説明

燃料電池及び燃料電池のインピーダンス分布測定装置

【課題】 燃料電池のインピーダンス分布測定することが可能な燃料電池及びインピーダンス分布測定装置を実現する。
【解決手段】 水素と酸素とを化学反応させることにより発電を行う燃料電池において、電解質膜と、この電解質膜のアノード側に分割して形成される複数の触媒層・拡散層と、電解質膜のカソード側に分割して形成される複数の触媒層・拡散層と、電解質膜及び複数のアノード側触媒層・拡散層に形成される燃料ガスのガス流路と、電解質膜及び複数のカソード側触媒層・拡散層に形成される酸化ガスのガス流路と、複数のアノード側触媒層・拡散層、燃料ガス流路上に形成される複数のアノード側セパレータと、複数のカソード側触媒層・拡散層、酸化ガス流路上に形成される複数のカソード側セパレータと、複数のアノード側セパレータとの間及び複数のカソード側セパレータとの間に設けられる複数の絶縁部材とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素と酸素とを化学反応させることにより発電を行う燃料電池に関し、特に燃料電池のインピーダンス分布測定することが可能な燃料電池及びインピーダンス分布測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水素と酸素とを化学反応させることにより発電を行う燃料電池に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−051318号公報
【特許文献2】特開2003−086220号公報
【0004】
図3は従来の燃料電池システムの一例を示す構成ブロック図である。図3において1は電解質膜、2及び3は触媒層・拡散層である。電解質膜1の両面には触媒層・拡散層2及び触媒層・拡散層3がそれぞれ形成される。
【0005】
図3中”FG01”に示すように燃料ガス(例えば、水素等)が触媒層・拡散層2に供給され、図3中”OG01”に示すように酸化ガス(例えば、酸素や空気等)が触媒層・拡散層3に供給される。
【0006】
ここで、図3に示す従来例の動作を説明する。触媒層・拡散層2側(アノード側)では水素が水素イオン(H )になり電子(e )を放出し、一方、触媒層・拡散層3側(カソード側)では電解質膜1を伝播してきた水素イオン(H )と酸素原子が電子(e )と反応して水(HO )が生成される。
【0007】
この時、触媒層・拡散層2(アノード側)及び触媒層・拡散層3(カソード側)間の外部負荷を接続することにより、触媒層・拡散層2側(アノード側)で発生した電子(e )を取り出す、言い換えれば、直流電流を取り出すことが可能になる。
【0008】
また、図4及び図5は従来の過電圧の測定が可能な燃料電池の一例を示す断面図である。図4は燃料電池の電解質膜に対して垂直な面における断面図、図5は燃料電池におけるガス流路に平行な面における断面図である。
【0009】
図4において4は電解質膜、5及び7はアノード側の触媒層・拡散層、6及び8はカソード側の触媒層・拡散層、9はアノード側に形成された燃料ガス(例えば、水素等)のガス流路、10はカソード側に形成された酸化ガス(酸素や空気等)のガス流路、11及び13はアノード側に形成された導電性を有するセパレータ、12及び14はカソード側に形成された導電性を有するセパレータ、15及び16は絶縁部材である。
【0010】
電解質膜4のアノード側には触媒層・拡散層5及び触媒層・拡散層7が互いに接することなくそれぞれ形成され、電解質膜4のカソード側には触媒層・拡散層6及び触媒層・拡散層8が互いに接することなくそれぞれ形成される。
【0011】
また、触媒層・拡散層5及び触媒層・拡散層7の上、並びに、触媒層・拡散層5及び触媒層・拡散層7が形成されていないアノード側の電解質膜4の上(触媒層・拡散層5及び触媒層・拡散層7の境界部分)には燃料ガス(例えば、水素等)のガス流路9が形成される。
【0012】
同様に、触媒層・拡散層6及び触媒層・拡散層8の上、並びに、触媒層・拡散層6及び触媒層・拡散層8が形成されていないカソード側の電解質膜4の上(触媒層・拡散層6及び触媒層・拡散層8の境界部分)には酸化ガス(例えば、酸素や空気等)のガス流路10が形成される。
【0013】
例えば、ガス流路9は図5中”GT11”に示すように触媒層・拡散層5及び触媒層・拡散層7上、並びに、触媒層・拡散層5及び触媒層・拡散層7が形成されていないアノード側の電解質膜4の上(触媒層・拡散層5及び触媒層・拡散層7の境界部分)を蛇行するように形成されている。
【0014】
また、例えば、ガス流路10は図5中”GT11”に示すように触媒層・拡散層6及び触媒層・拡散層8上、並びに、触媒層・拡散層6及び触媒層・拡散層8が形成されていないカソード側の電解質膜4の上(触媒層・拡散層6及び触媒層・拡散層8の境界部分)を蛇行するように形成されている。
【0015】
さらに、ガス流路9が形成されていない触媒層・拡散層5及びガス流路9の上にはセパレータ11が形成され、ガス流路9が形成されていない触媒層・拡散層7及びガス流路9の上にはセパレータ13が形成されると共にセパレータ11及びセパレータ13の境界部分には絶縁部材15が設けられる。
【0016】
同様に、ガス流路10が形成されていない触媒層・拡散層6及びガス流路10の上にはセパレータ12が形成され、ガス流路10が形成されていない触媒層・拡散層8及びガス流路10の上にはセパレータ14が形成されると共にセパレータ12及びセパレータ14の境界部分には絶縁部材16が設けられる。
【0017】
ここで、図4及び図5に示す従来例の動作を説明する。ガス流路9には燃料ガス(例えば、水素等)が供給され、ガス流路10には酸化ガス(例えば、酸素や空気等)が供給される。例えば、図5中”IN11”に示す供給口から各ガスが供給され、図5中”OT11”に示す排気口から反応しなかったガス等が放出される。
【0018】
アノード側の触媒層・拡散層7では水素が水素イオン(H )になり電子(e )を放出し、一方、カソード側の触媒層・拡散層8側では電解質膜4を伝播してきた水素イオン(H )と酸素原子が電子(e )と反応して水(HO )が生成される。
【0019】
この時、アノード側の触媒層・拡散層7及びカソード側の触媒層・拡散層8(具体的には、セパレータ13とセパレータ14)と間の外部負荷を接続することにより、アノード側の触媒層・拡散層7で発生した電子(e )を取り出す、言い換えれば、直流電流を取り出すことが可能になる。
【0020】
一方、セパレータ11及びセパレータ12には外部負荷を接続せず、アノード側のセパレータ11とセパレータ13との間の電位差を測定することにより、アノード側の過電圧を測定することができる。
【0021】
同様に、カソード側のセパレータ12とセパレータ14との間の電位差を測定することにより、カソード側の過電圧を測定することができる。
【0022】
また、セパレータ13とセパレータ14との間から取り出される負荷電流に交流成分を重畳してセパレータ13とセパレータ14との間の電圧の応答性を測定することにより、燃料電池(具体的には、セパレータ13とセパレータ14との間の燃料電池)のインピーダンスを測定することができる。
【0023】
また、同時に、セパレータ13とセパレータ14との間の負荷電流に対するアノード側の過電圧及びカソード側の過電圧の応答性を測定することにより、アノード側の過電圧及びカソード側の過電圧のインピーダンスを測定することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかし、図4及び図5に示す従来例では、セパレータ13とセパレータ14との間の燃料電池のインピーダンスを測定することができるものの、燃料電池におけるインピーダンス分布を測定することができないと言った問題点があった。
従って本発明が解決しようとする課題は、燃料電池のインピーダンス分布測定することが可能な燃料電池及びインピーダンス分布測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
水素と酸素とを化学反応させることにより発電を行う燃料電池において、
電解質膜と、この電解質膜のアノード側に分割して形成される複数のアノード側の触媒層・拡散層と、前記電解質膜のカソード側に分割して形成される複数のカソード側の触媒層・拡散層と、前記電解質膜のアノード側及び複数の前記アノード側の触媒層・拡散層に形成される燃料ガスのガス流路と、前記電解質膜のカソード側及び複数の前記カソード側の触媒層・拡散層に形成される酸化ガスのガス流路と、複数の前記アノード側の触媒層・拡散層、燃料ガスの前記ガス流路上にそれぞれ形成される複数のアノード側のセパレータと、複数の前記カソード側の触媒層・拡散層、酸化ガスの前記ガス流路上にそれぞれ形成される複数のカソード側のセパレータと、複数の前記アノード側のセパレータとの間及び複数の前記カソード側のセパレータとの間にそれぞれ設けられる複数の絶縁部材とを備えたことにより、燃料電池のインピーダンス分布を測定することが可能になる。
【0026】
請求項2記載の発明は、
水素と酸素とを化学反応させることにより発電を行う燃料電池のインピーダンス分布測定装置において、
電解質膜と、この電解質膜のアノード側に分割して形成される複数のアノード側の触媒層・拡散層と、前記電解質膜のカソード側に分割して形成される複数のカソード側の触媒層・拡散層と、前記電解質膜のアノード側及び複数の前記アノード側の触媒層・拡散層に形成される燃料ガスのガス流路と、前記電解質膜のカソード側及び複数の前記カソード側の触媒層・拡散層に形成される酸化ガスのガス流路と、複数の前記アノード側の触媒層・拡散層、燃料ガスの前記ガス流路上にそれぞれ形成される複数のアノード側のセパレータと、複数の前記カソード側の触媒層・拡散層、酸化ガスの前記ガス流路上にそれぞれ形成される複数のカソード側のセパレータと、複数の前記アノード側のセパレータとの間及び複数の前記カソード側のセパレータとの間にそれぞれ設けられる複数の絶縁部材と、互いに対向する前記アノード側のセパレータと前記カソード側のセパレータとの間のインピーダンスをそれぞれ測定するインピーダンス測定装置とを備えたことにより、燃料電池のインピーダンス分布を測定することが可能になる。
【0027】
請求項3記載の発明は、
請求項2記載の発明であるインピーダンス分布測定装置において、
前記インピーダンス測定装置が、
電流挿引法によりインピーダンスを測定することにより、燃料電池のインピーダンス分布を測定することが可能になる。
【0028】
請求項4記載の発明は、
請求項2記載の発明であるインピーダンス分布測定装置において、
前記インピーダンス測定装置が、
電圧挿引法によりインピーダンスを測定することにより、燃料電池のインピーダンス分布を測定することが可能になる。また、インピーダンス測定中のセパレータ間の電圧が等しくなり、通常の燃料電池により近いインピーダンスの測定が可能になる。
【0029】
請求項5記載の発明は、
請求項2記載の発明であるインピーダンス分布測定装置において、
前記インピーダンス測定装置が、
互いに対向する前記アノード側のセパレータと前記カソード側のセパレータとの間に重畳させる交流成分を同期させてインピーダンスを測定することにより、燃料電池のインピーダンス分布を測定することが可能になる。また、通常の燃料電池のインピーダンス測定を同じ条件で各分割電池のインピーダンス測定を行うことが可能になる。
【0030】
請求項6記載の発明は、
請求項2記載の発明であるインピーダンス分布測定装置において、
前記インピーダンス測定装置が、
互いに対向する前記アノード側のセパレータと前記カソード側のセパレータとの間に重畳する交流成分の周波数をずらしてインピーダンスを測定することにより、燃料電池のインピーダンス分布を測定することが可能になる。また、インピーダンス測定時に周波数干渉を生じることなく、各分割電池のインピーダンスを測定することが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば次のような効果がある。
請求項1,2,3,4,5及び請求項6の発明によれば、燃料電池を絶縁部材等によって電気的に複数に分割して各分割電池の共有のガス流路に燃料ガスと酸化ガスを供給し各分割電池のインピーダンスを測定することにより、燃料電池のインピーダンス分布を測定することが可能になる。
【0032】
また、請求項4の発明によれば、電圧挿引法を用いることにより、インピーダンス測定中のセパレータ間の電圧が等しくなり、通常の燃料電池により近いインピーダンスの測定が可能になる。
【0033】
また、請求項5の発明によれば、分割電池のインピーダンスを測定する際に重畳させる交流成分を同期させることにより、通常の燃料電池のインピーダンス測定を同じ条件で各分割電池のインピーダンス測定を行うことが可能になる。
【0034】
また、請求項6の発明によれば、分割電池のインピーダンス測定の際に各分割電池に重畳する交流成分の周波数をずらして、各分割電池のインピーダンスを測定する装置に周波数フィルタを設けて交流成分を分離して測定することにより、インピーダンス測定時に周波数干渉を生じることなく、各分割電池のインピーダンスを測定することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1及び図2は本発明に係る燃料電池の一実施例を示す断面図である。図1は燃料電池の電解質膜に対して垂直な面における断面図、図2は燃料電池におけるガス流路に平行な面における断面図である。
【0036】
図1において、17は電解質膜、18,20,22及び24は4分割されたアノード側の触媒層・拡散層、19,21,23及び25は4分割されたカソード側の触媒層・拡散層、26はアノード側に形成された燃料ガス(例えば、水素等)のガス流路、27はカソード側に形成された酸化ガス(酸素や空気等)のガス流路、28,30,32及び34はアノード側に形成された導電性を有するセパレータ、29,31,33及び35はカソード側に形成された導電性を有するセパレータ、36,37,38,39,40及び41は絶縁部材である。
【0037】
電解質膜17のアノード側には触媒層・拡散層18,20,22及び触媒層・拡散層24が互いに接することなくそれぞれ形成され、電解質膜17のカソード側には触媒層・拡散層19,21,23及び触媒層・拡散層25が互いに接することなくそれぞれ形成される。
【0038】
また、触媒層・拡散層18,20,22及び触媒層・拡散層24の上、並びに、触媒層・拡散層18,20,22及び触媒層・拡散層24が形成されていないアノード側の電解質膜17の上(触媒層・拡散層18,20,22及び触媒層・拡散層24のそれぞれの境界部分)には燃料ガス(例えば、水素等)のガス流路26が形成される。
【0039】
同様に、触媒層・拡散層19,21,23及び触媒層・拡散層25の上、並びに、触媒層・拡散層19,21,23及び触媒層・拡散層25が形成されていないカソード側の電解質膜17の上(触媒層・拡散層19,21,23及び触媒層・拡散層25のそれぞれの境界部分)には酸化ガス(例えば、酸素や空気等)のガス流路27が形成される。
【0040】
例えば、ガス流路26は図2中”GT21”に示すように触媒層・拡散層18,20,22及び触媒層・拡散層24上、並びに、触媒層・拡散層18,20,22及び触媒層・拡散層24が形成されていないアノード側の電解質膜17の上(触媒層・拡散層18,20,22及び触媒層・拡散層24のそれぞれの境界部分)を蛇行するように形成されている。
【0041】
また、例えば、ガス流路27は図2中”GT21”に示すように触媒層・拡散層19,21,23及び触媒層・拡散層25上、並びに、触媒層・拡散層19,21,23及び触媒層・拡散層25が形成されていないカソード側の電解質膜17の上(触媒層・拡散層19,21,23及び触媒層・拡散層25のそれぞれの境界部分)を蛇行するように形成されている。
【0042】
さらに、ガス流路26が形成されていない触媒層・拡散層18及びガス流路26の上にはセパレータ28が形成され、ガス流路26が形成されていない触媒層・拡散層20及びガス流路26の上にはセパレータ30が形成される。
【0043】
ガス流路26が形成されていない触媒層・拡散層22及びガス流路26の上にはセパレータ32が形成され、ガス流路26が形成されていない触媒層・拡散層24及びガス流路26の上にはセパレータ34が形成される。
【0044】
セパレータ28及びセパレータ30の境界部分には絶縁部材36が、セパレータ30及びセパレータ32の境界部分には絶縁部材38が、セパレータ32及びセパレータ34の境界部分には絶縁部材40がそれぞれ設けられる。
【0045】
一方、ガス流路27が形成されていない触媒層・拡散層19及びガス流路27の上にはセパレータ29が形成され、ガス流路27が形成されていない触媒層・拡散層21及びガス流路27の上にはセパレータ31が形成される。
【0046】
ガス流路27が形成されていない触媒層・拡散層23及びガス流路27の上にはセパレータ33が形成され、ガス流路27が形成されていない触媒層・拡散層25及びガス流路27の上にはセパレータ35が形成される。
【0047】
セパレータ29及びセパレータ31の境界部分には絶縁部材37が、セパレータ31及びセパレータ33の境界部分には絶縁部材39が、セパレータ33及びセパレータ35の境界部分には絶縁部材41がそれぞれ設けられる。
【0048】
ここで、図1に示す実施例の動作を説明する。燃料電池は各絶縁部材等によって電気的に4分割されており、17,18,19,26,27,28及び29から構成される第1の分割された燃料電池(以下、単に分割電池と呼ぶ。)、17,20,21,26,27,30及び31から構成される第2の分割電池、17,22,23,26,27,32及び33から構成される第3の分割電池、17,24,25,26,27,34及び35から構成される第4の分割電池に分かれる。
【0049】
ガス流路26には燃料ガス(例えば、水素等)が供給され、ガス流路27には酸化ガス(例えば、酸素や空気等)が供給される。例えば、図2中”IN21”に示す供給口から各ガスが供給され、図2中”OT21”に示す排気口から反応しなかったガス等が放出される。
【0050】
アノード側の触媒層・拡散層18,20,22及び触媒層・拡散層24では水素が水素イオン(H )になり電子(e )を放出し、一方、カソード側の触媒層・拡散層19,21,23及び触媒層・拡散層25側では電解質膜17を伝播してきた水素イオン(H )と酸素原子が電子(e )と反応して水(HO )が生成される。
【0051】
この時、アノード側の触媒層・拡散層18,20,22及び触媒層・拡散層24とカソード側の触媒層・拡散層19,21,23及び触媒層・拡散層25(具体的には、互いに対向するセパレータ28とセパレータ29、セパレータ30とセパレータ31、セパレータ32とセパレータ33、並びに、セパレータ34とセパレータ35)と間の外部負荷を接続することにより、アノード側の触媒層・拡散層18,20,22及び触媒層・拡散層24で発生した電子(e )を取り出す、言い換えれば、直流電流を取り出すことが可能になる。
【0052】
すなわち、第1、第2、第3及び第4の分割電池はそれぞれ独立した燃料電池として動作することになる。
【0053】
また、第1の分割電池のインピーダンスを測定する場合、第1の分割電池に外部負荷を接続し、負荷電流に交流成分を重畳して互いに対向するセパレータ28とセパレータ29との間の電圧の応答性を測定することにより、第1の分割電池のインピーダンスを測定することができる。
【0054】
同様に、第2の分割電池のインピーダンスを測定する場合、第2の分割電池に外部負荷を接続し、負荷電流に交流成分を重畳して互いに対向するセパレータ30とセパレータ31との間の電圧の応答性を測定することにより、第2の分割電池のインピーダンスを測定することができる。
【0055】
第3の分割電池のインピーダンスを測定する場合、第3の分割電池に外部負荷を接続し、負荷電流に交流成分を重畳して互いに対向するセパレータ32とセパレータ33との間の電圧の応答性を測定することにより、第3の分割電池のインピーダンスを測定することができる。
【0056】
第4の分割電池のインピーダンスを測定する場合、第4の分割電池に外部負荷を接続し、負荷電流に交流成分を重畳して互いに対向するセパレータ34とセパレータ35との間の電圧の応答性を測定することにより、第4の分割電池のインピーダンスを測定することができる。
【0057】
この結果、燃料電池を絶縁部材等によって電気的に複数に分割して各分割電池の共有のガス流路に燃料ガスと酸化ガスを供給し各分割電池のインピーダンスを測定することにより、燃料電池のインピーダンス分布を測定することが可能になる。
【0058】
なお、図1及び図2に示す実施例では説明の簡単のために燃料電池を4分割した構成を例示しているが、勿論、分割数は4分割に限定されるものではなく、任意の数で燃料電池を分割して構わない。
【0059】
また、インピーダンスの測定方法としては、汎用のインピーダンス測定装置を分割電池の互いに対向するセパレータ間に接続してインピーダンスを測定しても構わない。
【0060】
また、インピーダンスの測定方法として、負荷電流に交流成分を重畳させる電流挿引法を用いているが、分割電池の電圧の直流成分及び交流成分を一致させ電流の応答性を測定する電圧挿引法を用いてインピーダンスを測定しても勿論構わない。電圧挿引法を用いた場合には、インピーダンス測定中のセパレータ間の電圧が等しくなり、通常の燃料電池により近いインピーダンスの測定が可能になる。
【0061】
また、分割電池のインピーダンスを測定する際には重畳させる交流成分を同期させても構わない。この場合には、通常の燃料電池のインピーダンス測定を同じ条件で各分割電池のインピーダンス測定を行うことが可能になる。
【0062】
また、分割電池のインピーダンス測定の際に各分割電池間で周波数干渉が生じた場合には、各分割電池に重畳する交流成分の周波数をずらして、各分割電池のインピーダンスを測定する装置に周波数フィルタを設けて交流成分を分離して測定すればよい。
【0063】
この場合には、インピーダンス測定時に周波数干渉を生じることなく、各分割電池のインピーダンスを測定することが可能になる。
【0064】
また、図1及び図2に示す実施例の説明に際しては、ガス流路26及びガス流路27は各々の触媒層・拡散層上を蛇行するように形成されている旨例示したが、勿論これに限定されるものではなく、ガス流路は直線状であってもその他の形状であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る燃料電池の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る燃料電池の一実施例を示す断面図である。
【図3】従来の燃料電池システムの一例を示す構成ブロック図である。
【図4】従来の過電圧の測定が可能な燃料電池の一例を示す断面図である。
【図5】従来の過電圧の測定が可能な燃料電池の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1,4,17 電解質膜
2,3,5,6,7,8,18,19,20,21,22,23,24,25 触媒層・拡散層
9,10,26,27 ガス流路
11,12,13,14,28,29,30,31,32,33,34,35 セパレータ
15,16,36,37,38,39,40,41 絶縁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と酸素とを化学反応させることにより発電を行う燃料電池において、
電解質膜と、
この電解質膜のアノード側に分割して形成される複数のアノード側の触媒層・拡散層と、
前記電解質膜のカソード側に分割して形成される複数のカソード側の触媒層・拡散層と、
前記電解質膜のアノード側及び複数の前記アノード側の触媒層・拡散層に形成される燃料ガスのガス流路と、
前記電解質膜のカソード側及び複数の前記カソード側の触媒層・拡散層に形成される酸化ガスのガス流路と、
複数の前記アノード側の触媒層・拡散層、燃料ガスの前記ガス流路上にそれぞれ形成される複数のアノード側のセパレータと、
複数の前記カソード側の触媒層・拡散層、酸化ガスの前記ガス流路上にそれぞれ形成される複数のカソード側のセパレータと、
複数の前記アノード側のセパレータとの間及び複数の前記カソード側のセパレータとの間にそれぞれ設けられる複数の絶縁部材と
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
水素と酸素とを化学反応させることにより発電を行う燃料電池のインピーダンス分布測定装置において、
電解質膜と、
この電解質膜のアノード側に分割して形成される複数のアノード側の触媒層・拡散層と、
前記電解質膜のカソード側に分割して形成される複数のカソード側の触媒層・拡散層と、
前記電解質膜のアノード側及び複数の前記アノード側の触媒層・拡散層に形成される燃料ガスのガス流路と、
前記電解質膜のカソード側及び複数の前記カソード側の触媒層・拡散層に形成される酸化ガスのガス流路と、
複数の前記アノード側の触媒層・拡散層、燃料ガスの前記ガス流路上にそれぞれ形成される複数のアノード側のセパレータと、
複数の前記カソード側の触媒層・拡散層、酸化ガスの前記ガス流路上にそれぞれ形成される複数のカソード側のセパレータと、
複数の前記アノード側のセパレータとの間及び複数の前記カソード側のセパレータとの間にそれぞれ設けられる複数の絶縁部材と、
互いに対向する前記アノード側のセパレータと前記カソード側のセパレータとの間のインピーダンスをそれぞれ測定するインピーダンス測定装置と
を備えたことを特徴とするインピーダンス分布測定装置。
【請求項3】
前記インピーダンス測定装置が、
電流挿引法によりインピーダンスを測定することを特徴とする
請求項2記載のインピーダンス分布測定装置。
【請求項4】
前記インピーダンス測定装置が、
電圧挿引法によりインピーダンスを測定することを特徴とする
請求項2記載のインピーダンス分布測定装置。
【請求項5】
前記インピーダンス測定装置が、
互いに対向する前記アノード側のセパレータと前記カソード側のセパレータとの間に重畳させる交流成分を同期させてインピーダンスを測定することを特徴とする
請求項2記載のインピーダンス分布測定装置。
【請求項6】
前記インピーダンス測定装置が、
互いに対向する前記アノード側のセパレータと前記カソード側のセパレータとの間に重畳する交流成分の周波数をずらしてインピーダンスを測定することを特徴とする
請求項2記載のインピーダンス分布測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−27808(P2008−27808A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200927(P2006−200927)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】