される。
【0119】
固体酸化物形燃料電池112は、図12に示すように、同一平面状に2つの電解質・電極接合体20を挟持する一組のセパレータ116を備える。電解質・電極接合体20は、アノード電極支持型セル又は電解質支持型セルで構成される。セパレータ116は、第1プレート118と第2プレート120とを備え、前記第1プレート118及び前記第2プレート120は、例えば、ステンレス合金等の板金で構成され、ろう付け、拡散接合やレーザ溶接等により互いに接合される。
【0120】
セパレータ116は、中央部に燃料ガス供給連通孔122が形成される燃料ガス供給部(反応ガス供給部)124を有する。燃料ガス供給部124には、互いに反対方向に延在して一対の橋架部126A、126Bが連結されるとともに、一対の前記橋架部126A、126Bには、前記燃料ガス供給部124を中心に対称位置にそれぞれ挟持部128A、128Bが一体に設けられる。
【0121】
第1プレート118は、燃料ガス供給連通孔122が形成される第1円板部130を有し、前記第1円板部130から互いに反対方向に延在して、第1長板部132A、132Bが一体に設けられる。第1長板部132A、132Bには、第1矩形状部134A、134Bが一体に設けられる。第1矩形状部134A、134Bの各カソード電極16に対向する面部には、複数の突起部136A、136Bを介して、それぞれ酸化剤ガス通路30A、30Bが形成される。
【0122】
第2プレート120は、中央に燃料ガス供給連通孔122が形成される第2円板部138を有し、前記第2円板部138には、互いに逆方向に延在して第2長板部140A、140Bが一体に設けられる。第2長板部140A、140Bには、それぞれ第2矩形状部142A、142Bが一体に設けられる。
【0123】
各第2長板部140A、140Bから各第2矩形状部142A、142Bの途上に延在して、燃料ガス供給通路144A、144Bが形成されるとともに、前記燃料ガス供給通路144A、144Bの終端縁部には、燃料ガス供給孔146A、146Bが形成される。第2矩形状部142A、142Bには、燃料ガス供給通路144A、144Bが形成される面側に、それぞれ複数の燃料ガス排出孔147A、147Bが形成される。
【0124】
図13に示すように、第2矩形状部142A、142Bのアノード電極18に接触する面側には、複数の突起部148A、148Bを介して燃料ガス通路32A、32Bが形成される。燃料ガス通路32A、32Bは、外縁周回用凸部150A、150Bにより周回されるとともに、それぞれ燃料ガス排出孔147A、147Bに連通する貫通孔152A、152Bが形成される。燃料ガス供給孔146A、146Bと燃料ガス排出孔147A、147Bとの間には、V字状の迂回路形成用壁部154A、154Bが形成される。
【0125】
図12に示すように、橋架部126A、126Bの両側には、酸化剤ガスを矢印C方向に流通させるための酸化剤ガス供給連通孔156が設けられる。酸化剤ガス供給連通孔156は、例えば、鉛直上方向に酸化剤ガスを流通させるとともに、各固体酸化物形燃料電池82を構成する酸化剤ガス通路30A、30Bに沿って、前記酸化剤ガスを矢印A方向に供給する。
【0126】
電解質・電極接合体20を挟んで配設される一対のセパレータ116において、各燃料ガス供給部124間には、燃料ガス供給連通孔122をシールするための絶縁シール158が設けられる。絶縁シール158は、例えば、マイカ材やセラミック材等の地殻成分系素材、ガラス系素材、粘土とプラスチックの複合素材で形成される。
【0127】
各固体酸化物形燃料電池112には、挟持部128A、128Bの矢印A方向外方に位置して、排ガス排出連通孔160が形成される。この排ガス排出連通孔160は、電解質・電極接合体20に供給されて反応に使用された燃料ガス及び酸化剤ガスを排ガスとして積層方向に排出する。
【0128】
燃料電池スタック110は、図10及び図11に示すように、積層体114の積層方向下端(一端)に配置される下部エンドプレート162と、前記積層体114の積層方向上端(他端)に各挟持部128A、128Bに対応して配置される上部エンドプレート164A、164Bと、燃料ガス供給部124に対応して配置される燃料シールプレート166とを備える。
【0129】
上部エンドプレート164A、164B上には、第1保持部170A、170Bが配置されるとともに、燃料シールプレート166には、第2保持部171が配置されるとともに、これらにより燃料電池保持部が構成される。
【0130】
第2保持部171は、燃料シールプレート166に隣接するアルミナ層172と、このアルミナ層172上に積層される複合層174a、174bとを有する。アルミナ層172及び複合層174a、174bは、燃料シールプレート166に対応して円板状に構成される。
【0131】
第1保持部170A、170Bは、上部エンドプレート164A、164B上に載置されるアルミナ層52A、52Bと、前記アルミナ層52A、52B上に積層される複合層54A、54Bとを備える。
【0132】
アルミナ層172、52A及び52Bは、上記のアルミナ層52と同一に構成され、複合層174a、174b、54A及び54Bは、上記の第1複合層54aと同様に構成される。
【0133】
第2保持部171は、第1保持部170A、170Bよりも積層方向(矢印C方向)に大きな荷重を付与するように、2枚の複合層174a、174bを備える。複合層174a、174bの全体の厚さは、各複合層54A、54Bの厚さよりも大きく設定される。
【0134】
燃料電池スタック110は、ボックス176を備える。このボックス176の開口部側端部にフランジ部178が形成されるとともに、このフランジ部178と下部エンドプレート162との間には、シール部材180が介装される。フランジ部178と下部エンドプレート162とは、複数本のボルト72を介して固定される。
【0135】
下部エンドプレート162には、図14に示すように、酸化剤ガス供給連通孔156に連通するそれぞれ2つの空気用孔部182a、182bと、排ガス排出連通孔160に連通する2つの排ガス用孔部184a、184bとが形成される。下部エンドプレート162には、燃料ガス供給連通孔122に連通する1つの燃料ガス用孔部185が形成される。
【0136】
このように構成される燃料電池スタック110の動作について、以下に説明する。
【0137】
燃料ガスは、下部エンドプレート162の燃料ガス用孔部185から燃料電池スタック110の燃料ガス供給連通孔122に供給される。一方、空気は、下部エンドプレート162の空気用孔部182a、182bから燃料電池スタック110の酸化剤ガス供給連通孔156に供給される。
【0138】
図12に示すように、燃料ガス供給連通孔122に供給された燃料ガスは、各固体酸化物形燃料電池112を構成するセパレータ116において、橋架部126A、126Bに形成されている燃料ガス供給通路144A、144Bに導入される。燃料ガスは、燃料ガス供給通路144A、144Bから燃料ガス供給孔146A、146Bを通って燃料ガス通路32A、32Bに導入される。
【0139】
図13に示すように、燃料ガス通路32A、32Bに導入された燃料ガスは、迂回路形成用壁部154A、154Bの案内作用下に、前記燃料ガス通路32A、32Bを通って電解質・電極接合体20のアノード電極18に供給された後、各燃料ガス排出孔147A、147Bを通って排ガス排出連通孔160に排出される。
【0140】
一方、酸化剤ガス供給連通孔156に供給された空気は、各電解質・電極接合体20のカソード電極16とセパレータ116との間に形成されている酸化剤ガス通路30A、30Bに導入される。酸化剤ガスは、酸化剤ガス通路30A、30Bを矢印A方向に移動しながら、電解質・電極接合体20のカソード電極16に供給された後、排ガス排出連通孔160に排出される。
【0141】
この場合、第6の実施形態では、燃料ガス供給部124に積層方向に荷重を付与する第2保持部171と、挟持部128A、128Bに電解質・電極接合体20に対応して、前記積層方向に荷重を付与する第1保持部170A、170Bとを有している。
【0142】
そして、第2保持部171は、第1保持部170A、170Bよりも積層方向に大きな荷重を付与している。具体的には、第2保持部171は、複合層174a、174bを有する一方、第1保持部170A、170Bは、複合層54A、54Bを有しており、前記複合層174a、174bの全体の厚さは、各複合層54A、54Bの厚さよりも大きく設定されている。
【0143】
これにより、ボックス176内に積層体114が収容された状態で、複合層174a、174bは、複合層54A、54Bよりも大きく収縮されるため、燃料ガス供給部94には、比較的大きな荷重が付与される。従って、燃料ガス供給部94のシール性を良好に維持することが可能になる。
【0144】
一方、電解質・電極接合体20には、挟持部128A、128Bとの密着性を高める程度の比較的小さな荷重を付与することができる。このため、電解質・電極接合体20の損傷を可及的に阻止するとともに、効率的な発電及び集電が遂行される。
【0145】
これにより、簡単且つコンパクトな構成で、固体酸化物形燃料電池112の異なる部位にそれぞれ所望の締め付け荷重を確実に付与するとともに、放熱を抑制して高効率化が遂行される等、上記の第1〜第5の実施形態と同様の効果が得られる。
【0146】
図15は、本発明の第7の実施形態に係る燃料電池スタック190の概略断面説明図である。
【0147】
燃料電池スタック190は、ボックス192を備えるとともに、前記ボックス192内には、上部エンドプレート164A、164B上に燃料電池保持部を構成する第1保持部170A、170Bが配置されるとともに、燃料シールプレート166上に燃料電池保持部を構成する第2保持部194が配置される。
【0148】
ボックス192の底部192aには、電解質・電極接合体20の形状に対応する凸部192bが設けられ、前記底部192a及び前記凸部192bにより、架台部が構成される。
【0149】
第2保持部194は、複合層174を有するとともに、外部荷重が付与されない状態で、前記複合層174は、各複合層54A、54Bと同一の厚さに設定される。ボックス192内に積層体114が収容された際、複合層174と各複合層54A、54Bとは、それぞれ異なる厚さに圧縮されている。
【0150】
すなわち、複合層174は、ボックス192の凸部192bに配置されるため、各複合層54A、54Bよりも圧縮量が多くなり、第1保持部170A、170Bは、第2保持部194よりも密度が小さく設定される。
【0151】
このため、複合層54A、54Bは、挟持部128A、128Bに電解質・電極接合体20に対応して積層方向に所望の荷重P1を付与する一方、複合層174は、燃料ガス供給部124に前記積層方向に所望の荷重P2(P1<P2)を付与する。
【0152】
このように、第7の実施形態では、簡単且つコンパクトな構成で、固体酸化物形燃料電池112の異なる部位にそれぞれ所望の締め付け荷重を確実に付与するとともに、放熱を抑制して高効率化が遂行される等、上記の第1〜第6の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0153】
10、60、80、90、100、110、190…燃料電池スタック
12、82、112…固体酸化物形燃料電池
14…電解質 16…カソード電極
18…アノード電極 20…電解質・電極接合体
22、116…セパレータ 24a、24b、68…シール部材
26a…酸化剤ガス供給連通孔 26b、156…酸化剤ガス排出連通孔
28a、122…燃料ガス供給連通孔 28b…燃料ガス排出連通孔
30、30A、30B…酸化剤ガス通路
32、32A、32B…燃料ガス通路
35、128A、128B…挟持部 36、114…積層体
37…反応ガス供給部 38、162…下部エンドプレート
42、164A、164B…上部エンドプレート
44、92、104…燃料電池保持部 46…荷重プレート
50、72…ボルト
52、52A、52B、172…アルミナ層
54A、54B、54a、54b、94a、94b、106a、106b、174、174a、174b…複合層
62、102、192…ボックス 62a…底部
64、178…フランジ部
92a、92b、104a、104b、170A、170B、171、194…保持部
94、124…燃料ガス供給部 102b…凹部
118、120…プレート 126A、126B…橋架部
166…燃料シールプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される固体酸化物形燃料電池を備え、複数の前記固体酸化物形燃料電池が積層される積層体を有する燃料電池スタックであって、
前記セパレータは、前記電解質・電極接合体を挟持するとともに、前記アノード電極の電極面に沿って燃料ガスを供給する燃料ガス通路、及び前記カソード電極の電極面に沿って酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路が、個別に設けられる挟持部と、
少なくとも前記燃料ガスを前記燃料ガス通路に供給するための燃料ガス供給連通孔、又は前記酸化剤ガスを前記酸化剤ガス通路に供給するための酸化剤ガス供給連通孔が、積層方向に形成される反応ガス供給部と、
を備える一方、
前記燃料電池スタックは、前記積層体の積層方向一端に配置される基台部と、
前記積層体の積層方向他端に配置され、該積層体に積層方向に沿って荷重を付与する架台部と、
前記架台部と前記積層体との間に配置され、アルミナ繊維とバーミキュライトとの複合材を有する燃料電池保持部と、
を備え、
前記燃料電池保持部は、前記挟持部に前記電解質・電極接合体に対応して積層方向に荷重を付与する第1保持部と、
前記反応ガス供給部に前記積層方向に荷重を付与する第2保持部と、
を有するとともに、
前記第1保持部は、前記第2保持部よりも密度が小さく設定されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池スタックにおいて、前記第1保持部は、前記第2保持部よりも前記バーミキュライトの含有量が少ないことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1記載の燃料電池スタックにおいて、前記第1保持部は、前記第2保持部よりも前記複合材の密度が小さいことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池スタックにおいて、前記燃料電池保持部は、アルミナ繊維により構成されるアルミナ層と、
前記複合材により構成される複合層と、
を備えるとともに、
前記アルミナ層は、前記積層体側に配置され且つ前記複合層は、前記架台部側に配置されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池スタックにおいて、前記架台部は、前記基台部と平行に配置されるプレート部材であり、
前記プレート部材と前記基台部とは、複数のボルトを介して前記積層方向に締め付け保持されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池スタックにおいて、前記架台部は、前記積層体を収容するボックスの底部により構成されるとともに、
前記ボックスの開口側端部は、前記基台部に隣接して複数のボルトを介し前記積層方向に締め付け保持されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池スタックにおいて、前記電解質・電極接合体は、前記アノード電極の厚さ方向の寸法が前記カソード電極及び前記電解質の厚さ方向の寸法よりも大きなアノード電極支持型セルであるとともに、
前記カソード電極の表面積は、前記電解質の表面積よりも小さく設定されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池スタックにおいて、前記電解質・電極接合体は、前記電解質の厚さ方向の寸法が前記アノード電極及び前記カソード電極の厚さ方向の寸法よりも大きな電解質支持型セルであるとともに、
少なくとも前記アノード電極の表面積又は前記カソード電極の表面積は、前記電解質の表面積よりも小さく設定されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池スタックにおいて、前記固体酸化物形燃料電池は、平板積層型固体酸化物形燃料電池であることを特徴とする燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−20886(P2013−20886A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155006(P2011−155006)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】