説明

物流管理システム、ゲート型リーダ装置およびその作動方法

【課題】ゲートを通過する識別対象物品に付された電子タグを、高い読取率で読み取ることができる物流管理システム、ゲート型リーダ装置およびその作動方法を提供する。
【解決手段】ゲート型リーダ装置123は、コンピュータ122によって制御され、通過する完成車両102の所定位置に付した電子タグラベル101からデータを読み取る装置である。ゲート型リーダ装置123は、完成車両102が通過しうるゲートおよびゲートに配置した複数のアンテナ1232a,1232b,1232c,1232dからなるゲート型アンテナ1232と、コンピュータ122の制御により電子タグデータから読み取ったデータに従って前記したアンテナ(1232aなど)を切り替え、電子タグデータを読み取るリーダ制御装置と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子タグの読取率を向上させた物流管理システム、ゲート型リーダ装置およびその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商品や部品など各種の物品を管理するため、これら物品に電子タグ(無線タグ)を付して標識しておき、必要に応じてこの電子タグを読み取り、物品を識別することがしばしば行われている。電子タグは、パッシブ形のものとアクティブ形のものとがあり、パッシブ形の電子タグは、外部からの電磁波または電磁界のエネルギで動作するため、読み取りに比較的大きい強度の電磁波を照射する必要があること、質問波を照射してから回答波を得るまで若干のタイムラグがあること、回答波が比較的微弱であること、といった特性を有している。
【0003】
したがって、電子タグと電子タグリーダのアンテナとの位置関係は、電子タグの読取率(電子タグからのデータが電子タグリーダによって正しく読み取られる確率)に大きい影響を与える。殊に、電子タグリーダによって、移動する物品に付した電子タグを読み取る場合には、電子タグリーダのアンテナと電子タグとの相対位置に加えて、電子タグリーダが読み出し動作するタイミングを適切に設定する必要がある。
【0004】
従来、3つのアンテナ対で構成され、これらのアンテナ対は無線タグを付した認識対象が通過する移動空間を形成するように互いに対向配置されている「無線タグゲート」が知られている(例えば、特許文献1参照)。この無線タグゲートの3つのアンテナ対を構成する各アンテナは合分波器に接続され、それぞれ制御線を介して無線タグリーダに接続されている。
【特許文献1】特開2007−88937号公報(段落[0009]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の「無線タグゲート」(特許文献1記載)では、無線タグリーダからの信号が合分波器によって複数のアンテナに同時に分割供給されるため、アンテナを増やして読み取り範囲を拡げるほど、無線タグに照射される電波の強度が小さくなる。また、アンテナの数が多いほど外来雑音を多く拾うこととなるため、無線タグからの微弱な信号が雑音に埋もれやすくなる。したがって、この「無線タグゲート」(特許文献1記載)では、読み取り範囲を拡げようとするほど、却って、無線タグの読取率が低下してしまう問題点があった。
【0006】
本発明は、前記した問題点に鑑みてなされたものであり、所定のポイントを通過する識別対象物品に付された電子タグを、高い読取率で読み取ることができる物流管理システム、ゲート型リーダ装置およびその作動方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明によるゲート型リーダ装置は、複数のアンテナが配置され電子タグを読み取るゲート型アンテナと、ゲート型アンテナの各アンテナを切り替え制御するリーダ制御装置と、を具備し、リーダ制御装置は、電子タグから読み取ったデータに従って、ゲート型アンテナの各アンテナを切り替えることを特徴とする。
本発明による具体的手段については、発明を実施するための最良の形態の項の記載を通じて、その技術思想を表現するものとする。
なお、アンテナの切り替えには、複数のアンテナ配置位置や向きを変更させることやアンテナの受信特性(方向性)を変更させることも含まれる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ゲートを通過する識別対象物品に付された電子タグを従来技術に比較して高い読取率で読み取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、添付した各図を参照し、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明による一実施形態の物流管理システム100の概要を示すブロック図である。
この物流管理システム100は、電子タグラベル101を発行して完成車両102に貼付し、この電子タグラベル101に記憶させたデータを利用して完成車両102の物流管理を行うシステムであって、電子タグ発行所111と、読取ポイント121a,121bと、データセンタ131と、これらの間でデータを交換可能にするネットワーク141とを含んでいる。なお、1カ所の電子タグ発行所111を設けた場合について説明するが、同様の発行所(図示せず)をさらに設置してもよい。また、2カ所の読取ポイント121a,121bを設けた場合について説明するが、同様のポイント(図示せず)を1カ所または3カ所以上設置してもよい。
【0010】
また、本実施形態では、物流管理システム100を、車両を出荷する施設に構築した場合について説明するが、自動車整備工場や修理工場など、車両などの物品の搬入出管理を要する施設にも好適に構築できる。さらに、本実施形態の物流管理システム100は、製造加工施設や流通施設など物品を扱う施設において、管理対象物品を搬送するための車両、台車、かご、パレット、コンテナ、あるいは、物品そのものやその包装・容器などに電子タグラベル101を付して、好適に構築できる。また、物品の加工などの履歴管理や物品の貸し出しなどの物品管理に応用してもよい。
【0011】
データセンタ131は、電子タグラベル101に関するデータの収集および管理を行い、要求に応じて収集したデータを提供するサブシステムであって、サーバ132と、出荷管理データベース133とを含んでいる。
出荷管理データベース133は、発行された電子タグラベル101などに関するデータを収集し、これらのデータを基に生成されたデータベースを記憶した記憶装置、または、このデータベースそのものを指す。
サーバ132は、ネットワーク141を介してデータセンタ131とその外部との通信を仲介する機能を有する通信機能付コンピュータである。サーバ132は、ネットワーク141を通じて受けた要求に応じて出荷管理データベース133からデータを抽出して送信し、また、ネットワーク141を通じて受けたデータを基に出荷管理データベース133を書き換え、更新する。
【0012】
ネットワーク141は、電子タグ発行所111と、読取ポイント121a,121bと、データセンタ131とをデータ交換可能に収容しているデータ通信網である。ネットワーク141は、例えば専用回線またはVPN(Virtual Private Network; 私設仮想回線)を用いて構築し、伝送されるデータの改竄や紛失などを防止することが好ましい。
【0013】
電子タグ発行所111は、完成車両102に付す電子タグラベル101を発行するサブシステムであって、電子タグ発行装置113と、コンピュータ112とを含んでいる。
電子タグ発行装置113は、完成車両102に関するデータを出荷管理データベース133から取得し、電子タグラベル101の記憶領域に記憶させる。電子タグラベル101の記憶領域については、後で詳述する。
【0014】
電子タグラベル101には、接着材または粘着テープなどが添付されていて、完成車両102の所望の箇所に貼付できる。このほかの方法で、電子タグラベル101の電子タグ部分を完成車両102に付すようにしてもよい。電子タグラベル101を貼付する位置は、車種などに従って、完成車両102の所定の箇所に貼付することとなっている。
【0015】
読取ポイント121aは、ここを通過する完成車両102に付された電子タグラベル101を読み取って、読み取ったデータに従い、さらなる電子タグラベル101の読み取り方式を制御するサブシステムであって、ゲート型リーダ装置123と、コンピュータ122とを含んでいる。
ゲート型リーダ装置123は、図4を参照して後記するように、完成車両102が通過可能に構成されていて、その際に、この完成車両102に付された電子タグラベル101を電磁界または電磁波によって読み取る機能を有する。
コンピュータ122は、ゲート型リーダ装置123にデータを与えて管理し、また、データセンタ131のサーバ132と通信し出荷管理データベース133にアクセスする機能を有する。
読取ポイント121bは、読取ポイント121aと同様の構成でよい。また、同様のポイントをさらに設けてもよい。
【0016】
物流管理システム100の動作の概要について説明する。
完成車両102は、電子タグラベル101を貼付され管理されている。
電子タグラベル101は、電子タグ発行所111において、電子タグ発行装置113によってデータを記録され、発行される。なお、電子タグラベル101は、予め当該電子タグラベル101を識別する情報を格納しておき、電子タグ発行装置113では、この電子タグラベル101を有効にするデータおよび/または識別する情報を、データセンタ131に送信することで発行してもよい。
電子タグラベル101に記録されるデータは、データセンタ131で管理されていて、電子タグラベル101を発行する際に、コンピュータ112が、ネットワーク141を経由してサーバ132と通信し、出荷管理データベース133にアクセスして取得する。
完成車両102は、出荷するため搬送する際に、読取ポイント121aまたは読取ポイント121bを通過する。このとき、貼付された電子タグラベル101に記憶されているデータが、コンピュータ122により制御されているゲート型リーダ装置123によって読み取られる。
この電子タグラベル101に記録されているデータによって、コンピュータ122は次の処理を判別し、ゲート型リーダ装置123などのシステムの制御を行い、また、データを処理し、ネットワーク141を経由してデータセンタ131にあるサーバ132とアクセスし、出荷管理データベース133に記録する、などの処理を行う。
【0017】
次に、電子タグラベル101の構成および動作について詳細に説明する。
電子タグラベル101の記憶領域は、UII(Unique Item Identifier)およびユーザエリアを含んでいる。これらの記憶領域は、原則として不揮発性である。電子タグラベル101には、命令タグおよびデータタグの2種類がある。命令タグおよびデータタグは、おのおのの記憶領域(UIIおよびユーザエリア)を次のように使用している。なお、“+”の符号は、この符号の前後に記載した情報またはデータを連結することを意味する。
(1)命令タグ
UII : 「命令タグ識別子」+「命令データ」
ユーザエリア: 特に使用しない。
(2)データタグ
UII : 「個別管理識別子」
ユーザエリア: 「出荷予定データ」
(例えば、「車種」+「出荷台数」+「出荷日」+「出荷先」の形式)
【0018】
UIIに命令タグ識別子が記憶されているか、個別管理識別子が記憶されているかによって、その電子タグラベル101が命令タグであるか、データタグであるかが区別される。命令タグ識別子は、また、命令に付随する情報も示している。命令データは、対象システムに与える命令(処理、作業など)を具体的に示すデータである。命令タグ識別子および命令データは、対象システムごとに定義しておく。
【0019】
個別管理識別子は、完成車両102ごとに発行される「個別識別子」を含み、完成車両102を一意に識別できる識別子(ID)である。出荷予定データは、出荷管理データベース133から抽出したデータ、または、出荷管理データベース133の一部をなすデータと同等のデータである。
【0020】
これらの電子タグラベル101のほかに、他の形式のタグを製造できる。例えば、UIIに個別管理識別子のみが記録されているタグや、ユーザエリアのデータ形式がデータタグのデータ形式でないタグである。これらのタグは、原則として、本実施形態の物流管理システム100では、完成車両102の管理には用いない。
【0021】
次に、図2および図3を参照し、命令タグが記憶しているデータの照合について説明する。
図2は、命令タグ識別子判別テーブル920のデータリストを示す図である(適宜、図1参照)。
命令タグ識別子判別テーブル920は、命令タグ識別子の値を示す命令タグ識別子フィールド921、対象ポイントの値を示す対象ポイントフィールド922、対象システムの値を示す対象システムフィールド923、処理種別を示す処理種別フィールド924を含んでいる。例えば、命令タグ識別子フィールド921のデータ長を16ビットとし、上位ビットから4ビットごとに、命令タグ識別子フィールド921、対象ポイントフィールド922、対象システムフィールド923、処理種別フィールド924を割り当てる。命令タグ識別子判別テーブル920は、出荷管理データベース133から、サーバ132によって抽出または生成され、コンピュータ122からの要求によって送信されるが、読取ポイント121a,121bのコンピュータ122があらかじめ記憶していてもよい。
【0022】
ゲート型リーダ装置123が電子タグラベル101を読み取ると、コンピュータ122は、読み取ったデータのうち、UIIのデータから、命令タグ識別子判別テーブル920に対応する命令を識別する。読み取ったUIIに命令タグ識別子が含まれていれば、この電子タグラベル101が命令タグであることが分かるので、コンピュータ122は、命令タグ識別子判別テーブル920を参照し、その命令タグ識別子が示す対象ポイント、対象システムおよび処理種別を識別する。
【0023】
例えば、ある電子タグラベル101について、読み取った命令タグ識別子フィールド921の値が「FF01」である場合、この電子タグラベル101は命令タグであり、対象ポイントは読取ポイント121aであり、対象システムはゲート型リーダ装置123であり、処理種別は通信制御であることを意味する。対象ポイントがネットワーク141上の別のポイントである場合、命令はその対象ポイントへ転送する。対象ポイントが命令を受信すると、この対象ポイントの判断によって、命令に対する処理が実行される。
【0024】
図3は、命令定義テーブル930のデータリストを示す図である(適宜、図1参照)。
命令定義テーブル930は、命令タグ識別子の値を示す命令タグ識別子フィールド931、命令データの値を示す命令データフィールド932、処理内容を示す処理内容フィールド933を含んでいる。命令データフィールド932は、命令番号の値を示す命令番号フィールド9321、命令長の値を示す命令長フィールド9322、命令内容の値を示す命令内容フィールド1234、車種番号の値を示す車種番号フィールド9324、予定台数の値を示す予定台数フィールド9325を含んでいる。
命令定義テーブル930は、命令タグ識別子判別テーブル920(図2参照)と同様に、出荷管理データベース133から、サーバ132によって抽出または生成され、コンピュータ122からの要求によって送信されるが、読取ポイント121a,121bのコンピュータ122があらかじめ記憶していてもよい。
【0025】
命令データの内容は、命令タグ識別子(命令タグ識別子フィールド931の値)ごとにそれぞれ定義されている。
本実施形態では、命令タグ識別子が「**01」(**は任意の数を意味する)である場合、アンテナシーケンスの指定を意味する。命令番号(命令番号フィールド9321の値)は命令の発行ごとに付与されるシリアル番号を意味し、命令長(命令長フィールド9322の値)は、後続する命令内容(命令内容フィールド9323の値)のデータ長を示す。
【0026】
例えば、レコード#1は、命令タグ識別子が「**01」であるからアンテナシーケンスの指定を意味し、命令番号が「0001」、命令長が「0012」、命令内容が「1234」、車種番号は「0001」、出荷の予定台数が「0020」であり、アンテナシーケンスを第1のアンテナ1232a→第2のアンテナ1232b→第3のアンテナ1232c→第4のアンテナ1232dの順に変更することを示している。同様に、命令タグ識別子ごとに、命令データおよびその内容が定義されている。
【0027】
本実施形態では、完成車両102の搬送は、各完成車両102に運転者が搭乗し、完成車両102を自走させて行っている。
完成車両102の搬送に際して、7〜8人からなるチームを1チーム以上編成し、1つのチームごとに1チーム分の構成員が全員搭乗できるチーム移動用車両(図示せず)を1両用意する。1チームの構成員のうち、チーム移動用車両の運転者として1名を割り当て、完成車両102の運転者としてその余の構成員を割り当てる。1チームで同時に搬送される完成車両102の台数が、1搬送単位となる。
【0028】
具体的手順は、おおよそ次の通りである。
(1)チーム移動用車両に1チームの構成員全員が乗り込み、搬送前の完成車両102が集積された運搬元地点へ移動する。
(2)チーム移動用車両の運転者を除いて、このチームの他の構成員(完成車両102の運転者)がいったん下車する。
(3)(2)で下車した構成員は、搬送すべき完成車両102にそれぞれ乗り組む。
このとき、チーム移動用車両に新たな電子タグラベル(命令タグ)101を貼り替え、搬送すべき完成車両102に電子タグラベル(データタグ)101を貼付する。貼付箇所は、電子タグラベル(命令タグ)101に記憶されている通りとする。
(4)チーム移動用車両を先頭に、チームの要員がそれぞれ乗り組んだ完成車両102が後続して、完成車両102の運搬先地点へ走行する。
このとき、チーム移動用車両、完成車両102の順で、各車両が、ゲート型リーダ装置123のゲート型アンテナ1232を通過する。
(5)完成車両102を運搬先地点の所定箇所に配列し、それらの運転者は、完成車両102から下車する。
(6)搬送すべき完成車両102をすべて搬送し終わるまで、前記した(1)以降の工程を繰り返す。
【0029】
図4は、ゲート型リーダ装置123を詳細に示す説明図である。
ゲート型リーダ装置123は、リーダ制御装置1231と、ゲート型アンテナ1232とを含んでいる。
ゲート型アンテナ1232は、チーム移動用車両および完成車両102が通過しうる内寸を有するゲートに、第1のアンテナ1232a(左上),第2のアンテナ1232b(左下),第3のアンテナ1232c(右上),第4のアンテナ1232d(右下)を配置して構成されている。このゲートは、一辺が2[m]から3[m]程度の長さのコの字形または四角形状の枠であり、その枠の中を完成車両102が若干の間隙をもって通過できる。
【0030】
リーダ制御装置1231は、コンピュータ122の制御に基づいて、ゲート型アンテナ1232の第1のアンテナ1232a(左上),第2のアンテナ1232b(左下),第3のアンテナ1232c(右上),第4のアンテナ1232d(右下)のいずれかに切り替え、電子タグラベル101を読み取る機能を有する。
リーダ制御装置1231は、初期状態(デフォルト)では、ゲート型アンテナ1232を構成する各アンテナ(1232a,1232b,1232c,1232d)に対して順番に電磁波または電磁界を発生させ、電子タグラベル101と通信する制御を行う。
【0031】
前記したように、ゲートは、一辺が例えば2[m]から3[m]程度の長さのコの字形または四角形状の枠であり、その枠の中を完成車両102が通過する。このとき、リーダ制御装置1231は、いずれかのアンテナから電磁波または電磁界を発生させ、通過する完成車両102に付した電子タグラベル101(の電子タグ部分)と通信し、データを送受信する。完成車両102ごとに電子タグラベル101の読取位置(貼付位置)は決まっていて、出荷管理データベース133(図1参照)にアクセスすれば知ることができる。例えば、第1のアンテナ1232aから電波を輻射し、その電波に電子タグラベル101が応答し、通信路が確立すると、電子タグラベル101は、第1のアンテナ1232aを通じて通信を行う。この間、電子タグラベル101は、他のアンテナ(1232b,1232c,1232d)を通じた通信は行わない。
【0032】
図5は、出荷予定データが記憶され、完成車両102を管理するため貼付する電子タグラベル101を発行する手順を示すフローチャートである(適宜、図1参照)。
【0033】
まず、電子タグ発行所111では、電子タグラベル101発行用のコンピュータ112は、ネットワーク141を経由し、データセンタ131にあるサーバ132にアクセスし、出荷管理データベース133から出荷予定データを取得し(ステップ201)、コンピュータ112に保存する。
【0034】
次に、出荷予定データを基に出荷予定に応じたアンテナシーケンスを算出する(ステップ202)。ここで算出されるアンテナシーケンスは、初期値であり、デフォルトで設定される。
【0035】
算出式は次の通りである。
第nのアンテナの選択率:
(Σ{各車種×第nのアンテナのシーケンス該当率×出荷台数})/総出荷台数
アンテナシーケンスは各選択率に従い、ランダムに選択する。
【0036】
図6は、出荷予定リスト900のデータリストを示す図であり、図7は、車種ごとの最適なアンテナシーケンスを示すアンテナシーケンスリスト910のデータリストを示す図である(適宜、図4参照)。
出荷予定リスト900(図6参照)およびアンテナシーケンスリスト910(図7参照)を合わせて参照し、アンテナシーケンスの初期値(デフォルト値)を計算する。第nのアンテナの選択率を求めるには、まず、アンテナシーケンスリスト910の車種別アンテナシーケンスフィールド914を検索して、第nのアンテナを用いるシーケンスに係るレコードを探し、これらのレコードごとにアンテナシーケンスで第nのアンテナが該当する確率を算出する。そして、出荷予定リスト900の出荷台数フィールド903を参照して、探したレコードごとに、出荷台数を検索する。さらに、レコードごとに、第nのアンテナが該当する確率と出荷台数とを乗算し、レコードごとの乗算結果を積算して総出荷台数で除算して、第nのアンテナの選択率を求める。
【0037】
本例では、第1のアンテナ1232aの選択率=(0.5×40+0.5×10)/100=0.25、すなわち25%となる。同様に、第2のアンテナ1232bの選択率:40%、第3のアンテナ1232cの選択率:5%、第4のアンテナ1232dの選択率:30%となる。
【0038】
図5に戻り(適宜、図4参照)、取得した出荷予定データを基にゲート型リーダ装置123に作動方法を伝達するため、搬送単位ごとに電子タグラベル(命令タグ)101を発行する(ステップ203)。命令タグを発行する際に、電子タグラベル101のUIIに命令タグ識別子および命令データをエンコードして書き込み、ユーザエリアには書き込みをしない。例えば、出荷予定リスト900(図6参照)のレコード#3の場合、エンコードしたものは、「FF01」+「00010012001200030040」などとなる。
【0039】
次に、搬送対象の完成車両102に対応する電子タグラベル(データタグ)101を発行する(ステップ204)。データタグを発行する際は、個別管理識別子を付番し、電子タグのUIIに個別管理識別子をエンコードして書き込み、ユーザエリアに車種、出荷台数、出荷日、出荷先のデータをエンコードして書き込む。付番した識別子などのデータは、サーバ132を介して、出荷管理データベース133に記録する。発行した電子タグラベル101は、ゲート型アンテナ1232の所定のアンテナ(1232a,1232b,1232c,1232dのいずれか)(図4参照)で読み取れるように、対象の完成車両102の指定場所に貼付する。例えば、出荷予定リスト900(図6参照)のレコード#3に対応する完成車両102に電子タグラベル101を発行する場合、個別管理識別子を「0001」とした場合、UIIに「0001」をエンコードして書き込み、ユーザエリアに「00030040200703150001」(アメリカの国番号を0001とした場合)をエンコードして書き込む。
【0040】
図8は、ゲート型リーダ装置123による電子タグラベル101の読み取りおよび読み取りデータによるシステム制御の概要を示すフローチャートである。
まず、命令タグおよびデータタグを読み取るため、ゲート型リーダ装置123およびコンピュータ122を起動する(ステップ301)。
ゲート型リーダ装置123のアンテナ制御シーケンスパターンの初期値(デフォルト値)として、出荷予定データを基に算出したアンテナシーケンスを設定する(ステップ302)。
読取ポイント121aに設置されているコンピュータ122は、ネットワーク141を経由し、データセンタ131に設置しているサーバ132にアクセスし、出荷管理データベース133から出荷予定データを取得する(ステップ303)。取得したデータは読取ポイント121aに設置しているコンピュータ122に保存する。
【0041】
保存したデータは完成車両102の出荷実績と照合し、出荷確認を行う。そのため、ゲート型リーダ装置123によって完成車両102等に貼付した電子タグラベル101の読み取りおよびデータ処理を行う(ステップ304)。このステップ304については、後で詳細に説明する。
【0042】
読み取ったデータと出荷予定データとを照合して出荷確認を行い、出荷予定が完了したか否かを判断する(ステップ305)。
出荷が完了した場合は(ステップ305のYes)、ゲート型リーダ装置123およびコンピュータ122を待機状態にし(ステップ306)、この搬送単位の処理を終了する。
出荷が完了していない場合は(ステップ305のNo)、完成車両102の出荷予定データがすべて確認されていないこととなるので、ステップ304へ戻り、電子タグラベル101の読み取りおよびデータ処理を反復する。
【0043】
図9および図10は、ゲート型リーダ装置123による電子タグラベル101の読み取りおよび読み取りデータによるシステム制御(図8のステップ304)について詳細に示すフローチャートであって、図9はその前半部分を示し、図10はその後半部分を示す。
読み取った電子タグラベル101が命令タグであるかデータタグであるかによって、命令タグによるリーダ制御が行われる場合(第1の場合)と、データタグによるデータ制御が行われる場合(第2の場合)との、2つの場合があり得るので、それぞれの場合について分けて説明する。
【0044】
第1の場合:命令タグによるリーダ制御
命令タグ識別子および命令データが、「FF01」+「00010012001200030040」である例について説明する(図2および図3参照)。
【0045】
まず、図9を参照し、電子タグラベル101からデータを読み取る(ステップ401)。具体的には、ゲート型リーダ装置123を通過する車両に貼付された電子タグラベル101から、UIIおよびユーザエリアの情報を読み取る。
そして、読み取ったUIIのデータに命令タグ識別子が含まれているか否かを判断する(ステップ402)。
命令タグ識別子が含まれている場合(ステップ402のYes)、ステップ404へ進み、含まれていない場合(ステップ402のNo)、ステップ403へ進む。ステップ403以降の処理は、第2の場合として、後記する。
【0046】
例えば、命令タグ識別子の値が「FF01」であるとき、命令タグ識別子判別テーブル920(図2参照)を参照すると、レコード#1から、命令タグであることが分かり、対象ポイントは読取ポイント121a、対象システムはゲート型リーダ装置123、処理種別は通信制御であることが分かる。そして、この電子タグラベル101は命令タグであるから、ステップ404へ進む。
【0047】
読み取ったデータに命令タグ識別子が含まれている場合(ステップ402のYes)、読み取ったUIIから命令データを取り出し(ステップ404)、フォーマットチェック、命令データ値の有効性チェックを行う。そして、命令データがサーバ132から取得した出荷予定データに存在するかのチェックを行う。この例では、命令データは「00010012001200030040」であるから、命令番号は「0001」、命令長は「0012」、命令内容は「0012」、車種番号は「0003」、予定台数は「0040」であることが分かる。命令番号は「0001」であるから、命令定義テーブル930(図3参照)を参照すると、アンテナシーケンスを第1のアンテナ1232a→第2のアンテナ1232b→第3のアンテナ1232c→第4のアンテナ1232dの順に切り替えることを意味する。また、車種番号が「0003」であるから、出荷予定リスト900(図6参照)のレコード#3を参照すると、車種が「B」で「左ハンドル」の車両を40台測定する、という命令となる。
【0048】
次に、命令タグから指示された命令データに例外条件を付加し、命令を確定する(ステップ408)。例外条件は、次のように設定する。
(1)命令データで指定されているシーケンスに対応しないアンテナを読み取りパターンに必要とする車種がまぎれてしまう場合を考慮し、デフォルトシーケンスX%分を命令に追加する。
(2)命令データに基づいてシーケンスを指定してから予定時間Yを過ぎても予定台数を読み取り終わらない場合、アンテナシーケンスを初期状態(デフォルトシーケンス)に戻す。
(3)命令データに対応する出荷予定データに該当しない電子タグラベル101を連続してZ回読み取った場合、アンテナシーケンスを初期状態(デフォルトシーケンス)に戻す。
【0049】
ゲート型リーダ装置123のアンテナシーケンスについて、確定した命令に合わせてアンテナシーケンスを設定し(ステップ409)、例外条件を付加した命令のアンテナ制御シーケンスにする。
例えば、X=10、Y=80(予定台数を40台×平均処理時間を2分とした場合)、Z=3とした場合の例を次に示す。デフォルトシーケンスを命令データのシーケンスに対して10%付加したシーケンスとし、80分を経過しても予定台数を読み取らなかった、または、3台を超えて連続して車種番号が「0003」以外の車種を読み取った場合、例外条件に合致したと判断し、アンテナシーケンスを初期値(デフォルトシーケンス)に変更する。
【0050】
図10に移り、ゲート型リーダ装置123を通過する車両に貼付された電子タグラベル101からデータを読み取る(ステップ410)。読み取ったデータ(UIIおよびユーザエリア)と出荷予定データとを照合し(ステップ411)、出荷検品を行う。照合したデータは、出荷管理データベース133に登録する。
【0051】
次に、命令に対する読み取り台数および例外条件に関するチェックを行う。
命令が示す予定台数分の電子タグラベル101を読み取ったか否かを判断する(ステップ412)。
読み取った場合(ステップ412のYes)、アンテナシーケンスを初期状態に設定し(ステップ415)、この搬送単位に係る処理を終了する。
【0052】
読み取らなかった場合(ステップ412のNo)命令を開始してから、予定時間Yを経過したか否かを判断する(ステップ413)。
予定時間Yを経過した場合(ステップ413のYes)、アンテナシーケンスを初期状態に設定し(ステップ415)、この搬送単位に係る処理を終了する。
【0053】
予定時間Yを経過していない場合(ステップ413のNo)、命令に該当しない電子タグラベル101を所定回数以上(つまり、連続してZ回を超えて)読み取ったか否かを判断する(ステップ414)。
所定回数以上(Z回を超えて)読み取った場合(ステップ414のYes)、アンテナシーケンス初期状態に設定し(ステップ415)、この搬送単位に係る処理を終了する。
読み取っていない場合(ステップ414のNo)、ステップ410以降の処理を繰り返す。
【0054】
第2の場合:データタグによるリーダ制御
UIIに「0001」、ユーザエリアに「00030040200703150001」を記憶させた例を説明する(図2および図3参照)。
図9に戻り、ステップ401からステップ402までについては、第1の場合と同様に行う。
【0055】
次に、読み取ったデータの形式がデータタグの形式であるか否かを判断する(ステップ403)。
【0056】
データタグの形式でない場合は(ステップ403のNo)、読み取ったデータを処理し(ステップ406)、この搬送単位に係る処理を終了する。このデータは、命令タグに記憶される形式でなく、データタグに記憶される形式でもないことから、このデータに対応する処理を行うこととなるが、詳細については記載を省略する。
【0057】
データタグの形式である場合は(ステップ403のYes)、次のステップ405へ進む。
本例では、ユーザエリアのデータが「00030040200703150001」であり、データタグ形式であるから、次のステップ405へ進む。
【0058】
次のステップ405では、読み取ったデータから命令を取り出す。
そして、読み取ったデータと出荷予定データとを照合し(ステップ407)、出荷検品を行う。照合されたデータは、出荷管理データベース133に登録する。
【0059】
本例では、ユーザエリアのデータが「00030040200703150001」であり、出荷予定リスト910(図6参照)を参照すると、車種番号が「0003」、予定台数が「0040」、出荷予定日が「20070315」、出荷先が「0001」(アメリカ)であり、照合の結果、出荷予定データに存在することが確認される。そして、この出荷予定データからは、ゲート型リーダ装置123が受け取る命令を作成している。本例では、アンテナシーケンスリスト910のレコード#3(図7参照)を参照すると、車種番号が「0003」のアンテナシーケンスを第1のアンテナ1232a→第2のアンテナ1232bと設定を行い、車両を40台測定する、という命令になる。
【0060】
以降のステップ408からステップ415までの処理は、第1の場合と同様であるから、省略する。
【0061】
本発明による実施形態によれば、事前に電子タグラベル101が通過する位置のデータを入手し、最適な制御を解析し、ゲート型リーダ装置123に作動方法を与えることで、電子タグラベル101の読取率を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
ゲート型リーダ装置123で読取率を改善することは、検品業務などで非常に有益である。本発明によれば、ゲート型リーダ装置123の作動方法を応用することによって、リーダ装置の読取率を改善できる。本発明の技術は、完成車両102やその他の物品の物流において好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による一実施形態の物流管理システムの概要を示すブロック図である。
【図2】命令タグ識別子判別テーブルのデータリストを示す図である。
【図3】命令定義テーブルのデータリストを示す図である。
【図4】ゲート型リーダ装置を詳細に示す説明図である。
【図5】出荷予定データが記憶され、完成車両を管理するため貼付する電子タグラベルを発行する手順を示すフローチャートである。
【図6】出荷予定リストのデータリストを示す図である。
【図7】車種ごとの最適なアンテナシーケンスを示すアンテナシーケンスリストのデータリストを示す図である。
【図8】ゲート型リーダ装置による電子タグラベルの読み取りおよび読み取りデータによるシステム制御の概要を示すフローチャートである。
【図9】ゲート型リーダ装置による電子タグラベルの読み取りおよび読み取りデータによるシステム制御(図8のステップ304)について詳細に示すフローチャートの前半部分である。
【図10】ゲート型リーダ装置による電子タグラベルの読み取りおよび読み取りデータによるシステム制御(図8のステップ304)について詳細に示すフローチャートの後半部分である。
【符号の説明】
【0064】
100 物流管理システム
101 電子タグラベル
102 完成車両
111 電子タグ発行所
112,122 コンピュータ
113 電子タグ発行装置
121a,121b 読取ポイント
123 ゲート型リーダ装置
131 データセンタ
132 サーバ
133 出荷管理データベース
141 ネットワーク
1231 リーダ制御装置
1232 ゲート型アンテナ
1232a 第1のアンテナ
1232b 第2のアンテナ
1232c 第3のアンテナ
1232d 第4のアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定ポイントを通過する物品に付された電子タグからデータを読み取る物流管理システムであって、
コンピュータによって制御され、前記物品が通過しうるゲートおよび当該ゲートに配置した複数のアンテナからなるゲート型アンテナと、前記コンピュータの制御により前記データに従って前記複数のアンテナを切り替え前記電子タグラベルを読み取るリーダ制御装置と、を備えたゲート型リーダ装置、
を具備したことを特徴とする物流管理システム。
【請求項2】
発行した前記電子タグに関するデータを記憶した出荷管理データベースを具備したことを特徴とする請求項1に記載の物流管理システム。
【請求項3】
前記出荷管理データベースに基づいて前記電子タグを新たに発行し、発行した当該電子タグに関するデータを前記出荷管理データベースに書き込む電子タグ発行装置を具備したことを特徴とする請求項2に記載の物流管理システム。
【請求項4】
前記電子タグは、前記リーダ制御装置に対する命令を記憶した命令タグと、前記物品に関するデータを記憶したデータタグと、があることを特徴とする請求項1に記載の物流管理システム。
【請求項5】
前記命令タグから読み取った前記命令に従って前記リーダ制御装置が制御され、当該命令に基づいて切り替えられた前記アンテナによって前記データタグが読み取られることを特徴とする請求項4に記載の物流管理システム。
【請求項6】
コンピュータによって制御され、所定のポイントを通過する物品の所定位置に付した電子タグからデータを読み取るゲート型リーダ装置であって、
前記物品が通過しうるゲートおよび当該ゲートに配置した複数のアンテナからなるゲート型アンテナと、
前記コンピュータの制御により前記データに従って前記複数のアンテナを切り替え前記電子タグを読み取るリーダ制御装置と、
を具備したことを特徴とするゲート型リーダ装置。
【請求項7】
コンピュータによって制御され、所定のポイントを通過する物品の所定位置に付した電子タグラベルからデータを読み取るゲート型リーダ装置の作動方法であって、
前記ゲート型リーダ装置は、前記物品が通過しうるゲートおよび当該ゲートに配置した複数のアンテナからなるゲート型アンテナと、前記コンピュータの制御により前記データに従って前記複数のアンテナを切り替え前記電子タグラベルを読み取るリーダ制御装置と、を具備し、
前記電子タグラベルは、前記リーダ制御装置に対する命令を記載した命令タグと、前記物品に付され当該物品を示す識別子を記憶したデータタグと、があり、
前記ゲート型リーダ装置を通過した前記命令タグを読み取る命令タグ読取工程と、
前記リーダ制御装置が前記命令タグから読み取った前記命令に基づき前記複数のアンテナを切り替えるアンテナ切替工程と、
前記アンテナ切替工程の後、前記ゲート型リーダ装置を通過する前記データタグを読み取るデータタグ読取工程と、
を含むことを特徴とするゲート型リーダ装置の作動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−12972(P2009−12972A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180106(P2007−180106)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】