説明

物質の殺菌効果を試験するための方法および装置

洗浄サイクル後の洗濯物の微生物の付着の程度をチェックするための方法であり、規定の量の微生物生体を洗濯物と一緒に洗浄し、洗浄工程終了後にまだ生存している微生物の数を測定し、洗浄工程の効果または質を、微生物生体の開始時の量と洗浄工程後にまだ生存している微生物の量との差から測定することを特徴とする。この方法を実施するための装置はとりわけ容器(90)を含んでおり、洗浄液はこの容器(90)に進入できるが、微生物はこの容器から漏出できないように、微生物は保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物質の殺菌効果の試験方法、およびその方法を実施するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の方法は、例えば殺菌剤、消毒剤、洗剤、洗浄成分等の殺菌効果を試験するために使用することが可能である。この種の方法は、ウィーンのウォルター・コラー大学教授によってZbl. Bakt. Hyg., I. Abt. Orig. B176, 463-471 (1982)に発表されている。この方法では細菌用キャリアを利用している。これらは汚染されたバチスト布であり、2枚の薄膜フィルタの間に封入されている。このシステムは灌流チャンバとして機能する。灌流チャンバは水と水に溶解している活性剤をシステムの内部に透過できるが、細菌がシステムから流出することは防止する。洗浄工程終了後、システム内でまだ生存している細菌の数を数える。この計数は、それに必要な手段を備えた実験施設でのみ利用可能な手段によってのみ、実行可能である。従来のプレートカウント法を用いたこのような研究の結果は1、2日後にしか入手できず、実用の目的には時間がかかりすぎる。最新の分析装置を使用して計数をより迅速にすることは可能であるが、こういった装置の配備には莫大な投資が必要となる。
【発明の開示】
【0003】
本発明の目的は方法とこの方法を実施するための装置を提供するものであり、洗濯物に付着している微生物の程度についての情報、もしくは洗濯機で洗浄温度30〜60℃で1回洗浄した後の洗濯物の細菌汚染の程度(衛生状態)についての情報を得ることを可能とする。さらに、本方法および装置は、洗浄工程の質についての半定量的な情報も得られるような形で構成されるものとする。同時に、本方法および装置は、単純な形で操作可能であるように構成されるものとする。また、本方法はそういった研究の結果が可能な限り早く入手できるように構成されるものとする。本方法を実施するための装置は、使い捨て製品として構成されるものとする。
【0004】
導入部に記載のこの種の方法に関し、該目的は特許請求項1の特徴部によって定義される本発明により達成される。
【0005】
また、該目的は特許請求項8の特徴部によって定義される装置を使用して本発明により達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明の実施例を添付の図面を参照してより詳細に説明する。
図1は、物質1の殺菌効果を試験するための本発明の方法の手順を図式化したものである。この方法においては、既定もしくは規定の数の微生物生体を、試験対象である物質の作用にある特定の時間にわたって曝露する。該作用時間が終了した後、まだ生存している微生物の数を数え、このまだ生きている微生物の数から試験した物質の殺菌効果を導き出す。試験対象物質の作用に曝露する前に、微生物生体は液体中にいれられ、懸濁液を生成する。この液体は栄養溶液または生理食塩水であることが好都合である。試験対象物質は、溶液状もしくは懸濁液状で試験工程に提供されることが好都合である。また、これらは以下の記載において物質液88とも称される。
【0007】
また、本発明の方法を実施するための装置は、とりわけ槽85(図1)を含み、その中で試験法を行う。また、この試験槽は物質液88を収容している。洗浄工程の成分を試験する場合、例えば、洗濯機の洗浄槽が試験槽85、洗浄液が物質液88となる。また、本発明の装置は容器90(図1、3、4)を含み、試験微生物、特には規定の量の微生物を収容するために使用される。このような容器90は、モニター槽と称される場合もある。
【0008】
微生物容器またはモニター槽90は、中空の下部91と基本的に平坦な上部92とを含む。図3および4で図示の例において、容器90のこれらの構成部品91および92は円形の輪郭を有する。微生物は液体98に浮遊しており、液体98は容器90の下部91の内側に位置している。すでに記載したように、この液体は生理食塩水であることが好都合である。試験対象生物を収容するために使用する容器90の内部は、少なくとも1mlの容量を有していなくてはならない。
【0009】
容器下部91の上端部の外側にはネジ山93が設けられている。蓋92は、円盤型の本体89を含む。つば94は短い円筒形スリーブ状をしており、容器の蓋92のこの円盤型本体89の縁部から垂れ下がっている。この円筒形スリーブ94の内表面にもネジ山93が形成されているため、蓋92を下部91にネジ止めすることが可能である。蓋92の円盤型本体89には穴95が形成されており、物質と微生物との相互作用中、物質液はここを通って容器90の内部98に進入することができる。
【0010】
前述の相互作用中、試験微生物は中空の容器下部91の内部98内に封入され続けてなくてはならず、そうすることで試験結果が損なわれることがない。半透膜96は蓋92のプレート型本体89の下面全体、従って蓋92のプレート型本体89の穴95も覆っており、蓋92のプレート型本体89の下面もしくは内側に取り付けられている。半透膜96は、相互作用中に液状物質がモニター槽90の内部98に進入し微生物と相互作用できるようにと構成されている。しかしながら、半透膜96は試験微生物に対して不透性であるようにも構成されており、そのため微生物は蓋92の穴95を通って容器90から漏出することは出来ない。
【0011】
試験微生物が容器90の下部91と蓋92との間の隙間を通って、容器下部91内の窪みから漏出できないように、つば94が蓋92の円盤状本体89と接する、蓋92のコーナー部には密閉リング97が配置されている。よって、密閉リング97は蓋92の円盤状本体89と下部91の壁部の上端部との間で圧縮されて、ネジ部93の間の隙間は微生物に対して密閉効果を発揮する。
【0012】
また、容器90の内部に活性ユニットを設置することも想定でき、灌流チャンバ(図示せず)として構成される。この灌流チャンバは試験微生物用キャリアを含み、微生物は灌流チャンバ内に封入されている。さらに、灌流チャンバは前述の細孔を有する半透膜96を含んでおり、キャリア上に適用された試験対象生物を覆う。
【0013】
例えば、以下の細菌を本発明の方法において試験微生物として使用してもよい。
大腸菌(Escherichia coli)
カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)
エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)
エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)
表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)
枯草菌(Bacillus subtilis)
【0014】
純粋培地中の規定の量の微生物生体もしくは試験細菌生体を容器90内に入れ、この容器90を続いて閉鎖する。図1の場合、これはエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)を約10含む懸濁液である。モニター槽90の灌流チャンバ99内には、微生物を1種類のみ、封入する。モニター槽90を試験槽85内に入れ、モニター槽90内に封入された微生物は物質液88の作用に曝露される。試験液88と微生物98との相互作用中、試験槽85を動かす、例えば攪拌してもよく、試験槽85内部の温度はその変動が所望のプロファイルを含むように変更してもよく、相互作用時間は臨機応変に変化させてもよい。
【0015】
まだ生存している微生物の数に応じて試験微生物のデヒドロゲナーゼによって還元され有色生成物ホルマザンを生成するテトラゾリウム塩を、作用時間が経過した後、微生物の懸濁液98に添加する。続いて、ホルマザンによる光学濃度を測定する。測定結果から、試験した物質の殺菌効果、従ってまた試験物質88の作用時間を生き残った試験微生物の数が導き出される。
【0016】
試験工程の開始時点で生存していた微生物の数は通常、既知である。これは、この数それ自体が選択されたもの、もしくは測定されたものだからである。試験工程終了後、相互作用を生き残った微生物の数を前述の測定法によって測定する。この検出は間接的な方法を伴う。つまり、試験工程に生き残ったこれらの微生物の代謝選択性を測定する。まだ生存している微生物のみを記録することが重要である。これは、生存している微生物のみが後に増殖可能であり、かつ健康上のリスクとなるからである。
【0017】
測定を行うためにモニター槽90を開放し、微生物懸濁液98をモニター槽90から取り出す。微生物懸濁液98をキュベット86(図1)に入れる。これは、光度計(図示せず)に設置可能なキュベット86であってもよく、例えば、その容量は1.5mlである。キュベットは液状の培地を収容していてもよい。この培地は、それ自体は既知の微生物用の栄養溶液である。
【0018】
本方法の次の工程において、微生物懸濁液98内の例えば洗剤の残留物を中和または除去することが可能な物質を、懸濁液に添加してもよい。このような物質は、不活性化物質とも称される場合がある。例えば、モニター槽90からの200μlの生物98に、栄養溶液と不活性化物質から成る約600μlの液体を加えてもよい。微生物98をこの液体中に既定の時間、例えば1時間、既定の温度、例えば37℃で維持する。
【0019】
懸濁液をこのように前処理した後、もしくはこういった培養時間後、関連する洗浄サイクルの質の実際の評価となる本発明の問題の部分を行うことが出来る。この目的を達成するために、テトラゾリウム塩を懸濁液に添加する。生きている微生物は細菌酵素であるデヒドロゲナーゼを含有している。この酵素は、まだ生存している微生物の数に応じて、つまり懸濁液中の微生物生体の活性に応じて、テトラゾリウム塩を還元して有色生成物であるホルマザンを生成する。図2は、懸濁液98内でまだ生存している微生物の数に応じて、テトラゾリウム塩が有色の生成物に還元される過程を示した概略図である。微生物の活性、および従って相互作用工程を生き残った微生物の数は、生成されたホルマザンの量と結果として得られる色の強度から求められる。
【0020】
本発明の次の工程においては、ホルマザンによる光学濃度もしくは光強度を測定する。この測定は、光度計を用いて行ってもよい。光学濃度は、既定の波長、例えば450nmで測定してもよい。試験工程を生き延びた微生物の数および試験物質の殺菌効果についての結論は、測定結果から導き出すことが可能である。
【0021】
光学濃度の測定は、より正確な方法、特にはある特定の時間にわたってのホルマザンの増加量に基づいて行うことも可能である(図示せず)。懸濁液中の微生物をまず最初に第一の時間、例えば30分間にわたって特定の温度、例えば37℃で培養する。次に、光学濃度の第一測定を行う。その後、懸濁液中の微生物を引き続いて第二時間、例えば30分間にわたって特定の温度、例えば37℃で培養する。続いて、光学濃度の第二測定を行う。このようにして、ある特定の時間(例えば30分)にわたってのホルマザンの増加量が測定可能である。光学濃度の向上は、細菌の活性または細菌の数に直接的に相関している。相互作用工程を生き残った微生物の数、および従って試験物質の殺菌効果についての結論が、これら2つの測定結果の差から導き出される。
【0022】
洗浄成分を試験する場合、洗浄サイクル後の洗濯物に付着している細菌の程度もしくは、洗浄工程の衛生効果、つまり洗濯機85での洗浄工程中における細菌数の低下を測定する必要がある。このような試験のために、容器90は、洗浄工程中に著しいダメージを受けることなく洗濯機85の内部に設置できるように構成されている。容器90は機械的に非常に安定した材料から成り、機械的に加工可能、オートクレーブ対応(少なくとも+121℃/1気圧)であり、耐洗濯機およびタンブラー仕様である。容器の内部の容量は少なくとも1〜1.5mlでなくてはならず、サンプルもしくは試験材料を収容するために使用される。
【0023】
モニター槽90に既定もしくは規定の量の試験微生物98の生体を充填し、このモニター槽90を洗濯機85内に洗濯物とともにいれ、洗浄サイクルにかける。これにより試験微生物98は、洗濯物と同一の洗浄工程効果に曝露されることになる。洗濯機85は、例えば、家庭用洗濯機であっても工業用洗濯機であってもよい。洗浄サイクル終了後、まだ生きている微生物の数を上述の測定法の1つによって測定する。洗浄工程、もしくは洗浄工程で使用した洗剤、洗浄成分、洗浄方法の効果もしくは質は、洗浄サイクルにかけた微生物生体の開始時の既定量と、洗浄サイクル後にまだ生存している微生物の量の差から導き出される。洗浄サイクル後もまだ生きている微生物が少なければ少ないほど洗浄サイクルの効果は高く、洗浄サイクル後の洗濯物の細菌の付着程度は低く、洗浄工程の衛生効果は大きい。
【0024】
本発明の装置の第二の実施例が図5〜8に表されている。この装置は容器1を含み、中空の本体2を含むように設計されている。この容器本体2は、例えば、直平方六面体、立方体、球等であってもよい。図示した例においては、容器1の本体2は円盤状である。本発明の装置のこの実施例において、容器1の中空本体2は上部3および下部4を含み、容器1のハーフ部3、4とも称される場合がある。この実施例において、容器ハーフ部3、4のそれぞれの本体は円筒形の横面5を有した厚い円盤状である。容器ハーフ部3、4のそれぞれの本体は、さらに2つの互いに対向する円盤状の広表面6、7を互いに平行に含む。窪み8または9が容器ハーフ部3、4のそれぞれの広表面6、7に形成されている。容器ハーフ部3、4の1つの窪み8、9の深さは円盤状容器ハーフ部3、4の厚みより薄いため、特には、容器ハーフ部3、4のそれぞれにおける窪み8、9の底の間には仕切り壁10がある。
【0025】
円周領域において、容器ハーフ部3または4の1つの各窪み8および9は、環状端部11によって囲まれている。この端部は、内部に側面37を有する。仕切り壁10は関連する円盤3または4の端部11と一体化している。上述したように中空である容器ハーフ部3、4の環状端部11の互いに対向するセクション12および13には、ねじを用いて容器ハーフ部3、4が互いに取り外し可能に連結可能なようにそれ自体は既知のネジ山が設けられている。このネジ山は、好ましくは、一回転半するだけでハウジング2を開閉できるように構成されている。
【0026】
開口部14は、各円盤状容器ハーフ部3、4における窪み8、9を流体的に互いに連結しており、関連する円盤3または4の仕切り壁10に形成されている。図の場合において、これらの連結開口部14は仕切り壁10のスリットとして構成されており、仕切り壁10の中心から放射線状に延びている。これらのスリット14もしくはその代替物に加え、異なる形状の連結開口部14を仕切り壁10に形成してもよい。容器1の内部は、容器ハーフ部3および4において対向して開放された、内側に形成された窪み9によって郭成されている。該開口部14は容器1の内部9をその周囲に、特には容器ハーフ部3および4の外側に位置する窪み8に連結している。
【0027】
容器1の内部9は、少なくとも1〜1.5mlの容積を有するべきであり、サンプル材料を収容するために使用される。本発明の装置の活性ユニットもしくは灌流チャンバ20は内部9内に置かれる。この灌流チャンバ20は、とりわけ、試験微生物用キャリア15を含む。このキャリア15は、例えば、紙片である。あるいは、キャリア15は繊維材料、例えば綿から成る布として構成される。キャリア15は、図示のケースにおいては円盤状をしており、例えば、上述の材料の1つから成り、この円盤は環状の縁部を有する。この円盤状キャリア15の直径は、その縁部が、容器1の窪み9の実質的に円筒状の内壁37に当たるような寸法になっている。この縁領域37において、Oリング16または17がそれぞれキャリア15の両側に位置している。これらのOリング16、17の断面の直径は、Oリング16および17が、試験微生物用のキャリア15と容器ハーフ部3、4における内部窪み9の底35との間で圧縮されるような寸法に構成されているため、容器窪み9の円筒形内壁37とキャリア15の縁部との間を液体が流れることがない。
【0028】
また、本発明の灌流チャンバ20はディスク21および22を含み(図3)、いわゆる滅菌フィルタに通常使用される材料から成る。これらのフィルタの細孔径は、例えば、0.2〜0.4マイクロメーターである。滅菌フィルタは通常ニトロセルロースから成り、非常に脆い。よって、機械の振動で起こる類の機械的負荷下においては損傷を受ける危険性が高い。ディスク21および22は基本的にキャリア15と同じ直径を有するため、容器1の内部9内に同様に格納可能である。フィルタディスク21および22は、試験微生物用キャリア15に対してと同様に、実質的に互いに平行に位置している。
【0029】
フィルタディスク21および22はそれぞれ試験微生物用キャリア15の広表面側の1つに割り当てられている。図6に図示のケースにおいて、各フィルタディスク21または22は関連する容器ハーフ部3または4の内部窪み9の底35とそこに取り付けられたOリング16または17との間に位置している。この場合、フィルタディスク21および22のそれぞれは、容器ハーフ部3または4の各仕切り壁10の内側または底35に取り付けられており、よって容器1の内部9の仕切り壁10において開口部14を覆っている。また、フィルタディスク21および22のそれぞれが試験微生物用キャリア15の広表面側の1つに直接接触しており、よってOリング16および17が関連するフィルタディスク21または22の外側と関連する内部窪み9の底35との間に位置することも想定可能である。
【0030】
図8は、本発明の装置の第二の実施例の分解図である。上述したように、本発明の装置のこの第二の実施例は、洗濯機にいれることを意図したものである。
【0031】
図9は本発明の装置の第三の実施例を示すものである。本発明の装置のこの実施例は、洗浄液またはその他の液体が本発明の装置内を流れるだけの場合に使用することが出来る。内部において、この第三の装置は、本発明の装置の第二の実施例と本質的に同様に構成されている。第二実施例における外側陥凹部もしくは窪み8の代わりに、第三の実施例の容器ハーフ部3または4のそれぞれには吐出口24が設けられている。各吐出口24は各容器ハーフ部3または4の内部9に流体的に連結されている。それ自体は既知の接管25はそのねじをきった端部でもって各吐出口24にネジ止めすることが可能である。接管25の反対側の端部はチューブに差込接続できるように構成されており、図9によると、これを通して液体を装置に導入もしくは装置から排出することが可能である。
【0032】
図10は本発明の装置のさらに別の可能な実施例を示す。この装置の灌流チャンバ30は、同様に、上述の微生物用キャリア15を含む。しかしながら、このキャリア15はこの灌流チャンバ30のさらに別の部品であるところのスリーブ31内に封入されている。スリーブ31は基本的にはチューブ状をしている。透析チューブの製造に通常用いられる材料から成る。このケースにおいて、こういった透析チューブ31は、可能な限り大きい細孔を有さなくてはならない。例えば再生セルロースから成るチューブ31の最大細孔径は、50000ダルトンである。よって、上述した滅菌フィルタに比べて、流体交換はこれらの薄膜を経由して著しく緩慢に行われる。こういった薄膜チューブ31を使用する場合、微生物はキャリア15上に粉末としてもしくは同様に液体に分散させた状態で置かれる。
【0033】
チューブ31はその端部領域、特にはキャリア15から適切な位置において、細菌を密封する形で連結される。これは、例えば、クランプを用いて行ってもよい。細孔径が12000ダルトンではあるが、PVDFから成る溶接可能な透析チューブ31も使用可能である。さらに、このチューブには柔軟性がなく、セルロース薄膜チューブ31のような重負荷には耐えることができない。さらに、図示したケースからわかるように、チューブ31の端部は適切なコード32で縛ることによって閉じられている。
【0034】
チューブ31の材料の強度は比較的低いため、チューブ31は安定性のある材料から成る開放ハウジング33内に配置されている。このハウジング33は、大きなスリットもしくは穴を備えた箱状のプラスチック槽として構成されていてもよい。図示したケースにおいて、ハウジング33は円筒の横面として構成されており、この円筒表面の端部は、洗浄液がハウジング33を通って流れることができるように開放されている。このハウジング33内に配置された該灌流チャンバ30とともに、このハウジング33を洗濯機等に入れる。ハウジング33の底領域は開放されているため、洗浄液はハウジングを通って流れることができ、これによりスリーブ31内のキャリア15上の微生物にまで到達する。灌流チャンバ30がハウジング33から滑り落ちるのを防止するために、灌流チャンバ30はハウジング33の内部にそれ自体は既知の保持手段34によって保持されている。前述のコード32の、スリーブ31を超えて延びる部分を保持手段34として使用してもよく、その端部はハウジング33の壁上にもしくは壁内に留め付けられている。
【0035】
図11は、本発明の装置50の第五実施例の蓋51の全体図である。図12は、本発明の装置50のこの第五実施例の下部52の断面図である。断面図において、蓋51の本体および下部52の本体はU字型の断面を有する。蓋51の横壁内側および下部52の横壁外側には、上述した互いに対応するネジの半分が設けられているため、蓋51を下部52にネジ止めすることが出来る。蓋51には上述した開口部14が設けられている。図示したケースにおいて、細孔を有する半透膜53は、キャリア54上に支持されており、この構成は下部52の窪み55内部に位置している。薄膜53は水および洗剤に対して透過性である。
【0036】
図13は、本発明の装置の第六実施例の側面図である。この実施例は、同様に下部62に加えて蓋61を含む。基本的に、蓋61および下部62は本装置の第五実施例の蓋51と下部52と同様に設計されている。
【0037】
図14は、図13に図示の本発明の装置の実施例の下部62の断面図である。この下部62の内壁73は、球状キャップ表面の形状を有している。球状キャップ底部の中心領域74から下部62の上端75に向って延びるスリット型開口部14が、こういった下部62の壁に形成されている。放射線状に突出するつば76が、下部62の外側に球状キャップ底部74とほぼ水平に成形されている。
【0038】
図15および16は、蓋61のさらに別の可能な実施例を示す。図15は蓋61の断面図である。図16は、蓋61を下から、もしくは内側から見た図である。底面69に向って垂直かつ互いに平行に延びている穿孔67は、底66の表面全体に分散しており、蓋61の底66に形成されている。これらの穿孔67は、蓋61の外部広表面68と底面69との間に延びている。底面69は平坦である。その内部にシール71が位置しているところの環状溝70は、底面69の領域にのみ形成される。このシール71は、Oリング状に構成してもよい。溝70の直径は、蓋61を下部62上にネジ止めした場合、この溝70の底が下部62の上端部75に面するような寸法に構成されている。結果として、環状シール71も下部62の上端部に面し、下部62の上端部と溝70の底との間で圧縮される。
【0039】
この容器60の内部73内には、本装置の活性ユニットまたは灌流チャンバ80がある。また、この灌流チャンバ80は、とりわけ、ディスク81を含み、いわゆる滅菌フィルタに通常使用される材料から成る。この滅菌フィルタの細孔径は、例えば、0.2〜0.4マイクロメーターである。通常、滅菌フィルタはニトロセルロースから成り、非常に脆い。よって、機械の振動で起こるような機械的負荷においては損傷を受ける危険性が高い。そのため、こういったディスク81は、本発明の方法を実施する際、ここで開示の容器の1つに入れなくてはならない。
【0040】
ディスク81は、蓋61の底部領域における内部と基本的に同じ直径を有しているため、ディスク81を蓋61の内部に格納することが可能である。その端部はシール71と接触している。蓋61を容器の下部62にネジ止めした後、このディスク81の端部はともに容器下部62の上端部75とシール71との間で密閉するように圧迫される。灌流チャンバ80はさらに試験微生物用のキャリアを含む。このキャリアは、上述したタイプの1つであってもよい。このキャリアは、容器60の、球状キャップ型の内部73に面しているディスク81と同じ面に適用する。
【0041】
欧州標準規格1276号によっても規定される、以下の試験用細菌が実験室での洗浄試験によく使用される。
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
大腸菌(Escherichia coli)
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)
エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)
【0042】
欧州標準規格1276号によって規定されてはいないが、以下の試験用細菌が実験室での洗浄試験によく使用される。
エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis(Streptococcus faecalis))
エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)
毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)
【0043】
本方法においては、規定の量の試験用細菌の微生物生体を純粋培地に入れたものを、キャリア上に置く。使用する試験用細菌は液体中に浮遊させても、粉末状であってもよい。液体の液滴もしくは既定の量の粉末をキャリア上に置く。洗浄工程にかける前に、微生物をキャリア上に固定させてもよい。これは、例えばアルギン酸ゲル等のゲルを用いて行ってもよい。細菌は該ゲルによって布片上にしっかりと付着されるため、キャリア上に固定されたままになる。さらに、例えばフリーズドライによって乾燥させることで、洗浄工程にかける前に微生物を保護もしくは安定化してもよい。
【0044】
このようにして準備したキャリアを灌流チャンバ内に細菌を密封する形で閉鎖する。灌流チャンバには微生物を1種類だけ封入する。灌流チャンバは、微生物は灌流チャンバ外に漏出することは出来ないが、洗浄液は微生物と接触できるような漏れ防止構造となっている。灌流チャンバを容器内に設置すると、微生物は従って容器内に封入される。洗濯物と一緒に容器を家庭用洗濯機に入れる。灌流チャンバ30が上述のチューブとして構成されている場合、まずチューブをハウジング33内に取付け、その後、ハウジング33を洗濯物と一緒に家庭用洗濯機内に入れ、洗濯物と一緒に洗浄する。
【0045】
洗浄工程終了後、キャリアを容器の灌流チャンバから取り出し、洗浄工程終了後にまだ生存している微生物の数を測定する。洗浄工程の効果もしくは質は、微生物生体の開始時の数と、洗浄工程後にまだ生存している微生物の数との差から導き出される。
【0046】
洗浄後の検出中、生きている細胞のみを記録することが重要である。これは、生存している微生物のみが後に増殖可能であり、かつ健康上のリスクとなるからである。微生物用にキャリア、例えば丸い布片を使用する場合、このキャリアをまずケージもしくは容器から取り出し、生理食塩水で洗浄する。死亡率は、洗浄工程もしくは洗浄サイクル直後に、例えば変色指示薬を用いて読み取ることが可能である。この検出は、比較的単純な方法で行うことが可能である。あるいは、死亡率は、ATP活性を用いて測定してもよい。ATPの測定は、液体を直接的に測定もしくはルミノメーターで綿棒を使用することで行う。
【0047】
洗浄工程で生き残った微生物の数は、いわゆる遺伝子プローブを用いて測定してもよい。遺伝子プローブは、例えばVIT-Vermicon社によって製造されている。さらに、生存している微生物はその他の方法、例えばインピーダンス(BioMerieux社またはSyLab社製)、光電気的計数(FOSS社製)、固相サイトメトリ(ChemScan社製)、免疫磁気分離法/IMS(DYNAL社製)によって測定することが出来る。
【0048】
原理上は、液状のサンプルを寒天プレート上に乗せて培養することも可能である。しかしながら、この方法では結果が出るのに2、3日かかる。一方、そういった評価法の結果は正確である。この方法の人件費は非常に高い。
【0049】
洗浄工程の質は、洗浄工程開始時に生存していた微生物数と、洗浄工程終了後にまだ生存していた微生物の数との比に基づいて測定する。こういった評価は、コンピュータで適切なプログラムを用いて行うことも可能である。
【0050】
多くの製造業者が、微生物を効果的に退治することを意図して漂白および/または同時殺菌作用を備えた物質を洗剤に添加する。これらの製造業者は、少なくとも自分達のために、こういった添加物が洗浄中に実際に細菌を殺すのかどうか、またはどの程度まで細菌が死ぬのかを知りたいと考えている。本発明の方法および装置は、企業の内部統制のために、洗浄工程の効果に加えて、洗剤に使用した物質の効果を可能な限り単純かつ迅速な形でチェックすることを可能にするようなものでなくてはならない。こういった方法および装置は、クリーニング工場および関連する研究施設だけでなく、洗剤、漂白および洗濯機製造業者が使用してもよい。また、想定した試験用洗濯物は、例えば、60℃より高い温度で洗うことのできないいずれの繊維材料であってもよい。これらは、例えば、変色防止をしていない繊維、ウール、絹、合成繊維等である。さらに、この方法および装置は、クリーニング工場における洗浄工程の微生物学的観点からの評価に加え、機械、プログラム、洗剤等の新製品の微生物学的な評価に適している。最低限の準備作業のみで、本発明の装置は、時には洗濯機の洗浄サイクルにおける細菌死亡率についての半定量的な情報さえも、数時間で提供することが可能である。さらに、本発明の装置は実際の洗浄工程および温度、時間、洗剤、機械的負荷等の対応する影響因子についての迅速な評価を可能とする。洗浄工程中に機械からサンプルを採取する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の方法の図式である。
【図2】本方法で使用する物質の一部の機能性を表す。
【図3】モニター槽の第一の実施例の垂直断面図であり、本方法を実施するための装置の部品の1つを表す。
【図4】図3の槽またはチャンバの平面図である。
【図5】稼動可能な状態の、槽の第二の実施例の全体図である。
【図6】図5の槽の概略垂直断面図である。
【図7】図5の装置の中心部の概略全体図である。
【図8】本発明の装置の第二の実施例の主要部の分解図である。
【図9】本発明の装置の第三の実施例の分解図である。
【図10】本発明の装置の第四の実施例の概略図である。
【図11】本発明の装置の第五の実施例の蓋の全体図である。
【図12】本発明の装置の第五の実施例の下部の垂直断面図である。
【図13】本発明の装置の第六の実施例の側面図である。
【図14】図13に図示の本発明の装置の実施例の下部の垂直断面図である。
【図15】図13に図示の本発明の装置の実施例の蓋の垂直断面図である。
【図16】図15の蓋を下からもしくは内部から見た図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既定もしくは規定の数の微生物生体を試験対象である物質の作用に、ある特定の時間にわたって曝露し、該作用時間の終了後にまだ生存している微生物の数を測定し、試験物質の殺菌効果を測定結果から導き出すことを特徴とする、物質の殺菌効果の試験方法。
【請求項2】
規定の量の微生物生体を洗濯物と一緒に洗浄し、洗浄工程終了後にまだ生存している微生物の数を測定し、洗浄工程の効果または質を、微生物生体の開始時の量と洗浄工程後にまだ生存している微生物の量との差から測定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
規定の量の微生物をキャリア上に例えば液滴または粉末状で置き、キャリアを洗浄工程にかける前に微生物をキャリア上に、例えばゲルを用いて固定し、および/またはキャリアを洗浄工程にかけるまえに微生物を例えばフリーズドライすることで保護することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
試験対象物質の作用に曝露する前に、微生物生体を液体中に入れ懸濁液を生成し、この液体が栄養溶液であってもよく、試験対象物質は溶液または懸濁液の形態で試験工程にかけることができ、作用時間の経過後、テトラゾリウム塩を微生物の懸濁液に添加し、テトラゾリウム塩はまだ生存している微生物の数に応じて試験微生物のデヒドロゲナーゼ酵素によって還元されて有色生成物ホルマザンを生成し、ホルマザンによる光学濃度を続いて測定し、試験物質の殺菌効果、従ってまた試験物質の作用時間を生き残った試験微生物の数についての結論が測定結果から導き出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
試験物質の作用時間を生き残った微生物の数についての結論は、培養時間後のホルマザンの増加量に基づき導きだされ、光学濃度の測定は懸濁液中または栄養溶液中の微生物を第一の時間、例えば30分間培養し、その後、光学濃度の第一の測定を行い、懸濁液または栄養溶液中の微生物を続いて第二の時間、例えば30分間培養し、続いて光学濃度の第二の測定を行い、光学濃度の測定結果の違いから試験物質の殺菌効果についての結論を導き出すことによって行われることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
テトラゾリウム塩を懸濁液に添加する前に、洗剤残留物を除去または中和可能な物質をこの懸濁液に添加し、微生物をこの懸濁液に既定の時間、例えば1時間にわたって既定の温度、例えば37℃で維持し、テトラゾリウム塩は懸濁液のこの培養時間が経過するまで添加しないことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
試験微生物を封入する容器を提供し、この容器が洗浄液はその内部の微生物と接触できるが微生物は洗浄工程中に容器から漏出できないように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法を実施するための装置。
【請求項8】
容器が中空の本体を含み、この本体が容器の内部とその周囲とを連結する少なくとも1つの開口部を有し、開口部はある材料から成る壁によって覆われており、規定の量の微生物はキャリア上に置かれ、このキャリアは容器の内部に位置されることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
容器が実質的に円盤状であり、容器の中空円盤状本体の広表面の少なくとも1つに少なくとも1つの開口部が形成されることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
中空容器本体の少なくとも1つの広表面に、少なくとも1つの開口部をそれぞれ形成し、容器の各広表面壁の内側に滅菌フィルタを取り付け、微生物は実質的に互いに平行に配置されたこれら2枚の滅菌フィルタの間に位置することを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
光度計と、容器(90)から取り出した懸濁液を収容するためのキュベットをさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−531533(P2007−531533A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506634(P2007−506634)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000197
【国際公開番号】WO2005/098019
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(505355818)エンパ テストマテリアリエン アーゲー (3)
【氏名又は名称原語表記】EMPA TESTMATERIALIEN AG
【Fターム(参考)】