説明

燃料電池及び膜電極接合体

【課題】 5nm未満の粒径を有する新規なPt系触媒を提供する。
【解決手段】 少なくともPtとPを含有し、最大平均粒径が5nm未満である粒子からなることを特徴とする不均一系触媒。前記粒子の粒径は1nm〜3nmであり、Pを2原子%〜50原子%含有する。前記粒子はRuを更に含有し、粒子内のPtとRuの比率はPt40Ru60〜Pt90Ru10である。前記粒子は炭素基材を更に含有し、炭素基材はカーボンブラック又はカーボンナノチューブ(好ましくは、多層カーボンナノチューブ)である。前記不均一系触媒は燃料電池又は膜電極接合体の燃料極又は酸素極に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な触媒を燃料極或いは酸素極に有する燃料電池及び膜電極接合体に関する。更に詳細には、本発明は少なくともPtとPを含む触媒を燃料極或いは酸素極に有する燃料電池及び膜電極接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気エネルギーの大部分は、火力発電、水力発電又は原子力発電などにより供給されてきた。しかし、火力発電は石油や石炭などの化石燃料を燃焼させるため大規模な環境汚染をもたらすばかりか、石油などの資源枯渇が問題視されるようになってきた。また、水力発電は大規模なダム建設を必要とし、それによる自然破壊が懸念されるばかりか、建設適地も限られている。原子力発電は事故の際の放射能汚染が致命的であるばかりか、寿命を迎えた原子炉の廃炉問題などもあり、世界的には建設が抑制される方向に動いている。
【0003】
大規模な施設を必要とせず、環境汚染も起こさない発電方法として風力発電や太陽光発電が世界各国で利用されるようになり、我が国でも一部の地域で実際に風力発電や太陽光発電が実用化されている。しかし、風力発電は風が吹かなければ発電できず、また太陽光発電は日光照射がなければ発電できないなど、自然現象に左右され、安定的な電力供給ができないという欠点がある。また、風力発電では、風の強さにより、発電した電力の周波数が変動し、電気機器の故障原因となっていた。
【0004】
そこで、最近は、水素エネルギーから電気エネルギーを取り出すことができる発電装置例えば、水素燃料電池などの開発研究が活発になってきた。水素は水を分解することにより得られ、地球上に無尽蔵に存在するばかりか、物質量当たりに含まれる化学エネルギー量が大きく、しかも、エネルギー源として利用するときに有害物質や地球温暖化ガスを発生しないという利点を有する。
【0005】
水素ガスの代わりに、メタノールを使用する燃料電池の研究も活発に行われている。液体燃料であるメタノールを直接使用するメタノール燃料電池は、燃料の取り扱い易さに加え、安価な燃料ということで家庭用や産業用の比較的小出力規模の電源として期待されている。メタノールー酸素燃料電池の理論出力電圧は、水素燃料のものとほぼ同じ1.2V(25℃)であり、原理的には同様の特性が期待できる。
【0006】
固体高分子型燃料電池や直接メタノール型燃料電池ではアノードで水素やメタノールを酸化させると同時に、カソードでは酸素を還元して電気エネルギーを取り出している。これらの酸化還元反応は常温では進み難いため、燃料電池には触媒が使用されている。初期の燃料電池では白金(Pt)を炭素基材上に析出担持させ触媒として使用してきた。Ptは水素酸化やメタノール酸化に対して触媒活性を有しており、これまで炭素基材上へのPt触媒の析出雰囲気、つまり、析出時の外部因子を制御することにより、Pt触媒粒子の粒径を出来るだけ小さくし、Pt触媒の反応表面積を高めて使用することが試みられてきた。例えば、特許文献1では、アルコールでPtイオンを還元してPtを炭素基材上に担持させる際、反応溶液中に保護コロイドとしてポリビニルアルコールを添加し、Pt触媒粒子表面に保護コロイドを弱く吸着させ、Pt触媒の微粒子化を図っている。この方法で合成されたPt触媒表面には保護コロイドが吸着している。従って、触媒活性を十分に発現させるためには触媒合成後、保護コロイドを触媒表面から取り除く必要がある。このため、Pt微粒子合成後に水素気流中400℃で熱処理を行う方法が提案されている。しかし、この処理方法では保護コロイドを完全にPt触媒表面から取り去ることは出来ないばかりか、400℃の熱処理によりPt触媒微粒子同士が焼結してPt触媒粒子径が増大し、触媒活性が低下するという問題があった。
【0007】
また、Pt触媒には、メタノール酸化過程で発生する一酸化炭素(CO)、或いは水素ガス中に含まれるCOがPt触媒上に化学吸着し、最終的には触媒活性が失活する問題があった。この現象はCOによる触媒被毒と呼ばれている。COによるPt触媒の被毒を抑えるため、Ptへの添加元素の探索が行われた。その結果、PtにRuを添加することにより、COによる触媒被毒が大きく軽減されることが発見された(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
このRuはそれ自身に水素やメタノールの酸化活性は無いが、Pt上に被着したCOを素早くCOに酸化して逃がす働きを持った助触媒である。直接メタノール型燃料電池を例に挙げると、下記反応式(1)に示されるように、Pt触媒粒子上で脱プロトン反応が起こり、Pt触媒粒子上にCOが化学吸着する。これがCOにより触媒被毒である。しかし、Ruを含んだPtRu触媒では、下記反応式(2)で示されるように、Ruが水と反応してRu−OHを生成し、次いで、下記反応式(3)で示されるように、Pt触媒粒子表面に化学吸着したCOをCOに酸化して除去する。
Pt+CHOH → Pt-CO +4H+4e式(1)
Ru+HO → Ru-OH+H+e 式(2)
Pt-CO+Ru-OH → Pt+Ru+H+e+CO↑ 式(3)
【0009】
含浸法や無電解メッキ法或いはアルコール還元法でPtRu触媒を合成すると、その粒径は5〜10nmの範囲内に集中する。PtRuの粒径が大きいままだと触媒の有効表面積が増大せず、触媒活性も向上しない。従って、PtRuの触媒活性を高めるためには、PtRuの粒径を5nm未満とし、触媒の有効表面積を高めることが有効である。この場合、保護コロイドを添加してPtRu触媒の粒径を小さくする方法は、前記の理由により使用できない。5nm未満のPtRu触媒を製造する有効な方法の開発が強く求められているが、未だ成功していない。
【0010】
【特許文献1】特開昭56−155645号公報
【特許文献2】特開昭57−5266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、5nm未満の粒径を有する新規なPt系触媒を燃料極或いは酸素極に有する燃料電池及び膜電極接合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段として請求項1に係る発明は、少なくともPtとPを含有し、最大平均粒径が5nm未満である粒子からなることを特徴とする不均一系触媒である。
【0013】
前記課題を解決するための手段として請求項2に係る発明は、前記粒子の粒径は1nm〜3nmであることを特徴とする請求項1記載の不均一系触媒である。
【0014】
前記課題を解決するための手段として請求項3に係る発明は、前記粒子はPを少なくとも2原子%含有することを特徴とする請求項1記載の不均一系触媒である。
【0015】
前記課題を解決するための手段として請求項4に係る発明は、前記Pの含量は2原子%〜50原子%であることを特徴とする請求項1記載の不均一系触媒である。
【0016】
前記課題を解決するための手段として請求項5に係る発明は、炭素基材を更に含有することを特徴とする請求項1記載の不均一系触媒である。
【0017】
前記課題を解決するための手段として請求項6に係る発明は、前記炭素基材はカーボンブラック及びカーボンナノチューブから成る群から選択される少なくとも1種類であることを特徴とする請求項5記載の不均一系触媒である。
【0018】
前記課題を解決するための手段として請求項7に係る発明は、前記炭素基材は多層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項6記載の不均一系触媒である。
【0019】
前記課題を解決するための手段として請求項8に係る発明は、前記粒子はRuを更に含有することを特徴とする請求項1記載の不均一系触媒である。
【0020】
前記課題を解決するための手段として請求項9に係る発明は、前記粒子内のPtとRuの比率はPt40Ru60〜Pt90Ru10であることを特徴とする請求項8記載の不均一系触媒である。
【0021】
前記課題を解決するための手段として請求項10に係る発明は、前記炭素基材が20m/g〜300m/gの範囲内の比表面積を有することを特徴とする請求項8記載の不均一系触媒である。
【0022】
前記課題を解決するための手段として請求項11に係る発明は、リン含有還元剤の存在下でPtイオンを還元するステップを含むことを特徴とする請求項1の不均一系触媒の製造方法である。
【0023】
前記課題を解決するための手段として請求項12に係る発明は、前記リン含有還元剤は、亜燐酸、亜燐酸塩、次亜燐酸又は次亜燐酸塩の何れかに由来する化合物であることを特徴とする請求項11記載の製造方法である。
【0024】
前記課題を解決するための手段として請求項13に係る発明は、前記還元ステップは、アルコール還元又は無電解メッキステップであることを特徴とする請求項11記載の製造方法である。
【0025】
前記課題を解決するための手段として請求項14に係る発明は、カソードと、アノードと、該カソードとアノードとの間に配置された高分子電解質膜からなり、前記カソード及び/又はアノードは請求項1の前記触媒からなることを特徴とする燃料電池である。
【0026】
前記課題を解決するための手段として請求項15に係る発明は、アノードにメタノートと水、又は水素を供給し、カソードに酸素を供給することを特徴とする請求項1の燃料電池による電圧発生方法である。
【0027】
前記課題を解決するための手段として請求項16に係る発明は、アノード触媒層と、カソード触媒層と、該アノード触媒層とカソード触媒層との間に配置された高分子電解質とからなり、前記アノード触媒層及び/又はカソード触媒層は請求項1の前記触媒からなることを特徴とする膜電極接合体である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、無電解メッキ法、アルコール還元法により炭素基材上にPt系触媒を析出させる際にPを添加すると、Pt系触媒粒子が炭素基材上に析出する際、PがPt系触媒粒子の内部及び外部から作用し、析出するPt系触媒粒子を微細化して触媒粒子の表面積を増大させ、その結果、触媒活性が向上する事が発見された。特に、アルコール還元法及び無電解メッキ法により炭素基材上にPtRu触媒微粒子を析出させる際、PtRu二元系触媒に対してPを添加して三元系触媒とすると、前述したRuの添加効果は維持しつつ、Pが粒子の外部と内部から作用し、析出するPtRu触媒粒子を微細化し、触媒の表面積を増大させ、その結果、触媒活性が向上されることが発見された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明による燃料電池用の触媒は、炭素基材上に担持された下記の一般式、
PtRuP
で示される三元系微粒子からなる。前記式中、Pの含有率はPtRuの総モル数に対して、2原子%〜50原子%の範囲内であることが好ましい。Pの含有率が2原子%未満では触媒の粒径を十分に減少させる事ができない。一方、Pの含有率が50原子%超の場合、PtRuの含有率が低くなり過ぎ、電池出力が低下する。
【0030】
また、前記三元系触媒におけるPtとRuの原子比率(at%)は、40:60〜90:10の範囲内であることが好ましい。Ruが10at%未満の場合、十分に耐CO被毒性を高める事ができないため好ましくない。また、Ptが40at%未満の場合、メタノール酸化に対する触媒活性が不十分となるので好ましくない。
【0031】
PtRuの原子組成をPt40Ru60〜Pt90Ru10にすることにより触媒の最表面組成が最適化されて触媒活性が高まると考えられる。また、P組成をPtRuの総モル数に対して2原子%〜50原子%とした場合、PtRu触媒の粒子成長を抑え、比表面積の大きい触媒を得ることが出来る。その結果、前記反応式(2)及び(3)の反応がより速く進行し、メタノール酸化活性が向上するものと考えられる。
【0032】
PtRuP触媒の粒径は1〜3nmが適する。粒径が1nm未満では合成された触媒表面の活性が極めて高いため、周囲に存在する物質と触媒表面層に化合物を形成し、触媒自ら活性を低下させる。また、粒径が3nmより大きい場合、単位重量当たりの触媒の表面積を十分に増大させる事が出来ず、触媒活性を高める事が出来ない。
【0033】
図1及び図2は本発明より得られたPtRuP触媒微粒子1の模式的断面図である。X線光電子分光分析(XPS分析)から、アルコール還元法で合成されたPtRuP触媒粒子では図1に示すように、炭素基材3に担持されたPtRu粒子5の外表面にP7が酸化物として存在しており、無電解メッキ法により合成されたPtRuP触媒では、図2に示したようにPtRu粒子5の外表面にP7が酸化物として存在すると共に、PtRu粒子5の内部にP8が金属リン化物或いはリン単体として存在していることが示されている。従って、P7及びP8がPt粒子5の外部あるいは内部から作用し、その粒子成長が抑制され、PtRuP触媒微粒子1全体が微細化されるものと考えられる。
更に、燃料電池のアノードとカソードとの間には一般的に、固体高分子導電膜としてデュポン社製のナフィオン膜が使用されるが、ナフィオン膜ではスルホン酸基の水素原子がHとなってプロトン導電性を発揮する。従って、ナフィオン膜と電極触媒との界面は強酸性になる。従来のPtRu触媒に添加されていた第三金属元素(例えば、Mo、Mn、Fe,Co等)は耐酸性が無いため溶出して固体高分子導電膜のHとイオン変換し、その結果、固体高分子導電膜のプロトン導電性が低下するのに対して、Pは従来の第三金属元素とは異なり、耐酸性があるため酸に溶出せず、燃料電池用の触媒添加元素として好適である。
【0034】
触媒の担体となる炭素基材の比表面積は20〜300m/gが適する。比表面積が20m/g未満では十分に触媒を担持させる事が出来ない。また、比表面積が300m/g超では、炭素基材中に存在する微細孔の数が増大し、微細孔中に埋没する触媒が増加して電池反応の際に十分な三相界面を形成する事が困難となり、触媒として機能しなくなる。また、一般的に炭素基材の比表面積が大きくなるに従い、嵩が減少する。嵩の異なる炭素基材を使用し、同じ担持率の触媒(例えば50wt%)を作製すると、嵩の減少により同じ塗布量(例えば5mg/cm)の電極を作製した場合、電極の厚さが減少する。このため、電極塗膜中の物理的空隙が減少し、燃料の浸透性や酸素極での水の拡散性が低下して電池特性が劣化する。従って、燃料電池用の炭素基材には出来るだけ嵩の高い担体(比表面積の小さい炭素基材)を使用する事が好ましい。本発明で使用できる炭素基材は例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック及びカーボンナノチユーブなどである。これらの炭素基材は単独で使用するか、あるいは2種類以上を併用することができる。炭素基材がカーボンナノチューブの場合、カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブである事が好ましい。単層カーボンナノチューブではその直径が〜1nm程度であるため、粒径が1〜3nmの触媒粒子を十分に担持させる事が出来ない。
【0035】
本発明のPtRuP触媒は、直接メタノール型燃料電池(DMFC)のメタノール極、又は、固体高分子型燃料電池(PEFC)の水素極などの燃料極用触媒として特に有用である。
【0036】
本発明のPtRuP触媒微粒子は、無電解メッキ法又はアルコール還元法により製造することができる。
【0037】
本発明のPtRuP触媒微粒子のアルコール還元法による製造方法は基本的に、
(1)一種類以上のアルコールからなる有機溶剤中に炭素基材を分散させるステップと、
(2)前記炭素基材が分散されたアルコール系有機溶剤中に、Ptの塩又は錯体と、Ruの塩又は錯体と、P原子含有化合物を溶解させるステップと、
(3)炭素粉末及びPtの塩又は錯体と、Ruの塩又は錯体と、P原子含有化合物を含むアルコール溶液のpH値を調整するステップと、
(4)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うステップを含み、
前記炭素基材上に、下記の一般式、
PtRuP
で示される三元系微粒子を担持した燃料電池用触媒を生成することからなる。
【0038】
本発明のPtRuP触媒微粒子の無電解メッキ法による製造方法は基本的に、
(1)水溶液中に炭素基材を分散させるステップと、
(2)前記炭素基材が分散された水溶液中に、Ptの塩又は錯体と、Ruの塩又は錯体と、P原子含有化合物を溶解させるステップと、
(3)炭素粉末及びPtの塩又は錯体と、Ruの塩又は錯体と、P原子含有化合物を含む水溶液のpH値を調整するステップと、
(4)大気中又は不活性雰囲気中で、無電解メッキを行うステップを含み、
前記炭素基材上に、下記の一般式、
PtRuP
で示される三元系微粒子を担持した燃料電池用触媒を生成することからなる。
【0039】
本発明の製造方法により生成されたPtRuP触媒微粒子の粒径は、Pの存在により従来のPtRu触媒微粒子の粒径よりも小さくなる。一般的に、従来の製造方法により生成されたPtRu触媒の粒径は5nm〜10nm程度であったが、本発明によりPが添加されたPtRu触媒の粒径は1〜3nmに大きく減少する。この粒径減少によりPtRu触媒の表面積が増加し、水素酸化能或いはメタノール酸化能が大きく向上すると考えられる。本発明のPtRuP触媒微粒子の別の特徴は、粒径の分布範囲が従来のPtRu触媒微粒子の粒径分布範囲に比べて狭いことである。従来の方法で製造されたPtRu触媒微粒子の粒径は2〜10nmに分布するが、本発明では、PtRu二元触媒にPを加え、PtRuP三元触媒とすることにより粒径分布を1〜3nmに抑える事に成功した。
【0040】
アルコール還元法及び無電解メッキ法によりPtRuP触媒を合成する際、反応溶液のpHを酸性側に調整するために使用する酸としては硫酸であることが好ましい。その理由は、アルコールの加熱還流が200℃程度の高温で行われる場合、塩酸及び硝酸では沸点が低いため、加熱還流中に蒸発してpH値を所定の範囲内に維持することが困難になるためである。従って、本発明では使用する酸としては沸点が290℃の硫酸である事が好ましい。また、反応溶液のpHをアルカリ側に調整するために使用するアルカリは、同様の理由から水酸化ナトリウム或いは水酸化カリウムが適する。
【0041】
本発明のPtRuP触媒微粒子の製造方法において使用できるP原子含有化合物は、亜燐酸、亜燐酸塩、次亜燐酸及び次亜燐酸塩などである。+5価の原子価を有するP原子は、Neと同じ電子配置であるため、オクテット則により化学的に安定となるので本発明の目的には適さない。従って、+5価のP原子を有する燐酸(HPO)は本発明では使用できない。塩としてはアルカリ金属塩(例えば、亜燐酸ナトリウム、亜燐酸水素ナトリウム、次亜燐酸ナトリウム等)又はアンモニウム塩(亜燐酸アンモニウム、亜燐酸水素アンモニウム、次亜燐酸アンモニウム等)が好ましい。P原子含有化合物の添加量は、PtとRuの総モル数に対して2原子%〜50原子%の範囲内であることが好ましい。添加量が2原子%未満ではPtRu触媒を微粒子化する効果が十分ではなく、一方、50%を超えると触媒の特性が劣化する。これらのP原子含有化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0042】
本発明で使用されるPtの塩又は錯体は、例えば、酢酸白金、硝酸白金、ジニトロジアミン白金錯体、白金エチレンジアミン錯体、白金トリフェニルホスフィン錯体、白金アンミン錯体、ビス(アセチルアセトナト)白金(II)及び六塩化白金酸などである。これらの白金化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0043】
本発明で使用されるRuの塩又は錯体は、例えば、塩化ルテニウム水和物、酢酸ルテニウム、硝酸ルテニウム、ルテニウムトリフェニルホスフィン錯体、ルテニウムアンミン錯体、ルテニウムエチレンジアミン錯体、及びトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)等である。これらのルテニウム化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0044】
アルコール還元法ではアルコール系溶媒の沸点近傍の温度で還流すると、アルコール(R-OH)が加熱還流中に金属イオンを還元し、自らは酸化されてアルデヒド(R’-CHO)に変化する。無電解メッキ法では、還元剤が亜燐酸または亜燐酸塩の場合、亜燐酸または亜燐酸塩が燐酸或いは燐酸塩に酸化される際、電子を放出し、この電子をPtイオンとRuイオンが受け取って金属Ptと金属Ruに還元される。また、還元剤が次亜燐酸または次亜燐酸塩の場合、次亜燐酸または次亜燐酸塩が亜燐酸或いは亜燐酸塩に酸化される際、電子を放出し、この電子をPtイオンとRuイオンが受け取って金属Ptと金属Ruに還元される。
【0045】
本発明の加熱還流処理で使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、イソアミルアルコール、n-アミルアルコール、sec-ブチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アリルアルコール、n-プロピルアルコール、2-エトキシアルコール及び1,2-ヘキサデカンジオール等が挙げられる。これらアルコールは1種類又は2種類以上を適宜選択して使用することができる。還流の際、微粒子の酸化を防止するため、反応系内を窒素或いはアルゴン等の不活性ガスで置換しながら還流を行うことが好ましい。
【0046】
アルコール加熱還流処理における加熱温度及び還流時間は使用するアルコールの種類に応じて変化する。しかし、一般的に、加熱温度は60〜300℃程度であり、還流時間は30分間〜6時間の範囲内である。無電解メッキの場合、一般的浴温は50〜90℃であり、還元時間は30分〜4時間である。
【0047】
本発明において、Pt及びRuの塩又は錯体とP原子含有化合物は、少なくとも一種類以上のアルコールからなる有機溶剤に溶解される。このアルコールは、アルコールのみからなる場合の他、水を含有するものであることもできる。
【0048】
本発明において使用される触媒の担持率は、50wt%〜70wt%の範囲内であることが好ましい。担持率が50wt%未満の場合、一定量の触媒を塗布する際、触媒塗膜の厚みが増加し、燃料の拡散性が低下して電池の特性が劣化する。一方、担持率が70wt%超の場合、触媒全体を担持した状態で炭素基材上に析出させることが出来なくなる。
【実施例1】
【0049】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)1.69ミリモルとトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)1.69ミリモルと次亜燐酸ナトリウム0.338ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、炭素基材(バルカンXC−72R,比表面積254m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液をpH3に調整した。窒素ガス雰囲気下、200℃でこの溶液を攪拌しながら4時間還流し、PtRuP触媒微粒子を炭素基材上に析出担持させた。反応終了後、濾過、洗浄して乾燥させ触媒を得た。
【実施例2】
【0050】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)1.69ミリモルとトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)1.69ミリモルと亜燐酸二水素ナトリウム0.338ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、炭素基材(バルカンXC−72R,比表面積254m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液をpH3に調整した。窒素ガス雰囲気下、200℃でこの溶液を攪拌しながら4時間還流し、PtRuP触媒微粒子を炭素基材上に析出担持させた。反応終了後、濾過、洗浄して乾燥させ触媒を得た。
【比較例1】
【0051】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)1.69ミリモルとトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)1.69ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、炭素基材(バルカンXC−72R,比表面積254m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液をpH3に調整した。窒素ガス雰囲気下、200℃でこの溶液を攪拌しながら4時間還流し、PtRu触媒微粒子を炭素基材上に析出担持させた。反応終了後、濾過、洗浄して乾燥させ触媒を得た。
【比較例2】
【0052】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)1.69ミリモルとトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)1.69ミリモル及びモリブデン酸アンモニウム0.338ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、炭素基材(バルカンXC−72R,比表面積254m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液をpH3に調整した。窒素ガス雰囲気下、200℃でこの溶液を攪拌しながら4時間還流し、PtRuMo触媒微粒子を炭素基材上に析出担持させた。反応終了後、濾過、洗浄して乾燥させ触媒を得た。
【比較例3】
【0053】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)1.69ミリモルとトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)1.69ミリモルとタングステン酸ナトリウム0.338ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、炭素基材(バルカンXC−72R,比表面積254m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液をpH3に調整した。窒素ガス雰囲気下、200℃でこの溶液を攪拌しながら4時間還流し、PtRuW触媒微粒子を炭素基材上に析出担持させた。反応終了後、濾過、洗浄して乾燥させ触媒を得た。
【比較例4】
【0054】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)1.69ミリモルとトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)1.69ミリモルとトリス(アセチルアセトナト)鉄(III)0.338ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、炭素基材(バルカンXC−72R,比表面積254m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液をpH3に調整した。窒素ガス雰囲気下、200℃でこの溶液を攪拌しながら還流し、PtRuFe触媒微粒子を炭素基材上に析出担持させた。反応終了後、濾過、洗浄して乾燥させ触媒を得た。
【比較例5】
【0055】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)1.69ミリモルとトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)1.69ミリモルとビス(アセチルアセトナト)コバルト(II)0.338ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、炭素基材(バルカンXC−72R,比表面積254m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液をpH3に調整した。窒素ガス雰囲気下、200℃でこの溶液を攪拌しながら4時間還流し、PtRuCo触媒微粒子を炭素基材上に担持させた。反応終了後、濾過、洗浄して乾燥させ触媒を得た。
【0056】
実施例1、2及び比較例1〜5で得られた各触媒の粒径を電子顕微鏡で調べた。その結果を下記の表1に示す。比較例1〜5で得られた触媒の粒径は〜10nmとなっているのに対し、実施例1及び2で得られたPtRuP触媒の粒径は1〜3nmの範囲内に収まっていた。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例1で得られた炭素担持PtRuP微粒子触媒と比較例1で得られた炭素担持PtRu微粒子触媒の表面を透過型電子顕微鏡で観察した。結果を図3に示す。(A)は実施例1の炭素担持PtRuP微粒子触媒の電顕写真であり、(B)は比較例1の炭素担持PtRu微粒子触媒の電顕写真である。電顕写真における黒色〜灰黒色部分は触媒粒子であり、薄灰色又は灰白色部分は炭素担体である。(A)の電顕写真から明らかなように、本発明のPtRuP触媒微粒子の場合、粒径は殆どが1〜3nm程度であり、しかも粒子が分散し、凝集塊は殆ど存在していない。これに対して、(B)の電顕写真から明らかなように、比較例1のPtRu触媒微粒子の場合、粒径が〜10nmのものや凝集塊も存在する。これにより、P原子の添加による触媒の微粒子化が確認できた。
【0059】
実施例1〜2及び比較例1〜5で得られた触媒30mgをメタノール濃度25vol%、電解質1.5モル/リットルのHSO中に分散させ、25℃で作用極と対極にAu線を使用して電位0.2〜0.6(Vvs.NHE)の間を0.01V/秒の速度で掃引し、メタノール酸化活性を測定した。電位0.6(Vvs.NHE)におけるメタノール酸化電流を下記の表2に示す。表2に示された結果から、実施例1〜2で得られたPtRuP触媒では、比較例1〜5で得られた触媒に比べて大きなメタノール酸化電流が得られ、メタノール酸化活性が向上したことが分かる。
【0060】
【表2】

【0061】
実施例1及び2で得られたPtRuPの組成を蛍光X線によって調べた。その結果、実施例1では、Pt57Ru37、実施例2ではPt57Ru38であった。
【実施例3】
【0062】
実施例1で得られたバルカンXC−72Rに担持したPtRuP触媒に純水とナフィオン(デュポン社製)のアルコール溶液を加えて撹拌した後、その粘度を調整して触媒用インクとした。これをテフロンシート上に、PtRuP触媒の塗布量が5mg/cmになるように塗布した。乾燥後、テフロンシートを剥がし、メタノール極触媒とした。また、ケッチェンECに担持したPt触媒に純水とナフィオン(デュポン社製)のアルコール溶液を加えて撹拌した後、その粘度を調整して触媒用インクとした。これをテフロンシート上に、Pt触媒の塗布量が5mg/cmになるように塗布した。乾燥後、テフロンシートを剥がし、酸素極触媒とした。その後、PtRuP電極触媒と、Pt電極触媒を固体高分子電解質膜(デュポン社製ナフィオン膜)の両側にホットプレスして膜電極接合体を作製した。これらのメタノール極、固体高分子電解質膜及び酸素極と、液体燃料として15wt%のメタノール水溶液を用い、図4に示す直接メタノール型燃料電池を作製した。
図4において、符号10は直接メタノール型燃料電池を示す。また、符号12は酸素極側集電体、14は酸素極側拡散層、16は固体高分子電解質膜、18はメタノール極側拡散層、20はメタノール極側集電体、22はメタノール燃料タンク、24は空気導入孔、26は酸素極(Pt)触媒層、28はメタノール極(PtRuP)触媒層、30はメタノール燃料導入孔をそれぞれ示す。
酸素極側集電体12は、空気導入孔24を介して空気(酸素)を取り込む構造体としての機能を有すると共に、集電機能も有している。固体高分子電解質膜(デュポン社製ナフィオン膜)16は、メタノール極で発生したプロトンを酸素極側に輸送する機能と、更に、メタノール極と酸素極の短絡を防止するセパレータとしての機能を備えてなるものである。このように構成される直接メタノール型燃料電池10において、メタノール極側集電体20から供給される液体燃料はメタノール極側拡散層18を介してメタノール極触媒層28に導かれて酸化され、COと電子とプロトンに変換され、このプロトンは固体高分子電解質膜16を介して酸素極側に移動する。酸素極では酸素極側集電体12から取り込まれた酸素がメタノール極で生成した電子により還元され、これと上記のプロトンとが反応して水を生成する。図4に示される直接メタノール型燃料電池10では、このようなメタノールの酸化反応及び酸素の還元反応により発電が起こる。
【比較例6】
【0063】
実施例3におけるPtRuP触媒の代わりに、比較例1のPtRu触媒をメタノール極触媒として使用したこと以外は、実施例3と同様にして直接メタノール型燃料電池を作製した。
【比較例7】
【0064】
実施例3におけるPtRuP触媒の代わりに、比較例2のPtRuMo触媒をメタノール極触媒として使用したこと以外は、実施例3と同様にして直接メタノール型燃料電池を作製した。
【比較例8】
【0065】
実施例3におけるPtRuP触媒の代わりに、比較例3のPtRuW触媒をメタノール極触媒として使用したこと以外は、実施例3と同様にして直接メタノール型燃料電池を作製した。
【比較例9】
【0066】
実施例3におけるPtRuP触媒の代わりに、比較例4のPtRuFe触媒をメタノール極触媒として使用したこと以外は、実施例3と同様にして直接メタノール型燃料電池を作製した。
【比較例10】
【0067】
実施例3におけるPtRuP触媒の代わりに、比較例5のPtRuCo触媒をメタノール極触媒として使用したこと以外は、実施例3と同様にして直接メタノール型燃料電池を作製した。
【0068】
実施例3及び比較例6〜10でそれぞれ得られた各直接メタノール型燃料電池において、出力密度を測定し、測定結果を表3に示す。表3に示された結果から明らかなように、実施例3の、PtRuP触媒をメタノール極触媒として使用した直接メタノール型燃料電池の出力密度が50mW/cmであるのに対し、比較例6〜10の、PtRuP触媒以外の触媒をメタノール極触媒として使用した直接メタノール型燃料電池では出力密度が40mW/cm以下となっており、メタノール極触媒として粒径が1〜3nmのPtRuP触媒を用いることにより、電池特性が向上したことが理解できる。
【0069】
【表3】

【実施例4】
【0070】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)1.69ミリモルとトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)1.69ミリモル及び次亜燐酸ナトリウム(NaPH)をPtとRuの総モル数に対して5〜100モル%の割合で、それぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、炭素基材(バルカンXC−72R、比表面積254m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。この溶液に硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液のpHを3に調整した。窒素雰囲気下、200℃のオイルバス中でこの溶液を攪拌しながら還流し、PtRuP微粒子を炭素基材上に担持させた。反応終了後、濾過、洗浄して乾燥させ触媒を得た。
【0071】
実施例4で得られたPtRuP触媒についてX線回折実験を行い、シェラーの式を適用してPtRuP触媒の粒径を見積もった。また。蛍光X線(XRF)及びX線光電子分光分析法(XPS)により触媒の組成を調べた。各種の分析からPはPtRu触媒の表面上に存在している可能性が高いため、P濃度については、より触媒表面に近い組成を測定できるXPSを使用した。更に、これらのPtRuP触媒についてメタノール酸化特性を測定した。測定法を以下に示す。触媒30mgをメタノール濃度25vol%、電解質1.5モル/リットルのHSO中に分散させ、25℃で作用極と対極にAu線を使用して電位0.2〜0.6(Vvs.NHE)の間を0.01V/秒の速度で掃引し、メタノール酸化活性を測定した。測定結果を下記の表4に示す。表4に示された結果から分かるように、次亜燐酸ナトリウムをPtRuの総モル数に対して5〜50モル%添加した場合、高いメタノール酸化電流を得る事が出来る。特に次亜燐酸を50モル%添加した場合、粒径が減少し、高いメタノール酸化活性が得られる。次亜燐酸ナトリウムをPtRuの総モル数に対して70モル%以上添加した場合は、過剰の次亜燐酸ナトリウムがPtRu微粒子形成を阻害し、原料であるビス(アセチルアセトナト)白金(II)の析出が見られ、メタノール酸化活性は急激に低下した。
【0072】
【表4】

【実施例5】
【0073】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)とトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)の仕込み割合を1:2〜2:1に変化させ、次亜燐酸ナトリウムをPtとRuの総モル数に対して50モル%それぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、炭素基材(バルカンXC−72R、比表面積254m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。この溶液に硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液のpHを3に調整した。窒素雰囲気下、200℃のオイルバス中でこの溶液を攪拌しながら還流し、PtRuP微粒子を炭素基材上に担持させた。反応終了後、濾過、洗浄して乾燥させ触媒を得た。
【0074】
実施例5で得られたPtRuP触媒についてX線回折実験を行い、シェラーの式を適用してPtRuP触媒の粒径を見積もった。また。蛍光X線により触媒の組成を調べた。さらにこれらのPtRuP触媒についてメタノール酸化特性を測定した。測定法を以下に示す。触媒30mgをメタノール濃度25vol%、電解質1.5モル/リットルのHSO中に分散させ、25℃で作用極と対極にAu線を使用して電位0.2〜0.6(Vvs.NHE)の間を0.01V/秒の速度で掃引し、メタノール酸化活性を測定した。測定結果を下記の表6に示す。
【0075】
【表5】

【0076】
表5に示された結果から、PtとRuの仕込み割合を1:2〜2:1にする事によりPt組成が40〜90at.%、Pが5at.%以上のPtRuP触媒となり、高いメタノール酸化電流が得られることが理解できる。
【実施例6】
【0077】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)1.69ミリモルとトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)1.69ミリモルと次亜燐酸ナトリウム0.338ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、炭素基材(バルカンP、比表面積140m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。この溶液に硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液のpHを3に調整した。窒素ガス雰囲気下、200℃のオイルバス中でこの溶液を攪拌しながら4時間還流し、PtRuP微粒子を炭素基材上に析出担持させた。反応終了後、濾過、洗浄して乾燥させ触媒を得た。
【0078】
実施例6で得られた触媒の粒径を電子顕微鏡で調べた。その結果を下記の表6に示す。実施例6では、PtRuP触媒の粒径が1〜3nmであった。
【0079】
【表6】

【0080】
実施例6で得られた触媒のメタノール酸化活性を調べた。測定方法を以下に記す。触媒30mgをメタノール濃度25vol.%、電解質1.5モル/リットルのHSO中に分散させ、25℃で作用極と対極にAu線を使用して電位0.2〜0.6(Vvs.NHE)の間を0.01V/秒の速度で掃引し、メタノール酸化活性を測定した。電位0.6(Vvs.NHE)における電流密度を下記の表7に示す。表7には実施例1の結果も併記した。表7に示された結果から、担体の比表面積が140m/g及び254m/gである実施例6及び実施例1では高いメタノール酸化電流が得られる。また、担体に比表面積が140m/gのバルカンPを使用した場合、比表面積が254m/gのバルカンXC−72Rに比べてメタノール酸化電流が増大している。これは、比表面積の小さいバルカンPでは細孔が少なく、また細孔径が大きいため、三相界面を形成するPtRuP触媒の粒子数が増加したためと考えられる。
【0081】
【表7】

【実施例7】
【0082】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)1.69ミリモルとトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)1.69ミリモルと次亜燐酸ナトリウム1.69ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、炭素基材(バルカンXC72R、比表面積254m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。この溶液に硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液のpHを3に調整した。窒素ガス雰囲気下、200℃のオイルバス中でこの溶液を攪拌しながら4時間還流し、PtRuP微粒子を炭素基材上に析出担持させた。反応終了後、濾過、洗浄、乾燥させ触媒を得た。得られたPtRuP触媒の粒径を電子顕微鏡で観察した結果、1〜3nmであった。また、蛍光X線により組成を分析した結果、Pt65Ru29であった。
【実施例8】
【0083】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)1.69ミリモルとトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)1.69ミリモルと次亜燐酸ナトリウム1.69ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、炭素基材(バルカンP、比表面積140m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。この溶液に硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液のpHを3に調整した。窒素ガス雰囲気下、200℃のオイルバス中でこの溶液を攪拌しながら4時間還流し、PtRuP微粒子を炭素基材上に析出担持させた。反応終了後、濾過、洗浄、乾燥させ触媒を得た。得られたPtRuP触媒の粒径を電子顕微鏡で観察した結果、1〜3nmであった。また、蛍光X線により組成を分析した結果、Pt65Ru29であった。
【実施例9】
【0084】
実施例9は比較例11と一緒に説明する。
【実施例10】
【0085】
実施例10も比較例11と一緒に説明する。
【比較例11】
【0086】
実施例7及び8で得られたそれぞれのPtRuP触媒に純水とナフィオン(デュポン社製)のアルコール溶液を加えて撹拌した後、その粘度を調整して触媒用インクとした。これをテフロン(登録商標)シート上に、PtRuP触媒の塗布量が5mg/cmになるように塗布した。乾燥後、テフロン(登録商標)シートを剥がし、メタノール極触媒とした。また、ケッチェンECに担持したPt触媒に純水とナフィオン(デュポン社製)のアルコール溶液を加えて撹拌した後、その粘度を調整して触媒用インクとした。これをテフロン(登録商標)シート上に、Pt触媒の塗布量が5mg/cmになるように塗布した。乾燥後、テフロン(登録商標)シートを剥がし、酸素極触媒とした。その後、PtRuP電極触媒と、Pt電極触媒を固体高分子電解質膜(デュポン社製ナフィオン膜)の両側にホットプレスして膜電極接合体を作製した。これらのメタノール極、固体高分子電解質膜及び酸素極と、液体燃料として15wt%のメタノール水溶液を用い、図4に示す直接メタノール型燃料電池を作製し、出力密度特性を調べた。その結果を表8に示す。表8には比較例1のPtRu触媒をメタノール極触媒として用いた場合の出力密度を比較例11として併記した。担体に比表面積が140m/gのバルカンPを用いた場合、出力密度として65mW/cmが得られた。一方、担体の比表面積が254m/gのバルカンXC−72Rでは出力密度は59mW/cmであった。これは、先にも述べたように、担体が比表面積の小さいバルカンPではバルカンXC−72Rに比べて細孔が少なく、また細孔径が大きいためPtRuP触媒が微細孔中に埋没して触媒として作用しなくなる事がより抑制され、三相界面を形成するPtRuP触媒の粒子数が増加したためと考えられる。
【0087】
【表8】

【実施例11】
【0088】
実施例11は実施例12と一緒に説明する。
【実施例12】
【0089】
実施例7及び8で得られたそれぞれのPtRuP触媒に純水とナフィオン(デュポン社製)のアルコール溶液を加えて撹拌した後、その粘度を調整して触媒用インクとした。これをテフロン(登録商標)シート上に、PtRuP触媒の塗布量が5mg/cmになるように塗布した。乾燥後、テフロン(登録商標)シートを剥がし、水素極触媒とした。また、ケッチェンECに担持したPt触媒に純水とナフィオン(デュポン社製)のアルコール溶液を加えて撹拌した後、その粘度を調整して触媒用インクとした。これをテフロン(登録商標)シート上に、Pt触媒の塗布量が5mg/cmになるように塗布した。乾燥後、テフロン(登録商標)シートを剥がし、酸素極触媒とした。その後、PtRuP電極触媒と、Pt電極触媒を固体高分子電解質膜(デュポン社製ナフィオン膜)の両側にホットプレスして膜電極接合体を作製した。これらの水素極、固体高分子電解質膜及び酸素極と、燃料として水素ガスを用い、図5に示す固体高分子型燃料電池を作製した。
図5において、符号40は固体高分子型燃料電池を示す。また、符号44は酸素極側集電体、43は酸素極側拡散層、41は固体高分子電解質膜、48は水素極側拡散層、47は水素極側集電体、42は空気導入孔、45は酸素極(Pt)触媒層、46は水素極(PtRuP)触媒層、49は水素燃料導入孔をそれぞれ示す。
酸素極側集電体44は、空気導入孔42を介して空気(酸素)を取り込む構造体としての機能を有すると共に、集電機能も有している。固体高分子電解質膜(デュポン社製ナフィオン膜)41は、水素極で発生したプロトンを酸素極側に輸送する機能と、更に水素極と酸素極の短絡を防止するセパレータとしての機能を備えてなるものである。このように構成される固体高分子型燃料電池40において、水素極側集電体47から供給される水素ガスは水素極側拡散層48を介して水素極触媒層46に導かれて酸化され電子とプロトンに変換され、このプロトンは固体高分子電解質膜41を介して酸素極側に移動する。酸素極では酸素極側集電体44から取り込まれた酸素が水素極で生成した電子により還元され、これと上記のプロトンとが反応して水を生成する。図5に示される固体高分子型燃料電池40では、このような水素の酸化反応及び酸素の還元反応により発電が起こる。
【比較例12】
【0090】
比較例1で合成したPtRu触媒を水素極触媒として用いた事以外は実施例11,12と同様に固体高分子型燃料電池を作製した。
【0091】
実施例11,12及び比較例12で作製した固体高分子型燃料電池において、出力密度を測定し、その結果を表9に示す。実施例11,12においては粒径1〜3nmのPtRuP触媒を使用しているため、高い出力密度を示す。固体高分子型燃料電池においても、担体の表面積の小さいバルカンPの場合の方が高い出力密度を示す。これは、先にも述べたように、担体が比表面積の小さいバルカンPの場合、PtRuP触媒微粒子が三相界面をより形成し易く、実効的に働く触媒の数が増加してより高い出力密度を示したと考えられる。一方、比較例15では、粒径〜10nmのPtRu触媒を使用しているため、出力密度は120mW/cmと低い値となっている。
【0092】
【表9】

【実施例13】
【0093】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)とトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)の仕込み割合を1.5:1とし、次亜燐酸ナトリウムをPtとRuの総モル数に対して50モル%添加し、それぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、炭素基材(バルカンP、比表面積140m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。この時、PtRuP触媒の担持率が50wt%になるようにビス(アセチルアセトナト)白金(II)とトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)の使用量を調整した。この溶液に硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液のpHを3に調整した。窒素雰囲気下、200℃のオイルバス中でこの溶液を攪拌しながら1.5時間還流し、PtRuP微粒子を炭素基材上に担持させた。反応終了後、濾過、洗浄して乾燥させ担持率が50wt%のPtRuP触媒を得た。
【実施例14】
【0094】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)とトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)の仕込み割合を1.5:1とし、次亜燐酸ナトリウムをPtとRuの総モル数に対して50モル%添加し、それぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、炭素基材(バルカンP、比表面積140m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。この時、PtRuP触媒の担持率が60wt%になるようにビス(アセチルアセトナト)白金(II)とトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)の使用量を調整した。この溶液に硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液のpHを3に調整した。窒素雰囲気下、200℃のオイルバス中でこの溶液を攪拌しながら1.5時間還流し、PtRuP微粒子を炭素基材上に担持させた。反応終了後、濾過、洗浄して乾燥させ担持率が60wt%のPtRuP触媒を得た。
【0095】
実施例13及び14で得られた触媒のメタノール酸化活性を測定した。測定方法を以下に示す。触媒30mgをメタノール濃度25vol.%、電解質1.5モル/リットルのHSO中に分散させ、25℃で作用極と対極にAu線を使用して電位0.2〜0.6(Vvs.NHE)の間を0.01V/秒の速度で掃引し、メタノール酸化活性を測定した。電位0.6(Vvs.NHE)におけるメタノール酸化電流を下記の表10に示す。
【0096】
【表10】

【実施例15】
【0097】
実施例15は実施例16と一緒に説明する。
【実施例16】
【0098】
実施例13及び14で得られたPtRuP触媒を用いて図4に示す直接メタノール型燃料電池を作製した。この場合、実施例13と14では触媒の担持率が異なるため、電極での触媒塗布量が5mg/cmで同じになるようにした。出力密度を測定した結果を表11に示す。PtRuP触媒の担持率50wt%で70mW/cm、60wt%で80mW/cmの高い出力密度が得られた。触媒の担持率が60wt%と高い場合、大きな出力密度が得られた。これは電極での触媒塗布量が5mg/cmで同じであるが、触媒の担持率が60wt%と高い場合、電極の厚みを薄くする事が出来るため、メタノール燃料の浸透性が高まったためと考えられる。
【0099】
【表11】

【実施例17】
【0100】
実施例17は実施例18と一緒に説明する。
【実施例18】
【0101】
実施例13及び14で得られたPtRuP触媒を用いて図5に示す固体高分子型燃料電池を作製した。この場合、実施例13と14では触媒の担持率が異なるため、電極での触媒塗布量が5mg/cmで同じになるようにした。出力密度を測定した結果を表12に示す。PtRuP触媒の担持率50wt%で220mW/cm、60wt%で240mW/cmの高い出力密度が得られた。触媒の担持率が60wt%と高い場合、大きな出力密度が得られた。これは電極での触媒塗布量が5mg/cmで同じであるが、触媒の担持率が60wt%と高い場合、電極の厚みを薄くする事が出来るため、水素ガス燃料の浸透性が高まったためと考えられる。
【0102】
【表12】

【実施例19】
【0103】
炭素基材(バルカンXC−72R、比表面積254m/g)0.25gを60mlの純水に分散させ、六塩化白金酸六水和物0.844ミリモルと塩化ルテニウム(III)n水和物0.844ミリモルをそれぞれ60mlの純水に溶解させ加えた後、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.908ミリモルを70mlの純水に溶解させ加えた。その後、3規定の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、溶液をpH11に調整した。室温にて30分間攪拌後、水溶液の温度を80℃まで上げ、攪拌しながら2時間無電解メッキを行い、PtRuP触媒微粒子を炭素基材上に担持させた。反応終了後、濾過、洗浄、乾燥させ触媒を得た。
【0104】
実施例19で得られた触媒の粒径を電子顕微鏡で調べた結果、1〜3nmであった。また、触媒の組成を蛍光X線で分析した結果、Pt59Ru34であった。
【0105】
実施例19で得られたPtRuP触媒のメタノール酸化活性を測定した。測定方法を以下に示す。触媒30mgをメタノール濃度25vol.%、電解質1.5モル/リットルのHSO中に分散させ、25℃で作用極と対極にAu線を使用して電位0.2〜0.6(Vvs.NHE)の間を0.01V/秒の速度で掃引し、メタノール酸化活性を測定した。電位0.6(Vvs.NHE)におけるメタノール酸化電流を下記の表13に示す。表13には比較例1のPtRuのメタノール酸化電流も併せて示す。本実施例のPtRuP触媒ではP添加により粒径が1〜3nmに減少し、活性な表面積が増大して比較例1に比べ、大きなメタノール酸化電流が観測された。また、この実施例はアルコール還元法のみならず、無電解メッキ法によっても粒径が1〜3nmのPtRuP触媒が合成できる事を示すものである。この無電解メッキ法はアルコール等の有機溶媒を使用せず、またPtとRuの供給源に安価な六塩化白金酸と塩化ルテニウムを使用できるため、触媒のコストを大幅に削減する事が出来るメリットを有する。
【0106】
【表13】

【実施例20】
【0107】
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)1.69ミリモルとトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)1.69ミリモルと次亜燐酸ナトリウム1.69ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、多層カーボンナノチューブ(直径75nm,比表面積30m/g)0.5gを分散させた100mlのエチレングリコール溶液を加えた。硫酸水溶液を滴下し、pH試験紙を用いて溶液をpH3に調整した。窒素ガス雰囲気下、200℃でこの溶液を攪拌しながら4時間還流し、PtRuP触媒微粒子を多層カーボンナノチューブ上に析出担持させた。反応終了後、濾過、洗浄、乾燥させ触媒を得た。
【0108】
実施例20で得られたPtRuP触媒の粒径を電子顕微鏡で調べた結果、1〜3nmであった。またその組成を蛍光X線で調べた結果、Pt65Ru29であった。
【実施例21】
【0109】
実施例20で得られた多層カーボンナノチューブ担持PtRuP触媒をメタノール極として図4に示す直接メタノール型燃料電池を作製した。出力密度を測定した結果、75mW/cmの出力密度が得られた。多層カーボンナノチューブを担体したPtRuP触媒の場合、カーボンブラックを担体とした実施例9や実施例10に比較して高い出力密度が得られている。これは多層カーボンナノチューブには細孔が全く存在しないため、PtRuP触媒が全て担体表面に析出し、触媒の利用率が高まったためである。また、多層カーボンナノチューブはカーボンブラックに比較して嵩高いため触媒電極膜中に物理的空隙が多く存在し、充填密度の高いカーボンブラックに比べてメタノール水溶液の拡散性が向上し、PtRuP触媒とメタノール燃料の接触が十分に確保されたためである。更に、多層カーボンナノチューブはその比抵抗がカーボンブラックに比較して低く、このためIR損出を抑える事ができたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の炭素基材に担持された少なくともPt及びPからなる触媒微粒子は、直接メタノール型燃料電池(DMFC)として特に有用であるが、固体高分子型燃料電池(PEFC)の触媒としても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明のアルコール還元法により合成したPtRuP触媒微粒子の模式的断面図である。
【図2】本発明の無電解メッキ法により合成したPtRuP触媒微粒子の模式的断面図である。
【図3】(A)は実施例1で得られたPtRuP触媒微粒子表面の電子顕微鏡写真であり、(B)は比較例1で得られたPtRu触媒微粒子表面の電子顕微鏡写真である。
【図4】直接メタノール型燃料電池の一例の部分概要構成図である。
【図5】固体高分子型燃料電池の一例の部分概要構成図である。
【符号の説明】
【0112】
1 本発明のPtRuP触媒微粒子
3 炭素基材
5 PtRu粒子
7 P
8 P
10 直接メタノール型燃料電池
12 酸素極側集電体
14 酸素極側拡散層
16 固体高分子電解質膜
18 メタノール極側拡散層
20 メタノール極側集電体
22 メタノール燃料タンク
24 空気導入孔
26 酸素極(Pt)触媒層
28 メタノール極(PtRuP)触媒層
30 メタノール燃料導入孔
40 固体高分子型燃料電池
41 固体高分子電解質膜
42 空気導入孔
43 酸素極側拡散層
44 酸素極側集電体
45 酸素極(Pt)触媒層
46 水素極(PtRuP)触媒層
47 水素極側集電体
48 水素極側拡散層
49 水素燃料導入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともPtとPを含有し、最大平均粒径が5nm未満である粒子からなることを特徴とする不均一系触媒。
【請求項2】
前記粒子の粒径は1nm〜3nmであることを特徴とする請求項1記載の不均一系触媒。
【請求項3】
前記粒子はPを少なくとも2原子%含有することを特徴とする請求項1記載の不均一系触媒。
【請求項4】
前記Pの含量は2原子%〜50原子%であることを特徴とする請求項1記載の不均一系触媒。
【請求項5】
炭素基材を更に含有することを特徴とする請求項1記載の不均一系触媒。
【請求項6】
前記炭素基材はカーボンブラック及びカーボンナノチューブから成る群から選択される少なくとも1種類であることを特徴とする請求項5記載の不均一系触媒。
【請求項7】
前記炭素基材は多層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項6記載の不均一系触媒。
【請求項8】
前記粒子はRuを更に含有することを特徴とする請求項1記載の不均一系触媒。
【請求項9】
前記粒子内のPtとRuの比率はPt40Ru60〜Pt90Ru10であることを特徴とする請求項8記載の不均一系触媒。
【請求項10】
前記炭素基材が20m/g〜300m/gの範囲内の比表面積を有することを特徴とする請求項8記載の不均一系触媒。
【請求項11】
リン含有還元剤の存在下でPtイオンを還元するステップを含むことを特徴とする請求項1の不均一系触媒の製造方法。
【請求項12】
前記リン含有還元剤は、亜燐酸、亜燐酸塩、次亜燐酸又は次亜燐酸塩の何れかに由来する化合物であることを特徴とする請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
前記還元ステップは、アルコール還元又は無電解メッキステップであることを特徴とする請求項11記載の製造方法。
【請求項14】
カソードと、アノードと、該カソードとアノードとの間に配置された高分子電解質膜からなり、
前記カソード及び/又はアノードは請求項1の前記触媒からなることを特徴とする燃料電池。
【請求項15】
アノードにメタノートと水、又は水素を供給し、カソードに酸素を供給することを特徴とする請求項1の燃料電池による電圧発生方法。
【請求項16】
アノード触媒層と、カソード触媒層と、該アノード触媒層とカソード触媒層との間に配置された高分子電解質とからなり、前記アノード触媒層及び/又はカソード触媒層は請求項1の前記触媒からなることを特徴とする膜電極接合体。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−114469(P2006−114469A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373450(P2004−373450)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】