説明

片面送信コイルセットのアレイを持つ視野内の磁性粒子に作用する及び/又は検出するための装置及び方法

本発明は視野内の磁性粒子に作用する及び/又は検出するための装置と方法に関する。視野を増加し、同時に撮像中の患者へのアクセスを可能にするために、装置は2つ以上の送信コイルセット200を有し、隣接コイルセットは部分的に重なり、送信コイルセットは以下を有する:低磁場強度を持つ第1のサブゾーン52と高磁場強度を持つ第2のサブゾーン54が視野28内に形成されるようにその磁場強度の空間内パターンを持つ選択磁場50を発生させるための、同心円状に配置される選択磁場コイル211,212のペア210、及び磁性粒子の磁化が局所的に変化するように駆動磁場によって視野28内の前記2つのサブゾーン52,54の空間内位置を変化させるための、駆動磁場コイル221,222;231,232の少なくとも1つのペア220,230、前記駆動磁場コイルの少なくとも1つのペア220,230は前記選択磁場コイル211,212のペア210に平行に配置され、2つの隣接コイルループによって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は視野内の磁性粒子に作用する及び/又は検出するための装置と方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は前記方法をコンピュータ上で実施するための、及びかかる装置を制御するためのコンピュータプログラム、並びにかかる装置における使用のための送信コイルセットにも関する。
【0003】
本発明は特に磁性粒子イメージング(MPI)の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
磁場は幅広い用途において重要な役割を果たす。これは例えば電気モータ、ダイナモ、及び無線若しくはテレビの信号伝送のために使用される。さらに、磁場は医療診断のために使用され、最も顕著な例は磁気共鳴イメージング(MRI)である。これらの用途の各々において、磁場は特定の要求を満たすように調整される。例えば、MRIにおいて、空間的に一様な磁場と線形増加する傾斜磁場という、2つの磁場形状の形成が必要とされる。これらの特殊磁場は電磁コイルによって生成されることができるが、コイル形状と印加電流が磁場特性を決定する。これらの単純磁場形状に対して、最適コイルトポロジが周知である。均一磁場は、共通軸に沿って対称的に配置され、コイル半径に等しい距離Rだけ離れている2つの同一コイルからなるヘルムホルツコイルペアによって生成される。各コイルは同じ方向に負っている等しい電流を伝導する。同様に、傾斜磁場はマクスウェルコイルペアによって生成され、これは同じトポロジを持つが反対方向に負っている電流とより大きなコイル距離R√3を持つ。
【0005】
磁性粒子イメージング(MPI)は新たな医用画像診断法である。MPIの最初のバージョンは二次元であり、そこで二次元画像を生じた。将来のバージョンは三次元(3D)になる。時間依存性、すなわち4Dの非静止対象の画像は、単一3D画像のデータ収集中に対象が大きく変化しないという条件で、3D画像の時系列を結合して動画にすることによって作られる。
【0006】
MPIはコンピュータ断層撮影(CT)若しくは磁気共鳴イメージング(MRI)のような再構成的画像法である。従って、対象の関心ボリュームのMP画像は2ステップで生成される。第1のステップはデータ収集と呼ばれ、MPIスキャナを用いて実行される。MPIスキャナは、スキャナのアイソセンタにおいて単一無磁場点(field free point:FFP)を持つ、"選択磁場"と呼ばれる静的傾斜磁場を生成する手段を持つ。加えて、スキャナは時間依存性の空間的にほぼ一様な磁場を生成する手段を持つ。実際、この磁場は"駆動磁場"と呼ばれる小さな振幅で急速に変化する磁場と、"集束磁場"と呼ばれる大きな振幅でゆっくりと変化する磁場を重ねることによって得られる。時間依存性の駆動磁場と集束磁場を静的選択磁場に加えることによって、FFPはアイソセンタ周囲のスキャンボリューム全体にわたって所定FFP軌道に沿って動かされ得る。スキャナはまた1つ以上の、例えば3つの受信コイルの配列も持ち、これらのコイルに誘導される電圧を記録することができる。データ収集のために、撮像対象は、対象の関心ボリュームがスキャンボリュームのサブセットであるスキャナの視野によって囲まれるように、スキャナの中に配置される。
【0007】
対象は磁性ナノ粒子を含まなければならない。対象が動物若しくは患者である場合、こうした粒子を含む造影剤がスキャン前に動物若しくは患者に投与される。データ収集中、MPIスキャナは、スキャンボリューム若しくは少なくとも視野を描く、意図的に選ばれた軌道に沿ってFFPを操縦する。対象内の磁性ナノ粒子は変化する磁場を経験し、その磁化を変化させることによって反応する。ナノ粒子の変化する磁化は受信コイルの各々において時間依存電圧を誘導する。この電圧は受信コイルに付随する受信器においてサンプリングされる。受信器によって出力されるサンプルは記録されて収集データを構成する。データ収集の詳細を制御するパラメータはスキャンプロトコルを構成する。
【0008】
画像再構成と呼ばれる画像生成の第2のステップにおいて、第1のステップにおいて収集されたデータから画像が計算される、すなわち再構成される。画像は視野内の磁性ナノ粒子の位置依存濃度へのサンプリングした近似をあらわすデータの離散3Dアレイである。再構成は一般に適切なコンピュータプログラムを実行するコンピュータによって実行される。コンピュータとコンピュータプログラムは再構成アルゴリズムを実現する。再構成アルゴリズムはデータ収集の数学的モデルに基づく。あらゆる再構成画像法と同様に、このモデルは収集データに作用する積分作用素であり、再構成アルゴリズムは可能な限りモデルの動作を取り消そうとする。
【0009】
かかるMPI装置と方法は、任意の検査対象、例えば人体を非破壊的に、いかなる損傷も与えることなく、高空間分解能で、検査対象の表面の近くでも遠くでも検査するために使用されることができるという利点を持つ。かかる装置と方法はDE 101 51 778 A1及びGleich,B.and Weizenecker,J.(2005),"Tomographic imaging using the nonlinear response of magnetic particles"in nature,vol.435,pp.1214‐1217に最初に記載され、一般に知られている。その文献に記載の磁性粒子イメージング(MPI)のための装置と方法は小磁性粒子の非線形磁化曲線を利用する。
【0010】
関心対象が円筒スキャナの中心に位置する上記の従来のコイル設定の他に、いわゆる片面コイル配置が、Sattel T F,Knopp T,Biederer S,Gleich B,Weizenecker J,Borgert J,Buzug T M(2009)"Single‐Sided Device for Magnetic Particle Imaging",Journal of Physics D:Applied Physics,42,2:5の論文で発表されている。かかる配置において、これは片面ベースコイルセットとも呼ばれ、対象はスキャナ設定の前に位置し、従ってその全体のサイズは問題にならない。異なるスキャナ設計が異なる用途を目的とするが、今までのところ3D片面スキャナの主な欠点は比較的小さな視野のイメージングしかできないことである。実際、視野は送信コイルの寸法と受信コイルの感度によって全3方向に制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、好適には全次元において増加した視野と、視野の境界において向上した画質を持ち、従って既知の装置と方法よりも、特に既知の片面コイル配置よりも大きな領域のイメージングを可能にする、視野内の磁性粒子に作用する及び/又は検出するための装置と方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、かかる方法をコンピュータ上で実施するため、及びかかる装置を制御するためのコンピュータプログラム、並びにかかる装置における使用のための送信コイルセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様において、視野内の磁性粒子に作用する及び/又は検出するための装置が提案され、該装置は以下を有する:
i)隣接コイルセットが部分的に重なっている、2つ以上の送信コイルセット。送信コイルセットは、
‐低磁場強度を持つ第1のサブゾーンと高磁場強度を持つ第2のサブゾーンが視野内に形成されるように、その磁場強度の空間内パターンを持つ選択磁場を発生させるための、同心円状に配置された選択磁場コイルの1つのペアと、
‐磁性粒子の磁化が局所的に変化するように駆動磁場を用いて視野内の2つのサブゾーンの空間内位置を変化させるための駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアとを有し、前記駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアは前記選択磁場コイルのペアに平行に配置され、2つの隣接コイルループによって形成される。
ii)前記コイルによって所望磁場を発生させるために前記選択磁場コイルと前記駆動磁場コイルへ供給するための電流信号を発生させるための発生器手段。
iii)前記選択磁場コイルのペアの2つの選択磁場コイルへ供給するための反対方向の直流電流と、前記駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアの2つの駆動磁場コイルへ供給するための反対方向の交流電流を発生させるよう、前記発生器手段を制御するための制御手段。
【0014】
本発明のさらなる態様において、対応する方法は前記方法を実施するためのコンピュータプログラムとしても提案される。
【0015】
本発明のなおさらなる態様において、対応する送信コイルセットがかかる装置における使用のために提供される。
【0016】
本発明の好適な実施形態は従属請求項において定義される。請求される方法、請求される送信コイルセット、及び請求されるコンピュータプログラムは、請求される装置及び従属請求項において定義されるものと同様の及び/又は同一の好適な実施形態を持つことが理解されるものとする。
【0017】
本発明はSattelらの上記論文で記載のMPIのための単一送信コイルセットを有する片面コイル配置を拡張するというアイデアに基づく。本発明によれば、スキャナ装置の前に軸方向スキャナ軸zに垂直な方向の磁場を生成することができる追加送信コイルセットが補完される。単一FFP、すなわち低磁場強度を持つ第1のサブゾーンは、送信コイルセットのコイルに適切な電流を印加することによって多次元軌道上の任意の位置に動かされることができる。
【0018】
本発明のさらなる態様は、2つ以上の送信コイルセットが重なって結合することである。そのようにして、FFPは重なっている送信コイルセットの数にしか制限されない、任意に大きな視野にわたって途切れなく動かされることができる。
【0019】
従って提案される発明は以下の特徴を提供する:
‐水平方向、例えば患者台と平行に任意の次元の拡大視野をもたらす。
‐隣接送信コイルセット間の相乗効果のために高画質をもたらす。
‐大きな軸方向浸入深さを得る。
‐単一送信コイルセットの電力消費が削減され得る。
‐マルチ無磁場点処理(mFFP)が可能。
‐高速並列画像再構成を可能にする。
‐大きな視野にも小さなSAR(比吸収率)を提供する
‐大規模カテーテルインターベンションを可能にする。
【0020】
所望の磁場を発生させるために、適切な電流が送信コイルセットのコイルに供給される。前記コイルは制御手段の制御下で適切な発生器手段によって生成される。特に、1つの送信コイルセットを見ると、一般に均一磁場である選択磁場は、1つのペアの2つの選択磁場コイルに反対方向の直流電流を供給することによって生成される。所望の方向に駆動磁場を発生させるために、反対方向の交流電流が送信コイルセットの駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアの2つの駆動磁場コイルに供給される。従って、コイル軸に垂直な駆動磁場を発生させるために、Sattelらの上記論文に記載の片面コイル配置に反して、前記駆動磁場を発生させるための個別の駆動磁場コイルが使用され、すなわち選択磁場コイルはこの目的のために使用されない。さらに、かかる駆動磁場コイルのペアは2つの隣接コイルループによって形成され、反対方向の交流電流が前記コイルループに供給されるとき、両ループによって生成される磁場が少なくとも中心領域において、すなわち前記コイルループの2つの隣接する分岐が互いに直接隣同士に位置する場所において合計するようになっている。
【0021】
好適な実施形態において駆動磁場コイルの2つのペアが送信コイルセット(好適には各送信コイルセット)に設けられ、前記駆動磁場コイルの2つのペアは互いに、及び前記選択磁場コイルのペアに平行に配置され、0°乃至180°の範囲の回転角で互いに対して回転される。これはコイル軸に垂直な2次元におけるFFPの運動を可能にする。従って、提案される装置がイメージングのために使用される場合、スライス画像が取得されることができる。加えて撮像対象が前記スライスの面を通して動かされる場合、三次元イメージングが可能である。
【0022】
さらに、一実施形態において前記制御手段は、反対方向の直流電流に加えて前記選択磁場コイルのペアの2つの選択磁場コイルへ供給するための反対方向の交流電流を発生させるように前記発生器手段を制御するのに適している。このように選択磁場コイルはさらに駆動磁場コイルとして使用され、コイル軸に沿ったFFPの運動を可能にする。送信コイルセットが各々駆動磁場コイルの2つのペアを有する場合、三次元におけるFFPの運動が可能であり、例えば三次元イメージングを可能にする。送信コイルセットが各々駆動磁場コイルの単一のペアのみを有する場合、二次元におけるFFPの運動が可能である(コイル軸を通る面内)。しかしながら、またこのように、FFPが動かされることができる面を通って撮像対象が動かされる場合、三次元イメージングが可能である。
【0023】
上述の通り、駆動磁場コイルのペアは互いに重なり合って位置しているが、0°乃至180°の範囲の回転角を介して互いに対して回転される。しかしながら好適な回転角は75°乃至105°の範囲にある。駆動磁場を発生させるための最適効率は回転角が(正確に若しくはおおよそ)90°である場合に得られる。
【0024】
一般に、各々若しくは全てのペアの駆動磁場コイルは様々なコイルループによって形成され得る。しかしながら、得られる駆動磁場は、本発明の一実施形態において好まれる通り、全駆動磁場コイルが同一コイルループによって形成される場合によりよく計算され、予め決定されることができる。
【0025】
駆動磁場コイルの有利なレイアウトはD型若しくは長方形コイルループであり、前記ループの2つの線形分岐が互いに直接隣接している。しかしながら、所望方向に所望強度で駆動磁場を発生させることができる限りコイルの他のレイアウトもまた使用されることができる。
【0026】
さらなる実施形態によれば、駆動磁場コイルの1つのペアの2つのコイルループは、前記選択磁場コイルが同心円状に配置されるコイル軸を通る対称面に対して対称的に配置される。これは特にさらなる実施形態に従って提案される通り、送信コイルセットの選択磁場コイルの1つのペアと駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアが同一の外形寸法を持ち、互いに重なり合って配置される円盤状である場合、送信コイルセットの対称でコンパクトなレイアウトをもたらす。これは送信コイルセットの配置、特に相互に重なる複数の送信コイルセットが、実質的にコイル面内に、例えば好適な実施形態で提案される通り、患者が配置されることができる患者台の表面に平行な面内に配置されることを可能にする。例えば複数の送信コイルセットは患者台自体に組み込まれてもよく、これは医療スタッフが、同時に患者の所望の関心領域から画像を生成しながら患者台に横たわっている患者に自由にアクセスすることを可能にする。
【0027】
有利な実施形態において、装置はさらに以下を有する。
iv)検出信号を取得するための少なくとも1つの受信コイルを有する受信手段、該検出信号は視野内の磁化に依存し、該磁化は第1及び第2のサブゾーンの空間内位置の変化によって影響される。
v)前記検出信号を処理するため、特に前記検出信号から画像を再構成するため、及び/又は視野内で、特に視野内に置かれた対象内で、前記磁性粒子を位置特定するための、処理手段。
【0028】
一般に本発明にかかる装置と方法により磁性粒子は影響を受け、例えば患者の身体を通って所望の位置に動かされ、例えばそこに任意の薬剤を沈殿させたり、又は医療機器をそこへ移動させたりすることができるが、別の主要な応用分野はイメージング分野であり、その目的のためにこの好適な実施形態に従って受信手段と処理手段が提供される。検出信号を取得するための少なくとも1つの受信コイルは個別受信コイル(若しくは受信コイルのセット)であり得るが、送信コイルセットに組み込まれてもよい。例えば、各送信コイルセットはさらに単一受信コイルを有し得る。代替的に、送信コイル、すなわち送信コイルセットの選択磁場コイル及び/又は駆動磁場コイルが受信コイルとして使用されることができる。
【0029】
より大きな視野において有効であるために、装置は少ない数の送信コイルセットを有するだけでなく、好適には複数の送信コイルセットを有し、これらは等距離間隔であり、実質的に平面若しくは曲面内に配置される。上述の通り、かかる平面は患者台の表面に平行な面であり得る。しかしながら、送信コイルセットは1つ以上の平面若しくは曲面にも配置され得、例えば患者の関心領域を部分的に囲むが、従来のMPI装置の場合と同様に患者を完全には囲まない。
【0030】
別の好適な実施形態によれば、制御手段は、第1の送信コイルセットから第2の送信コイルセットへの第1のサブゾーンの移動のために、第1のサブゾーンが第1の送信コイルセットの視野の境界へ追いやられ、第1の送信コイルセットの選択磁場が減少し、第2の送信コイルセットの選択磁場が増加するように、送信コイルセットのコイルへ供給するための電流を発生させるように前記発生器手段を制御するのに適している。これは重なる送信コイルセットが結合され、FFP(すなわち第1のサブゾーン)が任意に大きな視野にわたって途切れなく動かされることができ、この運動は重なる送信コイルセットの数によってのみ制限されるという利点をもたらす。
【0031】
送信コイルセットが独立単位とみなされた場合、各送信コイルセットは隣接送信コイルセットのFFPを妨げ得る。従って、この好適な実施形態において、正確な"ハンドシェイキング"が提供される。特に、送信コイルセットがそのFFPをその視野の境界へ追いやる場合、安定なFFP品質が得られることが提供される。同時に、隣接送信コイルセットの傾斜磁場はFFPを受け取るために、すなわちFFPを次の送信コイルセットへ運ぶために増加している。同時に、第1の送信コイルセットはFFPを隣接送信コイルセットへ引き渡すためにその傾斜磁場(すなわちその選択磁場)を減少させる。隣接送信コイルセットの同時の増加及び減少プロセスは、FFP勾配のシフト不変品質を保証するように注意深く操縦される。従って送信コイルセットの全アレイにわたるFFPの途切れのない動きがこの実施形態で実現されることができる。
【0032】
上述の通り、単一FFPが送信コイルセットのアレイ上で動かされることができるだけでなく、別の実施形態に従って提案される通り、制御手段が適切な方法で複数の送信コイルセットへ供給するための電流を発生させるように発生器手段を制御するのに適している場合、2つ以上のFFPが生成され、同時に動かされることができる。一般に、各送信コイルセットは独自のFFPを発生させることができ、このように全FFPを同じ方向に同じ速度で同時に動かすことが可能であり得る。こうした2つ以上のFFPを同時に使用する実施形態は、データ収集時間が短縮されることができ、及び/又はより大きな視野が同時に及び/又はより短時間に撮像されることができるという利点をもたらす。
【0033】
本発明のこれらの及び他の態様は以下に記載の実施形態から明らかとなり、それを参照して解明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】MPI装置の第1の実施形態を示す。
【図2】図1に図示の装置によって生成される選択磁場パターンの一実施例を示す。
【図3】MPI装置の第2の実施形態を示す。
【図4】本発明にかかる装置で使用される送信コイルセットの第1の実施形態の透視図と底面図を示す。
【図5】かかる送信コイルセットの様々なコイル上の上面図を示す。
【図6】本発明にかかる駆動コイルのペアの別の実施形態を示す。
【図7】本発明にかかるMPI装置で使用される複数の重なる送信コイルセットのアレイを示す。
【図8】本発明にかかる2つの隣接する重なる送信コイルセット間のFFPの引き渡しを図示する。
【図9】本発明にかかるMPI装置の一実施形態の側面図を示す。
【図10】本発明にかかるMPI装置のブロック図を示す。
【図11】本発明にかかる装置で使用される送信コイルセットの第2の実施形態の透視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の詳細を説明する前に、磁性粒子イメージングの基礎が図1乃至4を参照して詳細に説明される。特に、医療診断用MPIスキャナの2つの実施形態が記載される。データ収集の略式の記述も与えられる。2つの実施形態の類似点と相違点が指摘される。
【0036】
図1に示すMPIスキャナの第1の実施形態10は同軸平行円形コイルの3つの目立つペア12,14,16を持ち、各ペアは図1に図示の通り配置されている。これらのコイルペア12,14,16は選択磁場だけでなく駆動磁場と集束磁場を発生させるはたらきをする。3つのコイルペア12,14,16の軸18,20,22は相互に直交し、MPIスキャナ10のアイソセンタ24と指定される単一点で交わる。加えて、これらの軸18,20,22はアイソセンタ24に付随する3D直交x‐y‐z座標系の軸ともなる。x軸とz軸が水平になるように垂直軸20がy軸に指定される。コイルペア12,14,16はそれらの軸の名前がつけられる。例えば、yコイルペア14はスキャナの上部と底部にあるコイルによって形成される。さらに、正(負)のy座標を持つコイルはyコイル(yコイル)と呼ばれ、残りのコイルについても同様である。より好都合なときは、座標軸とコイルはx,y,zでなくx,x,xと標識されるものとする。
【0037】
スキャナ10はこれらのコイル12,14,16の各々を通る所定の時間依存電流を両方向性で向けるように設定されることができる。電流がこのコイル軸に沿って見た時にコイルの周りを時計回りに流れる場合は正とみなされ、その逆は負とみなされる。静的選択磁場を発生させるために、一定正電流Iがzコイルを通って流され、電流−Iがzコイルを通って流される。zコイルペア16は逆平行円形コイルペアとしてはたらく。
【0038】
一般に傾斜磁場である選択磁場が図2に力線50であらわされる。これは選択磁場を発生させるzコイルペア16の(例えば水平)z軸22の方向にほぼ一定の傾斜を持ち、この軸22上のアイソセンタ24でゼロ値に達する。この無磁場点(図2には個別に示していない)から出発して、選択磁場50の磁場強度は無磁場点からの距離が増加するにつれて全3空間方向に増加する。アイソセンタ24周辺の破線で示される第1のサブゾーンすなわち領域52において、磁場強度は小さいのでその第1のサブゾーン52に存在する粒子の磁化は飽和せず、第2のサブゾーン54(領域52の外側)に存在する粒子の磁化は飽和状態にある。第2のサブゾーン54(すなわち第1のサブゾーン52の外側のスキャナの視野28の残りの部分)において選択磁場の磁場強度は磁性粒子を飽和状態に維持するのに十分なほど強い。
【0039】
視野28内の2つのサブゾーン52,54の位置を変えることによって、視野28内の(全体の)磁化が変化する。視野28内の磁化若しくは磁化によって影響される物理的パラメータを決定することによって、視野28内の磁性粒子の空間分布についての情報が得られる。視野28内の2つのサブゾーン52,54の相対空間位置を変化させるために、さらなる磁場、すなわち駆動磁場と、該当する場合は集束磁場が選択磁場50に重ねられる。
【0040】
駆動磁場を発生させるために、時間依存電流Iが両xコイル12を、時間依存電流Iが両yコイル14を、時間依存電流Iが両zコイル16を通って流される。従って、3つのコイルペアの各々は平行円形コイルペアとしてはたらく。同様に、集束磁場を発生させるために、時間依存電流Iが両xコイル12を、電流Iが両yコイル14を、電流Iが両zコイル16を通って流される。
【0041】
zコイルペア16は特殊であることが留意されるべきである。これはその相応の駆動磁場と集束磁場だけでなく、選択磁場も発生させる。z±コイルを通って流れる電流はI+I±Iである。残り2つのコイルペア12,14を通って流れる電流はI+I,k=1,2である。その形状と対称性のために、3つのコイルペア12,14,16はよく分離される。これは望ましい。
【0042】
逆平行円形コイルペアによって生成されるので、選択磁場はz軸に対して回転対称であり、そのz成分はアイソセンタ24周辺のかなりのボリュームにおいてzにおいてほぼ線形であり、x及びyから独立している。特に、選択磁場は単一無磁場点(FFP)をアイソセンタにおいて持つ。対照的に、平行円形コイルペアによって生成される駆動磁場と集束磁場への寄与はアイソセンタ24周辺のかなりのボリュームにおいて空間的にほぼ均一であり、各コイルペアの軸に平行である。全部で3つの平行円形コイルペアによって一緒に生成される駆動磁場と集束磁場は空間的にほぼ均一であり、ある最大強度まで任意の方向と強度を与えられることができる。駆動磁場と集束磁場は時間依存性でもある。集束磁場と駆動磁場の違いは、集束磁場がゆっくりと時間変動し大きな振幅を持つ一方、駆動磁場は速く変動し小さな振幅を持つことである。これらの磁場を別に扱う物理学的及び生物医学的理由がある。大きな振幅を持つ高速変動磁場は発生させるのが難しく、患者にとって有害であり得る。
【0043】
MPIスキャナの実施形態10は、先と同様x,y,z軸に沿って配向した平行円形コイルの少なくとも1つの追加ペア、好適には3つの追加ペアを持つ。これらのコイルペアは図1に示されていないが、受信コイルとしてはたらく。駆動磁場と集束磁場のためのコイルペア12,14,16と同様、これら受信コイルペアの1つを通って流れる一定電流によって生成される磁場は視野内で空間的にほぼ均一であり、各コイルペアの軸に平行である。受信コイルはよく分離されると考えられる。受信コイルに誘導される時間依存電圧はこのコイルに付随する受信器によって増幅されサンプリングされる。より正確には、この信号の広大なダイナミックレンジに対処するために、受信器は受信信号と基準信号の差をサンプリングする。受信器の伝達関数はDCから予想信号レベルがノイズレベルを下回る点に至るまで非ゼロである。
【0044】
図1に示すMPIスキャナの実施形態10はz軸22に沿って、すなわち選択磁場の軸に沿って円筒穴26を持つ。全コイルはこの穴26の外側に置かれる。データ収集のために、撮像される患者(若しくは対象)は、患者の関心ボリューム‐撮像される患者(若しくは対象)のボリューム‐が、スキャナの視野28‐その内容をスキャナが撮像することができるスキャナのボリューム‐によって囲まれるように、穴26の中に置かれる。患者(若しくは対象)は、例えば患者台の上に置かれる。視野28は、立方体、球、若しくは円筒など、穴26の内部の幾何学的に単純なアイソセントリックボリュームである。立方体視野28が図1に図示される。
【0045】
第1のサブゾーン52のサイズは選択磁場の傾斜の強度に、他方で飽和のために必要な磁場の磁場強度に依存し、そしてこれは磁性粒子に依存する。80A/mの磁場強度と、50x10A/mに達する選択磁場の磁場強度の(所与の空間方向における)傾斜における典型的な磁性粒子の十分な飽和のために、粒子の磁化が飽和していない第1のサブゾーン52は(所与の空間方向において)約1mmの寸法を持つ。
【0046】
患者の関心ボリュームは磁性ナノ粒子を含むと考えられる。例えば腫瘍の画像診断の前に、例えば患者(対象)の身体に注射される、若しくは他の方法で、例えば経口で患者に投与される磁性粒子を有する液体を用いて、磁性粒子が関心ボリュームに提供される。
【0047】
磁性粒子の一実施形態は、例えば5nmの厚みを持ち例えば鉄‐ニッケル合金(例えばパーマロイ)からなる軟磁性層を備える、例えばガラスの球面基板などを有する。この層は例えば、化学的に及び/又は物理的に侵食的な環境、例えば酸などに対して粒子を保護するコーティング層を用いて被覆され得る。かかる粒子の磁化の飽和のために必要な選択磁場50の磁場強度は、例えば粒子の直径、磁性層のための使用磁性材料、及び他のパラメータなど、様々なパラメータに依存する。
【0048】
例えば10μmの直径の場合、おおよそ800A/mの磁場(おおよそ1mTの流束密度に対応)が必要とされ、一方100μmの直径の場合、80A/mの磁場で十分である。より低い飽和磁化を持つ材料のコーティングが選ばれるとき、又は層の厚みが削減されるときはさらに小さな値が得られる。一般に使用されることができる磁性粒子は商標名Resovistで市場に出ている。
【0049】
一般に使用可能な粒子と粒子成分のさらなる詳細については、EP1304542,WO2004/091386,WO2004/091390,WO2004/091394,WO2004/091395,WO2004/091396,WO2004/091397,WO2004/091398,WO2004/091408の対応部分が本明細書で参照され、これらは引用により本明細書に組み込まれる。これらの文献において一般にMPI法のさらなる詳細も見られる。
【0050】
データ収集中、x,y,zコイルペア12,14,16は位置依存及び時間依存磁場、印加磁場を発生させる。これは適切な電流をコイルに通過させることによって得られる。実際には、駆動磁場と集束磁場が選択磁場を押しやって、FFPがスキャンボリューム‐視野の上位集合をたどる予め選択されたFFP軌道に沿って動くようになっている。印加磁場は患者内の磁性ナノ粒子を配向させる。印加磁場が変化すると、得られる磁化も変化するが、これは印加磁場に非線形に反応する。変化する印加磁場と変化する磁化の和がx軸に沿って受信コイルペアの端子にかかる時間依存電圧Vを誘導する。付随受信器がこの電圧を信号Sに変換し、これをさらに処理する。
【0051】
図1に示す第1の実施形態10のように、図3に示すMPIスキャナの第2の実施形態30は3つの円形で相互に直交するコイルペア32,34,36を持つが、これらのコイルペア32,34,36は選択磁場と集束磁場のみを発生させる。先と同様に選択磁場を発生させるzコイル36は強磁性材料37で充填される。この実施形態30のz軸42は垂直配向であるが、x軸とy軸38,40は水平配向である。スキャナの穴46はx軸38に平行であり、従って選択磁場の軸42に垂直である。駆動磁場はx軸38に沿ったソレノイド(不図示)と2つの残りの軸40,42に沿ったサドルコイルのペア(不図示)によって生成される。これらのコイルは穴を形成する管の周りに巻きつけられる。駆動磁場コイルは受信コイルとしてもはたらく。
【0052】
かかる一実施形態の典型的なパラメータをいくつか与えるには:選択磁場のz傾斜GはG/μ=2.5T/mの強度を持ち、μは真空透磁率である。駆動磁場の時間周波数スペクトルは約25kHz(おおよそ100kHzまで)の狭帯域に集中する。受信信号の有用な周波数スペクトルは50kHzから1MHz(最終的におおよそ10MHzまで)にある。穴は120mmの直径を持つ。穴46に収まる最大立方体28は120mm/√2≒84mmのエッジ長を持つ。
【0053】
上記実施形態に示す通り、様々な磁場が同じコイルペアのコイルによって、及び適切に生成された電流をこれらのコイルに与えることによって、生成されることができる。しかしながら、特に高い信号対ノイズ比を持つ信号解釈の目的のためには、時間的に一定の選択磁場と時間的に変動する駆動磁場及び集束磁場が個別コイルペアによって生成されるときが有利であり得る。一般に、ヘルムホルツ型のコイルペアがこうしたコイルのために使用されることができ、これは例えば、高周波(RF)コイルペアが視野の上下に位置し、前記RFコイルペアが時間的に変動する磁場を生成することができる、オープンマグネットを持つ磁気共鳴装置(オープンMRI)の分野から一般に知られている。従って、かかるコイルの構成は本明細書でさらに詳述される必要がない。
【0054】
選択磁場の生成についての代替的な実施形態において、永久磁石(不図示)が使用されることができる。かかる(対向する)永久磁石(不図示)の2極間の空間において、図2に示したものと同様の、つまり反対極が同じ極性を持つときに、磁場が形成される。別の代替的な実施形態において、選択磁場は少なくとも1つの永久磁石と少なくとも1つのコイルの混合によって生成されることができる。
【0055】
以下、本発明の詳細が説明される。
【0056】
本発明に従って提案される片面送信コイルセット200の一実施形態が図4及び5に示される。図4Aは透視図を示し、図4Bは完全な送信コイルセット200の側面を示す。図5Aから5Cは別々に上から見た送信コイルセット200の様々なコイルを示す。
【0057】
この実施形態において、送信コイルセット200は、図5Aに示す通り、選択磁場を発生させるための共通コイル軸240(z方向に配置)の周りに配置されるリング形状を持つ同心円状に配置された選択磁場コイル211,212のペア210を有する。前記選択磁場コイル211,212は、選択磁場が(実質的に)無磁場点を視野内に持つので、所望の傾斜磁場を発生させるように反対方向のDC電流I11,I12を供給される。
【0058】
さらに、送信コイルセット200は、駆動磁場を発生させるための、図5B及び5Cに別々に示される駆動磁場コイル221,222及び231,232の2つのペア220,230を有する。前記駆動磁場コイル221,222及び231,232のペア220,230は互いに対して、及び前記選択磁場コイル211,212のペア210に対して平行に配置され、一般に0°乃至180°の範囲であり得る、この実施形態において好適には90°である、回転角αだけ互いに対して回転される。
【0059】
図5B及び5Cに示す通り、前記駆動磁場コイル221,222及び231,232のペア220,230の各々は2つの隣接コイルループによって形成され、これはこの実施形態においては2つのD型コイルの形をとり、ペアの各コイルループの1分岐、例えばコイル221の分岐223とコイル22の分岐224は直接互いに隣接して配置される。
【0060】
特に垂直方向及びコイル軸(=z軸)に垂直な方向における、すなわちx方向とy方向における駆動磁場の生成のために、各々反対方向のAC電流I21,I22及びI31,I32が前記駆動磁場コイルのペア220,230の2つの駆動磁場コイル221,222及び231,232に供給される。これは、例えば2つの駆動磁場コイル231,232を通る駆動電流I31,I32によって生成される磁場Hを部分的に示す図5Cに示す通り、1つのペアの2つの駆動磁場コイルにおいて生成される磁場を一緒に合計する効果を持つ。
【0061】
駆動磁場コイルに対する代替的な形状が図6に示され、ペア250の2つの長方形駆動磁場コイル251,252を示す。勿論、視野を通してFFPを動かすために所望の駆動磁場が生成されることができる限り、駆動磁場コイルの他の形状も可能である。
【0062】
図4乃至6に描いた実施形態に示す通り、駆動磁場コイルの2つのペア220,230(250)は好適には同一コイルループによって形成される。しかしながら一般に、異なるコイルループもまた使用されることができるが、これは発生した磁場を計算すること、及び所望の軌道に沿ってFFPを動かすために所望の駆動磁場を発生させるために正確な駆動磁場電流をコイルに適切に供給することをより困難にする。
【0063】
さらに、駆動磁場コイルのペア220,230(250)の2つのコイルループはコイル軸240を通過する対称面に対して対称的に配置される。例えば、図5Bに示す駆動磁場コイル221,222の場合、対称面はx軸とz軸によってわたる面である。さらに、選択磁場コイル211,212のペア210と、送信コイルセット200の駆動磁場コイル221,222及び231,232の2つのペア220,230は実質的に同一の外形寸法を持ち、特に図4Aと4Bに示す通り互いに重なり合って配置される円盤状であり、コンパクトで空間を節約する配置をもたらす。
【0064】
本発明によれば単一送信コイルセット200がMPI装置に設けられるのではなく、少なくとも2つの、好適には複数の送信コイルセット200が設けられ、隣接送信コイルセットは部分的に互いに重なっている。かかる複数の連絡送信コイルセット200のアレイ300(概略的にしか示されない)は図7に上面図として例示される。送信コイルセット200間の距離、すなわち実際のコイル重複は送信コイルセット200の特定の設計に依存する。
【0065】
1つの送信コイルセット200だけに対する視野(FOV)は比較的小さい。しかしながら、磁場の線形重ね合わせが無磁場点(FFP)の動作範囲を拡大するために利用されることができる。図8Aは、図8Cに示す2つの個別(すなわち重ならない)送信コイルセット200a,200bによって生成される2つの分離したFOVを示す。しかしながら本発明によれば、2つの隣接送信コイルセット200c,200dが図8Dに示す通り重なっており、すなわち2つの隣接送信コイルセット200c,200d間の距離は図8Cに示す配置と比較して減少する。このように、図8Bに示す通り、左側のFOVの右の境界におけるFFPは右側のFOVの左の境界におけるFFPと融合され得る。言い換えれば、このようにして無磁場点がx方向に連続的に動かされることができるよう、送信コイルセット200c,200dはそれらの間の連絡が可能であるように結合される。
【0066】
隣接送信コイルセット間の結合はさらに以下の通り実現される。第1の送信コイルセット200cが(その駆動磁場コイルによって生成される適切な駆動磁場を用いて)そのFFPを対応FOVの境界へ追いやる間、隣接送信コイルセット200dの傾斜磁場(選択磁場)は、ハンドシェイキング、すなわちFFPを次の領域へ運ぶのに備えて増加されている。同時に、第1の送信コイルセット200cはFFPを離すためにその傾斜磁場を減少させている。このように、無磁場点は図7に示す通り結合した送信コイルセット200の磁場300にわたってx方向及びy方向において途切れなく伝えられることができる。特定の距離において、例えば各第2の若しくは第3の送信コイルセットのFFPが使用される場合、この原理は、複数無磁場点(mFFP)が同時にはたらくように並列化した方法ではたらき得る。
【0067】
一般に、FFP内の粒子への距離が大きくなり過ぎないことを避けるために、各送信コイルセットに対して個別受信コイル(若しくは受信コイルセット)が設けられる。実際に、直接隣接した受信コイルのみが隣接送信コイルユニットによって生じる磁場の変化から得られる信号を検出する。それに基づいて上述のmFFP法における次のFFPに対する最小距離が決定される。
【0068】
画像再構成のために、全受信コイルによって検出される全データから画像を再構成すること、又は各々単一受信コイルによって検出されるデータのみから部分画像を再構成することが可能である。第1の場合、複数受信コイルが、同じであるが異なる重み付けの領域から信号を検出する場合は問題がない。理想的には、あるコイルに対する重み付けは'1'であり、他のコイルに対しては'0'である。一般に、受信コイルのサイズは、その感度が総視野のサブ領域に制限されるように選択される。
【0069】
アレイ内に配置される送信コイルセットの数は単一送信コイルセットの視野のサイズと、アレイの総視野の所望のサイズに依存する。アレイは例えばほんの数個、数十個、若しくは数百個の送信コイルセットを有し得る。
【0070】
FFPの運動は送信コイルセットのアレイの面に平行な面において可能なだけでなく、上述のSattelらの論文に概して記載の通り、前記面に垂直な(すなわちz方向)若しくは直角な方向においても可能であることが留意される。
【0071】
さらに、既知のMPI装置で一般に使用される集束磁場コイルは一般に必要ないが、送信コイルセットのアレイの前記面に垂直な(すなわちz方向)若しくは直角な方向におけるFOVの運動の範囲を拡大するために使用され得る。
【0072】
本発明にかかるMPI装置の一実施形態の側面図が図9に描かれる。患者400は複数の送信コイルセット200のアレイ300が組み込まれている患者台410上に横たわっている。アレイ300の様々なコイルに対する電流は制御ユニット430の制御下で発生器ユニット420によって生成される。特定用途、例えば患者の体内の物体運動(例えば磁性粒子が付着する薬剤若しくは医療機器の特定位置への移動)のために、一般にさらなる構成要素は必要ない。
【0073】
イメージング目的で検出信号を受信するために、この画像はディスプレイ440上に表示されることができるが、信号伝送のために使用される送信コイルセット200のコイルが使用され得る。しかしながら別の可能性は、図9に示す通り最適化特性を持つ追加受信コイル450を加えることである。ここでは、平面受信コイルのセット450が、スキャナ前面(又は直下又は患者台の表面の上)に直接取り付けることができるので適切であり、これは送信コイルセット200に対する要件をほとんど変更せずに関心領域内の高い受信感度をもたらす。
【0074】
受信コイル450によって受信される検出信号は処理ユニット460に供給され、これは制御ユニット430と同じワークステーション若しくはコンピュータ470の一部であり得る。そこで、検出信号から患者400のスキャン領域の画像が再構成され得る、及び/又は磁性粒子が患者400内で位置特定され得る。
【0075】
図10は本発明にかかるMPI装置100の略ブロック図を示す。他に特に規定しない限り、上記で説明した磁性粒子イメージングの一般的原理が有効であり、この実施形態にも当てはまる。
【0076】
図10に示す装置100の実施形態は、所望の磁場を発生させるための様々なコイルのセットである複数の送信コイルセット200のアレイ300を有する。上記の(傾斜)選択磁場を発生させるために、各送信コイルセット200において選択磁場(SF)コイルの少なくとも1つのペア210を有する選択手段が設けられる。選択手段はさらに選択磁場信号発生器ユニット215を有する。好適には、個別発生器サブユニットが選択磁場コイルのセット210の各コイル(若しくはコイルの各ペア)に対して設けられる。前記選択磁場信号発生器ユニット215は、所望方向の選択磁場の傾斜強度を個別に設定するために各選択磁場コイル素子に選択磁場電流を供給する制御可能選択磁場電流源216(一般に増幅器を有する)とフィルタユニット217を有する。好適には、上記の通り反対方向のDC電流がペアのコイルに供給される。
【0077】
選択磁場信号発生器ユニット215は制御ユニット430によって制御され、これは好適には選択磁場の全空間部分の磁場強度の和と傾斜強度の和が所定レベルに維持されるように、選択磁場電流発生器215を制御する。
【0078】
駆動磁場の発生のために、装置100はさらに、好適には各送信コイルセット200において駆動磁場コイルの2つのペア220,230を有する、駆動磁場(DF)コイルのサブセットを有する駆動手段を有する。駆動磁場コイルは、好適には前記駆動磁場コイルのセットの各コイル(若しくは少なくともコイルの各ペア)に対する個別駆動磁場信号発生サブユニットを有する、駆動磁場信号発生器ユニット225によって制御される。前記駆動磁場信号発生器ユニット225は各駆動磁場コイルに駆動磁場電流を供給するための駆動磁場電流源226(好適には電流増幅器を含む)とフィルタユニット227を有する。駆動磁場電流源226はAC電流を発生させるのに適し、また制御ユニット430によって制御される。
【0079】
信号検出のために、受信手段、特に少なくとも1つの受信コイル440、及び、前記受信手段によって検出される信号を受信する、信号受信ユニット445が設けられる。前記信号受信ユニット445は受信した検出信号をフィルタリングするためのフィルタユニット446を有する。このフィルタリングの目的は、2つの部分領域(52,54)の位置における変化によって影響を受ける検査領域内の磁化によって生じる測定値を他の干渉信号から分離することである。この目的のため、フィルタユニット446は例えば、受信コイル440が操作される時間周波数よりも小さい、又はこれらの時間周波数の2倍よりも小さい時間周波数を持つ信号がフィルタユニット446を通過しないように設計され得る。そして信号は増幅器ユニット447を介してアナログ/デジタル変換器448(ADC)へ送信される。
【0080】
アナログ/デジタル変換器448によって生成されるデジタル化信号は画像処理ユニット(再構成手段とも呼ばれる)460へ与えられ、これはこれらの信号と、各信号の受信中に検査領域内の第1の磁場の第1の部分領域(FFP)52がとった、画像処理ユニット460が制御ユニット430から得る各位置から、磁性粒子の空間分布を再構成する。
【0081】
再構成された磁性粒子の空間分布は最終的に制御ユニット430を介してコンピュータ470へ送信され、これをモニタ440上に表示する。従って、検査領域の視野内の磁性粒子の分布を示す画像が表示されることができる。
【0082】
さらに、例えばキーボード及び/又はコンピュータマウスなどの入力ユニット480が設けられ得る。従ってユーザは最高分解能の所望方向を設定することができ、そしてモニタ440上の作動領域の各画像を受信する。最高分解能が必要な重要方向が、ユーザによって最初に設定された方向からずれる場合、ユーザは向上したイメージング分解能でさらなる画像を生成するために手動で方向を変えることができる。この分解能向上プロセスは制御ユニット430及びコンピュータ470によって自動的に操作されることもできる。この実施形態における制御ユニット430は、自動的に推定されるか又はユーザによって開始値として設定される、第1の方向における傾斜磁場を設定する。そして傾斜磁場の方向は、コンピュータ470によって比較される、それによって受信される画像の分解能が最大になり、各々それ以上向上しなくなるまで、段階的に変化される。従って最重要方向は最高可能分解能を受けるために各々自動的に適合されて見つけられる。
【0083】
駆動磁場コイルの2つのペア220,230を持ち、選択磁場コイルのペア210を駆動磁場コイルの第3のペアとして使用する、送信コイルセット200の上記実施形態により、対象の三次元イメージングが実行されることができるようにFFPが三次元で動かされることができる。本発明にかかる装置で使用される送信コイルセット200の第2の実施形態の透視図が図11に示される。この実施形態では駆動磁場コイル221,222の単一ペア220のみが設けられ、すなわち第2のペア230は図4及び5に示した送信コイルセット200の実施形態から除かれる。これはコイル軸240に垂直な線に沿ったFFPの運動を可能にする。加えて駆動磁場コイルの第2のペアでもある選択磁場コイルのペア210がある場合、例えばスライス画像を得るために対象の二次元イメージングが実行されることができるようにFFPは二次元で(コイル軸を通る面内で)動かされることができる。例えば可動患者台を用いて、前記面を通して対象が動かされる場合、送信コイルセットのかかる実施形態で対象の三次元イメージングもまた実行されることができる。
【0084】
隣接送信コイルセットの重なりは一般に個々の送信コイルセットの視野の横径と送信コイルセットの外側コイルの直径との関係性に依存する。さらに、重なりは送信コイルセットの場のサイズに依存する。
【0085】
送信コイルセットのサイズはz方向の侵入深さ、達成可能な電流/磁場強度、及び個々の送信コイルセットの視野のサイズに依存する。
【0086】
提案される構成は任意に大きな視野において多次元のmFFPイメージングを可能にする。この新たな原理のために使用される送信コイルセットの数に応じて、カテーテルインターベンションに合わせた作業場が実現されることができる。上述の通り送信コイルセットのアレイは患者台に組み込まれることができるが、他の構成も同様に可能である。特に様々なコイルの数、形状及び配置に関して、主に本発明の所望の応用に応じて多くの変更が可能である。
【0087】
本発明は図面と前記説明において詳細に図示され記載されているが、かかる図示と記載は例示若しくは説明であって限定ではないと見なされ、本発明は開示の実施形態に限定されない。開示された実施形態への他の変更は、図面、開示、及び添付の請求項の考察から、請求された発明を実施する上で当業者によって理解されもたらされることができる。
【0088】
請求項において、"有する"という語は他の要素若しくはステップを除外せず、不定冠詞"a"若しくは"an"は複数を除外しない。単一要素若しくは他のユニットが請求項に列挙された複数の項目の機能を満たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。
【0089】
請求項における任意の参照符号は範囲を限定するものと解釈されてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視野内の磁性粒子に作用する及び/又は検出するための装置であって、
i)2つ以上の送信コイルセットであって、隣接コイルセットが部分的に重なっており、1つの送信コイルセットが、
‐低磁場強度を持つ第1のサブゾーンと高磁場強度を持つ第2のサブゾーンが前記視野内に形成されるようにその磁場強度の空間内パターンを持つ選択磁場を発生させるための、同心円状に配置される選択磁場コイルの1つのペアと、
‐前記磁性粒子の磁化が局所的に変化するように駆動磁場を用いて前記視野内の前記2つのサブゾーンの空間内位置を変化させるための、駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアであって、前記駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアが前記選択磁場コイルのペアに平行に配置され、2つの隣接コイルループによって形成される、駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアとを有する、
送信コイルセットと、
ii)前記コイルによって所望の磁場を発生させるために前記選択磁場コイルと前記駆動磁場コイルへ供給するための電流信号を発生させるための発生器手段と、
iii)前記選択磁場コイルのペアの2つの選択磁場コイルへ供給するための反対方向の直流電流と、前記駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアの2つの駆動磁場コイルへ供給するための交流電流を発生させるように前記発生器手段を制御するための制御手段と
を有する、装置。
【請求項2】
駆動磁場コイルの2つのペアを有し、前記駆動磁場コイルの2つのペアが互いに及び前記選択磁場コイルのペアに対し平行に配置され、0°乃至180°の範囲の回転角で互いに対して回転される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記駆動磁場コイルの2つのペアが、75°乃至105°の範囲の回転角で、特に90°の回転角で互いに対して回転される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記反対方向の直流電流に加えて前記選択磁場コイルのペアの2つの選択磁場コイルへ供給するための反対方向の交流電流を発生させるように前記発生器手段を制御する、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアが同一コイルループによって形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
駆動磁場コイルのペアが2つの、特に同一の、隣接するD型若しくは長方形コイルループによって形成され、前記ループの2つの線形分岐が互いに直接隣接している、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記駆動磁場コイルのペアの2つのコイルループが、前記選択磁場コイルが同心円状に配置されるコイル軸を通る対称面に対して対称的に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
送信コイルセットの前記選択磁場コイルのペアと前記駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアがほぼ同一の外形寸法を持ち、互いに重なり合って配置される円盤状である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
iv)検出信号を収集するための少なくとも1つの受信コイルを有する受信手段であって、該検出信号は前記視野内の磁化に依存し、該磁化は前記第1及び第2のサブゾーンの空間内位置における変化に影響される、受信手段と、
v)前記検出信号を処理するため、特に前記検出信号から画像を再構成するため、及び/又は前記視野内、特に前記視野内に置かれる対象内の前記磁性粒子の位置を特定するための、処理手段と
をさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
等距離間隔であり、1つ以上の平面若しくは曲面内に実質的に配置される、複数の送信コイルセットを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記制御手段が、第1の送信コイルセットから第2の送信コイルセットへの前記第1のサブゾーンの移動のために、前記第1のサブゾーンが前記第1の送信コイルセットの視野の境界へ追いやられ、前記第1の送信コイルセットの選択磁場が減少し、前記第2の送信コイルセットの選択磁場が増加するように、前記送信コイルセットのコイルへ供給するための電流を発生させるように前記発生器手段を制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記制御手段が、2つ以上の第1のサブゾーンが生成され、同時に動かされるように、前記送信コイルセットのコイルへ供給するための電流を発生させるように前記発生器手段を制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
視野内の磁性粒子に作用する及び/又は検出するための方法であって、
i)2つ以上の送信コイルセットによって磁場を発生させるステップであって、隣接コイルセットが部分的に重なっており、前記磁場を発生させるステップが、
‐低磁場強度を持つ第1のサブゾーンと高磁場強度を持つ第2のサブゾーンが、同心円状に配置される選択磁場コイルの1つのペアによって前記視野内に形成されるように、その磁場強度の空間内パターンを持つ選択磁場を発生させるステップと、
‐駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアによって前記磁性粒子の磁化が局所的に変化するように駆動磁場を用いて前記視野内の前記2つのサブゾーンの空間内位置を変化させ、前記駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアは前記選択磁場コイルのペアに平行に配置され、2つの隣接コイルループによって形成される、ステップと
を有する、ステップと、
ii)前記コイルによって所望の磁場を発生させるために前記選択磁場コイルと前記駆動磁場コイルへ供給するための電流信号を発生させるステップと、
iii)前記選択磁場コイルのペアの2つの選択磁場コイルへ供給するための反対方向の直流電流と、前記駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアの2つの駆動磁場コイルへ供給するための反対方向の交流電流を発生させるように前記発生器手段を制御するステップと
を有する、方法。
【請求項14】
コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに請求項13に記載の方法のステップを実行するよう請求項1に記載の装置をコンピュータに制御させるためのプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項1に記載の視野内の磁性粒子に作用する及び/又は検出するための装置における使用のための送信コイルセットであって、該送信コイルセットが、
低磁場強度を持つ第1のサブゾーンと高磁場強度を持つ第2のサブゾーンが前記視野内に形成されるようにその磁場強度の空間内パターンを持つ選択磁場を発生させるための、同心円状に配置される選択磁場コイルの1つのペアと、
前記磁性粒子の磁化が局所的に変化するように駆動磁場を用いて前記視野内の前記2つのサブゾーンの空間内位置を変化させるための、駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアであって、前記駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアが前記選択磁場コイルのペアに平行に配置され、2つの隣接コイルループによって形成される、駆動磁場コイルの少なくとも1つのペアと
を有する、送信コイルセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−518657(P2013−518657A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551713(P2012−551713)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050374
【国際公開番号】WO2011/095916
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】