説明

燃料電池用電解質組成物

【課題】電極との親和性に優れ、系内からの水の散逸を抑制し、良好なイオン伝導度やプロトン伝導度を発現し得る燃料電池用電解質組成物、これを用いた燃料電池及び燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】疎水性の電解質層と、親水性の電解質層を備え、これらが積層構造を成している電解質組成物であり、電解質組成物の表面及び裏面が、該親水性の電解質層である。
電解質組成物が電極で狭持されている燃料電池。
燃料電池を単セルとして備える燃料電池システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用電解質組成物、これを用いた燃料電池及び燃料電池システムに係り、更に詳細には、所定の親水性電解質を表面及び裏面に備えた積層構造型燃料電池用電解質組成物、これを用いた燃料電池及び燃料電池システムに関する。
【0002】
かかる電解質組成物は、燃料電池の電解質膜として用いるのに有用である。
【背景技術】
【0003】
従来から、イオン性液体を含む電解質を適用した燃料電池が提案されており、イオン性液体を用いたプロトン伝導体を適用し、無加湿運転を前提とする燃料電池が知られている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−123791号公報
【0004】
また、疎水性アニオンと疎水性カチオンから成るイオン性液体を適用し、イオン性液体への水の混入を防ぐ燃料電池も知られている(特許文献2参照。)。
【特許文献2】特表2003−535450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、イオン性液体を電解質として燃料電池に適用する場合には、水を含ませないで使用することを前提としていた。
また、水の混入により燃料電池の性能が悪化するという報告もあった。
【0006】
これに対して、本発明者らは、親水性のイオン性液体を含む電解質を燃料電池に適用したところ、水の存在時にプロトン伝導性が向上し、燃料電池の性能が向上するという新たな技術知見を得た。
但し、系内の水分量を一定条件下で保持させることが困難であった。即ち、燃料電池の性能を安定化させることが困難であった。
【0007】
また、本発明者らは、疎水性の電解質層と電極との親和性が良好となり難く、燃料電池の性能が十分に発揮されないことがあり、燃料電池用電解質組成物と電極との親和性を考慮することにより、燃料電池の性能が向上するという新たな技術知見を得た。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題及び新たな技術知見に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、電極との親和性に優れ、系内からの水の散逸を抑制し、良好なイオン伝導度やプロトン伝導度を発現し得る燃料電池用電解質組成物、これを用いた燃料電池及び燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、疎水性の電解質層と親水性の電解質層とを並設し、更に電極と親水性の電解質層が並設されるような構成とすることなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の燃料電池用電解質組成物は、疎水性の電解質層と、親水性の電解質層を備え、これらが積層構造を成している電解質組成物であって、当該電解質組成物の表面及び裏面が、該親水性の電解質層であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の燃料電池用電解質組成物の好適形態では、3層の積層構造であって、第1の親水性電解質層、第1の疎水性電解質層及び第2の親水性電解質層の順に積層されていることを特徴とする。
更に、本発明の燃料電池用電解質組成物の他の好適形態では、5層の積層構造であって、第1の親水性電解質層、第1の疎水性電解質層、第2の親水性電解質層、第2の疎水性電解質層及び第3の親水性電解質層の順に積層されていることを特徴とする。
【0012】
更にまた、本発明の燃料電池用電解質組成物の更に他の好適形態は、疎水性電解質層及び/又は親水性電解質層が、分子性カチオン及び分子性アニオンを含有すること、更には、常温溶融塩を含有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の燃料電池は、上記本発明の燃料電池用電解質組成物を用いた燃料電池であって、燃料電池用電解質組成物が、電極で狭持されていることを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の燃料電池システムは、上記本発明の燃料電池を単セルとして備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、疎水性の電解質層と親水性の電解質層とを並設し、更に電極と親水性の電解質層が並設されるような構成とすることなどとしたため、電極との親和性に優れ、系内からの水の散逸を抑制し、良好なイオン伝導度やプロトン伝導度を発現し得る燃料電池用電解質組成物、これを用いた燃料電池及び燃料電池システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の燃料電池用電解質組成物について詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0017】
上述の如く、本発明の燃料電池用電解質組成物は、親水性の電解質層と、疎水性の電解質層を備え、これらが積層構造を成し、当該電解質組成物の表面及び裏面が、該親水性の電解質層であるものである。
【0018】
このような構成とすることにより、電極と組合わせた際には親和性に優れると共に、電解質内に水が保持されることから、燃料電池の電解質として適用するときは、継続的に優れた発電特性が得られる。
また、上記疎水性電解質層は、親水性電解質層に含まれた水が燃料極側から散逸してしまうのを抑制する。
更に、上記親水性電解質層は、空気極と直接接触させることで、空気極側で生成した水を効率良く利用できる。
【0019】
また、親水性電解質層の含水量は、0.01%以上50%以下であることが望ましい。含水量が50%を超えると、親水性電解質層から電解質が流出するおそれがある。含水量が0.01%より少ないと、含水量が不十分となり目的とする効果が得られないことがある。
更に、含水量が25%以下であることがより望ましく、親水性電解質層内での水の吸放出の制御が容易となる。
更にまた、含水量が10%以下であることが特に望ましく、電解質内での水の吸収による電解質膜の形状変化を抑制しやすくなり、取り扱い易くなる。
【0020】
また、本発明において、3層の積層構造の場合には、第1の親水性電解質層、第1の疎水性電解質層及び第2の親水性電解質層の順に積層すること、具体的には、疎水性電解質層を親水性電解質層で挟持することが望ましい。
このときは、電極と組合わせた際には親和性に優れると共に、電解質内に水が保持されることから、燃料電池の電解質として適用するときは、継続的に優れた発電特性が得られる。また、親水性電解質層に水を添加、保持することが容易になり、当該燃料電池用電解質組成物内におけるプロトン伝導性を向上させることができる。
【0021】
更に、このとき、燃料電池用電解質組成物内に所望の水分量を保持する観点から、上記親水性電解質層及び上記疎水性電解質層の層厚を適宜調整することができる。
【0022】
3層の積層構造においては、空気極側に配置された第1又は第2の親水性電解質層の厚みを100としたときの相対値で、第1の疎水性電解質層及び燃料極側に配置された他方の第1又は第2の親水性電解質層の厚みは1〜100とすることが望ましい。
第1の疎水性電解質層の厚みが1未満であると、空気極側に配置される第1又は第2の親水性電解質層からの水の散逸を十分に抑制できないおそれがある。一方、第1の疎水性電解質層の厚みが100超であると、空気極側に配置される第1又は第2の親水性電解質層に対する第1の疎水性電解質層の相対的な厚みが厚いため、空気極側に配置される第1又は第2の親水性電解質層に水を添加した効果が低下するおそれがある。空気極側に配置される第1又は第2の親水性電解質層に水を添加した効果を十分に得ることを考慮すると、第1の疎水性電解質層の厚みは50以下であることがより望ましい。また、他方の燃料極側に配置される第1又は第2の親水性電解質層の厚みが1未満であると、電極との親和性が十分に得られないおそれがある。一方、他方の第1又は第2の親水性電解質層の厚みが100を超えると、空気極側に配置される第1又は第2の親水性電解質層に水を添加した効果が低下するおそれがある。
【0023】
更に、本発明において、疎水性電解質層を挟持する親水性電解質層は、同一の成分から成る即ち同種の材料で構成しても、異種の材料で構成してもよい。
同一の成分、具体的には同種の材料で構成するときは、同一の電解質材料を使用するので作製が容易になり、製造コストを低減できる。
また、異種の材料で構成するときは、燃料極、空気極での反応に適した材料を選択できる。更に、電解質内に水分がより長期間保持されるように設計できる。したがって、起動時を含めて、継続的に優れた発電特性を得ることが可能となる。また、停止状態で親水性電解質層中から水分が散逸するのを効果的に抑制できる。
【0024】
また、本発明において、5層の積層構造の場合には、第1の親水性電解質層、第1の疎水性電解質層、第2の親水性電解質層、第2の疎水性電解質層及び第3の親水性電解質層の順に積層すること、具体的には、親水性電解質層を疎水性電解質層で狭持し、更にこれを他の親水性電解質層で狭持することが望ましい。
このときは、電極と組合わせた際には親和性に優れると共に、電解質内により水が保持されることから、燃料電池の電解質として適用するときは、継続的に優れた発電特性が得られる。また、親水性電解質層に水を添加、保持することが更に容易になり(第2の親水性電解質層に水を保持し易い。)、当該燃料電池用電解質組成物内におけるプロトン伝導性を向上させることができる。
【0025】
更に、このときも、燃料電池用電解質組成物内に所望の水分量を保持する観点から、上記親水性電解質層及び上記疎水性電解質層の層厚を適宜調整することができる。
【0026】
5層の積層構造においては、5層の中央に配置された第2の親水性電解質層の厚みを100としたときの相対値で、第1及び第2の疎水性電解質層、第1及び第3の親水性電解質層の厚みは1〜100とすることが望ましい。
第1及び第2の疎水性電解質層の厚みが1未満であると、5層構造の中央に配置される第2の親水性電解質層からの水の散逸を十分に抑制できないおそれがある。一方、第1及び第2の疎水性電解質層の厚みが100超であると、5層構造の中央に配置される第2の親水性電解質層に対する第1及び第2の疎水性電解質層の相対的な厚みが厚いため、5層構造の中央に配置される第2の親水性電解質層に水を添加した効果が低下するおそれがある。5層構造の中央に配置される第2の親水性電解質層に水を添加した効果を十分に得ることを考慮すると、第1及び第2の疎水性電解質層の厚みは50以下であることがより望ましい。また、空気極及び燃料極側に配置される第1及び第3の親水性電解質層の厚みが1未満であると、電極との親和性が十分に得られないおそれがある。一方、空気極及び燃料極側に配置される第1又は第3の親水性電解質層の厚みが100を超えると、5層構造の中央に配置される第2の親水性電解質層に水を添加した効果が低下するおそれがある。
【0027】
更に、本発明において、第1の親水性電解質層、第2の親水性電解質層又は第3の親水性電解質層のうち少なくとも2層が同一成分から成ること、並びに第1の疎水性電解質層及び第2の疎水性電解質層が同一成分から成ることのいずれか一方又は双方であることが望ましい。
上述したように、同一の成分、具体的には同種の材料で構成するときは、同一の電解質材料を使用するので作製が容易になり、製造コストを低減できる。一方で、上述したような理由から、異種の材料で構成してもよい。
【0028】
また、本発明においては、親水性電解質層及び疎水性電解質層の一方又は双方がカチオン成分及びアニオン成分を含有することが望ましい。
更に、本発明において、カチオン成分、アニオン成分のいずれか一方又は双方が、分子性であることが好適である。
【0029】
このときは、目的に合わせて、多様なイオンの組み合わせを採用できるので有効である。
即ち、使用用途にあわせて、イオン伝導性、電気的耐性、安全性、耐熱性などの特性の異なる電解質材料が選択、利用可能となり、特に燃料電池用電解質として用いた場合は、優れた特性を得ることができる。
【0030】
ここで、電解質材料として使用できるカチオン成分及びアニオン成分としては、単独の原子から形成される単原子性(原子性)のものと、複数個の原子から形成される多原子性(例えば、分子性)のものに大別でき、本発明ではいずれも使用可能である。
【0031】
原子性のカチオン成分とアニオン成分を含有する電解質としては、代表的に塩化ナトリウム(NaCl)などが挙げられ、これらは高温で溶融塩状体となってイオン伝導性を発揮する。
また、原子性アニオン成分としては、代表的にハロゲン化物アニオン(Halogenides Anion)であるフッ素アニオン[F]や塩素アニオン[Cl]、臭素アニオン[Br]、ヨウ素アニオン[I]を挙げることができる。
【0032】
ここで、分子性のカチオン成分とアニオン成分について、以下に具体例を挙げて説明する。
なお、本発明においては、以下に示すカチオン成分とアニオン成分を適宜組合わせて用いることができる。
【0033】
上記カチオン成分の一種である分子性カチオンとしては、例えばイミダゾリウム誘導体カチオン、より具体的には次式(3)で表される一置換イミダゾリウム誘導体カチオン(Monosubstituted Imidazolium Derivatives Cation);
【0034】
【化39】

【0035】
(式中のR11は、1価の有機基、好ましくは1価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0036】
そして、炭化水素基の具体例としては、メチル基やブチル基などを挙げることができる。
【0037】
また、次式(4)で表される二置換イミダゾリウム誘導体カチオン(Disubstituted Imidazolium Derivatives Cation);
【0038】
【化40】

【0039】
(式中のR21及びR22は同一でも異なっていてもよく、1価の有機基、好ましくは1価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0040】
そして、R21及びR22としては、上述したR11と同様のものを任意に組合わせたものを挙げることができ、その他にエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ベンジル基、γ−フェニルプロピル基などを挙げることができる。
【0041】
また、これらの基の代表的な組合せの具体例としては、R21がメチル基であり、R22がメチル基、エチル基(EMImに相当)、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ベンジル基、γ−フェニルプロピル基であるものや、R21がエチル基であり、R22がブチル基であるものなどを挙げることができる。
【0042】
更に、次式(5)で表される三置換イミダゾリウム誘導体カチオン(Trisubstituted Imidazolium Derivatives Cation);
【0043】
【化41】

【0044】
(式中のR31〜R33は同一でも異なっていてもよく、1価の有機基、好ましくは1価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0045】
そして、R31〜R33としては、上述したR11と同様のものを任意に組合わせたものを挙げることができ、その他にエチル基、プロピル基、ヘキシル基、ヘキサデシル基などを挙げることができる。
【0046】
また、これらの基の代表的な組合せの具体例としては、R31がエチル基であり、R32及びR33がメチル基であるもの、R31がプロピル基であり、R32及びR33がメチル基であるもの、R31がブチル基であり、R32及びR33がメチル基であるもの、R31がヘキシル基であり、R32及びR33がメチル基であるもの、R31がヘキサデシル基であり、R32及びR33がメチル基であるものなどを挙げることができる。
【0047】
また、次式(6)で表されるピリジニウム誘導体カチオン(Pyridinium Derivatives Cation);
【0048】
【化42】

【0049】
(式中のR41〜R44は同一でも異なっていてもよく、水素又は1価の有機基、好ましくは1価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0050】
そして、R41〜R44としては、上述したR11と同様のものを任意に組合わせたものを挙げることができ、その他に水素、エチル基、ヘキシル基、オクチル基などを挙げることができる。
【0051】
また、これらの基の代表的な組合せの具体例としては、R41がエチル基であり、R42〜R44が水素であるもの、R41がブチル基であり、R42〜R44が水素であるものやR42及びR43が水素でありR44がメチル基であるもの、R42及びR44が水素でありR43がメチル基であるもの、R42及びR43がメチル基でありR44が水素であるもの、R42及びR44がメチル基でありR43が水素であるもの、R42及びR43が水素でありR44がエチル基であるもの、R41がヘキシル基であり、R42〜R44が水素であるものやR42及びR43が水素でありR44がメチル基であるもの、R42及びR44が水素でありR43がメチル基であるもの、R41がオクチル基であり、R42〜R44が水素であるものやR42及びR43が水素でありR44がメチル基であるもの、R42およびR44が水素でありR43がメチル基であるものなどを挙げることができる。
【0052】
更に、次式(7)で表されるピロリジニウム誘導体カチオン(Pyrrolidinium Derivatives Cation);
【0053】
【化43】

【0054】
(式中のR51及びR52は同一でも異なっていてもよく、1価の有機基、好ましくは1価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0055】
そして、R51及びR52としては、上述したR11と同様のものを任意に組合わせたものを挙げることができ、その他にエチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基などを挙げることができる。
【0056】
また、これらの基の代表的な組合せの具体例としては、R51がメチル基であり、R52がメチル基であるものやエチル基であるもの、ブチル基であるもの、ヘキシル基であるもの、オクチル基であるもの、R51がエチル基であり、R52がブチル基であるもの、R51及びR52がプロピル基、ブチル基、ヘキシル基であるものなどを挙げることができる。
【0057】
また、次式(8)で表されるアンモニウム誘導体カチオン(Ammonium Derivatives Cation);
【0058】
【化44】

【0059】
(式中のR61〜R64は同一でも異なっていてもよく、1価の有機基、好ましくは1価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0060】
そして、R61〜R64としては、上述したR11と同様のものを任意に組合わせたものを挙げることができ、その他にエチル基、オクチル基などを挙げることができる。
【0061】
また、これらの基の代表的な組合せの具体例としては、R61〜R64がメチル基であるものやエチル基であるもの、ブチル基であるもの、R61がメチル基であり、R62〜R64がオクチル基であるものなどを挙げることができる。
【0062】
更に、次式(9)で表されるホスフォニウム誘導体カチオン(Phosphonium Derivatives Cation);
【0063】
【化45】

【0064】
(式中のR71〜R74は同一でも異なっていてもよく、1価の有機基、好ましくは1価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0065】
そして、R71〜R74としては、上述したR11と同様のものを任意に組合わせたものを挙げることができ、その他にエチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、フェニル基、ベンジル基などを挙げることができる。
【0066】
また、これらの基の代表的な組合せの具体例としては、R71がメチル基であり、R72〜R74がブチル基であるものやイソブチル基であるもの、R71がエチル基であり、R72〜R74がブチル基であるもの、R71〜R74がブチル基であるものやオクチル基であるもの、R71がテトラデシル基であり、R72〜R74がブチル基であるものやヘキシル基であるもの、R71がヘキサデシル基であり、R72〜R74がブチル基であるもの、R71がベンジル基であり、R72〜R74がフェニル基であるものなどを挙げることができる。
【0067】
また、次式(10)で表されるグアニジウム誘導体カチオン(Guanidinium Derivatives Cation);
【0068】
【化46】

【0069】
(式中のR81〜R86は同一でも異なっていてもよく、水素又は1価の有機基、好ましくは1価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0070】
そして、R81〜R86としては、上述したR11と同様のものを任意に組合わせたものを挙げることができ、その他に水素、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などを挙げることができる。
【0071】
また、これらの基の代表的な組合せの具体例としては、R81〜R86の全てが水素であるものやメチル基であるもの、R81がエチル基、R82〜R85がメチル基、R86が水素であるもの、R81がイソプロピル基、R82〜R85がメチル基、R86が水素であるもの、R81がプロピル基、R82〜R86がメチル基であるものなどを挙げることができる。
【0072】
更に、次式(11)で表されるイソウロニウム誘導体カチオン(Isouronium Derivatives Cation);
【0073】
【化47】

【0074】
(式中のR91〜R95は同一でも異なっていてもよく、水素又は1価の有機基、好ましくは1価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基又はアリールアルキル基を示し、Aは酸素原子又は硫黄原子を示す。)を挙げることができる。
【0075】
そして、R91〜R95としては、上述したR11と同様のものを任意に組合わせたものを挙げることができ、その他に水素、エチル基などを挙げることができる。
【0076】
また、これらの基の代表的な組合せの具体例としては、Aが酸素原子(O)であって、R91〜R95の全てがメチル基であるものやR91がエチル基、R92〜R95がメチル基であるもの、Aが硫黄原子(S)であって、R91がエチル基、R92〜R95がメチル基であるものなどを挙げることができる。
【0077】
一方、上記分子性アニオンとしては、例えば硫酸アニオン[SO2−]、硫酸一水素アニオン[HSO]又は次式(12)で表される硫酸エステルアニオン(Sulfates anion);
【0078】
【化48】

【0079】
(式中のR101は1価の有機基、好ましくは1価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0080】
そして、R101としては、上述したR11と同様のものを挙げることができ、その他にエチル基、ヘキシル基、オクチル基などを挙げることができる。
【0081】
また、代表的な具体例としては、R101がメチル基やエチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基であるものなどを挙げることができる。
【0082】
また、次式(13)で表されるスルホン酸エステルアニオン(Sulfonates anion);
【0083】
【化49】

【0084】
(式中のR111は1価の有機基、好ましくは1価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基又はアリールアルキル基、更にはそのフッ素置換体を示す。)を挙げることができる。
【0085】
そして、代表的な具体例としては、R111がフッ素置換されたメチル基(トリフルオロメタンサルフォネートアニオンに相当)であるもの、更にはp−トリル基(p−トルエンスルホン酸アニオンに相当)であるものを挙げることができる。
【0086】
更に、次式(14)、(15)、(1)又は(2)で表されるアミドアニオン(Amides Anion)又はイミドアニオン(Imides Anion);
【0087】
【化50】

【0088】
【化51】

【0089】
【化52】

【0090】
【化53】

【0091】
を挙げることができる。なお、式(2)のものを「TFSI」と略記することがある。
なお、アミドアニオンやイミドアニオンについては必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0092】
また、次式(16)及び(17)で表されるメタンアニオン(Methanes Anion);
【0093】
【化54】

【0094】
【化55】

【0095】
を挙げることができる。
なお、メタンアニオンについても必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0096】
また、次式(18)〜(24)で表されるホウ素含有化合物アニオン;
【0097】
【化56】

【0098】
【化57】

【0099】
【化58】

【0100】
【化59】

【0101】
【化60】

【0102】
【化61】

【0103】
【化62】

【0104】
を挙げることができる。
なお、ホウ素含有化合物アニオンについても必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0105】
更に、次式(25)〜(33)で表されるリン含有化合物アニオン;
【0106】
【化63】

【0107】
【化64】

【0108】
【化65】

【0109】
【化66】

【0110】
【化67】

【0111】
【化68】

【0112】
【化69】

【0113】
【化70】

【0114】
【化71】

【0115】
を挙げることができる。
なお、リン含有化合物アニオンについても必ずしもこれらに限定されるものではない。また、上記の式(31)や(32)に示すような多価アニオンも好適に使用できる。
【0116】
更に、次式(34)又は(35)で表されるカルボン酸アニオン;
【0117】
【化72】

【0118】
【化73】

【0119】
を挙げることができる。
なお、カルボン酸アニオンについても必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0120】
更に、次式(36)又は(37)で表される金属元素含有アニオン;
【0121】
【化74】

【0122】
【化75】

【0123】
を挙げることができる。
なお、金属元素含有アニオンについても必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0124】
上述のような分子性イオン成分を含む電解質材料を採用すれば、カチオン成分とアニオン成分の組合せの自由度が大きい外、材料選択の幅も拡大できる。
また、本発明の燃料電池用電解質組成物を燃料電池に適用するときは、当該電解質材料を好適化することが容易となり、エネルギーデバイスへの実際の適用性を向上できる。
但し、本発明においては、カチオン成分及びアニオン成分の少なくとも一方が分子性であれば、このような利点を享有できる。
【0125】
また、疎水性電解質層、親水性電解質層のいずれか一方又は双方においては、電解質材料を、上述の如き分子性カチオンと分子性アニオンの常温溶融塩で構成できる。
このとき、常温溶融塩は、高温においても蒸気圧をほとんど示さないため、高温での利用が可能である。
かかる常温溶融塩は、一般に「イオン性液体」と称されており、常温溶融塩であるがゆえに蒸気圧が極めて低く、蒸発し難い。
また、難燃性で、熱分解温度が通例250℃以上と高く、凝固点も通例は−20℃以下であり、安定性に優れた材料である。
特に、燃料電池用電解質として用いた場合は、運転時の幅広い温度域で液体状態であり、イオン伝導性が優れるため、優れた発電特性を得ることができる。
【0126】
ここで、疎水性電解質層、親水性電解質層の双方に、上述の分子性カチオンと分子性アニオンの常温溶融塩を含める場合、常温溶融塩の飽和含水量を比較して、飽和含水量の多い常温溶融塩を親水性電解質層に含めることで、親水性電解質層内での水の含有量のコントロールがし易くなるため、好ましい。また、飽和含水量の少ない常温溶融塩を疎水性電解質層に含めることで、親水性電解質層からの水の散逸を防ぐ効果が得られ好ましい。
【0127】
また、親水性電解質層には、分子性アニオンとして、CFSO、(HF)(nは1〜3の実数)、HSO又はHPO、及びこれらの任意の組合せに係るものを含めることが好適である。
これらは、高い親水性を有する電解質材料であり、水と共存し易いことから、系内の水分を一定量に保持しやすい。よって、水による発電特性の向上効果が安定的に得られる。
【0128】
更に、疎水性電解質層には、分子性アニオンとして、上記の式(1)及び(2)のいずれか一方又は双方を含めることが好適である。
これらの分子性アニオンは、高い疎水性を有する電解質材料であることから、親水性電解質層中の水の保持能が高くなり易い。よって、水による発電特性の向上効果が安定的に得られる。
【0129】
また、疎水性電解質層には、分子性カチオンとして、上記の式(3)〜(11)において、式中のR11〜R95の少なくとも1つが炭素数4以上であるカチオン成分を単独で又は混合して含有させ、且つ分子性アニオン成分として、PFを含有させることが親水性電解質層中の水の保持能が高くなり易いという観点から好適である。
【0130】
更に、親水性電解質層には、分子性カチオンとして、上記の式(3)〜(11)において、式中のR11〜R95の全てが炭素数3以下であるカチオン成分を単独で又は混合して含有させ、且つ分子性アニオン成分として、PFを含有させることが系内の水分を一定量に保持しやすいという観点から好適である。
上記のように全ての炭素数が3以下の場合には、疎水基として機能するカチオン成分のアルキル基が減少するため、PFと組合わせることにより親水性電解質層に適用することができる。
【0131】
また、疎水性電解質層には、分子性カチオンとして、上記の式(3)〜(11)と同様の構成を有するものであって、R11〜R95の少なくとも1つが炭素数8以上であるカチオン成分を単独又は混合して含有させ、且つ分子性アニオンとして、BFを含有させることが親水性電解質層中の水の保持能が高くなり易いという観点から好適である。
【0132】
更に、親水性電解質層には、分子性カチオンとして、上記の式(3)〜(11)と同様の構成を有するものであって、R11〜R95の全てが炭素数7以下であるカチオン成分を単独又は混合して含有させ、且つ分子性アニオンとして、BFを含有させることが系内の水分を一定量に保持しやすいという観点から好適である。
上記のように全ての炭素数が7以下の場合には、疎水基として機能するカチオン成分のアルキル基が減少するため、BFと組合わせることにより親水性電解質層に適用することができる。
【0133】
次に、本発明の燃料電池及び燃料電池システムについて説明する。
上述の如く、本発明の燃料電池は、上記本発明の燃料電池用電解質組成物を用い、当該燃料電池用電解質組成物を、電極で挟持した構造を有するものである。
このときは、上記燃料電池用電解質組成物が、電極との親和性に優れた親水性の電解質層を電解質に対する面に備え、更に一定量の水分を系内にとどめていることから、優れたイオン伝導性が継続されるので、高い発電特性が得られる。
【0134】
具体的な構成としては、例えば、燃料電池用電解質組成物が疎水性電解質層と親水性電解質層の3層から成るときは、図1に示すような構成となる。
また、疎水性電解質層と親水性電解質層の5層から成るときは、図2に示すような構成となる。
【0135】
上記電極を構成する電極触媒層には、電極材料として、例えば、ランタンコバルト系酸化物(La1−xSrCoOなど)やランタンマンガン系酸化物(La1−xSrMnOなど)等の空気極材料、ニッケルやニッケルサーメットや白金等の燃料極材料を使用できる。
また、改質触媒として、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)及び鉄(Fe)などの8族遷移金属や、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化クロム(Cr)、酸化シリコン(SiO)、酸化タングステン(WO、WOなど)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化セリウム(CeO)及び酸化ビスマス(Bi)などの金属酸化物を使用できる。
【0136】
更に、上記電極を構成するガス拡散層としては、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロスなどを使用できる。
【0137】
また、この燃料電池を単セルとしてスタッキングすることなどにより、燃料電池(発電)システムを構築することも可能であるが、このシステムが高い発電力を発揮することはいうまでもない。
【0138】
なお、イオン性液体を電解質材料として用いると、100℃以上における発電が可能になるので、自動車などの移動体に搭載した場合、ラジエターの負荷を従来のPEFCに比べて低減することができる。
この結果、ラジエターを小型化できるのみならず、発電システムが占有する容積を低減したり、軽量化することも可能になる。
【実施例】
【0139】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明する。
【0140】
(実施例1)
(1)3層構造からなる燃料電池用電解質組成物の調製
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)に親水性のイオン性液体としてEMImBF(HEMA:EMImBF=6:4(モル比))を加え、更にラジカル重合開始剤として過酸化ベンゾイル(BPO)を0.5%加えた後、型に流し込み80℃で12時間重合反応を行った。反応終了後、室温/3時間乾燥+100℃/12時間減圧乾燥を行い、親水性電解質層を作製した(膜厚10μm)。
上記と同様の方法で、膜厚の異なる親水性電解質層を作製し、更に作製した親水性電解質層に親水性電解質層のEMImBF含有量に対して10%の水を滴下し、含浸させた(膜厚50μm)。
【0141】
疎水性電解質層は、疎水性のイオン性液体として、EMImTFSIを使用し、親水性電解質層と同様の方法で作製した(膜厚10μm)。
【0142】
EMImTFSIを用いた疎水性電解質層をEMImBFを用いた2つの親水性電解質層で狭持し、本例の電解質組成物を得た。
【0143】
(2)3層構造からなる燃料電池用電解質の燃料電池発電試験
燃料電池発電試験の評価装置を図3に示す。電極触媒としては、40%白金担持カーボン触媒(田中貴金属社製)150重量部、グリセロール1重量部、5%nafion(登録商標:デュポン社製)溶液1重量部を水750重量部に加え、超音波により分散させた。
【0144】
この電極触媒を白金量が2mg/cmとなるように撥水処理済カーボンペーパー(ガス拡散層、東レ社製、TGP−H090)に塗布し乾燥させることで電極触媒層付きガス拡散層から成る電極を作製した(電極面積4cm)。
【0145】
本例の電解質組成物の両端から電極を接触させることでMEAを作製し、単セルを構成した(図1参照。)。
膜厚50μmの水を含浸させた親水性電解質層を空気極(酸素極)側、膜厚10μmの親水性電解質層を燃料極(水素極)側に配置し(図3参照。)、酸素及び水素をセル内にフローし発電試験を行った。
【0146】
(実施例2)
(1)5層構造からなる燃料電池用電解質組成物の調製
実施例1と同様の操作を繰返して、親水性電解質層を作製した。即ち、親水性のイオン性液体としてEMImBFを使用し、膜厚10μmの親水性電解質層を2つ作製した。 また、親水性のイオン性液体としてEMImBFを使用し、異なる膜厚の親水性電解質層を1つ作製し、更に、作製した親水性電解質層のEMImBF含有量に対して10%の水を滴下し、電解質膜に含浸させた(膜厚50μm)。
【0147】
疎水性電解質層は、疎水性のイオン性液体として、EMImTFSIを使用し、同様の方法で2つの電解質膜を作製した(膜厚10μm)。
【0148】
膜厚50μmの水を含浸させた親水性電解質層の一方の面に膜厚10μmのEMImTFSIを用いた疎水性電解質層とEMImBFを用いた親水性電解質層とを積層し、他方の面に膜厚10μmのEMImTFSIを用いた疎水性電解質層とEMImBFを用いた親水性電解質層とを積層し、水を含浸させた親水性電解質層が5層構造の中央になるようにして、5層構造の本例の電解質組成物を得た。
【0149】
(2)5層構造からなる燃料電池用電解質の燃料電池発電試験
実施例1と同様の操作を繰返して、電極を作製した。本例の電解質組成物の両端から電極を接触させることでMEAを作製し、単セルを構成した(図2参照。)。
図3に示すように、水素及び酸素をセル内にフローし発電試験を行った。
【0150】
(比較例1)
(1)電解質膜の調製
電解質膜の作製は、実施例1と同様の方法で行い、イオン性液体としてEMImBFを使用した(膜厚70μm)。
【0151】
(2)燃料電池発電試験
実施例1と同様の操作を繰返して、電極を作製した。EMImBFを用いた電解質膜の両端から電極を接触させることでMEAを作製し、単セルを構成した。
図3に示すように、水素及び酸素をセル内にフローし発電試験を行った。
【0152】
本発明の範囲に属する実施例1及び実施例2では、比較例1に比べて、水の添加効果と、電極と電解質の抵抗過電圧低減と、による発電特性の向上が認められた。
このことは、図4に示す、実施例1と比較例1における発電試験の結果からも明らかである。
【0153】
以上、本発明を若干の実施例により詳細に説明したが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
例えば、実施例では、単一組成のイオン性液体を電解質として用いたが、2種類以上のイオン性液体を混合して使用してもよい。
また、イミダゾールのようなオニウム塩となっていないものを混合してもよい。この場合、イミダゾールの非共有結合電子対を持つ窒素原子(N)もイオン伝導に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】燃料電池用電解質組成物を適用した燃料電池構成の一例を概略的に示す断面図である。
【図2】燃料電池用電解質組成物を適用した燃料電池構成の他の例を概略的に示す断面図である。
【図3】発電試験装置の仕様を示す概略図である。
【図4】実施例における発電特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0155】
1 燃料電池用電解質組成物
2 親水性電解質層
4 疎水性電解質層
10 電極
12 電極触媒層
14 ガス拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性の電解質層と、疎水性の電解質層を備え、これらが積層構造を成している電解質組成物であって、
当該電解質組成物の表面及び裏面が、上記親水性の電解質層であることを特徴とする電解質組成物。
【請求項2】
3層の積層構造であって、第1の親水性電解質層、第1の疎水性電解質層及び第2の親水性電解質層の順に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項3】
上記第1の親水性電解質層及び第2の親水性電解質層が同一成分から成ることを特徴とする請求項2に記載の電解質組成物。
【請求項4】
5層の積層構造であって、第1の親水性電解質層、第1の疎水性電解質層、第2の親水性電解質層、第2の疎水性電解質層及び第3の親水性電解質層の順に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項5】
上記第1の親水性電解質層、第2の親水性電解質層及び第3の親水性電解質層から成る群より選ばれた少なくとも2層が同一成分から成ること、並びに/又は上記第1の疎水性電解質層及び第2の疎水性電解質層が同一成分から成ることを特徴とする請求項4に記載の電解質組成物。
【請求項6】
上記親水性電解質層及び/又は上記疎水性電解質層が、カチオン成分及びアニオン成分を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の電解質組成物。
【請求項7】
上記親水性電解質層が、分子性カチオン及び/又は分子性アニオンを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の電解質組成物。
【請求項8】
上記疎水性電解質層が、分子性カチオン及び/又は分子性アニオンを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の電解質組成物。
【請求項9】
上記親水性電解質層及び/又は上記疎水性電解質層が、常温溶融塩を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つの項に記載の電解質組成物。
【請求項10】
上記親水性電解質層が、CFSO、(HF)(nは1〜3の実数)、HSO、及びHPOから成る群より選ばれた少なくとも1種のアニオン成分を含有することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1つの項に記載の電解質組成物。
【請求項11】
上記疎水性電解質層が、次式(1)及び/又は(2)
【化1】

【化2】

で表されるアニオン成分を含有することを特徴とする請求項6〜10のいずれか1つの項に記載の電解質組成物。
【請求項12】
上記疎水性電解質層が、次式(3)〜(11)
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

(式中のR11〜R95は、水素又は1価の有機基であって、少なくとも1つが炭素数4以上である。Aは、酸素原子又は硫黄原子である。)で表されるカチオン成分から成る群より選ばれた少なくとも1種のカチオン成分を含有し、且つアニオン成分としてPFを含有することを特徴とする請求項6〜11のいずれか1つの項に記載の電解質組成物。
【請求項13】
上記親水性電解質層が、次式(3)〜(11)
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

(式中のR11〜R95は、水素又は1価の有機基であって、全てが炭素数3以下である。Aは、酸素原子又は硫黄原子である。)で表されるカチオン成分から成る群より選ばれた少なくとも1種のカチオン成分を含有し、且つアニオン成分としてPFを含有することを特徴とする請求項6〜12のいずれか1つの項に記載の電解質組成物。
【請求項14】
上記疎水性電解質層が、次式(3)〜(11)
【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

(式中のR11〜R95は、水素又は1価の有機基であって、少なくとも1つが炭素数8以上である。Aは、酸素原子又は硫黄原子である。)で表されるカチオン成分から成る群より選ばれた少なくとも1種のカチオン成分を含有し、且つアニオン成分としてBFを含有することを特徴とする請求項6〜13のいずれか1つの項に記載の電解質組成物。
【請求項15】
上記親水性電解質層が、次式(3)〜(11)
【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

(式中のR11〜R95は、水素又は1価の有機基であって、全てが炭素数7以下である。Aは、酸素原子又は硫黄原子である。)で表されるカチオン成分から成る群より選ばれた少なくとも1種のカチオン成分を含有し、且つアニオン成分としてBFを含有することを特徴とする請求項6〜14のいずれか1つの項に記載の電解質組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1つの項に記載の電解質組成物を用いた燃料電池であって、
電解質組成物が電極で狭持されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項17】
請求項16に記載の燃料電池を単セルとして備えることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−73343(P2007−73343A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259333(P2005−259333)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】