説明

物品取引システム及びサーバ

【課題】利用者に対し意識させずに、物品の貸し出し等の処理を行なうこと。
【解決手段】利用者がテーブル7について書籍10を読む際に、テーブル7に装着したアンテナ21で書籍10のRFIDタグからシリアルNO.を読み取り、PC3に送信する。PC3は、このシリアルNO.を自身のIPアドレスと共に、サーバ5へ送信する。サーバ5は、シリアルNO.とIPアドレスとを書籍データと利用者データに変換するともに、これらを関連付けて現在の日時とともに貸し出し管理テーブルに記憶し、書籍10の貸し出し処理を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者に物品を貸し出しあるいは譲渡するための物品取引システム及びサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貸し出しされる物品や販売される物品にはバーコードが付されており、販売員等がバーコードスキャナ等を用いてこのバーコードを読み取り、貸し出し処理あるいは販売処理を行っていた。
【0003】
例えば、貸し出しされる物品が図書館の書籍の場合、貸し出し処理は次のようになる。
まず、図書館の利用者には、利用者識別のためのバーコードが印刷されたIDカード(貸し出しカード)が配布されており、書籍には書籍識別のためのバーコードラベルが貼付されている。利用者が書籍を借りる場合、書籍を貸し出しカウンターまで持って行き、図書館の係員に貸し出しカードと書籍を共に差出し、この係員がバーコードスキャナ等を用いてこれらバーコードを読み取ることにより、貸し出し処理が行われる。
【0004】
従って、このような貸し出し処理の方法では、書籍を借りる利用者が複数居た場合や貸し出し処理をする書籍が複数あった場合、利用者の処理待ち時間が長くなるばかりか、係員にとっても作業負担が大きくなる。
【0005】
一方、利用者の処理待ち時間の軽減、貸し出し処理の効率化を図るため、例えば、特許文献1に記載の自動物品貸出管理システムのような、物品の貸し出し処理の自動化を図るものもある。以下カッコ内の符号は特許文献1に記載の符号である。
【0006】
この自動物品貸出管理システムによれば、貸出物品である書籍(10)に情報キャリア(11)を付着し、境界付近に複数の物品貸し出し装置(1)を配置し、顧客がこの物品貸し出し装置(1)の投入口(2)へ書籍(10)と顧客のIDカード(40)を入れると、情報キャリア(11)とIDカード(40)が読み取られて貸し出し処理が行われる。
確かに、この物品貸し出し装置(1)を用いれば貸し出しを行う係員が不要となり、貸し出し業務の自動化が図れる。
【0007】
しかしながら、この自動物品貸出管理システムにおいても、利用者は物品貸し出し装置(1)まで借りたい書籍を持って行かなければならず、利用者は貸し出し手続を意識的に行わなければならない。利用者の立場からすれば、単に貸し出し処理手続をするものが、人間から機械に変わっただけであり、利用者の貸し出し行動自体はほとんど変わりがなく、貸し出し側のみの自動化が図れただけであった。
【0008】
その他にも、特許文献2〜4に記載されたような貸し出しシステムあるいは方法もあるが、いずれも利用者は貸し出し手続を意識的に行わなければならない。
【0009】
【特許文献1】特開平09―212564号公報
【0010】
【特許文献2】特開2005−139789号公報
【0011】
【特許文献3】特開平05−324937号公報
【0012】
【特許文献4】特開平10−261199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、その目的は、利用者に対し意識させずに、物品の貸し出しあるいは譲渡の処理を行なうことができるようにした物品取引システム及びサーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の物品取引システムは、予め付与された利用者識別データにより利用者を検出する利用者検出手段と、上記利用者の往来ポイントあるいは停止ポイントに設置されるとともに、上記利用者への貸し出しあるいは譲渡の対象となる物品に予め付与された物品識別データをこの物品に非接触で読み取り可能な読取手段と、上記読取手段で上記物品識別データを読み取られた物品が、上記利用者検出手段で検出された利用者により移動されたことを検出する移動検出手段と、上記移動検出手段により移動が検出されたことをトリガーとしてこの物品の貸し出しあるいは譲渡の処理を行う取引処理手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
物品の貸し出しあるいは譲渡(以下「貸し出し等」と言う)の処理をするに際しては、「誰に」対し、「何を」貸し出し等したかを検出することがまず重要であり、本発明においては、「誰に」対し貸し出し等したかを検出するのに利用者検出手段を利用し、「何を」貸し出し等したかを検出するのに読取手段を利用している。
【0016】
例えば、利用者検出手段としては、利用者の氏名、住所、電話番号等の個人情報と、利用者独自のIDとを対応付けて予めデータベース等に登録しておき、このIDをキーとしてこのデータベースを検索し得るように構成しておけば、該当する利用者を検出可能である。
【0017】
また、読取手段は、例えば、リーダライタから構成されており、物品に物品識別データが記憶されたRFIDタグが装着されていれば、読取手段は物品に非接触で、このRFIDタグから物品識別データを読み取ることが可能である。
【0018】
この読取手段は、利用者の往来ポイントあるいは停止ポイントに設置される。「往来ポイント」とは、例えば、出入口、廊下等の利用者が往来する場所であり、利用者が移動する場所を意味し、他方、「停止ポイント」とは、利用者がほとんど移動しない場所を意味し、例えば、本を読む場所、楽器を演奏する場所等を意味する。
【0019】
更に、この読取手段は、貸し出し等の対象の物品を所持した利用者が往来ポイントあるいは停止ポイントに位置した際に、物品から物品識別データが読取り可能な距離に設置されている。
【0020】
このように読取手段を構成したことにより、利用者は意識的に物品識別データを読取手段に読み取らせる必要はなくなる。
【0021】
例えば、利用者が、図書館で本を借り、家に持ち帰って読む場合を想定する。従来は、借主である利用者は本棚から所望の本を取り出し、その本を貸し出しカウンター等に持って行き、係員がリーダライタ等の読取手段により、本に貼付されたバーコードを読み取って貸し出し処理を行っていた。すなわち、従来においては、本に貼付されたバーコードを読み取ってもらうために利用者は、貸し出しカウンターまで本を持っていかなければならなかった。
【0022】
一方、本発明においては、読取手段が利用者の往来ポイントあるいは停止ポイントに設置され、かつ、物品識別コードを物品に非接触で読み取り可能に構成されている。従って、上記のように利用者が本を借りる場合には、例えば、利用者がリーダライタの設置されたドアの前を通過する、あるいは、リーダライタの設置されたテーブルについて本を読むだけで、その本から物品識別コードを読み取ることが可能となり、利用者が意識的に物品識別コードを読み取らせる必要はなくなる。
【0023】
本発明においては、物品が利用者により移動されたことを移動検出手段で検出し、この検出をトリガーとして貸し出し等の処理を取引処理手段が行うとしており、ここで言う「利用者により移動された」とは、物品を持って利用者が歩いたことを意味するばかりでなく、物品を机等に置いた等、広く物品が人の手によって移動されたことを意味する。
【0024】
例えば、利用者が図書館から本を借りてテーブルについて読む場合には、利用者は書棚から本を取り出してテーブルまで本を移動する必要があり、このような移動も含まれる。
【0025】
また、物品を借りる場合でも購入する場合でも、通常、利用者による物品の移動が伴うことから、本発明においては、この物品の移動を移動検出手段により検出し、この移動の検出をトリガーとして取引処理手段が物品の貸し出し等の処理を行うように構成している。
【0026】
例えば、利用者が図書館から本を借りて自室のテーブルで読む場合には、図書館から本を持ち出せば、その本を貸し出したと通常判断してよい。よって、利用者が図書館から自室まで移動する間に通過する廊下あるいは自室のドア等で本の移動を検出する、又は、自室のテーブルに利用者がついた時点で本の移動を検出し、この移動を検出したことをトリガーとして、取引処理手段が貸し出し日および返却日を算出するように構成しておけば、利用者に対する本の貸し出しは可能となる。
【0027】
また、本発明の物品取引システムは、予め利用者に付与された利用者識別データと、上記利用者への貸し出しの対象となる物品に付与された物品識別データとを、この利用者およびこの物品に非接触で読み取り可能であるとともに、上記利用者の往来ポイントに複数設置された読取手段と、上記読取手段により読み取られた上記利用者識別データと上記物品識別データとを受信可能なサーバと、を備え、上記読取手段のそれぞれは、自身の位置を特定するためのロケーション情報を上記利用者識別データおよび上記物品識別データに対応付けて上記サーバに対し送信可能であり、上記サーバは、上記読取手段から受信した上記利用者識別データから該当する利用者を検出し、上記物品識別データから該当する物品を検出する検出手段と、上記読取手段から受信した少なくとも2以上の上記ロケーション情報から読取手段の位置を検出するとともに、検出された読取手段の位置から利用者および物品の移動を検出する移動検出手段と、上記移動検出手段により利用者および物品の移動が検出されたことをトリガーとして、この物品の貸し出しあるいは譲渡の処理を行う取引処理手段と、を有することを特徴とする。
【0028】
例えば、利用者と物品の双方にRFIDタグを付し、読取手段として複数のリーダライタを用い、この複数のリーダライタを所定の床面に設置する。読取手段からサーバが利用者識別データ、物品識別データを受信した場合、少なくとも、利用者、物品がリーダライタの読取範囲内に位置したことを意味する。更に、2以上のリーダライタからこれら識別データがサーバに対し送信されれば、利用者、物品がともに位置が変わった、すなわち、移動したこととなり、利用者、物品双方の移動の検出が可能となる。
【0029】
また、本発明の物品取引システムは、利用者への貸し出しの対象となる物品に付与された物品識別データをこの物品に非接触で読み取り可能であり、上記利用者における上記物品の使用場所に対応付けられて設置された読取手段と、上記読取手段から上記物品識別データを受信可能な情報処理装置と、上記情報処理装置と通信可能に接続されたサーバとを備え、上記読取手段は、上記利用者が上記物品の使用場所に上記物品を移動することにより、この物品から上記物品識別データを読み取り、上記情報処理装置は、上記読取手段により読み取った上記物品識別データと、上記利用者を検出するための利用者識別データとを上記サーバに送信し、上記サーバは、上記情報処理装置から送信された上記物品識別データと上記利用者識別データとから該当する物品及び利用者を検出する検出手段と、上記検出手段により該当する物品および利用者が検出されたことをトリガーとして、この物品の貸し出し処理を行う取引処理手段と、を有することを特徴とする。
【0030】
ここで、物品の使用場所は、その物品を実際に使用する場所を意味するが、その物品の種類によって種々の場所が想定される。例えば、物品が書籍でこの書籍を机について読む場合なら、その机や椅子を意味するが、更に、その書籍を個室で読む場合にはその個室をも含む。
【0031】
また、上記情報処理装置は、上記読取手段から受信した上記物品識別データを保存する保存手段と、上記保存手段により保存された物品識別データを参照することにより、上記利用者の移動を検知し、この検知を移動通報として上記サーバに送信する移動通報手段を備えるようにしてもよい。
【0032】
また、上記サーバは、上記取引手段により貸し出し処理された物品の貸し出し期限管理を行なう貸し出し管理手段と、上記移動通報手段から移動通報を受信すると、上記貸し出し管理手段に問い合わせ貸し出し期限が超過した物品を検出する貸し出し期限超過検出手段と、上記貸し出し期限超過検出手段により貸し出し期限の超過が検出されたことをトリガーとして、この物品の借主である利用者への警報を上記情報処理装置に対し要求する警報要求手段とを備えるようにしてもよい。
【0033】
更に、本発明の物品取引システムは、上記警報要求手段が上記警報の要求を受けると、上記物品の借主である利用者に対し警報を行なう警報手段を備えるようにしてもよい。
【0034】
この警報手段は、利用者に対し貸し出し期限の超過を知らせるものであり、利用者に対し注意を喚起できさえ出来れば、その方法は限定されない。例えば、ブザーを鳴らす等の音によるもの、ディスプレイ等の視覚に訴えるもの、バイブレーション等体感によるもの等種々のものが適用可能である。
【0035】
また、本発明のサーバは、予め付与された利用者識別データにより利用者を検出する利用者検出手段と、上記利用者の往来ポイントあるいは停止ポイントに設置されるとともに、上記利用者への貸し出しあるいは譲渡の対象となる物品に予め付与された物品識別データをこの物品に非接触で読み取り可能な読取手段から、この物品識別データを受信可能な受信手段と、上記読取手段で上記物品識別データを読み取られた物品が、上記利用者検出手段で検出された利用者により移動されたことを検出する移動検出手段と、上記移動検出手段により移動が検出されたことをトリガーとしてこの物品の貸し出しあるいは譲渡の処理を行う取引処理手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように本発明によれば、利用者の往来ポイントあるいは停止ポイントに設置された読取手段により、物品識別データを読み取られた物品が、利用者により移動されたことを検出し、この移動の検出をトリガーとしてこの物品の貸し出し等の処理を行うようにした。これにより、物品を貸し出し等する側にとっては、貸し出し等の処理に要する係員の削減が可能となり貸し出し業務の自動化が図れる。一方、利用者側にとっても、貸し出し等に要する面倒な手続きが全く不要となり、貸し出し等の処理を意識せず物品を借りることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、図中リーダライタはR/Wと記載されている。
【0038】
図1は、本発明の第1実施形態を示したものであり、本発明の物品取引システムを法律事務所における書籍貸し出しシステムに適用した場合の全体構成を模式的に示した図である。
【0039】
ここでは、法律事務所の所員A氏、B氏、C氏のそれぞれに個室が割り当てられており、
各個室には、それぞれ、アンテナ21を備えたリーダライタ2と、情報処理装置(以下「PC」と言う)3が装備されている。また、この図1においては、アンテナ21を備えたリーダライタ2Aの装備パターンとして2つのパターンを示しており、A氏、C氏の部屋ではテーブル7に装備されたパターンであり(以下このパターンを「テーブルパターン」と言う)、他方、B氏の部屋では出入口のドア8に装備されたパターン(以下このパターンを「ドアパターン」と言う)である。これらの具体的な構造を模式的に示したものが図2であり、(a)はテーブルパターンを、(b)はドアパターンをそれぞれ示している。
【0040】
この第1実施形態においては、所員A氏、B氏、C氏が図書室から書籍10を借りる場合を想定している。この図書室に所蔵する書籍10には全て個別にRFIDタグ12が貼付されている。よって、書籍10を借りる際に、所員は、従来のようにカウンター9で貸し出し手続をする必要は全くない。各所員は、図書室の本棚から所望の書籍10を取り、その書籍10を持ったまま自分の部屋に入れば、従来のようにカウンター9で貸し出し手続きをしなくても、貸し出し処理が完了する。すなわち、所員A氏、C氏の場合は、その書籍10をテーブル7の上に置くあるいはその書籍10をテーブル7で読みさえすればよく、他方、所員B氏の場合は、その書籍10を持ってドア8の前を通過しさえすれば、貸し出し処理は完了する。
【0041】
続いて、図1及び図2を参照して、本発明の書籍貸し出しシステムの構成について説明する。
【0042】
図1に示すように、この書籍貸し出しシステム1は、リーダライタ2A、PC3、サーバ5を備えて構成されており、更に、サーバ5には、書籍10の返却時に使用する返却受付装置6が接続されている。
【0043】
リーダライタ2Aは、ループ状のアンテナ21を備えており、このリーダライタ2Aの制御によりアンテナ21からは電波が常時放射されている。一方、図書室の書棚に所蔵された書籍10には個別にRFIDタグ12が貼着されている。リーダライタ2Aは、書籍10がアンテナ21の読取り範囲内に入ると、この書籍10からシリアルNO.(書籍識別データ)を読み取るように構成されている。
【0044】
図2(a)に示すテーブルパターンでは、テーブル7のテーブル面にアンテナ21が埋め込まれている。利用者はこのテーブル7について書籍10を読む、あるいはテーブル7に書籍10を置くと、リーダライタ2Aは書籍10のRFIDタグ12を検知し、そのRFIDタグ12に記憶されたシリアルNO.の読み取りを行う。一方、図2(b)に示すドアパターンでは、ドア8の表面にアンテナ21が埋め込まれており、利用者はこのドア8の前を書籍10を持って通過すると、リーダライタ2Aは書籍10のRFIDタグ12を検知し、そのRFIDタグ12に記憶されたシリアルNO.の読み取りを行う。
【0045】
PC3は、リーダライタ2Aに接続されて書籍10のシリアルNO.を受信し得るように構成されており、例えば、パーソナルコンピュータで構成されている。図1では、PC3はリーダライタ2Aと有線接続されているが、無線接続でもよく、リーダライタ2Aから書籍10のシリアルNO.を受信できるような種々の接続方法が適用可能である。この書籍貸し出しシステム1においては、このPC3は、所員A氏、B氏、C氏の各所員に個別に割り当てられているとともに、それぞれ固有のIPアドレスを持っており、このIPアドレス(利用者識別データ)により書籍10の借主(利用者)が検出できる。詳細は後述する。なお、利用者を識別するデータとしては、このIPアドレスに限定されるものではない。例えば、この書籍貸し出しシステム1においては、各所員に個別にリーダライタ2Aも割り当てられているので、各リーダライタ2AにこのIPアドレスに変わる個別の識別データを設けておき、この識別データを利用者に対応付けておけば上記IPアドレスと同様に利用者を識別することが可能となる。
【0046】
サーバ5は、LAN4を介してPC3と接続されており、PC3とデータの送受信が可能に構成されている。サーバ5は、図示しないデータベースを備えており、このデータベースには、図3(a)に示す書籍データテーブル300と、(b)に示す利用者データテーブル310と、(c)に示す貸し出し管理テーブル320とが格納されている。
【0047】
書籍データテーブル300は、書籍のデータが書籍10のシリアルNO.ごとに記憶されたテーブルであり、書籍10のシリアルNO.と書籍データとからなる。書籍10のシリアルNO.は書籍10を識別するためのデータである。また、書籍データは、分類、書籍名、著者名、出版社名、ランク、期間から構成されている。このランクは、例えば、その書籍10が秘密管理しているものか否かを示すもので、図3(a)においては、秘密管理されているものには、書籍データテーブル300上に「秘」と記載されている。また、「期間」は、その書籍10の最大貸し出し可能期間を示すものであり、例えば、図3(a)のシリアルNO.が♯1の書籍10なら、貸し出し日から3日以内に返却する必要がある。
【0048】
利用者データテーブル310は、利用者のデータがIPアドレスごとに記憶されたテーブルである。これら書籍データテーブル300と利用者データテーブル310とは、サーバ5のデータベース内に予め格納されている。このように、書籍データテーブル300にはシリアルNO.ごとに書籍データが記憶されているので、リーダライタ2AによりシリアルNO.が読み取られた書籍10をサーバ5により検出可能となる。同様に、PC3からIPアドレスがサーバ5に送信されれば、サーバ5でその利用者が検出可能となる。
【0049】
貸し出し管理テーブル320は、リーダライタ2AによりシリアルNO.を読み取られた書籍10の貸し出し管理を行なうためのテーブルであり、氏名、シリアルNO.、貸し出し日、返却日、返却状況とを対応付けて記憶している。「貸し出し日」は、シリアルNO.を記憶した日であり、サーバ5自身が持つ日時情報からこの貸し出し日は算出される。「返却日」は、この貸し出し日に書籍データテーブル300の「期間」を加算することにより算出される。例えば、シリアルNO.が♯1の書籍10なら、書籍データテーブル300を参照すると「期間」が3日であり、貸し出し管理テーブル320を参照すると「貸し出し日」が2006年2月1日であるので、これに「3日」を加算すると、「返却日」は、2006年2月4日となる。
【0050】
「返却状況」は、書籍10が貸し出し中なのか返却済みなのかを示すものである。その書籍が貸し出中か返却済みかは、「返却日」とサーバ5の現時点の日時情報とを比較することにより算出される。例えば、図3(a)に示す、氏名が「A氏」すなわち借主がA氏で、シリアルNO.が「♯1」の書籍10を参照すると、「返却日」が2006年2月4日となっており、一方、サーバ5の現在日時が2006年3月15日となっており、現時点において返却期限を大幅に過ぎている。従って、この場合には、「返却状況」は「未返却」となる。また、この「返却状況」は、サーバ5の日時情報と返却日を対比し、期限超過していると判断した最初の時点において、「未返却」をセットするように構成されている。すなわち、上記例で言えば、返却日が2006年2月4日であるから、サーバの現在日時が2006年2月5日になった時点で「未返却」がセットされる。
【0051】
なお、利用者が書籍10を返却すると「返却済み」に書き換えられるようになっており、また、貸し出し管理テーブル320は、書籍を返却した後も、所員による書籍10の貸し出し履歴として保存されるように構成されている。
【0052】
返却受付装置6は、サーバ5に通信可能に接続されており、図示しないリーダライタを備えており、利用者から返却された書籍10に貼付されたRFIDタグ12を読み取るとともに、サーバ5に対し返却データの通報をするように構成されている。この返却受付装置6によりRFIDタグ12を読み取る方法は種々考えられる。例えば、ハンディタイプのリーダライタを用いて係員の手によりRFIDタグ12を読み取るように構成する。あるいは、返却ポストとリーダライタを備えた構成とし、この返却ポストの投入口(返却口)近傍にループアンテナを装着し、この返却口から書籍10が投入されるとRFIDタグ12が読み取られるようにすることも可能である。
【0053】
次に、この書籍貸し出しシステム1における動作説明をする。
<貸し出し処理>
図4は、貸し出し処理を示すフローチャートであり、(a)、(b)はPC3での処理手順、(c)はサーバ5での処理手順を示す。
【0054】
(a)の処理は、リーダライタ2Aがリアルタイムで書籍10のシリアルNO.を読み取って次処理(b)にそのシリアルNO.を送信するまでの処理である。具体的には、PC2は、書籍10のシリアルNO.をリーダライタ2Aが読み取ったか否かを随時監視しており(S400)、リーダライタ2Aから読取りがあった場合には(S400のY)、その読み取ったシリアルNO.ごとに検知し(S401)、その検知されたシリアルNO.を次処理(b)に送信する。
【0055】
(b)の処理は、(a)の処理からシリアルNO.が送信されるとスタートする、各シリアルNO.ごとの個別処理であり、サーバ5へ貸し出しデータの通報を行うまでの処理である。具体的には、PC3は、(a)の処理によりシリアルNO.がリーダライタ2Aから送信されると、このシリアルNO.が既に図5に示す貸し出し受け済みテーブル500に登録されているか否かを、フラグの有無により調べる(S403)。この貸し出し受け済みテーブル500は、PC3に格納されており、後述するようにサーバ5から通報不要信号をPC3が受信することによりフラグがセットされる。図5中、シリアルNO.が♯1、♯2の書籍はフラグがセットされた状態「1」を示し、シリアルNO.が♯3の書籍はフラグがセットされていない状態「0」を示す。このようにフラグをセットするようにしているのは、重複貸し出し処理を行なわないようにするためと、既に貸し出し処理を行なって貸し出し中の書籍10のシリアルNO.をサーバ5に対し送信しないためである。
【0056】
具体的には、貸し出し受け済みテーブル500のフラグの有無を調べ、フラグがある場合には(S403のY)そのシリアルNO.は既に登録済み、すなわち、このシリアルNO.の書籍10は貸し出し中であると判断し、そのシリアルNO.はサーバ5に対し送信しない。他方、フラグがない場合には(S403のN)、更に、そのシリアルNO.が未登録であるかを調べ(S404)、未登録である場合には(S404のY)、貸し出し受け済みテーブル500にそのシリアルNO.を記憶するとともに(S405)、サーバ5へ貸し出しデータを通報する(S406)。特に、図2(a)に示すテーブルパターンにおいては、書籍10がテーブル7上に置かれている限り常にリーダライタ2AがシリアルNO.を読み取りPC3に対し送信し続けることになるので、このシリアルNO.を重複してサーバ5に送信しないようにしている。
【0057】
この貸し出しデータには、書籍10のシリアルNO.と、PC3のIPアドレスとが含まれている。この貸し出しデータをサーバ5へ通報した後、サーバ5からの通報不要信号の有無を調べ(S407)、通報不要信号をサーバ5から受信した場合には(S407のY)、貸し出し受け済みテーブル500にフラグをセットして(S408)、S403の処理に戻り、他方、通報不要信号がない場合には(S407のN)、処理を終了する(S409)。
【0058】
ここで、サーバ5から通報不要信号をPC3に対し送信するようにしているのは、PC3からサーバ5に対し不要なデータを送信しないようにするためである。PC3がサーバ5からこの通報不要信号を受信すると、貸し出し受け済みテーブル500の該当するシリアルNO.にフラグをセットし、リーダライタ2AからシリアルNO.が送信されてきたとしてもPC3はこのフラグを参照してそのシリアルNO.にフラグがセットしてあれば、そのシリアルNO.に対する貸し出しデータはサーバ5に対し送信しない。
【0059】
一方、シリアルNO.が未登録であるか否かを調べ未登録でない、すなわち、そのシリアルNO.が既に登録済みである場合には(S404)、サーバ5へ貸し出しデータを通報する(S406)。フラグがなくてシリアルNO.が登録されているということは、貸し出し受け済みテーブル500には登録されているが、フラグはまだセットされていないことを意味することになり、サーバ5への貸し出しデータの通報は通常なら不要である。しかしながら、貸し出しデータがサーバ5に送信されていないということも考えられるので、この場合、念のため貸し出しデータをサーバ5へ通報するようにしている。
【0060】
一方、サーバ5においては、図4(c)に示すように、PC3から貸し出しデータの通報の有無を常時監視しており(S410)、PC3から貸し出しデータの通報があるまで待機するが(S410)、貸し出しデータの通報が有ると(S410のY)、貸し出しデータ中のIPアドレスを氏名データに変換し(S411)、シリアルNO.を書籍データに変換する(S412)。更に、サーバ5は自身が所有する日時情報により現時点の日時情報を取得し(S413)、貸し出し管理テーブル320に貸し出し初期データを書き込む(S414)。その後、PC3へ通報不要信号を送信し(S415)、S410の処理に戻る。この初期データの書き込みとは、氏名、シリアルNO.、貸し出し日、返却日及び返却状況を対応付けて貸し出し管理テーブル320に記憶することであり、この処理により、書籍10の貸し出し処理は完了する。なお、この初期データの書き込みの際には、「返却状況」は「未返却」にセットされる。
【0061】
<返却処理>
図6は、返却処理を示すフローチャートであり、(a)はサーバ5での処理手順、(b)はPC3での処理手順を示す。
【0062】
図6(a)に示すように、サーバ5は、返却受付装置6から返却データの通報の有無を常時監視しており(S600)、返却データの通報があるまで待機している(S600のN)。一方、返却データの通報が有った場合には(S600のY)、この通報データ中のシリアルNO.を検知し(S601)、貸し出し管理テーブル320を検索し、該当するシリアルNO.の書籍10の「返却状況」を返却済みにセットし(S602)、シリアルNO.ごとにPC3へ通報再開要求を送信する(S613)。
【0063】
他方、PC3は、図6(b)に示すように、サーバ5からのこの通報再開要求の受信の有無を常に監視しており(S604)、通報再開要求の受信があるまで待機しいている(S604)。一方、この通報再開要求をサーバ5から受信すると(S604のY)、貸し出し受け済みテーブル500中の該当するシリアルNO.を検索し(S605)、この検索により検出された該当するシリアルNO.を削除し(S606)、貸し出し受け済みテーブル500のフラグをリセットする(S607)。
【0064】
以上のようにして、貸し出し処理、返却処理が行われるが、所員のなかには貸し出し期限をとっくに過ぎているにもかかわらず、書籍10を返却し忘れているといった場合もある。この場合に、この書籍貸し出しシステム1においては、所員に警報し書籍10の返却を促すようにしている。さらに、この警報の効果を高めるべく、所員の移動を検知してこの警報をするようにしている。すなわち、警報は利用者が存在しない場所においてしても意味はなく、利用者が存在する場所において警報をすることにより、確実に利用者に警報が出来ることとなる。そこで、この書籍貸し出しシステム1では、PC3から利用者の移動通報をサーバ5が受信してからこの警報をするようにしている。以下、PC3での移動通報処理と、警報処理の方法について説明する。
【0065】
<移動通報処理>
図7は、PC3からサーバ5へ利用者の移動を通報する処理を示すフローチャートであり、図8はPC3のメモリエリア800を示す図である。
【0066】
まず、図8に示すメモリエリア800について説明すると、このメモリエリア800は、リーダライタ2Aが読み取ったシリアルNO.をリアルタイムに保存するPC3の記憶領域である。図8中、A1は現在メモリ、A2は以前メモリであり、このA1とA2とを比較することにより、利用者の移動が検知される。特に、この図8においては、図2(a)に示すテーブルパターンの場合について示しており、図8(a)はテーブル7上の書籍10の冊数が増えた場合、(b)はテーブル7上の書籍10の冊数が減った場合、(c)はテーブル7上の書籍10の冊数は変わらず、テーブル7上に置いてある書籍10の内容が変わった場合を示している。
【0067】
図8(a)は、テーブル7の上に最初はシリアルNO.♯1の書籍10が置いてあり、ある時点でシリアルNO.♯3の書籍10が増加し、テーブル7上の書籍10が♯1、♯3の書籍10になった状態を示す。すなわち、例えば、所員A氏がシリアルNO.♯1の書籍10をテーブル7の上に置くと、リーダライタ2Aは、♯1のシリアルNO.を読み取る。この書籍10がずーっとテーブル7の上に置かれ続けた場合、ある時点での、A1は♯1であり、A2も同じ♯1である。しかし、テーブル7上に♯3の書籍10が増加した場合には、その時点においてリーダライタ2Aから送信されるシリアルNO.は♯1、♯3である。この状態が、図8(a)に示すメモリエリア800の状態であり、現在メモリA1は♯1、♯3で以前メモリA2は♯1となる。
【0068】
リーダライタ2Aによって読み取られ、PC3に送信されたシリアルNO.に変化がある、すなわち、A1の内容とA2の内容とに差異があるということは、物が勝手に移動することはないことから、この状態を「人により書籍が移動された状態」とみなしている。そして、人によって書籍10が移動された瞬間、すなわち、A1とA2とを比較し変化があったときは、テーブル7の近くに利用者が居るとみなして、これを検知し後述する移動通報をサーバ5に送信するようにしている。
【0069】
続いて、図7を参照してPC3からサーバ5への移動通報処理について説明する。
【0070】
この図7は、PC3での移動通報処理を示すフローチャートである。
【0071】
この処理は、リーダライタ2AからPC3に対し、シリアルNO.が送信されてくるとスタートする。PC3はリーダライタ2AからシリアルNO.が送信されてくると、A1に受信データ、すなわち、既に受信しているシリアルNO.が有るかを調べ(S700)、受信データが有った場合には(S700のY)、A1に格納されていた受信データをA2にシフトし(S702)、A1に今回受信したデータを記憶する(S702)。その後、A1とA2のデータとを比較し(S703)、一致しているか否かを調べ(S704)、一致していない場合には(S704のY)、サーバ5へ移動通報を送信し(S705)、一致している場合には(S704のY)、移動がないと判断しS700の処理に戻る。
【0072】
また、S700の処理において、受信データがない場合には(S700のN)、サーバ5へ移動通報を送信する。ここで、リーダライタ2AからシリアルNO.がPC3に送信されたときに、A1に受信データがない場合とは、まだ書籍10がテーブル7の上に1つも置かれていない状態を示す。従って、この場合に、リーダライタ2AからシリアルNO.が送信されたときには、書籍10がテーブル7に全く置かれていない状態から書籍10が置かれた状態に変化したこと、すなわち、利用者の手により書籍10が移動されたことを示すので、サーバ5へ移動通報を送信するようにしている。
【0073】
<警報処理>
図9は、警報処理を示すフローチャートであり、(a)はサーバ5での処理手順、(b)はPC3での処理手順を示す。
【0074】
図9(a)に示すように、サーバ5は、PC3からの移動通報の有無を常時監視しており(S900)、移動通報があるまで待機し続ける(S900のN)。移動通報があった場合には(S900のY)、貸し出し管理テーブル320を読み出し(S901)、貸し出し期限を超過している書籍10の有無を調べる(S902)。貸し出し期限の超過している書籍10が有る場合には(S902のY)、更にその書籍10が未返却か否かを調べ(S903)、未返却である場合には(S903のY)、超過した書籍10の借主のIPアドレスを貸し出し管理テーブル320から読み出し(S904)、読み出したIPアドレス宛てに警告メッセージを送信し(S905)、S900の処理に戻る。一方、貸し出し期限が超過している書籍10がない場合(S902のN)、未返却の書籍10がない場合(S903のN)には、利用者に警報する必要がないので、S900の処理に戻る。
【0075】
PC3から送信される移動通報は、単に利用者が移動した、すなわち、その場所に存在することを知らせるものであり、どの書籍10が貸し出し期限を超過しているかを特定するものではない。従って、サーバ5は、この移動通報がPC3から送信されると、貸し出し管理テーブル320中に登録された全ての書籍10の「返却状況」を参照し、「未返却」がセットされている書籍10があった場合には、この書籍10の借主のIPアドレス宛に警告メッセージを送信するようにしている。また、貸し出し管理テーブル320を参照したところ、貸し出し期限が超過しているものがあったとしても、この貸し出し管理テーブル320には既に返却済みの書籍10も履歴として記録されているので、貸し出し期限が超過していることをもって未返却として判断すると、既に返却した利用者に対し警報をすることになってしまう。そこで、実際に未返却か否かは「返却状況」を参照し、「未返却」がセットされた書籍を借りている利用者に対し警告メッセージを送信するようにしている。
【0076】
一方、PC3は、図9(b)に示すように、サーバ5から警告メッセージの送信の有無を常に監視しており(S906)、サーバ5から警告メッセージの送信があるまで待機しているが(S906のY)、警告メッセージの送信が有ると(S906のY)、利用者に対し警報を行う(S907)。この警報の手段としては、例えば、光を発する、音を発する、振動により知らせる等の手段が適用可能である。PC3が警告メッセージをサーバ5から受信した後、図示しない各種警報手段に警報要求信号を送信するようにしておき、これを受け取った各種警報手段がそれぞれの方法で警報をするように構成しておけばよい。
【0077】
以上説明した通り、書籍貸し出しシステム1においては、利用者は自身の個室において書籍10を使用すれば貸し出し処理がなされるので、利用者は全く貸し出し処理を意識しないで、貸し出し処理が可能となる。また、利用者は特にIDカードなどの利用者識別情報が記憶された媒体を所持する必要がないので、利用者にとっては便利である。
【0078】
なお、上記第1実施形態においては、本発明の書籍貸し出しシステム1を法律事務所に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではない。複数の者が共同して使用する物品にRFIDタグ12を装着しておき、その物品を使用する場所にリーダライタ2Aを装備しておけば、種々の場所で本発明の書籍貸し出しシステム1は適用可能である。
【0079】
例えば、個室の病室のある病院で入院患者が、書籍、ビデオ、果物ナイフなど病室で使用する物品を借りる場合や、個人事務所(例えば、SOHO)が複数入居するビルなどで、来客用の椅子、はさみ、裁断機などの事務用品、書籍等を借りる場合等にも適用可能である。
【0080】
また、上記テーブルパターンにおいては、個室内に置かれたテーブル7に限定されるものではない。例えば、複数の机が並ぶ自習室において1ヶ月、1年単位など期限付きで机を貸す場合にも適用可能である。この場合には、各机を図2(a)に示すテーブル7のような構成とするとともに、借主がこの机を最初に借りる際に、PC3のIPアドレスを借主に対応付けてサーバ5に登録しておく。すると、それ以降、借主は机を使用するたびに貸し出し手続をする必要は全くない。このような構成とすれば、その他にも、借主に対し「物品を使用する場所の期限付き貸し出し」をするような場合に、本発明の書籍貸し出しシステム1は適用可能である。
【0081】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0082】
図10は、本発明の第2実施形態を示したものであり、本発明の物品取引システムをレンタルビデオ店におけるビデオの貸し出しに適用したレンタルビデオシステムの全体構成を模式的に示した図である。
【0083】
上記第1実施形態においては、使用場所において貸し出し処理が出来るうえ、利用者はIDカード等を所持する必要がないので、利用者にとっては非常に便利である。しかしながら、利用者を識別するための情報を、PC3のIPアドレスから取得するようにしたため、貸し出し処理可能な場所が物品の使用場所に限定されてしまい、利用者の利便性が多少悪くなってしまう。
【0084】
そこで、この第2実施形態においては、貸し出し処理が可能な場所を物品の使用場所に限定することなく、何処の場所でも貸し出し処理を可能とし、利用者の利便性を高めることを特徴としている。
【0085】
この第2実施形態においては、前提として、貸し出し対象のビデオ100には、上記第1実施形態の書籍10と同様の構成のRFIDタグ12が貼付されており、他方、利用者には予めIDカード101が配布されている。このIDカード101は、リーダライタから放射された電波を受信し得るループアンテナを備えて構成されており、このIDカード101内には、利用者を識別するためのデータ(利用者識別データ)が記憶されており、リーダライタ2Bは、この利用者識別データをIDカード101と非接触で読み取れるようになっている。このIDカード101は、例えば、ホルダに入れて利用者が首からぶら下げている。なお、利用者識別データはIDカード101に記憶されている方法以外にも、例えば、時計、ペンダント等の体に身に着ける物にRFIDタグを装着する、RFIDチップを体に埋め込む等、リーダライタが利用者識別データを非接触で読み取れるような構成であればよい。
【0086】
まず、本発明のレンタルビデオシステムの構成について説明する。
【0087】
図10に示すようにレンタルビデオシステム100は、ループ状のアンテナ21を備えたリーダライタ2Bと、中継装置11と、サーバ5とからなり、利用者は図示しないビデオ棚から所望のビデオ13を手に取り、そのビデオ13を持って所定の場所を移動すると、貸し出し処理が完了するように構成されている。
【0088】
リーダライタ2Bは、ループ状のアンテナ21を備えており、このリーダライタ2Bの制御によりアンテナ21からは電波が常時放射されている。このリーダライタ2Bはビデオ店の床に複数埋め込まれており、この床の上にビデオ13を所持した利用者が位置すると、ビデオ13に貼付されたRFIDタグ12と、利用者のIDカード14とを読み取るように構成されている。リーダライタ2Bは、無線通信機能を有しており、中継装置11を介してサーバ5と無線通信可能に構成されている。また、各リーダライタ2Bは、自身の位置を特定するためのロケーション情報を有しており、後述する方法により、リーダライタ2Bの位置座標が検出可能である。
【0089】
このリーダライタ2Bは、例えば、レンタルビデオ店の出入口の床面など、利用者が借りるビデオ13を所持したまま必ず通過する位置に設置しておけばよい。なお、設置位置は床面でなくてもよく、例えば、天井などに設置してもよい。
【0090】
中継装置11は、リーダライタ2B、サーバ5の双方と無線通信可能に構成されており、リーダライタ2Bから受信したデータをサーバ5に送信したり、サーバ5から受信したデータをリーダライタ2Bに送信し得るように構成されている。
【0091】
サーバ5は、リーダライタ2Bと中継装置11を介してデータを無線通信可能に構成されているとともに、図示しないデータベースを備えており、図11に示すR/W位置テーブル30と、図12に示すR/W読取り管理テーブル40とが格納されている。また、上記第1実施形態で説明したのとは、貸し出し対象及び利用者とが異なるが、図3(b)、(c)に示す利用者データテーブル310、貸し出し管理テーブル320と同様の構成のテーブルもこのデータベースに予め格納されている。なお、利用者識別データとしては、上記第1実施形態のようにIPアドレスではなく、利用者のIDカード14に記憶されるIDである。
【0092】
R/W位置テーブル30には、各リーダライタ2BのシリアルNO.と、各リーダライタ2Bの位置座標とが対応付けられて記憶されている。
【0093】
R/W読取り管理テーブル40には、リーダライタ2BのシリアルNO.と、リーダライタ2Bの座標と、利用者のIDと、利用者のIDを各リーダライタ2Bが読み取った時刻と、ビデオ13のシリアルNO.と、ビデオ13のシリアルNO.を各リーダライタ2Bが読み取った時刻とが記憶される。
【0094】
図12には、IDをIDとする利用者が、シリアルNO.V1のビデオ13を持って図10に示す床面上を移動した場合が示されている。シリアルNO.RW1−1のリーダライタ2Bの上をこの利用者がビデオ13を持って移動すると、このリーダライタ2Bから利用者のIDと、ビデオ13のシリアルNO.とがサーバ5に送信される。すると、サーバ5は、これらIDとシリアルNO.とを受信した時刻を、自身が所有する時刻情報から導出し、それぞれを図12中の「R/Wの読み取り時刻(利用者)」と「R/Wの読み取り時刻(ビデオ)」とを、リーダライタ2BのシリアルNO.、利用者のID及びビデオ13のシリアルNO.に対応付けて記憶するように構成されている。
【0095】
このレンタルビデオシステム100においては、利用者の移動した軌跡と、ビデオ13の移動した軌跡とをR/W読み取り管理テーブル40から算出することにより貸し出し処理を行うように構成している。このように、利用者の移動した軌跡とビデオ13の移動した軌跡とにより貸し出し処理を行うとしたのは、利用者に貸し出し処理を意識させないようにするためである。
【0096】
更に、利用者は借りた物を持ち帰る等、必ず借りた物を持って移動するので、この場合、利用者の移動した軌跡とビデオ13の移動した軌跡とは略同一となることから、これら軌跡を算出し対比することにより、利用者がビデオ13を持って移動したこと、それすなわち、利用者がビデオ13を借りたとみなして貸し出し処理の自動化を図っている。
【0097】
次に、この貸し出し処理の動作について図13を参照して説明する。
<貸し出し処理>
図13は、サーバ5における貸し出し処理を示すフローチャートである。
【0098】
サーバ5は、一定時間内にリーダライタ2Bからビデオ13のシリアルNO.の受信があるかを監視しており(S200)、受信があるまで待機している(S200のN)。リーダライタ2Bからビデオ13のシリアルNO.の受信があった場合(S200のY)、更に、2以上のリーダライタ2Bからビデオ13のシリアルNO.が送信されたかを調べる(S201)。リーダライタ2Bから送信されるデータは、利用者のIDと、ビデオ13のシリアルNO.と、これらID及びシリアルNO.を読み取ったリーダライタ2BのシリアルNO.である。リーダライタ2Bからデータが送信されるということは、利用者のIDあるいはビデオ13のシリアルNO.の一方、又は双方が送信されることを意味するが、ビデオ13は勝手に移動することはなく、必ず人の手によって移動することから、この貸し出し処理においては、まず、ビデオ13のシリアルNO.が受信されたか否かを調べることとしている。
【0099】
更に、ここでは、1つのリーダライタ2Bからビデオ13のシリアルNO.が送信されただけでは、ビデオ13の移動した軌跡を算出することは出来ないので、2以上のリーダライタ2Bによりビデオ13のシリアルNO.が送信されたか否かを調べている。なお、この数は、例えば、3以上でも4以上でも適宜変更可能にしておいてもよい。
【0100】
そして、受信が2以上であった場合には、ビデオ13の軌跡を記録し(S201のY)、他方、受信が2以上でない場合には、S200の処理に戻る。
【0101】
同様に、利用者のIDについても、S201と同様の処理を行い、受信が2以上か否かを調べ(S203)、2以上でない場合にはS200の処理に戻り(S203のN)、2以上の場合には、利用者の軌跡を記憶する(S204)。
【0102】
次に、これらビデオ13の軌跡と利用者の軌跡を比較し(S205)、更に軌跡が一致するか否かを調べ(S206)、一致する場合には(S206のY)貸し出し処理を行い(S207)、他方、一致しない場合には(S206のN)、処理を終了する(S208)。
【0103】
これら軌跡は、次のようにして算出される。図14は、移動軌跡のモデル図であり、垂直方向にt軸、水平方向にx軸、y軸をとっており、利用者およびビデオ13の移動の軌跡が時空間座標として表わされている。図中、IPは利用者の時空間座標を示し、V1はビデオ13の時空間座標を示している。t軸は、図12に示すR/W読み取り管理テーブル40における「R/Wの読み取り時刻(利用者)」および「R/Wの読み取り時刻(ビデオ)」であり、x軸、y軸は、リーダライタ2Bの座標である。これらから利用者およびビデオ13の時空間座標が求められ、各時空間座標をそれぞれ結んだものがそれぞれにおける軌跡を示す。そして、これら軌跡を比較し、一致していれば共に移動したとして貸し出し処理を行い。他方、一致していなければ処理を終了する。なお、利用者がビデオ13を持って移動すれば、通常軌跡は一致するはずであるが、利用者とビデオ13とは物理的に分離しているため、軌跡に若干のずれが生ずる場合もあるので、比較した結果、ある範囲内のずれであれば一致と検出するように補正手段を設けておくとよい。
【0104】
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、種々の変形例が考えられる。
【0105】
リーダライタ2Bを一般の道路、駅、駅のホーム、公園等あらゆる公衆が往来する場所に設置しておけば、物品の無店舗販売も可能となる。例えば、販売対象の商品を商品棚に収容し、その商品棚を駅のホーム上に設置しておくとともに、駅のホーム全面にリーダライタ2Bを設置しておく。そして、自身のIDがサーバに登録された利用者が、その商品棚から所望の商品を取り出し、その商品を所持したまま電車に乗る。すると、複数のリーダライタ2Bにより利用者のIDと商品のシリアルNO.とを読み取り、それらはサーバ5に送信される。サーバ5において、貸し出し処理の代わりに販売処理をするように構成しておけば、利用者は商品を商品棚から商品を手に取りそのまま電車に乗っただけで商品を購入できることとなり、利用者自身による通常の購入手続、行動は一切不要となるので、利用者にとっては非常に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】第1実施形態の書籍貸し出しシステムの全体構成図。
【図2】(a)はA氏、C氏のテーブルの構成を示す図、(b)はB氏のドアの構成を示す図。
【図3】(a)は書籍データテーブル、(b)は利用者データテーブル、(c)は貸し出し管理テーブルを示す図。
【図4】貸し出し処理を示すフローチャートであり、(a)及び(b)はPCでの貸し出し処理、(c)はサーバでの貸し出し処理を示す図。
【図5】貸し出し受け済みテーブルを示す図。
【図6】返却処理を示すフローチャートであり、(a)はサーバでの処理、(b)はPCでの処理を示す図。
【図7】PCでの移動通報処理を示すフローチャート。
【図8】PCでのメモリエリアを示す図。
【図9】警報処理を示すフローチャートであり、(a)サーバでの警報処理、(b)はPCでの警報処理を示す図。
【図10】レンタルビデオシステムの全体構成図。
【図11】R/W位置テーブルを示す図。
【図12】R/W読取り管理テーブルを示す図。
【図13】レンタルビデオシステムにおける貸し出し処理フローチャート。
【図14】利用者およびビデオの移動軌跡を時空間座標を用いて示したモデル図。
【符号の説明】
【0107】
1 書籍貸し出しシステム
2A、2B R/W(リーダライタ)
21 アンテナ
3 PC(情報処理装置)
4 LAN
5 サーバ
6 返却受付装置
7 テーブル
8 ドア
9 カウンター
10 書籍
11 中継装置
12 RFIDタグ
13 ビデオ
14 IDカード
30 R/W位置テーブル
40 R/W読取り管理テーブル
100 レンタルビデオシステム
300 書籍データテーブル
310 利用者データテーブル
320 貸し出し管理テーブル
500 貸し出し受け済みテーブル
800 メモリエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め付与された利用者識別データにより利用者を検出する利用者検出手段と、
上記利用者の往来ポイントあるいは停止ポイントに設置されるとともに、上記利用者への貸し出しあるいは譲渡の対象となる物品に予め付与された物品識別データをこの物品に非接触で読み取り可能な読取手段と、
上記読取手段で上記物品識別データを読み取られた物品が、上記利用者検出手段で検出された利用者により移動されたことを検出する移動検出手段と、
上記移動検出手段により移動が検出されたことをトリガーとしてこの物品の貸し出しあるいは譲渡の処理を行う取引処理手段と、
を有することを特徴とする物品取引システム。
【請求項2】
予め利用者に付与された利用者識別データと、上記利用者への貸し出しの対象となる物品に付与された物品識別データとを、この利用者およびこの物品に非接触で読み取り可能であるとともに、上記利用者の往来ポイントに複数設置された読取手段と、
上記読取手段により読み取られた上記利用者識別データと上記物品識別データとを受信可能なサーバと、を備え、
上記読取手段のそれぞれは、
自身の位置を特定するためのロケーション情報を上記利用者識別データおよび上記物品識別データに対応付けて上記サーバに対し送信可能であり、
上記サーバは、
上記読取手段から受信した上記利用者識別データから該当する利用者を検出し、上記物品識別データから該当する物品を検出する検出手段と、
上記読取手段から受信した少なくとも2以上の上記ロケーション情報から読取手段の位置を検出するとともに、検出された読取手段の位置から利用者および物品の移動を検出する移動検出手段と、
上記移動検出手段により利用者および物品の移動が検出されたことをトリガーとして、この物品の貸し出しあるいは譲渡の処理を行う取引処理手段と、
を有することを特徴とする物品取引システム。
【請求項3】
利用者への貸し出しの対象となる物品に付与された物品識別データをこの物品に非接触で読み取り可能であり、上記利用者における上記物品の使用場所に対応付けられて設置された読取手段と、
上記読取手段から上記物品識別データを受信可能な情報処理装置と、
上記情報処理装置と通信可能に接続されたサーバとを備え、
上記読取手段は、
上記利用者が上記物品の使用場所に上記物品を移動することにより、この物品から上記物品識別データを読み取り、
上記情報処理装置は、
上記読取手段により読み取った上記物品識別データと、上記利用者を検出するための利用者識別データとを上記サーバに送信し、
上記サーバは、
上記情報処理装置から送信された上記物品識別データと上記利用者識別データとから該当する物品及び利用者を検出する検出手段と、
上記検出手段により該当する物品および利用者が検出されたことをトリガーとして、この物品の貸し出し処理を行う取引処理手段と、
を有することを特徴とする物品取引システム。
【請求項4】
上記情報処理装置は、
上記読取手段から受信した上記物品識別データを保存する保存手段と、
上記保存手段により保存された物品識別データを参照することにより、上記利用者の移動を検知し、この検知を移動通報として上記サーバに送信する移動通報手段と、を備え、
上記サーバは、
上記取引手段により貸し出し処理された物品の貸し出し期限管理を行なう貸し出し管理手段と、
上記移動通報手段から移動通報を受信すると、上記貸し出し管理手段に問い合わせ貸し出し期限が超過した物品を検出する貸し出し期限超過検出手段と、
上記貸し出し期限超過検出手段により貸し出し期限の超過が検出されたことをトリガーとして、この物品の借主である利用者への警報を上記情報処理装置に対し要求する警報要求手段と、を備え、
上記物品取引システムは、
上記警報要求手段が上記警報の要求を受けると、上記物品の借主である利用者に対し警報を行なう警報手段を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の物品取引システム。
【請求項5】
予め付与された利用者識別データにより利用者を検出する利用者検出手段と、
上記利用者の往来ポイントあるいは停止ポイントに設置されるとともに、上記利用者への貸し出しあるいは譲渡の対象となる物品に予め付与された物品識別データをこの物品に非接触で読み取り可能な読取手段から、この物品識別データを受信可能な受信手段と、
上記読取手段で上記物品識別データを読み取られた物品が、上記利用者検出手段で検出された利用者により移動されたことを検出する移動検出手段と、
上記移動検出手段により移動が検出されたことをトリガーとしてこの物品の貸し出しあるいは譲渡の処理を行う取引処理手段と、
を有することを特徴とするサーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−256998(P2007−256998A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76590(P2006−76590)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】