説明

物体検出装置

【課題】異なる方法で物体を検出する複数の物体検出手段の検出結果に基づく同一物体としての判定結果に経時的な変動があっても、過去の検出結果を有効に引継いで適正な物体検出を継続させること。
【解決手段】遠距離ミリ波レーダと近距離ミリ波レーダで検出されて同一物体と判定されていない遠距離ミリ波物標FFar1、近距離ミリ波物標FNear1が、今回の更新サイクルで同一物体と判定されてフュージョンミリ波物標FMwr1が生成された場合には、遠距離ミリ波レーダの検出結果である遠距離ミリ波単独物標が登録されている物標番号1を、同一物体であると判定されたフュージョンミリ波物標FMwr1に引継いでフュージョンミリ波物標箱19に保持させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重複する領域において異なる方法で物体を検出する複数の物体検出手段による検出結果をフュージョンして物体を検出する物体検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、衝突軽減装置、車間距離制御装置、追従走行装置などの運転支援装置が開発されている。これら運転支援装置では、自車両の前方を走行する車両を検出し、その挙動を経時的に監視することが重要となる。従来、物体検出装置は、高解像度で遠距離DBF方式ミリ波レーダ(以下、単に「遠距離ミリ波レーダ」という)を用いて物体を検出するようにしていた。近年では、検出精度を向上させるために、遠距離ミリ波レーダに比較して低解像度で更新周期の短い近距離モノパルス方式ミリ波レーダ(以下、単に「近距離ミリ波レーダ」という)を併用し、遠距離ミリ波レーダと近距離ミリ波レーダとが重複する領域で検出したそれぞれの物体が同一物体であるか否かを判定し、同一物体と判定した物体を前方車両などの検出対象の物体(フュージョン物標)として設定するようにした物体検出装置もある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、検出結果を制御系に出力する上で、出力物標箱が用いられる。従来の遠距離ミリ波レーダ単独方式は、各更新サイクルの遠距離ミリ波物標を出力物標箱に格納する場合、同じ物標は同じ物標箱番号に格納することで、物標を最初に検知してから消滅するまで同じ物標箱番号となるようにし、同一物体の追跡を可能とし、その挙動を監視できるようにしている。つまり、新規フラグが立つまでは同じ物標として扱うようにしている。遠距離ミリ波レーダと近距離ミリ波レーダとの併用方式においても同様に、同じ物標は、フュージョン物標箱の同じ物標番号に格納することで、物標を最初に検知してから消滅するまでフュージョン物標箱の同じ物標番号となるようにすることとなる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−121496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、遠距離ミリ波レーダと近距離ミリ波レーダとでは、検知距離や解像度、視野、更新周期などが異なり、異なる方法で物体を検知するものであって、そもそも常に同じ物標を同じ更新周期で検知できない。また、両方のレーダで同じ物標を同じ更新周期で検知できたとしても、距離や相対速度などの物標情報がフュージョン条件を満たさない場合は、それぞれ遠距離ミリ波単独物標と近距離ミリ波単独物標となってしまう。
【0006】
遠距離ミリ波レーダと近距離ミリ波レーダとの重複する領域においてフュージョン処理を更新サイクル毎に経時的に行う際、このような両方のレーダ間の検知結果の揺らぎにより、別個の物標と判定されていた遠距離ミリ波物標と近距離ミリ波物標がフュージョンしてフュージョン物標になることや、同一物標とされたフュージョン物標が分裂してそれぞれ遠距離ミリ波単独物標と近距離ミリ波単独物標となることがある。このような状況下で、単純に新規フラグの有無などによってフュージョン物標箱にフュージョン結果を格納してしまうと、新たな物標の出現などとして扱われることとなり、同一物標に関する履歴に途切れが生じて、従来の高解像度な遠距離ミリ波レーダ単独方式の検知性能も維持できないことがある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、異なる方法で物体を検出する複数の物体検出手段の検出結果に基づく同一物体としての判定結果に経時的な変動があっても、過去の検出結果を有効に引継いで適正な物体検出を継続させることができる物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る物体検出装置は、重複する領域において異なる方法で物体を検出する複数の物体検出手段を備える物体検出装置であって、前記複数の物体検出手段でそれぞれ検出した物体が同一物体であるか否かを判定する判定手段と、前記複数の物体検出手段で検出されて前記判定手段によって同一物体と判定されていない物体が、前記判定手段によって同一物体であると判定された場合には、前記複数の物体検出手段のうちの特定の一つの前記物体検出手段の検出結果を、同一物体であると判定された物体に継続して記憶部に保持させる格納制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る物体検出装置は、重複する領域において異なる方法で物体を検出する複数の物体検出手段を備える物体検出装置であって、前記複数の物体検出手段でそれぞれ検出した物体が同一物体であるか否かを判定する判定手段と、前記複数の物体検出手段で検出されて前記判定手段によって同一物体と判定されていた物体が、前記判定手段によって同一物体でないと判定された場合には、前記複数の物体検出手段のうちの特定の一つの前記物体検出手段で検出した物体に、同一物体と判定された物体の検出結果を継続して記憶部に保持させる格納制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る物体検出装置は、上記発明において、前記特定の一つの物体検出手段は、前記複数の物体検出手段のうちで相対的に高精度な検出能力を有する物体検出手段であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る物体検出装置は、上記発明において、前記格納制御手段は、検出フラグを同一のフラグとすることにより、検出結果を継続して前記記憶部に保持させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る物体検出装置は、複数の物体検出手段で検出されて同一物体と判定されていない物体が、同一物体であると判定された場合には、特定の一つの物体検出手段の検出結果を、同一物体であると判定された物体に継続して記憶部に保持させるようにしたので、異なる方法で物体を検出する複数の物体検出手段の検出結果に基づく同一物体としての判定結果に例えばフュージョン物標の出現のような経時的な変動があっても、新しい物標として扱わず、過去の検出結果を有効に引継いで適正な物体検出を継続させることができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る物体検出装置は、複数の物体検出手段で検出されて同一物体と判定されていた物体が、同一物体でないと判定された場合には、特定の一つの物体検出手段で検出した物体に、同一物体と判定された物体の検出結果を継続して記憶部に保持させるようにしたので、異なる方法で物体を検出する複数の物体検出手段の検出結果に基づく同一物体としての判定結果に例えばフュージョン物標の分裂のような経時的な変動があっても、新しい物標として扱わず、過去の検出結果を有効に引継いで適正な物体検出を継続させることができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る物体検出装置は、特定の一つの物体検出手段を、相対的に高精度な検出能力を有する物体検出手段としたので、過去の検出結果を引継ぐ物体を、より検出精度が高い物体とすることができ、よって、高精度な検出能力を有する物体検出手段の検出結果を優先して有効活用しつつ、相対的に検出精度の低い物体検出手段の検出結果も併せて活用することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る物体検出装置は、検出フラグを同一のフラグとすることにより、検出結果を継続して記憶部に保持させるようにしたので、過去の検出結果を簡単に引継がせることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る物体検出装置の実施の形態を説明する。本実施の形態は、本発明に係る物体検出装置を、車両に搭載される衝突軽減装置への適用例を示す。本実施の形態に係る衝突軽減装置は、検出対象として前方車両を検出し、前方車両との衝突を防止/軽減するために各種制御を行う。特に、本実施の形態に係る衝突軽減装置は、前方車両を検出するために2種類のミリ波レーダを備え、それぞれのミリ波レーダによる検出物体を照合することによって前方車両を検出する。
【0017】
図1〜図11を参照して、本実施の形態に係る衝突軽減装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る衝突軽減装置1の構成図である。衝突軽減装置1は、前方車両を検出し、前方車両を検出した場合には衝突の可能性に応じてブレーキ制御、サスペンション制御、シートベルト制御および警報制御を行う。衝突軽減装置1は、前方車両を検出するために、2種類のミリ波レーダによる検出情報に基づいてそれぞれミリ波物標を設定し、ミリ波物標同士の照合によってフュージョンミリ波物標を設定する。
【0018】
このような衝突軽減装置1は、特定の一つの物体検出手段に相当する遠距離ミリ波レーダ2、他の物体検出手段に相当する近距離ミリ波レーダ3、ブレーキECU(Electronic Control Unit)4、サスペンション制御アクチュエータ5、シートベルトアクチュエータ6、ブザー7および衝突軽減ECU10などを備え、これらがCAN(Controller Area Network)(車内LANの標準インターフェース規格)通信で各種信号を送受信する。
【0019】
まず、各物標について説明しておく。遠距離ミリ波物標(FFar)は、遠距離ミリ波レーダ2による情報に基づいて検出された物体である。近距離ミリ波物標(FNear)は、近距離ミリ波レーダ3による情報に基づいて検出された物体である。フュージョンミリ波物標(FMwr)は、遠距離ミリ波物標と近距離ミリ波物標とが同一物体であると判断できる物体であり、重複する領域内に存在するというフュージョン条件を満たす遠距離ミリ波物標と近距離ミリ波物標とを統合した物体である。
【0020】
また、本実施の形態では、後述するフュージョン判定処理結果に応じて、上述したような通常のフュージョンミリ波物標の他に、遠距離ミリ波単独物標、近距離ミリ波単独物標を用いる。遠距離ミリ波単独物標は、近距離ミリ波物標とフュージョンできなかった遠距離ミリ波物標単独の物体である。近距離ミリ波単独物標は、遠距離ミリ波物標とフュージョンできなかった近距離ミリ波物標単独の物体である。これらフュージョンミリ波物標、遠距離ミリ波単独物標および近距離ミリ波単独物標が、後述するフュージョンミリ波物標箱に格納されることにより登録される。
【0021】
遠距離ミリ波レーダ2は、ミリ波を利用して物体を検出するためのレーダであって、高解像度で遠距離・狭視野DBF方式ミリ波レーダが用いられている。遠距離ミリ波レーダ2は、自車両の前側の中央に取り付けられる。遠距離ミリ波レーダ2は、ミリ波を水平面内で走査しながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信する。そして、遠距離ミリ波レーダ2は、そのミリ波の送受信データをレーダ信号として衝突軽減ECU10に送信する。この送受信データには、送信したミリ波の情報、送信したミリ波に対する反射波を受信できたか否かの情報、反射波を受信できた場合にはその受信情報などが含まれる。
【0022】
近距離ミリ波レーダ3は、ミリ波を利用して物体を検出するためのレーダであって、遠距離ミリ波レーダに比較して低解像度で更新周期の短い近距離・広視野モノパルス方式ミリ波レーダが用いられている。近距離ミリ波レーダ2は、自車両の前側の中央に取り付けられる。近距離ミリ波レーダ2は、ミリ波を水平面内で走査しながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信する。そして、近距離ミリ波レーダ2は、そのミリ波の送受信データをレーダ信号として衝突軽減ECU10に送信する。この送受信データには、送信したミリ波の情報、送信したミリ波に対する反射波を受信できたか否かの情報、反射波を受信できた場合にはその受信情報などが含まれる。
【0023】
ブレーキECU4は、4輪の各ホイールシリンダの油圧を調節し、4輪のブレーキ力を制御するECUである。ブレーキECU4は、各輪の目標ブレーキ力に基づいて油圧制御信号をそれぞれ設定し、その各油圧信号を各ホイールシリンダの油圧を変化させるブレーキ制御アクチュエータに対してそれぞれ送信する。特に、ブレーキECU4は、衝突軽減ECU10から各輪に対する目標ブレーキ力を受信すると、その目標ブレーキ力信号に示される目標ブレーキ力に基づいて油圧制御信号をそれぞれ設定する。ちなみに、ブレーキ制御アクチュエータは、油圧制御信号を受信すると、油圧制御信号に示される目標油圧に基づいてホイールシリンダの油圧を変化させる。
【0024】
サスペンション制御アクチュエータ5は、4輪の各油圧式アクティブサスペンションの油圧を変化させるアクチュエータである。サスペンション制御アクチュエータ5は、衝突軽減ECU10から各輪に対する目標減衰力信号を受信すると、各目標減衰力信号に示される目標減衰力に基づいて目標油圧を設定し、目標油圧に基づいて油圧式アクティブサスペンションの油圧を変化させる。なお、図1には、サスペンション制御アクチュエータ5は1個しか図示してないが、4輪のサスペンション毎にそれぞれ設けられている。
【0025】
シートベルトアクチュエータ6は、各シートベルトを引き込み、シートベルトによる拘束力を変化させるアクチュエータである。シートベルトアクチュエータ6は、衝突軽減ECU10から各シートベルトに対する目標引込量信号を受信すると、各目標引込量信号に示される目標引込量に応じてシートベルトを引き込む。なお、図1には、シートベルトアクチュエータ6は1個しか図示してないが、シートベルトにそれぞれ設けられている。また、ブザー7は、衝突軽減ECU10から警報信号を受信すると、ブザー音を出力する。
【0026】
衝突軽減ECU10は、CPU、ROM、RAMなどからなる電子制御ユニットであり、CPUがROMに格納されている制御フプログラムを実行することにより衝突軽減装置1を統括制御する。衝突軽減ECU10は、遠距離ミリ波物標設定部11、近距離ミリ波物標設定部12、フュージョンロジック部13、メモリ14、衝突予測部15および車両制御部16などを備える。衝突軽減ECU10は、CPUのマスタクロックに基づく一定時間毎に、遠距離ミリ波レーダ2および近距離ミリ波レーダ3からのレーダ信号を取り入れ、一定時間毎に、レーダ情報に基づく遠距離ミリ波物標設定部11による遠距離ミリ波物標の設定処理、レーダ情報に基づく近距離ミリ波物標設定部12による近距離ミリ波物標の設定処理を行い、設定された遠距離ミリ波物標および近距離ミリ波物標に基づくフュージョン処理をフュージョンロジック部13により行う。これにより、前方車両を検出し、検出した前方車両との衝突の可能性に応じてブレーキECU4、サスペンション制御アクチュエータ5、シートベルトアクチュエータ6、ブザー7に対する制御を行う。
【0027】
遠距離ミリ波物標設定部11について説明する。衝突軽減ECU10は、遠距離ミリ波レーダ2によるミリ波の出射から受信までの時間に基づいて前方の物体までの距離を演算する。遠距離ミリ波レーダ2による物体検出では、反射したミリ波を所定の閾値以上の受信強度で受信できた場合に物体を検出したことになるので、遠距離ミリ波レーダ物標設定部11は、反射したミリ波を閾値以上の受信強度で受信する毎に1個のレーダ物標を設定する。ここで、遠距離ミリ波レーダ2による物体検出によれば、高解像度で狭視野であるので、近距離ミリ波レーダ3による検出結果よりも高精度な検出結果が得られる。
【0028】
近距離ミリ波物標設定部12について説明する。衝突軽減ECU10は、近距離ミリ波レーダ3によるミリ波の出射から受信までの時間に基づいて前方の物体までの距離を演算する。近距離ミリ波レーダ3による物体検出では、反射したミリ波を所定の閾値以上の受信強度で受信できた場合に物体を検出したことになるので、近距離ミリ波レーダ物標設定部12は、反射したミリ波を閾値以上の受信強度で受信する毎に1個のレーダ物標を設定する。ここで、近距離ミリ波レーダ3による物体検出によれば、広視野であるので、遠距離ミリ波レーダ2では検出しにくい範囲に渡って検出結果が得られる。
【0029】
記憶部であるメモリ14は、遠距離ミリ波物標箱17、近距離ミリ波物標箱18およびフュージョンミリ波物標箱19を備える。遠距離ミリ波物標箱17は、更新サイクル毎に遠距離ミリ波物標設定部11によって設定される遠距離ミリ波物標に物標番号を付して格納するためのものであり、図2等に示すように、後述するフュージョンミリ波物標箱の物標番号を格納するためのリンク欄17aを有する。近距離ミリ波物標箱18は、更新サイクル毎に近距離ミリ波物標設定部12によって設定される近距離ミリ波物標に物標番号を付して格納するためのものであり、図2等に示すように、後述するフュージョンミリ波物標箱の物標番号を格納するためのリンク欄18aを有する。フュージョンミリ波物標箱19は、更新サイクル毎に得られたフュージョン処理結果に従いフュージョンミリ波物標、遠距離ミリ波単独物標および近距離ミリ波単独物標に物標番号を付して格納するためのものである。
【0030】
ここで、本実施の形態では、更新サイクル毎に処理対象とする物標数を遠距離、近距離それぞれ最大8個ずつに制限しており、遠距離ミリ波物標箱17および近距離ミリ波物標箱18は物標番号8までとされ、フュージョンミリ波物標箱19は物標番号16までとされている。
【0031】
次に、フュージョンロジック部13について説明する。フュージョンロジック部13は、判定手段としての物標探索処理ロジック部13a、フュージョン物標生成処理ロジック部13bおよび格納制御手段としての格納制御処理ロジック部13cを有し、一定時間毎に周期的に、物標探索処理、フュージョン物標生成処理および格納制御処理を繰返す。
【0032】
図2を参照して説明する。図2は、物標番号格納処理を含むフュージョン処理例を示す模式図である。まず、図2に示すように、遠距離ミリ波物標設定部11で遠距離ミリ波物標FFar1(添え字の数字は物標番号を示している)を検出している場合、物標探索処理ロジック部13aは、その遠距離ミリ波物標FFar1に設定されている距離と横位置と相対速度を中心とし、探索範囲SAF1を設定する。このような探索範囲SAF1は、車両の平均的な大きさ等を考慮して予め設定される。そして、物標探索処理ロジック部13aは、近距離ミリ波レーダ3の検出領域SAN内で検出されて設定されている近距離ミリ波物標のうちで、重複する領域となる探索範囲SAF1内に含まれているものがあるか否かを判定する。図2中に示すようにこの探索範囲SAF1内に含まれる近距離ミリ波物標FNear2がある場合、物標探索処理ロジック部13aは、遠距離ミリ波物標FFar1と近距離ミリ波物標FNear2とは類似性があると判断し、同一の物体と判定する。
【0033】
遠距離ミリ波物標FFar1と近距離ミリ波物標FNear2とが同一の物体と判定された場合、フュージョン物標生成処理ロジック部13bは、同一物体と判定された遠距離ミリ波物標FFar1の情報と近距離ミリ波物標FNear2の情報とを統合してフュージョンミリ波物標FMwr1を生成する。他の遠距離ミリ波物標、近距離ミリ波物標についても同様に処理される。例えば、図2に示す例であれば、遠距離ミリ波物標FFar3と近距離ミリ波物標FNear3とが同一の物体と判定され、フュージョンミリ波物標FMwr2が生成される。また、遠距離ミリ波物標FFar2や近距離ミリ波物標FNear1は、処理対象ではあるが、いずれもフュージョン条件を満たさず、遠距離ミリ波単独物標、近距離ミリ波単独物標として扱われる。
【0034】
ここで、格納制御処理ロジック部13cによるフュージョン処理結果のメモリ14への格納処理の基本について説明する。本実施の形態の場合も、同じ物標は、フュージョンミリ波物標箱19の同じ物標番号に格納することで、物標を最初に検知してから消滅するまで同じ物標箱番号となるようにすることを前提条件とする。
【0035】
まず、処理aとして、処理対象となる遠距離ミリ波物標の距離、横位置および相対速度を基準に、探索した近距離ミリ波物標が重複する領域に存在するというフュージョン条件を満たしていると判定された場合には、フュージョンミリ波物標を生成し、フュージョンミリ波物標箱19の空欄に左詰めで格納する(検出フラグを立てる)。このよう処理を、遠距離ミリ波物標箱17に格納されている全ての遠距離ミリ波物標についてその物標番号順に行う。この際、遠距離ミリ波収納箱17、近距離ミリ波収納箱18のリンク欄17a,18aには、フュージョンミリ波物標箱19に格納されたフュージョンミリ波物標の物標番号を登録する。
【0036】
図2に示す例であれば、まず、上述のように遠距離ミリ波物標FFar1,FFar3がそれぞれフュージョン条件を満たし、フュージョンミリ波物標が生成されて、フュージョンミリ波物標箱19の空欄に左詰めで格納することにより、処理aの矢印で示すように、それぞれ物標番号が1,2なるフュージョンミリ波物標FMwr1,FMwr2として登録される。また、フュージョンミリ波物標FMwr1の物標番号1は、遠距離ミリ波物標箱17のリンク欄17aにおいて、フュージョンミリ波物標FMwr1にフュージョンされた物標番号1の遠距離ミリ波物標FFar1に対応する位置に登録し、近距離ミリ波物標箱18のリンク欄18aにおいて、フュージョンミリ波物標FMwr1にフュージョンされた近物標番号2の距離ミリ波物標FNear2に対応する位置に登録する。同様に、フュージョンミリ波物標FMwr2の物標番号2は、遠距離ミリ波物標箱17のリンク欄17aにおいて、フュージョンミリ波物標FMwr2にフュージョンされた物標番号3の遠距離ミリ波物標FFar3に対応する位置に登録し、近距離ミリ波物標箱18のリンク欄18aにおいて、フュージョンミリ波物標FMwr2にフュージョンされた近物標番号3の距離ミリ波物標FNear3に対応する位置に登録する。
【0037】
次に、処理bとして、フュージョン条件を満たさなかった物標中で、遠距離ミリ波物標があれば、遠距離ミリ波単独物標として、ミリ波フュージョン収納箱19のフュージョンミリ波物標に続く空欄に左詰めで登録する。この場合も、遠距離ミリ波物標箱17のリンク欄17aには、遠距離ミリ波単独物標として格納したフュージョンミリ波物標箱19の物標番号を登録する。
【0038】
図2に示す例では、遠距離ミリ波物標FFar2が該当し、処理bの矢印で示すように、フュージョンミリ波物標箱19の物標番号3の位置に遠距離ミリ波単独物標として格納し、遠距離ミリ波物標箱17のリンク欄17aの物標番号2に対応する欄に物標番号3を格納する。
【0039】
また、処理cとして、フュージョン条件を満たさなかった物標中で、近距離ミリ波物標があれば、近距離ミリ波単独物標として、ミリ波フュージョン収納箱19のフュージョンミリ波物標および遠距離ミリ波単独物標に続く空欄に左詰めで登録する。この場合も、近距離ミリ波物標箱18のリンク欄18aには、近距離ミリ波単独物標として格納したフュージョンミリ波物標箱19の物標番号を登録する。
【0040】
図2に示す例では、近距離ミリ波物標FNear1が該当し、処理cの矢印で示すように、フュージョンミリ波物標箱19の物標番号4の位置に近距離ミリ波単独物標として格納し、近距離ミリ波物標箱18のリンク欄18aの物標番号1に対応する欄に物標番号4を格納する。
【0041】
さらに、フュージョンミリ波物標箱19、遠距離ミリ波物標箱17および近距離ミリ波物標箱18中で、今回登録されなかった空欄部分には、不検出番号を登録する。図2に示す例では、“x”で示しているが、“−1”“255”などの他、“17”以上の数字のように、物標箱の物標番号としてあり得ない数字であればよい。
【0042】
このようにして、各物標箱17〜19に対する基本的な格納処理を行うことで、フュージョンミリ波物標箱19においては、左側からフュージョンミリ波物標、遠距離ミリ波物標、近距離ミリ波物標というように検出結果の信頼性の高い順にフュージョン処理結果が格納されることとなる。
【0043】
次に、格納制御処理ロジック部13cによるフュージョン処理結果のメモリ14への格納処理の経時的処理について説明する。まず、前回までの更新サイクルの処理では、フュージョン条件を満たさず、遠距離ミリ波単独物標と近距離ミリ波単独物標としてフュージョンミリ波物標箱19に登録されていた物標が、今回の更新サイクルの処理で、フュージョン条件を満たしてフュージョンミリ波物標となる場合の融合処理例について説明する。
【0044】
まず、原則として、遠距離ミリ波レーダ2の検出結果である遠距離ミリ波単独物標がそれまで占有していたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号を今回のフュージョンミリ波物標が引継ぐようにフュージョンミリ波物標箱19に保持させる(今回のフュージョンミリ波物標の検出フラグを立てる上で、前回の遠距離ミリ波単独物標の検出フラグと同一のフラグとする)。つまり、近距離ミリ波レーダ3の検出結果である近距離ミリ波単独物標もフュージョンミリ波物標箱19に登録されているが、今回のフュージョンミリ波物標はその物標番号は引継がない。併せて、近距離ミリ波物標箱18の対応する近距離ミリ波物標のリンク欄18aに対しては、今回のフュージョンミリ波物標を格納したミリ波物標箱19の物標番号を登録する。
【0045】
図3は、融合処理における原則的なメモリ格納処理例を示す模式図である。まず、図3は、前回サイクル時には、破線で示すように、遠距離ミリ波物標FFar1と近距離ミリ波物標FNear1とがフュージョン条件を満たさず、処理b,cとしてそれぞれ矢印で示すように、それぞれ遠距離ミリ波単独物標、近距離ミリ波単独物標としてフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1,2に左詰めで格納されていた場合において、今回サイクル時には、実線で示すように、フュージョン条件を満たしてフュージョンミリ波物標が生成された例を示している。
【0046】
この際、近距離ミリ波単独物標が格納されていたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号2を今回生成されたフュージョンミリ波物標が引継ぐようにし、あるいは、ミリ波フュージョン箱19の物標番号3に新たに格納させることも可能ではあるが、本実施の形態では、処理dとして矢印で示すように、遠距離ミリ波レーダ2の検出結果である遠距離ミリ波単独物標がそれまで占有していたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1を今回のフュージョンミリ波物標が引継ぐようにフュージョンミリ波物標箱19に保持させるものである。また、今回のフュージョンミリ波物標が、遠距離ミリ波単独物標が格納されていたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1を引継ぐのに伴い、近距離ミリ波物標箱18の対応するリンク欄18aには物標番号1を登録する。
【0047】
近距離ミリ波単独物標が格納されていたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号2を今回生成されたフュージョンミリ波物標が引継ぐようにした場合には、近距離ミリ波レーダ3が遠距離ミリ波レーダ2よりも不安定であり、更新サイクル間の履歴が途切れがちであり、また、ミリ波フュージョン箱19の物標番号3に新たに格納させる場合には、新規な物体としての扱いとなり履歴が完全に途切れてしまうのに対して、遠距離ミリ波単独物標が格納されていたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1を今回生成されたフュージョンミリ波物標が引継ぐようにした場合には、検出能力の安定性により履歴が途切れにくく、更新サイクル間の履歴を安定して継続させることができる。
【0048】
さらに、フュージョンミリ波物標箱19、遠距離ミリ波物標箱17および近距離ミリ波物標箱18中で、今回登録されなかった空欄部分には、不検出番号を登録する。
【0049】
一方、例外として、既に近距離ミリ波単独物標として存在し登録されていた近距離ミリ波物標が今回の更新サイクルで新規に出現した遠距離ミリ波物標と融合してフュージョンミリ波物標が生成される場合には、近距離ミリ波レーダ3の検出結果である近距離ミリ波単独物標がそれまで占有していたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号を今回のフュージョンミリ波物標が引継ぐようにフュージョンミリ波物標箱19に保持させる(今回のフュージョンミリ波物標の検出フラグを立てる上で、前回の近距離ミリ波単独物標の検出フラグと同一のフラグとする)。併せて、遠距離ミリ波物標箱17の対応する遠距離ミリ波物標のリンク欄17aに対しては、今回のフュージョンミリ波物標を格納したミリ波物標箱19の物標番号を新規フラグとして登録する。
【0050】
図4は、融合処理における例外的なメモリ格納処理例を示す模式図である。まず、図4は、前回サイクル時には、破線で示すように、近距離ミリ波物標FNear1のみが単独で存在してフュージョン条件を満たさず、処理cとして矢印で示すように、近距離ミリ波単独物標としてフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1に左詰めで格納されていた場合において、今回サイクル時には、実線で示すように、新規に遠距離ミリ波物標FFar1が検出されてフュージョン条件を満たしてフュージョンミリ波物標が生成された例を示している。
【0051】
この際、ミリ波フュージョン箱19の物標番号2に新たに格納させることも可能ではあるが、本実施の形態では、処理eとして矢印で示すように、近距離ミリ波レーダ3の検出結果である近距離ミリ波単独物標がそれまで占有していたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1を今回のフュージョンミリ波物標が引継ぐようにフュージョンミリ波物標箱19に保持させるものである。また、今回のフュージョンミリ波物標が、近距離ミリ波単独物標が格納されていたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1を引継ぐのに伴い、遠距離ミリ波物標箱17の対応するリンク欄17aには物標番号1を新規フラグとして登録する。
【0052】
近距離ミリ波単独物標が格納されていたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1を今回生成されたフュージョンミリ波物標が引継ぐようにした場合には、更新サイクル間の履歴が途切れがちではあっても、ミリ波フュージョン箱19の物標番号2に新たに格納させることにより、新規な物体としての扱いとなり履歴が完全に途切れてしまうよりは、更新サイクル間の履歴を継続させ得ることとなる。
【0053】
さらに、フュージョンミリ波物標箱19、遠距離ミリ波物標箱17および近距離ミリ波物標箱18中で、今回登録されなかった空欄部分には、不検出番号を登録する。
【0054】
次に、格納制御処理ロジック部13cによるフュージョン処理結果のメモリ14への格納処理の経時的処理のうち、前回までの更新サイクルの処理では、フュージョン条件を満たしてフュージョンミリ波物標としてフュージョンミリ波物標箱19に登録されていた物標が、今回の更新サイクルの処理で、フュージョン条件を満たさず、遠距離ミリ波単独物標と近距離ミリ波単独物標とになる場合の分裂処理例について説明する。
【0055】
まず、原則として、今回の遠距離ミリ波単独物標が、フュージョンミリ波物標がそれまで占有していたミリ波物標箱19の物標番号(検出フラグ)を、引継ぐようにフュージョンミリ波物標箱19に保持させる(今回の遠距離ミリ波単独物標の検出フラグを立てる上で、前回のフュージョンミリ波物標の検出フラグと同一のフラグとする)。同時に、今回の近距離ミリ波単独物標については、フュージョンミリ波物標箱18の空欄に左詰めで新たに登録し、新規フラグとして扱う。併せて、近距離ミリ波物標箱18の対応する近距離ミリ波物標のリンク欄18aに対しては、今回の近距離ミリ波単独物標を格納したミリ波物標箱19の物標番号を登録する。また、フュージョンミリ波物標箱19、遠距離ミリ波物標箱17および近距離ミリ波物標箱18中で、今回登録されなかった空欄部分には、不検出番号を登録する。
【0056】
図5は、分裂処理における原則的なメモリ格納処理例を示す模式図である。まず、図5は、前回サイクル時には、破線で示すように、遠距離ミリ波物標FFar1と近距離ミリ波物標FNear1とがフュージョン条件を満たしてフュージョンミリ波物標FMwr1が生成され、処理aとして矢印で示すように、フュージョンミリ波物標としてフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1に左詰めで格納されていた場合において、今回サイクル時には、実線で示すように、遠距離ミリ波物標FFar1と近距離ミリ波物標FNear1とがフュージョン条件を満たさない状態に分裂した例を示している。
【0057】
この際、本実施の形態では、処理fとして矢印で示すように、フュージョンミリ波物標がそれまで占有していたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1を今回の遠距離ミリ波単独物標が引継ぎ、今回の近距離ミリ波単独物標は処理gとして矢印で示すようにミリ波物標箱19の物標番号2に新たに登録して新規フラグとして扱うように格納させるものである。また、今回の近距離ミリ波単独物標が、フュージョンミリ波物標箱19の物標番号2に新規に登録されたのに伴い、近距離ミリ波物標箱18の対応するリンク欄18aには物標番号2を登録する。
【0058】
この処理において、フュージョンミリ波物標がそれまで占有していたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1を今回の近距離ミリ波単独物標が引継ぐように格納させることも可能であるが、フュージョンミリ波物標を今回の近距離ミリ波物標が引継ぐようにした場合には、近距離ミリ波レーダ3が遠距離ミリ波レーダ2よりも不安定であり、更新サイクル間の履歴が途切れがちとなってしまう。この点、本実施の形態のように、フュージョンミリ波物標が格納されていたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1を今回の遠距離ミリ波単独物標が引継ぐようにした場合には、検出能力の安定性により履歴が途切れにくく、更新サイクル間の履歴を安定して継続させることができる。
【0059】
なお、今回の更新サイクル時に、近距離ミリ波単独物標が消滅した場合には、フュージョンミリ波物標箱19への新規登録を省略すればよい。また、例外として、今回の更新サイクル時に、遠距離ミリ波単独物標が消滅し、近距離ミリ波単独物標のみとなった場合には、フュージョンミリ波物標がそれまで占有していたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1を今回の近距離ミリ波単独物標が引継ぐように格納させればよい。
【0060】
フュージョンミリ波物標が格納されていたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1を今回の近距離ミリ波単独物標が引継ぐようにした場合には、更新サイクル間の履歴が途切れがちではあっても、フュージョンミリ波物標箱19の物標番号2に新たに格納させることにより、新規な物標としての扱いとなり履歴が完全に途切れてしまうよりは、更新サイクル間の履歴を継続させ得ることとなる。
【0061】
上述の融合処理・分裂処理を組合せることにより、更新サイクル間においてフュージョンミリ波物標間でフュージョンすべき遠距離ミリ波物標、近距離ミリ波物標に変動があっても対応可能である。図6は、融合処理および分裂処理の組合せ処理の一例を示す模式図である。
【0062】
図6は、前回サイクル時には、破線で示すように、遠距離ミリ波物標FFar1と近距離ミリ波物標FNear1とがフュージョン条件を満たしてフュージョンミリ波物標FMwr1が生成され、処理aとして矢印で示すように、フュージョンミリ波物標としてフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1に左詰めで格納され、同時に、フュージョン条件を満たさない近距離ミリ波物標FNear2が、処理cとして矢印で示すように、フュージョンミリ波物標箱19の物標番号2に近距離ミリ波単独物標として左詰めで格納されていた例を示している。
【0063】
そして、今回サイクル時には、実線で示すように、前回フュージョン物標中の遠距離ミリ波物標FFar1が前回単独の近距離ミリ波物標FNear2とフュージョン条件を満たしてフュージョンミリ波物標FMwr1が生成され、処理aとして矢印で示すように、フュージョンミリ波物標としてフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1に左詰めで格納される。また、今回サイクル時に新規に出現した遠距離ミリ波物標FFar2が前回フュージョン物標中の近距離ミリ波物標FNear1とフュージョン条件を満たしてフュージョンミリ波物標FMwr2が生成され、処理aとして矢印で示すように、フュージョンミリ波物標としてフュージョンミリ波物標箱19の物標番号2に左詰めで新規フラグとして格納される。
【0064】
また、図7は、融合処理および分裂処理の組合せ処理の他例を示す模式図である。図7は、前回サイクル時には、破線で示すように、遠距離ミリ波物標FFar1と近距離ミリ波物標FNear1とがフュージョン条件を満たしてフュージョンミリ波物標FMwr1が生成され、処理aとして矢印で示すように、フュージョンミリ波物標としてフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1に左詰めで格納されていた例を示している。
【0065】
そして、今回サイクル時には、実線で示すように、遠距離ミリ波物標FFar1がフュージョン条件を満たさない遠距離ミリ波単独物標に分裂し、処理fとして矢印で示すように、フュージョンミリ波物標がそれまで占有していたフュージョンミリ波物標箱19の物標番号1を今回の遠距離ミリ波単独物標が引継ぐように格納される。一方、新規な遠距離ミリ波物標FFar2と近距離ミリ波物標FNear1とがフュージョン条件を満たしてフュージョンミリ波物標FMwr2が生成され、処理aとして矢印で示すように、フュージョンミリ波物標箱19の空欄に左詰め、ここでは物標番号2の欄に新規フラグとして登録される。これに対応して、遠距離ミリ波物標箱17の遠距離ミリ波物標FFar2に対応するリンク欄17aに物標番号2が新規フラグとして登録される。
【0066】
次に、衝突予測部15について説明する。フュージョンロジック部13によりフュージョンミリ波物標(遠距離ミリ波単独物標や近距離ミリ波単独物標も含む)が設定された場合(つまり、前方車両が存在する場合)、衝突予測部15は、車速を考慮して、フュージョンミリ波物標(遠距離ミリ波単独物標や近距離ミリ波単独物標も含む)に設定されている前方車両までの距離に基づいて衝突する可能性の段階(例えば、可能性が高い、低い、無しの3段階)を設定する。
【0067】
また、車両制御部16は、衝突予測部15により衝突する可能性の段階が設定されると、衝突する可能性の段階に応じて、ブレーキECU4、サスペンション制御アクチュエータ5、シートベルトアクチュエータ6、ブザー7を制御する。
【0068】
次に、衝突軽減装置1における動作について説明する。特に、衝突軽減ECU10のフュージョンロジック部13における物標探索処理、フュージョン物標生成処理および格納制御処理の流れは図8〜図11に示すフローチャートを参照して説明する。図8および図9は、本実施の形態に係るフュージョン処理の流れを前半、後半に分けて示す概略フローチャートであり、図10は、融合処理例を示すサブルーチンであり、図11は、分裂・消滅処理例を示すサブルーチンである。
【0069】
遠距離ミリ波レーダ2および近距離ミリ波レーダ3では、前方にミリ波を走査しながら送信するとともにその反射波を受信し、その送受信データをそれぞれレーダ信号として衝突軽減ECU10に送信する。
【0070】
衝突軽減ECU10は、遠距離ミリ波レーダ2および近距離ミリ波レーダ3からのそれぞれのレーダ信号を受信する。そして、遠距離ミリ波物標設定部11は、一定時間毎に、レーダ信号によるレーダ情報に基づいて遠距離ミリ波物標を遠距離ミリ波物標箱17に設定する。また、近距離ミリ波物標設定部12は、一定時間毎に、レーダ信号によるレーダ情報に基づいて近距離ミリ波物標を近距離ミリ波物標箱18に設定する。
【0071】
そして、フュージョンロジック部13は、一定時間毎に、以下の物標探索処理、フュージョンミリ波物標生成処理および格納制御処理を行う。まず、更新サイクルを監視し(ステップS101)、更新サイクルの時期であれば(ステップS101:Yes)、遠距離ミリ波物標箱17および近距離ミリ波物標箱18に格納されている遠距離ミリ波物標および近距離ミリ波物標を取得する(ステップS102)。ここで、処理対象となる遠距離ミリ波物標を物標番号1から順に行わせるために、遠距離ミリ波物標箱17の物標番号nを1に設定する(ステップS103)。そして、物標番号1の遠距離ミリ波物標を基準にフュージョン条件を判定するための探索範囲を設定し、この探索範囲内にフュージョン条件を満たす近距離ミリ波物標が存在するか否かを判定する(ステップS104)。
【0072】
フュージョン条件を満たす近距離ミリ波物標が存在する場合には(ステップS104:Yes)、今回が新規登録時であるか否かを判定する(ステップS105)。新規登録時であった場合(ステップS105:Yes)、フュージョン条件を満たすことにより生成されたフュージョンミリ波物標をフュージョンミリ波物標箱19に左詰めで登録する(ステップS106)。さらに、遠距離ミリ波物標箱17、近距離ミリ波物標箱18の対応する遠距離ミリ波物標、近距離ミリ波物標のリンク欄17a,18aにフュージョンミリ波物標の物標番号を登録してリンクさせる(ステップS107)。
【0073】
また、新規登録時でなれば(ステップS105:No)、前回の更新サイクル時にはミリ波単独物標であったか否かを判定する(ステップS108)。前回の更新サイクル時にミリ波単独物標でなかった場合には(ステップS108:No)、フュージョン条件を満たすことにより生成されたフュージョンミリ波物標を、フュージョンミリ波物標箱19の対応するフュージョンミリ波物標の物標番号を引継ぐ位置に登録する(ステップS109)。さらに、遠距離ミリ波物標箱17、近距離ミリ波物標箱18の対応する遠距離ミリ波物標、近距離ミリ波物標のリンク欄17a,18aにフュージョンミリ波物標の物標番号を登録してリンクさせる(ステップS107)。
【0074】
一方、前回の更新サイクル時にミリ波単独物標であった場合には(ステップS108:Yes)、後述する融合処理を行う(ステップS200)。
【0075】
そして、次にフュージョン判定の処理対象とすべき遠距離ミリ波物標が残っているか否かを判定する(ステップS110)。フュージョン条件を満たす近距離ミリ波物標が存在しない場合も(ステップS104:No)、ステップS110にジャンプする。残っていれば(ステップS110:Yes)、物標番号nを+1インクリメントすることにより(ステップS111)、フュージョン判定の処理対象として次の遠距離ミリ波物標を設定し、ステップS104以下の処理を同様に繰返す。
【0076】
一方、次にフュージョン判定の処理対象とすべき遠距離ミリ波物標が残っていなければ(ステップS110:No)、上述のフュージョン判定処理結果として、フュージョン条件を満たさず、フュージョンできなかったミリ波単独物標が存在するか否かを判定する(ステップS121)。存在する場合には(ステップS121:Yes)、今回が新規登録時であるか否かを判定し(ステップS122)、新規登録時でなれば(ステップS122:No)、前回の更新サイクル時にはフュージョンミリ波物標であったか否かを判定する(ステップS123)。新規登録時であった場合(ステップS122:Yes)、または前回の更新サイクル時にフュージョンミリ波物標でなかった場合には(ステップS123:No)、そのミリ波単独物標として遠距離ミリ波物標があるか否かを判定する(ステップS124)。
【0077】
遠距離ミリ波物標がある場合には(ステップS124:Yes)、その遠距離ミリ波物標を遠距離ミリ波単独物標として、フュージョンミリ波物標箱19の空欄に左詰めで登録する(ステップS125)。この場合、フュージョンミリ波物標の処理後であり、フュージョンミリ波物標があれば、フュージョンミリ波物標に続けて左詰めで格納することとなる。併せて、遠距離ミリ波物標箱17の対応する遠距離ミリ波物標のリンク欄17aにフュージョンミリ波物標箱19に登録されたこの遠距離ミリ波単独物標の物標番号を登録してリンクさせる(ステップS126)。これらステップS125,S126の処理を、未処理の遠距離ミリ波物標がなくなるまで繰返す(ステップS127)。
【0078】
そして、遠距離ミリ波物標の処理が終了すると(ステップS124:NoまたはステップS127:No)、近距離ミリ波物標を処理対象に設定し、近距離ミリ波単独物標として、フュージョンミリ波物標箱19の空欄に左詰めで登録する(ステップS128)。この場合、フュージョンミリ波物標および遠距離ミリ波単独物標の処理後であり、フュージョンミリ波物標、遠距離ミリ波単独物標があれば、フュージョンミリ波物標、遠距離ミリ波単独物標に続けて左詰めで格納することとなる。併せて、近距離ミリ波物標箱18の対応する近距離ミリ波物標のリンク欄18aにフュージョンミリ波物標箱19に登録されたこの近距離ミリ波単独物標の物標番号を登録してリンクさせる(ステップS129)。これらステップS128,S129の処理を、未処理の遠距離ミリ波物標がなくなるまで繰返す(ステップS130)。
【0079】
一方、前回の更新サイクル時にフュージョンミリ波物標であった場合には(ステップS123:Yes)、後述する分裂・消滅処理を行う(ステップS300)。
【0080】
また、ミリ波単独物標が存在しない場合(ステップS121:No)、またはミリ波単独物標の処理が終了した場合(ステップS130:No)には、遠距離ミリ波物標箱17、近距離ミリ波物標箱18の空欄に不検知番号を登録する(ステップS131)。
【0081】
次に、図10を参照して融合処理について説明する。ステップS108の判定で、前回の更新サイクル時にミリ波単独物標であった場合には、まず、近距離ミリ波単独物標のみであるか否かを判定する(ステップS201)。近距離ミリ波単独物標のみでなく遠距離ミリ波単独物標も存在する場合には(ステップS201:No)、フュージョンミリ波物標箱19の遠距離ミリ波物標が登録されている物標番号を引継ぐ位置に今回のフュージョンミリ波物標を格納する(ステップS202)。そして、遠距離ミリ波物標箱17、近距離ミリ波物標箱18の対応する遠距離ミリ波物標、近距離ミリ波物標のリンク欄17a,18aに今回のフュージョンミリ波物標の物標番号を登録してリンクさせる(ステップS203)。
【0082】
一方、近距離ミリ波単独物標のみであった場合には(ステップS201:Yes)、フュージョンミリ波物標箱19の近距離ミリ波物標が登録されている物標番号を引継ぐ位置に今回のフュージョンミリ波物標を格納する(ステップS204)。そして、遠距離ミリ波物標箱17、近距離ミリ波物標箱18の対応する遠距離ミリ波物標、近距離ミリ波物標のリンク欄17a,18aに今回のフュージョンミリ波物標の物標番号を登録してリンクさせる(ステップS203)。この際、遠距離ミリ波物標箱17の対応する遠距離ミリ波物標のリンク欄17aに登録される今回のフュージョンミリ波物標の物標番号は新規フラグとして扱う。
【0083】
また、図11を参照して分裂・消滅処理について説明する。ステップS123の判定処理で、前回の更新サイクル時にフュージョンミリ波物標であった場合には、まず、遠距離ミリ波物標があるか否かを判定する(ステップS301)。遠距離ミリ波物標がある場合には(ステップS301:Yes)、関連する近距離ミリ波物標があるか否かを判定する(ステップS302)。近距離ミリ波物標がある場合には(ステップS302:Yes)、フュージョンミリ波収納19に格納されているフュージョンミリ波物標の物標番号を引継ぐ位置に遠距離ミリ波単独物標を登録するとともに、空欄の左詰め位置に近距離ミリ波単独物標を登録する(ステップS303)。登録された近距離ミリ波単独物標は、新規フラグとして扱われる。そして、遠距離ミリ波物標箱17、近距離ミリ波物標箱18の対応する遠距離ミリ波物標、近距離ミリ波物標のリンク欄17a,18aに今回の遠距離ミリ波単独物標、近距離ミリ波単独物標のそれぞれの物標番号を登録してリンクさせる(ステップS304)。
【0084】
また、近距離ミリ波物標がない場合には(ステップS302:No)、関連する近距離ミリ波物標が消滅したこととなり、フュージョンミリ波収納19に格納されているフュージョンミリ波物標の物標番号を引継ぐ位置に遠距離ミリ波単独物標を登録する(ステップS305)。そして、遠距離ミリ波物標箱17の対応する遠距離ミリ波物標のリンク欄17aに今回の遠距離ミリ波単独物標の物標番号を登録してリンクさせる(ステップS306)。
【0085】
一方、遠距離ミリ波物標がなければ(ステップS301:No)、近距離ミリ波単独物標のみであり、フュージョンミリ波収納19に格納されているフュージョンミリ波物標の物標番号を引継ぐ位置に近距離ミリ波単独物標を登録する(ステップS307)。そして、近距離ミリ波物標箱18の対応する近距離ミリ波物標のリンク欄18aに今回の近距離ミリ波単独物標の物標番号を登録してリンクさせる(ステップS308)。
【0086】
このようなフュージョン処理によって、今回のフュージョンミリ波物標が登録された場合、衝突予測部15は、そのフュージョンミリ波物標に設定されている情報に基づいて衝突する可能性の段階を設定し、車両制御部16は、衝突する可能性の段階に応じて、ブレーキECU4、サスペンション制御アクチュエータ5、シートベルトアクチュエータ6、ブザー7を制御する。
【0087】
この際、フュージョンミリ波物標箱19においては、フュージョンしたりフュージョンしなかったりする揺らぎがあっても、前回の検出結果を引継ぐ形でフュージョンミリ波物標や遠距離ミリ波単独物標、近距離ミリ波単独物標を登録するので、極力、ある物標を最初に検知してから消滅するまで同じ物標番号として継続させることができる。よって、フュージョンミリ波収納箱19に格納された結果を利用する上で、例えば、同一フラグの物体の検出回数が多ければ多いほど、同一物体を経時的に連続して検知している可能性が高くその速度判定等を適正に行えることとなるので、同一フラグの物体の検出回数に基づいて、その物体を衝突回避制御の対象とするか否かの判定に供することができる。
【0088】
この制御によって、前方車両との衝突の可能性の低い段階では、シートベルトアクチュエータ6によるシートベルトの引き込みとブザー7によるブザー音の出力によって前方車両の接近を運転者に認識させる。さらに、前方車両との衝突の可能性が高くなると、ブレーキECU4による自動ブレーキ力による減速とサスペンション制御アクチュエータ5によるサスペンションの硬さ調節を行い、シートベルトアクチュエータ6によるシートベルトのさらなる引き込みによって乗員を強く拘束し、ブザー7によるブザー音の出力によって前方車両のさらなる接近を運転者に認識させる。
【0089】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。
【0090】
例えば、本実施の形態では、車両に搭載される衝突軽減装置への適用例で説明したが、車間距離制御装置、追従走行装置などの他の運転支援装置や周辺監視装置などの他の装置にも適用可能であり、物体検出装置単体としても活用可能である。また、検出対象としては、前方車両以外にも、歩行者や自転車などの他の物体を検出することも可能である。また、搭載対象としては、車両以外に、ロボットなどに搭載するようにしてもよい。
【0091】
また、本実施の形態では、遠距離ミリ波レーダ2と近距離ミリ波レーダ3とを設けた例で説明したが、物体検出手段としては2つに限らず、また、同種のレーダに限らない。例えば、異なる方法で物体を検出する異種の物体検出手段として、大きさ情報の取得に優れたCCDステレオカメラ等の撮像手段をミリ波レーダと組合せて用いるようにしてもよい。この場合、ミリ波レーダと撮像手段とのうちで、天候(好天か悪天かなど)や時間帯(昼間か夜間かなど)などの条件に応じて、より検出精度の高い方を特定の一つの物体検出手段として用いるように、選択的に切り替え制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本実施の形態に係る衝突軽減装置の構成図である。
【図2】物標番号格納処理を含むフュージョン処理例を示す模式図である。
【図3】融合処理における原則的なメモリ格納処理例を示す模式図である。
【図4】融合処理における例外的なメモリ格納処理例を示す模式図である。
【図5】分裂処理における原則的なメモリ格納処理例を示す模式図である。
【図6】融合処理および分裂処理の組合せ処理の一例を示す模式図である。
【図7】融合処理および分裂処理の組合せ処理の他例を示す模式図である。
【図8】本実施の形態に係るフュージョン処理の流れの前半を示す概略フローチャートである。
【図9】本実施の形態に係るフュージョン処理の流れの後半を示す概略フローチャートである。
【図10】融合処理例を示すサブルーチンである。
【図11】分裂・消滅処理例を示すサブルーチンである。
【符号の説明】
【0093】
2 遠距離ミリ波レーダ
3 近距離ミリ波レーダ
13a 物標探索処理ロジック部
13c 格納制御処理ロジック部
14 メモリ
19 フュージョンミリ波物標箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重複する領域において異なる方法で物体を検出する複数の物体検出手段を備える物体検出装置であって、
前記複数の物体検出手段でそれぞれ検出した物体が同一物体であるか否かを判定する判定手段と、
前記複数の物体検出手段で検出されて前記判定手段によって同一物体と判定されていない物体が、前記判定手段によって同一物体であると判定された場合には、前記複数の物体検出手段のうちの特定の一つの前記物体検出手段の検出結果を、同一物体であると判定された物体に継続して記憶部に保持させる格納制御手段と、
を備えることを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
重複する領域において異なる方法で物体を検出する複数の物体検出手段を備える物体検出装置であって、
前記複数の物体検出手段でそれぞれ検出した物体が同一物体であるか否かを判定する判定手段と、
前記複数の物体検出手段で検出されて前記判定手段によって同一物体と判定されていた物体が、前記判定手段によって同一物体でないと判定された場合には、前記複数の物体検出手段のうちの特定の一つの前記物体検出手段で検出した物体に、同一物体と判定された物体の検出結果を継続して記憶部に保持させる格納制御手段と、
を備えることを特徴とする物体検出装置。
【請求項3】
前記特定の一つの物体検出手段は、前記複数の物体検出手段のうちで相対的に高精度な検出能力を有する物体検出手段であることを特徴とする請求項1または2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記格納制御手段は、検出フラグを同一のフラグとすることにより、検出結果を継続して前記記憶部に保持させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−232411(P2007−232411A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51271(P2006−51271)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】