燃料電池用多孔体層の製造方法、燃料電池
【課題】燃料電池の適度な排水性と保水性とを両立させうる燃料電池用多孔体層を容易に作製する。
【解決手段】樹脂基材52の一部を第1の所定時間だけメッキ浴62に浸漬させて多孔体部48を形成する第1のメッキ処理工程と、樹脂基材52の他部を第1の所定時間よりも長い第2の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて多孔体部50を形成する第2のメッキ処理工程と、を含む。多孔体部50は、多孔体部48よりも平均気孔径が小さい。
【解決手段】樹脂基材52の一部を第1の所定時間だけメッキ浴62に浸漬させて多孔体部48を形成する第1のメッキ処理工程と、樹脂基材52の他部を第1の所定時間よりも長い第2の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて多孔体部50を形成する第2のメッキ処理工程と、を含む。多孔体部50は、多孔体部48よりも平均気孔径が小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用多孔体層の製造方法、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の最小単位に相当する、一般的な燃料電池セル(単セルとも称する)の構成について、特に電極部分を含む要部の構成の概略について説明する。図14に例示するように、酸化極触媒層12と燃料極触媒層14を、電解質膜10を挟んで互いに対向するように設けた膜電極接合体(MEA)30が構成されている。また、酸化極触媒層12の外側には酸化極拡散層16が、燃料極触媒層14の外側には燃料極拡散層18が、それぞれ設けられている。電解質膜10の一方側に配置された酸化極触媒層12および酸化極拡散層16を総じて酸化極(またはカソード)32とも称し、電解質膜10の他方側に配置された燃料極触媒層14および燃料極拡散層18を総じて燃料極(またはアノード)34とも称する。
【0003】
さらに、酸化極拡散層16の外側には、酸化剤ガス流路20およびセル冷媒流路22が形成された酸化極側セパレータ26が、燃料極拡散層18の外側には、燃料ガス流路24およびセル冷媒流路22が形成された燃料極側セパレータ28が、それぞれ設けられており、これらを例えば、接着や圧着などにより一体化させて、燃料電池セル500が形成される。
【0004】
所望の起電力が得られるように複数の燃料電池セル500を積層させたセルスタックを備える燃料電池は一般に、酸化剤ガス流路20を流通する酸素ガスや空気等の酸化剤ガスを酸化極触媒層12に、燃料ガス流路24を流通する水素ガスや改質ガス等の燃料ガスを燃料極触媒層14に、それぞれ供給し、電解質膜10を介しての酸化剤ガスと燃料ガスとの電気化学反応により発電する。酸化剤ガス流路20および燃料ガス流路24の上流側から酸化極32および燃料極34内部に流入した酸化剤ガスおよび燃料ガスがそれぞれ、電池反応に供される。その後、酸化剤ガスおよび燃料ガスのオフガスはそれぞれ、酸化剤ガス流路20および燃料ガス流路24の下流側に送られて、燃料電池セル500または燃料電池の外部に排出される。
【0005】
一般に燃料電池が良好な発電を行うためには、例えばパーフルオロ系、パーフルオロスルホン酸系等のフッ素系イオン交換樹脂などが用いられる電解質膜10に対して所定の水分量(含水量)を維持させて、プロトン透過性膜としての機能を発揮させることが好適である。電解質膜10の含水量の不足に伴う、いわゆるドライアップの発生を防止するため、例えば燃料電池内に供給する反応ガスのいずれか一方、または両方を加湿させ、電解質膜10の水分調節を行う。
【0006】
一方、燃料電池内に過剰量の水分が滞留すると、いわゆるフラッディングと呼ばれる現象が発生し、反応に必要な原料ガスの供給が不十分となり、発電効率の低下や、運転状態が不安定となる要因ともなり得る。特に酸化極側では、発電により水が生成するため、良好な排水性能が要求される。
【0007】
ガス流路および/または燃料電池内部の水分量を適度な状態に維持/調節し得る燃料電池として、例えば特許文献1〜4が開示されている。
【0008】
特許文献1には、セパレータ側から触媒層側へ向かって開口径が減少するように、開口径の異なる多孔質層が積層された拡散層を備える燃料電池について記載されている。
【0009】
特許文献2には、ガス下流部の平均気孔径が、ガス上流部位の平均気孔径よりも大きいガス拡散層について記載されている。
【0010】
特許文献3には、孔径10nm〜500nmの連通孔を有する炭素質からなる多孔質材料層と、該多孔質材料層の表面に形成された触媒金属メッキ層と、を有し、触媒金属メッキ層の表面が、固体高分子膜に接している燃料電池用電極について記載されている。
【0011】
特許文献4には、ガス拡散層の電解質膜側に、含水状態に応じて細孔径が変化するように、吸水性樹脂材料が分散された溶液を噴霧またはスクリーン印刷により含浸または付着させることにより形成させた吸水性樹脂を配置してなる燃料電池について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−058073号公報
【特許文献2】特開2001−057218号公報
【特許文献3】特開2006−100056号公報
【特許文献4】特開2008−147145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、燃料電池のより安定した運転には、運転条件や電極の特性に応じた好適な水分量の維持が要求され、この要求に適した燃料電池セルの構造が提案されている。
【0014】
しかしながら、例えば特許文献4に記載のような方法によりガス拡散層を作製するにあたり、細孔径を精度よく制御することは困難である。また、例えば、ガス拡散層の作製時にひび割れが発生する等により、所望の排水性や保水性が得られず、適切な発電性能が発揮されない場合もありえた。
【0015】
本発明は、燃料電池の適度な排水性と保水性とを両立させうる燃料電池用多孔体層を容易に作製することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の構成は以下のとおりである。
【0017】
(1)所定の平均気孔径を有する樹脂基材を燃料電池用多孔体層材料とする燃料電池用多孔体層の製造方法であって、前記樹脂基材の一部を第1の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第1の多孔体部を形成する第1のメッキ処理工程と、前記樹脂基材の他部を前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第2の多孔体部を形成する第2のメッキ処理工程と、を含む、燃料電池用多孔体層の製造方法である。
【0018】
上記構成によれば、第1の多孔体部の気孔径が、第2の多孔体部の気孔径よりも大きくなるように制御でき、気孔径が面内方向に傾斜した燃料電池用多孔体層を作製することができる。
【0019】
(2)電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、前記酸化極多孔体層が、上記(1)に記載の方法により作製された燃料電池用多孔体層であり、前記第2の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向上流部側、前記第1の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向下流部側、となるように前記燃料電池用多孔体層を配置してなる、燃料電池である。
【0020】
上記構成によれば、酸化剤ガスの流れ方向上流部側の気孔径が、下流部側の気孔径よりも小さくなるように燃料電池用多孔体層を配置することにより、酸化剤ガスの流れ方向上流部側で対向する電解質膜を含むMEAの乾燥を抑制することができ、特に高温運転時の発電性能が向上する。
【0021】
(3)所定の平均気孔径を有する樹脂基材を燃料電池用多孔体層材料とする燃料電池用多孔体層の製造方法であって、前記樹脂基材の一部に導電性材料を第3の所定時間だけ蒸着処理させて第3の多孔体部を形成する第1の蒸着処理工程と、前記樹脂基材の他部に導電性材料を前記第3の所定時間よりも長い第4の所定時間だけ蒸着処理させて第4の多孔体部を形成する第2の蒸着処理工程と、を含む、燃料電池用多孔体層の製造方法である。
【0022】
上記構成によれば、第3の多孔体部の気孔径が、第4の多孔体部の気孔径よりも大きくなるように制御でき、気孔径が面内または面厚方向(積層方向)に傾斜した燃料電池用多孔体層を作製することができる。
【0023】
(4)電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、前記酸化極多孔体層が、上記(3)に記載の方法により作製された燃料電池用多孔体層であり、前記第4の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向上流部側、前記第3の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向下流部側、となるように前記燃料電池用多孔体層を配置してなる、燃料電池である。
【0024】
上記構成によれば、酸化剤ガスの流れ方向上流部側の気孔径が、下流部側の気孔径よりも小さくなるように燃料電池用多孔体層を配置することにより、酸化剤ガスの流れ方向上流部側で対向する電解質膜を含むMEAの乾燥を抑制することができ、特に高温運転時の発電性能が向上する。
【0025】
(5)電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、前記酸化極多孔体層が、上記(3)に記載の方法により作製された燃料電池用多孔体層であり、前記第3の多孔体部が酸化極拡散層側、前記第4の多孔体部が電解質膜側、となるように前記燃料電池用多孔体層を配置してなる、燃料電池である。
【0026】
上記構成によれば、電解質膜側の気孔径が、酸化極拡散層側の気孔径よりも小さくなるように燃料電池用多孔体層を配置することにより、適切な毛管力を生じさせることができ、酸化極側の排水性能が向上する。
【0027】
(6)電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、前記酸化極多孔体層が、所定の平均気孔径を有する第1の樹脂基材の一部を第1の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第1の多孔体部を形成し、前記第1の樹脂基材の他部を前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第2の多孔体部を形成してなる第1の多孔体層と、所定の平均気孔径を有する第2の樹脂基材の一部に導電性材料を第3の所定時間だけ蒸着処理させて第3の多孔体部を形成し、前記第2の樹脂基材の他部に導電性材料を前記第3の所定時間よりも長い第4の所定時間だけ蒸着処理させて第4の多孔体部を形成してなる第2の多孔体層と、からなり、前記第2の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向上流部側、前記第1の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向下流部側となるように前記第1の多孔体層を配置し、前記第3の多孔体部が酸化極拡散層側、前記第4の多孔体部が電解質膜側となるように前記第2の多孔体層を配置し、前記第1の多孔体層と前記第2の多孔体層を積層してなる、燃料電池である。
【0028】
(7)電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、前記酸化極多孔体層が、所定の平均気孔径を有する第1の樹脂基材の一部に導電性材料を第1の所定時間だけ蒸着処理させて第1の多孔体部を形成し、前記第1の樹脂基材の他部に導電性材料を前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間だけ蒸着処理させて第2の多孔体部を形成してなる第1の多孔体層と、所定の平均気孔径を有する第2の樹脂基材の一部に導電性材料を第3の所定時間だけ蒸着処理させて第3の多孔体部を形成し、前記第2の樹脂基材の他部に導電性材料を前記第3の所定時間よりも長い第4の所定時間だけ蒸着処理させて第4の多孔体部を形成してなる第2の多孔体層と、からなり、前記第2の多孔体部が酸化剤ガス流れ方向上流部側、前記第1の多孔体部が酸化剤ガス流れ方向下流部側となるように前記第1の多孔体層を配置し、前記第3の多孔体部が酸化極拡散層側、前記第4の多孔体部が電解質膜側となるように前記第2の多孔体層を配置し、前記第1の多孔体層と前記第2の多孔体層を積層してなる、燃料電池である。
【0029】
(8)電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、前記酸化極が、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極拡散層と、を含み、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池において、前記酸化極触媒層と、前記酸化極拡散層との間に設けられる酸化極多孔体層であって、電解質膜側の気孔径が酸化極拡散層側の気孔径よりも小さい第1の多孔体部と、前記酸化剤ガスの流れ方向上流部の気孔径が下流部の気孔径よりも小さい第2の多孔体部と、を積層させてなる、酸化極多孔体層である。
【発明の効果】
【0030】
適度な排水性と保水性とを両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】燃料電池セル100の構成の概略を示した図である。
【図2】酸化極多孔体層36の構成について説明するための断面拡大図である。
【図3】燃料電池セル200の構成の概略を示した図である。
【図4】酸化極多孔体層40の構成について説明するための断面拡大図である。
【図5】燃料電池セル300の構成の概略を示した図である。
【図6】酸化極多孔体層46の構成について説明するための断面拡大図である。
【図7】酸化極多孔体層40の製造方法の一例について説明するための図である。
【図8】酸化極多孔体層40の製造方法の変形例について説明するための図である。
【図9】酸化極多孔体層46の製造方法の一例について説明するための図である。
【図10】酸化極多孔体層46の製造方法の他の例について説明するための図である。
【図11】酸化極多孔体層46の製造方法の別の例について説明するための図である。
【図12】酸化極多孔体層46の製造方法のさらに別の例について説明するための図である。
【図13】酸化極多孔体層46の製造方法の変形例について説明するための図である。
【図14】従来の燃料電池セルの構成の概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に示す各実施の形態において、同様の構成については同一の符号を付し、その説明については省略するか、または簡単な説明にとどめることがある。また、図面中の各部材の寸法は必ずしも実際の各部材の寸法に対応していない。
【0033】
[燃料電池セル100]
図1に示す燃料電池セル100は、酸化極触媒層12と酸化極拡散層16との間に酸化極多孔体層36を設けるとともに、燃料極触媒層14と燃料極拡散層18との間に、場合によっては燃料極多孔体層38を設けることができることを除き、図14に示す燃料電池セル500と同様の構成を有している。
【0034】
図2に例示するように、所定の平均気孔径を有する多孔質の樹脂基材52を導電処理して導電性膜54を形成することにより、気孔56の平均気孔径および/または気孔径分布を調整した多孔体層を酸化極多孔体層36として適用することができる。
【0035】
本発明の実施の形態において、酸化極拡散層16は、例えば、平均気孔径を10μm以上、より具体的には10μm〜200μm、さらに具体的には10μm〜100μmとすることができる。酸化極拡散層16の平均気孔径が10μm未満だと、排水性が低下する場合があり得て、また、ガス拡散が阻害され、発電性能が低下する場合もあり得る。
【0036】
また、酸化極多孔体層36は、例えば、テトラフルオロエチレンその他のフッ素樹脂からなる多孔性の樹脂基材52に、例えば、下地処理によるNiメッキなどを含み、さらに金メッキなどのメッキ浴または金スパッタなど蒸着処理を施して導電性膜54を形成することにより、酸化極拡散層16が有する気孔径よりも小さく、例えば、気孔56の存在に伴う酸化極多孔体層36の平均気孔径を、概ね0.1μm〜10μm程度とすることができる。なお、酸化極多孔体層36は、撥水性を有することが一般的である。
【0037】
より具体的には、図1に示す燃料電池セル100を、例えば25℃〜60℃程度の比較的低温で動作させる場合には、酸化極多孔体層36の平均気孔径を、例えば、1μm〜10μm程度とすることができる。酸化極多孔体層36の平均気孔径が1μm未満だと、例えば排水性が低下する場合があり得て、また、ガス拡散抵抗が増大し、発電性能が低下する場合もあり得る。また、酸化極多孔体層36の平均気孔径が10μmを超えると、例えばガス拡散抵抗が低下し、電解質膜10の含有する水分量が低下する場合があり得る。
【0038】
一方、図1に示す燃料電池セル100を60℃〜100℃程度の比較的高温で動作させる場合には、酸化極多孔体層36の平均気孔径を、例えば、0.1μm〜1μm程度とすることができる。酸化極多孔体層36の平均気孔径が0.1μm未満だと、例えば酸化極からの排水性が低下する場合があり得る。また、酸化極多孔体層36の平均気孔径が1μmを超えると、例えば拡散抵抗が低下し、保水性が低下する場合があり得る。ここで、「平均気孔径」とは、気孔の形状を円柱形状または円錐形状とみなしたときの円相当直径の平均値である。なお、酸化極多孔体層36の平均気孔径の測定には、例えば、水銀ポロシメータなどを用いることができる。
【0039】
また、酸化極多孔体層36の空隙率を例えば、50%〜80%、より具体的には、70%〜80%とすることができる。酸化極多孔体層36の空隙率が50%未満だと、例えばフラッディングする場合がある一方、酸化極多孔体層36の空隙率が80%を超えると、例えばドライアップする場合があり得る。なお、空隙率の測定には、例えば、水銀ポロシメータやSEMによる形態観察などを用いることができる。
【0040】
また、酸化極多孔体層36の積層方向の幅、つまり酸化極多孔体層36の厚みを例えば、200μm以下、より具体的には、20μm〜200μm、さらに具体的には、50μm〜200μmとすることができる。酸化極多孔体層36の厚みが20μm未満だと酸化極多孔体層36としての機能を十分に発揮することができない場合がある一方、酸化極多孔体層36の厚みが200μmを超えると、例えば排水性が低下する場合があり得る。
【0041】
一方、図1に示す燃料極拡散層18は、例えば、酸化極拡散層16と同様の構成とすることができるが、これに限定されるものではなく、公知のいかなる構成を適用することも可能である。また、必要に応じて任意に適用される燃料極多孔体層38は、例えば、酸化極多孔体層36と同様の構成とすることができるが、これに限定されるものではなく、公知のいかなる構成を適用することも可能である。
【0042】
本構成によれば、酸化極多孔体層36の厚みおよび平均気孔径を制御することにより、例えばガス拡散抵抗が増大し、電解質膜10の含有する水分量の低下を抑制することができる。
【0043】
[燃料電池セル200]
図3に示す燃料電池セル200は、酸化極多孔体層36に代えて第1の多孔体部42と、第2の多孔体部44とを燃料電池セル200の断面方向に積層させた酸化極多孔体層40を備えることを除き、図1に示す燃料電池セル100と同様の構成を有している。第1の多孔体部42は、酸化極拡散層16側に配置されており、図3に示す実施の形態では、酸化極拡散層16に隣接している。一方、第2の多孔体部44は、電解質膜10側に配置され、図3に示す実施の形態では、酸化極触媒層12に隣接している。
【0044】
図4に例示するように、酸化極多孔体層40には、多孔質の樹脂基材52a,52bをそれぞれ導電処理することにより導電性膜54a,54bが形成されている。また、導電性膜54a,54bの形成に伴い、気孔56a,56bの平均気孔径がそれぞれ調整されている。実施の形態において、樹脂基材52a,52bおよび導電性膜54a,54bはそれぞれ、図2に示す樹脂基材52および導電性膜54と同種の材料を適用することができる。
【0045】
実施の形態において、第2の多孔体部44に形成された気孔56bの平均気孔径が第1の多孔体部42に形成された気孔56aの平均気孔径よりも小さくなるように構成されている。より具体的には、第1の多孔体部42に形成された気孔56aの平均気孔径を例えば、10μm以下、より具体的には10μm〜0.1μm程度、さらに具体的には、10μm〜2μmとすることができる。一方、第2の多孔体部44に形成された気孔56bの平均気孔径を例えば、1μm以下、より具体的には1μm〜0.01μm程度、さらに具体的には、1μm〜0.1μmとすることができる。第2の多孔体部44側の平均気孔径を第1の多孔体部42側の平均気孔径よりも小さくすることにより、電解質膜10側から酸化剤ガス流路20側に向けて気孔径、つまり流体流路の容積が段階的に大きくなる構成となる。したがって、本構成によれば、気孔56a,56bの毛管力差を利用して発電に伴う生成水を酸化剤ガス流路20側に移動させることが容易となり、優れた排水性を有する燃料電池を提供することができる。
【0046】
実施の形態において、第1の多孔体部42の空隙率を例えば、50%〜80%、より具体的には、70%〜80%とすることができる。第1の多孔体部42の空隙率が50%未満だと、例えばフラッディングする場合がある一方、第1の多孔体部42の空隙率が80%を超えると、例えばドライアップする場合があり得る。
【0047】
また、第2の多孔体部44の空隙率を例えば、50%〜80%、より具体的には、70%〜80%とすることができる。第2の多孔体部44の空隙率が50%未満だと、例えばフラッディングする場合がある一方、第2の多孔体部44の空隙率が80%を超えると、例えばドライアップする場合があり得る。
【0048】
実施の形態において、第1の多孔体部42の厚みと第2の多孔体部44の厚みは同じであってもよく、異なっていてもよい。より具体的には、第1の多孔体部42の厚みを、例えば10μm〜100μm程度、第2の多孔体部44の厚みを、例えば10μm〜100μm程度とすることができる。そして、酸化極多孔体層40全体としての厚みを、例えば20μm〜200μm程度とすることができる。
【0049】
<酸化極多孔体層40の製造方法>
図7に示すように、所定の平均気孔径(例えば、3μm)を有する樹脂基材52を用意する。実施の形態において、樹脂基材52の空隙率を例えば、50%〜80%とすることができる。また、樹脂基材52は、気孔径2.5〜3.5μmを有する気孔が、気孔全体の容積の90%以上を占める、実質的に気孔径が揃った材料が好適である。金スパッタなどによる導電性材料の蒸着処理を、処理時間を異ならせて樹脂基材52の両面からそれぞれ行うことにより、断面方向に平均気孔径の異なる第1の多孔体部42および第2の多孔体部44を有する酸化極多孔体層40を作製することができる。一般に、第1の多孔体部42作製時の導電性処理時間よりも第2の多孔体部44作製時の導電性処理時間を長くすることにより、第2の多孔体部44側の平均気孔径を第1の多孔体部42側の平均気孔径よりも小さくすることができる。
【0050】
一方、図8に示すように、それぞれ所望の断面厚さおよび平均気孔径を有し、所望の形状に加工された樹脂基材にそれぞれ導電性処理を施した、第1の多孔体部42および第2の多孔体部44に相当する材料を予め作製し、これらを例えば圧着その他の適切な方法で接合することによって酸化極多孔体層40を作製することも可能である。
【0051】
[燃料電池セル300]
図5に示す燃料電池セル300は、酸化極多孔体層36に代えて第3の多孔体部48と、第4の多孔体部50とを燃料電池セル300の面内方向に積層させた酸化極多孔体層46を備えることを除き、図1に示す燃料電池セル100と同様の構成を有している。実施の形態において、第4の多孔体部50は、酸化剤ガス流路20から分岐して酸化極32側に酸化剤ガスを送り込み、該酸化剤のオフガスを送り出すための酸化極ガス流通経路(図示せず)のうち酸化剤ガスの供給側、つまり、酸化剤ガスの流れ方向上流部(図5では下方)側、第3の多孔体部48は、酸化剤ガス流路20のうちオフガスの排出側、つまり、酸化剤ガスの流れ方向下流部(図5では上方)側、となるようにそれぞれ配置されている。
【0052】
図6に例示するように、第3の多孔体部48には、多孔質の樹脂基材52c,52dをそれぞれ導電処理することにより導電性膜54c,54dが形成されている。また、導電性膜54c,54dの形成に伴い、気孔56c,56dの平均気孔径がそれぞれ調整されている。実施の形態において、樹脂基材52c,52dおよび導電性膜54c,54dはそれぞれ、図2に示す樹脂基材52および導電性膜54と同種の材料を適用することができる。
【0053】
実施の形態において、第4の多孔体部50に形成された気孔56dの平均気孔径が第3の多孔体部48に形成された気孔56cの平均気孔径よりも小さくなるように構成されている。より具体的には、第3の多孔体部48に形成された気孔56cの平均気孔径を例えば、10μm以下、より好ましくは10μm〜0.1μm程度、より具体的には5μm程度とすることができる。一方、第4の多孔体部50に形成された気孔56dの平均気孔径を例えば、1μm以下、より好ましくは1μm〜0.01μm程度、より具体的には1μm程度とすることができる。第4の多孔体部50側の平均気孔径を第3の多孔体部48側の平均気孔径よりも小さくすることにより、燃料電池セルの面内方向における酸化剤ガスの入口側から出口側に向けて気孔径が段階的に大きくなる。
【0054】
実施の形態において、第3の多孔体部48の空隙率を例えば、50%〜80%、より具体的には、70%〜80%とすることができる。第3の多孔体部48の空隙率が50%未満だと、例えばフラッディングする場合がある一方、第3の多孔体部48の空隙率が80%を超えると、例えばドライアップする場合があり得る。
【0055】
また、第4の多孔体部50の空隙率を例えば、50%〜80%、より具体的には、70%〜80%とすることができる。第4の多孔体部50の空隙率が50%未満だと、例えばフラッディングする場合がある一方、第4の多孔体部50の空隙率が80%を超えると、例えばドライアップする場合があり得る。
【0056】
実施の形態において、酸化極多孔体層46の厚みを例えば20μm〜200μm程度とすることができる。酸化極多孔体層46の厚みが20μm未満であれば、保水性が低下する場合があり得る。また、酸化極多孔体層46の厚みが200μmを超えると、排水性が低下する場合があり得る。
【0057】
また、酸化極多孔体層46における第3の多孔体部48と第4の多孔体部50との燃料電池セル面内方向の領域面積比は、例えば、酸化剤ガスの入口側に配置される第4の多孔体部50の領域を酸化極多孔体層46全体の1/20〜1/3程度とし、出口側の残りの部分を第3の多孔体部48の領域とするように酸化極多孔体層46を作製することができる。
【0058】
本実施の形態によれば、酸化剤ガスの入口側では比較的気孔径の小さい第4の多孔体部50を配置することにより、例えば60℃〜100℃程度の比較的高温で動作させる場合であっても、電解質膜10の含有する水分量の低下を抑制することができる一方、酸化剤ガスの出口側には比較的気孔径の大きい第3の多孔体部48を配置することにより、優れた排水性を兼ね備えた燃料電池セルを提供することができる。
【0059】
<酸化極多孔体層46の製造方法>
図9に示すように、所定の平均気孔径(例えば、3μm)を有する樹脂基材52を用意する。実施の形態において、樹脂基材52の空隙率を例えば、50%〜80%とすることができる。また、樹脂基材52は、気孔径2.5〜3.5μmを有する気孔が、気孔全体の容積の90%以上を占める、実質的に気孔径が揃った材料が好適である。金メッキなどのメッキ浴62による導電性材料のメッキ処理を、処理時間を異ならせて樹脂基材52の両端からそれぞれ行うことにより、面内方向に平均気孔径の異なる第3の多孔体部48および第4の多孔体部50を有する酸化極多孔体層46を作製することができる。一般に、第3の多孔体部48作製時の導電性処理時間よりも第4の多孔体部50作製時の導電性処理時間を長くすることにより、第4の多孔体部50側の平均気孔径を第3の多孔体部48側の平均気孔径よりも小さくすることができる。
【0060】
また、図10に示すように、メッキ浴62からの引き出し速度を制御することによってもまた、酸化極多孔体層46を好適に作製することができる。つまり、メッキ浴62に浸漬させた樹脂基材52を所定の速度v1(例えば、5cm/秒)で所定の長さだけ引き出し、v1よりも遅い所定の速度v2(例えば、1cm/秒)で残りの樹脂基材52を引き出すことにより、面内方向に平均気孔径の異なる第3の多孔体部48および第4の多孔体部50を有する酸化極多孔体層46を好適に作製することができる。
【0061】
一方、図11,12に示すように、金スパッタなどの蒸着処理によっても、酸化極多孔体層46を作製することができる。
【0062】
図11に示すように、樹脂基材52の一方面の一部をマスク64で覆い、露出部分に蒸着処理を施す(第1の蒸着処理)。次いで、樹脂基材52の露出部分とマスク部分とを入れ替えて、マスク66から露出させた樹脂基材52の残りの部分に蒸着処理を施す(第2の蒸着処理)。このとき、第1の蒸着処理と第2の蒸着処理の処理時間を異ならせ、本実施の形態では第2の蒸着処理時間を第1の蒸着処理時間よりも長くすることにより、面内方向に平均気孔径の異なる第3の多孔体部48および第4の多孔体部50を有する酸化極多孔体層46を好適に作製することができる。
【0063】
図12では、まず、樹脂基材52の一方面の全体に所定時間蒸着処理を施し、マスク68で樹脂基材52の一部を覆ってさらに蒸着することにより、全体としての処理時間を異ならせ、図11に例示する方法と同様に酸化極多孔体層46を好適に作製することができる。
【0064】
なお、図11,12に示すような、蒸着処理工程を含む酸化極多孔体層46の製造方法では、樹脂基材52の一方面(表)側だけでなく、他方面(裏)側(図示せず)も同様の蒸着処理を施すことが必要である(例えば、図7を参照のこと)。このとき、樹脂基材52の一方面側と他方面側とで処理方法および/または処理時間を異ならせることにより、例えば酸化極多孔体層46と酸化極多孔体層40とを組み合わせたような、燃料電池セルの断面方向に異なる気孔径を有する酸化極多孔体層を作製することも可能である。
【0065】
一方、図13に示すように、所望の平均気孔径を有し、所望の形状に加工された樹脂基材にそれぞれ導電性処理を施した、第3の多孔体部48および第4の多孔体部50に相当する材料を予め作製し、これらを例えば圧着その他の適切な方法で接合することによって酸化極多孔体層46を作製することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、車両その他の移動体に搭載可能なものや定置型など、種々の燃料電池に対して利用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 電解質膜、12 酸化極触媒層、14 燃料極触媒層、16 酸化極拡散層、18 燃料極拡散層、20 酸化剤ガス流路、22 セル冷媒流路、24 燃料ガス流路、26 酸化極側セパレータ、28 燃料極側セパレータ、30 膜電極接合体(MEA)、32 酸化極、34 燃料極、36,40,46 酸化極多孔体層、38 燃料極多孔体層、42,44,48,50 多孔体部、52,52a,52b,52c,52d 樹脂基材、54,54a,54b,54c,54d 導電性膜、56,56a,56b,56c,56d 気孔、62 メッキ浴、64,66,68 マスク、100,200,300,500 燃料電池セル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用多孔体層の製造方法、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の最小単位に相当する、一般的な燃料電池セル(単セルとも称する)の構成について、特に電極部分を含む要部の構成の概略について説明する。図14に例示するように、酸化極触媒層12と燃料極触媒層14を、電解質膜10を挟んで互いに対向するように設けた膜電極接合体(MEA)30が構成されている。また、酸化極触媒層12の外側には酸化極拡散層16が、燃料極触媒層14の外側には燃料極拡散層18が、それぞれ設けられている。電解質膜10の一方側に配置された酸化極触媒層12および酸化極拡散層16を総じて酸化極(またはカソード)32とも称し、電解質膜10の他方側に配置された燃料極触媒層14および燃料極拡散層18を総じて燃料極(またはアノード)34とも称する。
【0003】
さらに、酸化極拡散層16の外側には、酸化剤ガス流路20およびセル冷媒流路22が形成された酸化極側セパレータ26が、燃料極拡散層18の外側には、燃料ガス流路24およびセル冷媒流路22が形成された燃料極側セパレータ28が、それぞれ設けられており、これらを例えば、接着や圧着などにより一体化させて、燃料電池セル500が形成される。
【0004】
所望の起電力が得られるように複数の燃料電池セル500を積層させたセルスタックを備える燃料電池は一般に、酸化剤ガス流路20を流通する酸素ガスや空気等の酸化剤ガスを酸化極触媒層12に、燃料ガス流路24を流通する水素ガスや改質ガス等の燃料ガスを燃料極触媒層14に、それぞれ供給し、電解質膜10を介しての酸化剤ガスと燃料ガスとの電気化学反応により発電する。酸化剤ガス流路20および燃料ガス流路24の上流側から酸化極32および燃料極34内部に流入した酸化剤ガスおよび燃料ガスがそれぞれ、電池反応に供される。その後、酸化剤ガスおよび燃料ガスのオフガスはそれぞれ、酸化剤ガス流路20および燃料ガス流路24の下流側に送られて、燃料電池セル500または燃料電池の外部に排出される。
【0005】
一般に燃料電池が良好な発電を行うためには、例えばパーフルオロ系、パーフルオロスルホン酸系等のフッ素系イオン交換樹脂などが用いられる電解質膜10に対して所定の水分量(含水量)を維持させて、プロトン透過性膜としての機能を発揮させることが好適である。電解質膜10の含水量の不足に伴う、いわゆるドライアップの発生を防止するため、例えば燃料電池内に供給する反応ガスのいずれか一方、または両方を加湿させ、電解質膜10の水分調節を行う。
【0006】
一方、燃料電池内に過剰量の水分が滞留すると、いわゆるフラッディングと呼ばれる現象が発生し、反応に必要な原料ガスの供給が不十分となり、発電効率の低下や、運転状態が不安定となる要因ともなり得る。特に酸化極側では、発電により水が生成するため、良好な排水性能が要求される。
【0007】
ガス流路および/または燃料電池内部の水分量を適度な状態に維持/調節し得る燃料電池として、例えば特許文献1〜4が開示されている。
【0008】
特許文献1には、セパレータ側から触媒層側へ向かって開口径が減少するように、開口径の異なる多孔質層が積層された拡散層を備える燃料電池について記載されている。
【0009】
特許文献2には、ガス下流部の平均気孔径が、ガス上流部位の平均気孔径よりも大きいガス拡散層について記載されている。
【0010】
特許文献3には、孔径10nm〜500nmの連通孔を有する炭素質からなる多孔質材料層と、該多孔質材料層の表面に形成された触媒金属メッキ層と、を有し、触媒金属メッキ層の表面が、固体高分子膜に接している燃料電池用電極について記載されている。
【0011】
特許文献4には、ガス拡散層の電解質膜側に、含水状態に応じて細孔径が変化するように、吸水性樹脂材料が分散された溶液を噴霧またはスクリーン印刷により含浸または付着させることにより形成させた吸水性樹脂を配置してなる燃料電池について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−058073号公報
【特許文献2】特開2001−057218号公報
【特許文献3】特開2006−100056号公報
【特許文献4】特開2008−147145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、燃料電池のより安定した運転には、運転条件や電極の特性に応じた好適な水分量の維持が要求され、この要求に適した燃料電池セルの構造が提案されている。
【0014】
しかしながら、例えば特許文献4に記載のような方法によりガス拡散層を作製するにあたり、細孔径を精度よく制御することは困難である。また、例えば、ガス拡散層の作製時にひび割れが発生する等により、所望の排水性や保水性が得られず、適切な発電性能が発揮されない場合もありえた。
【0015】
本発明は、燃料電池の適度な排水性と保水性とを両立させうる燃料電池用多孔体層を容易に作製することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の構成は以下のとおりである。
【0017】
(1)所定の平均気孔径を有する樹脂基材を燃料電池用多孔体層材料とする燃料電池用多孔体層の製造方法であって、前記樹脂基材の一部を第1の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第1の多孔体部を形成する第1のメッキ処理工程と、前記樹脂基材の他部を前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第2の多孔体部を形成する第2のメッキ処理工程と、を含む、燃料電池用多孔体層の製造方法である。
【0018】
上記構成によれば、第1の多孔体部の気孔径が、第2の多孔体部の気孔径よりも大きくなるように制御でき、気孔径が面内方向に傾斜した燃料電池用多孔体層を作製することができる。
【0019】
(2)電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、前記酸化極多孔体層が、上記(1)に記載の方法により作製された燃料電池用多孔体層であり、前記第2の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向上流部側、前記第1の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向下流部側、となるように前記燃料電池用多孔体層を配置してなる、燃料電池である。
【0020】
上記構成によれば、酸化剤ガスの流れ方向上流部側の気孔径が、下流部側の気孔径よりも小さくなるように燃料電池用多孔体層を配置することにより、酸化剤ガスの流れ方向上流部側で対向する電解質膜を含むMEAの乾燥を抑制することができ、特に高温運転時の発電性能が向上する。
【0021】
(3)所定の平均気孔径を有する樹脂基材を燃料電池用多孔体層材料とする燃料電池用多孔体層の製造方法であって、前記樹脂基材の一部に導電性材料を第3の所定時間だけ蒸着処理させて第3の多孔体部を形成する第1の蒸着処理工程と、前記樹脂基材の他部に導電性材料を前記第3の所定時間よりも長い第4の所定時間だけ蒸着処理させて第4の多孔体部を形成する第2の蒸着処理工程と、を含む、燃料電池用多孔体層の製造方法である。
【0022】
上記構成によれば、第3の多孔体部の気孔径が、第4の多孔体部の気孔径よりも大きくなるように制御でき、気孔径が面内または面厚方向(積層方向)に傾斜した燃料電池用多孔体層を作製することができる。
【0023】
(4)電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、前記酸化極多孔体層が、上記(3)に記載の方法により作製された燃料電池用多孔体層であり、前記第4の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向上流部側、前記第3の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向下流部側、となるように前記燃料電池用多孔体層を配置してなる、燃料電池である。
【0024】
上記構成によれば、酸化剤ガスの流れ方向上流部側の気孔径が、下流部側の気孔径よりも小さくなるように燃料電池用多孔体層を配置することにより、酸化剤ガスの流れ方向上流部側で対向する電解質膜を含むMEAの乾燥を抑制することができ、特に高温運転時の発電性能が向上する。
【0025】
(5)電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、前記酸化極多孔体層が、上記(3)に記載の方法により作製された燃料電池用多孔体層であり、前記第3の多孔体部が酸化極拡散層側、前記第4の多孔体部が電解質膜側、となるように前記燃料電池用多孔体層を配置してなる、燃料電池である。
【0026】
上記構成によれば、電解質膜側の気孔径が、酸化極拡散層側の気孔径よりも小さくなるように燃料電池用多孔体層を配置することにより、適切な毛管力を生じさせることができ、酸化極側の排水性能が向上する。
【0027】
(6)電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、前記酸化極多孔体層が、所定の平均気孔径を有する第1の樹脂基材の一部を第1の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第1の多孔体部を形成し、前記第1の樹脂基材の他部を前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第2の多孔体部を形成してなる第1の多孔体層と、所定の平均気孔径を有する第2の樹脂基材の一部に導電性材料を第3の所定時間だけ蒸着処理させて第3の多孔体部を形成し、前記第2の樹脂基材の他部に導電性材料を前記第3の所定時間よりも長い第4の所定時間だけ蒸着処理させて第4の多孔体部を形成してなる第2の多孔体層と、からなり、前記第2の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向上流部側、前記第1の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向下流部側となるように前記第1の多孔体層を配置し、前記第3の多孔体部が酸化極拡散層側、前記第4の多孔体部が電解質膜側となるように前記第2の多孔体層を配置し、前記第1の多孔体層と前記第2の多孔体層を積層してなる、燃料電池である。
【0028】
(7)電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、前記酸化極多孔体層が、所定の平均気孔径を有する第1の樹脂基材の一部に導電性材料を第1の所定時間だけ蒸着処理させて第1の多孔体部を形成し、前記第1の樹脂基材の他部に導電性材料を前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間だけ蒸着処理させて第2の多孔体部を形成してなる第1の多孔体層と、所定の平均気孔径を有する第2の樹脂基材の一部に導電性材料を第3の所定時間だけ蒸着処理させて第3の多孔体部を形成し、前記第2の樹脂基材の他部に導電性材料を前記第3の所定時間よりも長い第4の所定時間だけ蒸着処理させて第4の多孔体部を形成してなる第2の多孔体層と、からなり、前記第2の多孔体部が酸化剤ガス流れ方向上流部側、前記第1の多孔体部が酸化剤ガス流れ方向下流部側となるように前記第1の多孔体層を配置し、前記第3の多孔体部が酸化極拡散層側、前記第4の多孔体部が電解質膜側となるように前記第2の多孔体層を配置し、前記第1の多孔体層と前記第2の多孔体層を積層してなる、燃料電池である。
【0029】
(8)電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、前記酸化極が、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極拡散層と、を含み、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池において、前記酸化極触媒層と、前記酸化極拡散層との間に設けられる酸化極多孔体層であって、電解質膜側の気孔径が酸化極拡散層側の気孔径よりも小さい第1の多孔体部と、前記酸化剤ガスの流れ方向上流部の気孔径が下流部の気孔径よりも小さい第2の多孔体部と、を積層させてなる、酸化極多孔体層である。
【発明の効果】
【0030】
適度な排水性と保水性とを両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】燃料電池セル100の構成の概略を示した図である。
【図2】酸化極多孔体層36の構成について説明するための断面拡大図である。
【図3】燃料電池セル200の構成の概略を示した図である。
【図4】酸化極多孔体層40の構成について説明するための断面拡大図である。
【図5】燃料電池セル300の構成の概略を示した図である。
【図6】酸化極多孔体層46の構成について説明するための断面拡大図である。
【図7】酸化極多孔体層40の製造方法の一例について説明するための図である。
【図8】酸化極多孔体層40の製造方法の変形例について説明するための図である。
【図9】酸化極多孔体層46の製造方法の一例について説明するための図である。
【図10】酸化極多孔体層46の製造方法の他の例について説明するための図である。
【図11】酸化極多孔体層46の製造方法の別の例について説明するための図である。
【図12】酸化極多孔体層46の製造方法のさらに別の例について説明するための図である。
【図13】酸化極多孔体層46の製造方法の変形例について説明するための図である。
【図14】従来の燃料電池セルの構成の概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に示す各実施の形態において、同様の構成については同一の符号を付し、その説明については省略するか、または簡単な説明にとどめることがある。また、図面中の各部材の寸法は必ずしも実際の各部材の寸法に対応していない。
【0033】
[燃料電池セル100]
図1に示す燃料電池セル100は、酸化極触媒層12と酸化極拡散層16との間に酸化極多孔体層36を設けるとともに、燃料極触媒層14と燃料極拡散層18との間に、場合によっては燃料極多孔体層38を設けることができることを除き、図14に示す燃料電池セル500と同様の構成を有している。
【0034】
図2に例示するように、所定の平均気孔径を有する多孔質の樹脂基材52を導電処理して導電性膜54を形成することにより、気孔56の平均気孔径および/または気孔径分布を調整した多孔体層を酸化極多孔体層36として適用することができる。
【0035】
本発明の実施の形態において、酸化極拡散層16は、例えば、平均気孔径を10μm以上、より具体的には10μm〜200μm、さらに具体的には10μm〜100μmとすることができる。酸化極拡散層16の平均気孔径が10μm未満だと、排水性が低下する場合があり得て、また、ガス拡散が阻害され、発電性能が低下する場合もあり得る。
【0036】
また、酸化極多孔体層36は、例えば、テトラフルオロエチレンその他のフッ素樹脂からなる多孔性の樹脂基材52に、例えば、下地処理によるNiメッキなどを含み、さらに金メッキなどのメッキ浴または金スパッタなど蒸着処理を施して導電性膜54を形成することにより、酸化極拡散層16が有する気孔径よりも小さく、例えば、気孔56の存在に伴う酸化極多孔体層36の平均気孔径を、概ね0.1μm〜10μm程度とすることができる。なお、酸化極多孔体層36は、撥水性を有することが一般的である。
【0037】
より具体的には、図1に示す燃料電池セル100を、例えば25℃〜60℃程度の比較的低温で動作させる場合には、酸化極多孔体層36の平均気孔径を、例えば、1μm〜10μm程度とすることができる。酸化極多孔体層36の平均気孔径が1μm未満だと、例えば排水性が低下する場合があり得て、また、ガス拡散抵抗が増大し、発電性能が低下する場合もあり得る。また、酸化極多孔体層36の平均気孔径が10μmを超えると、例えばガス拡散抵抗が低下し、電解質膜10の含有する水分量が低下する場合があり得る。
【0038】
一方、図1に示す燃料電池セル100を60℃〜100℃程度の比較的高温で動作させる場合には、酸化極多孔体層36の平均気孔径を、例えば、0.1μm〜1μm程度とすることができる。酸化極多孔体層36の平均気孔径が0.1μm未満だと、例えば酸化極からの排水性が低下する場合があり得る。また、酸化極多孔体層36の平均気孔径が1μmを超えると、例えば拡散抵抗が低下し、保水性が低下する場合があり得る。ここで、「平均気孔径」とは、気孔の形状を円柱形状または円錐形状とみなしたときの円相当直径の平均値である。なお、酸化極多孔体層36の平均気孔径の測定には、例えば、水銀ポロシメータなどを用いることができる。
【0039】
また、酸化極多孔体層36の空隙率を例えば、50%〜80%、より具体的には、70%〜80%とすることができる。酸化極多孔体層36の空隙率が50%未満だと、例えばフラッディングする場合がある一方、酸化極多孔体層36の空隙率が80%を超えると、例えばドライアップする場合があり得る。なお、空隙率の測定には、例えば、水銀ポロシメータやSEMによる形態観察などを用いることができる。
【0040】
また、酸化極多孔体層36の積層方向の幅、つまり酸化極多孔体層36の厚みを例えば、200μm以下、より具体的には、20μm〜200μm、さらに具体的には、50μm〜200μmとすることができる。酸化極多孔体層36の厚みが20μm未満だと酸化極多孔体層36としての機能を十分に発揮することができない場合がある一方、酸化極多孔体層36の厚みが200μmを超えると、例えば排水性が低下する場合があり得る。
【0041】
一方、図1に示す燃料極拡散層18は、例えば、酸化極拡散層16と同様の構成とすることができるが、これに限定されるものではなく、公知のいかなる構成を適用することも可能である。また、必要に応じて任意に適用される燃料極多孔体層38は、例えば、酸化極多孔体層36と同様の構成とすることができるが、これに限定されるものではなく、公知のいかなる構成を適用することも可能である。
【0042】
本構成によれば、酸化極多孔体層36の厚みおよび平均気孔径を制御することにより、例えばガス拡散抵抗が増大し、電解質膜10の含有する水分量の低下を抑制することができる。
【0043】
[燃料電池セル200]
図3に示す燃料電池セル200は、酸化極多孔体層36に代えて第1の多孔体部42と、第2の多孔体部44とを燃料電池セル200の断面方向に積層させた酸化極多孔体層40を備えることを除き、図1に示す燃料電池セル100と同様の構成を有している。第1の多孔体部42は、酸化極拡散層16側に配置されており、図3に示す実施の形態では、酸化極拡散層16に隣接している。一方、第2の多孔体部44は、電解質膜10側に配置され、図3に示す実施の形態では、酸化極触媒層12に隣接している。
【0044】
図4に例示するように、酸化極多孔体層40には、多孔質の樹脂基材52a,52bをそれぞれ導電処理することにより導電性膜54a,54bが形成されている。また、導電性膜54a,54bの形成に伴い、気孔56a,56bの平均気孔径がそれぞれ調整されている。実施の形態において、樹脂基材52a,52bおよび導電性膜54a,54bはそれぞれ、図2に示す樹脂基材52および導電性膜54と同種の材料を適用することができる。
【0045】
実施の形態において、第2の多孔体部44に形成された気孔56bの平均気孔径が第1の多孔体部42に形成された気孔56aの平均気孔径よりも小さくなるように構成されている。より具体的には、第1の多孔体部42に形成された気孔56aの平均気孔径を例えば、10μm以下、より具体的には10μm〜0.1μm程度、さらに具体的には、10μm〜2μmとすることができる。一方、第2の多孔体部44に形成された気孔56bの平均気孔径を例えば、1μm以下、より具体的には1μm〜0.01μm程度、さらに具体的には、1μm〜0.1μmとすることができる。第2の多孔体部44側の平均気孔径を第1の多孔体部42側の平均気孔径よりも小さくすることにより、電解質膜10側から酸化剤ガス流路20側に向けて気孔径、つまり流体流路の容積が段階的に大きくなる構成となる。したがって、本構成によれば、気孔56a,56bの毛管力差を利用して発電に伴う生成水を酸化剤ガス流路20側に移動させることが容易となり、優れた排水性を有する燃料電池を提供することができる。
【0046】
実施の形態において、第1の多孔体部42の空隙率を例えば、50%〜80%、より具体的には、70%〜80%とすることができる。第1の多孔体部42の空隙率が50%未満だと、例えばフラッディングする場合がある一方、第1の多孔体部42の空隙率が80%を超えると、例えばドライアップする場合があり得る。
【0047】
また、第2の多孔体部44の空隙率を例えば、50%〜80%、より具体的には、70%〜80%とすることができる。第2の多孔体部44の空隙率が50%未満だと、例えばフラッディングする場合がある一方、第2の多孔体部44の空隙率が80%を超えると、例えばドライアップする場合があり得る。
【0048】
実施の形態において、第1の多孔体部42の厚みと第2の多孔体部44の厚みは同じであってもよく、異なっていてもよい。より具体的には、第1の多孔体部42の厚みを、例えば10μm〜100μm程度、第2の多孔体部44の厚みを、例えば10μm〜100μm程度とすることができる。そして、酸化極多孔体層40全体としての厚みを、例えば20μm〜200μm程度とすることができる。
【0049】
<酸化極多孔体層40の製造方法>
図7に示すように、所定の平均気孔径(例えば、3μm)を有する樹脂基材52を用意する。実施の形態において、樹脂基材52の空隙率を例えば、50%〜80%とすることができる。また、樹脂基材52は、気孔径2.5〜3.5μmを有する気孔が、気孔全体の容積の90%以上を占める、実質的に気孔径が揃った材料が好適である。金スパッタなどによる導電性材料の蒸着処理を、処理時間を異ならせて樹脂基材52の両面からそれぞれ行うことにより、断面方向に平均気孔径の異なる第1の多孔体部42および第2の多孔体部44を有する酸化極多孔体層40を作製することができる。一般に、第1の多孔体部42作製時の導電性処理時間よりも第2の多孔体部44作製時の導電性処理時間を長くすることにより、第2の多孔体部44側の平均気孔径を第1の多孔体部42側の平均気孔径よりも小さくすることができる。
【0050】
一方、図8に示すように、それぞれ所望の断面厚さおよび平均気孔径を有し、所望の形状に加工された樹脂基材にそれぞれ導電性処理を施した、第1の多孔体部42および第2の多孔体部44に相当する材料を予め作製し、これらを例えば圧着その他の適切な方法で接合することによって酸化極多孔体層40を作製することも可能である。
【0051】
[燃料電池セル300]
図5に示す燃料電池セル300は、酸化極多孔体層36に代えて第3の多孔体部48と、第4の多孔体部50とを燃料電池セル300の面内方向に積層させた酸化極多孔体層46を備えることを除き、図1に示す燃料電池セル100と同様の構成を有している。実施の形態において、第4の多孔体部50は、酸化剤ガス流路20から分岐して酸化極32側に酸化剤ガスを送り込み、該酸化剤のオフガスを送り出すための酸化極ガス流通経路(図示せず)のうち酸化剤ガスの供給側、つまり、酸化剤ガスの流れ方向上流部(図5では下方)側、第3の多孔体部48は、酸化剤ガス流路20のうちオフガスの排出側、つまり、酸化剤ガスの流れ方向下流部(図5では上方)側、となるようにそれぞれ配置されている。
【0052】
図6に例示するように、第3の多孔体部48には、多孔質の樹脂基材52c,52dをそれぞれ導電処理することにより導電性膜54c,54dが形成されている。また、導電性膜54c,54dの形成に伴い、気孔56c,56dの平均気孔径がそれぞれ調整されている。実施の形態において、樹脂基材52c,52dおよび導電性膜54c,54dはそれぞれ、図2に示す樹脂基材52および導電性膜54と同種の材料を適用することができる。
【0053】
実施の形態において、第4の多孔体部50に形成された気孔56dの平均気孔径が第3の多孔体部48に形成された気孔56cの平均気孔径よりも小さくなるように構成されている。より具体的には、第3の多孔体部48に形成された気孔56cの平均気孔径を例えば、10μm以下、より好ましくは10μm〜0.1μm程度、より具体的には5μm程度とすることができる。一方、第4の多孔体部50に形成された気孔56dの平均気孔径を例えば、1μm以下、より好ましくは1μm〜0.01μm程度、より具体的には1μm程度とすることができる。第4の多孔体部50側の平均気孔径を第3の多孔体部48側の平均気孔径よりも小さくすることにより、燃料電池セルの面内方向における酸化剤ガスの入口側から出口側に向けて気孔径が段階的に大きくなる。
【0054】
実施の形態において、第3の多孔体部48の空隙率を例えば、50%〜80%、より具体的には、70%〜80%とすることができる。第3の多孔体部48の空隙率が50%未満だと、例えばフラッディングする場合がある一方、第3の多孔体部48の空隙率が80%を超えると、例えばドライアップする場合があり得る。
【0055】
また、第4の多孔体部50の空隙率を例えば、50%〜80%、より具体的には、70%〜80%とすることができる。第4の多孔体部50の空隙率が50%未満だと、例えばフラッディングする場合がある一方、第4の多孔体部50の空隙率が80%を超えると、例えばドライアップする場合があり得る。
【0056】
実施の形態において、酸化極多孔体層46の厚みを例えば20μm〜200μm程度とすることができる。酸化極多孔体層46の厚みが20μm未満であれば、保水性が低下する場合があり得る。また、酸化極多孔体層46の厚みが200μmを超えると、排水性が低下する場合があり得る。
【0057】
また、酸化極多孔体層46における第3の多孔体部48と第4の多孔体部50との燃料電池セル面内方向の領域面積比は、例えば、酸化剤ガスの入口側に配置される第4の多孔体部50の領域を酸化極多孔体層46全体の1/20〜1/3程度とし、出口側の残りの部分を第3の多孔体部48の領域とするように酸化極多孔体層46を作製することができる。
【0058】
本実施の形態によれば、酸化剤ガスの入口側では比較的気孔径の小さい第4の多孔体部50を配置することにより、例えば60℃〜100℃程度の比較的高温で動作させる場合であっても、電解質膜10の含有する水分量の低下を抑制することができる一方、酸化剤ガスの出口側には比較的気孔径の大きい第3の多孔体部48を配置することにより、優れた排水性を兼ね備えた燃料電池セルを提供することができる。
【0059】
<酸化極多孔体層46の製造方法>
図9に示すように、所定の平均気孔径(例えば、3μm)を有する樹脂基材52を用意する。実施の形態において、樹脂基材52の空隙率を例えば、50%〜80%とすることができる。また、樹脂基材52は、気孔径2.5〜3.5μmを有する気孔が、気孔全体の容積の90%以上を占める、実質的に気孔径が揃った材料が好適である。金メッキなどのメッキ浴62による導電性材料のメッキ処理を、処理時間を異ならせて樹脂基材52の両端からそれぞれ行うことにより、面内方向に平均気孔径の異なる第3の多孔体部48および第4の多孔体部50を有する酸化極多孔体層46を作製することができる。一般に、第3の多孔体部48作製時の導電性処理時間よりも第4の多孔体部50作製時の導電性処理時間を長くすることにより、第4の多孔体部50側の平均気孔径を第3の多孔体部48側の平均気孔径よりも小さくすることができる。
【0060】
また、図10に示すように、メッキ浴62からの引き出し速度を制御することによってもまた、酸化極多孔体層46を好適に作製することができる。つまり、メッキ浴62に浸漬させた樹脂基材52を所定の速度v1(例えば、5cm/秒)で所定の長さだけ引き出し、v1よりも遅い所定の速度v2(例えば、1cm/秒)で残りの樹脂基材52を引き出すことにより、面内方向に平均気孔径の異なる第3の多孔体部48および第4の多孔体部50を有する酸化極多孔体層46を好適に作製することができる。
【0061】
一方、図11,12に示すように、金スパッタなどの蒸着処理によっても、酸化極多孔体層46を作製することができる。
【0062】
図11に示すように、樹脂基材52の一方面の一部をマスク64で覆い、露出部分に蒸着処理を施す(第1の蒸着処理)。次いで、樹脂基材52の露出部分とマスク部分とを入れ替えて、マスク66から露出させた樹脂基材52の残りの部分に蒸着処理を施す(第2の蒸着処理)。このとき、第1の蒸着処理と第2の蒸着処理の処理時間を異ならせ、本実施の形態では第2の蒸着処理時間を第1の蒸着処理時間よりも長くすることにより、面内方向に平均気孔径の異なる第3の多孔体部48および第4の多孔体部50を有する酸化極多孔体層46を好適に作製することができる。
【0063】
図12では、まず、樹脂基材52の一方面の全体に所定時間蒸着処理を施し、マスク68で樹脂基材52の一部を覆ってさらに蒸着することにより、全体としての処理時間を異ならせ、図11に例示する方法と同様に酸化極多孔体層46を好適に作製することができる。
【0064】
なお、図11,12に示すような、蒸着処理工程を含む酸化極多孔体層46の製造方法では、樹脂基材52の一方面(表)側だけでなく、他方面(裏)側(図示せず)も同様の蒸着処理を施すことが必要である(例えば、図7を参照のこと)。このとき、樹脂基材52の一方面側と他方面側とで処理方法および/または処理時間を異ならせることにより、例えば酸化極多孔体層46と酸化極多孔体層40とを組み合わせたような、燃料電池セルの断面方向に異なる気孔径を有する酸化極多孔体層を作製することも可能である。
【0065】
一方、図13に示すように、所望の平均気孔径を有し、所望の形状に加工された樹脂基材にそれぞれ導電性処理を施した、第3の多孔体部48および第4の多孔体部50に相当する材料を予め作製し、これらを例えば圧着その他の適切な方法で接合することによって酸化極多孔体層46を作製することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、車両その他の移動体に搭載可能なものや定置型など、種々の燃料電池に対して利用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 電解質膜、12 酸化極触媒層、14 燃料極触媒層、16 酸化極拡散層、18 燃料極拡散層、20 酸化剤ガス流路、22 セル冷媒流路、24 燃料ガス流路、26 酸化極側セパレータ、28 燃料極側セパレータ、30 膜電極接合体(MEA)、32 酸化極、34 燃料極、36,40,46 酸化極多孔体層、38 燃料極多孔体層、42,44,48,50 多孔体部、52,52a,52b,52c,52d 樹脂基材、54,54a,54b,54c,54d 導電性膜、56,56a,56b,56c,56d 気孔、62 メッキ浴、64,66,68 マスク、100,200,300,500 燃料電池セル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の平均気孔径を有する樹脂基材を燃料電池用多孔体層材料とする燃料電池用多孔体層の製造方法であって、
前記樹脂基材の一部を第1の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第1の多孔体部を形成する第1のメッキ処理工程と、
前記樹脂基材の他部を前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第2の多孔体部を形成する第2のメッキ処理工程と、
を含む、燃料電池用多孔体層の製造方法。
【請求項2】
電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、
前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、
前記酸化極多孔体層が、請求項1に記載の方法により作製された燃料電池用多孔体層であり、
前記第2の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向上流部側、前記第1の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向下流部側、となるように前記燃料電池用多孔体層を配置してなる、燃料電池。
【請求項3】
所定の平均気孔径を有する樹脂基材を燃料電池用多孔体層材料とする燃料電池用多孔体層の製造方法であって、
前記樹脂基材の一部に導電性材料を第3の所定時間だけ蒸着処理させて第3の多孔体部を形成する第1の蒸着処理工程と、
前記樹脂基材の他部に導電性材料を前記第3の所定時間よりも長い第4の所定時間だけ蒸着処理させて第4の多孔体部を形成する第2の蒸着処理工程と、
を含む、燃料電池用多孔体層の製造方法。
【請求項4】
電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、
前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、
前記酸化極多孔体層が、請求項3に記載の方法により作製された燃料電池用多孔体層であり、
前記第4の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向上流部側、前記第3の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向下流部側、となるように前記燃料電池用多孔体層を配置してなる、燃料電池。
【請求項5】
電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、
前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、
前記酸化極多孔体層が、請求項3に記載の方法により作製された燃料電池用多孔体層であり、
前記第3の多孔体部が酸化極拡散層側、前記第4の多孔体部が電解質膜側、となるように前記燃料電池用多孔体層を配置してなる、燃料電池。
【請求項6】
電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、
前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、
前記酸化極多孔体層が、
所定の平均気孔径を有する第1の樹脂基材の一部を第1の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第1の多孔体部を形成し、前記第1の樹脂基材の他部を前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第2の多孔体部を形成してなる第1の多孔体層と、
所定の平均気孔径を有する第2の樹脂基材の一部に導電性材料を第3の所定時間だけ蒸着処理させて第3の多孔体部を形成し、前記第2の樹脂基材の他部に導電性材料を前記第3の所定時間よりも長い第4の所定時間だけ蒸着処理させて第4の多孔体部を形成してなる第2の多孔体層と、からなり、
前記第2の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向上流部側、前記第1の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向下流部側となるように前記第1の多孔体層を配置し、
前記第3の多孔体部が酸化極拡散層側、前記第4の多孔体部が電解質膜側となるように前記第2の多孔体層を配置し、
前記第1の多孔体層と前記第2の多孔体層を積層してなる、燃料電池。
【請求項7】
電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、
前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、
前記酸化極多孔体層が、
所定の平均気孔径を有する第1の樹脂基材の一部に導電性材料を第1の所定時間だけ蒸着処理させて第1の多孔体部を形成し、前記第1の樹脂基材の他部に導電性材料を前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間だけ蒸着処理させて第2の多孔体部を形成してなる第1の多孔体層と、
所定の平均気孔径を有する第2の樹脂基材の一部に導電性材料を第3の所定時間だけ蒸着処理させて第3の多孔体部を形成し、前記第2の樹脂基材の他部に導電性材料を前記第3の所定時間よりも長い第4の所定時間だけ蒸着処理させて第4の多孔体部を形成してなる第2の多孔体層と、からなり、
前記第2の多孔体部が酸化剤ガス流れ方向上流部側、前記第1の多孔体部が酸化剤ガス流れ方向下流部側となるように前記第1の多孔体層を配置し、
前記第3の多孔体部が酸化極拡散層側、前記第4の多孔体部が電解質膜側となるように前記第2の多孔体層を配置し、
前記第1の多孔体層と前記第2の多孔体層を積層してなる、燃料電池。
【請求項8】
電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、前記酸化極が、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極拡散層と、を含み、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池において、前記酸化極触媒層と、前記酸化極拡散層との間に設けられる酸化極多孔体層であって、
電解質膜側の気孔径が酸化極拡散層側の気孔径よりも小さい第1の多孔体部と、
前記酸化剤ガスの流れ方向上流部の気孔径が下流部の気孔径よりも小さい第2の多孔体部と、
を積層させてなる、酸化極多孔体層。
【請求項1】
所定の平均気孔径を有する樹脂基材を燃料電池用多孔体層材料とする燃料電池用多孔体層の製造方法であって、
前記樹脂基材の一部を第1の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第1の多孔体部を形成する第1のメッキ処理工程と、
前記樹脂基材の他部を前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第2の多孔体部を形成する第2のメッキ処理工程と、
を含む、燃料電池用多孔体層の製造方法。
【請求項2】
電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、
前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、
前記酸化極多孔体層が、請求項1に記載の方法により作製された燃料電池用多孔体層であり、
前記第2の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向上流部側、前記第1の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向下流部側、となるように前記燃料電池用多孔体層を配置してなる、燃料電池。
【請求項3】
所定の平均気孔径を有する樹脂基材を燃料電池用多孔体層材料とする燃料電池用多孔体層の製造方法であって、
前記樹脂基材の一部に導電性材料を第3の所定時間だけ蒸着処理させて第3の多孔体部を形成する第1の蒸着処理工程と、
前記樹脂基材の他部に導電性材料を前記第3の所定時間よりも長い第4の所定時間だけ蒸着処理させて第4の多孔体部を形成する第2の蒸着処理工程と、
を含む、燃料電池用多孔体層の製造方法。
【請求項4】
電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、
前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、
前記酸化極多孔体層が、請求項3に記載の方法により作製された燃料電池用多孔体層であり、
前記第4の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向上流部側、前記第3の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向下流部側、となるように前記燃料電池用多孔体層を配置してなる、燃料電池。
【請求項5】
電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、
前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、
前記酸化極多孔体層が、請求項3に記載の方法により作製された燃料電池用多孔体層であり、
前記第3の多孔体部が酸化極拡散層側、前記第4の多孔体部が電解質膜側、となるように前記燃料電池用多孔体層を配置してなる、燃料電池。
【請求項6】
電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、
前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、
前記酸化極多孔体層が、
所定の平均気孔径を有する第1の樹脂基材の一部を第1の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第1の多孔体部を形成し、前記第1の樹脂基材の他部を前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間だけメッキ浴に浸漬させて第2の多孔体部を形成してなる第1の多孔体層と、
所定の平均気孔径を有する第2の樹脂基材の一部に導電性材料を第3の所定時間だけ蒸着処理させて第3の多孔体部を形成し、前記第2の樹脂基材の他部に導電性材料を前記第3の所定時間よりも長い第4の所定時間だけ蒸着処理させて第4の多孔体部を形成してなる第2の多孔体層と、からなり、
前記第2の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向上流部側、前記第1の多孔体部が前記酸化剤ガスの流れ方向下流部側となるように前記第1の多孔体層を配置し、
前記第3の多孔体部が酸化極拡散層側、前記第4の多孔体部が電解質膜側となるように前記第2の多孔体層を配置し、
前記第1の多孔体層と前記第2の多孔体層を積層してなる、燃料電池。
【請求項7】
電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池であって、
前記酸化極は、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極多孔体層と、酸化極拡散層と、を含み、
前記酸化極多孔体層が、
所定の平均気孔径を有する第1の樹脂基材の一部に導電性材料を第1の所定時間だけ蒸着処理させて第1の多孔体部を形成し、前記第1の樹脂基材の他部に導電性材料を前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間だけ蒸着処理させて第2の多孔体部を形成してなる第1の多孔体層と、
所定の平均気孔径を有する第2の樹脂基材の一部に導電性材料を第3の所定時間だけ蒸着処理させて第3の多孔体部を形成し、前記第2の樹脂基材の他部に導電性材料を前記第3の所定時間よりも長い第4の所定時間だけ蒸着処理させて第4の多孔体部を形成してなる第2の多孔体層と、からなり、
前記第2の多孔体部が酸化剤ガス流れ方向上流部側、前記第1の多孔体部が酸化剤ガス流れ方向下流部側となるように前記第1の多孔体層を配置し、
前記第3の多孔体部が酸化極拡散層側、前記第4の多孔体部が電解質膜側となるように前記第2の多孔体層を配置し、
前記第1の多孔体層と前記第2の多孔体層を積層してなる、燃料電池。
【請求項8】
電解質膜と、前記電解質膜の両面を挟持する酸化極および燃料極を備え、前記酸化極が、電解質膜側から順に酸化極触媒層と、酸化極拡散層と、を含み、酸化極側に供給される酸化剤ガスと燃料極側に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池において、前記酸化極触媒層と、前記酸化極拡散層との間に設けられる酸化極多孔体層であって、
電解質膜側の気孔径が酸化極拡散層側の気孔径よりも小さい第1の多孔体部と、
前記酸化剤ガスの流れ方向上流部の気孔径が下流部の気孔径よりも小さい第2の多孔体部と、
を積層させてなる、酸化極多孔体層。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−64481(P2012−64481A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208749(P2010−208749)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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