説明

燃料電池評価装置

【課題】ガス流量が小流量の場合でも、燃料電池に供給されるガス(燃料ガスと酸化ガス)が必要な加湿状態になるまでの応答時間を大幅に短縮することができ、加湿応答性を飛躍的に向上することができる燃料電池評価装置を提供する。
【解決手段】燃料電池10のアノード側又はカソード側にガスを供給するガス供給装置22を備える。ガス供給装置22は、ガスに加湿する加湿装置24と、加湿したガスを加熱するガス加熱器26と、加熱したガスを燃料電池に供給するガス供給ライン28と、ガス供給ラインから分岐して加湿装置に戻るガス循環ライン30と、ガス循環ラインに設けられガスを循環させるガス循環装置32とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿したガス(燃料ガスと酸化ガス)を燃料電池に供給して試験する燃料電池評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池(PEFC)は、低温で作動し、小型で高効率という特徴を有するため、電気自動車用の電源として最適な燃料電池である。しかしかかる燃料電池の本格的商品化に向けては飛躍的な低コスト化とともに耐久性、信頼性の向上が必要である。
そこで、燃料電池の耐久性、信頼性等の性能を評価する燃料電池評価装置が不可欠であり、例えば特許文献1〜6が既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−241226号公報、「ガス加湿装置、及び燃料電池システム」
【特許文献2】特開2006−128001号公報、「燃料電池評価試験装置」
【特許文献3】特開2006−134733号公報、「加湿装置、ガス供給装置、並びに、燃料電池評価試験装置」
【特許文献4】特開2006−147320号公報、「燃料電池の試験装置」
【特許文献5】特開2009−123594号公報、「燃料電池評価試験装置」
【特許文献6】特表2007−034959号公報、「燃料電池の性能評価装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池を構成する単セル(単電池)は、燃料側の燃料極(アノード)と空気側の空気極(カソード)との間に電解質膜(タイル)を挟持したものである。
また、車両搭載用の燃料電池は、多数(例えば100枚)の単セルを積層して所望の電圧まで高めたものであり、スタック又はフルスタックと呼ばれる。
さらに、スタック(又はフルスタック)よりは単セルの積層数が少なく、スタックの構成要素として、或いは試験用に用いられるものをモジュールと呼ぶ。モジュールは、積層数が少ない低出力のものから、積層数が多い高出力のものまで、種々用いられる。
以下、単セル、モジュール、及びスタックを総称して、燃料電池(又はFCスタック)と呼ぶ。
【0005】
燃料電池評価装置は、燃料電池(単セル、モジュール、スタック)のアノード側に燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置、燃料電池のカソード側に空気を供給する酸化ガス供給装置、アノード側の背圧を制御するアノード背圧制御装置、及びカソード側の背圧を制御するカソード背圧制御装置を一般に備える。
【0006】
燃料電池を構成する電解質膜は、低加湿環境において劣化が顕著に進行するため、燃料電池はできるだけ高加湿下で運転する必要がある。そのため、燃料電池評価装置のガス供給装置(燃料ガス供給装置及び空気供給装置)には、供給ガス(燃料ガス、空気)を加湿する加湿装置が不可欠である。
【0007】
図1は、従来のガス供給装置の模式図である。この図において、1は燃料電池(FCスタック)のアノード側又はカソード側、2は加湿装置、3はガス加熱器、4は露点計、5は背圧弁である。
加湿装置2は、この例では、加湿器6、ポンプ7、水冷却器8、及び水加熱器9からなる。
【0008】
加湿器6の内部には、水Wが所定のレベルで溜められており、加湿器6内の水Wは、ポンプ7、水冷却器8及び水加熱器9を循環して加湿器6内に戻るようになっており、水冷却器8と水加熱器9により温度が所定の露点温度(例えば80℃)に制御される。
【0009】
供給ガスG1(燃料ガス又は空気)は図示しないガス供給源から供給され、加湿器6内の水Wと直接接触して加湿され、ガス加熱器3に供給される。この加湿の際、水温が露点に制御されているので、ガス加熱器3に供給される供給ガスG2には、加湿器6で設定された露点温度の飽和水蒸気が含まれる。
【0010】
ガス加熱器3は、供給ガスG2を所定の試験温度(例えば90℃)まで更に加熱する。従って加熱後の供給ガスG3の温度は、露点温度よりも高く、これに含まれる水蒸気は凝縮することなく燃料電池1に供給される。なお途中の配管は、ガス温度が下がらないように、保温又は加熱されている。
露点計4は、燃料電池1の直前に設けられ、燃料電池1に供給される供給ガスG3の露点を計測する。背圧弁5は、燃料電池1の背圧を制御する。
【0011】
上述した構成のガス供給装置により、所望の露点温度の水蒸気を含む供給ガスG3を所定の試験温度で燃料電池1に供給し、燃料電池1を高加湿下で運転することができる。
【0012】
例えば電気自動車用の電源として燃料電池を実用化するためには、燃料電池に要求される種々の使用条件を考慮して燃料電池を試験する必要がある。
そのため、燃料電池評価装置のガス供給装置(燃料ガス供給装置及び空気供給装置)に要求される流量範囲は非常に広く、最小流量に対する最大流量は例えばおよそ200倍に達する。例えば、スタック用の燃料電池評価装置の場合、燃料ガス流量は、20〜4000NL/min、酸化ガス流量は、50〜10000NL/minである。
【0013】
ガス供給装置を構成する各機器及び配管は、最大流量において許容できる圧力損失以下になるように設計されている。そのため、加湿器6の水面より上の空間容積と、加湿器6から燃料電池1までの配管容積の和Vは、可能な限り小さく設計した場合でも、無視できない大きさとなる。この容積Vは、例えば1分間の最大流量の1/10程度である。以下この容積Vを「デッドボリュームV」と呼ぶ。
【0014】
デッドボリュームVが仮に1分間の最大流量の1/10である場合、加湿器6で条件が変化した供給ガスG2は、最大流量の場合、6秒間(1分間の1/10)でデッドボリュームVを通過して燃料電池1に達する。従って、この場合の加湿に対する応答遅れは6秒間であり、燃料電池評価装置としては許容できる遅れであるといえる。
【0015】
しかし、ガス流量が最小流量であっても、デッドボリュームVは同じであるため、最小流量の場合、加湿器6で条件が変化した供給ガスG2が、デッドボリュームVを通過して燃料電池1に達するには、20分間(6秒間の200倍)かかることになる。
そのため、従来のガス供給装置では、小流量の場合、加湿器6で変化した試験条件に達するまでの加湿に対する応答遅れが非常に長くなり、燃料電池を用いた評価試験に長時間を要していた。
【0016】
すなわち、従来の燃料電池評価装置では、ガス流量が小流量の場合、必要な加湿状態になるまでに加湿器6から燃料電池1までのデッドボリュームVを充満する時間(T:応答時間)が長く、加湿応答性が制約されていた。
【0017】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、ガス流量が小流量の場合でも、燃料電池に供給されるガス(燃料ガスと酸化ガス)が必要な加湿状態になるまでの応答時間を大幅に短縮することができ、加湿応答性を飛躍的に向上することができる燃料電池評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、燃料電池のアノード側又はカソード側にガスを供給するガス供給装置を備え、
ガス供給装置は、ガスに加湿する加湿装置と、加湿したガスを加熱するガス加熱器と、加熱したガスを燃料電池に供給するガス供給ラインと、ガス供給ラインから分岐して加湿装置に戻るガス循環ラインと、ガス循環ラインに設けられガスを循環させるガス循環装置とを有する、ことを特徴とする燃料電池評価装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
上記本発明の構成によれば、ガス循環ラインに設けられたガス循環装置(例えば、定流量ユニット)を有するので、ガス循環装置による循環ガス量Q2が加湿装置に供給される。
従って、加湿装置に供給される総ガス量Qは、燃料電池に供給される反応用ガス量Q1と循環ガス量Q2の和(Q=Q1+Q2)となる。この総ガス量Qは、加湿器からガス供給ラインの分岐点までのデッドボリュームV2を流れるので、反応用ガス量Q1が小流量である場合でも、総ガス量Qを最大流量に近い大流量に設定することができ、デッドボリュームV2を充満する時間を大幅に短縮することができる。
【0020】
ガス供給ラインの分岐点は、燃料電池の入口近傍に設けることができるので、分岐点から燃料電池までの容積は小さくでき、加湿器から燃料電池までのデッドボリュームVは分岐点までのデッドボリュームV2に近似した値となる。
従って、ガス流量が小流量の場合でも、燃料電池に供給されるガス(燃料ガスと酸化ガス)が必要な加湿状態になるまでの応答時間を大幅に短縮することができ、加湿応答性を飛躍的に向上することができる。

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のガス供給装置の模式図である。
【図2】本発明の燃料電池評価装置の全体構成図である。
【図3】本発明によるガス供給装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0023】
図2は、本発明の燃料電池評価装置の全体構成図である。
この図において、10は燃料電池(FCスタック)であり、単セル、モジュール、又はスタックである。燃料電池10は、本発明の燃料電池評価装置を用いて耐久性、信頼性等の性能を評価する評価対象物である。
【0024】
燃料電池10(単セル、モジュール、又はスタック)は、各セルの燃料極(アノード)に燃料ガスを供給し排出するアノード側流路Aと、各セルの空気極(カソード)に空気を供給し排出するカソード側流路Cと、内部を冷却する冷却流路(図示せず)とを有する。
【0025】
図2において、本発明の燃料電池評価装置は、燃料電池10のアノード側流路Aに接続された燃料ガス供給装置12及び燃料ガス排気装置14と、燃料電池10のカソード側流路Cに接続された酸化ガス供給装置16及び酸化ガス排気装置18と、燃料電池10の冷却流路に接続された冷却装置20とを備える。
【0026】
燃料ガス供給装置12は、燃料ガス流量制御装置12Aと燃料ガス加湿加熱制御装置12Bとからなる。燃料ガス流量制御装置12Aは、燃料電池10のアノード側流路Aに供給する燃料ガス(例えばHガス)の流量を制御する。燃料ガス加湿加熱制御装置12Bは、燃料ガス流量制御装置12Aから供給される燃料ガスに、不活性ガス流量制御装置11から供給される不活性ガス(例えばNガス)を混合し、この混合ガス(燃料ガス)を加湿制御及び加熱制御して燃料電池10のアノード側に供給する。
【0027】
燃料ガス排気装置14は、燃料ガス背圧制御装置14Aと燃料ガス水封排気装置14Bとからなる。燃料ガス背圧制御装置14Aは、燃料電池10のアノード側流路Aを出た燃料ガスの背圧を制御する。燃料ガス水封排気装置14Bは、アノード側流路Aを出た燃料ガスを水封しながら排気する。
【0028】
酸化ガス供給装置16は、酸化ガス流量制御装置16Aと酸化ガス加湿加熱制御装置16Bとからなる。酸化ガス流量制御装置16Aは、燃料電池10のカソード側流路Cに供給する酸化ガス(例えば空気)の流量を制御する。酸化ガス加湿加熱制御装置16Bは、酸化ガス流量制御装置16Aから供給される酸化ガスに、不活性ガス流量制御装置11から供給される不活性ガス(例えばNガス)を混合し、この混合ガス(酸化ガス)を加湿制御及び加熱制御して燃料電池10のカソード側に供給する。
【0029】
酸化ガス排気装置18は、酸化ガス背圧制御装置18Aと酸化ガス水封排気装置18Bとからなる。酸化ガス背圧制御装置18Aは、燃料電池10のカソード側流路Cを出た酸化ガスの背圧を制御する。酸化ガス水封排気装置18Bは、カソード側流路Cを出た酸化ガスを水封しながら排気する。
【0030】
上述した燃料ガス背圧制御装置14Aと酸化ガス背圧制御装置18Aにより、燃料電池10のアノード側とカソード側の圧力をそれぞれ制御することができる。また、燃料ガス水封排気装置14Bと酸化ガス水封排気装置18Bにより、燃料電池10のアノード側とカソード側のガスに外気が侵入するのを防止しながら、アノード側とカソード側のガスを外部(又は図示しないガス処理装置)に排気することができる。
【0031】
冷却装置20は、燃料電池10の冷却流路に供給する冷却媒体(例えば冷却水)の温度と流量を制御する。この冷却装置20により、燃料電池10の温度を所望の反応温度に制御することができる。
【0032】
図3は、本発明によるガス供給装置の模式図である。このガス供給装置22は、燃料電池10のアノード側又はカソード側にガス(燃料ガス又は酸化ガス)を供給する装置であり、上述した燃料ガス供給装置12又は酸化ガス供給装置16に相当する。なおこの図では、燃料ガス供給装置12又は酸化ガス供給装置16の一部を省略して示している。
【0033】
図3において、ガス供給装置22は、加湿装置24、ガス加熱器26、ガス供給ライン28、ガス循環ライン30、及びガス循環装置32を有する。
【0034】
加湿装置24は、ガス(燃料ガス又は酸化ガス)に加湿する装置である。
この例において、加湿装置24は、ジャケット式の加湿器24A、水循環ライン24B、ポンプ24C、水冷却器24D、及び水加熱器24Eを有し、加湿器24A内の水Wを露点温度に制御する。
ジャケット式の加湿器24Aは、内部を保温する断熱ジャケットを有し、内部に水Wが溜められている。
水循環ライン24Bは、加湿器24Aから水Wを外部に抜き出して内部に戻す配管ラインである。
ポンプ24Cは、水循環ライン24Bに設けられ水Wを循環させる水ポンプである。
水冷却器24Dは、例えば水冷式の熱交換器であり、水循環ライン24Bに設けられ水Wを冷却する。
水加熱器24Eは、例えば電気ヒータであり、水循環ライン24Bに設けられ水Wを加熱する。
【0035】
ガス加熱器26は、加湿したガスG2を加熱する装置である。
ガス供給ライン28は、加熱したガスG3を燃料電池10に供給する配管ラインである。ガス供給ライン28の燃料電池10の直前には、露点計4が設けられ、燃料電池10に供給される供給ガスG4の露点を計測するようになっている。
【0036】
ガス供給ライン28は、燃料電池10の入口近傍に分岐点Aを有する。ガス循環ライン30は、ガス供給ライン28から分岐して加湿装置24に戻る配管ラインである。ガス供給ライン28の分岐点Aは、好ましくは露点計4の直前に設けるのがよい。
【0037】
ガス循環装置32は、ガス循環ライン30に設けられガスを循環させる装置である。ガス循環装置32は、この例では、一定流量Q2のガスを循環させる定流量ユニットである。
【0038】
ジャケット式の加湿器24Aの内部には、水Wが所定のレベルで溜められており、加湿器24A内の水Wは、ポンプ24C、水冷却器24D及び水加熱器24Eを循環して水循環ライン24Bにより加湿器24A内に戻るようになっている。加湿器24A内の水Wは、水冷却器24Dと水加熱器24Eにより温度が所定の露点温度(例えば80℃)に制御される。
【0039】
供給ガスG1(燃料ガス又は空気)は図示しないガス供給源から供給され、加湿器24A内の水Wと直接接触して加湿され、ガス加熱器26に供給される。この加湿の際、水温が露点に制御されているので、ガス加熱器26に供給される供給ガスG2には、加湿器24Aで設定された露点温度の飽和水蒸気が含まれる。
【0040】
ガス加熱器26は、供給ガスG2を所定の試験温度(例えば90℃)まで更に加熱する。従って加熱後の供給ガスG3の温度は、露点温度よりも高く、これに含まれる水蒸気は凝縮することなく燃料電池10に供給される。なお途中の配管は、ガス温度が下がらないように、保温又は加熱されている。
【0041】
露点計4は、燃料電池10の直前に設けられ、燃料電池10に供給される供給ガスG4の露点を計測する。背圧弁(燃料ガス背圧制御装置14A又は酸化ガス背圧制御装置18A)は、燃料電池10の背圧を制御する。
【0042】
上述した構成のガス供給装置22により、所望の露点温度の水蒸気を含む供給ガスG4を所定の試験温度で燃料電池10に供給し、燃料電池10を高加湿下で運転することができる。
【0043】
図3において、本発明によるガス供給装置22は、ガス循環ライン30に設けられたガス循環装置32(この例では、定流量ユニット)を有するので、加熱後の供給ガスG3は、分岐点Aで燃料電池10に供給される供給ガスG4と循環ガスG5に分岐され、ガス循環装置32により循環ガス量Q2が加湿装置24に供給される。
【0044】
従って、加湿装置24に供給される総ガス量Qは、燃料電池10に供給される反応用ガス量Q1と循環ガス量Q2の和(Q=Q1+Q2)となる。この総ガス量Qは、加湿器24Aからガス供給ライン28の分岐点AまでのデッドボリュームV2を流れるので、反応用ガス量Q1が小流量である場合でも、総ガス量Qを最大流量に近い大流量に設定することができ、デッドボリュームV2を充満する時間を大幅に短縮することができる。
【0045】
ガス供給ライン28の分岐点Aは、燃料電池10の入口近傍に設けることができるので、分岐点Aから燃料電池10までの容積は小さくでき、加湿器24Aから燃料電池10までのデッドボリュームVはデッドボリュームV2に近似した値となる。
従って、ガス流量が小流量の場合でも、燃料電池10に供給されるガスG4(燃料ガス又は酸化ガス)が必要な加湿状態になるまでの応答時間を大幅に短縮することができ、加湿応答性を飛躍的に向上することができる。
【0046】
例えば、ガス循環装置32による循環ガス量Q2を燃料電池10に供給する最大流量Qに設定したとすると、燃料電池10に供給するガス流量が最大流量Qの場合、加湿器24Aからガス供給ライン28の分岐点Aまでの最大流量は2Qとなる。
この場合、加湿器24Aからガス供給ライン28の分岐点Aまでの各機器及び配管は、最大流量2Qにおいて許容できる圧力損失以下になるように設計する必要があるので、加湿器24Aからガス供給ライン28の分岐点AまでのデッドボリュームV2は、ガス循環ライン30及びガス循環装置32がない従来例より多くなり、加湿器24Aから燃料電池10までのデッドボリュームVはほぼ2倍となる。
【0047】
しかし、燃料電池10に供給するガス流量が最大流量Qの場合、加湿器24Aからガス供給ライン28の分岐点Aまでの流量が2Qとなるので、デッドボリュームVが仮に1分間の最大流量の1/10である場合、加湿器24Aで条件が変化した供給ガスG2は、約6秒間(1分間の1/10)でデッドボリュームVを通過して燃料電池10に達する。従って、最大流量の場合の加湿に対する応答遅れは約6秒間であり、ガス循環ライン30及びガス循環装置32がない従来例とほとんど同じである。
【0048】
一方、燃料電池10に供給するガス流量が最小流量qの場合、加湿器24Aからガス供給ライン28の分岐点Aまでの流量がQ+qとなるので、最小流量qが最大流量Qと比較して非常に小さいとしても、加湿器24Aからガス供給ライン28の分岐点Aまでの流量はQより大きくなる。この場合、デッドボリュームVは最大流量の場合と同じである。
従って、最小流量の場合でも、加湿器24Aで条件が変化した供給ガスG2が、デッドボリュームVを通過して燃料電池10に達する時間は、約12秒間(最大流量の場合の2倍以下)となり、従来の20分間(最大流量の場合の200倍)と比較して応答時間を大幅に短縮することができ、加湿応答性を飛躍的に向上することができる。
【0049】
なお、上述したようにガス供給装置22は、燃料電池10のアノード側又はカソード側にガス(燃料ガス又は酸化ガス)を供給する装置であり、上述した燃料ガス供給装置12と酸化ガス供給装置16の両方に別個に設けてもよく、あるいはいずれか一方のみに設けてもよい。
【0050】
また、加湿装置24は上述した加湿装置、すなわち露点を制御する露点制御装置に限定されず、例えば乾燥ガスと加湿ガスを混合して所望のガスを形成するドライ−ウエット方式の加湿装置であってもよい。
また、ガス循環装置32は定流量ユニットに限定されず、ガスを循環可能なその他の装置(例えばブロアやポンプ)であってもよい。
また、ガス循環装置32は、連続運転に限定されず、ON−OFF制御、又は可変流量制御を行ってもよい。
また、ガス供給ライン28の分岐点Aにおける圧力変動を防止又は抑制するために、ガス供給ライン28又はガス循環ライン30にアキュムレータや圧力制御弁を設けてもよい。
また、上述したデッドボリュームV、V2は例示であり、これらは自由に設定することができる。
また、燃料電池10は、固体高分子形燃料電池(PEFC)に限定されず、その他の燃料電池であってもよい。
【0051】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 燃料電池(FCスタック)、2 加湿装置、
3 ガス加熱器、4 露点計、5 背圧弁、
6 加湿器、7 ポンプ、8 水冷却器、9 水加熱器、
10 燃料電池(FCスタック、単セル、モジュール、スタック)、
12 燃料ガス供給装置、
12A 燃料ガス流量制御装置、12B 燃料ガス加湿加熱制御装置、
14 燃料ガス排気装置、
14A 燃料ガス背圧制御装置、14B 燃料ガス水封排気装置、
16 酸化ガス供給装置、
16A 酸化ガス流量制御装置、16B 酸化ガス加湿加熱制御装置、
18 酸化ガス排気装置、
18A 酸化ガス背圧制御装置、18B 酸化ガス水封排気装置、
20 冷却装置、22 ガス供給装置、24 加湿装置、
24A 加湿器(ジャケット式加湿器)、24B 水循環ライン、
24C ポンプ、24D 水冷却器、24E 水加熱器、
26 ガス加熱器、28 ガス供給ライン、
30 ガス循環ライン、32 ガス循環装置(定流量ユニット)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池のアノード側又はカソード側にガスを供給するガス供給装置を備え、
ガス供給装置は、ガスに加湿する加湿装置と、加湿したガスを加熱するガス加熱器と、加熱したガスを燃料電池に供給するガス供給ラインと、ガス供給ラインから分岐して加湿装置に戻るガス循環ラインと、ガス循環ラインに設けられガスを循環させるガス循環装置とを有する、ことを特徴とする燃料電池評価装置。
【請求項2】
ガス循環装置は、一定流量のガスを循環させる定流量ユニットである、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池評価装置。
【請求項3】
加湿装置は、断熱ジャケットを有し内部に水が溜められているジャケット式の加湿器と、
加湿器から水を外部に抜き出して内部に戻す水循環ラインと、
水循環ラインに設けられ水を循環させるポンプと、
水循環ラインに設けられ水を冷却する水冷却器と、
水循環ラインに設けられ水を加熱する水加熱器とを有し、
加湿器内の水を露点温度に制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池評価装置。
【請求項4】
ガス供給装置は、燃料電池のアノード側に燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置、又は、燃料電池のカソード側に空気を供給する酸化ガス供給装置である、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池評価装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−25921(P2013−25921A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157628(P2011−157628)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000198318)株式会社IHI検査計測 (132)
【Fターム(参考)】