説明

爪用の化粧料

【課題】 爪の白化、脆弱化を防ぐ爪用の化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】アカネ科クチナシの抽出物を含有する爪用の化粧料を提供する。かかる抽出物が多価アルコールによる抽出物であることが好ましく。かかる抽出物の含有量としては、0.00001〜0.1質量%であることが好ましい。更に、前記爪用の化粧料がニトロセルロース及び(メタ)アクリル酸アルキルポリマーを含有することが好ましい。カンフルおよび/又はクエン酸アセチルトリブチルを含有すること更に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料に関し、更に詳細には爪用の化粧料に好適な化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
若い女性の間でマニュキュア等の爪用の化粧料は気軽に気に入った色や模様を容易に爪につけることが出来、つけ爪の種類も豊富であることから、最近人気が高い化粧料となっている。このような爪用の化粧料には、大きく分けて、溶剤タイプと水性タイプの2タイプが存在する。溶剤タイプは、たとえばニトロセルロースのような、光沢感を有し、透明度の高い、非水溶性の高分子を、アセトンや酢酸エチルのような溶剤に溶解させた剤形のものであり、このような高分子の被膜は可塑性が少なく、膜が亀裂などにより離脱しやすい欠点が存することから、膜に可塑性を付与するために、可塑剤を添加し、部分的な固溶体を形成させるのが通例である。また、このように可塑性を付与した非水溶性の被膜においては、爪などからの離脱性が抑制されることから、リムーバーなどによって溶解除去されるのが通例であった。固溶体化した被膜の密着と、繰り返される除去のための溶媒投与とが相まって、このような系においては、時として爪が黄色く、且つ、脆く変性する現象が起こりやすくなり、このような爪の変性を抑制する手段の開発が望まれるようになってきている。これを抑制する手段としては、アクリル酸系ポリマーエマルジョンを用いた水性樹脂分散爪用化粧料の技術が存するが、現在のところ、乾きやすさ、メーク効果の均一性、化粧被膜の維持性の点で、溶剤タイプを凌駕するには至っていない。これら2種の中間をとった第三のアプローチとして、ニトロセルロースとアクリル樹脂の混合被膜を用いる、溶剤タイプの化粧料が開発されたが、このような系においては、膜の爪への親和性と、除去のための溶剤による処理との相互作用に起因する爪が白くなる現象、即ち、白化現象が新たな問題として取り上げられるようになってきている。白化現象は、黄色化、脆弱化変性ほど重篤ではないが、解決すべき課題となってきている。
【0003】
マニュキュアは毎日塗布してはリムーバーで落とすため、塗布、剥離を頻度高く行うと成分中のアセトン等の有機溶媒により、爪中の脂質等が溶媒とともに抽出され、爪が白くなる白化現象が認められることがある。このような白化現象を防ぐ手段として、エタノール、N−メチル−2−ピロリドン、ニトロセルロース、その他の樹脂成分を一定の割合で含有するネイルラッカー除去剤が報告されており(例えば、特許文献1参照)、マニュキュアとしても同様に塗布時に白化の原因となる爪中成分を余分に除去せず、爪の白化を防止するものが望まれていた。更に、爪の構造を丈夫なものとすることが出来、マニュキュアを塗布することによる爪の脆弱化を防ぐものが求められていた。
【0004】
アカネ科クチナシの抽出物は保湿成分として、化粧料に使用されているが(例えば、特許文献2参照)、爪用の化粧料として使用されることはなく、ましてや多価アルコールによる抽出物として爪用の化粧料に使用されることはなかった。当然、アカネ科クチナシの抽出物にニトロセルロース及び(メタ)アクリル酸アルキルポリマーを含有し 更に、カンフルおよび/又はクエン酸アセチルトリブチルを含有する爪用の化粧料が爪の白化を防止し、脆弱化を防ぐことは知られていなかったし、それを示唆するものもなかった。
【0005】
【特許文献1】特開H11−240820号公報
【特許文献2】特開2000−327552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、マニュキュア等の爪に塗布する化粧料による爪の白化、脆弱化を防ぐ爪用の化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、アカネ科クチナシを含有する爪用の化粧料が、その様な特性を有していることを見出し、特に、アカネ科クチナシを含有する爪用の化粧料に加え、ニトロセルロース及び(メタ)アクリル酸アルキルポリマー、カンフル及び/又はクエン酸アセチルトリブチルを含有する爪用の化粧料にかかる効果が顕著であることが明らかとなり発明の完成に至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
<1> アカネ科クチナシの抽出物を含有することを特徴とする、爪用の化粧料。
<2> 前記抽出物が多価アルコールによる抽出物であることを特徴とする、<1>に記載の爪用の化粧料。
<3> 前記抽出物の含有量が0.00001乃至0.1質量%であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の爪用の化粧料。
<4> 更に、前記爪用の化粧料がニトロセルロース及び(メタ)アクリル酸アルキルポリマーを含有することを特徴とする、<1>乃至<3>の何れかに記載の爪用の化粧料。
<5> 更に、カンフルおよび/又はクエン酸アセチルトリブチルを含有することを特徴とする、<1>から<4>の何れかに記載の爪用の化粧料。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、爪用の化粧料の使用による爪の白化、脆弱化を防ぐ爪用の化粧料が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<1>本発明の植物抽出物
本発明の爪用の化粧料は、必須成分としてアカネ科クチナシの抽出物を含有することを特徴とする。かかる抽出物は、通常化粧料で使用される抽出溶媒を用いて抽出された物であれば特段抽出溶媒を制限しないが、多価アルコールが特に好ましく、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が例示できる。これらの溶媒を用いた抽出は常法に従って行えば良く、例えば、室温ならば10倍量程度の溶媒に数日から10日程度浸漬すれば良く、沸点付近の温度であれば、同程度の溶媒を用いて数時間加熱浸漬すれば良い。溶媒除去を除去しては常法通り減圧留去してもよいし、抽出液を不要物の除去後、そのまま化粧料に加えることも出来る。これらの抽出物調製法のなかで最も好ましいのは1,3−ブチレングリコールの抽出物である。更に、これらの抽出物は市販されているものを使用することが出来、クチナシ抽出液(香栄興業製)が好ましく例示できる。本発明の爪用の化粧料におけるかかる抽出物の好ましい含有量は、爪用の化粧料全量に対して、総量で0.00001乃至0.1質量%が好ましく、更に好ましくは0.0001乃至0.1質量%である。これは下限未満では効果が低下し、上限を超えても効果の向上が期待できないためである。
【0010】
<2>本発明の高分子化合物
本発明の爪用の化粧料は、高分子化合物として、ニトロセルロースやエチルセルロースなどのセルロース系樹脂、アクリル酸アルキルやメタクリル酸アルキルなどのアルキルアクリレート類などを含有することが好ましい。セルロース系樹脂としては、ニトロセルロースが好ましく例示でき、アルキルアクリレート類としては、(メタ)アクリル酸アルキルポリマーが好ましく、かかる(メタ)アクリル酸アルキルポリマーはアルキル基の炭素数が2〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なビニル系モノマーとを共重合させたものである。(メタ)アクリル酸アルキルとしては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルが例示できる。かかる(メタ)アクリル酸アルキルポリマーは市販されているものを使用することが出来、アクリット SE1416AX2(大成ファインケミカル製)、アクリル酸アルキルコポリマー(アサヌマ製)が好ましく例示できる。

【0011】
<3>本発明の可塑剤
本発明の爪用の化粧料は、可塑剤として、カンフル及び/又はクエン酸アセチルトリブチルを含有することが好ましい。可塑性を発揮し
爪が脆くなることを防ぐ効果を発揮する等の理由から化粧料に全量に対して、0.5〜10質量%含有させることが好ましい。
【0012】
<4>本発明の爪用の化粧料
本発明の爪用の化粧料は、前記必須成分を含有し、爪に使用する化粧料、具体的にはマニキュア、ペディキュアなどのネイルカラーやネイルエナメル、ネイルコート、アンダーネイル、ネイルトップコートとして使用することが出来る。本発明の爪用の化粧料は、上記必須成分の他、通常爪用化粧料で使用される任意の成分を含有することができる。この様な任意の成分としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、イソプロパノール、エタノール、ブタノール、メチルエチルケトン、アセトンなどの有機溶剤類、有機色素や金属酸化物などの色剤、ベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス,オレイン酸オクチルドデシル等のエステル類、オリーブ油、牛脂、椰子油等のトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、リチノレイン酸等の脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、赤色202号、黄色401号、黄色4号、黄色404号或いはこれらのレーキ化物などの有機色剤等が好適に例示できる。又、本発明の爪用の化粧料の特性としては、その粘度が30〜2000mPa.sec、更に好ましくは、45〜1800mPa.sec程度に粘度がなるように皮膜成分の構成を調整することが好ましい。又、ネールリムーバーやマニュキュアにも好適であり、この様な製品の場合、粉体、好ましくは表面処理粉体、より好ましくはハイドロジェンメチルポリシロキサン焼付粉体乃至はジメチルポリシロキサン焼付粉体を含有させることが好ましく、これらの処理粉体の基体粉体としては、酸化亜鉛、二酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄などの酸化鉄、群青、紺青、タルク、セリサイト、マイカ、チタンマイカ、チタンセリサイト、シリカ等が好適に例示できる。
【0013】
以下に実施例を挙げて本発明について更に詳細に説明を加える。
【0014】
<製造例1>
クチナシ植物体の粉砕物500gに、1,3−ブタンジオール5Lを加え、室温で3日間抽出し、得られた抽出液を濾過して不溶物を除き、濃縮、乾固してクチナシエキス1を得た。
【実施例1】
【0015】
<実施例及び比較例>
下記に示す処方に従って本発明の爪用の化粧料であるネイルカラー1から4を作成した。即ち、表1に示す処方成分を良く混合し、ロールがけして本発明の爪用のネイルカラー1から4を得た。また、実施例1のクチナシエキスを酢酸ブチルに置換したものを比較例1として調製した。これらについて、専門パネラー5名に1週間使用してもらい、以下の基準で爪の白化状態を評価した。表3に示すように本願発明である実施例1から4は爪の白化はほとんど認められず、比較例では明らかな爪の白化が認められた。この結果から、本願発明の爪用の化粧料は顕著に爪の白化を防ぐことが出来ることが明らかとなった。
スコア1:爪の白化は認められない
スコア2:やや白化している部分が認められる
スコア3:部分的に白化が認められる
スコア4:部分的に白化している部分がはっきりと認められる
スコア5:爪全体の白化が認められる。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
【表3】

【0019】
<爪の色調変化及び脆弱性評価>
健常な爪を有する被験者5名に実施例1から4のネイルカラーと比較例を1週間使用してもらい、以下の基準で爪の色調変化及び脆弱性を評価した。表4に示すように本願発明である実施例1から4は爪の色調変化はなく、爪は塗布前と同程度の固さであったが、比較例では爪が白化、一部黄変しており、爪の一部が脆い状態であった。このことから、本願発明の爪用の化粧料は顕著に爪の変色を防ぎ、爪用化粧料使用による爪の脆弱化を防ぐことが明らかとなった。
スコア1:爪の変色は認められず、爪の状態は使用前と同等の固さを維持している
スコア2:爪の変色がほぼ認められず、爪の状態は使用前と同等の固さを維持している
スコア3:爪の変色がほぼ認められず、爪が若干脆くなっている
スコア4:爪の変色が一部認められ、爪の一部が脆くなっている
スコア5:爪の変色は明かで、爪が明らかに脆くなっている
【0020】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、爪用の化粧料などの化粧料に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アカネ科クチナシの抽出物を含有することを特徴とする、爪用の化粧料。
【請求項2】
前記抽出物が多価アルコールによる抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載の爪用の化粧料。
【請求項3】
前記抽出物の含有量が0.00001乃至0.1質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の爪用の化粧料。
【請求項4】
更に、前記爪用の化粧料がニトロセルロース及び(メタ)アクリル酸アルキルポリマーを含有することを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の爪用の化粧料。
【請求項5】
更に、カンフルおよび/又はクエン酸アセチルトリブチルを含有することを特徴とする、請求項1から4の何れか1項に記載の爪用の化粧料。


【公開番号】特開2010−173946(P2010−173946A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16126(P2009−16126)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】