説明

燃焼装置

【課題】 排ガス温度の検出に基づく安全制御を燃焼能力の変更切換による実際の燃焼状況に応じて適切に行い得る燃焼装置を提供する。
【解決手段】 3本、5本、9本の燃焼管21により区分けされた3種類の燃焼領域F1〜F3に対するガス供給を切換える能力切換弁SV1,SV2,SV3について、要求熱量に応じてコントローラによって選択的開閉切換制御を行うことで、燃焼領域F1,F2,F3の選択的燃焼を行い、複数段の燃焼能力に変更切換可能とする。排気筒2a入口近傍に排ガス温度センサ10を設置する一方、排ガスの高温異常判定用に複数段の燃焼能力毎に対応する判定温度を設定する。検出排ガス温度が、現在の燃焼能力の段数に対応する判定温度を超えれば、異常報知する一方、強制燃焼停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置に関し、特に複数の燃焼領域を有し燃焼能力を小から大まで複数段階に切り換え得る燃焼装置を対象とした、排ガス温度の監視に基づく燃焼制御技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、検出排ガス温度が演算により求めた上下限範囲にあるか否かで、正常燃焼しているか否かの検知を行うことが提案されている(例えば特許文献1参照)。
又、燃焼機器の排気フードから排気外部排出用のメインダクト通路へ導出される排気の温度を検出し、この検出排ガス温度が予め定めた許容排ガス温度範囲にあるか否かによって、排気ダクトの火災防止用の安全動作を行うことも提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−270936号公報
【特許文献2】特許第3908373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃焼能力の変更が燃焼領域の変更切換により行われる場合には、燃焼領域からの燃焼排気の他に、未燃焼領域から未燃の空気(無効空気)が排気側に流れるため、排ガス温度の検出値を低下させてしまう上に、燃焼装置の全体としては同じ燃焼量で燃焼させたとしても、いずれの領域を燃焼させるかによって、検出される排ガス温度は異なってしまうことになる、という不都合の発生が考えられる。このため、ある判定温度又は判定温度範囲を燃焼装置毎に画一的に設定し、これらと検出排ガス温度との対比によって、種々の制御を行おうとしても、実情に沿わない結果を招くおそれがある。この結果、正常燃焼状態であるにも拘わらず異常燃焼と誤判定して燃焼停止させたり、あるいは、供給ガス量(インプットガス量)を強制的に低減させたりする制御が実行されてしまい、使い勝手の悪化や沸き上げの遅延を招くことにもなる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の燃焼領域の燃焼切換によって燃焼能力の変更が行われるものにおいて、排ガス温度の検出に基づく安全制御を燃焼能力の変更切換による実際の燃焼状況に応じて適切に行い得る燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明では、複数の燃焼領域に区分され、各燃焼領域が1又は複数本の燃焼バーナを並設することにより形成され、前記複数の燃焼領域を選択的に燃焼させることで複数段の燃焼能力に変更切換可能とされている燃焼装置を対象にして次の特定事項を備えることとした。すなわち、排ガス温度を検出する排ガス温度センサと、この排ガス温度センサによる検出排ガス温度を監視し検出排ガス温度が高温異常判定用の判定温度を超えたときに安全処理を実行する制御手段とを備えることとする。そして、前記制御手段として、前記高温異常判定用の判定温度としては前記複数段の燃焼能力毎に対応するように設定された判定温度を備えるようにし、現在の燃焼能力の段数に対応した判定温度に基づいて前記安全処理を実行する構成とした(請求項1)。
【0007】
本発明の場合、前記の制御手段による安全処理の実行に用いる高温異常判定用の判定温度として燃焼能力段毎に対応した複数種類の判定温度を用いているため、同じ燃焼量であっても燃焼能力段数が異なれば、それに対応して判定温度も異なるものとすることができ、燃焼状況の実情に適した制御が可能となる。特に燃焼能力段数毎の実際の燃焼状況に、より合致した高温異常判定及びそれに基づく安全処理の実行を実現させ得ることになる。このため、1種類の判定温度を用いて検出排ガス温度との対比を行い検出排ガス温度が前記1種類の判定温度を超えれば、どの燃焼能力段の燃焼状況の如何を問わず画一的に燃焼量を低減させて安全処理を実行する場合と比べ、実際には高温異常には陥っていないにも拘わらず燃焼量の強制低減により所定温度までの沸き上げが遅延してしまう事態の発生を回避して、より早期に所定温度まで沸き上げることが可能となる。あるいは、燃焼量の強制低減に代えて、安全処理として燃焼の強制停止を行う場合には、実際には現状の燃焼状態の継続が可能な状況であるにも拘わらず高温異常状態に至ったと誤判定する事態の発生を回避し得ることになる。
【0008】
又、本発明の燃焼装置を、排ガスから潜熱回収を行う潜熱回収用の熱交換器を備えた潜熱回収型給湯装置として構成するようにし、前記排ガス温度センサを、前記潜熱回収用の熱交換器を通過した潜熱回収後の排ガスの温度を検出するように設けることができる(請求項2)。このようにすることで、特に潜熱回収用熱交換器により潜熱も回収されて比較的低温域まで低下し、前記の燃焼能力の段数の違いの影響を受け易い排ガス温度の実際の状況に沿って、適切な安全処理が可能となる。
【発明の効果】
【0009】
以上、説明したように、本発明の燃焼装置によれば、安全処理の実行に用いる高温異常判定用の判定温度として燃焼能力段毎に対応した複数種類の判定温度を用いるようにしているため、同じ燃焼量であっても燃焼能力段数が異なれば、それに対応して判定温度も異なるものとすることができ、燃焼状況の実情に適した制御を行うことができるようになり、特に燃焼能力段数毎の実際の燃焼状況に、より合致した高温異常判定及びそれに基づく安全処理の実行を実現させることができるようになる。これにより、1種類の判定温度を用いて検出排ガス温度との対比を行い検出排ガス温度が前記1種類の判定温度を超えれば、どの燃焼能力段の燃焼状況の如何を問わず画一的に燃焼量を低減させて安全処理を実行する場合と比べ、実際には高温異常には陥っていないにも拘わらず燃焼量の強制低減により所定温度までの沸き上げが遅延してしまう事態の発生を回避して、より早期に所定温度まで沸き上げることができるようになる。あるいは、燃焼量の強制低減に代えて、安全処理として燃焼の強制停止を行う場合には、実際には現状の燃焼状態の継続が可能な状況であるにも拘わらず高温異常状態に至ったと誤判定する事態の発生を回避することができるようになる。
【0010】
特に請求項2によれば、本発明の燃焼装置を、排ガスから潜熱回収を行う潜熱回収用の熱交換器を備えた潜熱回収型給湯装置として構成し、排ガス温度センサを、潜熱回収用の熱交換器を通過した潜熱回収後の排ガスの温度を検出するように設けることで、特に潜熱回収用熱交換器により潜熱も回収されて比較的低温域まで低下してしまい、燃焼能力の段数の違いの影響を受け易い排ガス温度の実際の状況に応じて、適切な安全処理を実行することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の燃焼装置を潜熱回収型給湯装置として構成した模式図である。
【図2】図1のA−A線における断面説明図である。
【図3】図1の燃焼装置を原理的に示す部分模式図である。
【図4】燃焼能力の変更切換の組み合わせ例における燃焼能力段数毎に排ガス温度の判定温度を設定した例を示す表である。
【図5】燃焼能力の切換段数毎の燃焼状況の例を示すものであり、図5(a)は燃焼能力1段の例、図5(b)は燃焼能力2段の例、図5(c)は燃焼能力3段の例である。
【図6】図5と同様に、図6(a)は燃焼能力4段の例であり、図6(b)は燃焼能力5段の例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る燃焼装置を示す。図1及び図2に示す燃焼装置は潜熱回収型給湯装置として構成されている。この燃焼装置は、複数(図例では3つ)の燃焼領域を備え、各燃焼領域を選択的に個別に燃焼させたり、あるいは、選択的に組み合わせて燃焼させたりすることで、燃焼能力が複数段階(本実施形態では5段)にわたり変更切換可能となっている。又、潜熱回収型とは、燃焼ガスからの顕熱回収に加え燃焼排ガスから潜熱の回収をも行うことにより高効率化を図るものであり、少なくとも潜熱回収用の二次熱交換器4を備えたものである。なお、図1には給湯機能のみの単機能タイプの潜熱回収型給湯装置1を示すが、これに限らず、給湯機能に加えて、温水循環式暖房機能、風呂追い焚き機能、風呂湯張り機能のいずれか1以上の機能を併有する複合熱源機型に構成されたものに本発明を適用することができる。
【0014】
ハウジング1a内には缶体2が収容され、缶体2内には、顕熱回収用の一次熱交換器3と、潜熱回収用の二次熱交換器4と、これらに燃焼熱を与える燃焼加熱部5とが配設され、缶体2の下側にはファンモータの回転作動により燃焼加熱部5に対し燃焼用空気を供給する送風ファン6が設けられている。加熱対象である水は二次熱交換器4に対し先に通水され、次いで一次熱交換器3に通水されるようになっている。この際に、燃焼加熱部5の燃焼作動により燃焼ガスが一次熱交換器3に流れ、この燃焼ガスからの顕熱回収により一次熱交換器3では水が所定の設定温度まで加熱される。次いで、一次熱交換器3を下から上に通過した後の排ガスが缶体2の後面側(図1の紙面に直交する方向の奥側;図2の点線の矢印参照)に流され、後面側から二次熱交換器4に対し前面側に向けて流れ、この排ガスからの潜熱回収により二次熱交換器4では一次熱交換器3での加熱前に予熱され、二次熱交換器4を通過した後の燃焼排ガスが集合排気筒2a及び集合排気筒2aに接続された外部排気筒2bを通して外部に放出されるようになっている。
【0015】
そして、排気筒2aの付け根位置近傍に排ガス温度センサ10が設けられ、第2熱交換器4を通過した後であって集合排気筒2aに流入する際の排ガスの温度が検出されて後述のコントローラ11に出力されるようになっている。前記の集合排気筒2aは燃焼装置を構成する缶体2の側に属するものであって工場生産されるものであるのに対し、外部排気筒2bは所定の素材により別体のもので形成されて燃焼装置の設置現場において現場工事により接続されるものである。このため、工場生産される缶体2の側に排ガス温度センサ10を工場組み付けによって設置させるようにしたものである。
【0016】
なお、一次熱交換器3及び二次熱交換器4としては、それぞれ、多数のフィンと、このフィンを貫通するチューブとからなるフィンアンドチューブ式に構成されたものを例示しているが、これに限らず、燃焼ガス又は排ガスと接触して熱交換し得るものであれば、他の形式の熱交換器を用いることができる。
【0017】
二次熱交換器4には、その入口側に入水管7の下流端が連通接続され、出口側には入水接続管8の上流端が連通接続されている。一次熱交換器3には、その入口側に入水接続管8の下流端が連通接続され、その出口側に出湯管9の上流端が連通接続されている。これにより、前記入水管7の上流端に給水された水が入水管7を通して二次熱交換器4に対し入水され、二次熱交換器4で潜熱回収により予熱された水が入水接続管8を通して一次熱交換器3に対し入水され、この一次熱交換器3において設定温度まで加熱された湯が出湯管9を通して台所や洗面所等の給湯栓に給湯されるようになっている。なお、図3中の符号12は中和処理槽であり、二次熱交換器4での潜熱回収の際に燃焼排ガス中の水蒸気が凝縮することにより発生する強酸性の排ガスドレンを中和処理した上で排出するようになっている。
【0018】
前記の燃焼加熱部5は、燃焼能力を複数段階に切換可能に構成され、燃焼能力の変更切換により燃焼量の変更調整が可能となっている。すなわち、燃焼加熱部5は、缶体2の下側位置において左右方向の一側から他側にかけて並べられた複数本(図例では合計17本)の燃焼管(燃焼バーナ)21,21,…を備え、これら燃焼管21,21,…が所定本数毎にグループ分けされ、グループ分けされた所定本数の燃焼管21,21,…毎に個別に燃料ガスが供給されて燃焼可能とされることで、複数種類の燃焼領域が形成されている。例えば、左右方向中央部の3本の燃焼管21,21,21により第1の燃焼領域F1(図3も併せて参照)が形成され、左側の5本の燃焼管21,21,…により第2の燃焼領域F2が形成され、右側の9本の燃焼管21,21,…により第3の燃焼領域F3が形成されている。そして、各燃焼管21は各燃焼領域F1,F2,F3毎に区画されたガスマニホールド22に接続され、元ガス電磁弁SV0及びガス比例弁SVLを開けばガス供給管23からの燃料ガスが第1〜第3の能力切換弁SV1,SV2,SV3を介してガスマニホールド22の対応する各区画に選択的に供給されるようになっている。例えば、能力切換弁SV1を開けば、3本の燃焼管21,21,21により形成される第1の燃焼領域F1が燃焼され、能力切換弁SV2を開けば5本の燃焼管21,21,…により形成される第2の燃焼領域F2が燃焼され、能力切換弁SV3を開けば9本の燃焼管21,21,…により形成される第3の燃焼領域F3が燃焼されるようになっている。なお、前記の「燃焼管」とは燃焼バーナと同義である。
【0019】
元ガス電磁弁SV0や、各能力切換弁SV1,SV2,SV3は、要求される熱量(要求熱量)に相当する燃焼能力に応じてコントローラ(電子制御装置)11によって選択的開閉切換制御が実行され、これにより、対応する燃焼領域F1,F2,F3でのON・OFF燃焼制御が選択的に行われて燃焼能力が段階的・連続的に変更切換されるようになっている。なお、本実施形態ではガス比例弁SVLを共通のガス供給管23に設けているが、これを排して前記能力切換弁SV1〜SV3自体を流量制御弁とすることもできる。
【0020】
前記の選択的開閉切換制御の例として、例えば図4に示すように各燃焼領域F1〜F3を個別に又は選択的に組み合わせて燃焼作動させることで、5段(5段階)の燃焼能力段数の切換を可能としている。すなわち、能力切換弁SV1のみを開いて第1燃焼領域F1を燃焼させることで3本の燃焼管21,21,21に相当する燃焼能力1段の燃焼作動が可能となり(図5(a)参照)、能力切換弁SV2のみを開いて第2燃焼領域F2を燃焼させることで5本の燃焼管21,21,…に相当する燃焼能力2段の燃焼作動が可能となり(図5(b)参照)、能力切換弁SV1,SV2を開いて第1及び第2の燃焼領域F1,F2を燃焼させることで8本の燃焼管21,21,…に相当する燃焼能力3段の燃焼作動が可能となり(図5(c)参照)、能力切換弁SV1,SV3を開いて第1及び第3の燃焼領域F1,F3を燃焼させることで12本の燃焼管21,21,…に相当する燃焼能力4段の燃焼作動が可能となり(図6(a)参照)、全ての能力切換弁SV1,SV2,SV3を開いて第1〜第3の燃焼領域F1,F2,F3を燃焼させることで17本の燃焼管21,21,…に相当する燃焼能力5段の燃焼作動が可能となる(図6(b)参照)。
【0021】
以上のような複数種類の燃焼領域F1〜F3の選択的燃焼により燃焼能力の変更切換を行うものにおける排ガスや空気の流れは次のようになる。すなわち、送風ファン6から各燃焼管21の下側に供給される空気は、燃焼作動される燃焼領域F1,F2又はF3に属する各燃焼管21に対しては燃焼用の空気として作用し、燃焼の結果、排ガスとして前記の排ガス温度センサ10に向けて流れるものの(例えば図3の太破線の矢印参照)、非燃焼の燃焼領域を通過した場合には未燃の空気として前記の排ガス温度センサ10に向けて流れることになる(同図の細点線の矢印参照)。この結果、排ガス温度センサ10が排ガスに加えて未燃空気とも接触することになり、排ガス温度センサ10による排ガス温度の検出値に影響を及ぼすことになる。このため、仮に、第1燃焼領域F1の3本の燃焼管21,21,21のみを燃焼作動させた場合(図3の例参照))と同じ燃焼量になるように供給ガス量を調節して全ての燃焼管を燃焼させたときに排ガス温度センサ10により検出される排ガス温度と、前記の如く第1燃焼領域F1の3本の燃焼管21,21,21のみを燃焼作動させたときに本実施形態において検出される排ガス温度とは、前記の未燃空気の流れに起因して互いに異なる結果となる。
【0022】
そこで、本実施形態では、コントローラ11による排ガス温度の監視に基づく排ガス温度抑制制御で用いる排ガス温度の高温異常判定用の判定温度として、1種類の判定温度ではなくて、前記の複数の燃焼能力段毎に対応する複数種類の判定温度を用いることとしている。例えば、外部排気筒2bが80℃以上の高温の排ガスに晒されないように設定した例として図4に例示した如く、燃焼能力1段での燃焼条件では78℃、燃焼能力2段での燃焼条件では74℃、燃焼能力3段での燃焼条件では76℃、燃焼能力4段での燃焼条件では76℃、燃焼能力5段での燃焼条件では72℃という判定温度を用いる。かかる各種の判定温度は、前記の燃焼能力1段〜燃焼能力5段までの燃焼条件における、外部排気筒2b自体の温度と、排ガス温度センサ10による検出排ガス温度とを対比した試験により定められる。
【0023】
そして、排ガス温度抑制制御により、排ガス温度センサによる検出排ガス温度の監視を行い、検出排ガス温度が現在の燃焼能力段数に対応する前記判定温度をもしも超えれば、外部排気筒2bの熱的耐久性の悪化を防止するために、安全処理を実行する。排ガス温度抑制制御により実行される安全処理としては、例えば、排ガス温度が所定の温度以上の高温異常状態に陥っている旨又はこれと共に採るべき対策を例えばリモコン13を通じてユーザに報知する、あるいは、この報知に加えて、燃焼装置による燃焼を強制的に停止させる処理を行い、前記の高温異常状態に陥ったために燃焼を強制的に停止した旨を前記と同様にユーザに報知する。これにより、外部排気筒2bの熱的耐久性の悪化を確実に防止することができ、前記外部排気筒2bが例えば耐熱塩化ビニル等の合成樹脂配管を用いて形成されているような場合であっても、その外部排気筒2bの熱的耐久性を確実に維持することができるようになる。なお、制御手段を構成する前記コントローラ11はMPUやメモリー等を備えたマイクロコンピュータにより構成され、燃焼能力切換制御手段により実行される前記の選択的開閉切換制御や、安全制御手段により実行される前記の排ガス温度抑制制御は、それぞれコントローラ11に書き込まれて格納された所定のプログラムの実行により実現されるものである。
【0024】
本実施形態の排ガス温度抑制制御は、外部排気筒2bが前記の如く例えば耐熱塩化ビニル等の合成樹脂配管により形成された場合のように、外部排気筒2bの熱的耐久性の悪化を防止することを目的とするものであるが、通常、二次熱交換器4を通過した後の排ガス温度はかなり低下するため、排ガス温度が前記の判定温度を超えるということは、何らかの燃焼異常が発生したことで排ガス温度が高温異常状態に陥っているものと判定し得る。従って、かかる排ガス温度抑制制御を実行することで、外部排気筒2bの熱的耐久性の悪化を防止することができるだけでなく、燃焼異常の発生の監視及び回避をも行うことができるようになる。
【0025】
又、前記の直接的な作用効果に加えて次のような作用効果も得ることができるようになる。すなわち、前記の如く、排ガス温度抑制制御に用いる高温異常判定用の判定温度として燃焼能力段毎に対応した複数種類の判定温度を用いているため、排ガス温度センサ10の設置位置(設置状況)と、燃焼能力段数毎の燃焼状況との実際の状況に、より合致した排ガス温度抑制制御を実現させることができるようになる。このため、1種類の判定温度を用いて検出排ガス温度との対比を行い検出排ガス温度が判定温度を超えれば、どの燃焼能力段の燃焼状況の如何を問わず画一的に供給ガス量(インプットガス量)を強制的に低減させて燃焼量を低減させるという安全制御を行う場合と比べ、より早期に所定温度まで沸き上げることができるようになる。すなわち、1種類の判定温度でどの燃焼能力段数に対しても適用すると、外部排気筒2bの保護の観点から実際には現状の燃焼状態をまだ維持し続けても大丈夫であるにも拘わらず、供給ガス量の強制低減処理により所定温度までの沸き上げが遅延してしまうことを回避することができるようになる。あるいは、供給ガス量の強制低減ではなくて、検出排ガス温度が前記の1種類の判定温度を超えることで、燃焼の強制停止を行う場合には、前記と同様に、実際には現状の燃焼状態をまだ維持し続けても大丈夫であるにも拘わらず、強制燃焼停止をしなくてはならない高温異常状態に至ったと誤判定することになり、本実施形態ではかかる誤判定の発生を回避して防止することができるようになる。
【0026】
さらに、本来の保護対象である外部排気筒2bに対し直接に排ガス温度センサ10を設置しなくても、缶体2側の集合排気筒2aの側に設置した排ガス温度センサ10による検出排ガス温度と、そのときの外部排気筒2bに及ぶであろう、排ガスによる影響熱との相関関係を演算又は試験等により把握することができる。そして、これに基づき前記排ガス温度センサ10による検出排ガス温度に対する判定温度を設定することで、保護対象である外部排気筒2bとは異なる部位(集合排気筒2a)に設置した排ガス温度センサ10によって、保護対象である前記外部排気筒2bに接触する排ガス温度の状況を監視して適切に保護することができるようになる。
【0027】
<他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、前記実施形態における燃焼領域の数・種類(3つ)や、それぞれ燃焼領域での燃焼管21の本数、燃焼能力段数(5段)等については例示であり、これら以外に設定することもできる。
【0028】
前記実施形態では、燃焼能力段数毎に高温異常判定用の判定温度を設定したものを説明したが、さらに、同じ燃焼能力段数での燃焼条件でもガス供給量を変更調整することで燃焼量を変更調整するのに応じて、同じ燃焼能力段数においてデフォルトで設定されているガス供給量での判定温度に対し燃焼量が変更されればそれに応じて判定温度も変更設定されるようにしてもよい。つまり同じ燃焼能力段数であっても、燃焼量が異なれば判定温度も異なるように構成してもよい。例えば各燃焼能力段数毎に図4の如く判定温度が初期設定されていれば、燃焼量(ガス供給量)の変更に応じてその判定温度を自動的に変更設定するようにしてもよいし、各燃焼能力段数毎に初期設定の判定温度を燃焼量の変更可能範囲に応じて段階的に変更した複数の判定温度のマップを記憶させておいてもよい。
【0029】
前記実施形態では、潜熱回収型給湯装置として構成した燃焼装置を示したが、これに限らず、複数の燃焼領域の選択的燃焼により複数段の燃焼能力の変更切換が可能に構成された燃焼装置であって、排ガス温度を監視して燃焼能力段毎に対応する判定温度との対比により安全処理を実行するものであれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 潜熱回収型給湯装置
2a 集合排気筒
2b 外部排気筒
4 二次熱交換器(潜熱回収用の熱交換器)
10 排ガス温度センサ
11 コントローラ(制御手段)
21 燃焼管(燃焼バーナ)
F1,F2,F3 燃焼領域
SV1,SV2,SV3 能力切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃焼領域に区分され、各燃焼領域が1又は複数本の燃焼バーナを並設することにより形成され、前記複数の燃焼領域を選択的に燃焼させることで複数段の燃焼能力に変更切換可能とされている燃焼装置であって、
排ガス温度を検出する排ガス温度センサと、この排ガス温度センサによる検出排ガス温度を監視し検出排ガス温度が高温異常判定用の判定温度を超えたときに安全処理を実行する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記高温異常判定用の判定温度として前記複数段の燃焼能力毎に対応するように設定された判定温度を備え、現在の燃焼能力の段数に対応した判定温度に基づいて前記安全処理を実行するように構成されている、
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼装置であって、
排ガスから潜熱回収を行う潜熱回収用の熱交換器を備えた潜熱回収型給湯装置として構成され、
前記排ガス温度センサは、前記潜熱回収用の熱交換器を通過した潜熱回収後の排ガスの温度を検出するように設けられている、燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−29254(P2013−29254A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166028(P2011−166028)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】