説明

特にシート構成要素の溶接構造物

本発明は、第1および第2平面と、少なくとも第2平面上にある溶接継目とを備える構造物、ならびに溶接方法に関する。本発明はさらに、n枚の隣接層(nはn=3である)と1つの表面とで構成される構造物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1および第2平面と、少なくとも第2平面上にある溶接継目とを備える構造物、ならびに溶接方法に関する。本発明はさらに、n枚の隣接層(nはn=3である)と1つの表面とで構成される構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
工業生産において、特に自動車の製造において、複数の部品からなるますます複雑となる構造要素が製造されており、その複数の部品は、複数の平面上に配置され、また互いに溶接されなければならない。この溶接は、溶接中に構造物の位置を変えなければならないために、現在でも依然として比較的複雑なものである。
【0003】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を有さない構造物および方法を提供することである。
【発明の開示】
【0004】
この目的は、第1および/または第2平面と、少なくとも第2平面上にある溶接継目とを備える構造物であって、溶接手段をそれに通すことができる少なくとも1つの開口部を第1平面上に備え、その溶接手段が溶接継目を第2平面上に配置する構造物によって達成される。
【0005】
当業者にとってきわめて驚くべきことでありかつ予想外であったのは、本発明による構造物は、その位置を溶接中に変更する必要がないため、きわめて簡潔にかつ費用効果的に製造されるということである。第2平面上の溶接継目は、開口部(2)を介して付着させることができる。
【0006】
本発明によれば、第1平面において、構造物は少なくとも1つの開口部を備えており、その開口部はそれに溶接手段を通すのに十分大きな寸法のものであり、その溶接手段によって溶接継目が第2平面上に配置される。
【0007】
しかしながら、溶接がそこでなされる第2平面上の部品を固定する、1つ、好ましくは少なくとも2つの保持器をさらに、特定の位置において溶接の前および/または溶接の間に、開口部に通すことが可能となるように、その開口部は十分に大きなものであることが好ましい。さらなる好ましい実施形態において、構造物はさらなる開口部を備え、その開口部を介して保持器が次いで第2平面に渡される。
【0008】
当業者に既知のあらゆる溶接手段が溶接手段とみなされるが、好ましくは、溶接手段はレーザー光線である。好ましくは、したがって、さらなる手段、好ましくは管がまた開口部に通されてもよく、その管によって、レーザー溶接の間に形成されるプラズマ雲が吹き飛ばされる。
【0009】
この構造物は、当業者に周知の任意の材料で製造されてもよいが、その材料は、好ましくは金属構造、特に好ましくは薄鋼板である。
【0010】
好ましくは、この構造物は自動車において使用される。好ましくは、この構造物は、中空空間を有する閉鎖された構造物であり、その中空空間は本発明による開口部を介してのみアクセスが可能である。
【0011】
この構造物は背もたれ構造であることが特に好ましい。
【0012】
好ましくは、この構造物は両平面上に溶接継目を有する。
【0013】
本発明のさらなる主題は、n枚の隣接層(nはn=3である)と1つの表面とで構成された構造物であって、互いに接触している2枚の層それぞれは、溶接継目によって互いに接合されており、表面と各溶接継目との間の層は貫通開口部を備えており、その貫通開口部に、溶接手段を、溶接される各層のところまで通して溶接継目を形成することができる構造物である。
【0014】
本発明による構造物では、複数の層からなる積層板を、それらの層が互いの上に積層された後に、一体に溶接することが可能である。本発明による構造物では、互いに接触している層が互いに溶接される。本発明による構造物は、簡潔にかつ費用効果的に製造することができ、高度な機械的安定性を有する。
【0015】
この層は、任意の所望の溶接可能な材料からなることができる。しかしながら、この層は、好ましくは金属薄板であり、特に好ましくは薄鋼板である。
【0016】
好ましくは、この構造物は少なくともn−2個の開口部を備えている。本発明のこの好ましい実施形態により、構造物の互いに接触している各層すべてを一体に溶接することが可能である。
【0017】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、前記実施形態は、少なくとも1個の開口部、ただし好ましくは表面に向かって広くなる複数の開口部を有している。本発明のこの実施形態は、1つの開口部の内部で、構造物の互いに接触しているすべての層を、個々に互いに接合できるという利点を有している。特に好ましくは、この開口部は少なくとも部分的に階段状の構造を有している。次いで、レーザー光線が、その下に配置された2枚の層を一体に溶接するために、段差の高さで個々に照準を合わせられる。
【0018】
本発明による構造物が複数の開口部を有する場合、それらの開口部はまた、構造物の層を互いに対して位置合わせするために使用することもできる。これは、たとえば調節用の型によって行うことができ、その調節用の型は、各開口部内に可逆的に挿入され、本発明による構造物の層の少なくとも2枚の、ただし好ましくはすべての互いに対する位置を固定する。
【0019】
示した目的を同じく達成する本発明のさらなる主題は、第1および第2平面を備える構造物を溶接する方法であり、その方法において、溶接手段は、第1平面内の開口部に通され、溶接継目を第2平面に付着させる。
【0020】
本発明による方法が非常に簡潔かつ費用効果的に実施できることは、当業者にとってきわめて驚くべきことでありかつ予想外であった。製造される構造物の位置は、製造工程の間に変更しなくてもよく、したがって、構造物は非常に迅速かつ費用効果的に製造することができる。
【0021】
好ましくは、溶接される部品を、溶接の前および/または溶接の間に一体に保持する目的で、少なくとも1個の保持器がまず、第1平面内の開口部に通される。
【0022】
さらに好ましくは、第1平面と第2平面との間に存在するプラズマ雲を吹き飛ばす目的で、ある手段が第1平面の開口部に通される。
【0023】
特に好ましい実施形態において、溶接継目は、第1平面上だけでなく第2平面上にも配置される。
【0024】
最も好ましい実施形態において、構造物の位置は溶接の間に変更されない。
【0025】
本発明について、図1から3を参照して以下で説明する。これらの説明は単に一例であり、全体的な発明の概念を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、本発明による構造物を2つの投影図で示している。図1の左の部において分かるように、構造物1は3つの部品6、7、9からなり、これらの部品6、7、9は溶接継目4、5によって一体に溶接されている。構造物は2つの平面E1およびE2を有しており、その結果、中空空間10が形成されている。本発明によれば、構造物は、平面E1において、レーザー光線3がそれを通過できる開口部2を有しており、そのレーザー光線3によって平面E2上で溶接がなされ、溶接継目4が形成される。結果として、構成要素は、溶接の間に回転されなくてもよい。すべての溶接は、上方から行うことができる。
【0027】
右側の投影図から分かるように、開口部2は十分に大きく設計されており、これは、溶接継目4を付着させることを可能にするためだけでなく、一体に溶接されなければならない平面E2上の金属薄板を溶接の前および溶接の間に一体に保持する目的で、保持器8を平面E1に通すことを可能にするためでもある。これはまた、保持器8のための、平面E1内の余分な孔にも当てはまる。
【0028】
図2は、5枚の金属薄板層11から15からなる積層板17を示しており、互いに接触している、すなわちこの場合は互いに直接重ね合わされた2枚の各層は、溶接継目4によって互いに接合されている。本発明によれば、積層板17は開口部2を有しており、その開口部2はそれぞれ、積層板17の表面16から、下層に接合される層まで延びている。各層を互いに接合するために、ある溶接手段、この場合はレーザー光線が、この開口部2内に導かれ、そのレーザー光線によって開口部に隣接する層が融解し、その結果、前記層は、続いてそれが冷却された後に互いに一体に接合される。当業者には理解されることであるが、大きな表面の積層板では、積層板の各層が互いに繰り返し接合されるか、または各溶接継目4が大きな表面の溶接継目となるように設計される。
【0029】
図3は、本発明による積層板のさらなる実施形態を示している。この例において、開口部2は、積層板全体を通じて延びており、階段状の構造を有している。溶接手段、この場合はレーザー光線3が、溶接の間に各段差に照準を合わせられ、少なくともその下層を、ただし好ましくは2枚の下層を部分的に融解し、その結果、前記層は、その冷却後に互いに一体に接合される。溶接の間に層11から15を位置合わせする役割を果たす調節用の型16が、さらにこの例の右に示す開口部2に挿入される。この型は、現在溶接されていない開口部に常に挿入される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明による構造物の実施形態を示している。
【図2】図2は、積層板とした本発明による構造物を示している。
【図3】図3は、積層板のさらなる実施形態を示している。
【符号の説明】
【0031】
1 構造物
2 開口部
3 溶接手段
4、5 溶接継目
6、7、9 溶接される部品
8 保持器
E1 第1平面
E2 第2平面
10 中空空間
11〜15 層
16 積層板の表面
17 積層板
18 調節手段、調節用の型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2平面(E1、E2)と、少なくとも前記第2平面上にある溶接継目(4)とを備える構造物(1)であって、溶接手段(3)をそれに通すことができる少なくとも1つの開口部(2)を前記第1平面(E1)内に備え、前記溶接手段(3)が溶接継目(4)を前記第2平面(E2)上に配置することを特徴とする構造物(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の構造物であって、前記開口部(2)は、1個、好ましくは2個の保持器(8)をそれに通すことが可能となるように、十分に大きいものであることを特徴とする構造物。
【請求項3】
請求項1に記載の構造物であって、1個、好ましくは2個の保持器(8)をそれに通すことができる別の開口部(2)を備えることを特徴とする構造物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の構造物であって、前記溶接手段(3)がレーザー光線であることを特徴とする構造物。
【請求項5】
請求項4に記載の構造物であって、ある手段、好ましくは管を前記開口部(2)に通すことができ、前記開口部(2)によってプラズマ雲を吹き飛ばすことができることを特徴とする構造物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の構造物であって、金属でできていることを特徴とする構造物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の構造物であって、背もたれフレームであることを特徴とする構造物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の構造物であって、n枚の隣接層(11から15)(nはn=3である)と1つの表面(16)とで構成されており、互いに接触している各2枚の層(11から15)は、溶接継目(4)によって互いに接合されており、前記表面(6)と各前記溶接継目との間の層は貫通開口部(2)を備えており、前記貫通開口部(2)に、溶接手段(3)を、溶接される各前記層(11から15)のところまで通して前記溶接継目(4)を形成できることを特徴とする構造物。
【請求項9】
請求項8に記載の構造物であって、n−2個の開口部(2)を備えることを特徴とする構造物。
【請求項10】
請求項8に記載の構造物であって、n=4の場合、長さの異なる少なくともn=2個の開口部を備えることを特徴とする構造物。
【請求項11】
請求項8に記載の構造物であって、少なくとも1個の開口部(2)、好ましくは前記表面に向かって広くなる複数の開口部を備えることを特徴とする構造物。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載の構造物であって、調節用の型(18)が、少なくとも部分的に可逆的に前記開口部(2)内に挿入されることを特徴とする構造物。
【請求項13】
第1および第2平面(E1、E2)を有する構造物を溶接する方法であって、溶接手段(3)が、前記第1平面(E1)内の開口部(2)に通され、溶接継目(4)を前記第2平面(E2)に付着させることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、溶接される部品(6、7、9)を、溶接の前および/または溶接の間に一体に保持するために、少なくとも1つの保持器(8)がまず、前記第1平面(E1)内の開口部(2)に通されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法であって、プラズマ雲を吹き飛ばすために、ある手段が開口部(2)に通されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法であって、溶接継目(5)がまた、前記第1平面上に配置されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記構造物の位置が、溶接の間に変更されないことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−515642(P2008−515642A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535155(P2007−535155)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054991
【国際公開番号】WO2006/040276
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(502156098)ジョンソン・コントロールズ・ゲー・エム・ベー・ハー (142)
【Fターム(参考)】