説明

物品移動装置および物品生産方法

【課題】作業者の移動量の軽減を図った物品移動装置および物品生産方法を提供する。
【解決手段】物品移動装置100は、端部101、102、ガイドレール103、104、ローラ105,106、回転軸106を有する。端部101から端部102に向かって、経路11〜14上を物品Bが連続して移動される。けいろ11〜14はそれぞれ点P11〜P14を中心とする同一半径で中心角が180°の半円弧状であり、全体として連続円弧状となる。作業者M11〜M14はそれぞれ点P11〜P14に配置され、経路11〜14上の物品Bに対して製造作業を実行する。同一の物品Bに対して、作業者M11〜M14が順に作業することで物品Bが製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,経路に沿って物品を移動させる物品移動装置および物品生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商品等を製造するために,経路に沿って物品を移動させる物品移動装置(例えば,コンベアベルト)が用いられる。経路に沿って移動される物品に対して,作業者による作業がなされることで,商品等が製造される。
なお,U字形形状の食物調理ラインに関する技術が公開されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2001−513007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
作業中でも物品移動装置により物品が移動されることから,作業者は物品と共に移動しながら作業する必要がある。この移動は作業者の疲労の原因となるので,作業者の移動量を低減することが望ましい。
上記に鑑み,本発明は作業者の移動量の軽減を図った物品移動装置および物品生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る物品移動装置は,第1の作業者を周回するように,物品を移動させる第1の経路と,前記第1の作業者と隣接する第2の作業者を周回するように,前記第1の経路で移動された物品を移動させる第2の経路と,を具備することを特徴とする。
【0005】
本発明の一態様に係る物品生産方法は,第1の経路によって,第1の作業者を周回するように,物品を移動させながら第1の処理をするステップと,第2の経路によって,前記第1の作業者と隣接する第2の作業者を周回するように,前記第1の経路で移動された物品を移動させながら第2の処理をするステップと,を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば,作業者の移動量の軽減を図った物品移動装置および物品生産方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下,図面を参照して,本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る物品移動装置100を表す上面図である。
物品移動装置100は,商品(または,製造ユニット等の部分品)等を製造する製造ラインとして利用され,経路11〜14に沿って物品Bを移動させる。
【0008】
物品移動装置100は,端部101,102,ガイドレール103,104,ローラ105,回転軸106を有する。
【0009】
端部101,102はそれぞれ,物品Bの移動の始点および終点である。即ち,端部101から端部102に向かって,経路11〜14上を物品B(例えば,製造ユニット)が連続して移動される。
ガイドレール103,104は,ローラ105を左右から保持すると共に,物品Bが経路11〜14上から外れることを防止するための長尺の板状部材である。ガイドレール103,104は,回転軸106によってローラ105を保持する。このとき,物品Bが経路11〜14に沿って移動するように,経路11〜14の方向(物品Bの移動方向)と回転軸106の軸方向とが略直交することが好ましい。
【0010】
ローラ105は,物品Bを経路11〜14に沿って移動させる,例えば,略円筒形状の部材である。ローラ105の少なくとも一部は,モータ等の駆動手段に接続されて,その駆動力で回転され,物品Bを移動させる。モータ等に接続されないローラ105は,物品Bの移動に伴って回転することで,物品の移動を容易にする(摩擦の低減)。
回転軸106は,ローラ105の回転中心に配置され,ローラ105の回転を可能とする。
【0011】
経路11〜14はそれぞれ,点P11〜P14を中心とする同一半径で中心角が180°の半円弧形状であり,全体として連続円弧状(波型)となる。後述のように,経路11〜14はそれぞれ,点P11〜P14から所定範囲(例えば,作業者の腕の長さ程度)内であることが好ましい。経路11〜14は互いの物品Bの移動方向がほぼ一致するように接続されることが好ましい。本実施形態では,例えば,経路11の終点および経路12の始点それぞれでの物品Bの移動方向は,紙面の上から下に向かう方向であり,互いに一致している。
【0012】
作業者M11〜M14はそれぞれ,点P11〜P14に配置され,経路11〜14上の物品Bに対して製造作業(例えば,部品の取り付け,組み立て,ハンダ付け,検査等の処理)を実行する。同一の物品Bに対して,作業者M11〜M14が順に作業することで,物品Bが製造される。このことから,経路11〜14はそれぞれ,点P11〜P14から所定範囲(例えば,作業者の腕の長さ程度)内であることが好ましい。但し,経路11〜14上に配置される物品Bに対して作業可能であれば良く,経路11〜14そのもの全体に手が届く必要はない。また,作業用の工具を用いる場合,その長さを考慮に入れて,点P11〜P14と経路11〜14の関係が規定される。要するに,工具等を使って経路11〜14上の物品Bに作業できれば足りる。
【0013】
物品移動装置100は,製造ラインとして次の(1),(2)のような特徴を有する。
(1)作業者の移動量が小さく,作業時間の短縮,および作業者の疲労軽減が可能
図2は,物品移動装置100の経路11での作業者の移動範囲を示す図である。円弧状の経路11に沿って移動する物品に対して作業者が作業する。ここで,物品状態B10,B11は,作業開始時,終了時の物品の状態(位置)を表す。また,作業状態M0,M1は,作業開始時,終了時の作業者の状態(位置および姿勢)を表す。作業者は,新たな物品が移動して来る度に,作業状態M0,M1間で反復動作する。作業者がある物品への作業を完了して次の物品への作業を開始するためには,作業状態M1から作業状態M0へと体の向きを戻す必要がある。このとき,作業者は,経路11の中心である点P11に位置するため,立ち位置を水平方向に移動する必要がない。
【0014】
図3は,比較例に係る物品移動装置での作業者の移動範囲を示す図である。ここでは,比較例として一般的な直線ラインを示している。直線状の経路11Xに沿って移動する物品に対して作業者が作業する。物品状態B00,B01は,作業開始時,終了時の物品の状態(位置)を表す。また,作業状態M00,M01は,作業開始時,終了時の作業者の状態(位置および姿勢)を表す。作業者は,新たな物品が移動して来る度に,作業状態M00,M01間で反復動作する。作業者がある物品への作業を完了して次の物品への作業を開始するためには,作業状態M01から作業状態M00へと歩行して戻る必要がある。この歩行は,作業者の重心移動を伴い,図2の本実施形態の場合での半身の回転運動よりも時間を要する。また,歩行によって,作業者の物品への本来の作業以外の運動が増すため,疲労がより大きくなる。
【0015】
このように,従来の直線状の製造ラインに変えて,連続円弧状の波型製造ラインを用いることにより,ラインでの作業者の作業開始位置への回帰動作をより速くすることができる。これによって製造ラインのリードタイムを短くすることができ,また動作を少なくすることで作業者の疲労,ひいてはそれに起因する製造ミスの発生率を小さくすることができる。
【0016】
以上は,次のように纏めることができる。
・自動コンベア・製造ラインの移送形状を,作業者を中心とした円弧の連続による波型に配置することにより,作業者は立ち位置を変えずに次のユニットの作業に移ることができる。その結果,ライン進行方向に沿った歩行による体移動の時間ロス発生を無くして,ラインのリードタイムを短く出来る。
【0017】
・作業開始位置への回帰動作が小さくなることにより,作業者の疲労,またそれに起因する製造ミスの発生率を小さくすることが出来る。
【0018】
(2)製造ラインのコンパクト化を図れる。
従来の製造ラインは,直線状であるため,全長が長くなりがちである。本実施形態では,作業者M11〜M14の間を縫うように経路11〜14が蛇行していることから,製造ラインの全長をより短くすることができる(コンパクト化)。
【0019】
(第2の実施の形態)
図4は,本発明の第2の実施形態に係る物品移動装置200を表す上面図である。
物品移動装置200は,商品等を製造する製造ラインとして利用され,経路21〜22に沿って物品Bを移動させる。
【0020】
物品移動装置200は,端部201,202,ガイドレール203,204,ローラ205,回転軸206を有する。
【0021】
端部201,202はそれぞれ,物品Bの移動の始点および終点である。即ち,端部201から端部202に向かって,経路21,22上を物品B(例えば,製造ユニット)が連続して移動される。
ガイドレール203,204は,ローラ205を左右から保持すると共に,物品Bが経路21,22上から外れることを防止するための長尺の板状部材である。ガイドレール203,204は,回転軸206によってローラ205を保持する。このとき,物品Bが経路21,22に沿って移動するように,経路21,22の方向と回転軸206の軸方向とが略直交することが好ましい。
【0022】
ローラ205は,物品Bを経路21,22に沿って移動させる部材である。ローラ205の少なくとも一部は,モータ等に接続されて,その駆動力で回転され,物品Bを積極的に移動させる。モータ等に接続されないローラ205は,物品Bの移動に伴って回転することで,物品の移動を容易にする。なお,後述の経路212,214等では,外形が三角形である関係で,ローラ205が,ガイドレール204に達していない。このため,ガイドレール204側の回転軸206をガイドレール204以外の部材で保持することが好ましい。
回転軸206は,ローラ205の回転中心に配置され,ローラ205の回転を可能とする。
【0023】
経路21は,直線状の5つの経路(経路211〜215)に区分される。同様に,経路22も,直線状の5つの経路に区分される。直線状の経路を組み合わせることで,経路21,22それぞれを,点P21,P22から所定範囲(例えば,作業者の腕の長さ程度)内とすることが容易となる。
経路21,22は互いの物品Bの移動方向がほぼ一致するように接続される。経路21の終点および経路22の始点それぞれでの物品Bの移動方向は,紙面の左上から右下に向かう方向(水平から略45°方向)であり,互いに一致している。
【0024】
作業者M21,M22はそれぞれ,点P21,P22に配置され,経路21,22上の物品Bに対して製造作業を実行する。同一の物品Bに対して,作業者M21,M22が順に作業することで,物品Bが製造される。
【0025】
物品移動装置200は,物品移動装置100と同様,製造ラインとして次のような特徴を有する。
(1)作業者の移動量が小さく,作業時間の短縮,作業者の疲労軽減が可能
(2)製造ラインのコンパクト化を図れる。
【0026】
(第3の実施の形態)
図5は,本発明の第3の実施形態に係る物品移動装置300を表す上面図である。
物品移動装置300は,商品等を製造する製造ラインとして利用され,経路31〜33に沿って物品Bを移動させる。
【0027】
物品移動装置300は,経路31〜33に対応して,環状部材311,321,331,ガイド312,322,332を有する。
環状部材311,321,331はそれぞれ,点P31,P32,P33を中心とする円形の外周,内周を有するドーナツ状の板状部材である。環状部材311,321,331はモータ等によって点P31,P32,P33を中心として,回転され,物品Bを移動(回転)させる。即ち,環状部材311,321,331は,点P31,P32,P33を中心として,物品Bを回転させる回転部材である。後述するように,物品Bの移動をスムーズにするためには,隣り合う環状部材311,321,331を互いに逆回転させることが好ましい。
【0028】
ガイド312,322,332はそれぞれ,物品Bを環状部材311,321,331から排出するための部材であり,経路31,32,33の終点を決定する。環状部材311,321,331で回転される物品Bがガイド312,322,332に突き当たり,環状部材311,321,331上から排出される。その結果,物品Bは環状部材311の紙面上側から,環状部材321の紙面下側,環状部材331の紙面上側の順に移動する。
【0029】
このとき,隣り合う環状部材311,321,331を互いに逆回転させると(環状部材311,321,331の回転方向を右,左,右とする),環状部材311,321,331間での物品Bの受け渡しがスムーズになる。経路31〜33の境界での物品Bの移動方向がほぼ一致するからである。例えば,経路32との境界での経路31上の物品Bの移動方向,および経路31との境界での経路32上の物品Bの移動方向は,何れも紙面の上から下に向かう方向となる。
【0030】
作業者M31〜M33はそれぞれ,環状部材311,321,331の内周内の点P31〜P33に配置され,経路31〜33上の物品Bに対して製造作業を実行する。同一の物品Bに対して,作業者M31〜M33が順に作業することで,物品Bが製造される。
【0031】
物品移動装置300は,物品移動装置100,200と同様,製造ラインとして次のような特徴を有する。
(1)作業者の移動量が小さく,作業時間の短縮,作業者の疲労軽減が可能
(2)製造ラインのコンパクト化を図れる。
【0032】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張,変更可能であり,拡張,変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0033】
(1)経路の形状を弧,直線の適宜な組み合わせにより設定できる。
図6は,物品移動装置の経路の形状を模式的に表す模式図である。
1)図6の(a)〜(e)の経路La〜Leに示されるように,直線の組み合わせ,弧の組み合わせ,直線と弧の組み合わせの何れによっても,物品を移動することができる。経路La〜Leの何れでも点Pa1〜Pa4等を周回するように,物品を移動させることができる。その結果,作業者の移動量の低減,製造ラインのコンパクト化等を図ることが可能となる。
【0034】
2)経路の基準となる点P1〜P4の配置は,直線上に限られない。経路La,Lc,Ldでは,点Pa1〜Pa4等が同一直線上に配置されている。一方,経路Lb,Leでは,点 Pb1〜Pb4,点Pe1〜Pe4が同一直線上に配置されていない。
【0035】
経路Laは,第1の実施形態に対応し,4つの半円弧を接続した形状を有する。経路Lbは,紙面上下方向の直線を介して,4つの半円弧を接続した形状を有する。経路Lcは,第3の実施形態に対応し,紙面左右方向の直線を介して,4つの半円弧を接続した形状を有する。経路Ld,Leは,直線を接続した形状を有する。この内,経路Ldは第2の実施形態に対応する。
【0036】
3)接続する円弧の半径を異ならせることができる。例えば,作業者M11〜M14の作業内容,作業工具等の相違によって,経路11〜14を異なる半径の円弧とするのが好ましい場合がある。
4)接続する弧の数を変更できる。例えば,接続する弧の数を3以下,5以上とすることができる。
5)弧として,円弧に限らず楕円弧を用いても良い。
【0037】
(2)ベルトにより物品を移動しても良い。
上記実施形態では,ローラ,環状部材を用いて物品を移動しているが,他の移動手段,例えば,ベルトにより物品を移動させても差し支えない。例えば,物品移動装置200において,経路211,213,215にベルトコンベアを利用できる。即ち,経路211,213,215それぞれの始点,終点の一対のローラ205にベルトを掛けることで,ベルトコンベアが構成される。
【0038】
なお,1つの経路内を複数のベルトコンベアで分割しても良い。例えば,経路211,213,215それぞれを複数のベルトコンベアで構成できる(一例として,経路211,213,215それぞれに複数のベルトを掛ける)。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る物品移動装置を表す上面図である。
【図2】図1の物品移動装置の経路での作業者の移動範囲を示す図である。
【図3】比較例に係る物品移動装置での作業者の移動範囲を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る物品移動装置を表す上面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る物品移動装置を表す上面図である。
【図6】物品移動装置の経路の形状を模式的に表す模式図である。
【符号の説明】
【0040】
100…物品移動装置,11-14…経路,101,102…端部,103,104…ガイドレール,105…ローラ,106…回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の作業者を周回するように,物品を移動させる第1の経路と,
前記第1の作業者と隣接する第2の作業者を周回するように,前記第1の経路で移動された物品を移動させる第2の経路と,
を具備することを特徴とする物品移動装置。
【請求項2】
前記第1,第2の経路が,直線状または円弧状の経路を有する
ことを特徴とする請求項1記載の物品移動装置。
【請求項3】
前記第1,第2の経路の少なくとも一方に配置され,回転可能なローラをさらに具備することを特徴とする請求項1記載の物品移動装置。
【請求項4】
前記ローラが,前記経路と略直交する方向の回転軸を有することを特徴とする請求項3記載の物品移動装置。
【請求項5】
前記ローラによって移動可能なベルトをさらに具備することを特徴とする請求項3記載の物品移動装置。
【請求項6】
第1の経路によって,第1の作業者を周回するように,物品を移動させながら第1の処理をするステップと,
第2の経路によって,前記第1の作業者と隣接する第2の作業者を周回するように,前記第1の経路で移動された物品を移動させながら第2の処理をするステップと,
を具備することを特徴とする物品生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−105160(P2008−105160A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292580(P2006−292580)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】