説明

物品の支持枠体

【課題】物品の支持枠体において、重量のある物品を確実に支持しつつ、梱包作業の省力化を図り、梱包コストを抑制する。
【解決手段】熱可塑性を有するプラスチック段ボール製の枠板材1と梁材2とから物品の支持枠体を構成し、枠板材1を加熱しつつ折り曲げて、枠板材1に、物品挿入口5を有する枠板部3と、その両側から垂下する脚片部4とを形成し、脚片部4及び梁材2に設けた切込6,7を噛み合わせて、梁材2で枠板材1を受架する。プラスチック段ボールの固化に伴い、枠板部3と脚片部4とが直角をなす状態で固定され、軽量でありながら、堅固な構造となり、耐水性及び耐久性を有し、反復使用やリサイクルが可能なものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のエンジンやトランスミッション等、重量のある物品の梱包に使用する支持枠体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のエンジン等の物品を運搬する際、下記特許文献1に記載したような運搬箱が使用されている。この運搬箱は、図12に示すように、鋼材とプラスチック段ボールとを組み合わせたパレット51及び各一対の側面板52,53から構成される。
【0003】
パレット51には、物品を一個ずつ支持する鋼材から組み立てた支持台54がボルトで取り付られ、エンジンの梱包に際しては、各支持台54に物品を積み込んだ後、パレット51の周囲に各一対の側面板52,53が立設される。
【0004】
また、木材とプラスチック段ボールとを組み合わせた運搬箱を使用することもあり、この場合、パレットに木製の角材を升目状に釘で打ち付けて支持枠体を形成し、この支持枠体で物品を支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−39054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような鋼製の支持台は、重量が大きく、取り扱いが困難であり、パレットに物品の個数分固定する作業に手間がかかるという問題がある。
【0007】
また、木製の支持枠体は、角材を釘でパレットに打ち付けるのに多大な手間を要するほか、木材には水分が含まれているので、梱包した物品が錆びるおそれがあり、その対策として、防錆処理に多額の費用がかかり、反復使用も困難であるという問題がある。
【0008】
そこで、この発明は、重量のある物品を確実に支持しつつ、梱包作業の省力化を図り、梱包コストを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明に係る物品の支持枠体は、熱可塑性を有するプラスチック段ボール製の枠板材と梁材とから構成し、枠板材を加熱しつつ折り曲げて、枠板材に、物品挿入口を有する枠板部と、その両側から垂下する脚片部とを形成し、脚片部及び梁材に設けた切込を噛み合わせて、梁材で枠板材を受架したのである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る物品の支持枠体は、熱可塑性を有するプラスチック段ボールを加熱して折り曲げ、常温への冷却に伴い固化させて、枠板材に枠板部と脚片部とを形成するので、枠板部と脚片部とが直角をなす状態で固定され、堅固な構造となって梁材に噛合し、エンジンやトランスミッション等の重量のある物品を、揺動することなく確実に支持できる。
【0011】
また、プラスチック段ボールから成るので、軽量で取り扱い易く、複数の物品を梱包する場合にも、パレットに1個載置するだけで、物品を支持することができ、梱包作業性を改善することができる。
【0012】
また、木材のように水分を含まないので、防錆処理にコストを要することがなく、耐水性を有するので、荷役作業時に水に濡れても強度が維持され、耐久性に優れるので、繰り返して使用できる。
【0013】
そして、廃棄する場合においても、単一素材であるため、分別することなく処分することができ、プラスチック資源としてリサイクルすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の第1実施形態に係る支持枠体の組立状態を示す斜視図
【図2】同上の枠板材と梁材との分離状態を示す斜視図
【図3】同上の(a)枠板材のブランクを示す平面図、(b)梁材を示す平面図
【図4】同上の(a)枠板材の折曲工程を示す一部拡大断面図、(b)同上の折曲後の状態を示す一部拡大断面図
【図5】同上の枠板材の完成状態を示す縦断側面図
【図6】同上の支持枠体のパレットへの設置状態を示す斜視図
【図7】同上のパレットの一対の長辺に側面板を立設した状態を示す斜視図
【図8】同上のパレットの周囲に側面板を立設した運搬箱の斜視図
【図9】この発明の第2実施形態に係る支持枠体の平面図
【図10】この発明の第3実施形態に係る支持枠体の組立状態を示す斜視図
【図11】同上の(a)枠板材のブランクを示す平面図、(b)梁材を示す平面図
【図12】従来の鋼製支持台を備えた運搬箱の組立過程を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1乃至図8に示す第1実施形態に係る支持枠体Fは、自動車のトランスミッションの運搬に使用するものであり、図1及び図2に示すように、複数の枠板材1と梁材2とを組み合わせて構成される。枠板材1及び梁材2は、熱可塑性を有するプラスチック段ボールを材料とするものである。
【0017】
図3(a)に折曲加工前のブランク状態で示すように、枠板材1には、トランスミッションを3個保持する長いものと、トランスミッションを2個保持する短いものとがあり、これらの枠板材1は、枠板部3となる部分を挟んで一対の脚片部4となる部分を設けたものとされている。
【0018】
枠板部3には、各トランスミッションを挿入する物品挿入口5が設けられ、脚片部4の先端縁には、梁材2の厚さに対応する複数の切込6が間隔をあけて設けられている。物品挿入口5の長手方向は、トランスミッションの軸方向に対応し、組立時に梁材2の延びる方向へ向けられている。
【0019】
また、図3(b)に示すように、梁材2には、上方となる端縁に枠板材1の厚さに対応する複数の切込7が間隔をあけて設けられている。
【0020】
いま、枠板材1に枠板部3と脚片部4とを形成する際には、図4(a)に示すように、先端が略直角をなす山型となったヒートバー8を、枠板材1のブランクの枠板部3と脚片部4の稜部となる部分に裏側から押し当てて、この部分を加熱して、変形可能な強度に軟化させ、V字状の溝を形成し、図4(b)に示すように、枠板部3と脚片部4とが直角をなすように折り曲げる。
【0021】
そして、プラスチック段ボールが常温への冷却に伴い固化すると、溝の内側面同士が固着され、図5に示すように、枠板材1は、枠板部3と脚片部4とが直角を維持した状態で揺動することなく固定されて、自立性を有するものとなる。
【0022】
上記のような枠板材1及び梁材2から支持枠体Fを組み立てるには、図2に示すように、長短の枠板材1を1個ずつ長手方向に並べて粘着テープ9等で接合し、この枠板材1を2列並べ、枠板材1に対し複数の梁材2を交差方向に並べて、図1に示すように、脚片部4と梁材2の切込6,7を噛み合わせ、梁材2で枠板材1を受架する。
【0023】
そして、このように組み立てた支持枠体Fを使用して、従来と同様の鋼材とプラスチック段ボールから成る運搬箱によりトランスミッションを梱包する際には、まず、図6に示すように、支持枠体Fをパレット51の上面に載置する。
【0024】
次に、図7に示すように、支持枠体Fの各物品挿入口5にそれぞれトランスミッションを挿入し、トランスミッションの底部に位置するオイルパンのフランジを枠板部3の物品挿入口5に臨む部分に載せ掛けて、トランスミッションを支持し、パレット51の一対の長辺に側面板52を立設する。
【0025】
その後、図8に示すように、パレット51の一対の短辺に側面板53を立設し、側面板52の両側上部を側面板53の両側上部の突出部分で押さえ、パレット51の長辺及び短辺に設けた鉄片を、側面板52の外面に沿い、側面板53のプラスチック段ボールに突き刺さるように叩き入れて、パレット51と側面板52,53とを一体化する。
【0026】
このような支持枠体Fを使用してトランスミッション等の物品を梱包すると、枠板部3と脚片部4とが直角をなす状態で固定され、枠板材1が堅固な構造となって梁材2に噛合していることから、重量のある物品を揺動することなく確実に支持できる。
【0027】
また、支持枠体Fは、プラスチック段ボールから成るので、軽量で取り扱い易く、複数の物品を梱包する場合にも、パレット51に1個載置するだけで、物品を支持することができ、梱包作業性を改善することができる。
【0028】
また、木材のように水分を含まないので、防錆処理にコストを要することがなく、耐水性を有するので、荷役作業時に水に濡れても強度が維持され、耐久性に優れるので、繰り返して使用できる。
【0029】
さらに、プラスチック段ボールは、多様な厚さや色合いのものが供給されているので、物品の重量に応じて、適宜の厚さを有するプラスチック段ボールを選択することができ、物品の種類ごとに色分けすることもできる。
【0030】
そして、廃棄する場合においても、単一素材であるため、分別することなく処分することができ、プラスチック資源としてリサイクルすることができる。
【0031】
なお、トランスミッションが軸方向に長く、第1実施形態のような配列では規定寸法の運搬箱に収納できない場合には、図9に示す第2実施形態に係る支持枠体Fのように、物品挿入口5を梁材2の延びる方向に対し傾けて、各列のトランスミッションが干渉しないようにするとよい。
【0032】
また、トランスミッションよりも重量があるエンジンを梱包する際には、図10及び図11に示す第3実施形態に係る支持枠体Fのように、枠板材1だけでなく、梁材2もまた、プラスチック段ボールを加熱しつつ折り曲げて、底板部10の両側から梁板部11が垂直に起立する形状とすると、さらに強度が向上し、エンジンを確実に支持できる。
【0033】
ところで、上記実施形態では、鋼材とプラスチック段ボールから成る運搬箱に物品を収納する場合を例示したが、木材とプラスチック段ボールとを組み合わせた運搬箱を使用する場合にも、上記実施形態に係る支持枠体を挿入して、物品を確実に支持した状態で、容易に梱包することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 枠板材
2 梁材
3 枠板部
4 脚片部
5 物品挿入口
6,7 切込
8 ヒートバー
9 粘着テープ
10 底板部
11 梁板部
,F,F 支持枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性を有するプラスチック段ボール製の枠板材(1)と梁材(2)とから構成し、枠板材(1)を加熱しつつ折り曲げて、枠板材(1)に、物品挿入口(5)を有する枠板部(3)と、その両側から垂下する脚片部(4)とを形成し、脚片部(4)及び梁材(2)に設けた切込(6,7)を噛み合わせて、梁材(2)で枠板材(1)を受架した物品の支持枠体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−168050(P2010−168050A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9632(P2009−9632)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(594126746)西田製凾株式会社 (14)
【Fターム(参考)】