説明

物品選別装置

【課題】 測定誤差を考慮して物品を選別できるという効果を有する物品選別装置を提供する。
【解決手段】 物品の物理量を測定する測定手段11と、物品を選別するための少なくとも1つの物理量範囲を規定する上方閾値および上方閾値より小さい下方閾値を設定する閾値設定手段12と、測定手段11の上方閾値を基準とする測定誤差範囲である上方測定誤差範囲および下方閾値を基準とする測定誤差範囲である下方測定誤差範囲を設定する測定誤差範囲設定手段13と、測定手段11による物品の物理量の測定値が上方閾値から上方測定誤差範囲を減算した上限値未満かつ下方閾値に下方測定誤差範囲を加算した下限値以上であるときに物理量範囲に属する物品であると判定する判定手段14と、判定手段14により物品が1つの物理量範囲に属していると判定されたときは物品を当該物理量範囲に属する物品として選別する物品選別手段15とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品選別装置に係り、特に、物品の物理量を測定する際の測定誤差を考慮して物品を選別することのできる物品選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品、例えば鮮魚を、その物理量、例えば重量に基づいて複数の範囲に選別する物品選別装置は、流通産業等で広く利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記提案に係る物品選別装置は、鮮魚を予め定められた閾値(例えば130g)で選別している。即ち、125gの鮮魚は閾値未満の範囲に選別され、135gの鮮魚は閾値以上の範囲に選別される。
【特許文献1】特公平2−16978号公報(第3頁右欄20〜28行目)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の物品選別装置には、物理量を測定する測定装置が有する測定誤差に対する配慮がなされていないという課題があった。
【0005】
例えば、上記提案に係る物品選別装置において鮮魚の重量を秤量する秤量機に±10gの測定誤差があるとすると、125gの鮮魚が閾値以上のランクに選別され、135gの鮮魚が閾値以下の範囲に選別されるおそれがある。
【0006】
125gの鮮魚が閾値以上の範囲に選別された場合は購入者が損失を蒙り、135gの鮮魚が閾値以下の範囲に選別された場合は販売者が損失を蒙ることとなる。
【0007】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであって、測定装置が有する測定誤差を考慮して物品を選別することのできる物品選別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の物品選別装置は、物品の物理量を測定する測定手段と、前記物品を選別するための少なくとも1つの物理量範囲を規定する上方閾値および前記上方閾値より小さい下方閾値を設定する閾値設定手段と、前記測定手段の前記上方閾値を基準とする測定誤差範囲である上方測定誤差範囲および前記下方閾値を基準とする測定誤差範囲である下方測定誤差範囲を設定する測定誤差範囲設定手段と、前記測定手段による前記物品の前記物理量の測定値が、前記上方閾値から前記上方測定誤差範囲を減算した上限値未満、かつ、前記下方閾値に前記下方測定誤差範囲を加算した下限値以上であるときに、前記物理量範囲に属する物品であると判定する判定手段と、前記判定手段により前記物品が1つの物理量範囲に属していると判定されたときは、前記物品を当該物理量範囲に属する物品として選別する物品選別手段とを含む構成を有している。
【0009】
この構成により、測定手段の有する測定誤差範囲を考慮して物品を選別できることとなる。
【0010】
本発明の物品選別装置は、前記物品選別手段が、前記判定手段により前記物品がいずれの物理量範囲にも属していないと判定されたときは、前記物品を物理量範囲外物品として選別する物理量範囲外物品選別手段を含む構成を有している。
【0011】
この構成により、いずれの物理量範囲にも含まれない物品を物理量範囲外物品として選別できることとなる。
【0012】
本発明の物品選別装置は、前記判定手段が、前記物品が複数の物理量範囲に属しているときは、前記複数の物理量範囲の中から1つの物理量範囲を予め定められた規則に従って選択する物理量範囲選択手段を含む構成を有している。
【0013】
この構成により、複数の物理量範囲に属する物品を予め定められた規則によって1つの物理量範囲に属する物品として選別できることとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、測定誤差を考慮して物品を選別できるという効果を有する物品選別装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態の物品選別装置について、図面を用いて説明する。
【0016】
即ち、本発明の実施の形態の物品選別装置1は、図1に示すように、物品の物理量を測定する測定手段11と、物品を選別するための少なくとも1つの物理量範囲を規定する上方閾値および上方閾値より小さい下方閾値を設定する閾値設定手段12と、測定手段11の上方閾値を基準とする測定誤差範囲である上方測定誤差範囲および下方閾値を基準とする測定誤差範囲である下方測定誤差範囲を設定する測定誤差範囲設定手段13と、測定手段11による物品の物理量の測定値が上方閾値から上方測定誤差範囲を減算した上限値未満かつ下方閾値に下方測定誤差範囲を加算した下限値以上であるときに物理量範囲に属する物品であると判定する判定手段14と、判定手段14により物品が1つの物理量範囲に属していると判定されたときは物品を当該物理量範囲に属する物品として選別する物品選別手段15とを含む。
【0017】
図2は、物品、例えば鮮魚を、その物理量、例えば重量に応じて、予め定められた区分に選別する本発明の実施の形態の物品選別装置1のハードウエア構成を示すブロック図であって、鮮魚20を取り込む取り込みコンベア21と、鮮魚20を搬送しつつ秤量する秤量コンベア22と、鮮魚20を選別する選別コンベア23とを含む。
【0018】
秤量コンベア22には、例えばロードセルである秤量機221が設置されており、秤量コンベア22上にある鮮魚20の重量を秤量するように構成されている。なお、秤量機221は測定手段11に相当する。
【0019】
選別コンベア23上には、予め定められた数(例えば5)のゲート241〜245が設置されているが、ゲート241〜245は、制御信号により選別コンベア23の走行方向(矢印X)に向く閉位置と、選別コンベア23の走行方向に対して所定角度(例えば60度)を向く開位置とに制御される。ゲート241〜245の側方には、選別コンベア23の走行方向と直角にシュータ251〜255が設置されている。
【0020】
なお、ゲート241〜245およびシュータ251〜255は、物品選別手段15に相当する。
【0021】
この物品選別装置1を制御する制御部26は、マイクロコンピュータシステムとして構成されるが、CPU261と、メモリ262と、計測インターフェイス(I/F)263と、制御I/F264と、操作パネルI/F265とがバス266に接続された構成を有する。なお、制御部26は、判定手段14に相当する。
【0022】
操作パネルI/F265に接続される操作パネル27は、閾値等を設定する際に使用するもので、表示パネル271と、キーボード272と、カーソルを移動させるためのポインティングデバイス273とを含む。なお、操作パネル27は、閾値設定手段12および測定誤差範囲設定手段13に相当する。
【0023】
以下に、図2〜図5を参照して、本発明の実施の形態の物品選別装置の動作を説明するが、物品を4つの物理量範囲に選別する場合を想定する。
【0024】
なお、4つの物理量範囲を規定する4つの上方閾値WU(1)〜WU(4)および4つの下方閾値WL(1)〜WL(4)、ならびに4つの上方測定誤差範囲εU(1)〜εU(4)および4つの下方測定誤差範囲εL(1)〜εL(4)は、操作パネル27を介してユーザにより予め設定されるものとする。
【0025】
鮮魚20は、取り込みコンベア21により所定間隔ごとに秤量コンベア22に供給される。秤量コンベア22上の鮮魚20は、秤量機221により秤量され、秤量値wは制御部26に伝送される。
【0026】
図3は、制御部26のCPU261で実行される物品選別ルーチンのフローチャートであって、CPU261は、まず、鮮魚20の秤量値wを読み込む(ステップS31)。
【0027】
次に、CPU261は、鮮魚20の重量が4つの物理量範囲のどれに属するかを判定するために判定ルーチンを実行する(ステップS32)。
【0028】
図4は、判定ルーチンのフローチャートであって、CPU261は、まず、物理量範囲を識別するインデックスiを1に設定する(ステップS41)。
【0029】
次に、CPU261は、鮮魚20の秤量値wが、物理量範囲1の上方閾値WU(1)から上方測定誤差範囲εU(1)を減算した上限値UL(1)未満、かつ、物理量範囲1の下方閾値WL(1)に下方測定誤差範囲εL(1)を加算した下限値LL(1)以上であるか否かを判定する(ステップS42)。
【0030】
CPU261は、鮮魚20の秤量値wが上限値UL(1)未満、かつ、下限値LL(1)以上であれば、物理量範囲1に属するか否かを示すフラグZ(1)を1に設定する(ステップS43)。
【0031】
一方、CPU261は、鮮魚20の秤量値wが上限値UL(1)未満、かつ、下限値LL(1)以上でなければ、フラグZ(1)を0に設定する(ステップS44)。
【0032】
CPU261は、すべての物理量範囲について判定が終了したか否かを判定し(ステップS45)、終了していないときはインデックスiをインクリメントして(ステップS46)、ステップS42に戻る。
【0033】
インデックスiが2〜4であるときの動作は、インデックスiが1であるときの動作と同じであるので、説明を省略する。
【0034】
この実施の形態においては、4つの物理量範囲が設定されているので、インデックスiが4であるときのステップS42〜ステップS44までの動作が完了すると、ステップS45でインデックスiは最大値I(=4)に到達しているので、判定ルーチンを終了する。
【0035】
CPU261は、判定ルーチンを終了すると、図3の物品選別ルーチンに戻り、フラグZ(i)の合計値Jを算出する(ステップS33)。
【0036】
次に、CPU261は、合計値Jの値を判定する(ステップS34)。
【0037】
CPU261は、合計値Jが1であれば鮮魚20の重量は、4つの物理量範囲の中の1つの物理量範囲に属するとして、当該物理量範囲に対応するゲートを開状態に制御する(ステップS35)。
【0038】
鮮魚20の重量wが上方閾値WU(i)と下方閾値WL(i)で規定される第iの物理量範囲に属しているときには第iのゲート24iを開状態に制御する。
【0039】
例えば、今秤量した鮮魚20の秤量値wが第2の物理量範囲に属していると判定されたとすると、第2のゲート242が開状態となり、鮮魚20は第2のシュータ252に導かれる。
【0040】
図5は、本発明の実施の形態の物品選別装置1による選別方法を説明するグラフであって、物品の物理量の測定値wが物理量範囲iの上限値UL(i)未満、かつ、下限値LL(i)以上であるときは、物品は物理量範囲iに属する物品としてフラグZ(i)は1に設定され、物品の物理量の測定値wが下限値LL(i)未満、または、上限値UL(i)以上であるときは、物理量範囲iに属さない物品としてフラグZ(i)は0に設定される。
【0041】
CPU261は、合計値Jが0であれば、鮮魚20は4つの物理量範囲のいずれにも属さないものとして、第5のゲート245を開状態として、鮮魚20を第5のシュータ255に導く(ステップS36)。即ち、第5のゲート245および第5のシュータ255は、物理量範囲外物品選別手段を構成する。
【0042】
なお、いずれの物理量範囲にも属さないと判定されたときは、物品選別装置の備えるすべてのゲート241〜245を閉状態とし、物品を選別コンベア23の最下流まで導き、そこに物理量範囲外物品を集めるようにしてもよい。この場合は、物品を選別コンベア23の最下流まで導くことが物理量範囲外物品選別手段となる。
【0043】
CPU261は、合計値Jが2以上であれば、鮮魚20は4つの物理量範囲の2つ以上の物理量範囲に属するものとして、物品を複数の物理量範囲の中から予め定められた規則に従って1つの物理量範囲iを選択し(ステップS37)、この判定結果に基づいて物理量範囲iに対応するゲートiを開状態とする(ステップS35)。
【0044】
なお、規則はユーザによって任意に設定することが可能であるが、例えば、以下の規則を設定することができる。
1.複数の物理量範囲を順番に選択する。
【0045】
例えば、物品が2つの物理量範囲に属すると判定されたときは、物品は一方の物理量範囲に属するとする判定と、他方の物理量範囲に属する判定とを交互に繰り返すようにする。
2.物理量範囲の幅に応じて選択する。
【0046】
幅が狭い物理量範囲を優先的に選択するようにする。
3.予め設定された優先順位に従って選択する。
【0047】
複数の物理量範囲に優先順位を設定しておき、優先順位の高い物理量範囲を優先的に選択するようにする。
【0048】
なお、本発明の物品選別装置においては、物理量範囲の設定態様は特に限定されず、図6に示すような設定が可能である。ここで、測定下限とは測定装置で測定可能な下方限界を、測定上限とは測定装置で測定可能な上方限界を表す。例えば、1Kgまで秤量可能な秤量機では測定下限は0Kgであり、測定上限は1Kgである。
a.最も一般的な物理量範囲の設定方法であり、測定下限と測定上限との間に、上方閾値WU(1)と下方閾値WL(1)とで規定される物理量範囲1が設定される。
b.物理量範囲1と物理量範囲2を隣接して、即ち、物理量範囲1の下方閾値WL(1)=物理量範囲2の上方閾値WU(2)に設定する。この場合、物理量範囲1の上方閾値WU(1)を測定上限以上に設定し、物理量範囲2の下方閾値WL(2)を測定下限に設定すれば、物品を物理量範囲1の下方閾値WL(1)=物理量範囲2の上方閾値WU(2)を境に2つに区別することが可能となる。
c.物理量範囲1と物理量範囲2をオーバラップするように、即ち、物理量範囲1の下方閾値WL(1)<物理量範囲2の上方閾値WU(2)に設定する。
d.物理量範囲1の内側に物理量範囲2が含まれるように、即ち、物理量範囲1の上方閾値WU(1)>物理量範囲2の上方閾値WU(2)、かつ、物理量範囲1の下方閾値WL(1)<物理量範囲2の下方閾値WL(2)に設定する。
【0049】
上記の実施の形態においては、測定誤差範囲はユーザにより設定されるものとしたが、例えば秤量コンベアの物品搬送速度の関数として測定範囲誤差を設定にするようにしてもよい。
【0050】
以上説明したように、本発明に係る物品選別装置によれば、測定手段が有する測定誤差を考慮して物品を選別することが可能となる。
【0051】
なお、上記の実施の形態にあっては、物理量は重量であるとしているが、例えば、物品の寸法、形状等に基づいて物品を選別する選別装置にも本発明を適用できる。
【0052】
例えば、測定手段として、物品を撮像する撮像装置と、撮像装置で撮影された画像を画像処理して物品の寸法(長さ、幅、高さ)を検出する画像処理装置とを使用し、寸法に基づいて物品を選別することも可能である。
【0053】
また、物品の寸法が検出できれば、物品の表面積、あるいは、体積を算出することができるので、物品の表面積、あるいは、体積に基づいて物品を選別することも可能である。
【0054】
撮像装置は、1台であってもよいが、複数台使用し、物品を様々な角度から撮影すれば、複数の寸法を同時に検出できるだけでなく、検出精度を向上させることも可能となる。
【0055】
なお、撮像装置としては、可視像の撮像装置だけでなく、X線撮像装置のような透過画像の撮像装置を使用してもよい。
【0056】
また、測定手段中の画像処理装置で物品の外形を検出し、外形に基づいて物品を選別する物品選別装置にも本発明を適用できる。例えば、物品の外形の真円度に応じて物品を選別することも可能となる。
【0057】
さらに、測定手段中の画像処理装置で物品の色彩を検出し、色彩に基づいて物品を選別する物品選別装置にも本発明を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明に係る物品選別装置は、測定装置が有する測定誤差を考慮して物品を選別できるという効果を有し、物品の選別装置等として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態の物品選別装置のブロック図
【図2】本発明の実施の形態の物品選別装置のハードウエア構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態の物品選別装置が実行する物品選別ルーチンのフローチャート
【図4】本発明の実施の形態の物品選別装置が実行する判別ルーチンのフローチャート
【図5】本発明の実施の形態の物品選別装置による選別方法を説明するグラフ
【図6】本発明の実施の形態の物品選別装置における物理量範囲の設定態様を示すグラフ
【符号の説明】
【0060】
1 物品選別装置
11 測定手段
12 閾値設定手段
13 測定誤差範囲設定手段
14 判定手段
15 物品選別手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の物理量を測定する測定手段と、
前記物品を選別するための少なくとも1つの物理量範囲を規定する上方閾値および前記上方閾値より小さい下方閾値を設定する閾値設定手段と、
前記測定手段の前記上方閾値を基準とする測定誤差範囲である上方測定誤差範囲および前記下方閾値を基準とする測定誤差範囲である下方測定誤差範囲を設定する測定誤差範囲設定手段と、
前記測定手段による前記物品の前記物理量の測定値が、前記上方閾値から前記上方測定誤差範囲を減算した上限値未満、かつ、前記下方閾値に前記下方測定誤差範囲を加算した下限値以上であるときに、前記物理量範囲に属する物品であると判定する判定手段と、
前記判定手段により前記物品が1つの物理量範囲に属していると判定されたときは、前記物品を当該物理量範囲に属する物品として選別する物品選別手段とを含む物品選別装置。
【請求項2】
前記物品選別手段が、前記判定手段により前記物品がいずれの物理量範囲にも属していないと判定されたときは、前記物品を物理量範囲外物品として選別する物理量範囲外物品選別手段を含む請求項1に記載の物品選別装置。
【請求項3】
前記判定手段が、前記物品が複数の物理量範囲に属しているときは、前記複数の物理量範囲の中から1つの物理量範囲を予め定められた規則に従って選択する物理量範囲選択手段を含む請求項1または請求項2に記載の物品選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−205110(P2006−205110A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22980(P2005−22980)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】