説明

燃焼装置

【課題】全一次燃焼式バーナの上面の燃焼板3上に臨む温度センサ5を備え、温度センサの出力から空気過剰率を検出してバーナに供給する一次空気量や燃料ガス量を調節する燃焼装置であって、燃焼板に、温度センサの直下に位置する部分を含む所定範囲に亘り、炎孔3aを形成しない無炎孔部32を設けるものにおいて、火炎リフトによる空気過剰率の検出精度の悪化を防止できるようにする。
【解決手段】無炎孔部32に隣接する複数の炎孔3aが形成された温度センサ加熱用炎孔形成部33のY軸方向(温度センサ5の長手方向に直交する方向)外側に位置させて、炎孔3aを形成しない第2の無炎孔部34を設ける。更に、第2の無炎孔部34のY軸方向外側に位置する外側炎孔形成部35上に臨ませて、炎孔3aからの噴出ガス流が衝突する障害物を設ける。好ましくは、障害物を点火電極6やフレームロッド7で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方に開口する箱状のバーナ本体の上面に燃焼板が装着され、バーナ本体に対する固定部となる燃焼板の外縁部より内方の火炎形成領域に形成した多数の炎孔から燃料ガスと一次空気との予混合ガスを噴出させて全一次燃焼させる全一次燃焼式バーナを備える燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の全一次燃焼式バーナの燃焼板から噴出する予混合ガスの燃焼で生ずる火炎の温度は、予混合ガスの空気過剰率(一次空気量/燃料ガスの燃焼に必要な理論空気量)が1のときに最も高くなり、空気過剰率が1を超えて増加するのに伴い低下する。そして、火炎温度の低下に伴い、燃焼排ガス中の窒素酸化物の量が減少するため、予混合ガスの空気過剰率を1より大きくすることが望まれる。一方、空気過剰率を大きくし過ぎると、予混合ガスの燃焼速度が噴出速度を下回って火炎がリフトしやすくなる。そこで、燃焼板の火炎形成領域上に臨むように燃焼板の外縁よりも外方から内方に突出させた温度センサ(例えば、熱電対)を設け、この温度センサの出力から予混合ガスの空気過剰率を間接的に検出し、この出力に応じてバーナに供給する燃料ガス量と一次空気量との少なくとも一方を調節することにより、予混合ガスの空気過剰率を1より大きな所定の設定値に維持するようにしている。
【0003】
ところで、温度センサの燃焼板に対する突出量を一定に管理することは困難である。ここで、温度センサを火炎に直接晒されるように配置すると、温度センサの突出量のばらつきにより、火炎に晒される温度センサの面積(受熱面積)がばらついて、温度センサの出力が変化してしまう。その結果、空気過剰率が一定であっても、温度センサの突出量のばらつきで温度センサの出力が変化し、空気過剰率の検出精度が悪化する。
【0004】
かかる不具合を解消するため、従来、燃焼板の火炎形成領域に、温度センサの直下に位置する部分を含む所定範囲に亘り、炎孔を形成しない無炎孔部を設けたものも知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでは、無炎孔部の周囲の炎孔の火炎により温度センサが加熱されることになり、温度センサを火炎に直接晒すものに比し、温度センサの突出量のばらつきによる温度センサ出力の変化幅が小さくなる。
【0005】
ところで、炎孔負荷(炎孔の単位面積当たりの発熱量換算での噴出ガス量)が大きくなると、火炎がリフトしやすくなる。そして、無炎孔部の周囲で火炎リフトを生ずると、温度センサの出力が低下し、空気過剰率の検出精度が悪化する。そこで、温度センサの長手方向に直交する燃焼板の板面に平行な方向をY軸方向として、無炎孔部のY軸方向一側方と他側方に位置する各火炎形成領域内に、無炎孔部に隣接する複数の炎孔が形成された温度センサ加熱用炎孔形成部のY軸方向外側に位置させて、炎孔を形成しない第2の無炎孔部を設けることが考えられる。これによれば、予混合ガスが第2の無炎孔部に還流して保炎作用が得られる。
【0006】
ここで、火炎リフトは、温度が比較的低い火炎形成領域の外端部を起点にして発生し、その後、火炎形成領域の内方に進行する。そのため、上記の如く第2の無炎孔部を設けても、Y軸方向外端部で発生した火炎リフトが第2の無炎孔部にまで達すると、温度センサ加熱用炎孔形成部での火炎リフトを防止できなくなり、空気過剰率の検出精度が悪化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−54946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、火炎リフトによる空気過剰率の検出精度の悪化を防止できるようにした燃焼装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、上方に開口する箱状のバーナ本体の上面に燃焼板が装着され、バーナ本体に対する固定部となる燃焼板の外縁部より内方の火炎形成領域に形成した多数の炎孔から燃料ガスと一次空気との予混合ガスを噴出させて全一次燃焼させる全一次燃焼式バーナと、燃焼板の火炎形成領域上に臨むように燃焼板の外縁よりも外方から内方に突出させた温度センサとを備え、この温度センサの出力に応じてバーナに供給する燃料ガス量と一次空気量との少なくとも一方を調節する燃焼装置であって、燃焼板の火炎形成領域に、温度センサの直下に位置する部分を含む所定範囲に亘り、炎孔を形成しない無炎孔部を設けるものにおいて、温度センサの長手方向に直交する燃焼板の板面に平行な方向をY軸方向として、無炎孔部のY軸方向一側方と他側方に位置する各火炎形成領域内に、無炎孔部に隣接する複数の炎孔が形成された温度センサ加熱用炎孔形成部のY軸方向外側に位置させて、炎孔を形成しない第2の無炎孔部が設けられ、第2の無炎孔部よりY軸方向外側に位置する外側炎孔形成部上に臨ませて、外側炎孔形成部に形成する複数の炎孔の少なくとも一部から噴出するガス流が衝突する障害物を備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、障害物の配置部では、噴出ガス流が障害物に衝突して火炎リフトが防止される。そして、本発明では、第2の無炎孔部よりもY軸方向外側の外側炎孔形成部上に障害物が配置されるため、Y軸方向外端部からY軸方向内方への火炎リフトの進行を障害物の配置部でくい止めて、火炎リフトが第2の無炎孔部に達することを防止できる。従って、第2の無炎孔部への予混合ガスの還流による保炎作用と相俟って、温度センサ加熱用炎孔形成部での火炎リフトを効果的に防止できる。その結果、火炎リフトによる温度センサ出力の低下で空気過剰率の検出精度が悪化することを防止できる。
【0011】
尚、温度センサ加熱用炎孔形成部上に障害物を配置することも考えられる。然し、これでは、障害物の下で火炎が広がり、この広がり具合が炎孔負荷に応じて変化して温度センサの加熱量も変化してしまい、空気過剰率の検出精度が悪化する。一方、本発明では、温度センサ加熱用炎孔形成部上には障害物を配置しないため、上記の不具合は生じない。
【0012】
ところで、バーナには、一般的に、温度センサ以外にも、点火電極と、点火及び失火検知のためのフレームロッドとが付設される。ここで、点火電極を、無炎孔部のY軸方向一側方の火炎形成領域の外側炎孔形成部上に臨むように配置し、更に、フレームロッドを、無炎孔部のY軸方向他側方の火炎形成領域の外側炎孔形成部上に臨むように配置し、点火電極及びフレームロッドで前記障害物を構成すれば、部品点数を削減してコストダウンを図ることができ、有利である。
【0013】
また、本発明においては、温度センサの長手方向をX軸方向、温度センサの突出方向とは反対方向をX軸方向外方として、火炎形成領域のX軸方向外方の端部に、温度センサ加熱用炎孔形成部に形成する炎孔を含む一般の炎孔よりも予混合ガスの噴出速度が遅い複数の減速炎孔を形成した保炎用炎孔形成部を設けることが望ましい。これによれば、火炎形成領域のX軸方向外方の端部での火炎リフトの発生が防止され、温度センサ加熱用炎孔形成部での火炎リフトをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の燃焼装置の斜視図。
【図2】実施形態の燃焼装置の切断側面図。
【図3】図2のIII−III線で切断した断面図。
【図4】図2のIV−IV線で切断した拡大切断平面図。
【図5】試験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図3を参照して、1は全一次燃焼式バーナを示している。このバーナ1は、バーナ本体2の上面にセラミックス製の燃焼板3を装着して構成されている。
【0016】
バーナ本体2は、ダイキャスト品であって、上方に開口する箱形に形成されている。バーナ本体2の上面には、燃焼板3で覆われる開口部を囲うフランジ部21が設けられている。そして、燃焼板3の外縁部を、フランジ部21との間にパッキン211を挟んだ状態でフランジ部21上に固定している。燃焼板3には、バーナ本体2に対する固定部となる外縁部より内方の火炎形成領域31(図4参照)が設定されており、この火炎形成領域31に多数の炎孔3aが形成されている。
【0017】
バーナ本体2内には、燃焼板3の下面に面する分布室22と、分布室22の底壁221下の混合室23とが設けられている。また、混合室23の下側には、バーナ本体2の下面に取付けたケース241で囲われる給気室24が設けられている。給気室24の横方向一端にはファン242が接続されている。
【0018】
分布室22の底壁221の後部には、分布室22と混合室23とを連通する開口部222が形成されている。また、分布室22は、仕切り板223により上下2つの空間に仕切られている。そして、混合室23から開口部222を介して分布室22の下部空間に流入した予混合ガスが仕切り板223に形成した多数の分布孔223aと分布室22の上部空間とを介して燃焼板3に導かれるようにしている。燃焼板3に導かれた予混合ガスは、炎孔3aから噴出して全一次燃焼する。
【0019】
混合室23の前面は、バーナ本体2に一体の前壁231で閉塞されている。前壁231には、横方向の間隔を存して複数のノズル孔232が形成されている。また、前壁231の前面には、これらノズル孔232に連通するノズル通路233を前壁231との間に画成する仕切板251を介してガスマニホールド25が取り付けられている。仕切板251には、ガスマニホールド25内のガス通路252とノズル通路233とを連通する開口(図示せず)が形成されており、この開口を開閉する電磁弁253がガスマニホールド25に取り付けられている。そして、電磁弁253を開弁させたときに、ノズル通路233に燃料ガスが供給され、各ノズル孔232から燃料ガスが噴射されるようにしている。
【0020】
混合室23の底面は、バーナ本体2とは別体の底板234で閉塞されている。底板234の前端部には、前壁231に通気空間を存して対向し、各ノズル孔232から噴出する燃料ガスが衝突する壁板235が曲成されている。また、混合室23の底面の通気空間に臨む部分には、給気室24に連通する空気導入口236が開設されている。そして、ファン242から給気室24に送風される空気が空気導入口236を介して通気空間に一次空気として供給され、壁板235に衝突して拡散する燃料ガスと一次空気とが混合室23で混合して予混合ガスが生成されるようにしている。
【0021】
尚、本実施形態では、分布室22及び混合室23を、バーナ本体2に一体の仕切り壁26で比較的大きな♯1の分布室22及び混合室23と、比較的小さな♯2と♯3の分布室22及び混合室23とに3分割し、実質的に3個のバーナを組合わせた構造にしている。そして、ガスマニホールド25に、3分割した♯1〜♯3の混合室23に個々に燃料ガスを供給できるように、3個の電磁弁253を設けている。また、燃焼板3を、比較的大きな♯1の分布室22を覆う♯1の燃焼板3と、比較的小さな♯2と♯3の分布室22,22を覆う♯2の燃焼板3とに2分割している。尚、♯2の燃焼板3の火炎形成領域31は、♯2の分布室22上に位置する領域と♯3の分布室22上に位置する領域とに分かれている。
【0022】
また、本実施形態の燃焼装置は、燃焼板3の上方の燃焼空間を囲う燃焼筐4を備えている。燃焼筐4は、被加熱物たる給湯用や暖房用の熱交換器41を収納した上部筺体42と、上部筺体42の下端に連結される下部筺体43とで構成されている。下部筺体43の下端には内曲げフランジ431が形成されており、この内曲げフランジ431を、バーナ本体2のフランジ部21との間にパッキン211を挟んだ状態で、フランジ部21に締結している。また、内曲げフランジ431の内縁から立ち上がる起立板部432を設け、この起立板部432の上端に、内方に屈曲して燃焼板3の外縁部上面に係合する係合板部433を曲成している。そして、内曲げフランジ431をフランジ部21に締結する際に、係合板部433により燃焼板3が下方に押し付けられて固定されるようにしている。
【0023】
また、下部筺体43の後板部の内側と横方向両側の側板部の内側には遮熱板44が配置されている。そして、遮熱板44の下端に内曲げフランジ441を形成し、内曲げフランジ441を下部筺体43の内曲げフランジ431に重ねた状態でフランジ部21に共締めしている。
【0024】
また、下部筺体43の前板部には、ガラスを嵌め込んだ覗き窓45が設けられると共に、温度センサたる熱電対5と点火電極6とフレームロッド7とが装着されている。熱電対5は、図2〜図4に示す如く、♯2の分布室22上に位置する♯2の燃焼板3の火炎形成領域31上に臨むように、燃焼板3の外縁よりも外方から内方に突出している。尚、熱電対5の配置箇所に合致する起立板部432の部分の上端には、係合板部433を曲成せずに、図2に示す如く熱電対5を挿通する透孔434を形成している。
【0025】
また、熱電対5の長手方向をX軸方向、熱電対5の突出方向及びその反対方向を夫々X軸方向内方及びX軸方向外方、X軸方向に直交する燃焼板3の板面に平行な方向をY軸方向として、点火電極6は熱電対5のY軸方向一側方に配置され、フレームロッド7は熱電対5のY軸方向他側方に配置されている。更に、熱電対5、点火電極6及びフレームロッド7の配置部に合致する内曲げフランジ431の部分には接地電極板46が立設されている。この電極板46の上端には、点火電極6に対向するようにX軸方向内方に屈曲させた電極部461と、フレームロッド7に対向するようにX軸方向内方に屈曲させた電極部462とが曲成されている。そして、点火電極6と電極部461との間での火花放電により点火が行われ、フレームロッド7と電極部462との間に流れるフレーム電流の有無に基づいて点火及び失火検知が行われるようにしている。
【0026】
ところで、燃焼板3の炎孔3aから噴出する予混合ガスの燃焼で生ずる火炎の温度は、予混合ガスの空気過剰率が1から増加するのに伴い低下する。そのため、熱電対5の出力から空気過剰率を間接的に検出することができる。そこで、熱電対5の出力に応じてバーナ1に供給する燃料ガス量と一次空気量との少なくとも一方を調節し、空気過剰率が1より大きな所定の設定値(例えば、1.3)に維持されるように制御している。
【0027】
尚、熱電対5の突出量を一定に管理することは困難である。そのため、熱電対5の突出量のばらつきで熱電対5の出力がばらついたのでは、空気過剰率の検出精度が悪化して、空気過剰率を適切に制御できなくなる。
【0028】
そこで、本実施形態では、♯2の燃焼板3の上記火炎形成領域31に、熱電対5の直下に位置する部分を含む所定範囲に亘り、炎孔3aを形成しない無炎孔部32を設けている。これによれば、無炎孔部32の周囲の炎孔3aの火炎により熱電対5が加熱されることになり、熱電対5を火炎に直接晒すものに比し、熱電対5の突出量のばらつきによる出力の変化幅が小さくなる。そのため、熱電対5の突出量がばらついても、空気過剰率の検出精度は然程悪化せず、空気過剰率を適切に制御できる。
【0029】
ところで、炎孔負荷が大きくなると、火炎がリフトしやすくなる。そして、無炎孔部32に隣接する炎孔3aで火炎リフトを生ずると、空気過剰率が一定でも熱電対5の出力が低下し、空気過剰率の検出精度が悪化してしまう。
【0030】
そこで、本実施形態では、無炎孔部32のY軸方向一側方と他側方に位置する各火炎形成領域31内に、無炎孔部32に隣接する複数の炎孔3aが形成された温度センサ加熱用炎孔形成部33のY軸方向外側に位置させて、炎孔を形成しない第2の無炎孔部34を設けている。これによれば、温度センサ加熱用炎孔形成部33から噴出する予混合ガスの一部及び第2の無炎孔部34のY軸方向外側に位置する外側炎孔形成部35から噴出する予混合ガスの一部が第2の無炎孔部34に還流して保炎作用が得られる。その結果、温度センサ加熱用炎孔形成部33での火炎リフトの発生を抑制して、火炎リフトによる空気過剰率の検出精度の悪化を防止できる。
【0031】
但し、火炎リフトは、一般的に、温度が比較的低い火炎形成領域31の外端部を起点に発生し、その後、火炎形成領域31の内方に進行する。そして、火炎形成領域31のY軸方向外端部で発生した火炎リフトがY軸方向内方に進行して第2の無炎孔部34に達すると、温度センサ加熱用炎孔形成部33での火炎リフトを防止できなくなる。
【0032】
そこで、本実施形態では、点火電極6を、無炎孔部32のY軸方向一側方の火炎形成領域31の外側炎孔形成部35上に臨むように配置し、フレームロッド7を、無炎孔部32のY軸方向他側方の火炎形成領域31の外側炎孔形成部35上に臨むように配置している。具体的には、点火電極6を、対応する外側炎孔形成部35に形成する一部の炎孔3aの上方に対向するように配置し、フレームロッド7を、対応する外側炎孔形成部35に形成する一部の炎孔3aの上方に対向するように配置している。尚、点火電極6の先端部と燃焼板3の上面との間の距離は5mm程度に設定し、フレームロッド7と燃焼板3の上面との間の距離も5mm程度に設定している。
【0033】
これによれば、点火電極6及びフレームロッド7にその下方の炎孔3aから噴出する予混合ガスが衝突して、この炎孔3aでの火炎リフトが防止される。そのため、火炎形成領域31のY軸方向外端部で発生した火炎リフトのY軸方向内方への進行を点火電極6及びフレームロッド7の配置部でくい止めて、火炎リフトが第2の無炎孔部34に達することを防止できる。従って、第2の無炎孔部34への予混合ガスの還流による保炎作用と相俟って、温度センサ加熱用炎孔形成部33での火炎リフトを効果的に防止できることができる。
【0034】
また、本実施形態では、火炎形成領域31のX軸方向外方の端部に、温度センサ加熱用炎孔形成部33や外側炎孔形成部35に形成する炎孔3aを含む一般の炎孔3aよりも予混合ガスの噴出速度が遅い複数の減速炎孔3bを形成した保炎用炎孔形成部36を設けている。これによれば、減速炎孔3bによる保炎作用で保炎用炎孔形成部36、即ち、火炎形成領域31のX軸方向外方の端部での火炎リフトの発生が防止され、温度センサ加熱用炎孔形成部33での火炎リフトをより確実に防止することができる。
【0035】
尚、本実施形態では、減速炎孔3bを一般の炎孔3aよりも小径に形成して、予混合ガスの噴出速度が遅くなるようにしているが、減速炎孔3bを一般の炎孔3aと同径に形成することも可能である。即ち、保炎用炎孔形成部36の直下に位置する仕切り板223の部分を燃焼板3の下面に近付けて、保炎用炎孔形成部36と仕切り板223との間の通気抵抗を増加させれば、減速炎孔3bを一般の炎孔3aと同径に形成しても、減速炎孔3bからの予混合ガスの噴出速度を遅くして保炎作用を得ることができる。
【0036】
以上の効果を確かめるため、本実施形態の燃焼装置(発明品)と、点火電極6及びフレームロッド7を取り外した比較品とを用い、炎孔負荷を9W/mmとした状態で空気過剰率を変化させて熱電対5の出力を測定する試験を行った。尚、発明品と比較品の何れも、熱電対5の直径は3.2mm、無炎孔部32のY軸方向幅は5.5mmに設定されている。図5の線aは発明品の結果を示し、線bは比較品の結果を示している。図5から明らかなように、比較品では、空気過剰率が1.45以上になったところで熱電対5の出力が急激に低下している。これは、温度センサ加熱用炎孔形成部33で火炎リフトが発生したためである。これに対し、発明品では、空気過剰率が1.5に減少するまで熱電対5の出力がほぼ直線的に減少している。このことから、外側炎孔形成部35上に点火電極6及びフレームロッド7を臨ませることにより、温度センサ加熱用炎孔形成部33での火炎リフトの発生を防止できることが分かる。
【0037】
尚、比較品では、空気過剰率が1.2〜1.4の範囲でも、外側炎孔形成部35での火炎リフトを生じ、その影響で温度センサ加熱用炎孔形成部33の火炎がリフト気味になる。そのため、空気過剰率が1.2〜1.4の範囲において、熱電対出力は比較品の方が発明品よりも低くなっている。
【0038】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、外側炎孔形成部35に形成した炎孔3aから噴出するガス流が衝突する障害物として点火電極6及びフレームロッド7を用いているが、外側炎孔形成部35上に板材を臨ませ、この板材で障害物を構成することも可能である。但し、バーナ1に元々付設する点火電極6及びフレームロッド7で障害物を構成する上記実施形態の方が部品点数を削減してコストダウンを図ることができ、有利である。
【0039】
また、上記実施形態では、温度センサとして熱電対5を用いているが、先端部にサーミスタを内蔵する棒状の温度センサを用いてもよい。更に、本発明では、バーナ本体2の上面に燃焼板3を装着しているが、上下方向は燃焼装置の使用時の方向を規定するものではなく、上下逆転させた姿勢、即ち、燃焼板3を下向きとする姿勢で使用する燃焼装置も本発明の燃焼装置に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1…全一次燃焼式バーナ、2…バーナ本体、3…燃焼板、3a…炎孔、3b…減速炎孔、31…火炎形成領域、32…無炎孔部、33…温度センサ加熱用炎孔形成部、34…第2の無炎孔部、35…外側炎孔形成部、36…保炎用炎孔形成部、5…熱電対(温度センサ)、6…点火電極(障害物)、7…フレームロッド(障害物)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する箱状のバーナ本体の上面に燃焼板が装着され、バーナ本体に対する固定部となる燃焼板の外縁部より内方の火炎形成領域に形成した多数の炎孔から燃料ガスと一次空気との予混合ガスを噴出させて全一次燃焼させる全一次燃焼式バーナと、燃焼板の火炎形成領域上に臨むように燃焼板の外縁よりも外方から内方に突出させた温度センサとを備え、この温度センサの出力に応じてバーナに供給する燃料ガス量と一次空気量との少なくとも一方を調節する燃焼装置であって、
燃焼板の火炎形成領域に、温度センサの直下に位置する部分を含む所定範囲に亘り、炎孔を形成しない無炎孔部を設けるものにおいて、
温度センサの長手方向に直交する燃焼板の板面に平行な方向をY軸方向として、無炎孔部のY軸方向一側方と他側方に位置する各火炎形成領域内に、無炎孔部に隣接する複数の炎孔が形成された温度センサ加熱用炎孔形成部のY軸方向外側に位置させて、炎孔を形成しない第2の無炎孔部が設けられ、
第2の無炎孔部よりY軸方向外側に位置する外側炎孔形成部上に臨ませて、外側炎孔形成部に形成する複数の炎孔の少なくとも一部から噴出するガス流が衝突する障害物を備えることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記無炎孔部のY軸方向一側方の火炎形成領域の前記外側炎孔形成部上に臨む点火電極を備え、この点火電極で前記障害物が構成されることを特徴とする請求項1記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記無炎孔部のY軸方向他側方の火炎形成領域の前記外側炎孔形成部上に臨むフレームロッドを備え、このフレームロッドで前記障害物が構成されることを特徴とする請求項2記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記温度センサの長手方向をX軸方向、温度センサの突出方向とは反対方向をX軸方向外方として、前記火炎形成領域のX軸方向外方の端部に、前記温度センサ加熱用炎孔形成部に形成する炎孔を含む一般の炎孔よりも予混合ガスの噴出速度が遅い複数の減速炎孔を形成した保炎用炎孔形成部が設けられることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の燃焼装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−50244(P2013−50244A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187360(P2011−187360)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】