説明

燃料電池制御システム

【課題】 エネルギ貯蔵デバイスと両立できるように燃料電池の出力を制御するシステム及び方法を提供することである。
【解決手段】 制御システム(20)は、燃料電池(24)及びエネルギ貯蔵デバイス(28)のための所定のパラメータ(21)のダイナミックシステムモデリングを介して、エネルギ貯蔵デバイスの充電状態を制御する。本発明の方法(100)によれば、燃料電池及びエネルギ貯蔵デバイスに関係する所定のパラメータを操作する(ステップ108)ことによって、エネルギ貯蔵デバイスの所望の状態が制御され、また負荷電流が燃料電池及びエネルギ貯蔵デバイスの間に分割される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般的には発電用燃料電池システムに関し、特定的には燃料電池の出力をエネルギ貯蔵デバイスと両立可能なように制御する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】燃料電池システムは、普通の源に優る多くの長所を提供する。燃料電池においては、電気は、水素と酸素との反応によって電気化学的に生成される。唯一の反応排出物は水蒸気であり、これは本質的に環境に対して無害である。これは、炭化水素、一酸化炭素、その他の化学物質のような有害な排出物を解放する普通の発電システムとは対照的である。
【0003】発電に使用される燃料電池システムは、正常な動作状態並びに過渡的な動作状態の下で電気的要求を満足するように制御しなければならない。外部負荷の長期変動は、システムコントロールを介して燃料及びオキシダントエネルギを適切に入力することによって、燃料電池システム内で処理しなければならない。
【0004】燃料電池発電システムは、電力変換段を使用して、燃料電池とエネルギ貯蔵デバイスとをインタフェースする必要があることから、典型的には複雑である。電力変換段は、燃料電池の出力電圧を、負荷と、またはインバータのような付加的な電力変換段と両立できるように変更する。各電力変換段毎に効率が損なわれ、付加的なコストが追加される。従って、これらの発電システムは、極めて高コストになる傾向がある。
【0005】
【発明の概要】本発明の目的は、燃料電池システムを制御するプロセスを提供することである。本発明の別の目的は、複数の電力変換段の必要性を排除することによって、燃料電池発電システムの総合コストを低下させることである。本発明のさらなる目的は、エネルギ貯蔵デバイスと燃料電池との組合わせの合計電力負荷に応答して、燃料電池システム変数を操作することである。
【0006】上述した目的、及び本発明の他の目的及び特色を遂行するための制御システム及び方法は、質量流、圧力、温度、湿度、及び空気及び燃料の利用率のような変数を別々に制御して燃料電池スタックの電圧を調整する。本発明によれば、燃料電池は、電力変換段を必要とせずに、エネルギ貯蔵デバイスに直接的に並列接続される。燃料電池の電圧は、それを負荷電流、及びエネルギ貯蔵デバイスの充電状態の関数として貯蔵デバイスの電圧特性と両立できるように制御される。
【0007】本発明は、燃料電池がエネルギ貯蔵デバイスと組合わされるような、低コスト・ハイブリッドバッテリーシステムに有用である。これらのデバイスでは、燃料電池は長期間電力を供給し、エネルギ貯蔵デバイスは電力のピーク及び/または負荷から回生された電力を貯蔵する能力を提供する。
【0008】本発明の他の目的及び長所は、以下の添付図面に基づく特定の実施の形態の詳細な説明から明白になるであろう。
【0009】
【実施の形態】図1は、直流/直流電力変換段12を含む従来技術の燃料電池制御システム10を示している。電力変換段12の目的は、燃料電池14と、バッテリー(図示)またはスーパーキャパシタ(図示してない)のようなエネルギ貯蔵デバイス16及び負荷18とをインタフェースすることである。電力変換段12を、燃料電池14と負荷18とを直接インタフェースするために使用することもできる。
【0010】本発明は、要求された負荷に供給するために、燃料電池の出力、エネルギ貯蔵デバイスの出力、及びエネルギ貯蔵デバイスの充電状態(SOC)を制御するためのシステム及び方法を提供する。
【0011】図2は、本発明の燃料電池制御システム20のブロック図である。コントローラ22は、燃料電池24の電圧を調整するために、所定の変数21を制御する。変数は、限定するものではないが、空気の質量流量(Ma)及び燃料の質量流量(Mf)、空気の圧力(Pa)及び燃料の圧力(Pf)、燃料電池24の温度(Tc)、空気及び水素の湿度、及び燃料電池24に引込まれる電流(Ifc)を含む。これらの所定の変数は、燃料電池24と図2に示されているバッテリーのようなエネルギ貯蔵デバイス28との組合わせに対する負荷26の合計電力に応答して操作される。
【0012】オプションとして、直流/直流コンバータ(図2には示されていない)を使用してエネルギ貯蔵デバイス8から直流電圧を取り、それを、インバータ(図示してない)を運転するのに必要な直流電圧に変換するか、または負荷26に直接結合することができる。直流/直流コンバータは、その直流電圧をより高い、またはより低い電圧に変換することができる。図1に示す従来技術の実施の形態は、燃料電池とエネルギ貯蔵デバイスとの間に電力コンバータを必要としていた。
【0013】本発明においては、図2に示すように燃料電池24は、エネルギ貯蔵デバイス28(図2にはバッテリーで示してあるが、スーパーキャパシタまたは他のデバイスであることもできる)のための充電器として動作するように制御される。燃料電池24はエネルギ貯蔵デバイス28と直接的に並列接続されている。本発明によれば、図1に示す従来の実施の形態におけるような中間電力変換段は必要としない。
【0014】図2に示すように、ダイオード30を使用して、エネルギ貯蔵デバイス28から燃料電池24内へ電流が流入するのを阻止することができる。このような逆方向電流は、若干の型の燃料電池を破壊する恐れがある。ダイオード30はオプションであり、挿入しなくとも差し支えない。
【0015】燃料電池24は、エネルギ貯蔵デバイス28における電圧(Vbat)と両立可能であるように、本発明に従って制御される電圧(Vcell)を有している。燃料電池電圧(Vcell)及びエネルギ貯蔵デバイス電圧(Vbat)は、負荷電流(Iload)及びエネルギ貯蔵デバイス28のSOCの関数として両立できるように制御される。負荷電流Iloadはコントローラ22によって負荷26において測定され、燃料電池24に対する要求電流を決定するために使用される。
【0016】燃料電池電圧Vcellは、幾つかの制御可能なパラメータを有する非線形関数である。これらは、限定するものではないが、Mf=燃料の質量流量Ma=空気の質量流量Pf=燃料の圧力Pa=空気の圧力RHa=空気の湿度Tc=燃料電池の温度Ifc=燃料電池に引込まれる電流を含む。
【0017】エネルギ貯蔵デバイス28の電圧Vbatも、限定するものではないが、SOC=エネルギ貯蔵デバイスの充電状態Ib=エネルギ貯蔵デバイスへ流入する、またはそれから流出する電流Tb=エネルギ貯蔵デバイスの温度Ab=エネルギ貯蔵デバイスの年齢を含む幾つかのパラメータの関数である。
【0018】燃料電池電圧の全ての制御可能なパラメータ、及びエネルギ貯蔵デバイスのパラメータの部分集合をモデリングし、測定し、そして制御することによって、これらの両デバイスの電圧・電流特性を調整し、エネルギ貯蔵デバイスのSOCの制御を達成する。SOCを制御することによって、エネルギ貯蔵デバイスの寿命が延び、十分なリザーブエネルギマージンが維持される。リザーブエネルギは、外部負荷26の変動に起因する一時的な高負荷電流状態に対処することを可能にする。
【0019】電池電圧は、 Vcell=VTH−(RT/2F)ln(PH2O/PH2)* (1/PO21/2 (1)
によって与えられる。ここに、Vcellは電池電圧であり、VTHは理論的なネルンスト電圧である。ネルンスト電圧は、損失が無ければ得ることができる最大電池電圧を表す理論的に計算される電圧である。(PH2O/PH2)は、燃料内の水及び水素ガスの分圧であり、PO2はオキシダント内の酸素ガスの分圧であり、Rはガス定数であり、そしてTは電池温度である。
【0020】平均電池電圧は、電池の状態を監視し、次の式(2)を適用することによって計算することができる。
cell=[1−α]Vin+αVout−IReff+RT/2F * ln(1−(Icell)/Ilimit))] (2)
【0021】ここに、Vin及びVoutは入口及び出口状態のためのネルンスト電圧であり、αは電池電圧のための重み付けファクタであり、Reffは温度Tにおける実効電池抵抗であり、Icellはセル電流であり、そしてIlimitは制限電流である。制限電流は電池の挙動に依存し、各電池はシステムに依存するそれ自体の制限電流を有している。
【0022】実効電池抵抗Reffは、 Reff=Ro[(σt * To) / Ro][ln(To / Tcell)] (3)
ここに、Roは参照温度Toにおける実効電池抵抗であり、σtは温度係数であり、Tcellは平均電池温度である。
【0023】図3に示すグラフはエネルギ貯蔵デバイスの電圧・電流特性300であり、図4に示すグラフは燃料電池の電圧・電流特性400である。エネルギ貯蔵デバイスの電圧・電流特性300は、電流の非線形関数である。特性302は低SOCを有するバッテリーを表し、特性304は高SOCを有するバッテリーを表している。
【0024】図4には、燃料電池特性400が、低SOCの燃料電池曲線402及び高SOCの燃料電池曲線404によって示されている。負荷電流(Iload)が変化するにつれてコントローラが燃料電池曲線402、404を操作し、それによってエネルギ貯蔵デバイスのSOCを制御する。所与の負荷電流に対する動作点は、曲線の交点で表される(次の方法の説明の後に、図6を参照して後述する)。
【0025】図5を参照して本発明の方法100を説明する。本発明は、エネルギ貯蔵デバイスの充電状態の望ましい変化を決定する(ステップ102)。これは、現SOCと、図2に示されているSOC目標32とを比較することによって達成される。負荷電流Iloadは、コントローラによって測定される(ステップ104)。
【0026】次いで、本方法は、エネルギ貯蔵デバイスのSOCを要望に応じて増減させ、燃料電池から供給される望ましい負荷電流の量を決定する(ステップ106)。上記燃料電池電圧の式のダイナミックシステムモデリングを介して、所定のパラメータが、測定された負荷電流Iload値に従って操作される(ステップ108)。燃料電池電圧Vcellは、負荷電流Iloadの関数として制御される(ステップ106)。次いで、エネルギ貯蔵デバイスのSOCが、燃料電池電圧Vcellの関数として制御される(ステップ108)。
【0027】図6は、本発明のシステム及び方法の動作例600を示している。図6には、エネルギ貯蔵デバイスの電圧・電流特性のグラフ602、604が、軸606に対して示されている。燃料電池の電圧・電流特性のグラフ608、610は軸612に対して示されている。軸606と軸612とは、負荷電流614だけ互いにずれている。負荷電流が変化すると、軸606と軸612との間の距離が正比例して変化する。
【0028】所与の負荷電流におけるエネルギ貯蔵デバイスのSOCは、以下のように制御される。エネルギ貯蔵デバイスの開始SOCが、エネルギ貯蔵デバイスの20%SOC特性を示す電圧・電流特性602によって表されるものとする。燃料電池が、電圧・電流特性が曲線608によって表されるように制御されると、曲線602と608との交点が動作点616を決定する。負荷電流は、エネルギ貯蔵デバイス電流618と燃料電池電流620とに分割される。
【0029】所与のレベルの負荷電流に対してSOCを増加させる場合には、上記燃料電池電圧の式、並びに必要であり得る何等かの線形、または非線形システムモデルに従って、燃料電池の所定の制御パラメータを調整する。燃料電池の電圧・電流特性曲線は、曲線610に向かって移り始める。
【0030】制御が上述したように調整された直後に、エネルギ貯蔵デバイス特使602と燃料電池特性610の交点は622で示される新しい動作点に到達する。動作点622においては、エネルギ貯蔵デバイスは充電中であるにも拘わらず、負荷電流は供給され続ける。エネルギ貯蔵デバイスのSOCが100%まで増加すると、電圧・電流特性は100%SOCに到達する時点まで変化する。この点において、エネルギ貯蔵デバイスの電圧・電流特性604が適用され、最終動作点624が限定される。最終動作点624において、エネルギ貯蔵デバイスからの電流は0になり、負荷電流は全て燃料電池によって供給される。
【0031】所定の制御パラメータを変更することによって、全充電状態範囲にわたる制御を達成することができる。また、負荷電流を、燃料電池とエネルギ貯蔵デバイスとの間に望ましく分割することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料電池とエネルギ貯蔵デバイスとの間に電力変換段が挿入されている従来技術の燃料電池制御システムの概要図である。
【図2】本発明の燃料電池制御システムの概要図である。
【図3】エネルギ貯蔵デバイスの電圧・電流特性のグラフである。
【図4】本発明の制御システムを使用する燃料電池の電圧・電流特性のグラフである。
【図5】本発明の方法のフローチャートである。
【図6】本発明の制御方法を説明するために、燃料電池及びエネルギ貯蔵デバイスの電圧・電流特性のグラフを重畳して示す図である。
【符号の説明】
10 従来の燃料電池制御システム
12 直流/直流電力変換段
14 燃料電池
16 エネルギ貯蔵デバイス
18 負荷
20 本発明の燃料電池制御システム
21 変数
22 コントローラ
24 燃料電池
26 負荷
28 エネルギ貯蔵デバイス
30 ダイオード
32 目標SOC
300 エネルギ貯蔵デバイスの電圧・電流特性
302、602 低SOCエネルギ貯蔵デバイスの特性
304、604 高SOCエネルギ貯蔵デバイスの特性
400 燃料電池の電圧・電流特性
402、608 低SOC燃料電池の特性
404、610 高SOC燃料電池の特性
600 システム及び方法の動作例
606 エネルギ貯蔵デバイスの軸
612 燃料電池の軸
614 負荷電流
616 動作点
618 エネルギ貯蔵デバイス電流
620 燃料電池電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃料電池の出力を制御するシステムであって、コントローラと、上記コントローラと通信する燃料電池と、上記燃料電池に直接的に並列接続されているエネルギ貯蔵デバイスと、を備え、上記コントローラは、上記燃料電池の出力電圧及び上記エネルギ貯蔵デバイスの出力電圧を制御することを特徴とするシステム。
【請求項2】 上記コントローラは、上記燃料電池の電圧を所定のパラメータの関数として制御し、また上記エネルギ貯蔵デバイスの充電状態を所定のパラメータの関数として制御するためのロジックを更に備えていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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