説明

物質の新たな組成物

【課題】粉末化形態の糖質副腎皮質ステロイドの滅菌方法、無菌糖質副腎皮質ステロイド、糖質副腎皮質ステロイドを含む無菌製剤、並びに鼻または肺のアレルギーおよび/または炎症状態の処置におけるそれらの使用を提供すること。
【解決手段】フルチカゾン、プレドナシンドン、デキサメタゾン、およびプレドニゾロン、並びにそれらの塩、エステル、およびフルオロ誘導体を除き、米国薬局方 23/NF18により無菌である、治療上許容され得る糖質副腎皮質ステロイドを提供することにより解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、粉末化形態の糖質副腎皮質ステロイドの滅菌方法、無菌糖質副腎皮質ステロイド、糖質副腎皮質ステロイドを含む無菌製剤、並びに鼻または肺のアレルギーおよび/または炎症状態の処置におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
糖質副腎皮質ステロイドの滅菌に関して、様々な方法が過去に提唱された。PT−A−69652により、粉末形態のステロイドは、温度が60℃以上であると安定ではないことから、PT−A−69652は、エチレンオキシドおよび二酸化炭素の混合物を使用しての超微粉砕化糖質副腎皮質ステロイドの冷滅菌を開示している。糖質副腎皮質ステロイドの具体的な例は、デキサメタゾンアセテート、デキサメタゾンホスフェート、プレドニゾロンピバレート、および9−αフルオロプレドニゾロンを含め、プレドナシンドン(prednacindone)、デキサメタゾン、およびプレドニゾロン、並びにそれらの塩、エステル、およびフルオロ誘導体である。しかしながら、エチレンオキシドは有毒であり、エチレンオキシドを使用して、糖質副腎皮質ステロイドを滅菌する場合、エチレンオキシドの残留量は、非常に低レベルの残留エチレンオキシドを要求する医薬ガイドラインを犯すことが見出された。従って、この方法は、治療上許容され得る糖質副腎皮質ステロイドおよびそれらの製剤を製造するには不適当であることが見出された。
【0003】
US−A−3962430は、医療薬剤の無菌等張液の製造方法であって、薬剤を塩化ナトリウムの飽和水溶液に100℃で加えた後、その混合物を100−130℃で加熱することを含んでなる方法を開示している。水、並びに伴われる加熱および冷却は、粒子径に不利な変化をもたらすので、この方法は、吸入を意図する微粒子の糖質副腎皮質ステロイドの懸濁液には適当ではない。それどころか、その方法は、投与時に所望の微粒子へと脱凝集しない大きくて硬い凝集塊をもたらす、微粒子の間の架橋形成を導くことができる。
【0004】
一般的に認められている別法は、乾熱滅菌である。欧州薬局方(1996、283−4頁)により、標準熱滅菌法は、180℃で30分間、または最低160℃で少なくとも2時間操作する。北欧薬局方(1964、16頁)により、そのような滅菌を140℃で3時間行うことができる。しかしながら、これらの方法の温度では、糖質副腎皮質ステロイドが著しい分解を受けて、それらの表面構造に変化を起こす。
【0005】
βまたはγ照射による滅菌も知られている。なるほど、IllumおよびMoellerは、Arch. Pharm. Chemi. Sci.、第2版、1974、167−174頁において、糖質副腎皮質ステロイドを滅菌するための、そのような照射の使用を推奨した。しかしながら、そのような照射を使用して、ある微粉砕化、例えば、超微粉砕化糖質副腎皮質ステロイドを滅菌する場合、糖質副腎皮質ステロイドは、著しく分解される。
【0006】
Andaris Ltd.のWO−A−96/09814は、質量中央粒子径が1〜10μmである水溶性物質の噴霧乾燥化粒子に関する。本発明の目的は、乾燥粉末吸入器での使用のための均質で再生可能な粒子を製造することである。水溶性物質は、天然または組換え型のヒトタンパク質またはそのフラグメント、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、α−1抗トリプシン、またはアルコール脱水素酵素であるのが好ましい。そしてまた、活性物質と担体、例えば、ブデソニドとラクトースとの組み合わせも製造した。これがどのようにして達成されたかを教示することもなければ、その証拠を何ら示すこともなく、製造した微小粒子が無菌となり得ることを一般的に述べている。
【0007】
Astra ABのWO−A−96/32095は、吸入化合物を溶媒に溶解し、その結果得られた吸入化合物を含む溶液を、液滴形態で、または噴流として、溶媒と混和可能である抗溶媒に撹拌しながら入れることによる、吸入可能な粒子の製造方法に関する。質量中央径(MMD)が10μm未満であるブデソニドを該方法で製造する。WO−A−96/32095には、滅菌または無菌粒子に関する情報は全くない。
【0008】
Instytut FarmaceutycznyのWO−A−92/11280は、縮合反応、続いて、粗製の縮合生成物をエタノールから結晶化することにより、ブデソニドの(22R)ジアステレオ異性体を得る方法に関する。得られたブデソニド(22R)の21−アセテートを加水分解して、このように得られた生成物を酢酸エチルから結晶化する。ブデソニドの(22S)ジアステレオ異性体の含量は、1%またはそれ未満である。WO−A−92/11280には、滅菌または無菌粒子に関する情報は全くない。
【0009】
糖質副腎皮質ステロイドの医薬品製剤、とりわけ懸濁液、例えば、水性懸濁液の最終滅菌での試みが全て不十分を証明することも見出した。糖質副腎皮質ステロイドの粒子の大部分がフィルター上に保持されてしまうので、そのような懸濁液は、通常、無菌濾過により滅菌することができない。生成物を含むガラスバイアルの湿性乾熱滅菌、例えば、蒸気処理が粒子径に許容され得ない変化を導くことも示した。
【0010】
微粉砕化糖質副腎皮質ステロイドの様々な水性懸濁液が知られており、例えば、ブデソニドを含む製品は、Pulmicort(商標) 噴霧用懸濁液(Pulmicort(商標)は、スウェーデンのAstra ABの商標である)として知られている。フルチカゾン(fluticasone)プロピオネートの同様の製剤は、WO−A−95/31964から知られている。
【0011】
従って、糖質副腎皮質ステロイド(およびそれらを含む製剤)の新たな滅菌方法が必要である。
【0012】
驚いたことに、現在、乾燥糖質副腎皮質ステロイドの有効な滅菌を、他の物質の熱滅菌に必要であると考えられる温度より著しく低い温度で行うことができることを見出している。そのような無菌糖質副腎皮質ステロイドは、それらを含む無菌製剤の製造で使用することができる。
【発明の概要】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明により、糖質副腎皮質ステロイドの滅菌方法であって、粉末形態の糖質副腎皮質ステロイドを100〜130℃の温度で熱処理することを含んでなる方法を提供する。その方法は、好ましくは110〜120℃の温度、より好ましくは約110℃で、好ましくは約24時間まで、より好ましくは10時間まで、例えば、1〜10時間行う。その方法は、大気条件下、すなわち、空気中で便利に行うが、不活性ガス雰囲気、例えば、アルゴンまたは窒素雰囲気下に行うこともできる。
【0014】
驚いたことに、この方法は、比較物質であるステアリン酸カルシウムに適用した場合より糖質副腎皮質ステロイドであるブデソニドに適用した場合のほうが、多くの胞子を殺すことを見出した。一層良好な結果を糖質副腎皮質ステロイドであるロフレポニド(rofleponide)で得た。
【0015】
この説明により限定しようとするものではないが、糖質副腎皮質ステロイドを滅菌することができる意外に低い温度は、熱処理を一緒に行う場合、糖質副腎皮質ステロイドが胞子を破壊する際に幾つかの相乗効果を与え得ることを示すと考えられる。
【0016】
本発明で使用する糖質副腎皮質ステロイドは、例えば、経鼻および経口吸入での使用のための抗炎症性糖質副腎皮質ステロイドであるのが好ましい。本発明で使用することができる糖質副腎皮質ステロイドの例には、ベタメタゾン、フルチカゾン(例えば、プロピオネートとして)、ブデソニド、チプレダン(tipredane)、デキサメタゾン、ベクロメタゾン(例えば、ジプロピオネートとして)、プレドニゾロン、フルオシノロン、トリアムシノロン(例えば、アセトニド)、モメタゾン(例えば、フロエートとして)、ロフレポニド(例えば、パルミテートとして)、フルメタゾン、フルニソリド、シクレソニド(ciclesonide)、デフラザコルト、コルチバゾール(cortivazol)、16α,17α−ブチリデンジオキシ−6α,9α−ジフルオロ−11β,21−ジヒドロキシ−プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン;6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α,17α−ブチリデンジオキシ−17β−メチルチオ−アンドロスタ−4−エン−3−オン;16α,17α−ブチリデンジオキシ−6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−メチルエステル;9α−クロロ−6α−フルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17α−カルボン酸メチル;6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−(2−オキソ−テトラヒドロフラン−3−イル)エステル;が、適用可能な場合、場合により、それらの純粋な異性体形(そのような形が存在する場合)で、および/またはそれらのエステル、アセタール、または塩の形で含まれる。適当には、モメタゾンフロエート、ベクロメタゾンジプロピオネート、もしくはフルチカゾンプロピオネート、またはブデソニド、ロフレポニド、もしくはロフレポニドパルミテートといったような、不斉アセタール構造をもつ、すなわち、16α,17α−ブチリデンジオキシを含んでなる糖質副腎皮質ステロイドを使用する。好ましくはブデソニド、ロフレポニド、もしくはロフレポニドパルミテート、最も好ましくはブデソニドを使用する。
【0017】
糖質副腎皮質ステロイドは、微粉砕化、例えば、超微粉砕化粉末の形態で、特に質量中央径が10μm未満、より好ましくは5μm未満である微粉砕化粒子の形態で使用するのが好ましい。あるいはまた、糖質副腎皮質ステロイドは、例えば、質量中央径が1.0μm未満である超微粒形態であってもよい。本質的に知られている従来技術により、例えば、超微粉砕または直接沈殿により、微粉砕化粒子を製造することができる。超微粉砕に関する情報は、例えば、「The Theory and Practice of Industrial Pharmacy」、Lachman,Liebermann,およびKlang、第2版、1976、Lea & Febiger、フィラデルフィア、米国に見出すことができる。
【0018】
温度、時間、バッチサイズ、および使用する滅菌器の種類は相互に依存する。例えば、一般的には、本発明の方法で使用する温度が高ければ高いほど、糖質副腎皮質ステロイドを滅菌するのに必要な時間は少なくなる。その方法は、好ましくは8時間以下、例えば、1〜8時間、温度が約110℃以上である場合、より好ましくは4時間以下行う。約120℃の温度では、その方法は、好ましくは4時間以下、例えば、1〜4時間、より好ましくは2時間以下、例えば、1〜2時間行う。
【0019】
約110℃から130℃までの温度では、糖質副腎皮質ステロイド50gのバッチを1〜4時間熱処理するのが適当であり得る。サブバッチを所望するならば、例えば、4×50gのサブバッチを使用するのがよい。
【0020】
本発明の方法は、熱耐性胞子の量においてlog4以上の減少が起こるように行うのがよい。本発明の方法は、熱耐性胞子の量においてlog6の減少が起こるように行うのが適当である。本発明の方法は、熱耐性胞子の量において、好ましくはlog6以上の減少が起こるように、より好ましくはlog7以上の減少が起こるように行う。
【0021】
滅菌方法の有効性を特性決定する別の方法は、D値を使用することによる。D値としても知られているD値は、胞子の標準化個体数を、特定の温度T(単位:℃)で、90%または1logサイクルまで、すなわち、1/10の生存画分まで減少させる(「殺す」)のに必要とされる時間(単位:分)である。
【0022】
本発明の方法は、D値が予め選択しておいた温度T(ここで、Tは100〜130℃の範囲である。)で約240分未満となるように行うのがよい。本発明の方法は、D値が予め選択しておいた温度Tで150分未満となるように行うのが適当である。本発明の方法は、好ましくはD値が予め選択しておいた温度Tで90分未満となるよう、より好ましくはD値が予め選択しておいた温度Tで30分未満となるように行う。Tは、100、110、120、または130℃であるのが適当である。
【0023】
滅菌方法は、糖質副腎皮質ステロイドの当該バルクの全域が、所望の時間に対する所望の温度に達して、その所望の温度内に維持されるような方法で行うのが望ましい。
【0024】
本発明の方法は、バッチ方式で、または連続的に、好ましくはバッチ方式で行うのがよい。
【0025】
該方法の糖質副腎皮質ステロイド出発物質、この物質は、微粉砕化形態となり得るが、実質的には、乾燥している、すなわち、水を約1%(w/w)未満含むのが適当である。該方法の出発物質は、好ましくは水を0.5%(w/w)未満、より好ましくは水を0.3%(w/w)未満含む。
【0026】
該方法の糖質副腎皮質ステロイド出発物質は、1グラムあたり50CFU(コロニー形成単位)未満のバイオバーデンを有するのが適当である。該方法の糖質副腎皮質ステロイド出発物質は、好ましくは1グラムあたり10CFU未満、より好ましくは1グラムあたり1CFU未満のバイオバーデンを有する。
【0027】
本発明により、適当には乾燥しており、例えば、好ましくは質量中央径が10μm未満、より好ましくは5μm未満の微粉砕化粒子形態である無菌糖質副腎皮質ステロイド(例えば、ブデソニド)をさらに提供する。
【0028】
「無菌」という語により、米国薬局方 23/NF18、1995、1686−1690頁および1963−1975頁による無菌性基準を満たして、治療上許容され得る糖質副腎皮質ステロイドおよびその製剤を提供する生成物を意味する。さらに、最終生成物の無菌性に関する規定には、欧州薬局方(Ph. Eur. 1998、第2.6.1章および第5.1.1章)、英国薬局方(BP 1993、付録 XVI A,A180頁および付録 XVIII A,A184頁)、および日本薬局方(JP、第13版、69−71頁および181−182頁)が含まれる。好ましくは、米国薬局方 23/NF18、1995、1686−1690頁および1963−1975頁による無菌性の保証を与える方法により、治療上許容され得る糖質副腎皮質ステロイドおよびその製剤を製造した。
【0029】
本発明による糖質副腎皮質ステロイドは、本質的には、該糖質副腎皮質ステロイドを製造する出発物質と同じ薬理学的活性および物理化学的特性/その化学的純度および物理的形態を維持する、すなわち、本発明の滅菌方法により引き起こされる分解、とりわけ化学的分解を制限する。
【0030】
本発明による糖質副腎皮質ステロイドは、好ましくは純度が少なくとも98.5重量%、より好ましくは純度が少なくとも99重量%、最も好ましくは純度が少なくとも99.2%である。
【0031】
本発明はさらに、鼻または肺のアレルギーおよび/または炎症状態、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、鼻炎、または喘息の処置での使用のための、無菌糖質副腎皮質ステロイド、好ましくは抗炎症性糖質副腎皮質ステロイド、より好ましくはブデソニド、ロフレポニド、またはロフレポニドパルミテート、最も好ましくはブデソニドを提供する。本発明は、そのような状態の処置での使用のための薬物(好ましくは無菌薬物)の製造における、そのような無菌糖質副腎皮質ステロイド、好ましくは抗炎症性糖質副腎皮質ステロイド、より好ましくはブデソニドの使用も提供する。
【0032】
本発明により、水性懸濁液中、糖質副腎皮質ステロイドを含んでなる無菌医薬品製剤をさらに提供し、ここで、該糖質副腎皮質ステロイドは、ブデソニドのような無菌微粉砕化糖質副腎皮質ステロイドであるのが好ましい。
【0033】
本発明により、糖質副腎皮質ステロイドおよび1つまたはそれ以上の医薬的に許容され得る添加剤、希釈剤、または担体を含んでなる無菌医薬品製剤も提供する。そのような添加剤の例には、界面活性剤、pH調節剤、キレート化剤、懸濁液に等張性を与える薬剤、および増粘剤が含まれる。
【0034】
懸濁液中、糖質副腎皮質ステロイド粒子の有効な分散を得るために、界面活性剤を、場合により、例えば、レシチンと組み合わせて使用するのがよい。該界面活性剤は、本発明による製剤中で安定化剤としても機能し得る。適当な界面活性剤の例には、アルキルアリールポリエーテルアルコール型の非イオン性界面活性剤、具体的には、チロキサポール(商標)、すなわち、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールのエチレンオキシドおよびホルムアルデヒドとのポリマーが含まれる。さらなる適当な界面活性剤には、ソルビタン誘導体、例えば、好ましくはポリソルベートまたはトゥイーン(商標)群のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、より好ましくはポリソルベート80またはポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエート(トゥイーン(商標)80)が含まれる。適当な界面活性剤には、ポリオキシエチレンエーテル、とりわけポリオキシエチレンアルキルエーテル、好ましくはペンタエチレングリコールモノn−ドデシルエーテルまたはC12も含まれる。さらなる適当な界面活性剤には、ポロキサマー(poloxamers)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリビニルアルコール、並びにポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、およびポリエチレングリコール(PEG)のブロックコポリマー、またはこれらのうち幾つかの混合物が含まれる。さらなる適当な界面活性剤には、ポリエチレングリコール誘導体、とりわけポリエチレングリコール660ヒドロキシステアレート、またはSolutol(商標) HS 15、ポビドン、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。
【0035】
該界面活性剤は、製剤の約0.002〜2% w/wで存在するのがよい。製剤のうち、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは約0.005〜0.5% w/w、ポロキサマーは約0.01〜2% w/w、およびポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンヒマシ油誘導体は約0.01〜1.0% w/wで存在するのが好ましい。
【0036】
懸濁液のpHは、必要に応じて調節され得る。適当なpH調節剤の例は、弱い有機酸、例えば、クエン酸、強い鉱酸、例えば、塩酸、および強いアルカリ性薬剤、例えば、NaOHである。あるいはまた、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、およびリン酸ナトリウムといったような緩衝液の酸および塩の形の平衡を保つことにより、該系のpHを調節することができる。吸入を意図する製剤は、pHが約3.5〜約6.0、より好ましくは4.0〜5.0、最も好ましくは4.2〜4.8の範囲であるのが好ましい。
【0037】
製剤は、適当なキレート化剤、例えば、エデト酸二ナトリウム(EDTA)を含むのも好ましい。該キレート化剤は、製剤の約0.005〜0.1% w/wで存在するのがよい。
【0038】
懸濁液を等張にする薬剤を加えてもよい。例は、デキストロース、グリセロール、マンニトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および臭化ナトリウムである。
【0039】
沈降物を凝集または形成する傾向が最小である安定な懸濁液を形成するために、増粘剤が製剤中に含まれるのがよい。適当な増粘剤の例は、セルロース誘導体、適当にはセルロースエーテル、または微晶質セルロースである。好ましいセルロースエーテルには、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)、例えば、そのナトリウム塩が含まれる。適当な増粘剤には、シクロデキストリンおよびデキストリンも含まれる。適当な増粘剤にはさらに、キサンタンガム、グアーゴム、およびカルボマー(carbomer)が含まれる。本発明の製剤中での好ましい増粘剤は、ポビドン、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびポリエチレングリコール(PEG)である。
【0040】
該増粘剤は、製剤の約0.1〜3.0% w/wで存在するのがよい。好ましくは、製剤のうち、微晶質セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)は約0.5〜2.5% w/w、キサンタンガムは約0.3〜3% w/w、カルボマーは約0.1〜2% w/w、グアーゴムは約0.3〜2% w/w、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースは約0.5〜3.0% w/wで存在する。
【0041】
懸濁液中、活性成分、例えば、ブデソニドは、小さな粒子として存在し、ここで、その小さな粒子の少なくとも90%の質量中央径(MMD)が20μm未満、適当には少なくとも80%が10μm未満、好ましくは少なくとも70%が7μm未満、最も好ましくは少なくとも60%が4μm未満である。
【0042】
該懸濁液は、約0.05〜約20mg/mlの糖質副腎皮質ステロイドを含むのが好ましい。該懸濁液は、より好ましくは0.08〜10mg/mlの糖質副腎皮質ステロイド、最も好ましくは0.1〜5mg/mlの糖質副腎皮質ステロイドを含む。
【0043】
滅菌した糖質副腎皮質ステロイドを、いずれかの適当な付加的成分、例えば、界面活性剤、pH調節剤もしくはキレート化剤、懸濁液に等張性を与える薬剤、または増粘剤と混合することにより、本発明の方法により滅菌した、微粉砕化ブデソニド、ロフレポニド、またはロフレポニドパルミテートといったような糖質副腎皮質ステロイドを含んでなる無菌医薬品製剤を製造することができる。糖質副腎皮質ステロイド以外の成分は全て、それらの水溶液の無菌濾過により製造することができる。その結果得られた無菌懸濁液は、無菌および不活性ガス、例えば、窒素またはアルゴンの過剰圧下に保存するのがよく、無菌状態下、予め滅菌しておいた容器に充填し、例えば、吹込/充填/密封システムを使用して、無菌医薬製品を製造すべきである。
【0044】
本発明はさらに、鼻または肺の炎症状態の処置方法であって、そのような状態を患っている哺乳動物、とりわけ人間に、無菌糖質副腎皮質ステロイド、または糖質副腎皮質ステロイドを含む無菌製剤、好ましくは本発明により製造した無菌糖質副腎皮質ステロイドを含む無菌製剤の治療上有効な量を投与することによる方法を提供する。より具体的には、本発明は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、鼻炎、喘息、または他のアレルギーおよび/または炎症状態の処置方法であって、そのような状態を患っている哺乳動物、とりわけ人間に、無菌糖質副腎皮質ステロイド、または糖質副腎皮質ステロイドを含む無菌製剤、好ましくは本発明により製造した無菌糖質副腎皮質ステロイドを含む無菌製剤の治療上有効な量を投与することによる方法を提供する。
【実施例】
【0045】
実施例
次の実施例を言及することにより、本発明を説明するが、この実施例は、本発明を限定しようとするものではない。
【0046】
実施例1
実験を行って、超微粉砕化ブデソニド試料の化学的純度および物理的形態に対する熱処理の効果を測定した。
【0047】
乾燥滅菌器、Lytzen CB 1200型において、超微粉砕化ブデソニドの9つの50gのバッチ(以下の表1における試料番号2−10)を表1に示す熱処理にかけた。試料1は、そのような処理にかけず、標準試料として使用した。試料を処置した後、化学的および物理的特性を分析した。
【0048】
【表1】

【0049】
熱処理した後、ブデソニドのブルナウアー、エメット、およびテラー(BET)の表面値(Micrometrics Gemini 2375 装置を使用して測定した;British Standard 4359(1969)第1部も参照)において、または各々の試料に関するそのX線回折パターンにおいて、試料1と比較しても、変化は全くなかった。クールター計数器を使用して、各々の試料に関する大きさを質量中央径(MMD)として測定した。
【0050】
実施例2
ブデソニドの滅菌をステアリン酸カルシウムの滅菌と比較した。
【0051】
ブデソニドの試料0.5gおよびステアリン酸カルシウムの試料0.5gに、1.5×10の胞子を含むSteris Bacillus subtilis(globigii)(ロット番号 LG126B)胞子懸濁液0.1mlを各々播種した。Baxter Constant Temperature Oven中、実施例1における技術と同じ技術を使用して、各々の試料を110℃の温度に3時間10分さらした。試料の胞子個体数を測定して、得られた結果を以下の表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
熱処理の結果として、播種したブデソニドの試料においては、胞子のlog6.2以上の減少を得たが、播種したステアリン酸カルシウムの試料においては、減少が対数値が0.7未満であった。
【0054】
実施例3
試験を行って、天然に存在する様々な微生物の熱耐性を評価した。
【0055】
120mlの蓋をしていないポリプロピレン容器中、ブデソニド粉末の試料0.5gに、約10−10の生存可能なATCC微生物を各々播種した。各々の試料を110℃の温度に3時間10分さらした。試料の微生物個体数を熱処理前または後に測定して、得られた結果を以下の表3に示す。
【0056】
【表3】

1)珍しい桿菌種が見出され、10の希釈プレートにおいてグラム染色により確かめた。
【0057】
表3から明らかであるように、ブデソニドの110℃で3時間10分の熱処理は、大いに様々な微生物に有効な滅菌方法である。
【0058】
次の成分を混合することにより、実施例2の方法により滅菌して、米国薬局方 23/NF18、1995による無菌性基準を満たしている、微粉砕化ブデソニドを含んでなる製剤を製造した。
【0059】
【表4】

【0060】
ブデソニド以外の成分は全て、それらの水溶液の無菌濾過により製造し、無菌状態下、その結果得られた懸濁液の適当な量(約2ml)を予め滅菌しておいた5mlの容器に充填して、無菌製品を製造した。
【0061】
その結果得られた懸濁液は、無菌窒素の過剰圧下に保存するのがよく、吹込/充填/密封システムを使用して、容器に充填するのがよい。
【0062】
実施例5
次の成分を混合することにより、実施例2の方法により滅菌した微粉砕化ブデソニドを含んでなる無菌製剤を製造することができる。
【0063】
【表5】

【0064】
ブデソニド以外の成分は全て、それらの水溶液の無菌濾過により製造することができ、無菌状態下、その結果得られた懸濁液の適当な量(約2ml)を予め滅菌しておいた5mlの容器に充填して、無菌製品を製造した。
【0065】
その結果得られた懸濁液は、無菌窒素の過剰圧下に保存するのがよく、吹込/充填/密封システムを使用して、容器に充填するのがよい。
【0066】
実施例6
超微粉砕化ブデソニド5gに、Bacillus subtilisの胞子懸濁液約2mlを播種した。
【0067】
該物質および胞子懸濁液を混合して、55℃で約3時間乾燥させた。播種して乾燥させたブデソニドを、播種していない超微粉砕化ブデソニド20−40gと混合した。
【0068】
Heraeus ST 5060 加熱装置において、この試料の5g部分を100℃、110℃、または120℃で熱処理した。試料1gを各々の加熱温度での様々な加熱時間後に回収した。そのような試料1gを各々、希釈媒体(pH 7.2)10mlに移した。適当な希釈を0.1% ペプトン水溶液で行って、米国薬局方 23/NF18、1995、1681−1686頁、とりわけ1684頁によるポアプレート法により、胞子の数/gを測定した。
【0069】
栄養細胞を殺すために80℃で10分間加熱した試料において、熱処理前の胞子の数を測定した。
【0070】
結果を表6に示し、ここで、D値は、温度T(単位:℃)での熱処理前および後の胞子の数においてlog1の減少を得るのに必要とされる時間の量(単位:分)である。
【0071】
【表6】

100=41.5分;相関係数=−0.0996
これは、胞子の数においてlog6の減少を100℃の温度で得るには、6×41.5分かかることを意味する。
【0072】
【表7】

110=8.3分;相関係数=−0.995
これは、胞子の数においてlog6の減少を110℃の温度で得るには、6×8.3分かかることを意味する。
【0073】
【表8】

120=4.1分;相関係数=−0.998
これは、胞子の数においてlog6の減少を120℃の温度で得るには、6×4.1分かかることを意味する。
【0074】
実施例7
超微粉砕化ブデソニド、プレドニゾロン、およびベクロメタゾンジプロピオネート1g、並びにロフレポニド0.5gに、実施例6で使用した胞子懸濁液とは別の胞子懸濁液を播種した。
【0075】
試料を110℃で熱処理した。試料を様々な加熱時間後に回収した。米国薬局方 23/NF18、1995、1681−1686頁、とりわけ1684頁によるポアプレート法により、胞子の数/gを測定した。
【0076】
熱処理前および後の胞子の数から、胞子の減少の対数値および1/10への減少時間(指定された温度で微生物の数を1log減少させるのに必要な時間)を計算した。
【0077】
結果を表7に示す。
【0078】
【表9】

【0079】
表7は、本発明の方法が糖質副腎皮質ステロイドを含む試料中の胞子の数を減少させるのに非常に有効であることを明らかに示す。該方法は、ブデソニドおよびロフレポニドでとりわけ有効である。実際、ロフレポニドの試料1.0g全量に対して行った分析は、非常に短いサイクル時間(110℃で5分以上)で全消滅を与え、ここで、D110値を計算することはできなかった。
【0080】
比較実施例8
<照射>
プラスチック容器に保存した超微粉砕化ブデソニド物質約3gを照射した。その物質を2.5〜25kGyでのβ照射および8〜32kGyでのγ照射に暴露した。暴露した後、ブデソニド含量および関連物質の量を液体クロマトグラフィーにより測定した。ブデソニドの化学的安定性は、試験するための最も重要なパラメーターであるとみなされた。
【0081】
【表10】

i)分析を様々な日数で行って、標準を全ての場合に分析した。
【0082】
表8における結果から、ブデソニド含量は、βおよびγ照射に暴露した試料において減少することが理解され得る。とりわけγ照射した試料に関して、幾つかの新たな分解産物が観察された。加えて、βおよびγ照射した両方の試料に関する質量収支は乏しい。βまたはγ照射に暴露した場合、ブデソニド含量は0.5−4.6%まで減少した。
【0083】
超微粉砕化ブデソニドは、著しい化学分解により、βまたはγ照射では十分に滅菌することができないという結論が下され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100〜130℃の温度で熱処理することを含んでなる方法により滅菌した、少なくとも98.5重量%が純粋なブデソニドまたはそのエステル、アセタールもしくは塩である薬学的に許容される、微粉化粉末組成物。
【請求項2】
少なくとも98.5重量%が純粋なブデソニドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも99重量%が純粋なブデソニドまたはそのエステル、アセタールもしくは塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも99.2重量%が純粋なブデソニドまたはそのエステル、アセタールもしくは塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
質量中央径(MMD)が10μm未満の粒子の形である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
MMDが5μm未満の粒子の形である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
MMDが1μm未満の粒子の形である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも99重量%が純粋なブデソニドまたはそのエステル、アセタールもしくは塩である、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも99.2重量%が純粋なブデソニドまたはそのエステル、アセタールもしくは塩である、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも80%がMMDが10μm未満の粒子の形である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも99重量%が純粋なブデソニドまたはそのエステル、アセタールもしくは塩である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも99.2重量%が純粋なブデソニドまたはそのエステル、アセタールもしくは塩である、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも70%がMMDが7μm未満の粒子の形である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも99重量%が純粋なブデソニドまたはそのエステル、アセタールもしくは塩である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも99.2重量%が純粋なブデソニドまたはそのエステル、アセタールもしくは塩である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも60%がMMDが4μm未満の粒子の形である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも99重量%が純粋なブデソニドまたはそのエステル、アセタールもしくは塩である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも99.2重量%が純粋なブデソニドまたはそのエステル、アセタールもしくは塩である、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
ブデソニドが異性体的に純粋である、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
ブデソニドが(22R)ジアステレオ異性体の形である、請求項19に記載の組成物。

【公開番号】特開2010−70567(P2010−70567A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293641(P2009−293641)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【分割の表示】特願2000−520792(P2000−520792)の分割
【原出願日】平成10年11月11日(1998.11.11)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】