説明

燃焼装置

【課題】全一次燃焼式バーナの燃焼板3上に臨むように燃焼板の外縁よりも外方から内方に突出させた温度センサ5を備え、温度センサの出力から空気過剰率を検出してバーナに供給する一次空気量や燃料ガス量を調節する燃焼装置であって、燃焼板に、温度センサの直下に位置する部分を含む所定範囲に亘り無炎孔部32を設けるものにおいて、温度センサの突出量のばらつきによる空気過剰率の検出精度の悪化を防止できるようにする。
【解決手段】温度センサ5の長手方向をX軸方向、X軸方向に直交する方向をY軸方向として、無炎孔部32のX軸方向内方の端部32aからX軸方向外方にのびる無炎孔部32の部分を、端部32aよりもY軸方向幅を狭めた幅狭形状部分32bに形成する。また、幅狭形状部分32bに隣接する複数の炎孔3aが形成された温度センサ加熱用炎孔形成部33のY軸方向外側に位置させて、炎孔3aを形成しない第2の無炎孔部34を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方に開口する箱状のバーナ本体の上面に燃焼板が装着され、バーナ本体に対する固定部となる燃焼板の外縁部より内方の火炎形成領域に形成した多数の炎孔から燃料ガスと一次空気との予混合ガスを噴出させて全一次燃焼させる全一次燃焼式バーナを備える燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の全一次燃焼式バーナにおいて、予混合ガスの燃焼で生ずる火炎の温度は、予混合ガスの空気過剰率(一次空気量/燃料ガスの燃焼に必要な理論空気量)が1のときに最も高くなり、空気過剰率が1を超えて増加するのに伴い低下する。そして、火炎温度の低下に伴い、燃焼排ガス中の窒素酸化物の量が減少するため、空気過剰率を1より大きくすることが望まれる。一方、空気過剰率を大きくし過ぎると、予混合ガスの燃焼速度が噴出速度を下回って火炎がリフトしやすくなる。そこで、燃焼板の火炎形成領域上に臨むように燃焼板の外縁よりも外方から内方に突出させた温度センサ(例えば、熱電対)を設け、この温度センサの出力から空気過剰率を間接的に検出し、この出力に応じてバーナに供給する燃料ガス量と一次空気量との少なくとも一方を調節することにより、空気過剰率が1より大きな所定の設定値に維持されるように制御している。
【0003】
ところで、温度センサの燃焼板に対する突出量を一定に管理することは困難である。ここで、温度センサを火炎に直接晒されるように配置すると、温度センサの突出量のばらつきにより、火炎に晒される温度センサの面積(受熱面積)がばらついて、温度センサの出力が変化してしまう。その結果、空気過剰率が一定であっても、温度センサの突出量のばらつきで温度センサの出力が変化し、空気過剰率の検出精度が悪化する。
【0004】
かかる不具合を解消するため、従来、燃焼板の火炎形成領域に、温度センサの直下に位置する部分を含む所定範囲に亘り、炎孔を形成しない無炎孔部を設けたものも知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでは、無炎孔部の周囲の炎孔の火炎により温度センサが加熱されることになり、温度センサを火炎に直接晒すものに比し、温度センサの突出量のばらつきによる温度センサ出力の変化幅が小さくなる。
【0005】
但し、このものでは、温度センサの長手方向をX軸方向、温度センサの突出方向をX軸方向内方として、温度センサの先端部は、主として、無炎孔部のX軸方向内方の端部のX軸方向に隣接する炎孔の火炎により加熱される。そして、温度センサの突出量の減少で温度センサの位置がX軸方向外方にずれると、温度センサの先端部が無炎孔部のX軸方向内方の端部に隣接する炎孔から遠ざかり、温度センサの先端部の加熱量が減少してしまう。ここで、温度センサの先端部には温度検知部(温度センサが熱電対である場合は温接点)が設けられるため、温度センサの出力は先端部の加熱量によって大きな影響を受けることになり、温度センサの突出量の減少で温度センサの出力が無視できないほど低下してしまう。その結果、温度センサの突出量のばらつきによる空気過剰率の検出精度の悪化を十分には防止できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63−54946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、温度センサの突出量のばらつきによる空気過剰率の検出精度の悪化を防止できるようにした燃焼装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、上方に開口する箱状のバーナ本体の上面に燃焼板が装着され、バーナ本体に対する固定部となる燃焼板の外縁部より内方の火炎形成領域に形成した多数の炎孔から燃料ガスと一次空気との予混合ガスを噴出させて全一次燃焼させる全一次燃焼式バーナと、燃焼板の火炎形成領域上に臨むように燃焼板の外縁よりも外方から内方に突出させた温度センサとを備え、この温度センサの出力に応じてバーナに供給する燃料ガス量と一次空気量との少なくとも一方を調節する燃焼装置であって、燃焼板の火炎形成領域に、温度センサの直下に位置する部分を含む所定範囲に亘り、炎孔を形成しない無炎孔部を設けるものにおいて、温度センサの長手方向をX軸方向、温度センサの突出方向をX軸方向内方、X軸方向に直交する燃焼板の板面に平行な方向をY軸方向として、無炎孔部のX軸方向内方の端部からX軸方向外方にのびる無炎孔部の部分は、無炎孔部のX軸方向内方の端部よりもY軸方向幅を狭めた幅狭形状部分に形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、温度センサの突出量の減少で温度センサ先端部が無炎孔部のX軸方向内方の端部のX軸方向に隣接する炎孔から遠ざかっても、無炎孔部の幅狭形状部分のY軸方向に隣接する炎孔に温度センサ先端部が近づく。そのため、突出量の減少により無炎孔部のX軸方向内方の端部に隣接する炎孔の火炎による温度センサの先端部の加熱量が減少しても、無炎孔部の幅狭形状部分に隣接する炎孔の火炎による温度センサ先端部の加熱量が増加して、温度センサの出力は然程低下しなくなる。従って、温度センサの突出量のばらつきによる空気過剰率の検出精度の悪化を効果的に防止できる。
【0010】
ところで、炎孔負荷(炎孔の単位面積当たりの発熱量換算での噴出ガス量)が大きくなると、火炎がリフトしやすくなる。そして、無炎孔部の周囲で火炎リフトを生ずると、温度センサの出力が低下し、空気過剰率の検出精度が悪化する。そのため、本発明においては、無炎孔部の幅狭形状部分のY軸方向一側方と他側方に位置する各火炎形成領域内に、無炎孔部の幅狭形状部分に隣接する複数の炎孔が形成された温度センサ加熱用炎孔形成部のY軸方向外側に位置させて、炎孔を形成しない第2の無炎孔部を設けることが望ましい。これによれば、予混合ガスが第2の無炎孔部に還流して保炎作用が得られ、温度センサ加熱用炎孔形成部での火炎リフトが抑制される。従って、火炎リフトによる空気過剰率の検出精度の悪化を防止できる。
【0011】
尚、火炎リフトは、温度が比較的低い火炎形成領域の外端部を起点に発生する。ここで、燃焼板の火炎形成領域のX軸方向外方の端部に、温度センサ加熱用炎孔形成部に形成する炎孔を含む一般の炎孔よりも予混合ガスの噴出速度が遅い複数の減速炎孔を形成した保炎用の炎孔形成部を設ければ、温度センサ加熱用炎孔形成部での火炎リフトをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の燃焼装置の斜視図。
【図2】実施形態の燃焼装置の切断側面図。
【図3】図2のIII−III線で切断した断面図。
【図4】図2のIV−IV線で切断した拡大切断平面図。
【図5】試験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜図3を参照して、1は全一次燃焼式バーナを示している。このバーナ1は、バーナ本体2の上面にセラミックス製の燃焼板3を装着して構成されている。
【0014】
バーナ本体2は、ダイキャスト品であって、上方に開口する箱形に形成されている。バーナ本体2の上面には、燃焼板3で覆われる開口部を囲うフランジ部21が設けられている。そして、燃焼板3の外縁部を、フランジ部21との間にパッキン211を挟んだ状態でフランジ部21上に固定している。燃焼板3には、バーナ本体2に対する固定部となる外縁部より内方の火炎形成領域31(図4参照)が設定されており、この火炎形成領域31に多数の炎孔3aが形成されている。
【0015】
バーナ本体2内には、燃焼板3の下面に面する分布室22と、分布室22の底壁221下の混合室23とが設けられている。また、混合室23の下側には、バーナ本体2の下面に取付けたケース241で囲われる給気室24が設けられている。給気室24の横方向一端にはファン242が接続されている。
【0016】
分布室22の底壁221の後部には、分布室22と混合室23とを連通する開口部222が形成されている。また、分布室22は、仕切り板223により上下2つの空間に仕切られている。そして、混合室23から開口部222を介して分布室22の下部空間に流入した予混合ガスが仕切り板223に形成した多数の分布孔223aと分布室22の上部空間とを介して燃焼板3に導かれるようにしている。燃焼板3に導かれた予混合ガスは、炎孔3aから噴出して全一次燃焼する。
【0017】
混合室23の前面は、バーナ本体2に一体の前壁231で閉塞されている。前壁231には、横方向の間隔を存して複数のノズル孔232が形成されている。また、前壁231の前面には、これらノズル孔232に連通するノズル通路233を前壁231との間に画成する仕切板251を介してガスマニホールド25が取り付けられている。仕切板251には、ガスマニホールド25内のガス通路252とノズル通路233とを連通する開口(図示せず)が形成されており、この開口を開閉する電磁弁253がガスマニホールド25に取り付けられている。そして、電磁弁253を開弁させたときに、ノズル通路233に燃料ガスが供給され、各ノズル孔232から燃料ガスが噴射されるようにしている。
【0018】
混合室23の底面は、バーナ本体2とは別体の底板234で閉塞されている。底板234の前端部には、前壁231に通気空間を存して対向し、各ノズル孔232から噴出する燃料ガスが衝突する壁板235が曲成されている。また、混合室23の底面の通気空間に臨む部分には、給気室24に連通する空気導入口236が開設されている。そして、ファン242から給気室24に送風される空気が空気導入口236を介して通気空間に一次空気として供給され、壁板235に衝突して拡散する燃料ガスと一次空気とが混合室23で混合して予混合ガスが生成されるようにしている。
【0019】
尚、本実施形態では、分布室22及び混合室23を、バーナ本体2に一体の仕切り壁26で比較的大きな♯1の分布室22及び混合室23と、比較的小さな♯2と♯3の分布室22及び混合室23とに3分割し、実質的に3個のバーナを組合わせた構造にしている。そして、ガスマニホールド25に、3分割した♯1〜♯3の混合室23に個々に燃料ガスを供給できるように、3個の電磁弁253を設けている。また、燃焼板3を、比較的大きな♯1の分布室22を覆う♯1の燃焼板3と、比較的小さな♯2と♯3の分布室22,22を覆う♯2の燃焼板3とに2分割している。尚、♯2の燃焼板3の火炎形成領域31は、♯2の分布室22上に位置する領域と♯3の分布室22上に位置する領域とに分かれている。
【0020】
また、本実施形態の燃焼装置は、燃焼板3の上方の燃焼空間を囲う燃焼筐4を備えている。燃焼筐4は、被加熱物たる給湯用や暖房用の熱交換器41を収納した上部筺体42と、上部筺体42の下端に連結される下部筺体43とで構成されている。下部筺体43の下端には内曲げフランジ431が形成されており、この内曲げフランジ431を、バーナ本体2のフランジ部21との間にパッキン211を挟んだ状態で、フランジ部21に締結している。また、内曲げフランジ431の内縁から立ち上がる起立板部432を設け、この起立板部432の上端に、内方に屈曲して燃焼板3の外縁部上面に係合する係合板部433を曲成している。そして、内曲げフランジ431をフランジ部21に締結する際に、係合板部433により燃焼板3が下方に押し付けられて固定されるようにしている。
【0021】
また、下部筺体43の後板部の内側と横方向両側の側板部の内側には遮熱板44が配置されている。そして、遮熱板44の下端に内曲げフランジ441を形成し、内曲げフランジ441を下部筺体43の内曲げフランジ431に重ねた状態でフランジ部21に共締めしている。
【0022】
また、下部筺体43の前板部には、ガラスを嵌め込んだ覗き窓45が設けられると共に、温度センサたる熱電対5と点火電極6とフレームロッド7とが装着されている。熱電対5は、図2〜図4に示す如く、♯2の分布室22上に位置する♯2の燃焼板3の火炎形成領域31上に臨むように、燃焼板3の外縁よりも外方から内方に突出している。尚、熱電対5の配置箇所に合致する起立板部432の部分の上端には、係合板部433を曲成せずに、図2に示す如く熱電対5を挿通する透孔434を形成している。
【0023】
また、熱電対5の長手方向をX軸方向、熱電対5の突出方向をX軸方向内方、X軸方向に直交する燃焼板3の板面に平行な方向をY軸方向として、点火電極6は熱電対5のY軸方向一側方に配置され、フレームロッド7は熱電対5のY軸方向他側方に配置されている。更に、熱電対5、点火電極6及びフレームロッド7の配置部に合致する内曲げフランジ431の部分には接地電極板46が立設されている。この電極板46の上端には、点火電極6に対向するようにX軸方向内方に屈曲させた電極部461と、フレームロッド7に対向するようにX軸方向内方に屈曲させた電極部462とが曲成されている。そして、点火電極6と電極部461との間での火花放電により点火が行われ、フレームロッド7と電極部462との間に流れるフレーム電流の有無に基づいて点火及び失火検知が行われるようにしている。
【0024】
ところで、燃焼板3の炎孔3aから噴出する予混合ガスの燃焼で生ずる火炎の温度は、予混合ガスの空気過剰率が1から増加するのに伴い低下する。そのため、熱電対5の出力から空気過剰率を間接的に検出することができる。そこで、熱電対5の出力に応じてバーナ1に供給する燃料ガス量と一次空気量との少なくとも一方を調節し、空気過剰率が1より大きな所定の設定値(例えば、1.3)に維持されるように制御している。
【0025】
尚、熱電対5の突出量を一定に管理することは困難である。そのため、熱電対5の突出量のばらつきで熱電対5の出力がばらついたのでは、空気過剰率の検出精度が悪化して、空気過剰率を適切に制御できなくなる。
【0026】
そこで、本実施形態では、♯2の燃焼板3の上記火炎形成領域31に、熱電対5の直下に位置する部分を含む所定範囲に亘り、炎孔3aを形成しない無炎孔部32を設けている。この無炎孔部32のX軸方向内方の端部32aからX軸方向外方にのびる部分は、端部32aよりもY軸方向幅を狭めた幅狭形状部分32bに形成されている。本実施形態では、熱電対5の直径を3.2mm、無炎孔部32のX軸方向内方の端部32aのY軸方向幅Waを12mm、無炎孔部32の幅狭形状部分32bのY軸方向幅Wbを5.5mmに設定している。
【0027】
これによれば、無炎孔部32のX軸方向内方の端部32aのX軸方向に隣接する炎孔3aと熱電対5の先端との間の距離Lが熱電対5の突出量の減少で増加した場合、無炎孔部32の幅狭形状部分32bのY軸方向に隣接する炎孔3aに熱電対5の先端部が近づく。そのため、熱電対5の突出量の減少により、無炎孔部32のX軸方向内方の端部32aに隣接する炎孔3aの火炎による熱電対5の先端部の加熱量が減少しても、無炎孔部32の幅狭形状部分32bに隣接する炎孔3aの火炎による熱電対5の先端部の加熱量が増加して、熱電対5の出力は然程低下しなくなる。従って、熱電対5の突出量のばらつきによる空気過剰率の検出精度の悪化を防止できる。
【0028】
この効果を確かめるため、本実施形態の燃焼装置(発明品)と、無炎孔部のY軸方向幅をそのX軸方向全長に亘り12mmに設定した比較品とを用い、炎孔負荷を9W/mmとした状態で空気過剰率を変化させて熱電対5の出力を測定する試験を行った。図5の線a1は、発明品において、上記距離Lを2mmに設定した場合の結果を示し、線a2は、発明品において、Lを4mmに設定した場合の結果を示し、線b1は、比較品において、Lを2mmに設定した場合の結果を示し、線b2は、比較品において、Lを4mmに設定した場合の結果を示している。図5から明らかなように、熱電対5の突出量が減少(Lが増加)すると、比較品では、熱電対5の出力が大幅に低下するのに対し、発明品では、熱電対5の出力低下幅が小さくなる。従って、無炎孔部32に幅狭形状部分32bを設けることにより上述した効果が得られることが分かる。
【0029】
ところで、炎孔負荷が大きくなると、火炎がリフトしやすくなる。そして、無炎孔部32に隣接する炎孔3aで火炎リフトを生ずると、空気過剰率が一定でも熱電対5の出力が低下し、空気過剰率の検出精度が悪化してしまう。
【0030】
そこで、本実施形態では、無炎孔部32の幅狭形状部分32bのY軸方向一側方と他側方に位置する各火炎形成領域31内に、幅狭形状部分32bに隣接する複数の炎孔3aが形成された温度センサ加熱用炎孔形成部33のY軸方向外側に位置させて、炎孔を形成しない第2の無炎孔部34を設けている。これによれば、温度センサ加熱用炎孔形成部33から噴出する予混合ガスの一部及び第2の無炎孔部34のY軸方向外側に位置する外側炎孔形成部35から噴出する予混合ガスの一部が第2の無炎孔部34に還流して保炎作用が得られる。その結果、温度センサ加熱用炎孔形成部33での火炎リフトの発生を抑制して、火炎リフトによる空気過剰率の検出精度の悪化を防止できる。
【0031】
また、火炎リフトは、一般的に、温度が比較的低い火炎形成領域31の外端部を起点に発生し、その後、火炎形成領域31の内方に進行する。そして、火炎形成領域31のX軸方向外方の端部を起点にして発生した火炎リフトが温度センサ加熱用炎孔形成部33に達すると、温度センサ加熱用炎孔形成部33での火炎リフトを生じやすくなる。
【0032】
そこで、本実施形態では、火炎形成領域31のX軸方向外方の端部に、温度センサ加熱用炎孔形成部33に形成する炎孔3aを含む一般の炎孔3aよりも予混合ガスの噴出速度が遅い複数の減速炎孔3bを形成した保炎用炎孔形成部36を設けている。これによれば、減速炎孔3bによる保炎作用で保炎用炎孔形成部36、即ち、火炎形成領域31のX軸方向外方の端部での火炎リフトの発生が防止され、温度センサ加熱用炎孔形成部33での火炎リフトをより確実に防止することができる。
【0033】
尚、本実施形態では、減速炎孔3bを一般の炎孔3aよりも小径に形成して、予混合ガスの噴出速度が遅くなるようにしているが、減速炎孔3bを一般の炎孔3aと同径に形成することも可能である。即ち、保炎用炎孔形成部36の直下に位置する仕切り板223の部分を燃焼板3の下面に近付けて、保炎用炎孔形成部36と仕切り板223との間の通気抵抗を増加させれば、減速炎孔3bを一般の炎孔3aと同径に形成しても、減速炎孔3bからの予混合ガスの噴出速度を遅くして保炎作用を得ることができる。
【0034】
また、火炎形成領域31のY軸方向外端部で発生した火炎リフトがY軸方向内方に進行して第2の無炎孔部34に達すると、温度センサ加熱用炎孔形成部33での火炎リフトを確実には防止できなくなる。
【0035】
そこで、本実施形態では、点火電極6を、無炎孔部32の幅狭形状部分32bのY軸方向一側方の火炎形成領域31の外側炎孔形成部35に形成する一部の炎孔3aの上方に対向するように配置し、フレームロッド7を、無炎孔部32の幅狭形状部分32bのY軸方向他側方の火炎形成領域31の外側炎孔形成部35に形成する一部の炎孔3aの上方に対向するように配置している。これによれば、点火電極6及びフレームロッド7にその下方の炎孔3aから噴出する予混合ガスが衝突して、この炎孔3aでの火炎リフトが防止される。そのため、火炎形成領域31のY軸方向外端部で発生した火炎リフトのY軸方向内方への進行を点火電極6及びフレームロッド7の配置部でくい止めて、火炎リフトが第2の無炎孔部34に達することを防止できる。従って、第2の無炎孔部34への予混合ガスの還流による保炎作用と相俟って、温度センサ加熱用炎孔形成部33での火炎リフトを確実に防止できる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施形態では、温度センサとして熱電対5を用いているが、先端部にサーミスタを内蔵する棒状の温度センサを用いてもよい。また、本発明では、バーナ本体2の上面に燃焼板3を装着しているが、上下方向は燃焼装置の使用時の方向を規定するものではなく、上下逆転させた姿勢、即ち、燃焼板3を下向きとする姿勢で使用する燃焼装置も本発明の燃焼装置に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1…全一次燃焼式バーナ、2…バーナ本体、3…燃焼板、3a…炎孔、3b…減速炎孔、31…火炎形成領域、32…無炎孔部、32a…無炎孔部のX軸方向内方の端部、32b…無炎孔部の幅狭形状部分、33…温度センサ加熱用炎孔形成部、34…第2の無炎孔部、36…保炎用炎孔形成部、5…熱電対(温度センサ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する箱状のバーナ本体の上面に燃焼板が装着され、バーナ本体に対する固定部となる燃焼板の外縁部より内方の火炎形成領域に形成した多数の炎孔から燃料ガスと一次空気との予混合ガスを噴出させて全一次燃焼させる全一次燃焼式バーナと、燃焼板の火炎形成領域上に臨むように燃焼板の外縁よりも外方から内方に突出させた温度センサとを備え、この温度センサの出力に応じてバーナに供給する燃料ガス量と一次空気量との少なくとも一方を調節する燃焼装置であって、
燃焼板の火炎形成領域に、温度センサの直下に位置する部分を含む所定範囲に亘り、炎孔を形成しない無炎孔部を設けるものにおいて、
温度センサの長手方向をX軸方向、温度センサの突出方向をX軸方向内方、X軸方向に直交する燃焼板の板面に平行な方向をY軸方向として、無炎孔部のX軸方向内方の端部からX軸方向外方にのびる無炎孔部の部分は、無炎孔部のX軸方向内方の端部よりもY軸方向幅を狭めた幅狭形状部分に形成されることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記無炎孔部の幅狭形状部分のY軸方向一側方と他側方に位置する各火炎形成領域内に、無炎孔部の幅狭形状部分に隣接する複数の炎孔が形成された温度センサ加熱用炎孔形成部のY軸方向外側に位置させて、炎孔を形成しない第2の無炎孔部が設けられることを特徴とする請求項1記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記火炎形成領域のX軸方向外方の端部に、前記温度センサ加熱用炎孔形成部に形成する炎孔を含む一般の炎孔よりも予混合ガスの噴出速度が遅い複数の減速炎孔を形成した保炎用炎孔形成部が設けられることを特徴とする請求項2記載の燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−50245(P2013−50245A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187364(P2011−187364)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】