説明

物品判別装置、物品判別方法、および物品判別プログラム

【課題】 詳細な分析データが存在する特定の物品に限定されることなく、幅広い物品について、低コストでその物品の判別を行うことができるようにすることを目的とする。
【解決手段】 飲食物識別装置は、ユーザXの操作によって入力された飲食物種類を受け付け、検査物分光分析器によって分光分析を行い、分析結果として検査物スペクトルを格納する。次いで、波数範囲比較型類似度計算部は、検査物種類と、検査物スペクトルとにもとづいて、類似度判定処理を実行する。類似度判定処理では、格納されている品名別スペクトル対応表ごとに、検査物スペクトルと品名別スペクトルとの差を示す全体距離が算出されたあと、その算出結果が比較され、全体距離が最も小さい品名別スペクトル対応表の品名が、検査物スペクトルを持つ検査物に最も類似している品名であると判断され、その品名と全体距離とが判定結果として出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物である飲食物などの物品の分光分析結果にもとづいて検査対象物を判別する物品判別装置、物品判別方法、および物品判別プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品を写真で撮影するときに、その成分や味も同時に写真に記録できたらと思うことがあるが、そのような機械は未だ存在しない。レストランでおいしいワインを飲んだ時に、そのワインの味を記録しておきたいと思っても、カメラで撮影できるのは、ワインの色やボトルラベルなどの外観のみである。
【0003】
従来から、食品を分析する手法がいくつか提案されている。その手法を大別すると、図14に示すように、化学センサによって食品を味わう人間の舌の味覚をシミュレートする手法と、光学センサによって食品の成分分析をする手法とがあった。
【0004】
前者の代表的な研究としては、人間の味覚の認知過程を研究するものがある。この分析方法によれば、ある食品が入力として与えられると、化学センサによって、その食品の甘味、塩味、苦味、酸味、うまみがそれぞれ計量され、食品の味覚が擬似的に表現されることになる。研究例として、いくつかの異なるブランドのビールやコーヒーの味覚の差を表現した事例や、「うに」の味覚値と「しょうゆ+プリン」の味覚値とが似ていることを示した事例などがある。
【0005】
一方、後者の方法には、分光分析法と呼ばれるものがある。「分光分析法」とは、計測対象となる物質に対して種々の電磁波(赤外線やX線等)を照射し、その対象物質に含まれる成分が何であるかを識別したり、ある成分の有無を識別したり、ある成分の含有量を定量化したりする分析方法を意味する。
【0006】
ここで、「分光分析法」について簡単に説明する。「分光分析法」の原理は、各物質ごとに固有の波数の電磁波を放出あるいは吸収することにもとづく。なお、「波数」とは、1[cm]の間に存在する波の数を示す。「波数」と波を表すのに一般的に使われる「波長(マイクロメートル)」との間の換算式は、波長(マイクロメートル)=10000/波数[1/cm]となる。
【0007】
図15は、検査物に電磁波をあてて、その吸光度を測定する原理を示す概念図である。「分光分析法」では、図15に示すように、照射した赤外線の入射光とその反射光とを比較することによって赤外線の吸収の度合い(吸光度)が測定される。
【0008】
図16は、米(ライス)の近赤外スペクトルの例を示す説明図である。図16に示すように、検査物として米(ライス)を使った場合、米の構成要素ごとに、注目すべき波長帯が異なることがわかる。図16(A)に示すグラフの縦軸は吸光度であり、図16(B)に示すグラフの縦軸はその2次微分値である。なお、図16(B)に示す例では、横軸は波数ではなく波長を使っている。
【0009】
吸光度Aは、A=−log(透過率)で定義される。Lambert-Beerの法則によると、吸光度は濃度に比例するので、吸光度を測定することで含有濃度も推定できる。分析を行う場合、縦軸を吸光度としても、その2次微分値としても、原理的な差異はない。しかし、きわめて微量成分の吸収を見ているために、吸光度スペクトルのベースラインなどのずれと、吸収ピークとの区別などが付きにくいため、2次微分値を用いることもある。2次微分することによって、ベースラインのずれの補正が可能になったり、小さなピークの抽出が可能になるからである。
【0010】
このように、分光分析法は、ある物質に電磁波(食品を対象にした場合は、その中でも、特に近赤外と中赤外の電磁波)を照射して、その物質に固有なスペクトル波形を得るものである。従って、ある食品に赤外線を照射し、その吸収スペクトルを記録することで、その食品の成分を記録することができると言える。
【0011】
上記のように、分光分析を行うことによって食品の食味や成分分析を行う装置は、従来から提案されている(例えば、特許文献1−2参照)。
【0012】
従来においては、例えば、分光分析器を用いてメロンの糖度を推定するようにしたものが既に実用化されている。また、分光分析の原理にもとづいて、食品工場における品質を安定させるための生産管理システムも存在している。なお、米の食味計などは、その点数が米の卸流通価格に影響を与えている程、その精度が認められてきている。
【0013】
【特許文献1】特開平6−313754号公報
【特許文献2】特開平8−29335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した従来の手法のうち、化学センサによって食品の味覚を擬似的に表現する手法では、食品に対する味覚(人間ならどのように味を感じるか)の推定はできても、食品の成分分析を行うことはできない。
【0015】
また、上述した従来の分光分析手法では、測定対象の成分が事前に分かっていることが前提とされ、その含有成分に固有の波数における光の吸光度のみを測定することによって、成分分析がなされていた。例えば、米を測定する場合は、米に含まれる複数成分の成分ごとに固有の波数の吸光度を計算してその濃度を推定していた。同様に、例えばメロンを測定する場合は、メロンに含まれる複数成分の成分ごとに固有の波数の吸光度を計算してその濃度を推定していた。
【0016】
ところが、食品とそれに関係する構成成分の固有の波数との間の関係付けについては、すべての食品について整理された対応関係が既に明らかになっているというわけではない。また、これらの対応関係を示すデータを得るためには、専門家による詳細な実験が必要であり、膨大なコストがかかってしまう。
【0017】
言い換えると、膨大なコストと時間を要するため、手当たり次第に様々な食品について実験するわけにはいかず、米やメロンのように、市場からの要請があったものに対してのみ順々に、食品と構成成分の固有の波数との対応関係を示すデータを作成するようにしているというのが実態である。
【0018】
なお、上記のようなデータを作成する際に用いられる分光分析器は、特定の食品に特化して分析を行うものであるが、高精度な測定値が要求されるため、1台あたり数百万円から数千万円の価格で販売されている。
【0019】
上記のように、食品の含有成分を分析するための分析方法は既に提案されているものの、分析対象とされる食品が限定されており、食品と構成成分の固有の波数との対応関係を示すデータがあらかじめ得られていないものについては、その判別を行うことはできない。
【0020】
このように、食品と構成成分の固有の波数との対応関係を示すデータがあらかじめ得られていない様々な食品については、有効に成分分析を行うことができず、その食品を判別することはできないという課題があった。
【0021】
本発明は、上述した問題を解消し、詳細な分析データが存在する特定の物品に限定されることなく、幅広い物品について、低コストでその物品の判別を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の物品判別装置は、検査対象物である物品(例えば、飲食物、動物、植物など)の分光分析結果にもとづいて検査対象物を判別する物品判別装置(例えば飲食物識別装置100)であって、ユーザの操作に従って物品の分光分析を行う分光分析手段(例えば検査物分光分析器20)と、分光分析手段による検査対象物の分光分析結果として得られた検査物スペクトル(例えば検査物スペクトル31)を格納する検査物スペクトル格納部(例えば、検査物スペクトル格納部30)と、物品についての分光分析結果として得られた物品スペクトルと当該物品について付与された物品名とが対応付けされた物品別スペクトル情報(例えば品名別スペクトル対応表51〜53)を格納する物品別スペクトル情報格納部(例えば品名別スペクトル対応表データベース50)と、検査物スペクトル格納部に格納された検査物スペクトルと、物品別スペクトル情報格納部に格納された各物品別スペクトル情報に含まれる各物品スペクトルとを順次比較し、複数の物品スペクトルから検査物スペクトルに最も類似する物品スペクトルを選択する類似選択手段(例えば波数範囲比較型類似度計算部60、注目波数特定型類似度計算部61)と、類似選択手段によって選択された物品スペクトルに対応付けされた物品名を、検査対象物の判別結果として報知する報知手段(例えば識別結果表示部70)と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
上記のように構成したことで、詳細な分析データが存在する特定の物品に限定されることなく、幅広い物品について、低コストでその物品の判別を行うことができる。
【0024】
検査物スペクトルは、検査対象物の分光分析結果として得られた波数別の吸光度によって表現され(例えば検査物スペクトル31、図1参照)、物品スペクトルは、物品の分光分析結果として得られた波数別の吸光度によって表現され(例えば品名別スペクトル対応表51〜53それぞれに含まれる品名別スペクトル、図1参照)、類似選択手段は、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出し(例えばステップS203〜S206)、算出した累計値が最も小さい物品スペクトルを、検査物スペクトルに最も類似する物品スペクトルとして選択する(例えばステップS207)ように構成されていてもよい。
【0025】
上記のように構成したことで、対応する波数の吸光度の値を検査物スペクトルと物品スペクトルとで比較することによって、検査物スペクトルと物品スペクトルとの類似度を表すことができ、簡単な処理によって物品の判別を行うことができる。
【0026】
検査対象物とされる物品の種類(例えば、ワイン、日本酒、リンゴなど)を受け付ける種類受付手段(例えば検査物種類記憶部10)と、スペクトル同士を比較する際の波数の範囲を特定するためにあらかじめ定められた波数の下限と上限とを示す比較波数範囲(例えば検査物種類別比較波数帯表41)を物品の種類ごとに格納する比較波数範囲格納手段(例えば検査物種類別比較波数帯表格納部40)と、を備え、類似選択手段は、種類受付手段によって受け付けられた種類についての比較波数範囲を比較波数範囲格納手段から読み出し(例えばステップS202)、読み出した比較波数範囲における波数の下限から上限までの範囲について、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出する(例えばステップS203〜S206)ように構成されていてもよい。
【0027】
上記のように構成したことで、あらかじめ定められた比較波数範囲に限定して検査物スペクトルと物品スペクトルとを比較することができ、検査物スペクトルと物品スペクトルとの類似度を高精度で算出することができるようになるため、物品の判別精度を向上させることができる。
【0028】
検査対象物とされる物品の種類(例えば、ワイン、日本酒、リンゴなど)を受け付ける種類受付手段(例えば検査物種類記憶部10)と、スペクトル同士を比較する際に注目する波数としてあらかじめ定められた注目波数を物品の種類ごとに格納する注目波数格納手段(例えば、検査物種類別注目波数表格納部45)と、を備え、類似選択手段は、種類受付手段によって受け付けられた種類についての注目波数を注目波数格納手段から読み出し(例えばステップS302)、読み出した注目波数について、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出する(例えばステップS303〜S306)ように構成されていてもよい。
【0029】
上記のように構成したことで、あらかじめ定められた注目波数に限定して検査物スペクトルと物品スペクトルとを比較することができ、検査物スペクトルと物品スペクトルとの類似度を高精度で算出することができるようになるため、物品の判別精度を向上させることができる。
【0030】
報知手段は、類似選択手段によって算出された最も小さい累計値を、判別結果として報知する物品名の信頼度を示す信頼度情報として報知する(例えばステップS104)ように構成されていてもよい。
【0031】
上記のように構成したことで、判別結果として報知された物品名が、どれ程の信頼度を持つものであるのかをユーザに認識させることができる。
【0032】
物品の外観イメージを撮影するカメラ装置(例えばカメラ装置22)と、ユーザによる撮影指示操作に応じてカメラ装置と分光分析手段とに同期して処理の実行を指示する同期処理指示手段(例えば撮影指示部23)と、同期処理指示手段からの指示に応じてカメラ装置と分光分析手段とにより実行された処理によって得られた物品の外観イメージと物品スペクトルとを対応付けして記憶する同期処理記憶手段(例えば撮影記憶保持メモリ24)と、を備えていてもよい。
【0033】
上記のように構成したことで、物品の外観イメージと物品スペクトルとを対応付けして登録しておくことができるようになり、物品の外観イメージを各処理に利用することができるようになる。
【0034】
作成された物品別スペクトル情報を保持する情報センタ(例えば情報センタ56)から、通信ネットワークを介して物品別スペクトル情報を受信し、物品別スペクトル情報格納部に格納する物品別スペクトル情報ダウンロード部(品名別スペクトル対応表ダウンロード部55)を備えていてもよい。
【0035】
上記のように構成したことで、ユーザ操作によって物品別スペクトル情報を追加することなく、情報センタに登録されている新規の物品別スペクトル情報をダウンロードして、物品別スペクトル情報を随時追加することができるようになり、検査物スペクトルと同等の物品スペクトルが検索される可能性を高めることができる。
【0036】
物品の物品名を受け付ける物品名受付手段(例えば登録物品名記憶部11)と、分光分析手段による物品の分光分析結果として得られた物品スペクトルと、物品名受付手段によって受け付けられた物品名とを対応付けした物品別スペクトル情報を物品別スペクトル情報格納部に格納する物品別スペクトル情報登録手段(例えば撮影指示部23)と、を備えていてもよい。
【0037】
上記のように構成したことで、ユーザ独自の物品名を付与して物品別スペクトル情報を登録しておくようにすることができるようになる。
【0038】
また、本発明の物品判別方法は、検査対象物である物品(例えば、飲食物、動物、植物など)の分光分析結果にもとづいて検査対象物を判別する物品判別方法であって、検査対象物の分光分析を行い(例えばステップS102)、検査対象物の分光分析結果として得られた検査物スペクトル(例えば検査物スペクトル31)を検査物スペクトル格納部(例えば検査物スペクトル格納部30)に格納し(例えばステップS102)、検査物スペクトル格納部に格納された検査物スペクトルと、物品についての分光分析結果として得られた物品スペクトルと当該物品について付与された物品名とが対応付けされた物品別スペクトル情報(例えば品名別スペクトル対応表51)が格納されている物品別スペクトル情報格納部(例えば品名別スペクトル対応表データベース50)に格納された各物品別スペクトル情報に含まれる各物品スペクトルとを順次比較して、複数の物品スペクトルから検査物スペクトルに最も類似する物品スペクトルを選択し(例えばステップS203〜S207)、選択した物品スペクトルに対応付けされた物品名を、検査対象物の判別結果として報知する(例えばステップS104)ことを特徴とする。
【0039】
上記のように構成したことで、詳細な分析データが存在する特定の物品に限定されることなく、幅広い物品について、低コストでその物品の判別を行うことができる。
【0040】
検査物スペクトルは、検査対象物の分光分析結果として得られた波数別の吸光度によって表現され、物品スペクトルは、物品の分光分析結果として得られた波数別の吸光度によって表現され、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出し(例えばステップS203〜S206)、算出した累計値が最も小さい物品スペクトルを、検査物スペクトルに最も類似する物品スペクトルとして選択する(例えばステップS207)ように構成されていてもよい。
【0041】
上記のように構成したことで、対応する波数の吸光度の値を検査物スペクトルと物品スペクトルとで比較することによって、検査物スペクトルと物品スペクトルとの類似度を表すことができ、簡単な処理によって物品の判別を行うことができる。
【0042】
検査対象物とされる物品の種類を受け付け(例えばステップS101)、スペクトル同士を比較する際の波数の範囲を特定するためにあらかじめ定められた波数の下限と上限とを示す比較波数範囲(例えば検査物種類別比較波数帯表41)が物品の種類ごとに格納された比較波数範囲格納手段(例えば検査物種類別比較波数帯表格納部40)から、受け付けた種類についての比較波数範囲を読み出し(例えばステップS202)、読み出した比較波数範囲における波数の下限から上限までの範囲について、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出する(例えばステップS203〜S206)ように構成されていてもよい。
【0043】
上記のように構成したことで、あらかじめ定められた比較波数範囲に限定して検査物スペクトルと物品スペクトルとを比較することができ、検査物スペクトルと物品スペクトルとの類似度を高精度で算出することができるようになるため、物品の判別精度を向上させることができる。
【0044】
検査対象物とされる物品の種類を受け付け(例えばステップS101)、スペクトル同士を比較する際に注目する波数としてあらかじめ定められた注目波数を物品の種類ごとに格納する注目波数格納手段(例えば検査物種類別注目波数表格納部45)から、受け付けた種類についての注目波数を読み出し(例えばステップS302)、読み出した注目波数について、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出する(例えばステップS303〜S306)ように構成されていてもよい。
【0045】
上記のように構成したことで、あらかじめ定められた注目波数に限定して検査物スペクトルと物品スペクトルとを比較することができ、検査物スペクトルと物品スペクトルとの類似度を高精度で算出することができるようになるため、物品の判別精度を向上させることができる。
【0046】
算出した最も小さい累計値を、判別結果として報知する物品名の信頼度を示す信頼度情報として報知する(例えばステップS104)ように構成されていてもよい。
【0047】
上記のように構成したことで、判別結果として報知された物品名が、どれ程の信頼度を持つものであるのかをユーザに認識させることができる。
【0048】
物品の外観イメージを撮影するカメラ装置(例えばカメラ装置22)と分光分析手段(例えば登録物分光分析器21)とにユーザによる撮影指示操作に応じて同期して処理の実行を指示し、指示に応じてカメラ装置と分光分析手段とにより実行された処理によって得られた物品の外観イメージと物品スペクトルとを対応付けして同期処理記憶手段(例えば撮影記憶保持メモリ24)に記憶するように構成されていてもよい。
【0049】
上記のように構成したことで、物品の外観イメージと物品スペクトルとを対応付けして登録しておくことができるようになり、物品の外観イメージを各処理に利用することができるようになる。
【0050】
作成された物品別スペクトル情報を保持する情報センタ(例えば情報センタ56)から、通信ネットワークを介して物品別スペクトル情報を受信し、物品別スペクトル情報格納部に格納するように構成されていてもよい。
【0051】
上記のように構成したことで、ユーザ操作によって物品別スペクトル情報を追加することなく、情報センタに登録されている新規の物品別スペクトル情報をダウンロードして、物品別スペクトル情報を随時追加することができるようになり、検査物スペクトルと同等の物品スペクトルが検索される可能性を高めることができる。
【0052】
物品の物品名を受け付け、物品の分光分析結果として得られた物品スペクトルと、受け付けた物品名とを対応付けした物品別スペクトル情報を物品別スペクトル情報格納部に格納するように構成されていてもよい。
【0053】
上記のように構成したことで、ユーザ独自の物品名を付与して物品別スペクトル情報を登録しておくようにすることができるようになる。
【0054】
さらに、本発明の物品判別プログラムは、検査対象物である物品(例えば、飲食物、動物、植物など)の分光分析結果にもとづいて検査対象物を判別させる物品判別プログラムであって、コンピュータ(例えば飲食物識別装置100)に、検査対象物の分光分析を行うステップ(例えばステップS102)と、検査対象物の分光分析結果として得られた検査物スペクトルを検査物スペクトル格納部に格納するステップ(例えばステップS102)と、検査物スペクトル格納部に格納された検査物スペクトルと、物品についての分光分析結果として得られた物品スペクトルと当該物品について付与された物品名とが対応付けされた物品別スペクトル情報が格納されている物品別スペクトル情報格納部に格納された各物品別スペクトル情報に含まれる各物品スペクトルとを順次比較して、複数の物品スペクトルから検査物スペクトルに最も類似する物品スペクトルを選択するステップ(例えばステップS203〜S207)と、選択した物品スペクトルに対応付けされた物品名を、検査対象物の判別結果として報知するステップ(例えばステップS104)とを実行させるためのものである。
【0055】
上記のように構成したことで、詳細な分析データが存在する特定の物品に限定されることなく、幅広い物品について、低コストでその物品を判別させることができる。
【0056】
検査物スペクトルは、検査対象物の分光分析結果として得られた波数別の吸光度によって表現され、物品スペクトルは、物品の分光分析結果として得られた波数別の吸光度によって表現され、コンピュータに、さらに、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出するステップ(例えばステップS203〜S206)と、算出した累計値が最も小さい物品スペクトルを、検査物スペクトルに最も類似する物品スペクトルとして選択するステップ(例えばステップS207)とを実行させるためのものであってもよい。
【0057】
上記のように構成したことで、対応する波数の吸光度の値を検査物スペクトルと物品スペクトルとで比較させることによって、検査物スペクトルと物品スペクトルとの類似度を表すことができ、簡単な処理によって物品を判別させることができる。
【0058】
コンピュータに、さらに、検査対象物とされる物品の種類を受け付けるステップ(例えばステップS101)と、スペクトル同士を比較する際の波数の範囲を特定するためにあらかじめ定められた波数の下限と上限とを示す比較波数範囲が物品の種類ごとに格納された比較波数範囲格納手段から、受け付けた種類についての比較波数範囲を読み出すステップ(例えばステップS202)と、読み出した比較波数範囲における波数の下限から上限までの範囲について、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出するステップ(例えばステップS203〜S206)とを実行させるためのものであってもよい。
【0059】
上記のように構成したことで、あらかじめ定められた比較波数範囲に限定して検査物スペクトルと物品スペクトルとを比較させることができ、検査物スペクトルと物品スペクトルとの類似度を高精度で算出させることができるようになるため、物品の判別精度を向上させることができる。
【0060】
コンピュータに、さらに、検査対象物とされる物品の種類を受け付けるステップ(例えばステップS101)と、スペクトル同士を比較する際に注目する波数としてあらかじめ定められた注目波数を物品の種類ごとに格納する注目波数格納手段から、受け付けた種類についての注目波数を読み出すステップ(例えばステップS302)と、読み出した注目波数について、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出するステップ(例えばステップS303〜S306)とを実行させるためのものであってもよい。
【0061】
上記のように構成したことで、あらかじめ定められた注目波数に限定して検査物スペクトルと物品スペクトルとを比較させることができ、検査物スペクトルと物品スペクトルとの類似度を高精度で算出させることができるようになるため、物品の判別精度を向上させることができる。
【0062】
コンピュータに、さらに、算出した最も小さい累計値を、判別結果として報知する物品名の信頼度を示す信頼度情報として報知するステップ(例えばステップS104)を実行させるためのものであってもよい。
【0063】
上記のように構成したことで、判別結果として報知された物品名が、どれ程の信頼度を持つものであるのかをユーザに認識させることができる。
【0064】
コンピュータに、さらに、物品の外観イメージを撮影するカメラ装置と分光分析手段とにユーザによる撮影指示操作に応じて同期して処理の実行を指示するステップと、指示に応じてカメラ装置と分光分析手段とにより実行された処理によって得られた物品の外観イメージと物品スペクトルとを対応付けして同期処理記憶手段に記憶するステップとを実行させるためのものであってもよい。
【0065】
上記のように構成したことで、物品の外観イメージと物品スペクトルとを対応付けして登録させておくことができるようになり、物品の外観イメージを各処理に利用させることができるようになる。
【0066】
コンピュータに、さらに、作成された物品別スペクトル情報を保持する情報センタから、通信ネットワークを介して物品別スペクトル情報を受信し、物品別スペクトル情報格納部に格納するステップを実行させるためのものであってもよい。
【0067】
上記のように構成したことで、ユーザ操作によって物品別スペクトル情報を追加することなく、情報センタに登録されている新規の物品別スペクトル情報をダウンロードさせて、物品別スペクトル情報を随時追加させることができるようになり、検査物スペクトルと同等の物品スペクトルが検索される可能性を高めさせることができる。
【0068】
コンピュータに、さらに、物品の物品名を受け付けるステップと、物品の分光分析結果として得られた物品スペクトルと、受け付けた物品名とを対応付けした物品別スペクトル情報を物品別スペクトル情報格納部に格納するステップとを実行させるためのものであってもよい。
【0069】
上記のように構成したことで、ユーザ独自の物品名を付与して物品別スペクトル情報を登録しておくようにされることができるようになる。
【発明の効果】
【0070】
本発明によれば、詳細な分析データが存在する特定の物品に限定されることなく、幅広い物品について、低コストでその物品の判別を行うことができる。
【0071】
検査対象物の分光分析結果として得られた波数別の吸光度によって検査物スペクトルを表現し、物品の分光分析結果として得られた波数別の吸光度によって物品スペクトルを表現するようにした場合には、対応する波数の吸光度の値を検査物スペクトルと物品スペクトルとで比較することによって、検査物スペクトルと物品スペクトルとの類似度を表すことができ、簡単な処理によって物品の判別を行うことができる。
【0072】
スペクトル同士を比較する際の波数の範囲を特定するためにあらかじめ定められた波数の下限と上限とを示す比較波数範囲を用いて類似判定を行うようにした場合には、あらかじめ定められた比較波数範囲に限定して検査物スペクトルと物品スペクトルとを比較することができ、検査物スペクトルと物品スペクトルとの類似度を高精度で算出することができるようになるため、物品の判別精度を向上させることができる。
【0073】
スペクトル同士を比較する際に注目する波数としてあらかじめ定められた注目波数を用いて類似判定を行うようにした場合には、あらかじめ定められた注目波数に限定して検査物スペクトルと物品スペクトルとを比較することができ、検査物スペクトルと物品スペクトルとの類似度を高精度で算出することができるようになるため、物品の判別精度を向上させることができる。
【0074】
類似選択手段によって算出された最も小さい累計値を報知するようにした場合には、判別結果として報知された物品名が、どれ程の信頼度を持つものであるのかをユーザに認識させることができる。
【0075】
物品の外観イメージと物品スペクトルとを対応付けして記憶しておくようにした場合には、物品の外観イメージを各処理に利用することができるようになる。
【0076】
物品別スペクトル情報を通信ネットワークを介してダウンロードするようにした場合には、新規の物品別スペクトル情報を随時追加することができるようになり、検査物スペクトルと同等の物品スペクトルが検索される可能性を高めることができる。
【0077】
物品スペクトルと物品名受付手段によって受け付けられた物品名とを対応付けした物品別スペクトル情報を登録するようにした場合には、ユーザ独自の物品名を付与して物品別スペクトル情報を登録しておくようにすることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の第1の実施の形態における飲食物識別装置100の構成例を示すブロック図である。
【0079】
図1に示すように、本例の飲食物識別装置100は、検査物種類記憶部10と、検査物分光分析器20と、検査物スペクトル格納部30と、検査物種類別比較波数帯表格納部40と、品名別スペクトル対応表データベース50と、波数範囲比較型類似度計算部60と、識別結果表示部70とを含む。
【0080】
検査物種類記憶部10は、例えばRAMなどの記憶媒体によって構成され、分光分析の検査対象とする飲食物の種類を示す検査物種類などの各種情報が格納される。検査物種類は、ユーザによって入力される。具体的には、ユーザは、例えば飲食物識別装置100が備える図示しない入力装置(例えばキーボード、マウス)を操作することによって、検査物種類を入力する。検査物種類記憶部10は、入力装置の操作によって入力された飲食物の種類を受け付けて保存する。
【0081】
検査物分光分析器20は、分光分析を行うための分光分析器によって構成される。「分光分析」とは、物質が吸収または放出する電磁波の波長や強度などを測定することによって行う化学分析の総称を意味し、例えば、X線分光分析、紫外可視分光分析、赤外分光分析などの分析手法がある。検査物分光分析器20は、分析手法に合った機器であればどのような機器を用いるようにしてもよい。例えば、市販されている分光分析器を用いるようにすればよい。
【0082】
また、検査物分光分析器20によって実行される分光分析においては、例えばX線分光分析や赤外分光分析などを行うための公知の手法を用いるようにすればよい。例えば、レーザ光源を用いた手法であっても、ハロゲンランプ光源を用いた手法であってもよく、波数ごとの吸光度を測定することによって分光分析を行うものであればどのような手法を用いるようにしてもよい。
【0083】
レーザ光源を用いた手法の場合には、検査物分光分析器20は、図2(A)に示すように、検査対象物(図2(A)に示す例では「ワイン」)に様々な波長のレーザ光を当て、検査対象物を透過した光を各波長毎に測定することで吸光度を測定する。
【0084】
また、ハロゲンランプ光源用いた手法の場合には、検査物分光分析器20は、図2(B)に示すように、検査対象物(図2(B)に示す例では「ワイン」)にハロゲンランプの発光によって照射される光を当てて、検査対象物を透過した光を波長ごとに分光し、透過光を各波長毎に測定することで吸光度を測定する。
【0085】
検査物スペクトル格納部30は、例えばRAMなどの記憶媒体によって構成され、検査物分光分析器20の分析結果などの各種情報が格納される。分析結果には、検査対象の飲食物についての波数ごとの吸光度の値がスペクトルとして表現された検査物スペクトル31が含まれる。
【0086】
検査物スペクトル31は、図1に示すように、各波数毎に吸光度が対応付けされて配列された表によって表現される。すなわち、検査物スペクトル31は、例えば図3(A)に示すような連続的なスペクトルを細かくサンプリングすることによって、図3(B)に示すような多数のサンプル(この例では波数と吸光度との組み合わせ)によって表現されている。
【0087】
なお、サンプリング間隔は、図3に示す例では波数軸目盛間隔である100[1/cm]間隔としてあるが、50[1/cm]間隔や10[1/cm]間隔など、さらに細かい間隔でサンプリングするようにしてもよい。また、110[1/cm]間隔や120[1/cm]間隔など、粗い間隔でサンプリングするようにしてもよい。ただし、間隔が粗くなると精度が低下するため、一定レベル以上の飲食物判別精度が維持可能な程度の間隔とするのが望ましい。
【0088】
検査物種類別比較波数帯表格納部40は、例えばデータベース装置によって構成され、検査物種類別比較波数帯表41などの各種情報が格納される。
【0089】
検査物種類別比較波数帯表41は、検査物種類ごとに、スペクトル同士で比較する波数の下限と上限を示した表である。この値は、専門家によって決められるものである。すなわち、該当する検査物種類に属する検査物の特徴が表れる波数帯を含む範囲となるように、比較する波数の下限と上限とが専門家によってあらかじめ定められる。
【0090】
この例では、検査物種類別比較波数帯表41には、図1に示すように、「ワイン」、「日本酒」、「米」、「リンゴ」、「桃」などの検査物種類毎に、スペクトル同士で比較する波数の下限と上限とがそれぞれ設定されている。
【0091】
品名別スペクトル対応表データベース50は、例えばデータベース装置によって構成され、品名別スペクトル対応表などの各種情報が格納される。品名別スペクトル対応表データベース50は、例えば、ファイルシステムや商用データベースなどによって実現される。
【0092】
品名別スペクトル対応表データベース50には、品名別スペクトル対応表51〜53を含む複数の品名別スペクトル対応表が格納されている。品名別スペクトル対応表は、飲食物における異なる銘柄や商品ごとに、波数ごとに吸光度が設定されたスペクトルが対応付けされた表を意味する。すなわち、品名別スペクトル対応表は、飲食物の銘柄や商品名を示す飲食物名と、その銘柄や商品におけるスペクトル(以下、「品名別スペクトル」という。)とが対応付けされた表である。品名別スペクトル対応表を構成する品名別スペクトルは、上述した検査物スペクトルと同様に、波数と吸光度とが対応付けされた表によって表現される。なお、図1には表れていないが、品名別スペクトル対応表には、銘柄や商品名を示す飲食物名だけでなく、その飲食物の種類を示す情報も含まれているものとする。
【0093】
品名別スペクトル対応表は、ユーザによる飲食物識別装置100の操作によって、あるいは飲食物識別装置100の製造者や販売者によって、あらかじめ品名別スペクトル対応表データベース50に登録される。
【0094】
図1に示す品名別スペクトル対応表51〜53は、同一種類の飲食物における異なる銘柄や商品ごとに、品名別スペクトルが対応付けされたものであるものとする。
【0095】
具体的には、飲食物の種類が「ワイン」であれば、飲食物名として、カベルネソービニオン、シラー、メルロー、シャルドネ、リースリング等が用いられ、その飲食物名ごとに品名別スペクトル対応表が作成される。なお、飲食物名として、例えばシャトーラトゥールの2000年ものなどのより詳細な品名を用い、そのような品名単位で品名別スペクトル対応表を作成するようにしてもよい。また、ユーザが飲食物名を付与するときには、正確な品名がわからない場合があるため、例えば、「○月○日レストラン△で飲んだ赤ワイン」などのように、実際に飲食した飲食物をユーザ自身が後に特定できるように飲食物名を付与しておくようにしてもよい。
【0096】
波数範囲比較型類似度計算部60は、例えばMPU(Micro Processing Unit)などの演算処理装置によって構成され、類似度計算などの各種の演算処理を実行する。
【0097】
次に、飲食物識別装置100の動作について説明する。図4は、飲食物識別装置100が実行する飲食物判定処理の例を示すフローチャートである。
【0098】
ここでは、レストランでグラスワインを注文したユーザXが、そのワインの飲食物名を確認しようとした場合を例に説明する。
【0099】
ユーザXは、飲食物識別装置100が備える入力装置を操作することで、検査対象とする飲食物の種類を入力する。飲食物識別装置100は、ユーザXの操作によって入力された飲食物種類を受け付け、受け付けた飲食物種類を検査物種類記憶部10に記憶する(ステップS101)。
【0100】
ここでは、飲食物種類として「ワイン」が入力され、「ワイン」が検査物種類記憶部10に記憶されたものとする。
【0101】
次いで、検査物分光分析器20は、ユーザXの操作に従って、分光分析を行う(ステップS102)。検査物分光分析器20の分析結果は、検査物スペクトル格納部30に格納される。ここでは、分析結果として、検査物スペクトル31が検査物スペクトル格納部30に格納されたものとする。
【0102】
次いで、波数範囲比較型類似度計算部60は、検査物種類記憶部10に格納された検査物種類と、検査物分光分析器20の分析結果として得られた検査物スペクトル31とにもとづいて、類似度判定処理を実行する(ステップS103)。類似度判定処理については、後で詳しく説明する。
【0103】
そして、識別結果表示部70は、波数範囲比較型類似度計算部60による類似度判定処理の結果を表示する(ステップS104)。ステップS104では、判別結果として、飲食物名と信頼度情報とが表示される。なお、表示による報知に限らず、音声などによって報知するようにしてもよい。
【0104】
図5は、波数範囲比較型類似度計算部60によって実行される類似度判定処理の例を示すフローチャートである。
【0105】
類似度判定処理において、波数範囲比較型類似度計算部60は、先ず、検査物種類記録部10に格納されている検査物種類を読み出して、変数Xに格納する(ステップS201)。ここでは、検査物種類「ワイン」が変数Xに格納される。
【0106】
次いで、波数範囲比較型類似度計算部60は、検査物種類別比較波数帯表41を参照し、変数Xに格納した検査物種類に対応する波数下限と波数上限とを読み出して、変数Yと変数Zに格納する(ステップS202)。ここでは、「ワイン」の波数下限「WL1」が変数Yに格納され、「ワイン」の波数上限「WL2」が変数Zに格納される。
【0107】
次に、波数範囲比較型類似度計算部60は、カウンタnに初期値0を設定する(ステップS203)。カウンタnは、比較対象の品名別スペクトル対応表(あるいは品名別スペクトル)を特定するためのカウンタである。各品名別スペクトル対応表には、検査物種類毎に、例えばデータベース50に登録された順番に、0以上の自然数がそれぞれ付与されているものとする。ここでは、種類「ワイン」についての各品名別スペクトル対応表が、品名別スペクトル対応表0〜品名別スペクトル対応表mの「m+1」個登録されているものとする。
【0108】
次に、波数範囲比較型類似度計算部60は、変数Yに格納した波数下限「WL1」から変数Zに格納した波数上限「WL2」の範囲で、検査物スペクトル格納部30に格納された検査物スペクトル31の吸光度の値と、品名別スペクトル対応表データベース50に格納されている品名別スペクトル対応表nにおける品名別スペクトルの吸光度の値とを1つずつ比較して、吸光度間の距離を計算する(ステップS204)。そして、波数範囲比較型類似度計算部60は、波数下限と波数上限の間における各吸光度間それぞれの距離を累計し、全体距離として変数V(n)に格納する(ステップS204)。
【0109】
次いで、波数範囲比較型類似度計算部60は、カウンタnに設定されている値「n」が最大値「m」でなければ(ステップS205)、「n」に1加算して(ステップS206)、ステップS204に戻る。このように、カウンタnの値が初期値「0」から最大値「m」となるまでステップS204の処理を繰り返し実行することで、指定されている検査物種類における全ての品名別スペクトル対応表0〜mについて、それぞれ検査物スペクトル31と比較されて、それぞれ全体距離が算出されて変数V(0)〜変数V(m)に格納される。
【0110】
カウンタnに設定されている値「n」が最大値「m」であれば(ステップS205)、波数範囲比較型類似度計算部60は、各全体距離が格納されている変数V(0)〜変数V(m)の中から、格納値が最小となっている変数V(j)を選択し(ステップS207)、選択した変数V(j)を変数Dに格納する(ステップS208)。すなわち、変数V(0)〜変数V(m)の中から、最小の全体距離が格納されている変数V(j)を選択し、その格納値を変数Dに格納する。
【0111】
次いで、波数範囲比較型類似度計算部60は、変数V(j)に対応する品名別スペクトル対応表jにおける品名を変数Uに格納する(ステップS209)。
【0112】
そして、波数範囲比較型類似度計算部60は、判定結果として、変数Dと変数Uとを出力する(ステップS210)。
【0113】
上記のように、品名別スペクトル対応表データベース50に格納されている品名別スペクトル対応表ごとに、検査物スペクトルと品名別スペクトルとの差を示す全体距離が算出されたあと、その算出結果が比較され、全体距離が最も小さい品名別スペクトル対応表の品名が、検査物スペクトルを持つ検査物に最も類似している品名であると判断され、その品名と全体距離とが判定結果として出力される。
【0114】
具体的には、ワインのスペクトルが検査物スペクトル31として検査物スペクトル格納部30に格納されたとして、その検査物スペクトル31と比較した中で、メルローの品名別スペクトルが最も全体距離が小さかったとすると、ユーザXが検査したワインは、メルローである可能性が最も高い、ということを推定していることになる。
【0115】
なお、判定結果として出力される全体距離は、判定結果として出力される品名の信頼度を判断するための情報として用いられる。すなわち、全体距離が一致していれば判定結果として出力されている品名は確実なものと判断でき、全体距離が小さければ小さいほど判定結果として出力されている品名の信頼度はより高いと判断でき、全体距離が大きければ大きいほど判定結果として出力されている品名の信頼度はより低いと判断できる。
【0116】
以上に説明したように、分光分析によって得られる飲食物のスペクトルそのものをあらかじめ記憶しておき、検査物を分光分析することによって得られたスペクトルに最も類似するスペクトルを探索し、探索されたスペクトルに対応付けされている飲食物名が検査物の名称であると判別する構成としたので、詳細な分析データが存在する特定の飲食物に限定されることなく、幅広い飲食物について、低コストで飲食物の銘柄や品名を判別することができる。また、飲食物の成分分析に用いられる吸光度スペクトルによって判別するので、その飲食物の味や鮮度などを判別できることにもなる。
【0117】
また、上述したように、分光分析によって得られる飲食物のスペクトルそのものをあらかじめ記憶しておき、検査物を分光分析することによって得られたスペクトルに最も類似するスペクトルを探索し、探索されたスペクトルに対応付けされている飲食物名が検査物の名称であると判別する構成としたので、分光分析手法を用いて飲食物の銘柄や品名を判別することができる。すなわち、食品の食味や成分分析を行うために用いられている分光分析手法を、検査対象の食品の品名(商品名)を推定するという新たな用途のために利用することができる。
【0118】
また、上述したように、スペクトル同士で比較する波数の下限と上限とが種類ごとにあらかじめ定められた検査物種類別比較波数帯表41を用いて検査する構成としたので、注目点の波数を用いて検査する場合と比較すると、データ作成のコストを低減させることができる。すなわち、注目点の波数の場合は特定の1点(例:カフェインなら1242[1/cm])を指定しないといけないが、スペクトルの範囲(上限と下限)については、おおよその範囲で構わないのでデータ作成のコストとしては比較的小さくなるのである。
【0119】
また、上述したように、スペクトル同士で比較する波数の下限と上限とが種類ごとに専門家によってあらかじめ定められた検査物種類別比較波数帯表41を用いて検査する構成としたので、あらかじめ定められた比較波数範囲に限定して検査物スペクトルと品名別スペクトルとを比較することができ、検査物スペクトルと品名別スペクトルとの類似度を高精度で算出することができるようになるため、飲食物の判別精度を向上させることができる。
【0120】
なお、スペクトル同士で比較する波数の下限と上限とを、検査物の種類ごとに定めることなく、全種類一定の下限と上限とするようにしてもよい。また、スペクトル同士で比較する波数の範囲が、非連続に存在するようにしてもよい。
【0121】
また、過去に飲食した飲食物のスペクトルをユーザ自身が装置100に登録しておいた場合には、その飲食物の銘柄や正式名称がわからない場合であっても、例えばレストランなどにおいて配膳された飲食物が、過去に飲食した飲食物であるか否かを判別することができるようになる。
【0122】
また、上述したように、検査物の名称がわからない場合であっても、あらかじめ登録された品名別スペクトル対応表に同じ銘柄や品名の飲食物が登録されていれば、その検査物の品名が表示されるので、検査物の名称を知ることができるようになり、記録メディアとして高付加価値を提供することが期待できる。
【0123】
上述した第1の実施の形態では、特定の波数にのみ注目するのではなく、図6に概念的に示しているように、ある飲食物(例えばワイン)に電磁波を照射して得たスペクトルそのものをまるごと記憶し、あらかじめ登録されている複数のスペクトルそれぞれと比較することで、類似判断を行うようにしている。すなわち、検査物スペクトルと品名別スペクトルとをまるごと対比することで、類似判断を行うようにしている。
【0124】
検査物のスペクトルと品名別スペクトルとをまるごと対比して類似度を算定する手法として、上記の例では、同一の波数における検査物スペクトルと品名スペクトルとの吸光度の距離を累計した累計値によって類似度を定めるようにしていたが、検査物スペクトルと品名別スペクトルとをまるごと対比する方法であれば、例えば検査物スペクトルをグラフ化した曲線イメージと品名別をグラフ化した曲線イメージとの比較によって類似度を算定するなど、どのような方法としてもよい。
【0125】
図7は、ある飲食物における複数の品種(商品)それぞれの赤外線スペクトル(2次微分値)を示す説明図である。なお、図7では、固有の波数の場所に矢印が付記されている。従来の手法では、スペクトルを測定すると、これらの矢印が付記されていた箇所の値のみに注目していた。
【0126】
これに対し、上述した第1の実施の形態では、図7における波数1400から1100までのスペクトルの波形まるごとを品種1のスペクトル、品種2のスペクトル、等のように記録しておくこととする。そして、利用者が市販の分光分析器を使って対象となる食品(例えばワイン)に赤外線を照射するとスペクトルができ、そのスペクトルと上記品種1、品種2、品種3等のスペクトルとの間でスペクトル同士の距離を比較する。その結果、最も近い品種のスペクトルの波形パターンが、利用者の撮影したワインの品種であると推定できる。
【0127】
上記のように、検査物のスペクトルと品名別スペクトルとをまるごと対比することで類似判断を行う構成としたので、物品とその物品固有の波数との対応関係を意味する対応データを必要とせず、スペクトルにおける特定の箇所のみに注目して比較していく従来手法と比較すると、コストを格段に低下させることができる。
【0128】
すなわち、検査物と同等の飲食物が品名別スペクトルとして事前に登録されていれば、その検査物を判別することができる。いうなれば、上述した第1の実施の形態における分析手法は、N個の既知のデータからの選択問題に帰結させているところが従来手法と異なる点である。
【0129】
従来手法の場合は、固有の波数に注目しその吸光度がわかれば、そこから濃度が推定できるので、利用者が撮影した対象と同一のものを事前に実験分析する必要はなかった。図8は、第1の実施の形態による判別手法と、従来手法との違いを示す概念図である。
【0130】
図8に示すように、従来手法では、事前の精密な実験結果が、検量表の形でまとめられていた。ある特定の波数におけるある成分については、その含有量[重量%]と吸光度の間に相関関係が存在するが、その関係を表現したものが検量表である。ある食品について特定の波数を選択すると、含有量と吸光度の間の関係が線形で表現される。その場合、実際に測定していない吸光度についても、線形補完ができるので、含有量の推定ができるのである。
【0131】
従来手法では、ユーザが測定した検査物スペクトルにおける注目点の吸光度の値ごとに、検量表を参照することで、含有量が推定できる。なお、検量表では、実験の際には利用した個別の品種に関する情報は欠落している。
【0132】
一方、図8に示すように、第1の実施の形態による判別手法では、個別の品種の計測スペクトルそのものを使って、利用者の撮影した対象との比較を直接的に行う。従って、事前に測定して記憶した品種のものを検査対象とした場合であれば、正しい飲食物名を得ることができる。第1の実施の形態による判別手法は、従来手法とは分光分析の方法が異なり、一般性については従来手法より低下するものの、実現の簡便性の点で従来手法より優っている。
【0133】
なお、上述した第1の実施の形態においては特に言及していなかったが、ユーザからの指示(例えば入力装置の操作)に応じて品名別スペクトル対応表を作成して登録する際には、例えば、上述したステップS101〜S102と同様の処理によって、登録対象の物品の品名別スペクトルを生成するとともに、ユーザによる入力操作によって入力された登録対象の物品の種類および物品名を受け付け、品名別スペクトルと物品の種類と物品名とが対応付けされた品名別スペクトル対応表をデータベース50に登録するようにすればよい。このようにして登録を行う場合に、登録対象の飲食物の銘柄や品名がわからない場合には、ユーザ自身が後に思い出せるような名称(例えば、「レストラン○○で誕生日に飲んだワイン」など)を付与しておくようにすればよい。そのように登録しておけば、後日に注文した飲食物が登録済のものと同じ銘柄であるかを判別することができるようになる。
【0134】
実施の形態2.
図9は、本発明の第2の実施の形態における飲食物識別装置200の構成例を示すブロック図である。なお、上述した第1の実施の形態と同様の構成および処理をなす部分については、同一の符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0135】
図9に示すように、本例の飲食物識別装置200は、検査物種類記憶部10と、検査物分光分析器20と、検査物スペクトル格納部30と、検査物種類別注目波数表格納部45と、品名別スペクトル対応表データベース50と、注目波数特定型類似度計算部61と、識別結果表示部70とを含む。
【0136】
検査物種類別注目波数表格納部45は、例えばデータベース装置によって構成され、検査物種類別注目波数表46などの各種情報が格納される。
【0137】
検査物種類別注目波数表46は、検査物種類ごとに、吸光度スペクトルの中で特徴があって注目すべき波数を1つ以上示した表である。この値は、専門家によって決められるものである。すなわち、該当する検査物種類に属する検査物の特徴が表れる1または2以上の波数が、専門家によってあらかじめ特定され、設定される。具体的な数値としては、1151[1/cm]、1190[1/cm]、1242[1/cm]のように、特定の1点が指定される。従って、上述した第1の実施の形態でのスペクトルの範囲(上限と下限)のような「おおよその範囲」という精度と比較すると、より高い精度が要求されることになる。
【0138】
この例では、検査物種類別注目波数表46には、図9に示すように、「ワイン」について2つ、「日本酒」について3つ、「米」について4つ、「リンゴ」について1つ、「桃」について2つの波数が、それぞれの検査物種類毎に特徴を有する注目波数として設定されている。
【0139】
注目波数特定型類似度計算部61は、例えばMPUなどの演算処理装置によって構成され、類似度計算などの各種の演算処理を実行する。
【0140】
次に、飲食物識別装置200の動作について説明する。
ここでは、レストランでグラスワインを注文したユーザXが、そのワインの飲食物名を確認しようとした場合を例に説明する。なお、飲食物判定処理については、上述した図4に示した例と同様である。
【0141】
図10は、注目波数特定型類似度計算部61によって実行される類似度判定処理の例を示すフローチャートである。
【0142】
類似度判定処理において、注目波数特定型類似度計算部61は、先ず、検査物種類記録部10に格納されている検査物種類を読み出して、変数Xに格納する(ステップS301)。ここでは、検査物種類「ワイン」が変数Xに格納される。
【0143】
次いで、注目波数特定型類似度計算部61は、検査物種類別注目波数表46を参照し、変数Xに格納した検査物種類に対応する注目波数を読み出して、配列変数WN(i)に格納する(ステップS302)。なお、「i」は0からjまでの変数であり、配列変数WN(i)には「j+1」個の注目波数がそれぞれ格納される。ここでは、「ワイン」における2つの注目波数「WL1」,「WL2」が、それぞれ、配列変数WN(0) ,配列変数WN(1)に格納される。
【0144】
次に、注目波数特定型類似度計算部61は、カウンタnに初期値0を設定する(ステップS303)。カウンタnは、比較対象の品名別スペクトル対応表(あるいは品名別スペクトル)を特定するためのカウンタである。各品名別スペクトル対応表には、検査物種類毎に、例えばデータベース50に登録された順番に、0以上の自然数がそれぞれ付与されているものとする。ここでは、種類「ワイン」についての各品名別スペクトル対応表が、品名別スペクトル対応表0〜品名別スペクトル対応表mの「m+1」個登録されているものとする。
【0145】
次に、注目波数特定型類似度計算部61は、配列変数WN(i)に格納した各注目波数それぞれについて、検査物スペクトル格納部30に格納された検査物スペクトル31の吸光度の値と、品名別スペクトル対応表データベース50に格納されている品名別スペクトル対応表nにおける品名別スペクトルの吸光度の値とを比較して、吸光度間の距離を計算する(ステップS304)。そして、注目波数特定型類似度計算部61は、各注目波数それぞれについて算出した吸光度間の距離を累計し、全体距離として変数V(n)に格納する(ステップS304)。
【0146】
次いで、注目波数特定型類似度計算部61は、カウンタnに設定されている値「n」が最大値「m」でなければ(ステップS305)、「n」に1加算して(ステップS306)、ステップS304に戻る。このように、カウンタnの値が初期値「0」から最大値「m」となるまでステップS304の処理を繰り返し実行することで、指定されている検査物種類における全ての品名別スペクトル対応表0〜mについて、それぞれ検査物スペクトル31と比較されて、それぞれ全体距離が算出されて変数V(0)〜変数V(m)に格納される。
【0147】
カウンタnに設定されている値「n」が最大値「m」であれば(ステップS305)、注目波数特定型類似度計算部61は、各全体距離が格納されている変数V(0)〜変数V(m)の中から、格納値が最小となっている変数V(j)を選択し(ステップS307)、選択した変数V(j)を変数Dに格納する(ステップS308)。すなわち、変数V(0)〜変数V(m)の中から最小の全体距離が格納されている変数V(j)を選択し、その格納値を変数Dに格納する。
【0148】
次いで、注目波数特定型類似度計算部61は、変数V(j)に対応する品名別スペクトル対応表jにおける品名を変数Uに格納する(ステップS309)。
【0149】
そして、注目波数特定型類似度計算部61は、判定結果として、変数Dと変数Uとを出力する(ステップS310)。
【0150】
上記のように、品名別スペクトル対応表データベース50に格納されている品名別スペクトル対応表ごとに全体距離が算出されたあと、その算出結果が比較され、全体距離が最も小さい品名別スペクトル対応表の品名が最も類似の品名であると判断され、その品名と全体距離とが判定結果として出力される。
【0151】
以上に説明したように、上述した第2の実施の形態では、分光分析によって得られる飲食物のスペクトルそのものをあらかじめ記憶しておき、検査物を分光分析することによって得られたスペクトルにおける注目波数の吸光度に、その注目波数の吸光度が最も近い類似するスペクトルを探索し、探索されたスペクトルに対応付けされている飲食物名が検査物の名称であると判定する構成としたので、飲食物の銘柄や品名を特定することができる。
【0152】
また、上述した第2の実施の形態では、スペクトル同士をまるごと比較する際に、注目する波数としてあらかじめ定められた注目波数の吸光度の値を比較するように構成されているので、あらかじめ定められた注目波数に限定して検査物スペクトルと品名別スペクトルとを比較することができ、検査物スペクトルと品名別スペクトルとの類似度を高精度で算出することができるようになる。よって、物品の判別精度を向上させることができる。
【0153】
すなわち、上述した第2の実施の形態では、注目波数の吸光度を比較することで検査物を判別する構成としたので、スペクトル全体で比較する場合と比較して、比較判別の精度を向上させることが期待できる。
【0154】
また、上述した第1の実施の形態と同様に、過去に飲食した飲食物のスペクトルを記憶しておいた場合には、その飲食物の銘柄や品名がわからない場合であっても、例えばレストランなどにおいて配膳された飲食物が、過去に飲食した飲食物であるか否かを判定することができるようになる。
【0155】
上述した第2の実施の形態は、特定の飲食物において注目点の波数があらかじめ認識されている場合に採用することが有効である。この第2の実施の形態は、従来手法と上述した第1の実施の形態における判別手法との折衷案による判別手法である。
【0156】
図11は、第2の実施の形態による判別手法と、第1の実施の形態による判別手法との違いを示す概念図である。図11(A)は、第1の実施の形態による判別手法を示す概念図であり、図11(B)は、第2の実施の形態による判別手法を示す概念図である。
【0157】
第2の実施の形態では、例えばユーザによる装置200の操作によって特定の検査物の分光分析を行うと、検査物スペクトルが生成されたあと、検査物スペクトルの中の注目波数の吸光度のみが取り出される。一方、図11(B)に示すように、事前の精密な実験検定により、品名別スペクトルごと(品種ごと)の注目点である波数の吸光度の値を特定し、「品種単位注目点別吸光度表」に保存しておく。そして、注目点とされた波数での吸光度を比較することで、検査物スペクトルと品名別スペクトルとの注目点における距離を算出する。
【0158】
この折衷案では、未知の食品については食品ごとの注目点波数を実験により発見する必要があるため、第1の実施の形態での品種ごとのスペクトルを登録するだけの手法を比較すると、「品種単位注目点別吸光度表」を作成する手間は大きい。しかし、従来手法での検量表を作成する手法と比較すると、「品種単位注目点別吸光度表」を作成する手間は小さいというメリットがある。
【0159】
実施の形態3.
図12は、本発明の第3の実施の形態における飲食物識別装置300の構成例を示すブロック図である。なお、上述した第1の実施の形態や上述した第2の実施の形態と同様の構成および処理をなす部分については、同一の符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0160】
本例の飲食物識別装置300は、ディジタルカメラやカメラ機能付き携帯電話端末で飲食物を撮影したときに、同時にその飲食物に電磁波を照射してその飲食物の品名別スペクトルを生成し、撮影データと品名別スペクトルとを対応付けした保存する機能を有する。
【0161】
図12に示すように、本例の飲食物識別装置300は、登録物品名記憶部11と、登録物分光分析器21と、カメラ装置22と、撮影指示部23と、撮影記憶保持メモリ24とを含む。なお、飲食物識別装置300は、上述した飲食物識別装置100や飲食物識別装置200にカメラ装置22などを付加した構成とされる。すなわち、飲食物識別装置300は、図示はしないが、検査物スペクトル格納部30などの飲食物識別装置100や飲食物識別装置200が備える他の構成を含む。
【0162】
登録物品名記憶部11は、例えばRAMなどの記憶媒体によって構成され、登録対象とする飲食物の種類や飲食物名などの各種情報が格納される。飲食物の種類および飲食物名は、ユーザによって入力される。具体的には、ユーザは、例えば飲食物識別装置300が備える図示しない入力装置(例えばキーボード、マウス)を操作することによって、飲食物の種類および飲食物名を入力する。登録物品名記憶部11は、入力装置の操作によって入力された飲食物の種類および飲食物名を受け付けて保存する。
【0163】
登録物分光分析器21は、登録対象とする飲食物の分光分析を行うための分光分析器によって構成される。登録物分光分析器21は、上述した検査物分光分析器20と同様の構成とされる。検査物分光分析器20と登録物分光分析器21とを別個に設けずに、1つの分光分析器を設ける構成としてもよい。登録物分光分析器21は、撮影指示部23からの分光分析実行指示に応じて、登録対象とする飲食物のスペクトルを生成するための処理を実行し、生成したスペクトルを撮影指示部23に送信する。
【0164】
カメラ装置22は、例えばディジタルカメラによって構成される。カメラ装置22は、被写体を撮影し、ディジタル形式(例えばビットマップファイル、JPEGファイル)の撮影データを生成する。カメラ装置22は、撮影指示部23からの撮影指示に応じて、被写体の撮影処理を行い、撮影データを撮影指示部23に送信する。
【0165】
撮影指示部23は、ユーザの操作(例えばシャッターボタンの押下操作)に応じて、カメラ装置22に対して撮影指示を行うとともに、その撮影指示に同期して、登録物分光分析器21に対して分光分析実行指示を行う。
【0166】
撮影記憶保持メモリ24は、例えばデータベース装置やハードディスク装置などの記憶媒体によって構成され、撮影データや品名別スペクトルなどが格納される。なお、撮影記憶保持メモリ24は、例えばSDカード(Secure Digital memory Card)等のディジタルカメラで使用されている記憶媒体であってもよい。なお、撮影記憶保持メモリ24は格納される情報を、データベース50に保存するようにしてもよい。この場合、データベース50に格納されている各品名別スペクトル対応表に、それぞれ撮影データが付加されることになる。
【0167】
本例では、撮影指示部23は、ユーザからの指示に応じて、カメラ装置22に対して撮影指示を行うとともに、登録物分光分析器21に対して分光分析実行指示を行う。その撮影指示に従ってカメラ装置22が撮影処理を行い、分光分析実行指示に従って登録物分光分析器21が登録対象とする飲食物のスペクトルを生成する処理を実行する。
【0168】
すなわち、ユーザからの指示に応じて、カメラ装置22による登録対象とする飲食物の撮影と、登録物分光分析器21による登録対象とする飲食物のスペクトルを生成とが同期して実行され、撮影データとスペクトルとが撮影指示部23に送信される。
【0169】
撮影指示部23は、カメラ装置22からの撮影データと、登録物分光分析器21からのスペクトルとを受信すると、登録物品名記憶部11に保存されている飲食物の種類および飲食物名とともに、撮影記憶保持メモリ24に登録する。
【0170】
よって、撮影記憶保持メモリ24には、ある飲食物のスペクトルである品名別スペクトルと、その飲食物の撮影データと、その飲食物の種類および飲食物名とが対応付けされて登録される。なお、図12に示すように、登録した日付といった書誌情報などの他の情報を対応付けして保存するようにしてもよい。
【0171】
以上に説明したように、上述した第3の実施の形態では、飲食物の外観イメージ(撮影データ)と品名別スペクトルとを対応付けして記憶する構成としたので、飲食物の外観イメージを各処理に利用することができるようになる。例えば、識別結果表示部70にて類似判定の結果を報知する際に、飲食物名などに加えて、その飲食物の撮影データを表示するようにすることができるようになる。
【0172】
また、上述した第3の実施の形態では、カメラ装置やカメラ機能付き携帯電話端末で飲食物を撮影したときに、同時にその飲食物の成分を記録することができるようになる。従って、玩具としての需要が見込まれる他、食事のカロリーに留意しなくてはならない例えば糖尿病患者などのような人向けの健康器具としての役割を果たすことも期待できる。
【0173】
実施の形態4.
図13は、本発明の第4の実施の形態における飲食物識別装置400の構成例を示すブロック図である。なお、上述した第1の実施の形態〜上述した第3の実施の形態と同様の構成および処理をなす部分については、同一の符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0174】
図13に示すように、本例の飲食物識別装置400は、品名別スペクトル対応表データベース50と、品名別スペクトル対応表ダウンロード部55と、を含む。品名別スペクトル対応表ダウンロード部55は、通信ネットワークを介して情報センタ56に接続される。なお、飲食物識別装置400は、上述した飲食物識別装置100や飲食物識別装置200に品名別スペクトル対応表ダウンロード部55を付加した構成される。すなわち、飲食物識別装置400は、図示はしないが、検査物種類記憶部10や検査物分光分析器20などの飲食物識別装置100や飲食物識別装置200が備える他の構成を含む。
【0175】
品名別スペクトル対応表ダウンロード部55は、データ通信を行うための通信機能を有するとともに、ユーザからの指示(例えば入力装置の操作)に応じて、情報センタ56から最新の品名別スペクトル対応表をインターネットや無線通信回線などの通信ネットワークを介して受信し、品名別スペクトル対応表データベース50に格納する処理を実行する機能を有する。
【0176】
なお、実際に商用のサービスとしてこのようなデータのダウンロードサービスを行う場合には、月きめ課金や重量課金などによる課金を行うようにしてもよい。
【0177】
品名別スペクトル対応表ダウンロード部55は、携帯電話端末やPHS(Personal Handyphone System)等の通信手段によって実現されるようにしてもよい。
【0178】
情報センタ56は、例えばWWWサーバによって構成され、品名別スペクトル対応表を飲食物識別装置400に提供するサービスを提供する。情報センタ56には、専門家が実験をして、新たな品名に関してその波数と吸光度のスペクトルの値が測定され、その測定結果である品名別スペクトル対応表が登録される。
【0179】
なお、情報センタ56からのダウンロード方式や、情報センタ56の構成などはどのようなものであってもよい。
【0180】
なお、本例において、情報センタ56から、品名別スペクトル対応表だけでなく、品種単位注目点別吸光度表などの他の情報をもダウンロードするようにしてもよい。
【0181】
以上に説明したように、上述した第4の実施の形態では、新たな品名別スペクトル対応表を、通信ネットワークを介して外部からダウンロードする構成としたので、新規の品名別スペクトル対応表を随時追加することができるようになり、検査物スペクトルと同等の物品スペクトルが検索され、信頼度の高い判別結果が得られる可能性を高めることができる。
【0182】
仮に、ディジタルカメラやカメラ機能付き携帯電話端末に装置400を搭載した場合には、性能を左右する重要な部分は、品名別スペクトルや品種単位注目点別吸光度表などのデータの量や新しさである。
【0183】
上記のように、最新データを外部からダウンロード可能な構成としたので、実験が追加され品名別スペクトル対応表などが新たに作成される度に、ユーザがダウンロードすることができ、装置400を高性能に保つことができるようになる。
【0184】
なお、上述した各実施の形態では、検査物が飲食物であるとして説明していたが、検査物は、飲食物として取り扱われない動物や植物などの有機物であってもよいし、脂肪分の含有量等がわかるため例えば人間の肌であるとしてもよい。
【0185】
上記のように、人間の肌を検査物とし、上述した飲食物識別装置100等を、例えば肌年齢を調べたり健康状態をチェックしたりするような、測定機器や健康医療機器などに適用するようにしてもよい。
【0186】
なお、上述した各実施の形態では特に言及していないが、上述した飲食物識別装置100等の精度については、食品工場の品質管理や米の卸流通価格で求められる精度より低くてもよいことは勿論である。
【0187】
また、上述した各実施の形態における分光分析器20,21は、赤外線などの電磁波を照射する機能を有している。電磁波を照射するためには、一般にハロゲンランプが使用される(図2(B)参照)。ところが、ハロゲンランプを発光させる電源は大きいものが必要となるため、飲食物識別装置100等をディジタルカメラやカメラ機能付き携帯電話端末に連結しようとすると、別の電源が必要になる。そこで、飲食物識別装置100等をディジタルカメラやカメラ機能付き携帯電話端末に組み込ませる場合には、ハロゲンランプに変えてLED等の電力消費が小さいものを用いるようにすればよい。
【0188】
なお、上述した各実施の形態では特に言及していないが、本装置100,200,300,400において実行される各処理は、本装置100等に搭載されている制御プログラム(判別プログラム)に従って実行される。この制御プログラムは、例えば、検査対象物である物品の分光分析結果にもとづいて検査対象物を判別させる物品判別プログラムであって、飲食物識別装置100等を構成するコンピュータに、検査対象物の分光分析を行うステップと、検査対象物の分光分析結果として得られた検査物スペクトルを検査物スペクトル格納部に格納するステップと、検査物スペクトル格納部に格納された検査物スペクトルと、物品についての分光分析結果として得られた物品スペクトルと当該物品について付与された物品名とが対応付けされた物品別スペクトル情報が格納されている物品別スペクトル情報格納部に格納された各物品別スペクトル情報に含まれる各物品スペクトルとを順次比較して、複数の物品スペクトルから検査物スペクトルに最も類似する物品スペクトルを選択するステップと、選択した物品スペクトルに対応付けされた物品名を、検査対象物の判別結果として報知するステップとを実行させるためのプログラムである。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明によれば、分光分析を行うことによって飲食物などの有機物を判別する検査装置、そのような判別機能が搭載されたディジタルカメラやカメラ機能付き携帯電話端末などに適用するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】本発明の第1の実施の形態における飲食物識別装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】レーザ光源を用いた分光分析方法とハロゲンランプ光源用いた分光分析方法とを示す概念図である。
【図3】検査物スペクトルのデータ構成の例を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における飲食物識別装置が実行する飲食物判定処理の例を示すフローチャートである。
【図5】波数範囲比較型類似度計算部が実行する類似度判定処理の例を示すフローチャートである。
【図6】検査物スペクトルと品名別スペクトルとの類似判断の様子を示す概念図である。
【図7】ある飲食物における複数の品種(商品)それぞれの赤外線スペクトル(2次微分値)を示す説明図である。
【図8】第1の実施の形態による判別手法と従来手法との違いを示す概念図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における飲食物識別装置の構成例を示すブロック図である。
【図10】注目波数特定型類似度計算部が実行する類似度判定処理の例を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施の形態による判別手法と第1の実施の形態による判別手法との違いを示す概念図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態における飲食物識別装置の構成例を示すブロック図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態における飲食物識別装置の構成例を示すブロック図である。
【図14】化学センサによる分析手法と物理センサによる分析手法とを示す説明図である。
【図15】検査物に電磁波をあてて吸光度を測定する原理を示す概念図である。
【図16】米の近赤外スペクトルの例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0191】
10 検査物種類記憶部
11 登録物品名記憶部
20 検査物分光分析器
21 登録物分光分析器
22 カメラ装置
23 撮影指示部
24 撮影記憶保持メモリ
30 検査物スペクトル格納部
31 検査物スペクトル
40 検査物種類別比較波数帯表格納部
41 検査物種類別比較波数帯表
45 検査物種類別注目波数表格納部
46 検査物種類別注目波数表
50 品名別スペクトル対応表データベース
51〜53 品名別スペクトル対応表
55 品名別スペクトル対応表ダウンロード部
56 情報センタ
60 波数範囲比較型類似度計算部
70 識別結果表示部
100,200,300,400 飲食物識別装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物である物品の分光分析結果にもとづいて前記検査対象物を判別する物品判別装置であって、
ユーザの操作に従って物品の分光分析を行う分光分析手段と、
前記分光分析手段による前記検査対象物の分光分析結果として得られた検査物スペクトルを格納する検査物スペクトル格納部と、
物品についての分光分析結果として得られた物品スペクトルと当該物品について付与された物品名とが対応付けされた物品別スペクトル情報を格納する物品別スペクトル情報格納部と、
前記検査物スペクトル格納部に格納された検査物スペクトルと、前記物品別スペクトル情報格納部に格納された各物品別スペクトル情報に含まれる各物品スペクトルとを順次比較し、複数の物品スペクトルから前記検査物スペクトルに最も類似する物品スペクトルを選択する類似選択手段と、
前記類似選択手段によって選択された物品スペクトルに対応付けされた物品名を、前記検査対象物の判別結果として報知する報知手段とを備えた
ことを特徴とする物品判別装置。
【請求項2】
検査物スペクトルは、検査対象物の分光分析結果として得られた波数別の吸光度によって表現され、
物品スペクトルは、物品の分光分析結果として得られた波数別の吸光度によって表現され、
類似選択手段は、
前記検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての前記物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出し、
算出した累計値が最も小さい物品スペクトルを、前記検査物スペクトルに最も類似する物品スペクトルとして選択する
請求項1記載の物品判別装置。
【請求項3】
検査対象物とされる物品の種類を受け付ける種類受付手段と、
スペクトル同士を比較する際の波数の範囲を特定するためにあらかじめ定められた波数の下限と上限とを示す比較波数範囲を物品の種類ごとに格納する比較波数範囲格納手段とを備え、
類似選択手段は、前記種類受付手段によって受け付けられた種類についての前記比較波数範囲を前記比較波数範囲格納手段から読み出し、読み出した比較波数範囲における波数の下限から上限までの範囲について、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出する
請求項2記載の物品判別装置。
【請求項4】
検査対象物とされる物品の種類を受け付ける種類受付手段と、
スペクトル同士を比較する際に注目する波数としてあらかじめ定められた注目波数を物品の種類ごとに格納する注目波数格納手段とを備え、
類似選択手段は、前記種類受付手段によって受け付けられた種類についての前記注目波数を前記注目波数格納手段から読み出し、読み出した注目波数について、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出する
請求項2記載の物品判別装置。
【請求項5】
報知手段は、類似選択手段によって算出された最も小さい累計値を、判別結果として報知する物品名の信頼度を示す信頼度情報として報知する
請求項2から請求項4のうちいずれかに記載の物品判別装置。
【請求項6】
物品の外観イメージを撮影するカメラ装置と、
ユーザによる撮影指示操作に応じて前記カメラ装置と分光分析手段とに同期して処理の実行を指示する同期処理指示手段と、
前記同期処理指示手段からの指示に応じて前記カメラ装置と分光分析手段とにより実行された処理によって得られた物品の外観イメージと物品スペクトルとを対応付けして記憶する同期処理記憶手段とを備えた
請求項1から請求項5のうちいずれかに記載の物品判別装置。
【請求項7】
作成された物品別スペクトル情報を保持する情報センタから、通信ネットワークを介して物品別スペクトル情報を受信し、物品別スペクトル情報格納部に格納する物品別スペクトル情報ダウンロード部を備えた
請求項1から請求項6のうちいずれかに記載の物品判別装置。
【請求項8】
物品の物品名を受け付ける物品名受付手段と、
分光分析手段による物品の分光分析結果として得られた物品スペクトルと、前記物品名受付手段によって受け付けられた物品名とを対応付けした物品別スペクトル情報を物品別スペクトル情報格納部に格納する物品別スペクトル情報登録手段とを備えた
請求項1から請求項7のうちいずれかに記載の物品判別装置。
【請求項9】
検査対象物である物品の分光分析結果にもとづいて前記検査対象物を判別する物品判別方法であって、
検査対象物の分光分析を行い、
前記検査対象物の分光分析結果として得られた検査物スペクトルを検査物スペクトル格納部に格納し、
前記検査物スペクトル格納部に格納された検査物スペクトルと、物品についての分光分析結果として得られた物品スペクトルと当該物品について付与された物品名とが対応付けされた物品別スペクトル情報が格納されている物品別スペクトル情報格納部に格納された各物品別スペクトル情報に含まれる各物品スペクトルとを順次比較して、複数の物品スペクトルから前記検査物スペクトルに最も類似する物品スペクトルを選択し、
選択した物品スペクトルに対応付けされた物品名を、前記検査対象物の判別結果として報知する
ことを特徴とする物品判別方法。
【請求項10】
検査物スペクトルは、検査対象物の分光分析結果として得られた波数別の吸光度によって表現され、
物品スペクトルは、物品の分光分析結果として得られた波数別の吸光度によって表現され、
前記検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての前記物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出し、
算出した累計値が最も小さい物品スペクトルを、前記検査物スペクトルに最も類似する物品スペクトルとして選択する
請求項9記載の物品判別方法。
【請求項11】
検査対象物とされる物品の種類を受け付け、
スペクトル同士を比較する際の波数の範囲を特定するためにあらかじめ定められた波数の下限と上限とを示す比較波数範囲が物品の種類ごとに格納された比較波数範囲格納手段から、受け付けた種類についての前記比較波数範囲を読み出し、
読み出した比較波数範囲における波数の下限から上限までの範囲について、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出する
請求項10記載の物品判別方法。
【請求項12】
検査対象物とされる物品の種類を受け付け、
スペクトル同士を比較する際に注目する波数としてあらかじめ定められた注目波数を物品の種類ごとに格納する注目波数格納手段から、受け付けた種類についての前記注目波数を読み出し、
読み出した注目波数について、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出する
請求項10記載の物品判別方法。
【請求項13】
算出した最も小さい累計値を、判別結果として報知する物品名の信頼度を示す信頼度情報として報知する
請求項10から請求項12のうちいずれかに記載の物品判別方法。
【請求項14】
物品の外観イメージを撮影するカメラ装置と分光分析手段とにユーザによる撮影指示操作に応じて同期して処理の実行を指示し、
指示に応じて前記カメラ装置と分光分析手段とにより実行された処理によって得られた物品の外観イメージと物品スペクトルとを対応付けして同期処理記憶手段に記憶する
請求項9から請求項13のうちいずれかに記載の物品判別方法。
【請求項15】
作成された物品別スペクトル情報を保持する情報センタから、通信ネットワークを介して物品別スペクトル情報を受信し、物品別スペクトル情報格納部に格納する
請求項9から請求項14のうちいずれかに記載の物品判別方法。
【請求項16】
物品の物品名を受け付け、
物品の分光分析結果として得られた物品スペクトルと、受け付けた物品名とを対応付けした物品別スペクトル情報を物品別スペクトル情報格納部に格納する
請求項9から請求項15のうちいずれかに記載の物品判別方法。
【請求項17】
検査対象物である物品の分光分析結果にもとづいて前記検査対象物を判別させる物品判別プログラムであって、
コンピュータに、
検査対象物の分光分析を行うステップと、
前記検査対象物の分光分析結果として得られた検査物スペクトルを検査物スペクトル格納部に格納するステップと、
前記検査物スペクトル格納部に格納された検査物スペクトルと、物品についての分光分析結果として得られた物品スペクトルと当該物品について付与された物品名とが対応付けされた物品別スペクトル情報が格納されている物品別スペクトル情報格納部に格納された各物品別スペクトル情報に含まれる各物品スペクトルとを順次比較して、複数の物品スペクトルから前記検査物スペクトルに最も類似する物品スペクトルを選択するステップと、
選択した物品スペクトルに対応付けされた物品名を、前記検査対象物の判別結果として報知するステップとを
実行させるための物品判別プログラム。
【請求項18】
検査物スペクトルは、検査対象物の分光分析結果として得られた波数別の吸光度によって表現され、
物品スペクトルは、物品の分光分析結果として得られた波数別の吸光度によって表現され、
コンピュータに、
さらに、前記検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての前記物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出するステップと、
算出した累計値が最も小さい物品スペクトルを、前記検査物スペクトルに最も類似する物品スペクトルとして選択するステップとを
実行させるための請求項17記載の物品判別プログラム。
【請求項19】
コンピュータに、
さらに、検査対象物とされる物品の種類を受け付けるステップと、
スペクトル同士を比較する際の波数の範囲を特定するためにあらかじめ定められた波数の下限と上限とを示す比較波数範囲が物品の種類ごとに格納された比較波数範囲格納手段から、受け付けた種類についての前記比較波数範囲を読み出すステップと、
読み出した比較波数範囲における波数の下限から上限までの範囲について、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出するステップとを
実行させるための請求項18記載の物品判別プログラム。
【請求項20】
コンピュータに、
さらに、検査対象物とされる物品の種類を受け付けるステップと、
スペクトル同士を比較する際に注目する波数としてあらかじめ定められた注目波数を物品の種類ごとに格納する注目波数格納手段から、受け付けた種類についての前記注目波数を読み出すステップと、
読み出した注目波数について、検査物スペクトルにおける各波数についての吸光度の値と対応する各波数についての物品スペクトルにおける吸光度の値との差を累計した累計値を、各物品スペクトルについて順次算出するステップとを
実行させるための請求項18記載の物品判別プログラム。
【請求項21】
コンピュータに、
さらに、算出した最も小さい累計値を、判別結果として報知する物品名の信頼度を示す信頼度情報として報知するステップを
実行させるための請求項18から請求項20のうちいずれかに記載の物品判別プログラム。
【請求項22】
コンピュータに、
さらに、物品の外観イメージを撮影するカメラ装置と分光分析手段とにユーザによる撮影指示操作に応じて同期して処理の実行を指示するステップと、
指示に応じて前記カメラ装置と分光分析手段とにより実行された処理によって得られた物品の外観イメージと物品スペクトルとを対応付けして同期処理記憶手段に記憶するステップとを
実行させるための請求項17から請求項21のうちいずれかに記載の物品判別プログラム。
【請求項23】
コンピュータに、
さらに、作成された物品別スペクトル情報を保持する情報センタから、通信ネットワークを介して物品別スペクトル情報を受信し、物品別スペクトル情報格納部に格納するステップを
実行させるための請求項17から請求項22のうちいずれかに記載の物品判別プログラム。
【請求項24】
コンピュータに、
さらに、物品の物品名を受け付けるステップと、
物品の分光分析結果として得られた物品スペクトルと、受け付けた物品名とを対応付けした物品別スペクトル情報を物品別スペクトル情報格納部に格納するステップとを
実行させるための請求項17から請求項23のうちいずれかに記載の物品判別プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−226945(P2006−226945A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43743(P2005−43743)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(390001395)エヌイーシーシステムテクノロジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】