説明

特にクランク軸加工のためのカッティングインサート

本発明は、カッティングインサート(10)であって、基本体を備えており、基本体が、支持面と、支持面に対して間隔を有して配置されたカバー面と、支持面とカバー面とを結合する側面(101,102)とを備えており、2つまたは3つ以上の隣接する面が、カッティングエッジ(103,104,105)を形成している形式のものに関する。本発明によれば、支持面が、カッティングインサート(10)とは異なる、別の切削作業に適したジオメトリを有するカッティングチップ(11)の支持面と着脱不能に結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術から、切削操作のための多数のカッティングインサート構造が公知であり、カッティングインサートジオメトリは、切削作業(穿孔、旋盤加工またはフライス加工)、加工しようとする工作物、ならびに工作物の形状付与に応じて調整される。従来技術から公知のカッティングインサートは、いわゆるスローアウェイチップとして形成されており、つまりカッティングインサートは、相前後して使用される複数の刃部を備えている。スローアウェイチップの基体形状に応じて、4つまたは8つまでの使用可能なカッティングエッジが形成される。実質的に正方形の切削面を有する、プラスの逃げ角を有するカッティングインサートでは、使用可能な4つの刃部が形成される。8つまでの使用可能なカッティングエッジの例として、ドイツ連邦共和国特許第19704931号明細書におけるカッティングインサートが参照され、このカッティングインサートは、比較的大きな2つの縦面を有しており、縦面は、それぞれ中央で縦軸線に沿って突出するウェブを備えている。この縦面を画成するカッティングエッジは、各端部および上面および下面の比較的短い丸み付けられたエッジと、70°〜90°の角度を成す。そのような複数のカッティングインサートは、フライス加工工具に緊締され、クランク軸加工のために用いられる。クランク軸のいわゆる外側フライス加工に際して、回転する側フライスは、回転駆動されるクランク軸に半径方向でセットされ、つまり押し出される。半径方向または接線方向で緊締されたカッティングインサートによって、ジャーナル(ピン)直径、フランク、オイルカラー、アンダカットを製作するために様々なステップが役立つ。主にクランク軸加工に際して、荒削り、アンダカット製作、ジャーナル直径製作およびオイルカラー製作のためのスローアウェイチップは、種々異なっている。欧州特許出願公開第0830228号明細書の図3および図4には、ジャーナル直径加工ならびにアンダカット加工に必要なカッティングインサートの典型的な形状が示されている。種々異なるカッティングインサートは、荒削りまたは精密削りのための平面フライスにも用いられる。
【0002】
加工に用いられる工具が使用可能な多数のカッティングエッジを有している場合、工作物に関するコストは削減することができる。カッティングインサートの構成によって得られる、積極的に使用可能なカッティングエッジの数は、従来技術によれば、もはや改善の余地がない。様々な切削作業にそれぞれ必要なスローアウェイチップに起因して、保管は面倒であり、コストも嵩む。
【0003】
したがって本発明の課題は、カッティングインサートの機能性を改善することである。
【0004】
この課題は、請求項1に記載のカッティングインサートによって解決される。このカッティングインサートは、基本体を備えており、基本体が、支持面と、支持面に対して間隔を有して配置されたカバー面と、支持面とカバー面とを結合する側面とを備えており、2つまたは3つ以上の隣接する面が、カッティングエッジを形成している。記載の支持面は、カッティングインサートとは異なる、別の切削作業に適したジオメトリを有するカッティングチップの支持面と着脱不能に結合されている。換言すると、本発明によるカッティングインサートは、原則的に異なる2つの切削工具から組み合わされており、これらの切削工具は、支持面で、互いに結合されている。これによって得られる利点によれば、記載の組み合わせ式カッティングインサートによって、種々異なる切削作業を行うことができる。本発明によるカッティングインサートは、極めて安価に製作することができ、保管に掛かるコストが削減される。
【0005】
有利には、焼結による両方の支持面の着脱不能な結合によって、一体的な本体が形成されるようになっている。カッティングチップを備えたカッティングインサートは、粉末冶金式に固めて圧粉体が形成され、そのあとで圧粉体に、相対して位置する支持面が焼結される。カッティングインサートは、緊締ねじを収容するための孔を備えている。この孔は、カバー面から、これとは反対側のカバー面に延びている。
【0006】
どのようにしてカッティングインサートを使用するかに応じて、設定されたカッタジオメトリに応じて、半径方向または軸方向で、たとえばフライスに緊締することができる
具体的な第1の実施形態では、カッティングチップは、平面図でみて、有利には矩形の、切削面として形成されたカバー面を備えている。カッティングインサート自体は、クランク軸フライス加工においてアンダカットを成形するための、アーチ状に湾曲したカッティングエッジを備えた、それぞれ反対側に位置する切削面として形成された2つの側面を備えている。取付姿勢に応じて、カッティングインサートによって、アンダカットまたはジャーナル直径が成形される。
【0007】
別の実施形態によれば、カッティングインサートは、それぞれ反対側に位置する切削面として形成された2つの側面を備えており、これらの側面は、カッティングエッジによって制限されており、カッティングエッジは、真っ直ぐに、かつ90°の角隅部でアーチ状に湾曲して形成されているので、カッティングインサートは、特にクランク軸にオイルカラー輪郭を切削するのに適している。カッティングチップは、アンダカットを成形するためのアーチ状に湾曲したカッティングエッジを有する、それぞれ反対側に位置する切削面として形成された2つの側面を備えている。
【0008】
別の実施形態によれば、オイルカラーを成形するのに適したカッティングインサートの組み合わせは、ジャーナル直径加工のための適当なカッティングインサートと結合することができる。
【0009】
別の実施形態によれば、ジャーナル直径を切削加工するためのカッティングインサートが、アンダカットを成形するためのカッティングインサートと組み合わされ、この場合アーチ状に湾曲したカッティングエッジ区分は、支持面に対して実質的に垂直に形成されている。
【0010】
別の実施形態によれば、特に実質的に矩形である、対向して位置する支持面が、互いに回動してずらして位置することができるので、適当な側面を介して形成されるカッティングエッジも、それぞれ互いに回動してずらして位置している。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、取付ねじは、各カッティングエッジもしくは最長のカッティングエッジよりも長くないよう所望され、これによって過大長さ寸法を有するねじが回避される。本発明によるカッティングインサートは、場合によっては工具支持体のカセットに配置することができ、カセットは、同様に工具支持体に取り付けられる。有利には、そのような「組み合わされたカッティングインサート」は、同じ材料、たとえば硬質合金またはサーメット材料から製作され、このような材料は、磨耗性または切削特性を改善するために、単層または多層に被覆することができる。さらにまた相互結合されて一体的な本体を形成する両方の本体を、異種の材料から形成することも考えられ、この場合両方の支持面の結合が安定するよう保証する必要がある。
【0012】
本発明の実施例を図示し、以下に説明する。
【0013】
図1〜図4に示したカッティングインサートは、特にクランク軸を製作するのに役立つ。図1〜図4に示した各カッティングインサートは、2つのカッティングインサートから組み合わされた組み合わせ式の工具を成しており、2つのカッティングインサートは、それぞれ(仮想の)載設面で結合されて一体的な本体が形成される。図1に示したカッティングインサートは、原則として、アンダカット製作に適したスローアウェイチップ10と、ジャーナル直径を製作するためのスローアウェイチップ11とから組み合わされている。図2および図3において、オイルカラーを製作するためのスローアウェイチップに符号12を付した。クランク軸にアンダカットを製作するためのスローアウェイチップの別の実施例に符号13を付した。
【0014】
スローアウェイチップ10は、互いに反対側に位置する2つの側面101,102を備えており、側面101,102は、アーチ状に湾曲したカッティングエッジ103,104ならびに真っ直ぐなカッティングエッジ部材105によって制限される。隠れた仮想の支持面から延びるカバー面は、縁側で湾曲部106ならびに上側でカバー面を備えている。スローアウェイチップ11は、カバー面111を備えており、カバー面111は、4つのカッティングエッジ112によって制限され、カッティングエッジ112は、4つの側面113のための境界線を成している。この場合側面113は、プラスの逃げ角で傾斜しており、この場合スローアウェイチップ11の下位領域で、側面は、カバー面に対して垂直に向いて延びている。互いに結合される仮想の支持面は、この場合同じ大きさに選択されている。カッティングエッジ103,104は、それぞれ僅かにカッティングエッジ112から突出している。
【0015】
図2には、前述の形式のスローアウェイチップ10が、スローアウェイチップ12と組み合わされており、スローアウェイチップ12は、仮想の支持面の他に側面121を備えており、側面121は、切削面として形成されていて、かつカッティングエッジ122によって制限されており、カッティングエッジ122は、実質的に互いに直角に位置する真っ直ぐなカッティングエッジ区分と、角隅部でアーチ状のカッティングエッジ区分とを備えている。
【0016】
図3に示した実施例では、前述のスローアウェイチップ12が、図1に示した記載の形式のスローアウェイチップ11と結合されており、この場合側面は一様に扁平に形成されている。
【0017】
図4に示した実施例では、本発明によるカッティングインサートは、2つのスローアウェイチップ11,13を備えており、ここでもスローアウェイチップ13は、アンダカット製作用に形成されている。側面131は、カッティングエッジ132によって制限されており、カッティングエッジ132は、隆起部として形成された突出部133を備えており、突出部133は、適当なアンダカット構造を切削加工することができる。
【0018】
図5に示した実施例では、2つのカッティングインサート14,15が組み合わされており、カッティングインサート14,15は、長方形もしくは正方形のカバー面を有しており、この場合各支持面は、僅かに互いに回動した(ねじれた)位置で配置されているので、頂点16,17の間の刃部は、互いに傾斜している。
【0019】
図6に示したカッティングインサートでは、クランク軸−アンダカットを製作するためのカッティングインサート10がカッティングチップ19と組み合わされており、カッティングチップ19は、上位の領域で、オイルカラーまたは90°−肩部を製作するための、90°の角度範囲を超えるカッティングエッジを備えていて、かつ反対側192で、クランク軸にジャーナル直径を製作するのに適したカッティングエッジを備えている。逃げ面193は、この側で、プラスの逃げ角の値で傾斜している。
【0020】
全てのスローアウェイチップに、カバー面から別のカバー面に通じる共通の取付孔18が貫通している。
【0021】
原則的に別の実施形態を組み合わせることもでき、この場合異なる構成をした2つのカッティングインサートが組み合わされ、その構成は、単個の工作物で行われる様々な切削作業に応じて調整されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による1カッティングインサートを示す斜視図である。
【図2】本発明による1カッティングインサートを示す斜視図である。
【図3】本発明による1カッティングインサートを示す斜視図である。
【図4】本発明による1カッティングインサートを示す斜視図である。
【図5】カッティングインサートの別の実施例を示す平面図である。
【図6】本発明によるカッティングインサートの別の実施例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にクランク軸を加工するためのカッティングインサートであって、
当該カッティングインサートが、基本体を備えており、該基本体が、支持面と、該支持面に対して間隔を有して配置されたカバー面と、該支持面とカバー面とを結合する側面とを備えており、2つまたは3つ以上の隣接する面が、カッティングエッジを形成している形式のものにおいて、
前記支持面が、前記カッティングインサートとは異なる、別の切削作業に適したジオメトリを有するカッティングチップの支持面と着脱不能に結合されていることを特徴とする、カッティングインサート。
【請求項2】
焼結による両方の支持面の着脱不能な結合によって、一体的な本体が形成されている、請求項1記載のカッティングインサート。
【請求項3】
カッティングチップが、平面図でみて、実質的に矩形の、切削面として形成されたカバー面を備えており、前記カッティングインサートが、アンダカットを成形するためのアーチ状に湾曲したカッティングエッジを備えた、それぞれ反対側に位置する2つの切削面として形成された側面を備えている、請求項1または2記載のカッティングインサート。
【請求項4】
カッティングチップが、プラスの基本形状を有していて、つまりそれぞれプラスの逃げ角を有している、請求項3記載のカッティングインサート。
【請求項5】
特にクランク軸にオイルカラー輪郭を切削するための、それぞれ反対側に位置する切削面として形成された2つの側面が設けられており、これらの側面が、カッティングエッジによって制限されており、該カッティングエッジが、真っ直ぐに、かつ90°の角隅部でアーチ状に湾曲して形成されており、カッティングチップが、アンダカットを成形するためのアーチ状に湾曲したカッティングエッジを有する、それぞれ反対側に位置する切削面として形成された2つの側面を備えている、請求項1または2記載のカッティングインサート。
【請求項6】
カッティングチップが、平面図でみて実質的に矩形で切削面として形成されたカバー面を備えており、カッティングインサートが、特にクランク軸にオイルカラー輪郭を切削するための、それぞれ反対側に位置する切削面として形成された2つの側面を備えており、これらの側面が、カッティングエッジによって制限されており、該カッティングエッジが、真っ直ぐに、かつ90°の角隅部でアーチ状に湾曲して形成されている、請求項1または2記載のカッティングインサート。
【請求項7】
カッティングチップが、平面図でみて実質的に矩形で切削面として形成されたカバー面を備えており、カッティングインサートが、それぞれ反対側に位置する切削面として形成された2つの側面を備えており、これらの側面のカッティングエッジが、突出する、アーチ状に湾曲して形成された突出する少なくとも1つの区分を備えており、該区分が、支持面に対して実質的に垂直に形成されている、請求項1または2記載のカッティングインサート。
【請求項8】
対向して位置する支持面が、所定の角度で互いに回動して位置する、請求項1から7までのいずれか1項記載のカッティングインサート。
【請求項9】
カバー面から、該カバー面とは反対側に位置するカバー面に延びている孔を緊締状態で貫通する取付ねじが、(最長の)カッティングエッジよりも短くなっている、請求項1から8までのいずれか1項記載のカッティングインサート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−542045(P2008−542045A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513910(P2008−513910)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000596
【国際公開番号】WO2006/128410
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(303042981)ケンナメタル ヴィディア プロドゥクツィオーンス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (17)
【氏名又は名称原語表記】Kennametal Widia Produktions GmbH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Muenchener Strasse 125−127,D−45145 Essen,Germany
【Fターム(参考)】