燃料電池用集電板及びその製造方法
【課題】コスト性に優れながら、接触抵抗が小さく、かつ耐食性に優れて長期にわたって信頼性良く使用することができる燃料電池用集電板、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】燃料電池単位セルが複数積層されたセル積層体の両端に配設されて電流を取り出すのに用いる燃料電池用集電板1であって、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材2の片側表面に、Niめっき皮膜4と、Pd、Pt、Ag、Rh、Ir、Os、及びRuからなる群から選ばれたいずれか1以上の貴金属を含んだ貴金属めっき皮膜5と、Auめっき皮膜6とを備えるようにしたことを特徴とする。
【解決手段】燃料電池単位セルが複数積層されたセル積層体の両端に配設されて電流を取り出すのに用いる燃料電池用集電板1であって、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材2の片側表面に、Niめっき皮膜4と、Pd、Pt、Ag、Rh、Ir、Os、及びRuからなる群から選ばれたいずれか1以上の貴金属を含んだ貴金属めっき皮膜5と、Auめっき皮膜6とを備えるようにしたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池単位セルが複数積層されたセル積層体の両端に配設されて電流を取り出すのに用いる燃料電池用集電板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、通常、アノード及びカソードからなる一対の電極間に電解質膜を挟み込み、アノード側とカソード側にそれぞれセパレータを配した燃料電池単位セルを複数個積層させて、このセル積層体の積層方向の両端に集電板を設けて電流を取り出すようにする。
【0003】
このうち集電板には、効率的に電流を回収するために接触抵抗が小さいことが求められ、金属製基材の表面に金(Au)めっきを施した集電板が使われている。例えば、Auめっき皮膜を備えた銅製の集電板(例えば特許文献1〜4参照)をはじめ、銅以外にもステンレス鋼やアルミ板を基材に用いることが知られている(例えば特許文献5、6参照)。
【0004】
ところで、燃料電池を広く実用化するにあたっては、コストを如何に下げるかが大きな課題であり、高価なAuめっき皮膜の使用をできるだけ抑えたいという要望がある。特に近年における金の価格高騰によってその傾向はますます顕著である。しかしながら、従来、0.1μm〜1μm程度のAuめっき皮膜を設けるのが一般的であるところ、これを薄くしていくと金属製基材が腐食したり、セパレータとの接触抵抗が増大してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−217644号公報(段落0056)
【特許文献2】特開2008−78104号公報(段落0090)
【特許文献3】特開2008−146866号公報(段落0027)
【特許文献4】特開2010−287542号公報(段落0149)
【特許文献5】WO2003/088395号パンフレット(第3頁第10行)
【特許文献6】特開2009−152112号公報(段落0141)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の集電板ではコスト性と品質を同時に満足させることは困難であった。加えて、本発明者等が検討を重ねた結果、単にAuめっき皮膜の膜厚を確保しても、場合によっては燃料電池の使用が進むにつれて集電板の接触抵抗が増加する可能性のあることが判明した。
【0007】
そこで、本発明の目的は、コスト性に優れながら、接触抵抗が小さく、かつ耐食性に優れて長期にわたって信頼性良く使用することができる燃料電池用集電板を提供することにある。
【0008】
また、本発明の別の目的は、上記のような品質を備えた燃料電池用集電板を低コストで製造することができる燃料電池用集電板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、従来技術の課題を解決するために鋭意研究したところ、Auめっき皮膜の下地に設けるニッケル(Ni)めっき皮膜が集電板の接触抵抗の増加に起因し、特にNiの酸化を抑制することが重要になるという知見を得た。そこで、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材を用いて、その片側表面に貴金属めっき皮膜を介してAuめっき皮膜を形成した集電板であれば、Niめっき皮膜に起因する性能の低下を防ぐことができ、しかも、Auめっき皮膜の膜厚を従来に比べて薄くしながらも、長期にわたって信頼性に優れて使用できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、燃料電池単位セルが複数積層されたセル積層体の両端に配設されて電流を取り出すのに用いる燃料電池用集電板であって、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材の片側表面に、Niめっき皮膜と、Pd、Pt、Ag、Rh、Ir、Os、及びRuからなる群から選ばれたいずれか1以上の貴金属を含んだ貴金属めっき皮膜と、Auめっき皮膜とを備えたことを特徴とする燃料電池用集電板である。
【0011】
また、本発明は、燃料電池単位セルが複数積層されたセル積層体の両端に配設されて電流を取り出すのに用いる燃料電池用集電板の製造方法であって、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材を亜鉛浸漬浴に浸漬して亜鉛置換処理する工程と、得られたアルミ基材の片側表面にNiめっき皮膜を形成する工程と、Niめっき皮膜上にPd、Pt、Ag、Rh、Ir、Os、及びRuからなる群から選ばれたいずれか1以上の貴金属を含んだ貴金属めっき皮膜を形成する工程と、貴金属めっき皮膜上にAuめっき皮膜を形成する工程とを備えたことを特徴とする燃料電池用集電板の製造方法である。
【0012】
本発明では、金属製基材としてアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材を用いて、その片側表面にNiめっき皮膜、貴金属めっき皮膜、及びAuめっき皮膜を形成する。下記に示す各金属の標準酸化還元電位E0(25℃)から分るように、アルミ基材の片側に各めっき皮膜を形成すれば、燃料電池の使用時に集電板が湿潤雰囲気に晒されても、Alが最も卑な金属となるためAlが優先的に酸化される。つまり、仮に、Auめっき皮膜と貴金属めっき皮膜を通じてNiめっき皮膜が酸化雰囲気に晒されることがあっても、Alが犠牲陽極として働くため、Niめっき皮膜に対しては電子が供給されて、Niめっき皮膜の酸化が抑制される。集電板の構造上、めっき皮膜を有さない部分は導電には関与しないため、仮にその部分が酸化されても集電板の性能には影響しない。
Au3+ + 3e- ⇔ Au E0=1.50 V
Pd2+ + 2e- ⇔ Pd E0=0.99 V
Cu2+ + 2e- ⇔ Cu E0=0.34 V
Ni2+ + 2e- ⇔ Ni E0=-0.23 V
Al3+ + 3e- ⇔ Al E0=-1.66 V
【0013】
なお、金属製基材として例えば銅を用いた場合、NiよりもCuが貴な金属になるため基材が犠牲陽極とはなり得ず、Niの酸化抑制効果は得られない。一方で、アルミ基材の表裏全面が各めっき皮膜で覆われていると、仮にNiめっき皮膜が酸化雰囲気に晒された場合に、各めっき皮膜のなかではNiが最も卑な金属になるため、局部電池反応によってNiめっき層のNiが酸化され、接触抵抗の増加を引き起こすおそれがある。
【0014】
アルミ基材に用いるアルミニウム又はアルミニウム合金については、特に制限されるものではなく、例えば、高純度アルミニウム(JIS H4170; 1N99)や、A1100、A3003、A5052、A5005、A5652、A6063、A6061、A6101、AA5252等の種々のアルミニウム合金を挙げることができる。なかでも、耐食性、成形性、強度、コストの観点から、5000系のアルミニウム合金が好適である。
【0015】
そして、アルミ基材の片側表面にNiめっき皮膜を形成する。このNiめっき皮膜は、主には、アルミ基材の腐食を防止する役割と共に、アルミ基材のAlがAuめっき皮膜の表面に熱拡散するのを防止する役割をする。また、後に形成するAuめっき皮膜が置換反応による無電解めっき処理で行われる場合には、その置換反応に利用される。
【0016】
Niめっき皮膜の膜厚については1μm〜10μmであるのがよく、好ましくは2μm〜7μmであるのがよい。膜厚が1μmより薄いとめっきされない部分が生じ、後述の貴金属めっき皮膜やAuめっき皮膜を形成した際にアルミ基材が露出するおそれがある。反対に10μmより厚くなるとコストが上がり経済的に不利である。また、このNiめっき皮膜は公知の方法によって形成することができ、電解めっき処理でもよく、還元めっき又は置換めっきの無電解めっき処理でもよいが、コスト性や膜厚の均一性等の観点から、好ましくは無電解めっき処理により形成するのがよい。めっき処理の条件については、めっき処理の種類によっても異なるが、例えば無電解めっき処理の場合には、浴温度は70〜100℃程度であり、浸漬時間は10分〜100分程度であるのがよい。
【0017】
Niめっき皮膜を形成した後には、Pd、Pt、Ag、Rh、Ir、Os及びRuからなる群から選ばれたいずれか1以上の貴金属を含んだ貴金属めっき皮膜を形成する。この貴金属めっき皮膜は、集電板の耐食性を更に高める役割をするほか、Auめっき皮膜の結晶粒界やピンホール等からNiが溶出してAuめっき皮膜にNi酸化物が析出するのを防止する。貴金属めっき皮膜がこれらの役割を果たすことから、貴金属めっき皮膜上に形成するAuめっき皮膜の膜厚を従来に比べて薄くしても優れた耐食性を備えることができ、また、集電板の接触抵抗の増加を抑制することができる。貴金属めっき皮膜は、耐食性の観点から、好ましくは、Pd、Rh、Pt、Ru、又はこれらの貴金属の合金を用いて形成されるのがよく、より好ましくは、Pd、Rh、Ru、又はこれらの合金を用いて形成されるのがよい。
【0018】
貴金属めっき皮膜の膜厚は0.01μm〜0.1μmであるのがよく、好ましくは0.02μm〜0.08μmであるのがよい。膜厚が0.01μmより薄いと、めっきされない部位が生じてNiめっき皮膜が露出する面積が広くなり過ぎ、Niめっき皮膜の耐食性が不足するおそれがある。反対に0.1μmより厚くなると、コストが上がり経済的に不利になるほか、後述するAuめっき皮膜を置換反応によって形成する場合にNiめっき皮膜が完全に覆われてAuが析出しづらくなるおそれがある。すなわち、Auめっき皮膜をNiとの置換反応を利用した無電解めっき処理で形成する場合には、貴金属めっき皮膜の膜厚が上記範囲であれば、Niめっき皮膜をほぼ覆ってNiの露出によるNi酸化に伴う集電板の性能低下を抑制しつつ、貴金属めっき皮膜の結晶粒界からのNiめっき皮膜の露出によって置換Auめっきを進行させることができる点で好都合である。
【0019】
また、Auめっき皮膜が置換反応による無電解めっき処理で形成される場合を考慮すると、この貴金属めっき皮膜は、好ましくは結晶質の貴金属めっき皮膜を得るようにするのがよい。すなわち、貴金属めっき皮膜を結晶質にして結晶粒界を有するようにして、Auめっき皮膜の形成に利用されるNiが貴金属皮膜を介して供給されるようにする。このような結晶質の貴金属めっき皮膜を得るには、膜厚の均一性やコスト性の観点から無電解めっき処理により形成するのがよく、その際の処理条件としては、採用する貴金属の種類によっても異なるが、例えばPdめっき皮膜の場合には浴温度が40〜80℃程度で、浸漬時間が1分〜10分程度であるのがよい。
【0020】
また、結晶質の貴金属めっき皮膜を得る際には共析元素を含まないようにするか、或いは、P、B、及びWからなる群から選ばれたいずれか1以上の共析元素を0〜3質量%の範囲で含有させるようにしてもよい。すなわち、結晶質の貴金属めっき皮膜を得るためには、上記いずれか1以上の共析元素の含有量を0〜3質量%の範囲にするのがよい。共析元素の含有量が増え過ぎると貴金属めっき皮膜が非晶質になってしまうおそれがあるが、微量に存在すると結晶粒界を小さくして貴金属めっき皮膜をより緻密にする効果が期待できる。
【0021】
貴金属めっき皮膜を形成した後は、その上にAuめっき皮膜を形成する。Auめっき皮膜は集電板の接触抵抗を下げる観点から最も相応しいものであり、耐食性をより高めることなどからその膜厚を厚くするのが望ましいが、Auめっき皮膜は材料に起因して集電板の価格を高めてしまう。本発明では、上記のように貴金属めっき皮膜を介してAuめっき皮膜を形成することから、従来に比べてその膜厚を薄くすることが可能であり、コスト性を考慮するとAuめっき皮膜の膜厚は0.1μm以下にするのがよい。ただし、薄くし過ぎるとピンホール等の欠陥が多発するおそれがあることから、Auめっき皮膜の膜厚は0.01μm以上にするのがよく、また、めっき外観の均一性等の観点から、好ましくは0.01μm〜0.08μmであるのがよく、より好ましくは0.02μm〜0.06μmであるのがよい。
【0022】
このAuめっき皮膜を形成するにあたっては、均一な皮膜が形成される点やコスト性で有利である点などから無電解めっき処理で行うのがよく、なかでも好ましくは、Niめっき皮膜のNiを利用して置換反応により形成するのがよい。すなわち、貴金属めっき皮膜を形成する工程において結晶質の貴金属めっき皮膜を得ておくことで、貴金属めっき皮膜の粒界を通じて下地のNiめっき皮膜から溶出するNiを利用することができる。置換めっきによる無電解めっき処理の処理条件としては、浴温度70〜95℃程度、浸漬時間10分〜70分程度であるのがよい。
【0023】
置換反応を利用してAuめっき皮膜を形成する場合は、貴金属めっき皮膜の結晶粒界が置換反応の起点となって貴金属めっき皮膜の表面に均一にAuめっき皮膜を形成することができるため、従来よりもAuめっき皮膜の膜厚を薄くしても耐食性や接触抵抗の点でより十分な性能を発現できる。また、Auめっき皮膜自体が結晶粒界を有したり、多少のピンホールが存在したとしても、貴金属めっき皮膜の粒界をAuめっき皮膜が塞ぐため、Auめっき皮膜上にNiが溶出するのを抑えることができる。すなわち、Auめっき皮膜の表面にNiの酸化物(NiO)を実質的に存在させないようにすることも可能であり、集電板の接触抵抗の増加が防止できる。なお、Niの酸化物が実質的に存在しないとは、下記の実施例で示すように、EDX(エネルギー分散型X線分光法)分析によるNiとOの強度比からNiOが形成しているとは言えない状態を意味する。
【0024】
本発明において集電板を製造するにあたっては、Niめっき皮膜の形成に先駆けて、アルミ基材を亜鉛浸漬浴に浸漬して亜鉛置換処理を行うのがよい。亜鉛浸漬浴としては、例えば、酸化亜鉛4.1質量%、及び水酸化ナトリウム25質量%等を含有する酸化亜鉛アルカリ水溶液をイオン交換水で400ml/Lに希釈して用いることができ、浸漬温度は15〜30℃程度、浸漬時間は10秒〜3分程度である。また、より緻密な置換亜鉛層を形成する目的から、亜鉛浸漬浴に浸漬してアルミ基材の表面に一旦置換亜鉛層を形成した後、酸洗浴に浸漬してこの置換亜鉛層を除去し、再び亜鉛浸漬浴に浸漬して置換亜鉛層を形成するようにしてもよい。その際の酸洗浴としては、例えば、酸が硝酸、硫酸、塩酸等であって濃度が10〜65質量%の酸水溶液を用いることができ、浸漬温度は15〜30℃程度、浸漬時間は10秒〜1分程度である。
【0025】
また、亜鉛置換処理の前に脱脂処理やデスマット処理等を行って公知の方法でアルミ基材を前処理したり、プレス加工によってアルミ基材に接続端子等を形成するようにしてもよい。そして、Auめっき皮膜を形成した後には、水洗して乾燥させることで本発明の集電板を得ることができる。
【0026】
本発明のようにしてアルミ基材の片側表面にNiめっき皮膜、貴金属めっき皮膜、及びAuめっき皮膜を備えることで、耐食性に優れて、かつ、長期にわたって使用しても接触抵抗の増加を抑えることができる。好適には、本発明の集電板は、最表面のAuめっき皮膜の膜厚が0.01μm〜0.1μmであり、貴金属めっき皮膜の膜厚が0.01μm〜0.1μmの場合において、5%硫酸水溶液を用いて電位掃引速度20mV/minで自然電位から2Vまでアノード分極曲線を求める腐食電流試験で測定される電位1Vの時のアノード電流が1mA/cm2以下であるのがよく、より好ましくは0.1mA/cm2以下であるのがよい。また、製造直後の集電板の接触抵抗を100としたときに、温度85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で1500時間経過後の接触抵抗は100〜1000であるのがよく、より好ましくは100〜500であるのがよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、Auめっき皮膜を従来に比べて薄くしても耐食性に優れると共に、接触抵抗の増加を抑えた集電板を得ることができる。そのため、本発明の燃料電池用集電板は、コスト性に優れながら、長期にわたって信頼性良く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の燃料電池用集電板を説明する側面模式図である。
【図2】図2は、実施例及び比較例で得られた試験用集電板の接触抵抗を測定する様子を説明する模式図〔(a)側面図、(b)斜視図〕である。
【図3】図3は、実施例で得られた試験用集電板の接触抵抗を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例及び比較例で得られた試験用集電板の恒温高湿試験による接触抵抗を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例及び比較例で得られた試験用集電板の腐食電流試験を行った結果を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例1で得られた試験用集電板の硝酸ばっ気試験前後でのAuめっき皮膜の様子を示す光学顕微鏡写真(倍率300倍)である〔(a)試験前、(b)試験後〕。
【図7】図7は、実施例1で得られた試験用集電板を85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後のEDX定性分析結果を示す。
【図8】図8は、実施例1で得られた試験用集電板を85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後のAuめっき皮膜のSEM観察結果(倍率2000倍)を示す。
【図9】図9は、実施例1で得られた試験用集電板のNiめっき皮膜とPdめっき皮膜の断面の様子を示すTEM写真(倍率45000倍)である。
【図10】図10は、共析元素の含有量によるPdめっき皮膜の結晶性の影響についてXRDで評価した結果を示す〔(a)Pを1%含有する場合、(b)Pを5%含有する場合〕。
【図11】図11は、比較例1で得られた試験用集電板の硝酸ばっ気試験前後でのAuめっき皮膜の様子を示す光学顕微鏡写真(倍率300倍)である〔(a)試験前、(b)試験後〕。
【図12】図12は、比較例1で得られた試験用集電板を85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後のEDX定性分析結果を示す。
【図13】図13は、比較例1で得られた試験用集電板を85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後のAuめっき皮膜のSEM観察結果を示す。
【図14】図14は、アルミ基材の犠牲陽極作用を確認するために行った硝酸ばっ気試験の結果を示す光学顕微鏡写真(倍率300倍)である〔(a)実施例品、(b)比較例品〕。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
[試験用集電板の作製]
板厚3mmのアルミニウム合金5052−H34材から30mm×60mm×厚み3mmの大きさのアルミ基材を切り出し、弱アルカリ性脱脂剤(奥野製薬工業社製商品名:トップアルクリーン161)を濃度30g/Lに希釈した水溶液に浸漬させて、55℃で5分間の脱脂洗浄を行った。水洗後、硝酸を含むデスマット液(奥野製薬工業社製商品名:トップデスマットN-20)を濃度100ml/Lに希釈した水溶液に浸漬させて、25℃で30秒間のデスマット処理を行った。
【0031】
次いで、水洗した後にアルミ基材の片側表面及び外周端面をマスクし、水酸化ナトリウム25質量%、及び酸化亜鉛4.1質量%を含有する亜鉛処理液(奥野製薬工業社製商品名:サブスターZn-8)を濃度400ml/Lに希釈した亜鉛浸漬浴を用いて、上記アルミ基材を22℃で30秒間浸漬させた。水洗後、濃度62質量%の硝酸水溶液を酸洗浴として、アルミ基材を25℃で30秒間浸漬して、一旦アルミ基材の表面に形成された置換亜鉛層を剥離した。水洗後、再び亜鉛浸漬浴を用いて、22℃で30秒間アルミ基材を浸漬させておよそ1μmの置換亜鉛層を形成するようにして、亜鉛置換処理を行った。
【0032】
次いで、水洗した後、次亜リン酸ナトリウム19質量%及び酢酸3.9質量%を含んだ薬剤(奥野製薬工業社製商品名:トップニコロンRCH-MLF)と、酢酸ニッケル36質量%を含有したNiめっき液(同社製商品名:トップニコロンRCH-1LF)とを、それぞれ濃度130ml/Lと40ml/Lとなるように水で希釈して混合したNiめっき浴を用いて、90℃で35分間浸漬させる無電解Niめっき処理を行った。これにより、マスクした面と反対側のアルミ基材の片側表面に膜厚5μmのNiめっき皮膜が形成された。
【0033】
上記でNiめっき皮膜を形成して水洗した後、キレート剤を含んだ薬剤(奥野製薬工業社製商品名:パラトップLP-M)と、パラジウム塩を7質量%含有した薬剤(同社製商品名:パラトップLP-A)と、還元剤を41質量%含んだ薬剤(同社製商品名:パラトップLP−B)と、錯化剤を4.4質量%含んだ薬剤(同社製商品名:パラトップLP-C)とを、それぞれ濃度200ml/L、20ml/L、70ml/L、10ml/Lとなるように水で希釈してこれらを混ぜたPdめっき浴を用いて、60℃で5分間浸漬させる無電解Pdめっき処理を行った。これにより、Niめっき皮膜の上に膜厚0.05μmのPdめっき皮膜が形成された。また、このPdめっき皮膜は、後述するようにPを共析元素として含んだ結晶質を有するものであった。なお、Pdめっき皮膜の膜厚については、別途同様にして行った無電解Pdめっき処理において浸漬時間1分で0.01μmのPdめっき皮膜が析出したことから、浸漬時間より計算した値である。
【0034】
次いで、水洗した後、シアン化第一金カリウムを4質量%含むAuめっき液(奥野製薬工業社製商品名:OPCムデンゴールド)を濃度100ml/Lに水で希釈したAuめっき浴を用いて、90℃で45分間浸漬させる無電解Auめっき処理を行った。これにより、Niめっき皮膜のNiとの置換反応によってPdめっき皮膜上に膜厚0.03μmの金めっき皮膜が形成された。無電解Auめっき処理後に水洗し、湯洗してさらに乾燥させることで、図1に示したように、アルミ基材2の片側表面に置換亜鉛層3を介してNiめっき皮膜4、Pdめっき皮膜5、及びAuめっき皮膜6を備えた本発明の実施例に係る試験用集電板1を完成させた。
【0035】
[接触抵抗測定]
上記で得られた試験用集電板について、以下のようにして接触抵抗を測定した。図2(a)に示したように、Auめっき皮膜側を比較板8に接触させてこれらを上板7と下板9の間に挟み込み、上下方向から面圧を掛けながら試験用集電板1の接触抵抗値を測定した。結果を図3に示す。なお、上板7、比較板8、及び下板9は、それぞれ30mm×60mm×厚み3mmのアルミ板(A5052材)の表裏両面に膜厚5μmのNiめっき皮膜を介して膜厚0.1μmのAuめっき皮膜を有したものであり、図2(b)に示したように、これらの縦横方向を交互に重ねた接触抵抗測定試料を準備し、試験用集電板1と比較板8との接触面積Sは3mm×3mm=9cm2とした。また、接触抵抗(mΩ・cm2)は、上板7と下板9との間に2Aの電流Iを流して試験用集電板1と比較板8との間の電圧Vを測定し、R=V×S/I=V×9/2から求めた。
【0036】
一般に、燃料電池用集電板に求められる接触抵抗は、通常の使用態様を想定して面圧が1MPaの場合に10mΩ・cm2程度であることからすれば、図3に示した結果から、本実施例1で得られた試験用集電板は極めて良好な接触抵抗を示すことが分った。また、上記で得られた試験用集電板を恒温高湿試験機に入れ、温度85℃、湿度95%の環境下に1500時間保持する恒温高湿試験を行い、経過時間と共に接触抵抗測定試料を準備して面圧1MPaで接触抵抗を測定した。その結果、図4に示したように、1500時間経過後であっても本実施例1で得られた試験用集電板の接触抵抗は0.15mΩ・cm2であり、作製直後の接触抵抗(0.05mΩ・cm2)に対して300%の増加に抑えることができた(作製直後の接触抵抗を100としたときに1500時間経過後は300)。
【0037】
[腐食電流試験]
上記と同様にして得た試験用集電板について、以下のようにして腐食電流試験を行った。試験用集電板を5質量%硫酸水溶液中(400ml、30℃)で白金対極に対向させて設置し、参照極として飽和カロメル電極を使用して、この参照極を飽和塩化カリウム水溶液に浸漬した。そして、飽和塩化カリウム水溶液と試験用集電板との間を塩橋で結び、集電板、白金対極、及び飽和カロメル電極をポテンシャルスタッドに接続させて、Auめっき皮膜の1cm2を測定面積として、大気開放下で特に攪拌させずに、集電板の電位を飽和カロメル電極に対して自然電極電位から2Vまで電位掃引速度20mV/minでアノード側に走査させ、電気化学的分極特性評価法により集電板に流れるピーク電流を分極電流として測定して腐食電流試験を行った。その結果、図5に示したように、電位1Vのときに測定されたアノード電流密度は0.013mA/cm2であり、耐食性に優れることが確認された。
【0038】
[硝酸ばっ気試験]
上記と同様にして得た試験用集電板について、JIS−H8620附属書1に従って硝酸ばっ気試験を行った。先ず、Auめっき皮膜の表面の汚れを念のためエタノールで除去し、乾燥させた後、容積2Lのデシケーターの底部に5mlの硝酸を入れ、磁製板の上に得られた試験用集電板を載せて蓋をした。そして、約23℃で1時間放置した後、試験用集電板を取り出して静かに水洗して乾燥させた。この試験前の集電板のAuめっき皮膜を光学顕微鏡で観察した写真を図6(a)に示し、また、試験後のAuめっき皮膜を光学顕微鏡で観察した写真を図6(b)に示す(いずれも倍率300倍)。これらの写真から明らかなように、試験用集電板のAuめっき皮膜は、硝酸ばっ気試験後であっても特に外観不良は観察されなかった。
【0039】
[EDX分析・SEM観察]
上記と同様にして得た試験用集電板について、85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後にEDXを搭載した走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、アルミ基材上のめっき皮膜に含まれる化合物の化学組成を分析した。定性分析結果を図7に示し、また、Auめっき皮膜のSEM観察結果を図8に示す。なお、測定にはFE−SEM及びEDX(日立製作所社製S-4500及びEMAX-7000)を使用した。図7の定性分析は縦軸がカウント(−)を示し、横軸はエネルギー(eV)を示す。また、SEM観察は加速電圧15kVの条件で行い、図8に示した写真は倍率2000倍で観察したものである。
【0040】
図7に示したEDXの定性分析によれば、O(酸素)が殆んど検出されておらず、NiとOの強度比からNiの酸化物(NiO)が形成されている形跡は確認されなかった。また、図8に示したSEM写真からもAuめっき皮膜の外観不良は特に観察されなかった。これらの結果から明らかなように、接触抵抗を増加させてしまうようなNiの酸化物はAuめっき皮膜の表面は勿論、各めっき皮膜内にも形成されていないことが分かった。なお、EDXの検出深さは約1μm程度であり、Niめっき皮膜の膜厚が5μmと厚いため、下地のZnや基材のAlは検出されなかった。
【0041】
[Pdめっき皮膜の評価]
上記と同様にして試験用集電板を得る途中、無電解Pdめっき処理により膜厚0.05μmのPdめっき皮膜を形成したところで透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察を行った(倍率45000倍)。Pdめっき皮膜の表面に樹脂の保護膜を形成した後、FIB(集束イオンビーム)法で薄片にしてNiめっき皮膜とPdめっき皮膜の断面を観察した。結果を図9に示す。この断面写真からNiめっき皮膜は非晶質であることが分る。一方、Pdめっき皮膜は結晶粒界を有した結晶質であることが分る。
【0042】
また、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を使ってPdめっき皮膜の構成元素を分析したところ、Pdめっき皮膜には共析元素としてPが1質量%含まれていることが確認された。なお、EPMAの分析には島津製作所社製EPMA1610を使用し、加速電圧15kVの条件で分析を行った。
【0043】
また、Pdめっき皮膜に含まれる共析元素による影響を調べるために、以下のようにしてXRDによりPdめっき皮膜の結晶性を確認した。先ず、実施例1と同様のPdめっき浴を用いて、別途用意したNi板を60℃で5分間浸漬させる無電解Pdめっき処理を行って、共析元素としてPを1質量%含んだ膜厚0.05μmのPdめっき皮膜をNi板上に形成した。また、奥野製薬工業社製商品名ムデンノーブルPD−1、ムデンノーブルPD−2、ムデンノーブルPD−3をそれぞれ濃度50ml/L、50ml/L、100ml/Lになるように水で希釈し混合したPdめっき浴を用いて、別途用意したNi板を50℃で12分間浸漬させる無電解Pdめっき処理を行って、共析元素としてPを5質量%含んだ膜厚0.2μmのPdめっき皮膜をNi板に形成した。ここでは、Pの回折ピークとNiの回折ピークとの重なりをさけることからNi板を使用した。XRDの分析結果を図10に示す。図10(a)に示したPを1%含有するPdめっき皮膜の場合は回折角40°付近においてシャープなPdのピークが得られたが、図10(b)に示したPを5%含有するPdめっき皮膜の場合には非晶質Pdに起因するX線散乱のハローが観測された。このことより、共析元素の含有量によって貴金属めっき皮膜の結晶性に与える影響が確認された。
【0044】
(比較例1)
Niめっき皮膜を形成した後、Pdめっき皮膜(貴金属めっき皮膜)を形成せずにAuめっき皮膜を膜厚0.08μmで形成した以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る試験用集電板を得た。得られた試験用集電板について、以下のように実施例1と同様にして評価した。
【0045】
先ず、図3に示したように、作製直後の接触抵抗はいずれの面圧に対しても実施例1で得られたものより接触抵抗値は低かったが、図4に示したように、恒温高湿試験で500時間を経過するあたりから接触抵抗が増加し始め、1500時間経過後には0.45mΩ・cm2まで達し、作製直後の接触抵抗(0.04mΩ・cm2)に対して1000%増大した。また、図5に示したように、腐食電流試験では電位1Vのときに測定されたアノード電流密度は2.8mA/cm2になり、耐食性に劣ることが分った。
【0046】
また、硝酸ばっ気試験によると、図11(b)に示したように、試験後のAuめっき皮膜にはめっき層の割れがいくつか確認された。また、Auめっき皮膜の表面が膨れたような箇所も存在しており、実施例1で得られた集電板に比べてAuめっき皮膜の外観が劣るものであった。
【0047】
更には、上記と同様にして得た比較例1の試験用集電板について、85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後にEDXを搭載した走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、アルミ基材上のめっき皮膜に含まれる化合物の化学組成を分析した。EDXによる定性分析結果を図12に示し、あわせてSEM観察結果を図13に示す。SEM観察によればAuめっき皮膜の表面に丸く膨れた箇所やひだ状の析出物が多数存在することが分る。また、EDXの定性分析によれば明らかにO(酸素)のピークが確認され、Niと同程度の強度比を有することからNiの酸化物であるNiOが形成していると考えられる。実施例1のEDX分析結果と比較すれば、この比較例1に係る試験用集電板のAuめっき皮膜のひだ状物やふくれの原因は、Niの酸化物の析出によるものと判断される。
【0048】
(実施例2)
Pdめっき浴を用いて、60℃で10分間浸漬させる無電解Pdめっき処理を行い、Niめっき皮膜の上に膜厚0.1μmのPdめっき皮膜を形成した以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る試験用集電板を得た。得られた試験用集電板について、以下のように実施例1と同様にして評価した。
【0049】
図3に示したように、作製直後の接触抵抗は、いずれの面圧に対しても一般的に燃料電池用集電板に求められる接触抵抗よりも低く、また、図4に示したように、1500時間経過後であっても本実施例2で得られた試験用集電板の接触抵抗は0.09mΩ・cm2であり、作製直後の接触抵抗(0.05mΩ・cm2)に対して180%の増加に抑えることができた。また、図5に示したように、腐食電流試験では電位1Vのときに測定されたアノード電流密度は0.0028mA/cm2であり、耐食性に優れることが分った。
【0050】
また、硝酸ばっ気試験の前後によってAuめっき皮膜の外観上の変化は特に確認されなかった。更には、得られた試験用集電板を85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後にEDXによる定性分析を行ったところ、実施例1と同様、Niの酸化物(NiO)の形成は確認されず、SEM観察によってもAuめっき皮膜の外観不良は特に確認されなかった。
【0051】
また、この実施例2の試験用集電板を得る途中、無電解Pdめっき処理により膜厚0.1μmのPdめっき皮膜を形成したところで実施例1と同様にしてTEMにより断面観察を行ったところ、Pdめっき皮膜は結晶粒界を有した結晶質であることが確認された。
【0052】
(実施例3、比較例2〜3)
アルミ基材として30mm×60mm×厚み3mmのAA5252材を用いて、表1に示したように各めっき皮膜を形成し、実施例3、及び比較例2〜3の各試験用集電板を得た。すなわち、実施例3では上記アルミ基材を用いた以外は実施例1と同様にしたところ、実施例1の場合とほぼ同じに評価される試験用集電板が得られた。
【0053】
一方、比較例2〜3では、アルミ基材の変更に加えて、Auめっき皮膜の膜厚を変えた以外は比較例1と同様にしたところ、恒温高湿試験で1500時間経過した後の接触抵抗は、いずれも作製直後の接触抵抗に対して1000%以上増大し、また、腐食電流試験の結果、耐食性に劣ることが分った。更には、85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後のAuめっき皮膜について、SEM観察によれば膨れやひだ状の析出物が多数確認された。更にまた、硝酸ばっ気試験後のAuめっき皮膜では、割れや剥離したような形跡が確認され、外観上劣るものであった。
【0054】
【表1】
【0055】
(参考例1)
[アルミ基材の犠牲陽極作用評価]
本発明の集電板におけるアルミ基材の犠牲陽極作用を確認するために、以下のような実験を行った。実施例1と同様にして得られた試験用集電板について、Auめっき皮膜の表面のみを露出させるように、アルミ基材の裏面側(めっき皮膜と反対側)及び外周端面を厚さ0.05mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製マスキング材でマスクした。このようにアルミ基材を一切露出させないようにした比較試料と実施例1と同様にして得られた試験用集電板(マスクなし)とを、実施例1と同様にして同時にデシケーターに入れ、硝酸ばっ気試験を行った。
【0056】
図14(a)は実施例1と同様にして得られた試験用集電板のAuめっき皮膜の光学顕微鏡写真であり、外観上の変化は認められなかった。一方、図14(b)はアルミ基材をマスクした比較試料の場合であり、Auめっき皮膜の一部が盛り上がるようなふくれが観察され、また、一部では細かな割れが確認された。上記実施例及び比較例で得られた結果を勘案すると、アルミ基材の片側表面にめっき皮膜を形成する本発明の集電板によれば、アルミ基材の犠牲陽極作用によってNiの酸化を抑制できることが分かる。
【符号の説明】
【0057】
1:燃料電池用集電板、2:アルミ基材、3:置換亜鉛層、4:Niめっき皮膜、5:貴金属めっき皮膜、6:Auめっき皮膜、7:上板、8:比較板、9:下板。
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池単位セルが複数積層されたセル積層体の両端に配設されて電流を取り出すのに用いる燃料電池用集電板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、通常、アノード及びカソードからなる一対の電極間に電解質膜を挟み込み、アノード側とカソード側にそれぞれセパレータを配した燃料電池単位セルを複数個積層させて、このセル積層体の積層方向の両端に集電板を設けて電流を取り出すようにする。
【0003】
このうち集電板には、効率的に電流を回収するために接触抵抗が小さいことが求められ、金属製基材の表面に金(Au)めっきを施した集電板が使われている。例えば、Auめっき皮膜を備えた銅製の集電板(例えば特許文献1〜4参照)をはじめ、銅以外にもステンレス鋼やアルミ板を基材に用いることが知られている(例えば特許文献5、6参照)。
【0004】
ところで、燃料電池を広く実用化するにあたっては、コストを如何に下げるかが大きな課題であり、高価なAuめっき皮膜の使用をできるだけ抑えたいという要望がある。特に近年における金の価格高騰によってその傾向はますます顕著である。しかしながら、従来、0.1μm〜1μm程度のAuめっき皮膜を設けるのが一般的であるところ、これを薄くしていくと金属製基材が腐食したり、セパレータとの接触抵抗が増大してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−217644号公報(段落0056)
【特許文献2】特開2008−78104号公報(段落0090)
【特許文献3】特開2008−146866号公報(段落0027)
【特許文献4】特開2010−287542号公報(段落0149)
【特許文献5】WO2003/088395号パンフレット(第3頁第10行)
【特許文献6】特開2009−152112号公報(段落0141)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の集電板ではコスト性と品質を同時に満足させることは困難であった。加えて、本発明者等が検討を重ねた結果、単にAuめっき皮膜の膜厚を確保しても、場合によっては燃料電池の使用が進むにつれて集電板の接触抵抗が増加する可能性のあることが判明した。
【0007】
そこで、本発明の目的は、コスト性に優れながら、接触抵抗が小さく、かつ耐食性に優れて長期にわたって信頼性良く使用することができる燃料電池用集電板を提供することにある。
【0008】
また、本発明の別の目的は、上記のような品質を備えた燃料電池用集電板を低コストで製造することができる燃料電池用集電板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、従来技術の課題を解決するために鋭意研究したところ、Auめっき皮膜の下地に設けるニッケル(Ni)めっき皮膜が集電板の接触抵抗の増加に起因し、特にNiの酸化を抑制することが重要になるという知見を得た。そこで、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材を用いて、その片側表面に貴金属めっき皮膜を介してAuめっき皮膜を形成した集電板であれば、Niめっき皮膜に起因する性能の低下を防ぐことができ、しかも、Auめっき皮膜の膜厚を従来に比べて薄くしながらも、長期にわたって信頼性に優れて使用できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、燃料電池単位セルが複数積層されたセル積層体の両端に配設されて電流を取り出すのに用いる燃料電池用集電板であって、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材の片側表面に、Niめっき皮膜と、Pd、Pt、Ag、Rh、Ir、Os、及びRuからなる群から選ばれたいずれか1以上の貴金属を含んだ貴金属めっき皮膜と、Auめっき皮膜とを備えたことを特徴とする燃料電池用集電板である。
【0011】
また、本発明は、燃料電池単位セルが複数積層されたセル積層体の両端に配設されて電流を取り出すのに用いる燃料電池用集電板の製造方法であって、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材を亜鉛浸漬浴に浸漬して亜鉛置換処理する工程と、得られたアルミ基材の片側表面にNiめっき皮膜を形成する工程と、Niめっき皮膜上にPd、Pt、Ag、Rh、Ir、Os、及びRuからなる群から選ばれたいずれか1以上の貴金属を含んだ貴金属めっき皮膜を形成する工程と、貴金属めっき皮膜上にAuめっき皮膜を形成する工程とを備えたことを特徴とする燃料電池用集電板の製造方法である。
【0012】
本発明では、金属製基材としてアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材を用いて、その片側表面にNiめっき皮膜、貴金属めっき皮膜、及びAuめっき皮膜を形成する。下記に示す各金属の標準酸化還元電位E0(25℃)から分るように、アルミ基材の片側に各めっき皮膜を形成すれば、燃料電池の使用時に集電板が湿潤雰囲気に晒されても、Alが最も卑な金属となるためAlが優先的に酸化される。つまり、仮に、Auめっき皮膜と貴金属めっき皮膜を通じてNiめっき皮膜が酸化雰囲気に晒されることがあっても、Alが犠牲陽極として働くため、Niめっき皮膜に対しては電子が供給されて、Niめっき皮膜の酸化が抑制される。集電板の構造上、めっき皮膜を有さない部分は導電には関与しないため、仮にその部分が酸化されても集電板の性能には影響しない。
Au3+ + 3e- ⇔ Au E0=1.50 V
Pd2+ + 2e- ⇔ Pd E0=0.99 V
Cu2+ + 2e- ⇔ Cu E0=0.34 V
Ni2+ + 2e- ⇔ Ni E0=-0.23 V
Al3+ + 3e- ⇔ Al E0=-1.66 V
【0013】
なお、金属製基材として例えば銅を用いた場合、NiよりもCuが貴な金属になるため基材が犠牲陽極とはなり得ず、Niの酸化抑制効果は得られない。一方で、アルミ基材の表裏全面が各めっき皮膜で覆われていると、仮にNiめっき皮膜が酸化雰囲気に晒された場合に、各めっき皮膜のなかではNiが最も卑な金属になるため、局部電池反応によってNiめっき層のNiが酸化され、接触抵抗の増加を引き起こすおそれがある。
【0014】
アルミ基材に用いるアルミニウム又はアルミニウム合金については、特に制限されるものではなく、例えば、高純度アルミニウム(JIS H4170; 1N99)や、A1100、A3003、A5052、A5005、A5652、A6063、A6061、A6101、AA5252等の種々のアルミニウム合金を挙げることができる。なかでも、耐食性、成形性、強度、コストの観点から、5000系のアルミニウム合金が好適である。
【0015】
そして、アルミ基材の片側表面にNiめっき皮膜を形成する。このNiめっき皮膜は、主には、アルミ基材の腐食を防止する役割と共に、アルミ基材のAlがAuめっき皮膜の表面に熱拡散するのを防止する役割をする。また、後に形成するAuめっき皮膜が置換反応による無電解めっき処理で行われる場合には、その置換反応に利用される。
【0016】
Niめっき皮膜の膜厚については1μm〜10μmであるのがよく、好ましくは2μm〜7μmであるのがよい。膜厚が1μmより薄いとめっきされない部分が生じ、後述の貴金属めっき皮膜やAuめっき皮膜を形成した際にアルミ基材が露出するおそれがある。反対に10μmより厚くなるとコストが上がり経済的に不利である。また、このNiめっき皮膜は公知の方法によって形成することができ、電解めっき処理でもよく、還元めっき又は置換めっきの無電解めっき処理でもよいが、コスト性や膜厚の均一性等の観点から、好ましくは無電解めっき処理により形成するのがよい。めっき処理の条件については、めっき処理の種類によっても異なるが、例えば無電解めっき処理の場合には、浴温度は70〜100℃程度であり、浸漬時間は10分〜100分程度であるのがよい。
【0017】
Niめっき皮膜を形成した後には、Pd、Pt、Ag、Rh、Ir、Os及びRuからなる群から選ばれたいずれか1以上の貴金属を含んだ貴金属めっき皮膜を形成する。この貴金属めっき皮膜は、集電板の耐食性を更に高める役割をするほか、Auめっき皮膜の結晶粒界やピンホール等からNiが溶出してAuめっき皮膜にNi酸化物が析出するのを防止する。貴金属めっき皮膜がこれらの役割を果たすことから、貴金属めっき皮膜上に形成するAuめっき皮膜の膜厚を従来に比べて薄くしても優れた耐食性を備えることができ、また、集電板の接触抵抗の増加を抑制することができる。貴金属めっき皮膜は、耐食性の観点から、好ましくは、Pd、Rh、Pt、Ru、又はこれらの貴金属の合金を用いて形成されるのがよく、より好ましくは、Pd、Rh、Ru、又はこれらの合金を用いて形成されるのがよい。
【0018】
貴金属めっき皮膜の膜厚は0.01μm〜0.1μmであるのがよく、好ましくは0.02μm〜0.08μmであるのがよい。膜厚が0.01μmより薄いと、めっきされない部位が生じてNiめっき皮膜が露出する面積が広くなり過ぎ、Niめっき皮膜の耐食性が不足するおそれがある。反対に0.1μmより厚くなると、コストが上がり経済的に不利になるほか、後述するAuめっき皮膜を置換反応によって形成する場合にNiめっき皮膜が完全に覆われてAuが析出しづらくなるおそれがある。すなわち、Auめっき皮膜をNiとの置換反応を利用した無電解めっき処理で形成する場合には、貴金属めっき皮膜の膜厚が上記範囲であれば、Niめっき皮膜をほぼ覆ってNiの露出によるNi酸化に伴う集電板の性能低下を抑制しつつ、貴金属めっき皮膜の結晶粒界からのNiめっき皮膜の露出によって置換Auめっきを進行させることができる点で好都合である。
【0019】
また、Auめっき皮膜が置換反応による無電解めっき処理で形成される場合を考慮すると、この貴金属めっき皮膜は、好ましくは結晶質の貴金属めっき皮膜を得るようにするのがよい。すなわち、貴金属めっき皮膜を結晶質にして結晶粒界を有するようにして、Auめっき皮膜の形成に利用されるNiが貴金属皮膜を介して供給されるようにする。このような結晶質の貴金属めっき皮膜を得るには、膜厚の均一性やコスト性の観点から無電解めっき処理により形成するのがよく、その際の処理条件としては、採用する貴金属の種類によっても異なるが、例えばPdめっき皮膜の場合には浴温度が40〜80℃程度で、浸漬時間が1分〜10分程度であるのがよい。
【0020】
また、結晶質の貴金属めっき皮膜を得る際には共析元素を含まないようにするか、或いは、P、B、及びWからなる群から選ばれたいずれか1以上の共析元素を0〜3質量%の範囲で含有させるようにしてもよい。すなわち、結晶質の貴金属めっき皮膜を得るためには、上記いずれか1以上の共析元素の含有量を0〜3質量%の範囲にするのがよい。共析元素の含有量が増え過ぎると貴金属めっき皮膜が非晶質になってしまうおそれがあるが、微量に存在すると結晶粒界を小さくして貴金属めっき皮膜をより緻密にする効果が期待できる。
【0021】
貴金属めっき皮膜を形成した後は、その上にAuめっき皮膜を形成する。Auめっき皮膜は集電板の接触抵抗を下げる観点から最も相応しいものであり、耐食性をより高めることなどからその膜厚を厚くするのが望ましいが、Auめっき皮膜は材料に起因して集電板の価格を高めてしまう。本発明では、上記のように貴金属めっき皮膜を介してAuめっき皮膜を形成することから、従来に比べてその膜厚を薄くすることが可能であり、コスト性を考慮するとAuめっき皮膜の膜厚は0.1μm以下にするのがよい。ただし、薄くし過ぎるとピンホール等の欠陥が多発するおそれがあることから、Auめっき皮膜の膜厚は0.01μm以上にするのがよく、また、めっき外観の均一性等の観点から、好ましくは0.01μm〜0.08μmであるのがよく、より好ましくは0.02μm〜0.06μmであるのがよい。
【0022】
このAuめっき皮膜を形成するにあたっては、均一な皮膜が形成される点やコスト性で有利である点などから無電解めっき処理で行うのがよく、なかでも好ましくは、Niめっき皮膜のNiを利用して置換反応により形成するのがよい。すなわち、貴金属めっき皮膜を形成する工程において結晶質の貴金属めっき皮膜を得ておくことで、貴金属めっき皮膜の粒界を通じて下地のNiめっき皮膜から溶出するNiを利用することができる。置換めっきによる無電解めっき処理の処理条件としては、浴温度70〜95℃程度、浸漬時間10分〜70分程度であるのがよい。
【0023】
置換反応を利用してAuめっき皮膜を形成する場合は、貴金属めっき皮膜の結晶粒界が置換反応の起点となって貴金属めっき皮膜の表面に均一にAuめっき皮膜を形成することができるため、従来よりもAuめっき皮膜の膜厚を薄くしても耐食性や接触抵抗の点でより十分な性能を発現できる。また、Auめっき皮膜自体が結晶粒界を有したり、多少のピンホールが存在したとしても、貴金属めっき皮膜の粒界をAuめっき皮膜が塞ぐため、Auめっき皮膜上にNiが溶出するのを抑えることができる。すなわち、Auめっき皮膜の表面にNiの酸化物(NiO)を実質的に存在させないようにすることも可能であり、集電板の接触抵抗の増加が防止できる。なお、Niの酸化物が実質的に存在しないとは、下記の実施例で示すように、EDX(エネルギー分散型X線分光法)分析によるNiとOの強度比からNiOが形成しているとは言えない状態を意味する。
【0024】
本発明において集電板を製造するにあたっては、Niめっき皮膜の形成に先駆けて、アルミ基材を亜鉛浸漬浴に浸漬して亜鉛置換処理を行うのがよい。亜鉛浸漬浴としては、例えば、酸化亜鉛4.1質量%、及び水酸化ナトリウム25質量%等を含有する酸化亜鉛アルカリ水溶液をイオン交換水で400ml/Lに希釈して用いることができ、浸漬温度は15〜30℃程度、浸漬時間は10秒〜3分程度である。また、より緻密な置換亜鉛層を形成する目的から、亜鉛浸漬浴に浸漬してアルミ基材の表面に一旦置換亜鉛層を形成した後、酸洗浴に浸漬してこの置換亜鉛層を除去し、再び亜鉛浸漬浴に浸漬して置換亜鉛層を形成するようにしてもよい。その際の酸洗浴としては、例えば、酸が硝酸、硫酸、塩酸等であって濃度が10〜65質量%の酸水溶液を用いることができ、浸漬温度は15〜30℃程度、浸漬時間は10秒〜1分程度である。
【0025】
また、亜鉛置換処理の前に脱脂処理やデスマット処理等を行って公知の方法でアルミ基材を前処理したり、プレス加工によってアルミ基材に接続端子等を形成するようにしてもよい。そして、Auめっき皮膜を形成した後には、水洗して乾燥させることで本発明の集電板を得ることができる。
【0026】
本発明のようにしてアルミ基材の片側表面にNiめっき皮膜、貴金属めっき皮膜、及びAuめっき皮膜を備えることで、耐食性に優れて、かつ、長期にわたって使用しても接触抵抗の増加を抑えることができる。好適には、本発明の集電板は、最表面のAuめっき皮膜の膜厚が0.01μm〜0.1μmであり、貴金属めっき皮膜の膜厚が0.01μm〜0.1μmの場合において、5%硫酸水溶液を用いて電位掃引速度20mV/minで自然電位から2Vまでアノード分極曲線を求める腐食電流試験で測定される電位1Vの時のアノード電流が1mA/cm2以下であるのがよく、より好ましくは0.1mA/cm2以下であるのがよい。また、製造直後の集電板の接触抵抗を100としたときに、温度85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で1500時間経過後の接触抵抗は100〜1000であるのがよく、より好ましくは100〜500であるのがよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、Auめっき皮膜を従来に比べて薄くしても耐食性に優れると共に、接触抵抗の増加を抑えた集電板を得ることができる。そのため、本発明の燃料電池用集電板は、コスト性に優れながら、長期にわたって信頼性良く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の燃料電池用集電板を説明する側面模式図である。
【図2】図2は、実施例及び比較例で得られた試験用集電板の接触抵抗を測定する様子を説明する模式図〔(a)側面図、(b)斜視図〕である。
【図3】図3は、実施例で得られた試験用集電板の接触抵抗を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例及び比較例で得られた試験用集電板の恒温高湿試験による接触抵抗を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例及び比較例で得られた試験用集電板の腐食電流試験を行った結果を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例1で得られた試験用集電板の硝酸ばっ気試験前後でのAuめっき皮膜の様子を示す光学顕微鏡写真(倍率300倍)である〔(a)試験前、(b)試験後〕。
【図7】図7は、実施例1で得られた試験用集電板を85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後のEDX定性分析結果を示す。
【図8】図8は、実施例1で得られた試験用集電板を85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後のAuめっき皮膜のSEM観察結果(倍率2000倍)を示す。
【図9】図9は、実施例1で得られた試験用集電板のNiめっき皮膜とPdめっき皮膜の断面の様子を示すTEM写真(倍率45000倍)である。
【図10】図10は、共析元素の含有量によるPdめっき皮膜の結晶性の影響についてXRDで評価した結果を示す〔(a)Pを1%含有する場合、(b)Pを5%含有する場合〕。
【図11】図11は、比較例1で得られた試験用集電板の硝酸ばっ気試験前後でのAuめっき皮膜の様子を示す光学顕微鏡写真(倍率300倍)である〔(a)試験前、(b)試験後〕。
【図12】図12は、比較例1で得られた試験用集電板を85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後のEDX定性分析結果を示す。
【図13】図13は、比較例1で得られた試験用集電板を85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後のAuめっき皮膜のSEM観察結果を示す。
【図14】図14は、アルミ基材の犠牲陽極作用を確認するために行った硝酸ばっ気試験の結果を示す光学顕微鏡写真(倍率300倍)である〔(a)実施例品、(b)比較例品〕。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
[試験用集電板の作製]
板厚3mmのアルミニウム合金5052−H34材から30mm×60mm×厚み3mmの大きさのアルミ基材を切り出し、弱アルカリ性脱脂剤(奥野製薬工業社製商品名:トップアルクリーン161)を濃度30g/Lに希釈した水溶液に浸漬させて、55℃で5分間の脱脂洗浄を行った。水洗後、硝酸を含むデスマット液(奥野製薬工業社製商品名:トップデスマットN-20)を濃度100ml/Lに希釈した水溶液に浸漬させて、25℃で30秒間のデスマット処理を行った。
【0031】
次いで、水洗した後にアルミ基材の片側表面及び外周端面をマスクし、水酸化ナトリウム25質量%、及び酸化亜鉛4.1質量%を含有する亜鉛処理液(奥野製薬工業社製商品名:サブスターZn-8)を濃度400ml/Lに希釈した亜鉛浸漬浴を用いて、上記アルミ基材を22℃で30秒間浸漬させた。水洗後、濃度62質量%の硝酸水溶液を酸洗浴として、アルミ基材を25℃で30秒間浸漬して、一旦アルミ基材の表面に形成された置換亜鉛層を剥離した。水洗後、再び亜鉛浸漬浴を用いて、22℃で30秒間アルミ基材を浸漬させておよそ1μmの置換亜鉛層を形成するようにして、亜鉛置換処理を行った。
【0032】
次いで、水洗した後、次亜リン酸ナトリウム19質量%及び酢酸3.9質量%を含んだ薬剤(奥野製薬工業社製商品名:トップニコロンRCH-MLF)と、酢酸ニッケル36質量%を含有したNiめっき液(同社製商品名:トップニコロンRCH-1LF)とを、それぞれ濃度130ml/Lと40ml/Lとなるように水で希釈して混合したNiめっき浴を用いて、90℃で35分間浸漬させる無電解Niめっき処理を行った。これにより、マスクした面と反対側のアルミ基材の片側表面に膜厚5μmのNiめっき皮膜が形成された。
【0033】
上記でNiめっき皮膜を形成して水洗した後、キレート剤を含んだ薬剤(奥野製薬工業社製商品名:パラトップLP-M)と、パラジウム塩を7質量%含有した薬剤(同社製商品名:パラトップLP-A)と、還元剤を41質量%含んだ薬剤(同社製商品名:パラトップLP−B)と、錯化剤を4.4質量%含んだ薬剤(同社製商品名:パラトップLP-C)とを、それぞれ濃度200ml/L、20ml/L、70ml/L、10ml/Lとなるように水で希釈してこれらを混ぜたPdめっき浴を用いて、60℃で5分間浸漬させる無電解Pdめっき処理を行った。これにより、Niめっき皮膜の上に膜厚0.05μmのPdめっき皮膜が形成された。また、このPdめっき皮膜は、後述するようにPを共析元素として含んだ結晶質を有するものであった。なお、Pdめっき皮膜の膜厚については、別途同様にして行った無電解Pdめっき処理において浸漬時間1分で0.01μmのPdめっき皮膜が析出したことから、浸漬時間より計算した値である。
【0034】
次いで、水洗した後、シアン化第一金カリウムを4質量%含むAuめっき液(奥野製薬工業社製商品名:OPCムデンゴールド)を濃度100ml/Lに水で希釈したAuめっき浴を用いて、90℃で45分間浸漬させる無電解Auめっき処理を行った。これにより、Niめっき皮膜のNiとの置換反応によってPdめっき皮膜上に膜厚0.03μmの金めっき皮膜が形成された。無電解Auめっき処理後に水洗し、湯洗してさらに乾燥させることで、図1に示したように、アルミ基材2の片側表面に置換亜鉛層3を介してNiめっき皮膜4、Pdめっき皮膜5、及びAuめっき皮膜6を備えた本発明の実施例に係る試験用集電板1を完成させた。
【0035】
[接触抵抗測定]
上記で得られた試験用集電板について、以下のようにして接触抵抗を測定した。図2(a)に示したように、Auめっき皮膜側を比較板8に接触させてこれらを上板7と下板9の間に挟み込み、上下方向から面圧を掛けながら試験用集電板1の接触抵抗値を測定した。結果を図3に示す。なお、上板7、比較板8、及び下板9は、それぞれ30mm×60mm×厚み3mmのアルミ板(A5052材)の表裏両面に膜厚5μmのNiめっき皮膜を介して膜厚0.1μmのAuめっき皮膜を有したものであり、図2(b)に示したように、これらの縦横方向を交互に重ねた接触抵抗測定試料を準備し、試験用集電板1と比較板8との接触面積Sは3mm×3mm=9cm2とした。また、接触抵抗(mΩ・cm2)は、上板7と下板9との間に2Aの電流Iを流して試験用集電板1と比較板8との間の電圧Vを測定し、R=V×S/I=V×9/2から求めた。
【0036】
一般に、燃料電池用集電板に求められる接触抵抗は、通常の使用態様を想定して面圧が1MPaの場合に10mΩ・cm2程度であることからすれば、図3に示した結果から、本実施例1で得られた試験用集電板は極めて良好な接触抵抗を示すことが分った。また、上記で得られた試験用集電板を恒温高湿試験機に入れ、温度85℃、湿度95%の環境下に1500時間保持する恒温高湿試験を行い、経過時間と共に接触抵抗測定試料を準備して面圧1MPaで接触抵抗を測定した。その結果、図4に示したように、1500時間経過後であっても本実施例1で得られた試験用集電板の接触抵抗は0.15mΩ・cm2であり、作製直後の接触抵抗(0.05mΩ・cm2)に対して300%の増加に抑えることができた(作製直後の接触抵抗を100としたときに1500時間経過後は300)。
【0037】
[腐食電流試験]
上記と同様にして得た試験用集電板について、以下のようにして腐食電流試験を行った。試験用集電板を5質量%硫酸水溶液中(400ml、30℃)で白金対極に対向させて設置し、参照極として飽和カロメル電極を使用して、この参照極を飽和塩化カリウム水溶液に浸漬した。そして、飽和塩化カリウム水溶液と試験用集電板との間を塩橋で結び、集電板、白金対極、及び飽和カロメル電極をポテンシャルスタッドに接続させて、Auめっき皮膜の1cm2を測定面積として、大気開放下で特に攪拌させずに、集電板の電位を飽和カロメル電極に対して自然電極電位から2Vまで電位掃引速度20mV/minでアノード側に走査させ、電気化学的分極特性評価法により集電板に流れるピーク電流を分極電流として測定して腐食電流試験を行った。その結果、図5に示したように、電位1Vのときに測定されたアノード電流密度は0.013mA/cm2であり、耐食性に優れることが確認された。
【0038】
[硝酸ばっ気試験]
上記と同様にして得た試験用集電板について、JIS−H8620附属書1に従って硝酸ばっ気試験を行った。先ず、Auめっき皮膜の表面の汚れを念のためエタノールで除去し、乾燥させた後、容積2Lのデシケーターの底部に5mlの硝酸を入れ、磁製板の上に得られた試験用集電板を載せて蓋をした。そして、約23℃で1時間放置した後、試験用集電板を取り出して静かに水洗して乾燥させた。この試験前の集電板のAuめっき皮膜を光学顕微鏡で観察した写真を図6(a)に示し、また、試験後のAuめっき皮膜を光学顕微鏡で観察した写真を図6(b)に示す(いずれも倍率300倍)。これらの写真から明らかなように、試験用集電板のAuめっき皮膜は、硝酸ばっ気試験後であっても特に外観不良は観察されなかった。
【0039】
[EDX分析・SEM観察]
上記と同様にして得た試験用集電板について、85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後にEDXを搭載した走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、アルミ基材上のめっき皮膜に含まれる化合物の化学組成を分析した。定性分析結果を図7に示し、また、Auめっき皮膜のSEM観察結果を図8に示す。なお、測定にはFE−SEM及びEDX(日立製作所社製S-4500及びEMAX-7000)を使用した。図7の定性分析は縦軸がカウント(−)を示し、横軸はエネルギー(eV)を示す。また、SEM観察は加速電圧15kVの条件で行い、図8に示した写真は倍率2000倍で観察したものである。
【0040】
図7に示したEDXの定性分析によれば、O(酸素)が殆んど検出されておらず、NiとOの強度比からNiの酸化物(NiO)が形成されている形跡は確認されなかった。また、図8に示したSEM写真からもAuめっき皮膜の外観不良は特に観察されなかった。これらの結果から明らかなように、接触抵抗を増加させてしまうようなNiの酸化物はAuめっき皮膜の表面は勿論、各めっき皮膜内にも形成されていないことが分かった。なお、EDXの検出深さは約1μm程度であり、Niめっき皮膜の膜厚が5μmと厚いため、下地のZnや基材のAlは検出されなかった。
【0041】
[Pdめっき皮膜の評価]
上記と同様にして試験用集電板を得る途中、無電解Pdめっき処理により膜厚0.05μmのPdめっき皮膜を形成したところで透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察を行った(倍率45000倍)。Pdめっき皮膜の表面に樹脂の保護膜を形成した後、FIB(集束イオンビーム)法で薄片にしてNiめっき皮膜とPdめっき皮膜の断面を観察した。結果を図9に示す。この断面写真からNiめっき皮膜は非晶質であることが分る。一方、Pdめっき皮膜は結晶粒界を有した結晶質であることが分る。
【0042】
また、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を使ってPdめっき皮膜の構成元素を分析したところ、Pdめっき皮膜には共析元素としてPが1質量%含まれていることが確認された。なお、EPMAの分析には島津製作所社製EPMA1610を使用し、加速電圧15kVの条件で分析を行った。
【0043】
また、Pdめっき皮膜に含まれる共析元素による影響を調べるために、以下のようにしてXRDによりPdめっき皮膜の結晶性を確認した。先ず、実施例1と同様のPdめっき浴を用いて、別途用意したNi板を60℃で5分間浸漬させる無電解Pdめっき処理を行って、共析元素としてPを1質量%含んだ膜厚0.05μmのPdめっき皮膜をNi板上に形成した。また、奥野製薬工業社製商品名ムデンノーブルPD−1、ムデンノーブルPD−2、ムデンノーブルPD−3をそれぞれ濃度50ml/L、50ml/L、100ml/Lになるように水で希釈し混合したPdめっき浴を用いて、別途用意したNi板を50℃で12分間浸漬させる無電解Pdめっき処理を行って、共析元素としてPを5質量%含んだ膜厚0.2μmのPdめっき皮膜をNi板に形成した。ここでは、Pの回折ピークとNiの回折ピークとの重なりをさけることからNi板を使用した。XRDの分析結果を図10に示す。図10(a)に示したPを1%含有するPdめっき皮膜の場合は回折角40°付近においてシャープなPdのピークが得られたが、図10(b)に示したPを5%含有するPdめっき皮膜の場合には非晶質Pdに起因するX線散乱のハローが観測された。このことより、共析元素の含有量によって貴金属めっき皮膜の結晶性に与える影響が確認された。
【0044】
(比較例1)
Niめっき皮膜を形成した後、Pdめっき皮膜(貴金属めっき皮膜)を形成せずにAuめっき皮膜を膜厚0.08μmで形成した以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る試験用集電板を得た。得られた試験用集電板について、以下のように実施例1と同様にして評価した。
【0045】
先ず、図3に示したように、作製直後の接触抵抗はいずれの面圧に対しても実施例1で得られたものより接触抵抗値は低かったが、図4に示したように、恒温高湿試験で500時間を経過するあたりから接触抵抗が増加し始め、1500時間経過後には0.45mΩ・cm2まで達し、作製直後の接触抵抗(0.04mΩ・cm2)に対して1000%増大した。また、図5に示したように、腐食電流試験では電位1Vのときに測定されたアノード電流密度は2.8mA/cm2になり、耐食性に劣ることが分った。
【0046】
また、硝酸ばっ気試験によると、図11(b)に示したように、試験後のAuめっき皮膜にはめっき層の割れがいくつか確認された。また、Auめっき皮膜の表面が膨れたような箇所も存在しており、実施例1で得られた集電板に比べてAuめっき皮膜の外観が劣るものであった。
【0047】
更には、上記と同様にして得た比較例1の試験用集電板について、85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後にEDXを搭載した走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、アルミ基材上のめっき皮膜に含まれる化合物の化学組成を分析した。EDXによる定性分析結果を図12に示し、あわせてSEM観察結果を図13に示す。SEM観察によればAuめっき皮膜の表面に丸く膨れた箇所やひだ状の析出物が多数存在することが分る。また、EDXの定性分析によれば明らかにO(酸素)のピークが確認され、Niと同程度の強度比を有することからNiの酸化物であるNiOが形成していると考えられる。実施例1のEDX分析結果と比較すれば、この比較例1に係る試験用集電板のAuめっき皮膜のひだ状物やふくれの原因は、Niの酸化物の析出によるものと判断される。
【0048】
(実施例2)
Pdめっき浴を用いて、60℃で10分間浸漬させる無電解Pdめっき処理を行い、Niめっき皮膜の上に膜厚0.1μmのPdめっき皮膜を形成した以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る試験用集電板を得た。得られた試験用集電板について、以下のように実施例1と同様にして評価した。
【0049】
図3に示したように、作製直後の接触抵抗は、いずれの面圧に対しても一般的に燃料電池用集電板に求められる接触抵抗よりも低く、また、図4に示したように、1500時間経過後であっても本実施例2で得られた試験用集電板の接触抵抗は0.09mΩ・cm2であり、作製直後の接触抵抗(0.05mΩ・cm2)に対して180%の増加に抑えることができた。また、図5に示したように、腐食電流試験では電位1Vのときに測定されたアノード電流密度は0.0028mA/cm2であり、耐食性に優れることが分った。
【0050】
また、硝酸ばっ気試験の前後によってAuめっき皮膜の外観上の変化は特に確認されなかった。更には、得られた試験用集電板を85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後にEDXによる定性分析を行ったところ、実施例1と同様、Niの酸化物(NiO)の形成は確認されず、SEM観察によってもAuめっき皮膜の外観不良は特に確認されなかった。
【0051】
また、この実施例2の試験用集電板を得る途中、無電解Pdめっき処理により膜厚0.1μmのPdめっき皮膜を形成したところで実施例1と同様にしてTEMにより断面観察を行ったところ、Pdめっき皮膜は結晶粒界を有した結晶質であることが確認された。
【0052】
(実施例3、比較例2〜3)
アルミ基材として30mm×60mm×厚み3mmのAA5252材を用いて、表1に示したように各めっき皮膜を形成し、実施例3、及び比較例2〜3の各試験用集電板を得た。すなわち、実施例3では上記アルミ基材を用いた以外は実施例1と同様にしたところ、実施例1の場合とほぼ同じに評価される試験用集電板が得られた。
【0053】
一方、比較例2〜3では、アルミ基材の変更に加えて、Auめっき皮膜の膜厚を変えた以外は比較例1と同様にしたところ、恒温高湿試験で1500時間経過した後の接触抵抗は、いずれも作製直後の接触抵抗に対して1000%以上増大し、また、腐食電流試験の結果、耐食性に劣ることが分った。更には、85℃、相対湿度95%の恒温高湿環境下で750時間放置した後のAuめっき皮膜について、SEM観察によれば膨れやひだ状の析出物が多数確認された。更にまた、硝酸ばっ気試験後のAuめっき皮膜では、割れや剥離したような形跡が確認され、外観上劣るものであった。
【0054】
【表1】
【0055】
(参考例1)
[アルミ基材の犠牲陽極作用評価]
本発明の集電板におけるアルミ基材の犠牲陽極作用を確認するために、以下のような実験を行った。実施例1と同様にして得られた試験用集電板について、Auめっき皮膜の表面のみを露出させるように、アルミ基材の裏面側(めっき皮膜と反対側)及び外周端面を厚さ0.05mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製マスキング材でマスクした。このようにアルミ基材を一切露出させないようにした比較試料と実施例1と同様にして得られた試験用集電板(マスクなし)とを、実施例1と同様にして同時にデシケーターに入れ、硝酸ばっ気試験を行った。
【0056】
図14(a)は実施例1と同様にして得られた試験用集電板のAuめっき皮膜の光学顕微鏡写真であり、外観上の変化は認められなかった。一方、図14(b)はアルミ基材をマスクした比較試料の場合であり、Auめっき皮膜の一部が盛り上がるようなふくれが観察され、また、一部では細かな割れが確認された。上記実施例及び比較例で得られた結果を勘案すると、アルミ基材の片側表面にめっき皮膜を形成する本発明の集電板によれば、アルミ基材の犠牲陽極作用によってNiの酸化を抑制できることが分かる。
【符号の説明】
【0057】
1:燃料電池用集電板、2:アルミ基材、3:置換亜鉛層、4:Niめっき皮膜、5:貴金属めっき皮膜、6:Auめっき皮膜、7:上板、8:比較板、9:下板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池単位セルが複数積層されたセル積層体の両端に配設されて電流を取り出すのに用いる燃料電池用集電板であって、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材の片側表面に、Niめっき皮膜と、Pd、Pt、Ag、Rh、Ir、Os、及びRuからなる群から選ばれたいずれか1以上の貴金属を含んだ貴金属めっき皮膜と、Auめっき皮膜とを備えたことを特徴とする燃料電池用集電板。
【請求項2】
貴金属めっき皮膜が結晶質であり、Auめっき皮膜がNiめっき皮膜のNiとの置換反応を利用した無電解めっき処理により形成されたものである請求項1に記載の燃料電池用集電板。
【請求項3】
貴金属めっき皮膜が、P、B、及びWからなる群から選ばれたいずれか1以上の共析元素を0〜3質量%含有する請求項2に記載の燃料電池用集電板。
【請求項4】
貴金属めっき皮膜の膜厚が0.01μm〜0.1μmであり、Auめっき皮膜の膜厚が0.01μm〜0.1μmである請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用集電板。
【請求項5】
Auめっき皮膜の表面にNiOが実質的に存在しない請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用集電板。
【請求項6】
アルミ基材が5000系のアルミニウム合金からなる請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用集電板。
【請求項7】
燃料電池単位セルが複数積層されたセル積層体の両端に配設されて電流を取り出すのに用いる燃料電池用集電板の製造方法であって、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材を亜鉛浸漬浴に浸漬して亜鉛置換処理する工程と、得られたアルミ基材の片側表面にNiめっき皮膜を形成する工程と、Niめっき皮膜上にPd、Pt、Ag、Rh、Ir、Os、及びRuからなる群から選ばれたいずれか1以上の貴金属を含んだ貴金属めっき皮膜を形成する工程と、貴金属めっき皮膜上にAuめっき皮膜を形成する工程とを備えたことを特徴とする燃料電池用集電板の製造方法。
【請求項8】
貴金属めっき皮膜を形成する工程で結晶質の貴金属めっき皮膜を得て、Auめっき皮膜を形成する工程では、Niめっき皮膜のNiとの置換反応を利用した無電解めっき処理によりAuめっき皮膜を形成する請求項7に記載の燃料電池用集電板の製造方法。
【請求項9】
貴金属めっき皮膜が、P、B、及びWからなる群から選ばれたいずれか1以上の共析元素を0〜3質量%含有する請求項8に記載の燃料電池用集電板の製造方法。
【請求項10】
貴金属めっき皮膜の膜厚が0.01μm〜0.1μmであり、Auめっき皮膜の膜厚が0.01μm〜0.1μmである請求項7〜9のいずれかに記載の燃料電池用集電板の製造方法。
【請求項11】
Niめっき皮膜、貴金属めっき皮膜、及びAuめっき皮膜を形成する各工程が、いずれも無電解めっき処理で行われる請求項7〜10のいずれかに記載の燃料電池用集電板の製造方法。
【請求項12】
アルミ基材が5000系のアルミニウム合金からなる請求項7〜11のいずれかに記載の燃料電池用集電板の製造方法。
【請求項1】
燃料電池単位セルが複数積層されたセル積層体の両端に配設されて電流を取り出すのに用いる燃料電池用集電板であって、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材の片側表面に、Niめっき皮膜と、Pd、Pt、Ag、Rh、Ir、Os、及びRuからなる群から選ばれたいずれか1以上の貴金属を含んだ貴金属めっき皮膜と、Auめっき皮膜とを備えたことを特徴とする燃料電池用集電板。
【請求項2】
貴金属めっき皮膜が結晶質であり、Auめっき皮膜がNiめっき皮膜のNiとの置換反応を利用した無電解めっき処理により形成されたものである請求項1に記載の燃料電池用集電板。
【請求項3】
貴金属めっき皮膜が、P、B、及びWからなる群から選ばれたいずれか1以上の共析元素を0〜3質量%含有する請求項2に記載の燃料電池用集電板。
【請求項4】
貴金属めっき皮膜の膜厚が0.01μm〜0.1μmであり、Auめっき皮膜の膜厚が0.01μm〜0.1μmである請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用集電板。
【請求項5】
Auめっき皮膜の表面にNiOが実質的に存在しない請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用集電板。
【請求項6】
アルミ基材が5000系のアルミニウム合金からなる請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用集電板。
【請求項7】
燃料電池単位セルが複数積層されたセル積層体の両端に配設されて電流を取り出すのに用いる燃料電池用集電板の製造方法であって、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材を亜鉛浸漬浴に浸漬して亜鉛置換処理する工程と、得られたアルミ基材の片側表面にNiめっき皮膜を形成する工程と、Niめっき皮膜上にPd、Pt、Ag、Rh、Ir、Os、及びRuからなる群から選ばれたいずれか1以上の貴金属を含んだ貴金属めっき皮膜を形成する工程と、貴金属めっき皮膜上にAuめっき皮膜を形成する工程とを備えたことを特徴とする燃料電池用集電板の製造方法。
【請求項8】
貴金属めっき皮膜を形成する工程で結晶質の貴金属めっき皮膜を得て、Auめっき皮膜を形成する工程では、Niめっき皮膜のNiとの置換反応を利用した無電解めっき処理によりAuめっき皮膜を形成する請求項7に記載の燃料電池用集電板の製造方法。
【請求項9】
貴金属めっき皮膜が、P、B、及びWからなる群から選ばれたいずれか1以上の共析元素を0〜3質量%含有する請求項8に記載の燃料電池用集電板の製造方法。
【請求項10】
貴金属めっき皮膜の膜厚が0.01μm〜0.1μmであり、Auめっき皮膜の膜厚が0.01μm〜0.1μmである請求項7〜9のいずれかに記載の燃料電池用集電板の製造方法。
【請求項11】
Niめっき皮膜、貴金属めっき皮膜、及びAuめっき皮膜を形成する各工程が、いずれも無電解めっき処理で行われる請求項7〜10のいずれかに記載の燃料電池用集電板の製造方法。
【請求項12】
アルミ基材が5000系のアルミニウム合金からなる請求項7〜11のいずれかに記載の燃料電池用集電板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図10】
【図12】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図10】
【図12】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−105629(P2013−105629A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248697(P2011−248697)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
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