説明

物品保持構造形成方法、および梱包材

【課題】シート部材を折り曲げて梱包材を形成するに際して、物品保持構造を容易に形成することができる技術を提供すること。
【解決手段】本発明に係る物品保持構造形成方法は、
シート部材を谷折り線で折り曲げることで形成される隣接する2つの面に梱包される物品の少なくとも一部を当接させる物品保持構造を形成する方法であって、
平面で板状のシート部材に、
任意の間隔の2本の切れ込みを形成し、
前記2本の切れ込みの両端から少し内側に、それぞれ前記切れ込みに直交する2本の折り線を形成し、
前記谷折り線は、前記2本の切れ込みの外側に形成し、
当該シート部材を、前記谷折り線で折り曲げることにより、前記2本の切れ込みと2本の折り線によって囲まれた領域を斜めに立ち上がらせて、斜めの物品保持構造を形成することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1枚の板状の段ボール等のシート部材を折り曲げて梱包材を形成する技術に関し、特には、前記梱包材に物品保持構造を簡単に形成する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、板状の段ボールに折り線や切れ込みを設けて折り曲げて、例えば箱状の梱包材を形成することが行われている。このような梱包材は、特許文献1などにおいて開示されている。
その一般的な例を図7、8を参照して説明する。
100は素材となる板状の段ボールであり、この段ボール100で物品を保持して収納するための梱包材200を構成する基本手順を説明する。
【0003】
まず、前記段ボール100を、破線で示した谷折り線110aで谷折りして、例えば底面100aと右側面100bを形成して、図8に示したような梱包材200を形成する。そして、この梱包材200の2つの面に囲まれた空間に、電子機器等の物品300を収納する。なお、前記谷折り線110aは、当該段ボール100の段ボール目に直交する方向としている。
このとき、前記収納した物品300が、梱包材200内の空間でずれることを防止するために、物品保持構造400が形成されている。前記物品保持構造400は、物品300の外形寸法に応じた位置に複数設けることがある。
【0004】
1つの物品保持構造400を、前記1枚の板状の段ボール100から構成するために、前記段ボール100には、例えば、図7に示したように、前記谷折り線110aに直交する2本の切れ込み120、120を設ける。さらに、前記2本の切れ込み120、120の両端を結ぶ折り線130,130と、前記谷折り線110aと平行な折り線140を設ける。
このようにして、切れ込みと折り線を設けた段ボール100を谷折り線110aで折り曲げて底面100aと右側面100bとを直角に折り曲げて空間を形成した後、前記2本の切れ込み120、120で挟まれた領域を前記空間側に押し出して、図8に示したような断面形状が矩形の物品保持構造400を形成する。
【0005】
図7における折り線140は、図8の状態においては山折りとなるため、組み立て作業を容易にするためには、前記折り線140は山折りを容易とするために、裏面から折り線を形成することが望まれるが、そのためには、2つの折り線130,130と谷折り線110aとは表側から折り線を入れ、その後、段ボール100を裏表反転させてから前記折り線140を設けるという複雑な工程が必要となる。
また、折り線を入れるための型が、2つの折り線130,130と谷折り線110cを形成する分と、折り線140を形成する分とで2つ必要になり、加工費用が高くなるという問題がある。
また、このような矩形の物品保持構造を形成するために2本の切れ込み120、120で挟まれた領域を押し出す作業は、大変指先に力の必要な作業であり、多数の物品保持構造を形成することは大変苦痛を伴った作業であった。
なお、折り線140には、貫通しない切れ目を設けることで、組み立てやすくなるが、段ボールがその部分で切れやすくなり、特に、強度が要求される場合や、幅が狭くなる場合には不適切である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭58−163473(実願昭57−60641)号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、1枚の板状の段ボール等のシート部材を折り曲げて梱包材を形成するに際して、物品保持構造を容易に形成することができる技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る物品保持構造形成方法は、
シート部材を谷折り線で折り曲げることで形成される隣接する2つの面に梱包される物品の少なくとも一部を当接させる物品保持構造を形成する方法であって、
平面で板状のシート部材に、
任意の間隔の2本の切れ込みを形成し、
前記2本の切れ込みの両端から少し内側に、それぞれ前記切れ込みに直交する2本の折り線を形成し、
前記谷折り線は、前記2本の切れ込みの外側に形成し、
当該シート部材を、前記谷折り線で折り曲げることにより、前記2本の切れ込みと2本の折り線によって囲まれた領域を斜めに立ち上がらせて、斜めの物品保持構造を形成することを特徴としている。
請求項2では、
前記2本の折り線に平行に、別の折り線をさらに形成する。
【0009】
請求項3に係る梱包材は、
シート部材を谷折り線で折り曲げることで形成される隣接する2つの面に梱包される物品の少なくとも一部を当接させる物品保持構造が形成された梱包材であって、
平面で板状のシート部材には、
任意の間隔の2本の切れ込みが形成され、
前記2本の切れ込みの両端から少し内側に、それぞれ前記切れ込みに直交する2本の折り線が形成され、
前記谷折り線は、前記2本の切れ込みの外側に形成され、
当該シート部材が、前記谷折り線で折り曲げられて、前記2本の切れ込みと2本の折り線によって囲まれた領域によって、斜めの物品保持構造が形成されている。
請求項4では、
前記2本の折り線に平行に、別の折り線がさらに形成されている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る物品保持構造形成方法によれば、
平面で板状のシート部材に、
任意の間隔の2本の切れ込みを形成し、
前記2本の切れ込みの両端から少し内側に、それぞれ前記切れ込みに直交する2本の折り線を形成し、
前記谷折り線は、前記2本の切れ込みの外側に形成し、
当該シート部材を、前記谷折り線で折り曲げることにより、前記2本の切れ込みと2本の折り線によって囲まれた領域を斜めに立ち上がらせて、シート部材に物品保持構造を容易に形成することができる。
請求項2によれば、
前記2本の折り線に平行に、別の折り線をさらに形成したので、複数の折り線の部分でシート部材が座屈しやすくなり、
当該シート部材を、前記外側折り線で谷折りして前記谷折り部近傍に斜めの物品保持構造を形成する作業がさらに容易になる。
【0011】
請求項3に係る梱包材によれば、
当該シート部材が、谷折り線で折り曲げられて、2本の切れ込みと2本の折り線によって囲まれた領域によって、斜めの物品保持構造が形成されているので、従来の加工装置で、上記効果の得られる物品保持構造が形成された梱包材を得ることができる。
請求項4によれば、
前記2本の折り線に平行に、別の折り線がさらに形成されているので、複数の折り線の部分でシート部材が座屈しやすくなっており、上記効果の得られる梱包材がさらに容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る物品保持構造形成方法に用いる段ボールの平面図である。
【図2】本発明に係る物品保持構造形成方法の説明図である。
【図3】本発明に係る物品保持構造形成方法の説明図である。
【図4】本発明に係る梱包材の使用状態の説明図である。
【図5】別実施例に係る物品保持構造形成方法に用いる段ボールの平面図である。
【図6】図6の段ボールによる物品保持構造形成方法の説明図である。
【図7】従来例の物品保持構造形成方法に用いる段ボールの斜視図である。
【図8】従来例の物品保持構造の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る物品保持構造形成方法を実施するための形態を示した図1において、
1は素材となるシート部材としての板状の段ボールであり、この段ボール1で物品を収納するための梱包材を構成する基本手順を説明する。
【0014】
まず、前記段ボール1には、3本の破線で示した谷折り線1a,1b,1cを設ける。これらの3本の谷折り線によって前記段ボール1は4つの面10a,10b,10c,10dに分けられる。前記谷折り線は、当該段ボール1の段ボール目に直交する向きに形成する。
次に、2つの物品保持構造を形成する場合には、前記段ボール1の所定の2カ所に物品保持構造を形成するための切れ込みと折り線とを、以下のように形成する。
【実施例1】
【0015】
以下においては、1つの物品保持構造3を、前記谷折り線1cの近傍に形成する場合を、図1、2、3、4を参照して説明する。
まず、物品保持構造を形成すべき所定位置に前記谷折り線1cに直交する切れ込み31を入れる。この切れ込み31は裏面まで貫通した切れ込みである。
そして、前記切れ込み31に平行な切れ込み32を同様に設ける。これら2本の切れ込みの間隔は、形成しようとする物品保持構造に求められる強度等の条件に応じて適宜決定するとよい。これらの切れ込みは、段ボールの隣接する2つの面10c,10dの両面にまたがっている必要がある。
【0016】
次に、前記切れ込み31の一方の端と前記切れ込み32の一方の端とを結ぶ折り線33を形成する。さらに、前記折り線33と平行であり且つ前記折り線33の少し内側(前記谷折り線1c側)に同様の折り線34を形成する。このとき、前記折り線33は山折りしやすい折り線とし、前記折り線34は谷折りしやすい折り線とすることが望まれるが、そのような加工は手間がかかるので、両方とも単に押しつぶして形成した折り線で十分である。
【0017】
次に、前記切れ込み31、32の他方の端どうしを結ぶ折り線35と、その内側の折り線36とを同様に形成する。
ここで重要なことは、前記谷折り線1cは、2本の切れ込み31,32に挟まれた領域3P内には形成せずに外部にのみ形成することである。
ここでは、2本の切れ込み31,32と、2本の折り線34,36とに挟まれた領域3Pは、前記谷折り線1cで折り曲げた場合に前記領域3Pにかかる力(本実施例では段ボール目の方向にかかる力)では容易には折り曲げられない板状の領域となっていることが必要なのである。
以上のようにして、1つの物品保持構造3を形成するための切れ込みと折り線とを形成する。同様の切れ込みと折り線は、他の物品保持構造4を形成する位置にも同様に形成する。
【0018】
以上のようにして、3本の谷折り線1a,1b,1cに加えて、2つの物品保持構造を形成するための切れ込みと折り線とが形成された段ボール1を、図2のように、前記3本の谷折り線1a,1b,1cの部分で谷折りして梱包材を組み立てる。
このとき、1つの物品保持構造3が、前記谷折り線1cの近傍に形成される過程を図3を参照して説明する。
図3の(A)は、前記谷折り線1cで谷折りする前の状態の側面断面図を示し、図3の(B)は、前記谷折り線1cで少し谷折りした状態の側面断面図を示し、図3の(C)は、前記谷折り線1cで直角に谷折りした状態の側面断面図を示している。
【0019】
図3の(B)に示したように、外部から力を加えて、前記谷折り線1cで少し谷折りすると、段ボールの2つの面10c、10dが近づくため、前記折り線33,34と折り線35,36との距離は、図3の(A)の状態より近づく。しかし、2本の折り線34,36とに挟まれた領域3Pは、前述したように、前記谷折り線1cで折り曲げた場合に前記領域3Pにかかる力(本実施例では段ボール目の方向にかかる力)では容易には折り曲げられない板状の領域であるので、前記両端の折り線33,35が自然に座屈して山折りとなり、前記内側の折り線34,36が自然に座屈して谷折となり、図3の(C)に示したように、前記2本の折り線34,36とに挟まれた領域3Pが、前記谷折り線1cの近傍において自然に斜めに配置され、谷折りするための力を加えるだけで、物品保持構造3が自然に形成されるのである。
なお、状況によっては、図3の(D)の状態に座屈する場合や、図3の(E)のように一方だけ折れる場合もあるが、いずれにせよ、谷折りするための力を加えるだけで、斜めの物品保持構造3がほぼ自然に形成されるのである。
【0020】
同様に、他の物品保持構造4も形成されるのである。
このようにして、図4に示したように、2カ所に物品保持構造3、4が形成された梱包材2ができあがる。この梱包材2は請求項3、4に記載された梱包材である。
前記梱包材2に、電子部品等の物品7を収納するときには、前記2カ所に形成された物品保持構造3、4の間に前記物品7を挟んだ状態で収納する。収納された前記物品7は前記2カ所に形成された物品保持構造3、4の間に保持されるので、輸送途中等において傾いたり動かされたりしても、前記物品に大きな衝撃は加わらないので、前記物品を安全に輸送することができるのである。
本発明によれば、以上のようにして、所定の切れ込みと折り線を形成した段ボールに、谷折りするための力を加えるだけで、斜めの物品保持構造を形成することができるので、従来のような矩形の物品保持構造を形成する場合に比べて、物品保持構造が形成された梱包材を、容易に組み立てることができる。
【実施例2】
【0021】
以上の実施例1においては、1つの物品保持構造を形成するに際して、折り線を4カ所設けたが、折り線は4カ所に限定されるものではなく、2カ所以上であれば、3カ所でも、5カ所以上でもよい。また、使用する段ボールは紙製に限らずプラスチック製でもよい。
図5には、2カ所の折り線を形成する場合の段ボール5を示した。この図に示したように、2つの切れ込み51,52の両端より少し内側に、2つの折り線53,54を形成する。この折り線53,54は谷折りが好ましい。このようにして、折り線を2カ所だけ形成した段ボール5を谷折り線5cで折り曲げると、図6に示したように、2つの切れ込み51,52と、2つの折り線53,54で囲まれた領域5Pは、実施例1における領域3Pと同様に、容易には折り曲げられない板状の領域となっているので、2つの折り線53,54に谷折りする方向への力がかかって、谷折りされる。そのため、前記2つの折り線53,54の外側の領域が変形し、図示したような状態となって、2つの折り線53,54で囲まれた領域5Pが斜めに配置され物品保持構造6が自然に形成されるのである。
【0022】
切れ込みの長さが同じ場合には、実施例1の物品保持構造3、4における2つの折り線34,36の間隔は、実施例2の物品保持構造6における2つの折り線53,54の間隔より広くできるので、実施例1の物品保持構造3、4の方が大きな物品を固定するのに適しているという効果がある。
逆に、実施例2の物品保持構造6の方が折り線の加工が少なくてすむという効果がある。
【0023】
上記構成の物品保持構造3、4、6は、ひとつの梱包材に何カ所設けてもよい。
以上のように、本発明によれば、物品保持構造を極めて容易に形成することができるので、優れた作業効率が得られる。また、上記構成の物品保持構造を形成するための切れ込みと折り線は、従来の標準的な片面からの段ボール加工装置を用いて加工することができるので、低コストで実施することができる。
なお、前記段ボールに代えて、種々の板状のシート部材を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、段ボールを用いた梱包材に限らず、種々の構造に応用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 段ボール、シート部材
1c 谷折り線
2 梱包材
3、4 物品保持構造
31,32 切れ込み
34,36 折り線、内側の折り線
33,35 別の折り線、外側の折り線
3P 領域
5 段ボール
5c 谷折り線
51,52 切れ込み
53,54 折り線
5P 領域
6 物品保持構造
7 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート部材を谷折り線で折り曲げることで形成される隣接する2つの面に梱包される物品の少なくとも一部を当接させる物品保持構造を形成する方法であって、
平面で板状のシート部材に、
任意の間隔の2本の切れ込みを形成し、
前記2本の切れ込みの両端から少し内側に、それぞれ前記切れ込みに直交する2本の折り線を形成し、
前記谷折り線は、前記2本の切れ込みの外側に形成し、
当該シート部材を、前記谷折り線で折り曲げることにより、前記2本の切れ込みと2本の折り線によって囲まれた領域を斜めに立ち上がらせて、斜めの物品保持構造を形成することを特徴とする梱包材の物品保持構造形成方法。
【請求項2】
前記2本の折り線に平行に、別の折り線をさらに形成することを特徴とする請求項1に記載の梱包材の物品保持構造形成方法。
【請求項3】
シート部材を谷折り線で折り曲げることで形成される隣接する2つの面に梱包される物品の少なくとも一部を当接させる物品保持構造が形成された梱包材であって、
平面で板状のシート部材に、
任意の間隔の2本の切れ込みが形成され、
前記2本の切れ込みの両端から少し内側に、それぞれ前記切れ込みに直交する2本の折り線が形成され、
前記谷折り線は、前記2本の切れ込みの外側に形成され、
当該シート部材が、前記谷折り線で折り曲げられて、前記2本の切れ込みと2本の折り線によって囲まれた領域によって、斜めの物品保持構造が形成されたことを特徴とする梱包材。
【請求項4】
前記2本の折り線に平行に、別の折り線がさらに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の梱包材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−11758(P2011−11758A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155265(P2009−155265)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】