説明

物質表面に粒子を埋め込む方法及びそれを用いた粒子及び物質の表面酸化及び窒化方法

【課題】
粒子流あるいは粒子噴流を用いて粒子を物質表面に埋め込んで、表面度平坦度、粒子の付着強度、埋め込み痕の形状、密度などの性状を向上させる方法を提供する。
【解決手段】
レーザーなどの光子熱源やジュール熱源を使い所定の物質表面を変形し易くして、粒子流あるいは噴流粒子を物質表面に噴射して粒子を埋め込むことにより加工後の表面平坦度、粒子の付着強度を高める。また、ジュール熱源条件やレーザーの出力、レーザー径、波長などを変化させて、埋め込み痕の形状、密度などの性状を向上させることにより、本発明の方法で作製されたデバイスの機能、性能の向上を高める方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子噴流を使い物質表面上に粒子を埋め込みする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
砂、ガラスビーズなどの粒子を圧縮空気の噴射を用いて細管に導入して、噴流させ高速で粒子を物質表面に当てると切削加工することができる。この技術をサンドブラスト技術と呼んでいる。当該技術を用いて、粒径、粒子の物性、物質の種類、流速などの諸条件により物質表面に粒子を付着させることもできる。
【0003】
主にYAGレーザーのもつエネルギーを熱源として使い金属同士の溶接、切断加工、穴あけ加工などを行うことができ、スポット状に金属を溶融状態にすることもできる。また、主にCO2レーザーは樹脂に対して、同様のことが可能である。
【0004】
【特許文献1】特開平9−260381号公報
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics 23(1984)L910−L912.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サンドブラスト技術を応用して、粒子を付着させて薄膜を作製することができるが、粒子の連結で形成されたその薄膜は物質表面と単純な物理吸着をしているため物質表面と付着強度が必ずしも強くないという問題を抱えていた。また、物質面上に直接薄膜を形成しているため表面が凸状態になっており、異物との接触により薄膜が損傷する可能性ある。さらに、粒子噴流が基板に衝突して八方に粒子が広がるため、薄膜形成時の粒子密度は小さくなってしまうという問題を抱えていた。また、付着工程を連続して得られる線幅は噴射口径などを変えて行う以外に容易に変化させることができないという問題を抱えていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
物質表面全体、あるいは所定の部分を変形し易くするか、あるいは所定の部分のみ溶融直下状態にしておき、噴流粒子を変形し易い、あるいは溶融直下状態にある部分に粒子を埋め込む工程を連続的にすることにより薄膜を形成させることができる。物質表面が変形し易くするため、一般には樹脂やガラスの場合、ガラス軟化点近傍あるいは溶融直下の温度にする。その際、レーザー、ハロゲンランプなどの光子熱源やジュール熱源あるいはそれらを併用して物質表面全体あるいは埋め込みする部分を加熱する。金属や半導体等の場合は、レーザー熱源などで所定の部分を溶融直下状態にする。物質表面上を変形しやすい物質にしておいても同様に粒子を埋め込むことができる。その埋め込み工程を連続して行うことにより埋め込み部分を線上にも平面状にもすることができる。物質表面上に到達するときの噴流粒子の速度を変えることにより、埋め込み痕の大きさ、深さ、粒子密度を変化させることができる。埋め込み部分の変形能を温度などで変化させても同様の効果が期待できる。このように、本発明は、物質表面での粒子の衝突により所定の溶融直下状態から溶融状態になり物理吸着だけでなく化学吸着して埋め込まれるようにすることを可能にし、あるいは変形して埋め込まれるためひっ掛り効果すなわちアンカー効果が高められ付着強度を格段に高めることができる。粒子が埋め込まれる為、異物との接触による損傷は避けられる。また、上記のように諸条件を変えることにより、埋め込まれた部分の粒子密度、埋め込み痕の大きさ、深さを変えることができる。よって、本発明は、付着強度を格段に高め、異物接触による損傷を避けることができ、粒子密度など従来の付着の方法で抱えていた問題を解決する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
粒子あるいは噴流粒子を所定の部分に埋め込むことができ、その工程を連続して行うことにより物質表面に線上あるいは平面上に埋め込み部分を形成することを可能にする。本発明において物理吸着だけでなく化学吸着、アンカー効果を引き出すことができ付着効果が格段に高められる。また、物質表面状態、熱源条件、粒子あるいは噴流粒子の条件を変えることにより、埋め込み痕の形状、粒子密度を変化させることができる。よって、本発明の方法により、粒子流あるいは粒子噴流を用いた付着技術を格段に向上させることが可能になる。また、作製されたデバイスや表面性状を格段に向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
電子デバイス、センサー、プリント基板の配線をマスクレスで作製するとき使用する。
【実施例1】
【0009】
平均粒径を200から500nmに調整したマグネタイトの粉末を、図1の粒子噴射部分2に導入し、エア圧力0.1MPaから0.7MPaでノズル3から、ポリアセタールからなる基板4に噴射した。この際、ノズル3の先端と基板4との距離を3mmに保持し、レーザー熱源1を用いて、ビーム径2.5mmのレーザー光線を基板4の所要の部分に照射し、基板4を0.5mm/sの速さで移動した。
【実施例2】
【0010】
エア圧力0.1MPaと0.7MPaで粒子噴流を基板4に当てて、埋め込み痕を走査型電子顕微鏡で観察した画像を図2に示す。この際、予め基板温度を摂氏90度に昇温して、レーザー1を照射して埋め込んだ例である。図のように、圧力の大きさにより埋め込み痕が変化し、密度も変化している。
【産業上の利用可能性】
【0011】
サンドブラスト技術は物質表面の切削加工に多用されている。その技術を応用して物質表面に付着させる技術も開発段階にある。この付着加工は真空蒸着のように真空にせず空気中でしかもマスクレスで薄膜を作れることから需要が高まっている。しかし、薄膜の粒子密度が小さくなり粒子本来の性質を損ねてしまうため実用上大きな問題を抱えていたが、本発明の方法により粒子密度を変化させることができ粒子本来の性質だけでなく、量子サイズ効果などの発現を可能にすることができ、作製された埋め込みデバイスの高機能化、高性能化を可能にすることができる。さらに付着強度が向上し、異物接触による損傷をさけることができるので品質向上が期待される。このように、本発明の方法は磁気抵抗素子、光伝導素子などのセンサーなどの作製において、製品の品質向上、高機能化、高性能化、信頼性向上を実現させることができ、また、蛍光物質をプレート表面に描画する場合に本発明の方法を適用させることにより耐久性が向上することができるため利用の価値が高くその利用の可能性は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】システムの全体図である。
【図2】埋め込み痕の走査型電子顕微鏡像で、Aは供給エア圧力0.1MPaで粒子噴流にした時の埋め込み痕、Bは供給エア圧力0.7MPaで粒子噴流にした時の埋め込み痕である。Cは供給エア0.7MPaで0.5mm/sの速さでポリアセタール基板を移動させた時のライン状の埋め込み痕である。
【符号の説明】
【0013】
1:レーザー熱源
2:粒子噴射部分
3:ノズル
4:基板
5:埋め込み痕
6:レーザー光線
7:粒子噴流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質の表面に粒子噴流を衝突させて、前記粒子噴流の運動エネルギーにより、前記粒子を前記物質の表面に埋め込む方法であって、前記物質の表面における前記粒子を埋め込む部分を、前記物質の融点または軟化温度近傍まで昇温させることにより変形可能な状態で、前記粒子噴流を衝突させることを特徴とする物質の表面に粒子を埋め込む方法。
【請求項2】
前記物質は金属、絶縁体、半導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の物質の表面に粒子を埋め込む方法。
【請求項3】
前記物質は、硬度あるいは変形しやすさの少なくともいずれかの異なる2種の物質からなり、表面の方が硬度が小さいあるいは変形しやすい2層構造、または、表面から内部に向かって硬度あるいは変形しにくさが増加する傾斜構造を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の物質の表面に粒子を埋め込む方法。
【請求項4】
光子熱源及びジュール熱の少なくともいずれかの加熱源を用いて、前記物質の表面における前記粒子を埋め込む部分を、予め昇温することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の粒子を物質の表面に埋め込む方法。
【請求項5】
前記光子熱源は、レーザー、ハロゲンランプ、水銀ランプ、紫外線ランプから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項4に記載の物質の表面に粒子を埋め込む方法。
【請求項6】
前記物質の表面に酸素あるいは空気雰囲気中で粒子噴流の運動エネルギーによる粒子表面あるいは粒子が衝突する部分の酸化をさせながら粒子の埋め込みを行うことを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれに記載の物質の表面に粒子を埋め込みあるいは付着の少なくともいずれかをさせる方法。
【請求項7】
前記物質の表面に窒素あるいは空気雰囲気中で粒子噴流の運動エネルギーによる粒子表面あるいは粒子が衝突する部分を窒化させながら粒子の埋め込みを行うことを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれに記載の物質の表面に粒子を埋め込みあるいは付着の少なくともいずれかをさせる方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−235427(P2009−235427A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78874(P2008−78874)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】