説明

燃料電池用触媒層製造方法、燃料電池用触媒層製造装置、固体高分子型燃料電池

【課題】発電効率のよい燃料電池を実現できる触媒層の製造方法の提供。
【解決手段】プロトン伝導性高分子と揮発性を有する溶剤とを含む第一原料300に電荷を付与して帯電させる第一帯電工程と、第一原料300を空間中に流出させる第一流出工程と、第一原料300が静電爆発することにより繊維301が製造される繊維製造工程と、導電体302を含む第二原料304に電荷を付与して帯電させる第二帯電工程と、前記第二原料を空間中に流出させる第二流出工程と、触媒303を含む第三原料305に電荷を付与して帯電させる第三帯電工程と、第三原料305を空間中に流出させる第三流出工程と、第一原料300と前記第二原料304と前記第三原料305とを空間中で混合する混合工程と、混合物を堆積させる堆積工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、固体高分子型燃料電池の燃料極や酸素極として用いられる触媒層を製造する燃料電池用触媒層製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今燃料電池が注目されている。その理由は次の通りである。すなわち、燃料電池は、その名に反し、乾電池などの一次電池や鉛蓄電池などの二次電池のような蓄えた電力を放出する電池とは異なり、水素などの燃料と酸素などの酸化剤とを供給し続けることで継続的に電力を取り出すことができる発電装置に近いものである。燃料電池は、熱機関を用いる従来の発電装置とは異なり、運動エネルギーを介することなく化学エネルギーから直接電気エネルギーを取得することができるため、発電効率が高く騒音や振動も少ない。従って、携帯用の機器の電力源や、家庭用の電力源から、自動車、鉄道等の動力源として期待されている。
【0003】
燃料電池の発電方法は、次のようにして行われる。すなわち、燃料極の触媒層において、水素は、触媒を用いて電子とプロトン(水素イオン)とに分けられる。分けられた電子は、導電体を通って燃料電池外に供給される。プロトンは、燃料電池内にあるプロトン伝導性高分子を通って酸素極に移動する。プロトン伝導性高分子を通ってきたプロトンは、酸素極の触媒層において酸素と反応して水になるが、このとき電子が必要となるので、燃料電池外に運ばれた電子が回収され、前記反応に供される。
【0004】
従って、電子が過剰となる燃料極と電子を欲する酸素極との間に電位差が生まれ、発電することができる。
【0005】
以上のように、燃料極の触媒層において水素が電子とプロトンとに分かれ、また、酸素極の触媒層においてプロトンと酸素と電子とが反応して水になる為には、水素と触媒とが接触する必要があり、プロトンと酸素と電子とが接触する必要がある。また、電子を移動させる為には前記触媒の近傍には導電体が存在する必要があり、プロトンを移動させるためにはプロトン伝導性高分子が触媒の近傍に存在する必要がある。
【0006】
さらに、燃料電池の発電効率を向上させるためには、触媒と導電体とプロトン伝導性高分子とが共に存在する箇所であって、燃料極の触媒層においては、水素と接触する確率の高い箇所が多く存在する必要があり、酸素極の触媒層においては酸素と接触する確率の高い箇所が多く存在する必要がある。
【0007】
従来、上記のような触媒層を形成するために次のような方法が提案されている(特許文献1参照)。すなわち、触媒が担持されたカーボンとプロトン伝導性高分子とを溶媒に入れて液状とする。当該液体を高電圧が印加された一方の電極から他方の電極に噴射する。以上により、静電爆発が生じて触媒とカーボンとが担持されたプロトン伝導性高分子の繊維が製造される。当該繊維を堆積することで多孔質の触媒層が形成される。
【特許文献1】特開2007−214008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、前記方法では、プロトン伝導性高分子が繊維化する過程で触媒がプロトン伝導性高分子に内蔵されてしまい、水素や酸素と接触することなく発電に必要な反応に供されない触媒が多数存在することとなる。このような触媒層を備えた燃料電池は、投入した触媒の量に比較し、発電効率はよいとは言えないものである。
【0009】
本願発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、露出状態の触媒を効率よく担持させると共に、触媒の近傍に導電体を配置したプロトン伝導性高分子からなる触媒層を製造することのできる燃料電池用触媒層製造方法、燃料電池用触媒層製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願発明にかかる燃料電池用触媒層製造方法は、プロトン伝導性高分子と揮発性を有する溶剤とを含む第一原料に電荷を付与して前記第一原料を帯電させる第一帯電工程と、前記第一原料を空間中に流出させる第一流出工程と、前記第一原料が静電爆発することによりプロトン伝導性高分子からなる繊維が製造される繊維製造工程と、導電体を含む第二原料に電荷を付与して前記第二原料を帯電させる第二帯電工程と、前記第二原料を空間中に流出させる第二流出工程と、触媒を含む第三原料に電荷を付与して前記第三原料を帯電させる第三帯電工程と、前記第三原料を空間中に流出させる第三流出工程と、前記第一原料と前記第二原料と前記第三原料とを空間中で混合する混合工程と、前記繊維と前記導電体と前記触媒とを被堆積部材上に堆積させる堆積工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
これにより、プロトン伝導性高分子からなる繊維の表面に触媒や導電体が付着し接合するため、プロトン伝導性高分子に内蔵される触媒の量を可及的に少なくすることができる。また、空間中で繊維と触媒と導電体とが接合するため、三次元的な構造が得られやすく、プロトン伝導性高分子からなる繊維の表面に露出する触媒の面積を向上させることができる。
【0012】
さらに、導電体が触媒と同様に繊維の表面に接合するため、プロトン伝導性高分子と触媒と導電体とが相互に近傍に存在する部分を多量に形成することができる。しかもエレクトロスピニング法によりプロトン伝導性高分子からなる繊維が製造されるため、ナノオーダの径からなる繊維が製造される。そして、触媒層は当該繊維が堆積されて形成されるため、触媒層は、水素や酸素などが多量かつ容易に通過可能な多孔質となる。
【0013】
従って、当該触媒層を備える燃料電池は、触媒の投入量に比し、高い発電効率を得ることが可能となる。
【0014】
さらに、前記第二帯電工程と第三帯電工程とにおいて、触媒の帯電極性と導電体の帯電極性とが異なる極性となるように付与する電荷の極性を調整し、前記混合工程においては、前記第二原料と第三原料とを混合することにより導電体と触媒とが接合した担持体を形成し、第一原料を混合して前記繊維と前記担持体とを接合させることが好ましい。
【0015】
これにより、プロトン伝導性高分子の量に比較して少ない触媒と導電体とを確実に接合させて担持体を形成し、当該担持体とプロトン伝導性高分子とを接合するため、プロトン伝導性高分子と触媒と導電体とが相互に近傍に存在する部分を触媒層内にさらに多量に配置することが可能となる。
【0016】
前記混合工程において、形成された担持体の帯電極性が前記繊維の帯電極性と逆の極性で帯電するように、前記第一帯電工程と前記第二帯電工程と前記第三帯電工程とにおいて、前記第一原料と前記第二原料と前記第三原料とに付与する電荷量及び極性を調整することが好ましい。
【0017】
これにより、プロトン伝導性高分子と担持体とを高確率で接合することが可能となり性能の高い触媒層を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本願発明によれば、水素や酸素が容易に通過できる連続気泡の多孔質の触媒層であって、高効率で水素を分解し、また、高効率でプロトンと酸素とを反応させることのできる触媒層を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本願発明にかかる燃料電池用触媒層製造方法の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本願発明の実施の形態である燃料電池用触媒層製造装置を模式的に示す断面図である。
【0021】
同図に示すように、燃料電池用触媒層製造装置100は、第一原料放出手段210から放出された繊維301と、第二原料放出手段220から放出された導電体302と、第三原料放出手段230から放出された触媒303とを空間中で混合し、繊維301の表面に導電体302と触媒303とを担持させる装置であり、当該繊維を堆積させ触媒層を製造する装置である。燃料電池用触媒層製造装置100は、第一原料放出手段210と、第二原料放出手段220と、第三原料放出手段230と、混合手段130と、収集手段110と、誘引手段120とを備えている。
【0022】
図2は、第一原料放出手段を示す断面図である。
【0023】
図3は、第一原料放出手段の外観を示す斜視図である。
【0024】
なお、第二原料放出手段220と、第三原料放出手段230とは、第一原料放出手段210と構造が同じであるため、説明を省略する。なお、第二原料放出手段については、下記記載の「第一原料300」を「第二原料304」と、「繊維301」を「導電体302」と読み替え、第三原料放出手段230については、「第一原料300」を「第三原料305」と、「繊維301」を「触媒303」と読み替えればよい。
【0025】
これらの図に示すように、第一原料放出手段210は、帯電した第一原料300や当該第一原料300が飛行中に静電爆発により製造される繊維301を気体流に乗せて放出することができるユニットであり、流出手段201と、帯電手段202と、風洞体206と、気体流発生手段203とを備えている。
【0026】
ここで、繊維を製造するための第一原料については第一原料300と記し、製造された繊維については繊維301と記すが、製造に際しては第一原料300が静電爆発しながら繊維301に変化していくため、第一原料300と繊維301との境界は曖昧であり、明確に区別できるものではない。
【0027】
流出手段201は、第一原料300を空間中に流出させる装置であり、本実施の形態では、第一原料300を遠心力により放射状に流出させる装置である。流出手段201は、容器211と、回転軸体212と、モータ213とを備えている。
【0028】
容器211は、第一原料300が内方に注入されながら自身の回転による遠心力により空間中に第一原料300を流出させることのできる容器であり、一端が閉塞された円筒形状となされ、周壁には流出孔216を多数備えている。容器211は、貯留する第一原料300に電荷を付与するため、導電体で形成されている。容器211は、支持体(図示せず)に設けられるベアリング(図示せず)により回転可能に支持されている。
【0029】
具体的には、容器211の直径は、10mm以上、300mm以下の範囲から採用されることが好適である。あまり大きすぎると後述の気体流により第一原料300や繊維301を集中させることが困難になるからであり、また、容器211の回転軸が偏心するなど、重量バランスが少しでも偏ると大きな振動が発生してしまい、当該振動を抑制するために容器211を強固に支持する構造が必要となるからである。一方、小さすぎると遠心力により第一原料300を流出させるための回転を高めなければならず、駆動源の負荷や振動など問題が発生するためである。さらに容器211の直径は、20mm以上、100mm以下の範囲から採用することが好ましい。
【0030】
また、流出孔216の形状は円形が好ましく、その直径は、容器211の肉厚にもよるが、おおよそ0.01mm以上、3mm以下の範囲から採用することが好適である。これは、流出孔216があまりに小さすぎると第一原料300を容器211の外方に流出させることが困難となるからであり、あまりに大きすぎると一つの流出孔216から流出する第一原料300の単位時間当たりの量が多くなりすぎ(つまり、流出する第一原料300が形成する線の太さが太くなりすぎ)て所望の径の繊維301を製造することが困難となるからである。
【0031】
なお、容器211は、自身の回転による遠心力により第一原料300を空間中に流出させる部材ばかりでなく、自身は静止しており、圧力がかけられた第一原料300が流出孔216から流出する部材でもかまわない。また、遠心力により第一原料300を流出させる容器211の形状は、円筒形状に限定されるものではなく、断面が多角形状の多角筒形状のようなものや円錐形状のようなものでもよい。流出孔216が回転することにより、流出孔216から第一原料300が遠心力で流出可能な形状であればよい。また、流出孔216の形状は、円形に限定することなく、多角形状や星形形状などであってもよい。
【0032】
回転軸体212は、容器211を回転させ遠心力により第一原料300を流出させるための駆動力を伝達するための軸体であり、容器211の他端から容器211の内部に挿通され、容器211の閉塞部と一端部が接合される棒状体である。また、他端はモータ213の回転軸と接合されている。
【0033】
モータ213は、遠心力により第一原料300を流出孔216から流出させるために、回転軸体212を介して容器211に回転駆動力を付与する装置である。なお、容器211の回転数は、流出孔216の口径や使用する第一原料300の粘度や原料内の高分子物質の種類などとの関係により、数rpm以上、10000rpm以下の範囲から採用することが好ましく、本実施の形態のようにモータ213と容器211とが直動の時はモータ213の回転数は、容器211の回転数と一致する。
【0034】
帯電手段202は、第一原料300に電荷を付与して帯電させる装置である。本実施の形態の場合、帯電手段202は、帯電電極221と、帯電電源222と、接地手段223とを備えている。また、容器211も帯電手段202の一部として機能している。
【0035】
帯電電極221は、自身がアースに対し高い電圧もしくは低い電圧となることで、近傍に配置され接地されている容器211に電荷を誘導するための部材であり、容器211の先端部分を取り囲むように配置される円環状の部材である。帯電電極221に正の電圧が印加されると容器211には、負の電荷が誘導され、帯電電極221に負の電圧が印加されると容器211には、正の電荷が誘導される。また、帯電電極221は、気体流発生手段203からの気体流を混合手段130に案内する風洞体206としても機能している。
【0036】
帯電電極221の大きさは、容器211の直径よりも大きい必要があるが、その直径は、200mm以上、800mm以下の範囲から採用されることが好適である。なお、帯電電極221の形状は、円環状に限ったものではなく、多角形状を有する多角形環状の部材であってもよい。
【0037】
帯電電源222は、帯電電極221に高電圧を印加することのできる電源である。帯電電源222は、直流電源が好ましい。また、帯電電源222が直流電源である場合、帯電電源222が帯電電極221に印加する電圧は、10KV以上、200KV以下の範囲の値から設定されるのが好適である。帯電電源222に負の電圧が印加される場合には、前記の印加する電圧の極性は、負になる。特に、容器211と帯電電極との間の電界強度が重要であり、1KV/cm以上の電界強度になるように印加電圧や帯電電極221の配置を行うことが好ましい。
【0038】
接地手段223は、容器211と電気的に接続され、容器211を接地電位に維持することができる部材である。接地手段223の一端は、容器211が回転状態であっても電気的な接続状態を維持することができるようにブラシとして機能するものであり、他端は大地と接続されている。
【0039】
本実施の形態のように帯電手段202に誘導方式を採用すれば、容器211を接地電位に維持したまま第一原料300に電荷を付与することができる。容器211が接地電位の状態であれば、容器211に接続される回転軸体212やモータ213などの部材を容器211から電気的に絶縁する必要が無くなり、流出手段201として簡単な構造を採用しうることになり好ましい。
【0040】
なお、帯電手段202として、容器211に電源を接続し、容器211を高電圧に維持し、帯電電極221を接地することで第一原料300に電荷を付与してもよい。また、容器211を絶縁体で形成すると共に、容器211に貯留される第一原料300に直接接触する電極を容器211内部に配置し、当該電極を用いて第一原料300に電荷を付与するものでもよい。
【0041】
気体流発生手段203は、容器211から流出される第一原料300の飛行方向を混合手段130の方向に変更するための気体流を発生させる装置である。気体流発生手段203は、モータ213の背部に備えられ、モータ213から容器211の先端に向かう気体流を発生させる。気体流発生手段203は、容器211から径方向に流出される第一原料300が帯電電極221に到達するまでに前記第一原料300を軸方向に変更することができる風力を発生させることができるものとなっている。図2において、気体流は矢印で示している。本実施の形態の場合、気体流発生手段203として、放出手段200の周囲にある雰囲気を強制的に送風する軸流ファンを備える送風機が採用されている。
【0042】
なお、気体流発生手段203は、シロッコファンなど他の送風機により構成してもかまわない。また、高圧ガスを導入することにより流出された第一原料300の方向を変更するものでもかまわない。また、吸引手段102などにより混合手段130内方に気体流を発生させるものでもかまわない。この場合、気体流発生手段203は積極的に気体流を発生させる装置を有しないこととなるが、本願発明の場合、混合手段130の内方に気体流が発生していることをもって気体流発生手段203が存在しているものとする。また、気体流発生手段203を有しない状態で、吸引手段102により吸引することで、風洞体206や混合手段130の内方に気体流を発生させるようにすることも気体流発生手段が存在しているものとする。また、気体流発生手段203を有しない状態で、吸引手段102により吸引することで、風洞体206や混合手段130の内方に気体流が発生する場合、吸引手段102が気体流発生手段として機能しているとみなす。
【0043】
風洞体206は、気体流発生手段203で発生した気体流を容器211の近傍に案内する導管である。風洞体206により案内された気体流が容器211から流出された第一原料300と交差し、第一原料300の飛行方向を変更する。
【0044】
さらにまた、放出手段200は、気体流制御手段204と、加熱手段205とを備えている。
【0045】
気体流制御手段204は、気体流発生手段203により発生する気体流が流出孔216に当たらないよう気体流を制御する機能を有するものであり、本実施の形態の場合、気体流制御手段204として、気体流を所定の領域に流れるように案内する風路体が採用されている。気体流制御手段204により、気体流が直接流出孔216に当たらないため、流出孔216から流出される第一原料300が早期に蒸発して流出孔216を塞ぐことを可及的に防止し、第一原料300を安定させて流出させ続けることが可能となる。なお、気体流制御手段204は、流出孔216の風上に配置され気体流が流出孔216近傍に到達するのを防止する壁状の防風壁でもかまわない。
【0046】
加熱手段205は、気体流発生手段203が発生させる気体流を構成する気体を加熱する加熱源である。本実施の形態の場合、加熱手段205は、混合手段130の内方に配置される円環状のヒータであり、加熱手段205を通過する気体を加熱することができるものとなっている。加熱手段205により気体流を加熱することにより、空間中に流出される第一原料300は、蒸発が促進され効率よくナノファイバを製造することが可能となる。
【0047】
図1の参照に戻る。
【0048】
混合手段130は、第一原料放出手段210から放出される繊維301(第一原料300)と第二原料放出手段220から放出される導電体302(第二原料304)と第三原料放出手段230から放出される触媒303(第三原料305)とを気体流と共に混合させる部材である。本実施の形態の場合、混合手段130は、異なる場所で発生する導電体302と触媒303とが合流するように案内し、合流した導電体302と触媒303とを混合できるようにY字状に接続される管状の部材であり、さらに、混合された導電体302と触媒303と繊維301とを混合できるように枝分かれした部分を備える部材である。
【0049】
収集手段110は、混合手段130から放出される繊維301と導電体302と触媒303とを収集するための装置であり、被堆積部材101と、移送手段104と、供給手段111とを備えている。
【0050】
被堆積部材101は、静電爆発により製造され飛来する繊維301と導電体302と触媒303とが堆積される対象となる部材である。本実施の形態の場合、被堆積部材101は、薄く柔軟性のある長尺のシート状の部材の上に層状に配置されるカーボンからなる多孔質のシートである。このようにすることで、比較的脆弱なカーボンシートを容易に供給し、また、カーボンシートを巻き取りながら回収することが可能となる。当該カーボンシートは、燃料電池に組み込まれた場合、ガス拡散層として機能する。
【0051】
なお、被堆積部材101は、プロトン伝導性高分子からなるシートでもかまわない。
【0052】
移送手段104は、被堆積部材101を移送することができる装置である。本実施の形態の場合、長尺の被堆積部材101を巻き取りながら供給手段111から引き出し、不織布状に堆積する繊維301や導電体302や触媒303と共に被堆積部材101を搬送するものとなっている。移送手段104は、不織布状に堆積している繊維301などを被堆積部材101とともに巻き取ることができるものとなっている。
【0053】
誘引手段120は、空間中を飛行して表面に導電体302や触媒が接合した繊維301を所定の場所に誘引するための装置である。繊維301などを誘引する方法としては、気体流を吸引することで繊維301などを誘引する方法と、帯電している繊維301などを電界(電場)により誘引する方法とを例示することができる。本実施の形態の場合、誘引手段は気体流を吸引する方式と電界で誘引する方式とを選択的に、また、同時に実施することができる装置が採用されており、吸引手段102と、誘引電極121と誘引電源122とを備えている。
【0054】
吸引手段102は、被堆積部材101を通過する気体流を強制的に吸引する装置である。本実施の形態では、吸引手段102は、漏斗状のフード103と送風機105とを備えている。送風機105は、シロッコファンや軸流ファンなどの送風機であって、被堆積部材101から送風機105に向かう気体流を発生させることができる装置である。
【0055】
また、吸引手段102は、第一原料300や第二原料304、第三原料305から蒸発した溶媒が混ざったほとんどの気体流を吸引し、吸引手段102に接続される溶剤回収装置106まで前記気体流を搬送することができるものとなっている。
【0056】
誘引電極121は、繊維301などを誘引するための電界を発生させるための電極である。本実施の形態の場合、気体流を通過させることのできる金属製の網が採用されている。
【0057】
誘引電源122は、誘引電極121を所定の電圧及び極性に維持することができる直流電源である。本実施の形態の場合、誘引電源122は、0V(設置状態)から200KV以下の範囲で自由に電圧と極性を変更することができる直流電源である。
【0058】
次に、上記構成の燃料電池用触媒層製造装置100を用いた燃料電池用触媒層製造方法を説明する。
【0059】
まず、第一原料放出手段210と、第二原料放出手段220と、第三原料放出手段230とのそれぞれに備えられる気体流発生手段203を稼動させる。これにより、風洞体206の内方や混合手段130の内方に気体流が発生する。一方、吸引手段102により、被堆積部材101の後方から前記気体流を吸引する。
【0060】
また、誘引電源122により誘引電極121に電圧を印加し、繊維301等を誘引するための電界を発生させておく。
【0061】
次に、第一原料放出手段210と、第二原料放出手段220と、第三原料放出手段230とがそれぞれ備える流出手段201の容器211に第一原料300、第二原料304、第三原料305を供給する。第一原料300、第二原料304、第三原料305は、別途異なるタンク(図示せず)にそれぞれ蓄えられており、供給路217(図2参照)を通過して容器211の他端部から容器211内部に供給される。
【0062】
同時に、帯電手段202により容器211に貯留される第一原料300、第二原料304、第三原料305に電荷を供給する(第一帯電工程、第二帯電工程、第三帯電工程)。
【0063】
ここで、第一原料300に供給される電荷の極性と、第二原料に供給される電荷の極性は相互に逆極性となっている。また、第一原料300に供給される電荷量(絶対値)は、第二原料304に供給される電荷量(絶対値)よりも多い。一方、第二原料304に供給される電荷の極性と、第三原料305に供給される電荷の極性は相互に逆極性となっている。また、第二原料304に供給される電荷量(絶対値)は、第三原料305に供給される電荷量(絶対値)よりも多い。以上により、相互に逆極性の導電体302と触媒303とが接合しても、導電体302の帯電極性を維持した担持体が形成され、繊維301と担持体との帯電極性は相互に逆極性となる。
【0064】
なお、第一原料300、第二原料304、第三原料305に付与する電荷の量、及び、極性は、帯電電極221に印加する電圧、及び、極性で調整することが可能である。
【0065】
また同時に、容器211をモータ213により回転させて、遠心力により流出孔216から帯電した第一原料300、第二原料304、第三原料305をそれぞれ流出させる(第一流出工程、第二流出工程、第三流出工程)。
【0066】
第二原料304と第三原料305とは、容器211の径方向放射状に噴射され、気体流により飛行方向が変更される。第二原料304と第三原料305とは、静電爆発により微小な液滴に分断されつつ第二原料放出手段220、第三原料放出手段230からそれぞれ放出される。また、前記気体流は、加熱手段205により加熱されており、第二原料304と第三原料305との飛行をそれぞれ案内しつつ、第二原料304と第三原料305とに熱を与えて溶媒の蒸発を促進している。
【0067】
以上により、導電体302と触媒303とが混合手段130の内方で混合されることとなる(混合工程)。ここで、導電体302と触媒303とは逆極性に帯電しているため、引力が発生し、相互に接合されて担持体が形成される。当該担持体は気体流により搬送される。
【0068】
一方、容器211の径方向放射状に噴射された第一原料300は、気体流により飛行方向が変更され、気体流に乗り風洞体206により案内されて混合手段130に向かって搬送される(搬送工程)。第一原料300は静電爆発により繊維301を製造しつつ(繊維製造工程)第一原料放出手段210から放出される。また、前記気体流は、加熱手段205により加熱されており、第一原料300の飛行を案内しつつ、第一原料300に熱を与えて溶媒の蒸発を促進している。
【0069】
次に、第一原料放出手段210から放出され静電爆発により製造された繊維301と、前記担持体とは、混合手段130により気体流と共に合流して混合状態となる(混合工程)。ここで、繊維301と担持体とは相互に逆極性に帯電しているため、引力が発生し、繊維301の表面に担持体が付着しながら混合手段130の内方を気体流に乗って搬送される(搬送工程)。この段階で、繊維301は、導電体302と触媒303とを担持することとなる。
【0070】
なお、担持体とならずに残存する導電体302や触媒303も存在する可能性はあるが、これらも混合手段130の内方で繊維301と混合され、繊維301の表面に接合される。
【0071】
最後に、導電体302と触媒303とを担持した繊維301は、誘引手段120により被堆積部材101上に誘引され、被堆積部材101の上に堆積する(堆積工程)。また、空間中において繊維301と接合されなかった導電体302や触媒303も誘引手段120によって誘引されるため、先に堆積している繊維301の表面に接合する場合もある。
【0072】
ここで、第一原料300と第二原料304と第三原料305とについて説明する。
【0073】
第一原料300は、プロトン伝導性高分子を溶媒中に溶解、または、分散させた液体である。溶媒とプロトン伝導性高分子との混合比率は、溶媒とプロトン伝導性高分子の種類により異なるが、溶媒量は、約60%から98%の間が望ましい。
【0074】
繊維301を構成するプロトン伝導性高分子としては、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂が代表的なものとして例示できる。パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は化学的・熱的安定性に優れている点から好ましい。当該樹脂としては、米国DuPont社製のNafion(登録商標)、旭化成株式会社のAciplex(登録商標)、旭硝子株式会社のFlemion(登録商標)等が挙げられる。その他、スルホン化ポリエーテルケトン樹脂、スルホン化ポリエーテルサルホン樹脂、スルホン化ポリフェニレンサルファイド樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂、スルホン化ポリアミド樹脂、スルホン化エポキシ樹脂、スルホン化ポリオレフィン樹脂等を挙示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記高分子物質に限定されるものではない。
【0075】
第一原料300に使用される溶媒としては、揮発性を備えていればよく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、水等を例示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記種類の溶媒に限定されるものではない。
【0076】
第二原料304は、導電体302を溶媒中に溶解、または、分散させた液体である。また、導電体302と溶媒との間を架橋する分子を用いエマルジョン化した液体でもかまわない。
【0077】
導電体302は、触媒層において電子を移動させるための部材であり、電子導電性を備えておればよい。具体的には金属、導電性のポリマーやカーボンブラックやアセチレンブラック等の炭素質粒子、また、導電性ポリマーの中に、カーボンナノファイバー等のカーボンが内蔵されたものを例示できる。
【0078】
第二原料304に使用される溶媒としては、揮発性を備えていればよく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、水等を例示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記種類の溶媒に限定されるものではない。
【0079】
第三原料305は、触媒303の粒子を溶媒中に溶解、または、分散させた液体である。また、触媒303と溶媒との間を架橋する分子を用いエマルジョン化した液体でもかまわない。
【0080】
触媒303としては、当該技術分野において従来用いられてきたものと同様のものを特に制限無く用いることができる。例えば白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウムの白金族元素の他、金、銀、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、鉛、銅、コバルト、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属又はこれらの合金、または酸化物、複酸化物等が例示できる。特に、触媒303として白金が多くの場合用いられる。触媒303の粒径は、通常は1〜30nmである。触媒303の粒径は、大きすぎると触媒の活性が低下し、小さすぎると安定性が低下するため、0.5〜20nmが好ましい。更に好ましくは1〜5nmが良い。
【0081】
第三原料305に使用される溶媒としては、揮発性を備えていればよく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、水等を例示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記種類の溶媒に限定されるものではない。
【0082】
上記装置構成、及び、方法により、表面にのみ導電体302と触媒303とが担持された繊維301からなる触媒層を製造することが可能となる。従って、導電体302や触媒303の繊維301内部への混入によって機能を果たすことのできない触媒303の発生を抑制し、触媒層としての性能を向上させることが可能となる。しかも、多孔質のカーボンシートの上に前記繊維301を堆積しているため、ガス拡散層に接続される触媒層を製造することが可能となる。また、静電爆発で製造される繊維301に対し、静電爆発で導電体302や触媒303が分散状態で混合されるため、空間中でクラスターを作ることなく繊維301と均等に混ざり合い、全体的に性能の安定した触媒層を製造することが可能となる。
【0083】
なお、本実施形態においては、導電体302と触媒303とが混合手段130の内方で混合されているが、帯電量が減少している場合には、帯電した繊維301と混合手段130で混合する前に、前記混合した導電体302と触媒303を前記繊維301の帯電極性とは逆極性に再帯電するように、イオナイザ等の帯電手段を設けて、繊維301の帯電極性とは逆極性に帯電させた後、混合手段130の中で、混合させて、繊維301と混合させてもよい。
【0084】
次に、本願発明にかかる固体高分子型燃料電池の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0085】
図4は、固体高分子型燃料電池の一単位であるセルの一部を模式的に示す斜視図である。
【0086】
同図に示すように、セル400は、燃料極側セパレータ410と、酸素極側セパレータ420と、ガス拡散層401と、触媒層402と、プロトン伝導性高分子膜403とを備えている。
【0087】
燃料極側セパレータ410と、酸素極側セパレータ420とは、隣接するセルと電気的に接続する板状体であって、燃料ガスや酸化剤ガスが流通する流体流路413、423が多数本平行に板状体全体に渡って並設されている。また、流体流路413、423が設けられている面と反対の面には、冷却用の流体を流通させるための流路が設けられている。
【0088】
ガス拡散層401と触媒層402は、上記実施の形態で作成されたものである。ガス拡散層401は、上記実施の形態における被堆積部材101であり、触媒層402は、導電体302と触媒303とを表面に担持したプロトン伝導性高分子からなる繊維301が不織布状に堆積されたものである。
【0089】
プロトン伝導性高分子膜403は、プロトンを移動させることのできる高分子樹脂膜である。
【0090】
固体高分子型燃料電池は、上記セルを複数個スタックして構成されるものである。
【0091】
以上により、本願発明に係る触媒層を備える固体高分子型燃料電池は、供給される燃料(水素)と触媒とが接触する確率が高いため、非常に効率よく水素をプロトンと電子に分けることができる。また、同様に移動してきたプロトンと酸素と電子とが接触する確率が高いため、効率よく反応が発生し、水を製造することが可能となる。従って、本願発明に係る触媒層を備える固体高分子型燃料電池全体は、高い発電効率を実現することができる。さらに、使用される触媒の量を必要最小限に留めることができ、コストを低減することが可能となる。
【0092】
(実施の形態2)
次に、本願発明にかかる他の実施の形態について説明する。
【0093】
図5は、本願発明の他の実施の形態である燃料電池用触媒層製造装置を模式的に示す断面図である。なお、上記実施の形態1と同じ機能を有する部材、装置等には同じ符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0094】
同図に示すように、燃料電池用触媒層製造装置100は、第一原料放出手段210と、第五原料放出手段250と、第四原料放出手段240と、混合手段130と、誘引手段120とを備えている。なお、第一原料放出手段210と、第四原料放出手段240と、誘引手段120と、収集手段110とは上記実施の形態1と同じであるため、その説明を省略する。
【0095】
第五原料放出手段250は、導電体302表面に触媒303が担持された担持体306を超音波や2流体ノズルを用いて噴霧し、噴霧された担持体306をイオナイザで帯電させる装置である。第五原料放出手段250は、混合手段130に臨んで取り付けられており、混合手段130内部に帯電した担持体306を乾燥状態で噴霧できるものとなっている。
【0096】
イオナイザは、空間中に存在する微粒子を帯電させることができる装置であり、具体的には、コロナ放電方式や電圧印加方式、交流方式、定常直流方式、パルス直流方式、自己放電式、軟X線方式、紫外線式、放射線方式など任意の方式等を挙示することができる。
【0097】
次に、上記構成の燃料電池用触媒層製造装置100を用いた燃料電池用触媒層製造方法を説明する。
【0098】
まず、第四原料放出手段240を用い、ガス拡散層を製造する。
【0099】
第四原料307は、導電性高分子とカーボン粒子とを溶媒中に溶解、または、分散させた液体である。
【0100】
そして、第四原料307を、上記実施の形態で説明した第一原料放出手段210と同様に、帯電手段202を用いて帯電させ、流出手段201を用いて空間中に流出させる。以上により、静電爆発によって導電性高分子とカーボン粒子とからなる導電性繊維308が製造される。そして、当該繊維を堆積させることで、多孔質の不織布状カーボンシートが製造される。
【0101】
そして、当該カーボンシートは、移送手段104によってゆっくり移送される。
【0102】
次に、第一原料放出手段210を用い、実施の形態1と同様の方法で、繊維301を製造する。
【0103】
同時に、第五原料放出手段250を用い、前記繊維301と逆の極性で帯電された担持体306を混合手段130に投入する。
【0104】
以上により、繊維301の表面に担持体306が接合される。
【0105】
最後に、先に製造されたカーボンシートの上に担持体306が担持された繊維301を誘引手段120で誘引し、堆積させる。
【0106】
上記装置構成、及び、方法によれば、ガス拡散層と触媒層とを一連の工程で製造することができ、生産効率を向上させることが可能である。
【0107】
なお、上記実施の形態では、担持体306を乾燥状態で噴霧したが、本願発明はこれに限定されるわけではない。例えば、導電体302と触媒303とを別々に乾燥状態で噴霧し、これらを逆極性に帯電させて、担持体306を製造したうえで、プロトン伝導性高分子からなる繊維301と混合してもかまわない。
【0108】
また、ガス拡散層と触媒層とを別々に製造し、これらを貼り合わせてもかまわない。
【0109】
また、第一原料放出手段210、第二原料放出手段220、第三原料放出手段230、第四原料放出手段240、第五原料放出手段250の位置や、組合せは、触媒層が適切に製造される限りにおいて自由に選択できるものである。
【0110】
なお、本願発明の実施の形態で述べた原料放出手段は、これに限定するものではなく、例えば、断面矩形の風洞体の一壁面を流出孔が多数設けられた流出体としてのノズルヘッドを配置し、風洞体の対向面に誘導電極を配置して前記流出孔と誘導電極間に電位差を持たせることで電界を発生させて前記原料液を帯電させることで、帯電手段とし、また、風洞体の開口端の一方には気体流発生手段を設けるような、原料放出手段としてもよい。また、一本のノズルの先から原料液を放出して電界をかけるような電界紡糸手段を用いて、原料放出手段を実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、燃料電池の製造に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本願発明の実施の形態である燃料電池用触媒層製造装置を模式的に示す断面図である。
【図2】第一原料放出手段を示す断面図である。
【図3】第一原料放出手段の外観を示す斜視図である。
【図4】固体高分子型燃料電池の一単位であるセルの一部を模式的に示す斜視図である。
【図5】本願発明の他の実施の形態である燃料電池用触媒層製造装置を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0113】
100 燃料電池用触媒層製造装置
101 被堆積部材
102 吸引手段
103 フード
104 移送手段
105 送風機
106 溶剤回収装置
110 収集手段
111 供給手段
120 誘引手段
121 誘引電極
122 誘引電源
130 混合手段
200 放出手段
201 流出手段
202 帯電手段
203 気体流発生手段
204 気体流制御手段
205 加熱手段
206 風洞体
210 第一原料放出手段
211 容器
212 回転軸体
213 モータ
216 流出孔
217 供給路
220 第二原料放出手段
221 帯電電極
222 帯電電源
223 接地手段
230 第三原料放出手段
240 第四原料放出手段
250 第五原料放出手段
300 第一原料
301 繊維
302 導電体
303 触媒
304 第二原料
305 第三原料
306 担持体
307 第四原料
308 導電性繊維
400 セル
401 ガス拡散層
402 触媒層
403 プロトン伝導性高分子膜
410 燃料極側セパレータ
413 流体流路
420 酸素極側セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン伝導性高分子と揮発性を有する溶剤とを含む第一原料に電荷を付与して前記第一原料を帯電させる第一帯電工程と、
前記第一原料を空間中に流出させる第一流出工程と、
前記第一原料が静電爆発することによりプロトン伝導性高分子からなる繊維が製造される繊維製造工程と、
導電体を含む第二原料に電荷を付与して前記第二原料を帯電させる第二帯電工程と、
前記第二原料を空間中に流出させる第二流出工程と、
触媒を含む第三原料に電荷を付与して前記第三原料を帯電させる第三帯電工程と、
前記第三原料を空間中に流出させる第三流出工程と、
前記第一原料と前記第二原料と前記第三原料とを空間中で混合する混合工程と、
前記繊維と前記導電体と前記触媒とを被堆積部材上に堆積させる堆積工程と
を含む燃料電池用触媒層製造方法。
【請求項2】
前記第二帯電工程と第三帯電工程とにおいて、触媒の帯電極性と導電体の帯電極性とが異なる極性となるように付与する電荷の極性を調整し、
前記混合工程においては、前記第二原料と第三原料とを混合することにより導電体と触媒とが接合した担持体を形成し、第一原料を混合して前記繊維と前記担持体とを接合させる
請求項1に記載の燃料電池用触媒層製造方法。
【請求項3】
前記混合工程において、形成された担持体の帯電極性が前記繊維の帯電極性と逆の極性で帯電するように、
前記第一帯電工程と前記第二帯電工程と前記第三帯電工程とにおいて、前記第一原料と前記第二原料と前記第三原料とに付与する電荷量、及び、極性を調整する
請求項2に記載の燃料電池用触媒層製造方法。
【請求項4】
さらに、
前記第一原料と前記第二原料と前記第三原料とを気体流により搬送する搬送工程を含む
請求項1に記載の燃料電池用触媒層製造方法。
【請求項5】
プロトン伝導性高分子、または、導電体を含み、かつ、揮発性を有する溶剤を含む第四原料に電荷を付与して前記第四原料を帯電させる第四帯電工程と、
前記第四原料を空間中に流出させる第四流出工程と、
前記第四原料が静電爆発することによりプロトン伝導性高分子、または、導電体からなる繊維を堆積させて被堆積部材を製造する被堆積部材製造工程と
を含む請求項1に記載の燃料電池用触媒層製造方法。
【請求項6】
プロトン伝導性高分子と揮発性を有する溶剤とを含む第一原料に電荷を付与して前記第一原料を帯電させる第一帯電工程と、
前記第一原料を空間中に流出させる第一流出工程と、
前記第一原料が静電爆発することによりプロトン伝導性高分子からなる繊維が製造される繊維製造工程と、
導電体と触媒とが接合された担持体を含む第五原料に電荷を付与して前記第五原料を帯電させる第五帯電工程と、
前記第五原料を空間中に流出させる第五流出工程と、
前記繊維と前記第五原料とを空間中で混合する混合工程と、
前記繊維と前記担持体とを被堆積部材上に堆積させる堆積工程と
を含む燃料電池用触媒層製造方法。
【請求項7】
プロトン伝導性高分子と揮発性を有する溶剤とを含む第一原料に電荷を付与して前記第一原料を帯電させる第一原料帯電手段と、
前記第一原料を空間中に流出させる第一原料流出手段と、
導電体を含む第二原料に電荷を付与して前記第二原料を帯電させる第二原料帯電手段と、
前記第二原料を空間中に流出させる第二原料流出手段と、
触媒を含む第三原料に電荷を付与して前記第三原料を帯電させる第三原料帯電手段と、
前記第一原料と前記第二原料と前記第三原料とを搬送する気体流を発生させる気体流発生手段と、
前記プロトン伝導性高分子と前記導電体と前記触媒とを混合させる混合手段と
を備える燃料電池用触媒層製造装置。
【請求項8】
前記請求項1もしくは請求項6に記載の燃料電池用触媒層製造方法により製造される触媒層を燃料極と酸素極との少なくともいずれか一方として備える固体高分子型燃料電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−49845(P2010−49845A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211218(P2008−211218)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤技術開発/先端機能発現型新構造繊維部材基盤技術の開発」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】