説明

燃焼後の煙道ガスから水銀を除去する方法

【課題】煙道ガスから水銀を除去するための簡単かつ経済的な方法を提供する。
【解決手段】煙道ガス中に含まれる水銀をまず、吸着試薬(例えば活性炭)を含有する吸収試薬(例えばスクラビング溶液)と接触させる方法において、吸収試薬によって煙道ガスから水銀が吸収された後に、吸着試薬への吸着によって吸収試薬から水銀を実質的に除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙道ガスから水銀を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼設備、例えば発電所もしくは廃棄物灰化プラントからの煙道ガスは、多くの汚染物質を含有しており、そのガスを環境に放出する前に該煙道ガスからそれらを除去せねばならない。現代の燃焼設備は、煙道ガス浄化装置を装備しており、その装置は、煙道ガス中に含まれる二酸化硫黄、窒素酸化物、ハロゲン化水素及び連行灰を取り除く。
【0003】
上述の汚染物質の他に、煙道ガスは、微量の重金属を含有しており、それらの重金属はその毒性のため煙道ガスから除去せねばならない。煙道ガス中に含まれる1つの特に毒性の高い重金属は水銀である。水銀は、慣用の湿式排煙脱硫(FGD)プラントにおいて煙道ガスから洗出され、そして該FGDから廃水と一緒にFGD廃水処理(WWT)プラント中に流される。FGD廃水中に溶解された水銀は、WWTにおいて、他の固形物と一緒に低溶解度形でFGD−WWTスラッジの形において沈殿する。しかしながら、水銀による汚染の結果として、このFGD−WWTスラッジは焼却できずに、有害廃棄物として廃棄しなければならない。
【0004】
欧州出願EP0792186号B1は、煙道ガスの浄化法を開示しており、その方法を用いて煙道ガスから水銀を除去することができる。この目的のために、煙道ガスは、湿式スクラビング過程に供され、その際、この湿式スクラビング過程は、重金属、特に水銀を吸着する活性炭粒子を添加して行われる。活性炭粒子は、引き続き湿式スクラビング過程で生成した懸濁液から分離され、そして湿式スクラビング過程へと再循環される。その際に、粒子のフラクションは叩き出されて、熱的に脱着される。その熱的な脱着は、プロセス技術の点では複雑であるため、費用がかかる。
【特許文献1】欧州出願EP0792186号B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、煙道ガスから水銀を除去するための簡単かつ経済的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、煙道ガス中に含まれる水銀をまず、吸着試薬(例えば活性炭)を含有する吸収試薬(例えばスクラビング溶液)と接触させる方法において、吸収試薬によって煙道ガスから水銀が吸収された後に、吸着試薬への吸着によって吸収試薬から水銀を実質的に除去する方法によって解決される。
【0007】
本発明の内容において、用語"水銀"の使用は、酸化準位0、1及び2の水銀を含む。
【0008】
本発明の更なる好ましい実施態様、特徴及び利点を、以下により完全に説明する。
【0009】
本発明のより完全な理解のために、ここで、付属の図面により詳細に概説され、かつ以下に記載される好ましい実施態様が参照されるべきである。係る図面は、必ずしも縮尺通りではない。図1は、瀝青炭火力発電所中の5MWユニットの煙道ガス浄化に関する本発明による方法の例示的実施のフロー図である。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明による方法では、吸着試薬は、例えば微粒子の形で煙道ガス中に吹き込むことができる。この場合に、水銀は、煙道ガスから吸着剤によって実質的に直接的に吸着される。また、吸着剤は、湿式FGDなどの湿式スクラビング過程に添加することもできる。この場合に、煙道ガス中に含まれる水銀は、まず部分的に溶解され、そして吸着試薬によって液相から実質的に吸着される。また、湿式スクラビング過程の上流の燃焼煙道ガス中に吸着試薬を導入することによって、気相と液相からの吸着を組み合わせることもできる。
【0011】
通常の吸着試薬、例えばベントナイト、シリカゲル及び活性炭は、吸着試薬として使用することができる。
【0012】
吸着試薬は、水銀の吸着後にスクラビング溶液から分離される。係る分離は、当業者に公知のあらゆる装置(例えばハイドロサイクロン)によって行うことができる。
【0013】
水銀で負荷された吸着試薬は、液相(スクラビング溶液)から分離され、ここで酸化試薬を含有する水溶液と接触させる。
【0014】
調査により、驚くべきことに、係る吸着試薬の処理によって、吸着された水銀は、そこからほぼ定量的に分離(脱着)され、そしてHg2+の形で水溶液中に戻ることが示された。その水溶液の加熱は必要なく、それにより、この方法工程は、非常に経済的に実施することができる。
【0015】
本方法は、特定の酸化試薬に制限されない。例えば、次亜塩素酸塩、二酸化塩素もしくは塩素ガスを使用することができる。また、場合によりCu2+塩の存在下での空気による接触酸化によって、水銀を吸着試薬から脱着させることもできる。次亜塩素酸塩の使用は特に好ましい。それというのも、取り扱いが容易であり、気体状の酸化剤と比較して経済的に多量に入手できるからである。更に、次亜塩素酸塩を使用した場合には、吸着試薬から水銀を脱着させるために、水溶液中での吸着試薬の滞留時間がわずかしか必要とならないことが分かっている。
【0016】
一定の酸化試薬は特定のpH範囲でしか働かないので、本方法のこの工程における酸化試薬の適切な選択によって、後続の方法工程のために最も有効なpH範囲を決定することができる。
【0017】
水銀を吸着試薬から脱着させた後に、Hg2+含有溶液から、吸着試薬と該溶液中に存在しうる他の固形物質が分離される。目下、吸着試薬内にある水銀と存在の可能性がある他の固形物質の濃度は、この試薬を、例えば焼却できるほど低くなっている。
【0018】
この分離段階の後に、水銀は該溶液から除去される。前記溶液からの水銀の除去は、当業者に公知のあらゆる方法で実施することができる。
【0019】
本発明による方法は、他の公知法と比較して多くの利点を有する。一方で、煙道ガスの処理工程から、例えばFGDスクラバから取り出された廃水は、非常に低い程度までしか水銀で汚染されていない。それというのも、吸着試薬の添加の結果として、水銀は吸着試薬へと移るからである。その結果により、後続の廃水処理システム中で分離されるFGD−WWTスラッジは水銀で汚染されておらず、従って有害廃棄物としての廃棄の必要性は生じず、その代わりにFGD−WWTスラッジを焼却できる。更に、水銀は、酸化試薬を含む溶液により吸着試薬から、プロセス技術の点で単純に分離することができ、そしてこの経済的な分離の後に、水銀を、その溶液から公知法によって除去することができる。
【0020】
溶解されたHg2+は、該溶液から、特に経済的でプロセス技術の点で複雑ではない様式で、Hg2+を含有する溶液に、Hg2+と低溶解度沈殿物を形成する沈殿試薬を添加し、その溶液からそれを分離することによって除去することができる。硫化物、特に有機スルフィドは、好ましい沈殿剤である。沈殿試薬との反応で形成される硫化第二水銀は、広いpH範囲にわたって安定であり、かつ様々な産業において顔料として処理することができる。また、硫化第二水銀は、水に実質的に不溶性であり、従って無毒として分類されることも好ましい。有機スルフィドの使用は、それらが水銀とともに"より大きな"有機水銀スルフィド分子を形成し、それは相応の溶液から純粋な硫化第二水銀と比較してより容易に沈殿するので特に好ましい。煙道ガス内の水銀濃度が低いほど、処理された廃水中のできる限り低い水銀濃度を可能にするために、有機スルフィドの使用が推奨される。
【0021】
選択的に、Hg2+は前記溶液から、イオン交換体とその溶液とを接触に至らしめることによって除去することができる。前記溶液からのこの種の水銀除去は、プロセス技術の点で実施が容易でもある。
【0022】
様々なIMAC(商標)の選択肢又は1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールは、そのイオン交換体として使用することができる。しかしながら、本発明による方法は、これらの樹脂に制限されるものではない。官能性H−S基を有するイオン交換樹脂が特に好ましい。それというのも、これらの樹脂は、前記溶液からの水銀除去において特に効果的だからである。
【0023】
本発明の好ましい拡張において、煙道ガス中に含まれるHg0を酸化させてから、煙道ガス中に含まれる水銀を吸着試薬と接触させる。その吸着試薬は好ましくはHg2+を吸着するので、浄化された煙道ガス中のHg濃度は、吸着前にHg0の酸化を高めることによって更に低下させることができる。しかしながら、係る酸化は、煙道ガス中のHg0濃度が高すぎる場合には、必要でありかつ賢明である。Hg0の酸化は、例えば、触媒もしくはハロゲンによって行うことができるが、Hg0の酸化に関する当業者に公知のあらゆる他の方法が適している。
【0024】
煙道ガスを浄化する場合に、その煙道ガスは、とりわけ脱硫される。前記の脱硫は、いわゆるFGDスクラバにおいて行われ、そこでは、煙道ガス中に含まれる二酸化硫黄が吸収され、そして酸化試薬の存在下で反応して、亜硫酸塩及び硫酸塩となる。その亜硫酸塩もしくは硫酸塩は分離され、そして脱硫工程に応じて、更に処理され又は廃棄される。また、この分離工程は、FGDスクラバの前に及び/又はその中で煙道ガスに吸着試薬を供給することによって、吸着試薬と他の固形物質とを分離するためにも使用することができる。亜硫酸塩もしくは硫酸塩の分離は、このようにして、設備の点で付加的な複雑性を減らし、ひいては費用を減らす吸着試薬の分離と組み合わせることができる。この分離は、FGDスクラバ中で生成される固形物質が遠心力によって吸着試薬から分離されるのであれば、特に簡単に実施することができる。係る分離によって2つの相が生成する。一方の相は、重たい結晶性の(カルシウムの)亜硫酸塩もしくは硫酸塩(以下、石膏と呼ぶ)を含有し、もう一方の相は、FGD廃水懸濁液であり、その懸濁液は、他の成分のなかでも、吸着試薬と、更に固形物質、特に金属水酸化物を含有する。前記の石膏が分離された後に、吸着試薬は、他の固形物質と一緒にFGD廃水から分離される。
【0025】
活性炭は、特に大きな活性表面積を有し、そのため燃焼煙道ガスに非常に少量しか添加する必要がないので、活性炭を、吸着試薬として使用するのが好ましい。活性炭の使用は、更に、それが後続の方法工程で簡単に分離できるという利点を有する。更に、酸化試薬を含有する溶液と接触に至らしめた後に、活性炭は、上記のように、除去されるべき他の固形物質と一緒に問題なく焼却できる。
【0026】
泥炭から製造された活性炭の使用は、他の型の活性炭と比較して大きな内表面積を有するため特に好ましい。
【0027】
多量の煙道ガスが生ずる燃焼設備において、例えば発電所において、吸着試薬を分離して、酸化試薬を含有する溶液と接触させた後に再循環させることが好ましい。吸着試薬についての調達費用は、このように削減でき、そして吸着試薬の焼却によって生ずる環境被害は回避される。
【0028】
本発明を、以下に、本発明による方法の好ましい例示的実施によって、付属の図面にある図1と関連づけてより詳細に説明する。図1は、本発明による方法の例示的実施のフロー図である。
【0029】
該フロー図に示される本発明による方法の例示的実施は、発電所における500MWの瀝青炭火力発電ユニットの煙道ガス浄化に関連する。
【0030】
煙道ガスは、ボイラ(1)から亜酸化窒素除去装置(2)へと流れ、そこで窒素酸化物が煙道ガスから除去される。前記の亜酸化窒素除去装置は、当業者に公知の方法、例えば選択的無触媒的もしくは選択的触媒的な亜酸化窒素除去に従って運転することができる。
【0031】
処理された煙道ガスは、粒状物除去装置、例えば静電集塵機もしくは布フィルタ(3)中に流れ、そこで懸濁された粒状物は煙道ガスから分離される。煙道ガスから粒状物を除去する目的のために、静電集塵機(ESP)もしくは布フィルタが、発電所では一般的に使用される。
【0032】
しかしながら、亜酸化窒素及び粒状物の除去のために使用される実際の方法は、本発明に影響せず、これらの2つの作業工程は、完全性の目的で示したに過ぎない。
【0033】
ESPを出てから、煙道ガスは、煙道ガス脱硫プラントもしくはFGDスクラバ(4)に流れる。本発明による方法の概説された例示的実施において、燃焼煙道ガス中の二酸化硫黄は、塩基性の消石灰懸濁液を、浄化されるべき燃焼煙道ガス中に吹き付ける吹き付け吸収法で除去される。二酸化硫黄との反応で生成したCaSO3は、例えば大気中の酸素によって酸化されて、CaSO4(石膏)を形成する。前記の酸化過程で、可能性としてまだ煙道ガス中に存在するHg1+は酸化されて、Hg2+となる。
【0034】
本発明は、脱硫のための吸着剤として石灰に制限されるものではなく、ここでは消石灰を、一例として示したに過ぎない。選択的な例示的実施において、他の脱硫法、例えばアンモニアもしくは石灰石による脱硫を利用することができる。
【0035】
吸着試薬を構成する活性炭粒子は、FGDスクラバ(4)のいわゆるリサイクルタンクに添加される。活性炭粒子は、Hg2+を吸着し、それは燃焼煙道ガスからFGDスクラバ溶液中へと到達する。選択的な例示的実施において、例えば、微細な活性炭粒子をFGDスクラバの上流で煙道ガス中に噴射することが可能である。係る場合において、燃焼煙道ガス中に存在する水銀分は、活性炭粒子によって燃焼煙道ガスそれ自体から既に吸着されている。まだ吸着されていない水銀は、FGDスクラバ溶液中に溶解され、そしてここで活性炭粒子によって吸着される。
【0036】
500MW瀝青炭火力発電ユニットにおいて、1時間あたりに、約1.5百万Nm3の煙道ガスが生成される。1キログラムの炭素当たり0.50mg未満の水銀含量で、たった約4kgだけの活性炭しか1時間あたりの噴射には必要とされない。係る噴射速度でのFGDスクラバ溶液中の活性炭粒子の濃度は、約100mg/lである。FGDスクラバ中で生成される、石膏と、更に固形物質と活性炭粒子とを含有する懸濁液は、石膏ハイドロサイクロンもしくは一次ハイドロサイクロン(5)に供給され、そこでFGDスクラバにおいて生成した懸濁液は2つの相、つまり重い結晶性のCaSO4を有する懸濁液と軽い活性炭粒子及び他の非晶質で従って軽い固形物質、例えばフライアッシュ及び金属水酸化物を含有する懸濁液とに分割される。石膏の白色度は、活性炭の添加によって、あまり大きく、つまり約74%から72%までしか低下しない。
【0037】
石膏ハイドロサイクロンもしくは一次ハイドロサイクロン(5)をオーバーフローで出ていく懸濁液は、廃水ハイドロサイクロンもしくは二次ハイドロサイクロン(6)に供給される。FGD廃水のフラクションは、該懸濁液から、前記の廃水ハイドロサイクロンもしくは二次ハイドロサイクロン(6)において分離され、そうしてより高い固形物質含量を有する懸濁液が得られる。廃水ハイドロサイクロンもしくは二次ハイドロサイクロン(6)からの前記懸濁液の容量は、石膏ハイドロサイクロンもしくは一次ハイドロサイクロン(5)からの懸濁液と比較して実質的に低下するので、後続の方法工程は、設備技術に関して設計に殆ど費用がかかりえない。
【0038】
廃水ハイドロサイクロンもしくは二次ハイドロサイクロン(6)を出て行くFGD廃水は、たった約10μg/lの水銀濃度しか有さない。FGD廃水は、部分的にスクラビング過程に再循環され、部分的にFGD廃水処理プラントに供給される。低い水銀含量の結果として、FGD廃水処理プラントの第一段階で生じたFGD−WWTスラッジは焼却することができ、廃棄はもはや必要ない。
【0039】
しかしながら、本発明による前記の例示的実施に記載した方法は、活性炭及び他の固形物質とFGD廃水もしくは煙道ガスとを分離することに制限されない。石膏ハイドロサイクロンもしくは一次ハイドロサイクロンと廃水ハイドロサイクロンもしくは二次ハイドロサイクロンの他に、分離は、当業者に公知の他の分離方法によって達成することもできる。しかしながら、前記の分離方法は、それが石膏と、FGD廃水と、固形物質を含有する懸濁液とに簡単な手段で分離できるため好ましい。
【0040】
後続の方法工程において、約6.5のpH値を有する次亜塩素酸ナトリウム水溶液が、廃水ハイドロサイクロンもしくは二次ハイドロサイクロン(6)からの、活性炭粒子と他の固形物質とを含有する懸濁液中に噴射される。約13%の次亜塩素酸ナトリウム溶液1〜4mlが懸濁液1リットルあたり導入される。この時点で固形物質の沈積を避けるために、該溶液は好適な撹拌装置で混合される。選択的な例示的実施においては、異なるpH範囲にある他の酸化試薬を当然使用することができる。酸化試薬での処理の間に、水銀は、活性炭から脱着され、そしてHg2+として溶液中に溶解される。
【0041】
水銀が完全に溶液中に溶解される場合に、使用される活性炭、酸化試薬の濃度及び温度に依存して、該溶液は、凝集助剤及び/又は凝集剤及び、溶液のpH値を高めるためにCa(OH)2と混合される。従って、該溶液のpH値は、約8.5のpH値に調整される。pH値の増大は、一方で、FGD廃水処理プラントからのFGD廃水が特定のpH値範囲内のpH値を有さねばならないという法律上の要求を満たすために、かつ他方で、Ca(OH)2の添加によって該溶液からより多くの硫酸カルシウムを沈殿させることを意味する該溶液の石膏脱飽和を保証するために行われる。更に、pH値を増大させた場合に、より多くの金属水酸化物、例えば水酸化ニッケル及び水酸化銅が、該溶液から沈殿する。前記の凝集試薬という用語は、懸濁液中の粒子に、それらが凝集してフレーク(マイクロフレーク)となり、それが懸濁液から除去できるように作用する物質であると解されるべきである。塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)もしくはこれらの塩の任意の混合物は、好ましくは、本発明の例示的実施における凝集試薬として使用される。これらの塩の使用法は、それらの現在の有効性に依存する。これらの塩が添加される場合に、多量のFe(OH)3沈殿物が生成し、該沈殿物は、他のより少量の固形物質とともに凝集する。凝集粒子の沈降速度を高め、それらの分離を容易にするために、いわゆる凝集剤もしくは凝集助剤を添加することができ、それは、固形物質粒子をより大きな単位(マイクロフレーク)に凝集させることを促進し、前記単位は、そのより大きな質量のためより迅速に沈降でき、従ってより容易に分離できる。アニオン性ポリマーは、好ましくは、示される例示的実施において凝集剤として添加される。凝集剤もしくは凝集助剤を添加するかどうかと、どの程度の量の凝集剤もしくは凝集助剤を添加するかは、懸濁液の組成と煙道ガスの組成に依存し、ひいては選択されたプロセス技術に依存する。
【0042】
前記の処理において懸濁液中に得られた固形物質は、目下、水銀を実質的に含まないが、該物質は引き続き、フィルタプレスもしくは固/液分離器において水銀含有溶液から分離される。記載された例示的実施においては、約20トンの固形物質が1日あたりに生成し、そのうち水銀含有率は、10g/t未満である。低い水銀含量の結果として、その固形物質は、ボイラ中で再び燃焼させることができ、従って廃棄のための費用が生じない。もう一つの例示的実施においては、該固形物質は、沈降もしくは浮選によって分離することもできる。
【0043】
水銀を沈殿させるためには、水銀含有溶液は、別工程において、有機スルフィド、凝集剤及び凝集助剤と混合される。好ましくは、塩化鉄(III)が、凝集剤として使用される。それというのも、その凝集剤が経済的に利用可能だからである。耐酸化性の有機スルフィドが、その有機スルフィドとして好ましい。それというのも、該溶液は、高い酸化電位に達しうるからである。この時点で有機水銀スルフィドの沈積を避けるために、該溶液はこの段階で好適な撹拌装置によって混合される。水銀が有機水銀スルフィドの形で沈殿した後に、固形物質を、メンブレンフィルタプレスによって分離し、そして廃棄する。記載された例示的実施においては、約0.2トンの有機水銀スルフィド含有廃棄物が1日あたりに生成する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、瀝青炭火力発電所中の5MWユニットの煙道ガス浄化に関する本発明による方法の例示的実施のフロー図である。
【符号の説明】
【0045】
1 燃焼装置、 2 亜酸化窒素除去装置、 3 粒状物除去装置、 4 煙道ガス脱硫装置、 5 一次ハイドロサイクロン、 6 二次ハイドロサイクロン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道ガスから水銀を除去する方法において、
a)煙道ガス中に存在する水銀を、吸着試薬を含む吸収試薬と接触させ、それにより水銀を実質的に該吸着試薬上に吸着させること、
b)吸着された水銀を含む吸着試薬を吸収試薬から分離すること、
c)該吸着試薬を、酸化試薬と接触させ、それにより吸着された水銀を脱着させ、そして溶液中にHg2+の形で溶解させること、
d)前記のHg2+富化された溶液から吸着試薬を分離すること、及び
e)該溶液からHg2+を除去すること
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、Hg2+が存在する溶液と沈殿試薬とを混合し、Hg2+とともに低溶解度沈殿物を形成させ、該沈殿物を溶液から分離することによって、Hg2+を溶液から除去することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、沈殿試薬として有機スルフィドを使用することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、Hg2+を溶液から除去するにあたり、該溶液とイオン交換体とを接触させることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、煙道ガス中に存在するHg0を酸化させてから、煙道ガス中に存在する水銀を、吸着試薬を含有する吸収試薬と接触させることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、煙道ガス脱硫プラントの前に又は該プラントにおいて、吸着試薬を煙道ガスに添加することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、煙道ガス中に存在する水銀と吸着試薬との接触を、吸着試薬が添加される煙道ガス脱硫プラントで使用される液相中で実施することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法において、煙道ガス脱硫プラント中で生成する固形物質と吸着剤とを、遠心分離によって分離することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、酸化試薬として、次亜塩素酸塩、二酸化塩素もしくは塩素ガス又は任意の他の強力な酸化試薬を使用することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、吸着試薬として、活性炭を使用することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、吸着試薬を、酸化試薬を含有する溶液と接触させた後に、該吸着試薬を分離し、そして再循環させることを特徴とする方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−61450(P2009−61450A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225927(P2008−225927)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(508266672)エボニック  エナジー サービシーズ ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Energy Services GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】