説明

片面実装型の直流安定化電源

【課題】 トランスを含む当該電源を構成する部品の全てをプリント基板の片面側のみに表面実装した片面実装型の直流安定化電源の提供。
【解決手段】 当該電源を構成するトランスを含む複数の回路構成部品を接続するためのプリント配線パターンを基板の片面にのみ形成し、前記複数の回路構成部品の全てを、前記プリント配線パターンが形成された前記基板の片面側のみに表面実装する。これによると、プリント基板の片面のみに当該直流安定化電源に係る回路構成部材が集められ、もう一方の面にはそうした回路構成部材が一切配置されていない状態に本電源を構成して、当該電源で発生した熱の放熱性を確保することが簡単にできるようになる。特に、トランスにおいては専用の放熱部材を組み合わせて実装する必要がないことから、従来できなかったトランスの表面実装化を実現して小型化/薄型化された交流電源用の直流安定化電源を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交流電源を用いて入力変動や負荷変動に影響されない安定した直流電圧(又は電流)を作り出す交流電源用(交流入力用)の直流安定化電源に関する。特に、当該電源を構成するトランスを含む多数の電子部品の全てを、プリント基板の片面側のみに表面実装した片面実装型の直流安定化電源に関する。
【背景技術】
【0002】
商用交流電源(AC100V等)を用いた例えばテレビやパソコンなどの家電製品や情報装置等には、それらを制御するための例えばマイコン(IC)のような直流電源(直流電圧又は電流)により動作する電子装置などが内蔵されている。これら直流電源により動作する電子装置などは交流電源により入力される交流電圧(又は電流、以下同じ)をそのまま使用したのではうまく動作しないために、入力された交流電圧を例えば乾電池などのバッテリレベルの低電圧の直流電圧に変換することが直流安定化電源によって行われている。従来知られた交流電源用(交流入力用)の直流安定化電源は該電源を構成する複数の回路に含まれうる、例えば入力ノイズフィルタ(ラインフィルター等)、抵抗、コンデンサ、電源トランス、インダクタ等の電子部品や電子素子といった多数の回路構成部品(以下、単に部品と呼ぶ)がプリント基板の適宜の位置に配置されることによって構成されており、こうした直流安定化電源が上記電子装置などとともに家電製品や情報機器等に内蔵されている。
【0003】
ここで、従来の交流電源用の直流安定化電源を図7に示す。図7は、従来知られた交流電源用の直流安定化電源の一部を示す概念図である。図7(a)は従来の直流安定化電源を上面から見た上面図、図7(b)は従来の直流安定化電源を側面から見た側面図、図7(c)は従来の直流安定化電源を底面から見た底面図である。
【0004】
図7(c)に示すように、従来知られた交流電源用の直流安定化電源においては、プリント基板1の底面側に当該直流安定化電源を構成する複数の回路(例えば、入力ノイズフィルタ回路、整流平滑回路、DC‐DCコンバータ回路、制御回路など)を組み合わせてなる回路配線パターンCPを銅箔などをプリントすることによって形成し、そして図7(a)や図7(b)に示すように、該回路配線パターンCPの所定位置に設けられた当該プリント基板1を貫通する貫通孔H(所謂スルーホール)に対してスイッチング素子S、コンデンサC、電源トランスT、ラインフィルターLFさらには抵抗Rやインダクタ(図示せず)などの各部品を、個々の部品毎にリード線からなるピン端子Dを半田付けすることによってプリント基板1の上面側(部品実装面)に取り付けできるようになっている。なお、図7(b)から理解できるように、場合によってはプリント基板1の底面側にも部品(底面実装部品などと呼ばれる)を取り付けることもある。上記したようなピン端子Dを半田付けすることによってプリント基板1の片面のみに各部品を実装する例として、例えば特許文献1に記載されたものが挙げられる。
【0005】
最近ではテレビなどに代表されるように家電製品の小型化/薄型化が進んできており、それに伴いそれらに内蔵される直流安定化電源に対しても低電圧化及び大電流化に加えて、設置場所を選ばない小型かつ薄型の電源の要望が生じている。直流安定化電源の薄型化を実現するための1つの方法としては、プリント基板に装着する各部品自体を極力薄く構成(すなわち低背化)したものを採用することが考えられるが、仮に個々の部品を薄く低背化したとしても、プリント基板底面には図7(b)に示されるようにピン端子Dの一部がどうしても残る状態のまま各部品が取り付けられるために、このピン端子Dのリード部分が薄型化を妨げる要因となっていた。
【0006】
すなわち、図7に示すような従来知られた直流安定化電源を家電製品等の機器に実際に取り付ける際には、プリント基板1の底面に近接する機器筐体の材質が金属などの導電材であると感電や漏電等を生じさせる恐れがあり、それを防ぐための安全対策として底面側に突出した状態にあるピン端子Dの末端部分が機器筐体3と接触することのないように、プリント基板1(詳しくはピン端子Dの末端)と筐体3との間に十分な間隔を確保しなければならない、あるいはプリント基板1(詳しくはピン端子Dの末端)と筐体3との間に絶縁シート2などの絶縁物を別途追加しなければならない(図7(b)参照)。こうした絶縁性の確保は、直流安定化電源の薄型化を妨げる要因となりうる。以上のことから、上記した特許文献1や図7に示されるような、プリント基板1に設けられた貫通孔Hにピン端子D等を通して部品を取り付ける所謂ピン挿入方式を採用したままでは、直流安定化電源を小型化/薄型化するのは非常に難しいことが理解できるであろう。
【0007】
ところで、一般的にはプリント基板1に部品を取り付ける技術として、プリント基板1に貫通孔H(スルーホール)を設けることなしにプリント基板表面上に部品(ただし、表面実装技術でプリント基板1に実装可能な表面実装用の部品)を取り付けることのできる表面実装技術が知られている。そこで、直流安定化電源の小型化/薄型化を実現するための他の方法として、前記表面実装技術を採用することも考えられる。
【0008】
しかし、商用交流電源を用い入力変動や負荷変動に影響されない安定した直流電圧(又は電流)を作り出す交流電源用の直流安定化電源(所謂AC‐DCコンバータ)においては、特に安全性やノイズ面などに問題が生じうることから前記表面実装技術を採用することが従来できなかった。具体的には、表面実装タイプであって薄型の(低背化された)ラインフィルターLFが存在しない、同じく表面実装タイプであって大きな出力容量を確保することのできる薄型の(低背化された)電源トランスTがなかった、さらには直流安定化電源自体を薄型化することに伴って発熱しやすい部品それぞれに放熱用の金属(ヒートシンクなどの所謂放熱部材)等を取り付けることは難しいなどの問題があった。そうしたことから、上記表面実装技術を用いて小型化/薄型化した交流電源用の直流安定化電源が従来から望まれているにも関わらず、未だそうしたものは提案されていない。
【0009】
一方、下記特許文献2においては、回路基板の両面において電源回路の一部のモジュールを構成する回路部品をそれぞれ表面実装することが示されている。しかし、特許文献2においては、一部の電源モジュールのみを回路基板の両面においてそれぞれ表面実装しているにすぎず、トランスのような大型かつ発熱する部品を含めて電源装置の回路構成要素全体を表面実装することは示していない。このように、特にトランスのような発熱量が大きい部品は、放熱部材を組み合わせて実装する必要があるため、表面実装に適するものとは思われていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001-44620号公報
【特許文献2】特開2000-357866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、交流電源用の直流安定化電源であって、トランスを含む当該電源を構成する部品の全てをプリント基板の片面側のみに表面実装した片面実装型の直流安定化電源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る片面実装型の直流安定化電源は、交流/直流変換を行う交流電源用の直流安定化電源であって、トランスを含む複数の回路構成部品と、前記各回路構成部品を接続するためのプリント配線パターンを基板の片面にのみ形成してなるプリント基板とを具えてなり、前記複数の回路構成部品の全てを、前記プリント配線パターンが形成された前記基板の片面側のみに表面実装したことを特徴とする。
【0013】
この発明によると、当該直流安定化電源を構成するトランスを含む複数の回路構成部品を接続するためのプリント配線パターンを基板の片面にのみ形成し、前記複数の回路構成部品の全てを、前記プリント配線パターンが形成された前記基板の片面側のみに表面実装するようにした。これによると、プリント基板の片面(表面)のみに当該直流安定化電源に係る回路構成部品が集められ、もう一方の面(裏面)にはそうした回路構成部品が一切配置されていない状態に本電源を構成することができる。また、回路構成部品は表面実装技術により実装されることから、該部品と回路配線パターンとを繋ぐ端子が裏面に現れることもない。したがって、筐体との間隔を確保したり筐体との間に絶縁物を挟んだりすることなしに当該電源を直接取り付け先の家電製品や情報機器等の筐体に接触させて取り付けることができて、該取り付け先の筐体への熱伝導により当該電源で発生した熱の放熱性を確保することが簡単にできるようになる。特に、トランスにおいては専用の放熱部材を組み合わせて実装する必要がないことから、従来にないトランスの表面実装化を実現した交流電源用の直流安定化電源を提供することができることになる。
【0014】
本発明の好ましい実施例として、前記プリント基板を取り付けるための取り付け部材を更に具備し、前記トランスは専用の放熱部材を付属しておらず、前記プリント配線パターンが形成された前記基板の片面側とは反対側の前記プリント基板の面を前記取り付け部材に接して配置することで、前記トランスからの発熱を前記取り付け部材を介して放熱させることを特徴とする。このように、取り付け部材を介して放熱を実現することで、トランスに専用の放熱部材を付属させなくともその放熱性を確保することができる。これによって、トランスの表面実装化を実現し、もって交流電源用の直流安定化電源の小型化/薄型化に大きく寄与している。なお、取り付け部材を介して放熱を実現することをもってして、トランスに軽微な放熱部材を付属させて実装することを妨げるものではないのは勿論である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、回路配線パターンをプリント基板の片面にのみ形成するとともに、当該電源を構成するトランスを含む回路構成部品の全てを、前記回路配線パターンが形成された片面側のみに表面実装するようにしたことから、そうした回路構成部品が一切配置されていないもう一方の面をもってして当該電源で発生しうる熱を放熱させることが容易にできる。これにより、従来において放熱部材と組み合わせて実装する必要があったトランスのような発熱部材に関し、放熱を促す放熱部材を全く付随させることなく当該部品を表面実装することができることから、従来に比較して交流電源用の直流安定化電源を小型化/薄型化することができるようになる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係る片面実装型の直流安定化電源の全体構成の一実施例を示す概念図であって、図1(a)は上面図、図1(b)は側面図、図1(c)は底面図である。
【図2】図1に示した直流安定化電源の等価回路の一実施例を示す回路図である。
【図3】本直流安定化電源において用いられる表面実装用のラインフィルターの全体構成の一実施例を示す概念図であって、図3(a)は分解斜視図、図3(b)は側面断面図である。
【図4】整流平滑回路に含まれるスイッチング素子であるMOSトランジスタのスイッチオン/オフ時における電圧/電流変化を示す。
【図5】本直流安定化電源において用いられる表面実装用の電源トランスの全体構成の一実施例を示す概念図であって、図5(a)は分解斜視図、図5(b)は側面断面図である。
【図6】本直流安定化電源を取り付け部材に取り付けた状態を示す側面図である。
【図7】従来知られた交流電源用の直流安定化電源の一部を示す概念図であって、図7(a)は上面図、図7(b)は側面図、図7(c)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
【0018】
図1は、この発明に係る片面実装型の直流安定化電源の全体構成の一実施例を示す概念図である。図1(a)は本直流安定化電源を上面から見た上面図、図1(b)は本直流安定化電源を側面から見た側面図、図1(c)は本直流安定化電源を底面から見た底面図である。図2は、図1に示した直流安定化電源の等価回路の一実施例を示す回路図である。ただし、ここではスイッチングレギュレート方式の直流安定化電源、所謂スイッチングレギュレータを例に示している。また、図1(b)では一部の部品の図示を、図2では電源トランスTの1次巻線LP1とともに巻き回されている共振インダクタLP3(後述する図5参照)の図示をそれぞれ省略している。
【0019】
本実施例に示す直流安定化電源は、図示を省略した商用電源から供給される交流電圧(AC100V)を低電圧の直流電圧(又は電流)に変換するものであり、図1から理解できるように本電源を形成する複数の回路(入力ノイズフィルタ回路S1、整流平滑回路S2、DC‐DCコンバータ回路S3(直流変換回路)、制御回路S4など、図2参照)に含まれる1乃至複数の各回路構成部品(一例としてMOSトランジスタS、コンデンサC、電源トランスT、ラインフィルターLF、抵抗R、インダクタLなど)が全てプリント基板1の片側(表面側)のみに表面実装されている。また、図1に示すように電源トランスTなどの電気的な動作に従い発熱を伴う部品(発熱部品)については専用の放熱部材(例えばヒートシンクなど)と組み合わせられることなく、電源トランスTなどの部品単体のみがプリント基板1に表面実装される。
【0020】
当該プリント基板1は図7の従来例に示したようなプリント基板1を貫通する貫通孔H(スルーホール)を有しておらず、表面実装技術に従って各部品がプリント基板1の表面に実装されるよう構成されたものである。ただし、前記各部品は表面実装技術によりプリント基板1の表面に実装されるのに適した形状のリード端子Eを有する低背化された部品であって、図1(b)に示すように、プリント基板1の底面側にリード端子Eが現れることがないようにしてプリント基板1の表面側のみに実装されるものである。こうした表面実装部品の詳細な説明については後述する(後述する図3又は図5参照)。
【0021】
また、プリント基板1の部品装着面側(表面側)には上記各部品が実装されるだけでなく、図2に示すような本直流安定化電源を構成する複数の回路、例えば、AC電源ラインで発生しうるコモンモードノイズを除去するためのラインフィルターLFを少なくとも含んでなる入力ノイズフィルタ回路S1、入力された交流を整流して直流に変換するとともに変換後の出力を平滑にするための整流平滑回路S2、所望の大きさの直流出力を得るためのDC‐DCコンバータ回路S3(直流変換回路)、直流出力電圧を可変制御するための制御回路S4などの各回路が組み合わされてなる回路配線パターンCPが銅箔などをプリントすることによって形成されている。他方、図1(c)に示すように、プリント基板1の底面側には回路配線パターンCPが形成されない。なお、前記各回路S1〜S4を利用しての交流入力から直流出力を得るための変換動作については公知であることから、ここでの詳しい説明を省略する。
【0022】
なお、ここに示した実施例においては、整流平滑回路S2のスイッチング素子としてMOSトランジスタSにより構成されるものを示したがこれに限らず、スイッチング素子としてバイポーラトランジスタやIGBT等の他の電子素子を使用できることはいうまでもない。また、スイッチング素子としては、上記したようなトランジスタを2個以上組み合わせることによって構成するようにしてもよい。
【0023】
上述したように、本実施例に示す直流安定化電源において、プリント基板1上に表面実装される各回路S1〜S4に含まれる多数の部品は、表面実装技術でプリント基板1に実装可能な表面実装用の部品である。MOSトランジスタS,コンデンサC,抵抗R,インダクタLなどについては従来知られた表面実装用の部品を用いればよいことから、これらについての説明は省略する。他方、表面実装技術でプリント基板1に表面実装される表面実装用の部品のうち、入力ノイズフィルタ回路S1に含まれるラインフィルターLFとDC‐DCコンバータ回路S3に含まれる電源トランスTについては、従来表面実装用に適した構成のものが特には見当たらなかった。そこで、本願発明に係る直流安定化電源においては、表面実装に適した構成のラインフィルターLF及び電源トランスTを新規に採用したことから、これらについて以下説明する。
【0024】
まず、入力ノイズフィルタ回路S1に含まれる表面実装用のラインフィルターLFについて説明する。図3は、本直流安定化電源において用いられる表面実装用のラインフィルターの全体構成の一実施例を示す概念図である。図3(a)は分解斜視図、図3(b)は側面断面図を示す。
【0025】
図3(a)に示すように、表面実装用のラインフィルターLFは、絶縁材料(フェノール等)からなるボビンBと、磁性体材料(フェライト等)からなる1組のドラムコアFとで構成される。前記ボビンBは、均一な外径を有する筒状の巻芯部Baと該巻芯部Baの両端からそれぞれの巻芯部Baの径方向に突設された顎部Bbとを有する略I字形状に形成されてなる。前記巻芯部Baの外周には、例えば銅線のような導体線を三層の絶縁被覆膜により被覆してなる2つの巻線LP1(1次側),LP4(2次側)が所謂バイファイラ巻によって巻き回されている(つまり、巻芯部Baの外周に2つの巻線LP1,LP4を併設して巻き回ししている)。
【0026】
前記顎部Bb下部にはリード線からなるピン端子(図7参照)ではなく表面実装に適したリード端子Eがそれぞれ複数個植設されており(ここでは5個)、このうちのいくつかに対して前記巻芯部Baに巻き回された巻線LP1,LP4のそれぞれの端部が接続されるようになっている。ここでは2個のリード端子Eのみに巻線LP1,LP4の端部がそれぞれ接続されており、その他のリード端子Eには何も接続されないことになる。
【0027】
また、前記ボビンBは、図示のように巻芯部Baの両端に形成された前記顎部Bbの中央付近に開口部Bcが設けられ、さらにそこから前記巻芯部Baの内部に向かって空洞が形成されている。前記開口部Bc及び空洞の大きさは、少なくともドラムコアFのコア部Fa(磁芯)を嵌め込み可能な程度の大きさとなっている。
【0028】
前記ドラムコアFは磁性体材料(フェライト等)により略E字形状に形成されており、中央部に形成されるコア部Faを前記ボビンBの開口部Bcに嵌め込むことによって、2個(1対)のドラムコアFで前記ボビンBを挟むようにして取り付けできるようになっている。このように1対のドラムコアFの各コア部FaがボビンBの巻芯部Ba内部に侵入するように取り付けられることによって、それぞれのコア部Faは巻芯部Baに巻き回された2つの巻線LP1,LP4の磁芯を構成することになる。そして、1つのボビンBに1対のドラムコアFを取り付ける際に、それぞれのコア部Faとコア部Faとの間にスペーサ(図示せず)を挿入することによって、磁芯のギャップの調整つまりはインダクタンスの調整を行うことができるようになっている。
【0029】
なお、図3(b)に示すように、1つのボビンBに1対のドラムコアFを取り付けた後に、ドラムコアFの外周に沿って絶縁テープZなどの絶縁物を巻くことによって、取り付けたドラムコアFがボビンBから離れないように固定するとよいことは言うまでもない。また、巻芯部Baに巻き回された2つの巻線LP1,LP4を覆うように絶縁物を巻くことによって巻線止めしてもよい。
なお、上記したドラムコアFの形状は一例であって、これに限らない。
【0030】
ここで、ラインフィルターLFを上記のように構成し表面実装可能な部品とした場合には、従来のピン端子Dのもの(表面実装用でないもの)に比べるとノイズ特性が劣ることが実験的にわかった。具体的には、図4(b)に示すように、整流平滑回路S2に含まれるMOSトランジスタSにかかる直流電圧Vds(図2参照)の立ち上りにどうしても大きなノイズがのってしまう。すると、MOSトランジスタSのスイッチオン時に、MOSトランジスタSに流入する直流電流Id(図2参照)に矢印Yで示すような急激な電流変化が引き起こされることから、できる限り上記ノイズを除去したい。
【0031】
そこで、本発明に係る直流安定化電源においては、図2に示すように、ノイズ除去のためにコンデンサCK(所謂共振コンデンサ)をMOSトランジスタSに並列に接続し、該コンデンサCKをDC‐DCコンバータ回路S3に含まれる共振インダクタLP3(後述する)ととともに組み合わせることによって部分共振化回路を構成するようにしている。こうすると、MOSトランジスタSにかかる直流電圧Vdsの立ち上りに大きなノイズがのったとしても、前記コンデンサCKを設けていない場合には矢印Yによって示されるようにしてMOSトランジスタSのスイッチオン時に直流電流Idが急激な電流変化を示していたものが(図4(b)参照)、前記コンデンサCKを設けることによりMOSトランジスタSのスイッチオン時に前記直流電流Idが急激な変化を示すことがなくなって滑らかな変化を示すようになる(図4(a)参照)。こうすることにより、DC‐DCコンバータ回路S3に含まれる電源トランスTの1次巻線LP1への直流電流Idの供給を、急激な変化を生じさせることなく制御することができるようにしている。
【0032】
次に、DC‐DCコンバータ回路S3(直流変換回路)に含まれる表面実装用の電源トランスTについて説明する。図5は、本直流安定化電源において用いられる表面実装用の電源トランスの全体構成の一実施例を示す概念図である。図5(a)は分解斜視図、図5(b)は側面断面図を示す。
【0033】
図5に示すように、表面実装用の電源トランスTは上述した表面実装用のラインフィルターLFとほぼ同様の構成、すなわち絶縁材料(フェノール等)からなるボビンBと、磁性体材料(フェライト等)からなる1組のドラムコアFとで構成されている。繰り返しになるが簡単に説明すると、前記ボビンBは、均一な外径を有する筒状の巻芯部Baと該巻芯部Baの両端からそれぞれの巻芯部Baの径方向に突設された顎部Bbとを有する略I字形状に形成される。前記顎部Bbには表面実装に適した形状の端子ピンからなるリード端子Eが複数個植設されており(ここでは5個)、このうちのいくつかに対して前記巻芯部Baに複数の巻線層に分けてそれぞれ巻き回された複数の巻線LP1〜LP4(詳しくは後述する)の各端部が接続されるようになっている。ただし、図5(a)では説明を理解しやすくするために、最も内側(1層目)の巻線層を構成する巻線LP1のみを便宜的に示している。
【0034】
前記ボビンBは、図示のように巻芯部Ba両端に形成された前記顎部Bbの中央付近に開口部Bcが設けられ、さらにそこから前記巻芯部Baの内部に向かって空洞が形成されている。前記開口部Bc及び空洞の大きさは、少なくともドラムコアFの中央部に設けられたコア部Fa(磁芯)を嵌め込み可能な程度の大きさとなっている。他方、前記ドラムコアFは磁性体(フェライト等)材料により略E字形状に形成されており、前記コア部Faを前記開口部Bcに嵌め込むことによって、2個(1対)のドラムコアFで前記ボビンBを挟むようにして取り付けできるようになっている。すなわち、1対のドラムコアFのコア部Faは巻芯部Baに巻き回された複数の巻線LP1〜LP4の磁芯を構成する。なお、ドラムコアFのコア部Faとコア部Faとの間にスペーサ(図示せず)を挿入することによって、磁芯のギャップの調整つまりはインダクタンスの調整を行うことができるのは勿論である。
【0035】
上記した電源トランスTにおいては、図5(b)に示すように、巻芯部Baの外周に例えば銅線のような導体線を絶縁被覆膜により被覆してなる複数の巻線LP1〜LP4がそれぞれ巻回される。これら複数の巻線LP1〜LP4は、それぞれボビンBの顎部Bb間で巻芯部Baの径方向に重なる4つの巻線層に分けて巻き回された1次巻線LP1、帰還巻線LP2、部分共振用の共振インダクタLP3、2次巻線LP4である。ここでは、1次巻線LP1は最も内側(1層目)の巻線層を構成し、2次巻線LP4は内側から2番目(2層目)の巻線層を構成し、共振インダクタLP3は内側から3番目(3層目)の巻線層を構成し、帰還巻線LP2は内側から4番目(4層目)の巻線層を構成している。各巻線LP1〜LP4相互の絶縁距離は、絶縁材料からなる巻線の間に配置される層間テープMにより法規で要求される程度に確保されている。
【0036】
また、図5(b)に示すように、例えばボビンBの巻枠の両側にボビンBの成形材と同材質にて段差Nを形成するか、または絶縁性をもった絶縁テープなどを巻くことにより段差Nを設けることによって、巻線の沿面距離を確保するようにするとよい。
【0037】
ところで、電源トランスTにおいては発熱性や絶縁性を確保しなければならない点を考慮すると、本来ならば大きなボビンBを使用することが求められる。大きなボビンBを使用すれば、発熱性や絶縁性を確保することは容易である。しかし、電源トランスTを小型化/薄型化するためには、ボビンB自体を小型化/薄型化する必要がある。そこで、ボビンBを小型化/薄型化した上で発熱性や絶縁性を確保しなければならない。そこで、本電源トランスTにおいては上記したように層間テープによって絶縁性を確保することから、こうした層間テープによる絶縁性を確保しやすくするために、従来に比較して直径の細い銅線(0.12〜0.16mm)を巻線に使用している。
【0038】
このような直径の細い巻線を多数回巻き回した場合には発熱しやすくなるが、本実施例における直流安定化電源においては既に述べたように、当該電源を構成する各回路に含まれる部品の全てをプリント基板1の片面側のみに表面実装できるようにしたことから、プリント基板1の底面側を何もない状態でほぼ平らとすることができる(図1(c)参照)。そうであるならば、例えば図6に示すようにプリント基板1の底面全体を接触させるようにして当該電源を熱伝導効率のよい取り付け部材Uに取り付けて、当該電源で発生しうる熱を該取り付け部材Uによって放熱させることができることになる。したがって、電源トランスTにおいても、取り付け部材Uへの本発明に係る直流安定化電源の取り付けによりその発生しうる熱を効率よく放熱させることができるようになることから、小さいボビンBを用いて電源トランスTを小型化/薄型化したとしても、電源トランスTに専用の放熱部材を全く設けなくともその放熱性を確保することが容易にできることになる。
【0039】
なお、従来に比べて小型の簡易な放熱部材(図示せず)を電源トランスTと組み合わせて実装することにより、該放熱部材による放熱と取り付け部材Uによる放熱とによって、より効率的に電源トランスTの放熱を行うようにしてもよい。また、前記取り付け部材Uを取り付けることなく、例えばテレビやパソコンなどの家電製品や情報装置等の熱伝導効率のよい筐体3(ケース)の一面に、前記プリント基板1の底面全体を接触させるようにして当該電源を直接取り付けるようにしてもよい。
【0040】
以上説明したように、本発明に係る直流安定化電源は、上述したラインフィルターLF及び電源トランスT、その他の抵抗RやコンデンサCやインダクタLあるいはスイッチング素子S等の表面実装部品を組み合わせてなる、片面実装型の直流安定化電源として提供される。これにより、交流電源用の直流安定化電源の小型化/薄型化を図ることができるようになる。すなわち、当該直流安定化電源は、プリント基板1の底面側に上記した部品及び回路配線パターンCPが一切存在せず、また部品装着面に取り付けられた各部品のリード線の一部が残ったままの状態とはならない。したがって、該電源を取り付ける家電製品や情報装置等の筐体が金属等の導電材であっても、従来のように間隔を空けて取り付けたり、絶縁物を挟んで取り付けたりすることなく、当該電源を取り付けることが可能となり、取り付け先の家電製品や情報装置等の小型化/薄型化にも寄与する。
【0041】
また、本発明に係る直流安定化電源の発熱部品特には電源トランスに関し、電源トランスを放熱部材と組み合わせてプリント基板に実装しなくとも、取り付け部材(あるいは取り付け先の筐体の一面)によって電源トランスで発生される熱を効率的に放熱させるようにしたことによって、従来できなかった交流電源用の直流安定化電源の小型化/薄型化を実現している。すなわち、電源トランスに対して専用の放熱部材を付属させる必要が全くないということは、電源トランスの表面実装化を実現でき、このことによって交流電源用の直流安定化電源の小型化/薄型化に大きく寄与している。
【0042】
以上、図面に基づいて実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な実施形態が可能であることは言うまでもない。例えば、プリント基板1の底面には、回路形成と関係ないパターン(電気的に関係のない、例えばアースやフレームグランドパターンなどのパターンなど)が形成されていてもよい。また、プリント基板1は多層基板であってもよく、その場合にも最底面には部品及び回路形成パターンを設けないかわりに、部品を実装する表面を含む前記最底面以外の各層に回路形成パターンを設けてもよい。
なお、交流電源用の直流安定化電源は上記したようなスイッチングレギュレート方式の電源に限らず、種々の方式を用いてよいことは言うまでもない。また、交流電源用の直流安定化電源は上記したような回路構成をすべて含むものに限らない。
【符号の説明】
【0043】
1…プリント基板
2…絶縁シート
3…筐体
B…ボビン
Ba…巻芯部
Bb…顎部
Bc…開口部
C…コンデンサ
CK…共振コンデンサ
CP…回路配線パターン
D…ピン端子
E…リード端子
F…ドラムコア
Fa…コア部
H…貫通孔
L…インダクタ
LF…ラインフィルター
LP1〜LP4…巻線
M…層間テープ
N…段差
R…抵抗
S…スイッチング素子(MOSトランジスタ)
S1…入力ノイズフィルタ回路
S2…整流平滑回路
S3…DC‐DCコンバータ回路
S4…制御回路
T…電源トランス
U…取り付け部材
Z…絶縁テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流/直流変換を行う交流電源用の直流安定化電源であって、
トランスを含む複数の回路構成部品と、
前記各回路構成部品を接続するためのプリント配線パターンを基板の片面にのみ形成してなるプリント基板と
を具えてなり、
前記複数の回路構成部品の全てを、前記プリント配線パターンが形成された前記基板の片面側のみに表面実装したことを特徴とする片面実装型の直流安定化電源。
【請求項2】
前記プリント基板を取り付けるための取り付け部材を更に具備し、
前記トランスは専用の放熱部材を付属しておらず、
前記プリント配線パターンが形成された前記基板の片面側とは反対側の前記プリント基板の面を前記取り付け部材に接して配置することで、前記トランスからの発熱を前記取り付け部材を介して放熱させることを特徴とする請求項1に記載の片面実装型の直流安定化電源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−45196(P2011−45196A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191998(P2009−191998)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(504211289)株式会社エーダブリュ・ジャパン (7)
【Fターム(参考)】