説明

燃料電池装置

【課題】着火プラグの性能劣化を抑制することにより、着火プラグの交換を伴わず長期間に渡って使用することを可能とし、且つ燃焼部における燃焼を確実に誘起することができる燃料電池装置を提供すること。
【解決手段】この燃料電池装置は、着火プラグFPを構成する第一電極202及び第二電極203を、上面視においていずれも残余ガス排出口208とは重なり合わないように配置する一方、第一電極202と第二電極203との間に形成された放電部206を、上面視において少なくともその一部が残余ガス排出口208と重なり合うように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスにより発電を行う燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスと酸化剤ガスにより発電を行う燃料電池装置として、内部に燃料ガス流路を形成した複数の燃料電池セルを互いに電気的に接続し、燃料電池セル集合体を構成した構造のものが知られている。このような構造の燃料電池装置においては、発電に用いられる燃料ガス及び酸化剤ガスは、いずれも燃料電池セルの下部から上部に向かって流れるように供給されるのが一般的である。
【0003】
燃料電池セルの下部から供給された燃料ガス及び酸化剤ガスのうち、発電に寄与しなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤ガスとは、燃料電池セルの上部において合流し混合される。混合された残余の燃料ガスと残余の酸化剤ガスとは、燃料電池セルの上部に形成された燃焼部において燃焼することにより、残余の燃料ガスがそのまま外部へ放出されることの無いよう構成されている。かかる燃焼により生じた熱は、燃料電池セルの上部に配置された改質器の加熱や、燃料電池セルの温度維持等に利用される。
【0004】
このような燃料電池装置を提案したものとして、下記特許文献1が開示されている。具体的には、互いに離間した二つの電極を有する着火プラグを燃料電池セル上部に配置し、着火プラグから発生する火花によって、燃焼部における燃焼を誘起する構造の燃料電池装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−67547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の燃料電池装置のように、着火プラグから発生する火花によって着火し燃焼部における燃焼を誘起する場合、着火を確実に行うためには、着火プラグを燃料電池セルの先端上部に近づけて配置する必要がある。すなわち、燃料電池セルの先端上部には、発電に使用されなかった残余の燃料ガスを排出するための残余ガス排出口が形成されているため、着火プラグを燃料電池セルの先端上部に近づけて配置することにより、燃料ガスと火花とが接触し燃焼が誘起される可能性を高めることができる。
【0007】
しかしながら、着火プラグを燃料電池セルの先端上部に近づけた場合、燃焼部で生じた熱によって着火プラグが過剰に加熱されてしまうという問題が生じていた。着火プラグが過剰に加熱されると、着火プラグの電極が劣化し、着火プラグの性能が低下してしまう。その結果、短期間で着火プラグを交換することが必要となっていた。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、着火プラグの性能劣化を抑制することにより、着火プラグの交換を伴わず長期間に渡って使用することを可能とし、且つ燃焼部における燃焼を確実に誘起することができる燃料電池装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係る燃料電池装置は、燃料ガスと酸化剤ガスにより発電を行う燃料電池装置において、互いに電気的に接続され、燃料電池セル集合体を構成する複数の燃料電池セルと、前記燃料電池セルの下部から供給された前記燃料ガスが、前記燃料電池セルの上部に向かって流れるよう、前記燃料電池セルの内部に形成された燃料ガス流路と、前記燃料電池セルの下部から供給された前記酸化剤ガスが、前記燃料電池セルの上部に向かって流れるよう、前記燃料電池セルの外部に形成された酸化剤ガス流路と、前記燃料電池セルの上端に設けられ、前記燃料ガス流路を通過した前記燃料ガスのうち発電に使用されなかった残余の前記燃料ガスを排出する残余ガス排出口と、前記燃料電池セルの上部において、前記残余ガス排出口から排出された前記燃料ガスを、前記酸化剤ガス流路を通過した前記酸化剤ガスと混合し燃焼させるための空間である燃焼部と、前記燃料電池セルの上部において、上面視において互いに離間して配置される第一電極及び第二電極を有し、前記第一電極及び前記第二電極の間に形成された放電部において火花を発生させ、前記燃焼部における前記燃料ガスの燃焼を誘起する着火プラグと、を有し、前記第一電極及び前記第二電極は、上面視においていずれも前記残余ガス排出口とは重なり合わないように配置される一方、前記放電部は、上面視において少なくともその一部が前記残余ガス排出口と重なり合うように配置されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、第一電極及び第二電極の間に形成された放電部は、上面視において少なくともその一部が残余ガス排出口と重なり合うように配置される。すなわち、第一電極と第二電極との間で火花が通過する空間である放電部が、燃料ガスを排出する残余ガス排出口と重なるため、燃焼部における燃焼を確実に誘起することができる。一方、燃焼部において燃焼が誘起された後においては、残余ガス排出口の直上部分には炎が形成された状態となっている。本発明によれば、着火プラグを構成する第一電極及び第二電極は、上面視においていずれも残余ガス排出口とは重なり合わないように配置される。従って、第一電極及び第二電極はいずれも炎に直接曝されることがないため、過剰に加熱されることにより着火プラグの性能が劣化してしまうことが抑制される。
【0011】
また本発明に係る燃料電池装置では、前記第一電極及び前記第二電極の少なくとも一方が、前記放電部近傍において他方に向かうよう屈曲してなる屈曲部を有することも好ましい。
【0012】
このような屈曲部を有することにより、放電部の近傍においては、第一電極と第二電極との距離を小さくすることができる一方、放電部から屈曲部の範囲を除く部分においては、第一電極と第二電極との距離を大きくすることができる。これにより、放電部近傍においては火花が確実に発生する程度に両電極の距離を小さくしながら、その他の部分においては、第一電極と第二電極をいずれも炎から遠くに配置することが可能となり、過剰に加熱されることによる着火プラグの性能劣化を更に抑制することができる。
【0013】
また本発明に係る燃料電池装置では、前記燃料電池セルと前記燃焼部との間には上支持板が配置され、前記上支持板は、前記酸化剤ガス流路を通過した前記酸化剤ガスを前記燃焼部に流入せしめるための通気部を有するものであって、前記第一電極及び前記第二電極の少なくとも一方で、且つ前記屈曲部から前記放電部までの範囲を除く部分のうち少なくとも一部が、上面視において前記通気部と重なり合う位置に配置されることも好ましい。
【0014】
炎に直接曝されない位置に第一電極及び第二電極を配置しても、燃焼部からの輻射等の影響によって第一電極及び第二電極の温度はある程度上昇し、着火プラグの劣化が進行してしまう。この好ましい態様によれば、第一電極及び第二電極の少なくとも一方で、且つ屈曲部から放電部までの範囲を除く部分のうち少なくとも一部が、上面視において通気部と重なり合う位置に配置される。このような配置とすることで、通気部を通じて燃焼部に流入する酸化剤ガスによって第一電極及び第二電極の少なくとも一方が冷却されるため、過剰に加熱されることによる着火プラグの性能劣化を更に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、着火プラグの性能劣化を抑制することにより、着火プラグの交換を伴わず長期間に渡って使用することを可能とし、且つ燃焼部における燃焼を確実に誘起することができる燃料電池装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】カバー部材を外して示す燃料電池モジュールの斜視図である。
【図2】図1に示す燃料電池装置から燃料電池セル集合体を覆う流路部材を取り外した状態を示す燃料電池装置の斜視図である。
【図3】図1に示す燃料電池モジュールの断面図である。
【図4】図1に示す燃料電池モジュールの断面図である。
【図5】燃料電池セルユニットを説明するための図である。
【図6】燃料電池セルスタックを説明するための図である。
【図7】着火プラグの具体的な構造及び配置について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明に係る燃料電池装置の一実施形態である燃料電池装置FCを示す斜視図であって、カバー部材を取り外した状態を示す図である。図2は、図1に示す燃料電池装置FCから燃料電池セル集合体を覆う流路部材7を取り外した状態を示す燃料電池装置FCの斜視図である。図3は、燃料電池装置FCの断面図であって、図1の矢印A方向において、燃料電池装置FCの中央近傍における断面図である。図4は、燃料電池装置FCの断面図であって、図1の矢印B方向において、燃料電池装置FCの中央近傍における断面図である。尚、図3及び図4においては、断面のハッチングを省略している。
【0019】
カバー部材(図1,2,4に明示しない。図3にその外形を二点鎖線で示す)は、正面側の側壁と、長手方向の一対の側壁と、背面側の側壁と、天井とによって直方体状に形成される。各側壁の下端部には、フランジ部が形成され、そのフランジ部をベース部材2に当接させることで、カバー部材とベース部材2とによって密閉される空間が形成されている。カバー部材とベース部材2とはボルト(図示しない)によって固定され、そのボルトがカバー部材に設けられた取り付け穴を貫通し、ベース部材2に設けられた取り付け穴2aを貫通することで固定されている。
【0020】
カバー部材とベース部材2とによって形成される内部空間は、仕切り板15によって二つの空間に分離されている。仕切り板15によって分離されている空間の内、燃料電池セルスタック400が配置されている空間が発電室16である。仕切り板15によって分離されている空間の内、他方の空間が排出ガス室17である。尚、カバー部材の内壁面と仕切り板15とは、直接若しくは何らかの密着用部材(例えば、可撓性のある薄板部材)を介して間接的に密着している。
【0021】
仕切り板15は、ベース部材2に設けられた支持部材15aに戴置され、ベース部材2と所定距離を保って保持されている。支持部材15aは、仕切り板15を長手方向の両端において支持するように一対設けられている。従って、一対の支持部材15a,15a間には隙間15bが形成されている。カバー部材の壁面に設けられた排出ガス通路(図示しない)を通った排出ガスは、この隙間15bから排出ガス室17へと導入される。
【0022】
仕切り板15にはガスタンク3が載置されている。ガスタンク3の上には、燃料電池セルスタック400が10個並べて配置され、燃料電池セル集合体500を構成している。ガスタンク3から燃料ガスが、それぞれの燃料電池セルスタック400を構成する燃料電池セル4に供給される。
【0023】
より具体的には、ガスタンク3の上面には、燃料電池セルスタック400の下支持板400bとほぼ同じ形状の開口部(図示しない)が設けられており、その開口部に下支持板400bを密接させてガスタンク3と各燃料電池セルスタック400とが接続されている。従って、燃料電池セルスタック400を構成する燃料電池セル4は、その先端部分を上部側に向けてガスタンク3に立設されている。
【0024】
各燃料電池セル4は、管状であり、燃料電池セル4の管内を燃料電池セル4の一方の端部から他方の端部へと流れるガスと、その管外を一方の端部から他方の端部へと流れるガスの作用により作動する。本実施形態では、燃料電池セル4の管内を流れるガスは、水素又は炭化水素燃料等を改質した改質ガス等の燃料ガスであり、燃料電池セル4の管外を流れるガスは、酸素を含む空気等の酸化剤ガスである。
【0025】
ここで、燃料電池セル4を含む燃料電池セルユニット30について、図5を参照しながら説明する。図5に示すように、燃料電池セルユニット30は、燃料電池セル4によって形成され且つ上下方向に延びる管状構造体であり、円筒形の燃料電池セル4と、燃料電池セル4の一方の端部4aに取付けられた内側電極端子40と、他方の端部4bに取付けられた外側電極端子42と、を有している。
【0026】
燃料電池セル4は、円筒形の内側の電極層44と、円筒形の外側の電極層48と、これらの電極層44、48の間に配置された円筒形の電解質層46と、内側の電極層44の内側に構成される燃料ガス流路50とを有している。また、燃料電池セル4の一方の端部4aに、内側の電極層44が電解質層46及び外側の電極層48に対して露出した内側電極露出周面44aと、電解質層46が外側の電極層48に対して露出した電解質露出周面46aとが設けられている。燃料電池セル4の他方の端部4bは、外側の電極層48が露出した外側電極露出周面48aによって構成されている。燃料ガス流路50は、管内流路30cの一部として機能する。内側電極露出周面44aは、内側の電極層44と電気的に通じる内側電極外周面でもある。外側電極露出周面48aは、外側の電極層48と電気的に通じる外側電極外周面でもある。
【0027】
内側の電極層44は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートとの混合体、の少なくとも一種から形成される。電解質層46は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。外側の電極層48は、例えば、Sr、Caから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたサマリウムコバルト、銀、などの少なくとも一種から形成される。この場合、内側の電極層44が燃料極になり、外側の電極層48が空気極になる。内側の電極層44の厚さは、例えば、1mmであり、電解質層46の厚さは、例えば、30μmであり、外側の電極層48の厚さは、例えば、30μmであり、その外径は、例えば、1〜10mmである。
【0028】
内側電極端子40は、内側電極露出周面44aを全周にわたって外側から覆うように配置され且つそれと電気的に接続された本体部分40aと、本体部分40aから燃料電池セル4の長手方向に延びる管状部分40bとを有している。本体部分40a及び管状部分40bは、円筒形であり且つ同心に配置され、管状部分40bの管径は、本体部分40aの管径よりも細くなっている。管状部分40bは、燃料ガス流路50と連通し且つ外部と通じる接続流路40cを有している。本体部分40aと管状部分40bとの間の段部40dは、内側の電極層44の端面44bと当接している。
【0029】
外側電極端子42は、外側電極露出周面48aを全周にわたって外側から覆うように配置され且つそれと電気的に接続された本体部分42aと、本体部分42aから燃料電池セル4の長手方向に延びる管状部分42bとを有している。本体部分42a及び管状部分42bは、円筒形であり且つ同心であり、管状部分42bの管径は、本体部分42aの管径よりも細くなっている。管状部分42bは、燃料ガス流路50と連通し且つ外部と通じる接続流路42cを有している。本体部分42aと管状部分42bとの間の段部42dは、環状の絶縁部材52を介して外側の電極層48、電解質層46及び内側の電極層44の端面44cと当接している。
【0030】
内側電極端子40の全体形状と外側電極端子42の全体形状とは同一である。また、内側電極端子40と燃料電池セル4、及び、外側電極端子42と燃料電池セル4とは、その全周にわたって導電性のシール材54によってシールされ且つ固定されている。シール材54は、例えば、銀、銀とガラスの混合物、金、ニッケル、銅、チタンなどを含む各種ロウ材である。
【0031】
内側電極端子40の接続流路40c、燃料電池セル4の燃料ガス流路50、及び外側電極端子42の接続流路42cは、燃料電池セルユニット30の管内流路30cを構成する。
【0032】
続いて、燃料電池セルユニット30を含む燃料電池セルスタック400について、図6を参照しながら説明する。燃料電池セルスタック400は、16本の燃料電池セルユニット30と、上支持板400aと、下支持板400bと、接続部材400cと、外部端子400dとを備えている。
【0033】
上支持板400a及び下支持板400bは矩形であり、それぞれ、燃料電池セルユニット30を2列×8行で支持するように燃料電池セルユニット30の管状部分40b、42bに嵌合する貫通孔(図に明示しない)を有している。上支持板400a及び下支持板400bは、電気絶縁性材料で形成されており、例えば、耐熱性のセラミックスで形成されている。具体的には、アルミナ、ジルコニア、スピネル、フォルステライト、マグネシア、チタニアなどを用いることが好ましい。
【0034】
16本の燃料電池セルユニット30は、それらが電気的に直列に接続されるように配列されている。詳細には、燃料電池セルユニット30は、隣接した燃料電池セルユニット30の内側電極端子40が交互に上側及び下側に配置されるように配列されている。更に、16本の燃料電池セルユニット30を電気的に直列に接続するための接続部材400cが設けられている。接続部材400cは、隣接した1つの内側電極端子40と1つの外側電極端子42とを電気的に接続する。直列に接続された16本の燃料電池セルユニット30の両端部の内側電極端子40及び外側電極端子42にはそれぞれ、外部と電気的な接続を行うための外部端子400dが設けられている。接続部材400c、外部端子400dは、例えば、ステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金などの耐熱金属や、ランタンクロマイトなどのセラミック材料で形成される。各燃料電池セルスタック400の外部端子400dは電気的に直列に接続されていて、その両端には電極棒13,14に接続されている。
【0035】
図5及び図6を参照しながら説明したように、燃料電池セルスタック400において、燃料電池セルユニット30の内側電極端子40が設けられている端部4aと外側電極端子42が設けられている端部4bとは上下交互になるように配置されている。
【0036】
ここで、図1〜4に戻り、燃料電池装置FCの説明を続ける。本実施形態では、燃料電池セルスタック400の上方に位置するように、改質器5が配置されている。改質器5には、配管6Cと配管6Dとが繋がれていて、これらの配管6C及び配管6Dによって、改質器5は燃料電池セルスタック400と所定間隔をおいて上方に位置するように保持されている。配管6Cは、改質器5に被改質ガスとしての都市ガス、空気、及び水蒸気を供給するための配管であって、仕切り板15に対して立設されている。配管6Dは、改質器5において改質された燃料ガスをガスタンク3に供給するための配管であって、ガスタンク3に対して立設されている。
【0037】
配管6Cを通して改質器5に供給される都市ガス及び空気は、被改質ガス供給管6Aを通って燃料電池装置FC内に導入される。また、配管6Cを通して改質器5に供給される水蒸気は、水蒸気供給管6Bを通って燃料電池装置FC内に導入される。被改質ガス供給管6A及び水蒸気供給管6Bは、仕切り板15を挟んで配管6Cとは反対側に設けられている混合室15cに繋がっている。被改質ガス供給管6Aから供給される都市ガス及び空気と、水蒸気供給管6Bから供給される水蒸気とは、この混合室15cにおいて混合され、配管6Cへと供給される。
【0038】
図1〜4には明示しないが本実施形態では、被改質ガス供給管6Aと水蒸気供給管6Bとのそれぞれに電磁弁が取り付けられていて、それぞれの電磁弁は制御部としてのCPUから出力される指示信号に応じて開閉し、改質器5に供給する被改質ガスと空気と水蒸気の比率を変更可能なように構成されている。
【0039】
改質器5に導入された被改質ガスとしての都市ガス(水蒸気が混合されている場合もあり)及び空気(被改質ガスのみの場合もあり)は、改質器5内に収められている改質触媒によって改質される。改質された燃料ガスは、配管6Dを通ってガスタンク3へと供給される。改質器5に対して配管6Cが繋がっている部分と、改質器5に対して配管6Dが繋がっている部分とは、長手方向において一端近傍と他端近傍とに引き離されている。これによって、改質器5に供給された燃料ガス及び空気は改質触媒に十分に触れることが可能となる。
【0040】
改質器5には、改質触媒が封入されている。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したもの、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したもの、が適宜用いられる。これらの改質触媒は球体である。
【0041】
本実施形態では、改質器5及び各燃料電池セルスタック400を覆うように、流路部材7が設けられている。流路部材7は、空気流路外壁71,72と、空気分配室73と、空気集約室74,75と、空気流路管76a,76b,77a,77bと、外壁78,79を有している。流路部材7は、長手方向に空気流路外壁71,72が、短手方向に外壁78,79が、それぞれ配置され、それらの部材によって箱状となるように形成されている。流路部材7は、改質器5及び各燃料電池セルスタック400を覆うように、仕切り板15に立設されている。続く説明では、流路部材7の仕切り板15に当接する側を下方とし、その下方と反対側を上方として説明する。
【0042】
空気分配室73は、外壁79の外側上方に取り付けられている。すなわち、空気分配室73は、空気流路外壁71,72と外壁78,79とによって形成される箱状体の外側且つ短手側の上方に取り付けられている。空気分配室73には、空気供給管7Aが繋がれており、酸化剤ガスとしての空気が供給される。空気分配室73には、空気流路管76a,76b,77a,77bも繋がれている。
【0043】
空気流路管76a,76bは、空気流路外壁71,72と外壁78,79とによって形成される箱状体の内側且つ長手側の上方に、空気流路外壁71に沿うように配置されている。空気流路管76aは、空気流路外壁71側に、空気流路管76bは、空気流路管76aよりも内側に、それぞれ配置されている。空気流路管76a,76bの一端は外壁79を貫通して空気分配室73に繋がれており、他端は空気集約室74に繋がれている。従って、空気分配室73に流入した空気は、空気流路管76a,76bを通り、空気集約室74へと流れ込んで再合流する。
【0044】
空気流路管77a,77bは、空気流路外壁71,72と外壁78,79とによって形成される箱状体の内側且つ長手側の上方に、空気流路外壁72に沿うように配置されている。空気流路管77aは、空気流路外壁72側に、空気流路管77bは、空気流路管77aよりも内側に、それぞれ配置されている。空気流路管77a,77bの一端は外壁79を貫通して空気分配室73に繋がれており、他端は空気集約室75に繋がれている。従って、空気分配室73に流入した空気は、空気流路管77a,77bを通り、空気集約室75へと流れ込んで再合流する。
【0045】
空気集約室74,75は、外壁78の内側上方に取り付けられている。すなわち、空気集約室74,75は、空気流路外壁71,72と外壁78,79とによって形成される箱状体の内側且つ短手側の上方に取り付けられている。空気集約室74は空気流路外壁71と密着するように配置されており、空気集約室74に流れ込んだ空気は空気流路外壁71へと流れ出すように構成されている。一方、空気集約室75は空気流路外壁72と密着するように配置されており、空気集約室75に流れ込んだ空気は空気流路外壁72へと流れ出すように構成されている。
【0046】
空気流路外壁71,72は、それぞれが二重壁構造となっていて、それぞれの内部を空気が流れることができるように構成されている。より具体的には、空気流路外壁71は、上方から三室に分割された構造となっており、上方から順に、第一室711、第二室712、第三室713として形成されている。空気集約室74から流れ込んだ空気は、第一室711に流れ込んだ後、第二室712に流れ込み、その後第三室713に流れ込む。同様に、空気流路外壁72も、上方から三室に分割された構造となっており、上方から順に、第一室721、第二室722、第三室723として形成されている。空気集約室75から流れ込んだ空気は、第一室721に流れ込んだ後、第二室722に流れ込み、その後第三室723に流れ込む。
【0047】
第三室713,723にはそれぞれ、所定間隔をおいて複数の空気流入孔713a,723aが形成されている。空気流入孔713a,723aは、燃料電池セルスタック400が連設されている方向に、各燃料電池セル4間の間隙に向かう位置であって、燃料電池セル4に対する上下方向の位置が略同一となるように、複数個形成されている。
【0048】
空気流路外壁71,72に流れ込んだ空気は、空気流入孔713a,723aを通って発電室16内の燃料電池セル4近傍へと流れ込むように構成されている。空気流入孔713a,723aを通って流れ込んだ空気は、燃料電池セル4の外側を通って各燃料電池セル4の下方から上方へと流れる。すなわち、燃料電池セル4の外側に沿った空間が、燃料電池セル4の外部に形成された酸化剤ガス流路51として機能している。各燃料電池セル4の上方に至った空気は、各上支持板400aの間に形成された隙間である通気部100を通過して、燃焼部18へ流入し、各燃料電池セル4の燃料ガス流路50を通った燃料ガスと合わせて燃焼される。
【0049】
各燃料電池セルスタック400の上方は、空気と燃料ガスとが混合して燃焼する燃焼部18となっている。燃料ガスは、ガスタンク3から、燃料電池セル4の燃料ガス流路50を通り、上側に配置された電極端子の接続流路(40c又は42c)を経由して、燃焼部18に向けて上昇する。すなわち、接続流路40c又は接続流路42cのうち、上方に開口した部分が、残余ガス排出口208として機能する。
【0050】
また、燃料電池セル4の外側を流れる空気も、酸化剤ガス流路51を通り、燃焼部18に向けて上昇する。空気流路外壁72の燃焼部18に対応する部分には点火装置挿入穴724が設けられ、燃焼ガスと空気との燃焼を開始させるための着火プラグFPが点火装置挿入穴724から燃焼部18に突出されている。この着火プラグFPが発生する火花により、燃料ガスと空気とが混合した混合気の燃焼が誘起され点火されて燃焼する。燃料電池セルスタック400を構成する燃料電池セル4は、燃焼部18によって上方から加熱される。また、空気流入孔713a,723aを通って流れ込む空気も、上述したように空気流路管76a,76b,77a,77b、空気流路外壁71,72を通る間に、燃焼部18における燃焼によって加熱される。
【0051】
燃焼部18において、燃料ガスと空気とが混合して燃焼したことにより発生した排出ガスは、隙間15bから排出ガス室17へと流入する。より具体的には、燃焼部18において、燃料ガスと空気とが混合して燃焼したことにより発生した排出ガスは、カバー部材(図1,2,4に明示しない。図3にその外形を二点鎖線で示す)に形成された排出ガス流路(図に明示しない)を通って下方に向い、隙間15bから排出ガス室17へと流入する。排出ガス室17に流入した排出ガスは、排気口11から外部へ排出される。
【0052】
点火装置挿入穴724と対向する部分における空気流路外壁71には、燃焼検知部挿入穴725が設けられている。この燃焼検知部挿入穴725には、燃焼検知部FSが挿入され、燃焼部18に突出されている。燃焼検知部FSは、温度センサやフレームロッドによって構成されている。燃焼検知部FSを温度センサによって構成した場合には、その部分の温度上昇を計測することで燃焼が行われていることを検知する。燃焼検知部FSをフレームロッドによって構成した場合には、その部分に火炎が発生していることを検知することで燃焼が行われていることを検知する。
【0053】
次に、図7を参照しながら、着火プラグFPの具体的な構造及び配置について説明する。図7は、燃料電池セル4の上部に配置された着火プラグFPを、上面視した様子を示している。
【0054】
着火プラグFPは、フランジ部200、電極保持部201、第一電極202、及び第二電極203を有し、これらが一体となって燃料電池装置FCに取り付けられるユニット部品である。
【0055】
フランジ部200は、空気流路外壁72に設けられた点火装置挿入穴724に挿入、固定される部分である。燃料電池装置FCと着火プラグFPとの接続は、このフランジ部200によって行われる。従って、着火プラグFPを燃料電池装置FCに固定した状態において、第一電極202及び第二電極203と、燃料電池セル4や燃焼部18等との位置関係が適切となるように、第一電極202及び第二電極203がフランジ部200から突出する長さや位置が調整されている。
【0056】
電極保持部201は、フランジ部200に対し貫通した状態で固定されており、その内部において第一電極202、第二電極203を互いに離間、絶縁した状態で保持するものである。第一電極202、第二電極203は、棒状の金属からなる一対の電極であって、上面視において互いに離間して配置されている。これらの間で火花放電を生じせしめることにより、燃焼部18における燃焼が誘起される。
【0057】
第一電極202、第二電極203それぞれの一端部204a、204bは、いずれも空気流路外壁72の外部において露出しており、これら露出部分に対し、図示しない着火電源が接続される。着火電源は、着火プラグFPに対し火花を発生させるための電力を供給するための電源装置であって、制御部としてのCPUから出力される指示信号に応じて、着火プラグFPに電力を供給するものである。燃料電池装置の起動時において、燃料ガスの供給が開始される適切なタイミングで上記指示信号が出力され、燃焼部18における燃焼が誘起される。
【0058】
第一電極202、第二電極203それぞれの他端部205a、205bは、空気流路外壁72の内部において燃料電池セル集合体500の上部に突出しており、これら他端部205a、205bに挟まれた直線状の空間として、放電部206が形成されている。着火電源によって着火プラグFPに電力が供給されると、第一電極202、第二電極203の間に大きな電位差が生じ、他端部205aから他端部205bに向かう略直線状の経路に沿って火花が移動する。この火花が移動する経路が放電部206である。
【0059】
第一電極202、第二電極203は、放電部206の近傍を除くほとんどの部分において互いに平行となるように配置されている。これに対し放電部206の近傍においては、いずれの電極も屈曲部207a、207bを有しており、屈曲部207a、207bよりも放電部206側の部分は他方の電極に向かうように屈曲している。言い換えると、第一電極202、第二電極203の先端部同士が近づくように屈曲している。
【0060】
図7に示したように、第一電極202及び第二電極203の間に形成された放電部206は、上面視において、少なくともその一部が残余ガス排出口208と重なり合うように配置されている。すなわち、第一電極202と第二電極203との間で火花が通過する空間である放電部206が、燃料ガスを排出する残余ガス排出口208と重なるため、燃焼部18における燃焼を確実に誘起することができる。
【0061】
一方、第一電極202及び第二電極203は、上面視において、いずれも残余ガス排出口とは重なり合わないように配置されている。このように配置することにより、第一電極202及び第二電極203はいずれも炎に直接曝されることがない。従って、第一電極202、第二電極203が過剰に加熱されることにより着火プラグの性能が劣化してしまうことが抑制される。
【0062】
また、本実施形態に係る第一電極202、第二電極203はいずれも屈曲部207a、207bを有しているため、放電部206の近傍においては、第一電極202と第二電極203との距離を小さくする一方、放電部206から屈曲部207a、207bの範囲を除く部分においては第一電極202と第二電極203との距離を大きくしている。これにより、放電部206の近傍においては火花が確実に発生する程度に両電極間の距離を小さくしながら、その他の部分においては、第一電極202と第二電極203をいずれも炎から遠くに配置し、過剰に加熱されることによる着火プラグの性能劣化を抑制している。
【0063】
更に、本実施形態おいては、第一電極202を、複数の上支持板400aの間に形成された通気部100の直上に配置している。このように配置することにより、通気部100を通じて燃焼部18に流入する酸化剤ガスによって第一電極202が冷却されるため、着火プラグFPが過剰に加熱されることによる着火プラグFPの性能劣化を抑制している。
【0064】
本実施形態においては、第一電極202のうち屈曲部207aから放電部206までの範囲を除く部分の全体を、上面視において通気部100と重なり合う位置に配置した例を示した。しかし、第一電極202のうち屈曲部207aから放電部206までの範囲を除く部分のうち一部でも通気部100と重なり合っていれば、同様の効果を得ることができる。また、第一電極202のみならず、第二電極203についても、その一部を通気部100と重なり合う位置に配置することができる。その場合、第一電極202、第二電極203のいずれもが酸化剤ガスによって冷却されるため、着火プラグFPが過剰に加熱されることによる着火プラグFPの性能劣化を更に抑制することができる。
【0065】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0066】
2:ベース部材
2a:穴
3:ガスタンク
4:燃料電池セル
4a:端部
4b:端部
5:改質器
6A:被改質ガス供給管
6B:水蒸気供給管
6C:配管
6D:配管
7:流路部材
7A:空気供給管
11:排気口
13,14:電極棒
15:仕切り板
15a:支持部材
15b:隙間
15c:混合室
16:発電室
17:排出ガス室
18:燃焼部
30:燃料電池セルユニット
30c:管内流路
40:内側電極端子
40a:本体部分
40b:管状部分
40c:接続流路
40d:段部
42:外側電極端子
42a:本体部分
42b:管状部分
42c:接続流路
42d:段部
44:電極層
44a:内側電極露出周面
44b:端面
44c:端面
46:電解質層
46a:電解質露出周面
48:電極層
48a:外側電極露出周面
50:燃料ガス流路
51:酸化剤ガス流路
52:絶縁部材
54:シール材
71:空気流路外壁
72:空気流路外壁
73:空気分配室
74:空気集約室
75:空気集約室
76a,76b,77a,77b:空気流路管
78:外壁
79:外壁
100:通気部
200:フランジ部
201:電極保持部
202:第一電極
203:第二電極
204a、204b:一端部
205a、205b:他端部
206:放電部
207a、207b:屈曲部
208:残余ガス排出口
400:燃料電池セルスタック
400a:上支持板
400b:下支持板
400c:接続部材
400d:外部端子
500:燃料電池セル集合体
711:第一室
712:第二室
713:第三室
713a,723a:空気流入孔
721:第一室
722:第二室
723:第三室
724:点火装置挿入穴
725:燃焼検知部挿入穴
FC:燃料電池装置
FP:着火プラグ
FS:燃焼検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスにより発電を行う燃料電池装置において、
互いに電気的に接続され、燃料電池セル集合体を構成する複数の燃料電池セルと、
前記燃料電池セルの下部から供給された前記燃料ガスが、前記燃料電池セルの上部に向かって流れるよう、前記燃料電池セルの内部に形成された燃料ガス流路と、
前記燃料電池セルの下部から供給された前記酸化剤ガスが、前記燃料電池セルの上部に向かって流れるよう、前記燃料電池セルの外部に形成された酸化剤ガス流路と、
前記燃料電池セルの上端に設けられ、前記燃料ガス流路を通過した前記燃料ガスのうち発電に使用されなかった残余の前記燃料ガスを排出する残余ガス排出口と、
前記燃料電池セルの上部において、前記残余ガス排出口から排出された前記燃料ガスを、前記酸化剤ガス流路を通過した前記酸化剤ガスと混合し燃焼させための空間である燃焼部と、
前記燃料電池セルの上部において、上面視において互いに離間して配置される第一電極及び第二電極を有し、前記第一電極及び前記第二電極の間に形成された放電部において火花を発生させ、前記燃焼部における前記燃料ガスの燃焼を誘起する着火プラグと、を有し、
前記第一電極及び前記第二電極は、上面視においていずれも前記残余ガス排出口とは重なり合わないように配置される一方、
前記放電部は、上面視において少なくともその一部が前記残余ガス排出口と重なり合うように配置されることを特徴とする燃料電池装置。
【請求項2】
前記第一電極及び前記第二電極の少なくとも一方が、前記放電部近傍において他方に向かうよう屈曲してなる屈曲部を有することを特徴とする請求項1記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記燃料電池セルと前記燃焼部との間には上支持板が配置され、前記上支持板は、前記酸化剤ガス流路を通過した前記酸化剤ガスを前記燃焼部に流入せしめるための通気部を有するものであって、
前記第一電極及び前記第二電極の少なくとも一方で、且つ前記屈曲部から前記放電部までの範囲を除く部分のうち少なくとも一部が、上面視において前記通気部と重なり合う位置に配置されることを特徴とする、請求項2記載の燃料電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−65506(P2013−65506A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204427(P2011−204427)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】