説明

物流搬送機器および異常検出方法

【課題】物流搬送機器に発生する種々の異常の原因の究明を効率化することのできる物流搬送機器を提供すること。
【解決手段】スタッカクレーン12であって、センサ18から制御部13への入力信号、および、制御部13からの出力信号の少なくとも一方の状態を示す情報である信号状態情報を取得し、履歴情報として記憶部22に記憶させる取得部21と、信号状態情報に示される対象信号群の中からスタッカクレーン12の異常を示す異常信号群を特定する異常信号特定部25と、対象信号群における異常信号群より時間的に前の第一信号群と、記憶部に記憶されている履歴情報に示される信号群のうちの異常信号群と同じ信号群よりも時間的に前の第二信号群との比較を行う比較部26と、第一信号群と第二信号群との間で共通する信号を特定する共通信号特定部27と、共通信号特定部27によって特定された信号を示す情報を出力する出力部28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物の搬送等を行う物流搬送機器に関し、特に物流搬送機器の異常検出に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場または倉庫などの敷地内で数多くの荷物を効率よく搬送するために物流搬送機器が利用されている。このような物流搬送機器としては、スタッカクレーン、有軌道台車、および、天井走行車などがある。
【0003】
また、このような物流搬送機器には、高精度かつ効率的な荷物の移動および受け渡しが求められる。そのため、近年では、物流搬送機器を含む搬送システムは複雑化かつ大規模化しており、その中で、例えば台車のトラブルなどの不具合が発生する場合がある。
【0004】
そこで、搬送システムにおいて発生する不具合を監視するモニタリングシステムについての技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載のモニタリングシステムでは、各台車から、それぞれの現在位置等を示す信号をメインのコントローラが受信する。当該コントローラは、受信した信号から判定される不具合の発生状況のデータを記憶する。さらに、記憶したデータに従って、走行ルートでの不具合が発生したエリアのレイアウト上に、不具合に関係する台車を、不具合の発生前後の動作と共に、モニタに表示する。
【0006】
これにより、例えば、当該搬送システムを管理する管理者に、不具合の発生地点等を容易に視認させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−152606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、上記のように、高精度かつ効率的な荷物の移動および受け渡しを実現するためには、物流搬送機器に発生する僅かな異常であっても、その発生を防止するように何らかの手当てを施す必要がある。
【0009】
そのためには、物流搬送機器に何らかの異常が発生した場合、その異常の原因の究明することが重要である。
【0010】
しかしながら、物流搬送機器に対して緻密な動作が求められるが故に、物流搬送機器を構成するハードウェアおよびソフトウェアはともに複雑化している。その結果、物流搬送機器に発生する個々の異常の原因の究明は困難になってきている。
【0011】
ここで、例えば物流搬送機器の各所に、異常の原因を特定するための計測器を設けることも考えられる。しかし、この場合、種々の異常に対する実効力を保障するためには、物流搬送機器に、異常の原因の特定用の計測器を数多く設置する必要があり、現実的ではない。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、物流搬送機器に発生する種々の異常の原因の究明を効率化することのできる物流搬送機器および異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来の課題を解決するため、本発明の一態様に係る物流搬送機器は、荷物を搬送する物流搬送機器であって、前記物流搬送機器の動作を制御する制御部と、前記物流搬送機器の動作の状態を検出するセンサと、情報を記憶するための記憶部と、前記センサから前記制御部に入力される入力信号の状態を示す情報、および、前記制御部から出力される出力信号の状態を示す情報の少なくとも一方である信号状態情報を取得し、取得した信号状態情報を履歴情報として前記記憶部に記憶させる取得部と、前記取得部に取得された信号状態情報に示される信号群である対象信号群の中から前記物流搬送機器の異常を示す異常信号群を特定する異常信号特定部と、前記対象信号群における前記異常信号群より時間的に前の第一信号群と、前記記憶部に記憶されている履歴情報に示される信号群のうちの前記異常信号群と同じ信号群よりも時間的に前の第二信号群との比較を行う比較部と、前記比較部による比較の結果から、前記第一信号群と前記第二信号群との間で共通する信号を特定する共通信号特定部と、前記共通信号特定部によって特定された信号を示す情報を出力する出力部とを備える。
【0014】
この構成によれば、本態様の物流搬送機器に何らかの異常が発生した場合、当該異常の発生前の第一信号群と、過去に発生した同一種類の異常の発生前の第二信号群とが比較される。さらに、この比較により、第一信号群と第二信号群との間で共通する1以上の信号が特定される。
【0015】
つまり、当該異常の発生の前にセンサまたは制御部から発せられた多数の信号の中から、当該異常に深く関与していると考えられる信号が特定され、特定された信号を示す情報が出力される。
【0016】
そのため、出力された情報を用いることで、当該異常の原因の究明を効率よく行うことができる。
【0017】
また、本態様の物流搬送機器によれば、制御部およびセンサという、物流搬送機器に本来的に備えられる構成要素から発せられる信号に基づいて、異常に関与する可能性が高い信号を特定することができる。つまり、異常の原因の特定用の計測器を別途設ける必要がない。
【0018】
このように、本態様の物流搬送機器によれば、当該物流搬送機器に発生する種々の異常の原因の究明を効率化することができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る物流搬送機器において、前記取得部は、所定の期間ごとの前記入力信号の状態を示す情報、および、前記所定の期間ごとの前記出力信号の状態を示す情報の少なくとも一方である前記信号状態情報を取得するとしてもよい。
【0020】
この構成によれば、所定の期間ごとの入力信号または出力信号の状態を取得することができる。そのため、例えば、当該所定期間を短くすることで、異常の原因究明の精度を向上させることができる。
【0021】
また、本発明の一態様に係る物流搬送機器において、前記取得部は、前記入力信号が変化したタイミングごとの前記入力信号の状態を示す情報、および、前記出力信号が変化したタイミングごとの前記出力信号の状態を示す情報の少なくとも一方である前記信号状態情報を取得するとしてもよい。
【0022】
この構成によれば、入力信号または出力信号の状態が変化したタイミングごとに、入力信号または出力信号の状態を取得することができる。そのため、例えば、履歴情報を記憶するための必要容量を小さくすることができる。
【0023】
また、本発明の一態様に係る物流搬送機器において、前記記憶部は、第一記憶部と、前記第一記憶部よりも容量の大きな第二記憶部とを有し、前記取得部は、(a)取得した信号状態情報を前記第一記憶部に随時書き込むことで、前記第一記憶部に記憶されている信号状態情報を随時更新し、(b)前記異常信号特定部により、前記対象信号群の中から前記異常信号群が特定された場合、前記第一記憶部に記憶されている、前記対象信号群を示す信号状態情報を履歴情報として第二記憶部に書き込むとしてもよい。
【0024】
この構成によれば、異常が発生した場合にのみ、当該異常から過去に遡った所定の期間の入力信号または出力信号の状態を示す信号状態情報が、履歴情報として第二記憶部に蓄積される。
【0025】
つまり、異常の発生原因の究明にとって必要最小限の情報のみを第二記憶部に蓄積することができる。その結果、例えば、第二記憶部の容量の最小化、および、比較処理の効率化等が実現される。
【0026】
また、本発明の一態様に係る異常検出方法は、荷物を搬送する物流搬送機器の異常を検出するための異常検出方法であって、前記物流搬送機器は、前記物流搬送機器の動作を制御する制御部と、前記物流搬送機器の動作の状態を検出するセンサとを有し、前記異常検出方法は、前記センサから前記制御部に入力される入力信号の状態を示す情報、および、前記制御部から出力される出力信号の状態を示す情報の少なくとも一方である信号状態情報を取得し、取得した信号状態情報を履歴情報として記憶部に記憶させる取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得された信号状態情報に示される信号群である対象信号群の中から前記物流搬送機器の異常を示す異常信号群を特定する異常信号特定ステップと、前記対象信号群における前記異常信号群より時間的に前の第一信号群と、前記記憶部に記憶されている履歴情報に示される信号群のうちの前記異常信号群と同じ信号群よりも時間的に前の第二信号群との比較を行う比較ステップと、前記比較ステップにおける比較の結果から、前記第一信号群と前記第二信号群との間で共通する信号を特定する共通信号特定ステップと、前記共通信号特定ステップにおいて特定された信号を示す情報を出力する出力ステップとを含む。
【0027】
この方法によれば、例えば、複数の物流搬送機器のそれぞれについて、異常を検出できるとともに、その異常の原因の究明を効率よく行うことができる。
【0028】
また、本発明は、上記の異常検出方法としてだけでなく、上記いずれかの態様に係る物流搬送機器が実行する特徴的な処理を含む異常検出方法として実現することもできる。また、いずれかの態様に係る異常検出方法が含む各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現すること、および、そのプログラムが記録された記録媒体として実現することもできる。そして、そのプログラムをインターネット等の伝送媒体又はDVD等の記録媒体を介して配信することもできる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、物流搬送機器に発生する種々の異常の原因の究明を効率化することのできる物流搬送機器および異常検出方法を提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態におけるスタッカクレーンを備える自動倉庫の外観を示す図である。
【図2】実施の形態のスタッカクレーンの主要な構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態における信号状態情報の記憶処理を説明するための図である。
【図4】実施の形態における異常信号群の特定処理および共通信号の特定処理を説明するための図である。
【図5】実施の形態における信号状態情報および履歴情報のデータ形式の一例を示す図である。
【図6】入力信号または出力信号が変化したタイミングごとの入力信号または出力信号の状態を示す信号状態情報および履歴情報のデータ構成例を示す図である。
【図7】実施の形態の共通信号情報のデータ形式の一例を示す図である。
【図8】スタッカクレーンとは別体の異常検出装置の主要な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態におけるスタッカクレーンについて、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、本発明の実施の形態におけるスタッカクレーンを備える自動倉庫の外観を示す図である。
【0033】
図1に示す自動倉庫10は、本発明の物流搬送機器の一例であるスタッカクレーン12により、ラック50に荷物60が自動で収納され、また、収納された荷物60が自動で搬出される倉庫である。
【0034】
自動倉庫10は、スタッカクレーン12、スタッカクレーン12の移動のための走行レール16、スタッカクレーン12の通路に沿って設けられたラック50、および、入出庫の際に物品が置かれるステーション51を備えている。
【0035】
スタッカクレーン12は、走行レール16上を移動し、昇降台15を昇降させ、かつスライドフォーク15aを出退させることができる。これにより、ステーション51とラック50との間、および、ラック50が有する複数の棚の間で荷物60を移動させることができる。
【0036】
また、スタッカクレーン12は、スタッカクレーン12における異常の発生を検出する異常検出装置20を有している。
【0037】
図2は、実施の形態のスタッカクレーン12の主要な構成を示すブロック図である。
【0038】
図2に示すように、スタッカクレーン12は、主要な構成として、制御部13、機構部14、センサ18、および異常検出装置20を備える。
【0039】
制御部13は、スタッカクレーン12の動作を制御する。具体的には、制御部13は、機構部14に各種の指示を与えることでスタッカクレーン12の動作を制御する。
【0040】
機構部14は、図1に示す昇降台15およびスライドフォーク15a、ならびに、スタッカクレーン12の走行を駆動するモータ等(図示せず)を有し、制御部13らの指示に従って動作する。
【0041】
センサ18は、スタッカクレーン12の動作の状態を検出する。なお、スタッカクレーン12は、スタッカクレーン12の位置および走行速度、昇降台15の上下方向の位置、ならびにスライドフォーク15aの出退など、スタッカクレーン12の動作の状態を検出するための各種のセンサを有している。
【0042】
しかし、実施の形態の説明の明確化のために、これら複数のセンサの代表として1つのセンサ18を図示し、その説明を行う。
【0043】
異常検出装置20は、スタッカクレーン12に発生する異常を検出する装置であり、かつ、その異常の原因を示す情報を出力することのできる装置である。異常検出装置20は、取得部21、記憶部22、異常信号特定部25、比較部26、共通信号特定部27、および、出力部28を有する。
【0044】
取得部21は、センサ18から制御部13に入力される入力信号の状態を示す情報、および、制御部13から出力される出力信号の状態を示す情報の少なくとも一方である信号状態情報を取得する。取得部21はさらに、取得した信号状態情報を履歴情報として記憶部22に記憶させる。
【0045】
異常信号特定部25は、取得部21に取得された信号状態情報に示される信号群である対象信号群の中からスタッカクレーン12の異常を示す異常信号群を特定する。
【0046】
ここで、異常信号群とは、異常の前兆として現れる信号群であり、異常の種類ごとに異なる。なお、異常の種類としては、スタッカクレーン12の停止位置の目標位置からのずれ、走行速度の目標速度からのずれ、および、スライドフォーク15aの異常動作(スライドフォーク15aが正常な位置まで伸びないなど)などが例示される。
【0047】
異常信号特定部25は、例えば、複数種類の異常のそれぞれに対応する異常信号群を示す異常信号群情報を有している。異常信号特定部25は、異常信号群情報と対象信号群とを比較することで、当該対象信号群に含まれる異常信号群を特定することができる。
【0048】
記憶部22は、情報を記憶するための装置であり、本実施の形態では、第一記憶部23と、第一記憶部23よりも容量の大きな第二記憶部24とを有する。第一記憶部23および第二記憶部24それぞれの役割については、図3を用いて後述する。
【0049】
比較部26は、対象信号群における異常信号群より時間的に前の第一信号群と、記憶部22に記憶されている履歴情報に示される信号群のうちの当該異常信号群と同じ信号群よりも時間的に前の第二信号群との比較を行う。
【0050】
共通信号特定部27は、比較部26による比較の結果から、第一信号群と第二信号群との間で共通する信号を特定する。出力部28は、共通信号特定部27によって特定された信号を示す情報を出力する。
【0051】
以上のように構成された実施の形態のスタッカクレーン12における、異常検出に係る処理の流れについて、図3および図4を用いて説明する。
【0052】
図3は、実施の形態における信号状態情報の記憶処理を説明するための図である。
【0053】
図3に示すように、取得部21は、記憶部22に含まれる第一記憶部23に信号状態情報を記録する。具体的には、取得部21は、取得した信号状態情報を第一記憶部23に随時書き込むことで、第一記憶部23に記憶されている信号状態情報を随時更新する。
【0054】
また、取得部21は、異常信号特定部25により、対象信号群の中から異常信号群が特定された場合、第一記憶部23に記憶されている、当該対象信号群を示す信号状態情報を履歴情報として第二記憶部24に書き込む。
【0055】
つまり、スタッカクレーン12に、何らかの異常が発生するごとに、当該異常に対応するログが第二記憶部24に蓄積される。
【0056】
図3では、スタッカクレーン12にある異常が発生したことに伴い、第一記憶部23に記憶されている信号状態情報が、履歴情報であるログ[n]として第二記憶部24に蓄積された様子を示している。
【0057】
なお、第一記憶部23として、例えばリングバッファが採用される。また、第二記憶部24として、例えばHDD(Hard Disk Drive)が採用される。
【0058】
また、実施の形態のスタッカクレーン12では、このように異常が発生した場合、当該異常に対応する異常信号群にマッチングするログが第二記憶部24の中から特定される。
【0059】
図4は、実施の形態における異常信号群の特定処理および共通信号の特定処理を説明するための図である。
【0060】
なお、図4の上図は、実施の形態における信号状態情報の内容を表す概念図であり、中図は、信号状態情報と比較される履歴情報の内容を表す概念図である。また、図4の下図は、出力部28から出力される共通信号情報の内容を表す概念図である。
【0061】
また、図4における縦軸の当該信号1〜信号6のそれぞれは、センサ18から制御部13に入力される各種の入力信号のいずれか、または、制御部13から出力される各種の出力信号のいずれかを表している。
【0062】
ここで、信号状態情報および履歴情報に含まれる信号の種類は図4では、信号1〜信号6の6種類である。しかし、これら情報に含まれる信号の種類の数について特に限定はなく、1種類以上の信号が含まれていればよい。
【0063】
また、図4における横軸は時間軸であり、例えば、取得部21は、5msecごとなど、所定の期間ごとの入力信号または出力信号の状態を示す情報を取得する。
【0064】
また、図4における斜線またはドットが付された矩形部分は、信号が“ON”であることを表しており、空白の矩形部分は、信号が“OFF”であることを表している。
【0065】
例えば、スタッカクレーン12の位置を検出するセンサ18は、スタッカクレーン12が所定の位置(原点、または、ラック50のある棚の正面位置など)に位置したことを検出すると“ON”信号を制御部13に入力する。
【0066】
また、当該センサ18は、スタッカクレーン12が当該位置から移動した場合、当該信号は“OFF”となる。
【0067】
また、例えば、昇降台15に荷物が載置されているか否かを検出するセンサ18は、昇降台15に荷物が載置されていることを検出している期間は“ON”信号を制御部13に入力する。
【0068】
また、当該センサ18は、昇降台15から荷物が載置されていることを検出していない期間は、“ON”信号の制御部13への入力を停止する。つまり、当該信号は“OFF”の状態に維持される。
【0069】
また、例えば、制御部13は、スタッカクレーン12の走行速度が所定の目標速度に達していない場合、走行を駆動するモータに加速させるための“ON”信号を出力する。
【0070】
取得部21は、上記のように各種のセンサ18から発せられる信号、および、制御部13から発せられる信号の少なくとも一方の信号の状態を示す信号状態情報(例えば、各センサからの信号のONおよびOFFを時系列で並べた情報)を取得する。
【0071】
異常信号特定部25は、このように取得された信号状態情報に示される対象信号群の中に、例えば自身が有する異常信号群情報に示される異常信号群が含まれているか否かを確認する。
【0072】
例えば、図4における信号状態情報に示される対象信号群には、異常[X](例えば、スライドフォーク15aが所定の位置まで伸びないという異常)に対応する異常信号群xが含まれている。
【0073】
そのため、異常信号特定部25は、当該対象信号群の中から異常信号群xを特定する。これにより、スタッカクレーン12における異常[X]の発生が検出される。
【0074】
この場合、比較部26は、この対象信号群における異常信号群xより時間的に前の第一信号群と、第二記憶部24に記憶されている履歴情報に示される信号群のうちの、異常信号群xよりも時間的に前の第二信号群との比較を行う。
【0075】
具体的には、比較部26はまず、異常信号群xを含むログを第二記憶部24に記憶されている複数のログの中から特定する。これにより例えば、ログ[m]が特定される。
【0076】
比較部26は、次に、第一信号群と、特定したログ[m]における異常信号群xより時間的に前の第二信号群とを比較する。
【0077】
共通信号特定部27は、比較部26による比較の結果から、前記第一信号群と前記第二信号群との間で共通する信号である共通信号を特定する。
【0078】
図4に示す例の場合、斜線で示す矩形部分が共通信号を表しており、複数の共通信号が特定されていることがわかる。
【0079】
出力部28は、共通信号特定部27によって特定された共通信号を示す情報である共通信号情報を出力する。
【0080】
このように、実施の形態のスタッカクレーン12では、ある異常が発生した場合、その異常の発生前の第一信号群と、過去に発生した同一種類の異常の発生前の第二信号群とが比較される。さらに、この比較により、第一信号群と第二信号群との間で共通する1以上の信号が特定される。
【0081】
すなわち、当該異常の発生の前に各種のセンサ18または制御部13から発せられた多数の信号の中から、当該異常に深く関与していると考えられる信号が特定され、特定された信号を示す情報が出力される。
【0082】
なお、当該情報の出力先は、例えば表示装置(図示せず)であり、この表示装置により、当該異常に深く関与していると考えられる1以上の信号を示す情報が表示される。
【0083】
これにより、例えばスタッカクレーン12の管理者は、当該異常の原因の究明を効率よく実行することができる。
【0084】
また、出力部28から出力される、共通信号特定部27によって特定された信号を示す情報は、例えば、各種の異常の予兆となる信号群と、それら異常の原因とが対応付けられたデータベースに入力されてもよい。この場合、スタッカクレーン12に発生した異常の原因を自動的に判定することができる。
【0085】
さらに、実施の形態のスタッカクレーン12では、制御部13およびセンサ18という、物流搬送機器として本来的に備えられている構成要素から発せられる信号に基づいて、異常に関与する可能性が高い信号を特定することができる。つまり、異常の原因の特定用の計測器を別途設ける必要がない。
【0086】
ここで、図4では、信号状態情報および履歴情報を、それらの内容を表す概要図として図示しているが、実際の信号状態情報および履歴情報のデータ形式としては特定のものに限定されない。
【0087】
図5は、実施の形態における信号状態情報および履歴情報のデータ形式の一例を示す図である。
【0088】
図5に示すように、信号状態情報および履歴情報(ログ)は、例えば、CSV(Comma Separated Values)形式で生成および記憶されてもよい。
【0089】
なお、図5に示す信号状態情報(履歴情報)は、図4に示す信号状態情報と同じく、取得部21によって所定の期間ごとに取得された入力信号または出力信号の状態を示す情報である。
【0090】
例えば、信号1は、左から5つめまでの区間は“ON”であり、左から6つめの区間から“OFF”に切り替わっていることがわかる。
【0091】
また、取得部21は、所定の期間ごとではなく、例えば、いずれかの信号が“ON”から“OFF”または“OFF”から“ON”に切り替わった場合に、当該タイミングにおける各信号の状態を取得してもよい。
【0092】
図6は、入力信号または出力信号が変化したタイミングごとの入力信号または出力信号の状態を示す信号状態情報および履歴情報のデータ構成例を示す図である。
【0093】
具体的には、図6に示す信号状態情報(履歴情報)は、図5に示す信号状態情報(履歴情報)において、信号1〜4のいずれかが変化したタイミングにおける各信号の状態に対応している。
【0094】
このように、取得対象の複数の信号のいずれかが変化したタイミングごとの各信号の状態を示す信号状態情報を取得することで、例えば、第二記憶部24における、信号状態情報を履歴情報として記憶するための必要容量を小さくすることができる。
【0095】
なお、図6に示す信号状態情報(履歴情報)において、それぞれのタイミングごと(つまり、図6における縦1列ごと)に、当該タイミングを示す時間情報を付加してもよい。
【0096】
この場合、付加された時間情報を用いて、図6に示す信号状態情報(履歴情報)を図5に示す信号状態情報(履歴情報)に変換することができる。
【0097】
また、出力部28から出力される共通信号情報についても、そのデータ形式は特定のものに限定されない。
【0098】
図7は、実施の形態の共通信号情報のデータ形式の一例を示す図である。
【0099】
図7に示すように、共通信号情報は、例えば、CSV形式のデータとして生成されてもよい。
【0100】
なお、図7に示す共通信号情報は、図4に示す共通信号情報をCSV形式のデータとして表したものであり、つまり、所定の期間ごとの信号の状態を示す信号状態情報(履歴情報)に基づいて求められた共通信号を示している。
【0101】
しかし、共通信号情報も、図6に示す信号状態情報(履歴情報)と同じく、複数の信号の変化のタイミングごとの各信号の状態を示すように生成されてもよい。つまり、図7において、信号1〜4のいずれかが“ON”である列のみを残し、その他の部分を削除してもよい。
【0102】
このようにした場合であっても、ある異常が発生した場合、その直前にどのような順番でどの信号が“ON”になったが容易に確認できるため、当該異常の原因の究明を効率よく実行することができる。
【0103】
また、本実施の形態では、異常検出の対象であるスタッカクレーン12が、異常検出装置20を備えている。しかし、スタッカクレーン12とは別体の装置であってスタッカクレーン12と通信可能な装置が、異常検出装置20と同じ機能を備えてもよい。
【0104】
図8は、スタッカクレーン12とは別体の異常検出装置の主要な構成を示すブロック図である。
【0105】
図8に示す異常検出装置30は、図2に示す異常検出装置20と同じ機能構成を有している。しかし、異常検出装置30は、パーソナルコンピュータが有するCPU、メモリ、HDD、およびプログラム等により実現されている。
【0106】
このように、異常検出の対象であるスタッカクレーン12と、異常検出装置30とを別体とすることで、異常検出装置30は、例えば、複数の物流搬送機器のそれぞれについて、異常を検出できるとともに、その異常の原因の究明を効率よく行うことができる。
【0107】
以上、本発明の物流搬送機器および異常検出装置について、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0108】
例えば、図4についての説明では、共通信号の特定のために、1つの信号状態情報と、1つのログ(ログ[m])とを比較するとした。しかし、共通信号を特定する場合に、1つの信号状態情報と、複数のログとを比較してもよい。
【0109】
たとえば、異常信号特定部25により、異常信号群xが特定された場合、比較部26は、異常信号群xを含む複数のログを特定し、これら複数のログそれぞれにおける第二信号群と、図4の上図に示す第一信号群とを比較する。
【0110】
例えば、比較部26が、3つのログそれぞれにおける第二信号群と、当該第一信号群とを比較した場合、共通信号特定部27は、これら4つの信号群のすべてに共通する1以上の信号を共通信号として特定する。
【0111】
このように複数のログを用いて共通信号を特定することで、特定された共通信号の信頼度(本例の場合、共通信号と異常[X]との関係性の強さ)を向上させることができる。
【0112】
また、例えば、これら4つの信号群のすべてに共通する信号を第一共通信号として特定し、これら4つの信号群のうちの3つの信号群に共通する信号を第二共通信号として特定してもよい。この場合、これら特定した第一共通信号と第二共通信号とを区別できるような態様で共通信号情報を生成し出力してもよい。
【0113】
このように、比較対象の3以上の信号群における共通度の高さに応じた区分ごとに共通信号を特定し、これらを示す情報を出力することで、例えば、異常の原因の究明処理の精度を向上させることができる。
【0114】
また、本実施の形態では、異常が検出されるごとに、当該異常に対応する異常信号群とその直前の所定期間の信号群(図4における第一信号群)とからなるログが履歴情報として第二記憶部24に記憶されている。
【0115】
しかし、例えば、異常の検出の有無にかかわらず、取得部21が取得した信号状態情報を継続的に第二記憶部24に蓄積させてもよい。このようにした場合であっても、スタッカクレーン12に発生する異常に関与していると考えられる信号の状態の履歴は第二記憶部24に残すことができる。
【0116】
すなわち、信号状態情報を一時的に記憶する第一記憶部23はなくてもよい。また、この場合、例えば、第二記憶部24の空き容量がなくなる前に、蓄積された情報を第二記憶部24から消去し、その後に、第二記憶部24へ信号状態情報の蓄積を開始する、という一連の処理を繰り返し行えばよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の物流搬送機器および異常検出方法は、物流搬送機器に発生する種々の異常の原因の究明を効率化することのできる物流搬送機器および異常検出方法である。従って、工場および物流倉庫等で荷物の搬送を行う物流搬送機器、および、物流搬送機器用の異常検出方法として有用である。
【符号の説明】
【0118】
10 自動倉庫
12 スタッカクレーン
13 制御部
14 機構部
15 昇降台
15a スライドフォーク
16 走行レール
18 センサ
20、30 異常検出装置
21 取得部
22 記憶部
23 第一記憶部
24 第二記憶部
25 異常信号特定部
26 比較部
27 共通信号特定部
28 出力部
50 ラック
51 ステーション
60 荷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を搬送する物流搬送機器であって、
前記物流搬送機器の動作を制御する制御部と、
前記物流搬送機器の動作の状態を検出するセンサと、
情報を記憶するための記憶部と、
前記センサから前記制御部に入力される入力信号の状態を示す情報、および、前記制御部から出力される出力信号の状態を示す情報の少なくとも一方である信号状態情報を取得し、取得した信号状態情報を履歴情報として前記記憶部に記憶させる取得部と、
前記取得部に取得された信号状態情報に示される信号群である対象信号群の中から前記物流搬送機器の異常を示す異常信号群を特定する異常信号特定部と、
前記対象信号群における前記異常信号群より時間的に前の第一信号群と、前記記憶部に記憶されている履歴情報に示される信号群のうちの前記異常信号群と同じ信号群よりも時間的に前の第二信号群との比較を行う比較部と、
前記比較部による比較の結果から、前記第一信号群と前記第二信号群との間で共通する信号を特定する共通信号特定部と、
前記共通信号特定部によって特定された信号を示す情報を出力する出力部と
を備える物流搬送機器。
【請求項2】
前記取得部は、所定の期間ごとの前記入力信号の状態を示す情報、および、前記所定の期間ごとの前記出力信号の状態を示す情報の少なくとも一方である前記信号状態情報を取得する
請求項1記載の物流搬送機器。
【請求項3】
前記取得部は、前記入力信号が変化したタイミングごとの前記入力信号の状態を示す情報、および、前記出力信号が変化したタイミングごとの前記出力信号の状態を示す情報の少なくとも一方である前記信号状態情報を取得する
請求項1記載の物流搬送機器。
【請求項4】
前記記憶部は、第一記憶部と、前記第一記憶部よりも容量の大きな第二記憶部とを有し、
前記取得部は、(a)取得した信号状態情報を前記第一記憶部に随時書き込むことで、前記第一記憶部に記憶されている信号状態情報を随時更新し、(b)前記異常信号特定部により、前記対象信号群の中から前記異常信号群が特定された場合、前記第一記憶部に記憶されている、前記対象信号群を示す信号状態情報を履歴情報として第二記憶部に書き込む
請求項1〜3のいずれか1項に記載の物流搬送機器。
【請求項5】
荷物を搬送する物流搬送機器の異常を検出するための異常検出方法であって、
前記物流搬送機器は、前記物流搬送機器の動作を制御する制御部と、前記物流搬送機器の動作の状態を検出するセンサとを有し、
前記異常検出方法は、
前記センサから前記制御部に入力される入力信号の状態を示す情報、および、前記制御部から出力される出力信号の状態を示す情報の少なくとも一方である信号状態情報を取得し、取得した信号状態情報を履歴情報として記憶部に記憶させる取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された信号状態情報に示される信号群である対象信号群の中から前記物流搬送機器の異常を示す異常信号群を特定する異常信号特定ステップと、
前記対象信号群における前記異常信号群より時間的に前の第一信号群と、前記記憶部に記憶されている履歴情報に示される信号群のうちの前記異常信号群と同じ信号群よりも時間的に前の第二信号群との比較を行う比較ステップと、
前記比較ステップにおける比較の結果から、前記第一信号群と前記第二信号群との間で共通する信号を特定する共通信号特定ステップと、
前記共通信号特定ステップにおいて特定された信号を示す情報を出力する出力ステップと
を含む異常検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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