説明

特に環状あるいは楕円形の予備的形成品を形成するのに適した少なくとも一つの繊維要素を位置させる新規な方法。

【課題】航空機産業、自動車産業などに使用する複合予備的形成品、それらをつくる方法および装置を提供する。
【解決手段】ある面(S)の上に少なくとも一つの繊維要素(11)をいつする方法で、この繊維要素(11)を前記面(S)に配置させ、この面の少なくとも一部に結合させる方法において、この配置された繊維要素(11)の幅が長手方向において変化し、同時に予備的形成品が種々の方向に延在し互いに結合された数枚の繊維要素のシートの重なりを含み、この繊維要素のシートの少なくとも一つが長手方向において変化する幅を有した少なくとも一つの繊維要素を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合の予備的形成品すなわちプリフォーム(composite preforms)の技術分野に関するものである。本発明の目的は少なくとも一つの繊維要素、特に非平行方向に延在する種々の繊維要素(ファイバエレメント)を位置させる方法である。そのような方法は特に、少なくともその一部が環状あるいは楕円形である予備的形成品を形成するのに適している。
【背景技術】
【0002】
一方では一つあるいはいくつかの繊維質強化材(fibrous reinforcements)を、他方では熱可塑性あるいは熱硬化性樹脂マトリックス(matrix)を含有する、複合部品あるいは複合製品を製造することは、例えば樹脂移送成形(Resin Transfer Molding:RTM)技術を実行する方法によって達成される。この方法は二段階から構成されており、先ず所望の仕上がり品の形状に繊維材料の予備的形成品を製造し、次いでこの予備的形成品を熱可塑性あるいは熱硬化性樹脂に含浸させる。樹脂は吸引(aspiration)により注入され、次いで重合された後熱圧縮され硬化される。
【0003】
予備的形成品は一般に、例えば予備的形成品にある程度の結合性(cohesion)を付与して取り扱いを可能とするために結合剤によって相互に結合された繊維要素を数枚重ねたシートを含有する。前記繊維要素は、それを構成するフィラメントあるいは繊維の数に応じてストランド(strands)あるいはケーブル(cabels)としうる。予備的形成品は重ねられた一方向性のシートから構成されることが最も多く、これは繊維要素が各シートにおいて相互に対して平行に延伸され、諸々の一方向性シートが諸々の方向に延在することを意味する。
【0004】
航空産業、航空宇宙産業あるいは自動車産業分野において適用するために、フレーム、窓、ノズルあるいは噴射入口を構成する場合のようにその一部が環状、楕円形あるいは切頭円錐形である予備的形成品を使用することが時には必要とされることが明らかである。その形状が少なくとも一本の曲線状の長手方向の母線(generator line)に倣うような予備的形成品を製造し、かつ満足な機械的特性を得るためには、その曲線状の母線に対して平行でなく基本的には該曲線状の母線に対して横断するよう延在するように繊維要素のシートを位置させる必要がある。空洞が最小量である均質の被覆を提供するシートを製造することは極めて難しい。実際に、放射状のシートが予備的形成品の全ての面を被覆しないとすれば、その結果得られた機械的特性は満足なものでない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この点に関して、本発明の目的の一つは繊維要素を位置させる新規な方法を提供することである。本方法は孔とか空洞のような不揃い性のない滑らかな面のシートを生成することを可能とする。特に、本発明は空洞とか欠陥をなくすることを可能とする環状あるいは楕円形の予備的形成品を形成する非平行の繊維要素からなるシートを製造する方法を提供することを追求する。
【0006】
本発明の別の目的はその結果得られた予備的形成品や複合部品を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的はそのような方法を実行するのに適した装置を提案することである。
【0008】
本発明の目的はある面に少なくとも一つの繊維要素を位置させる方法であって、該繊維要素は前記面に配置され、前記面の少なくとも一部に対して結合される方法において、前記の配置された繊維要素の幅が長手方向に変わることを特徴とする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法は好適な変形実施例において、相互に対して排他的でない以下の特徴の一つあるいは数個を含むものであって、その特徴は、
− 多数の繊維要素が非平行方向に配置され、各繊維要素の幅を変えることと、
− 多数の繊維要素が収束する方向に配置され、各々の前記繊維要素の幅が収束する方向に減少し、好ましくは前記繊維要素の幅は二つの連続した繊維要素の中心の繊維または中心繊維(middle fibers)を分離させている距離に対して比例的に減少することと、
− その繊維要素がその上に配置される面は曲線状の母線に沿って長手方向に延在し、該繊維要素が長手方向の母線(L)に対して交差するように配置され、各繊維要素は前記母線との交差点において同一の非ゼロ角度を形成し、好ましくはそれら繊維要素が母線に対して90度、+60度、−60度、+45度、あるいは−45度の角度を形成することと、
− 前記繊維要素が前記面に配置された二つの連続する繊維要素の間で何ら空間あるいは空洞が存在しないように配置されることと、
− 前記繊維要素はその全長に亘り隣接するセグメントの形態で配置されることと、
− 前記繊維要素がその上に配置される面は環状であることと、
− 前記繊維要素の材料は、炭素、セラミック、ガラス、あるいはアラミドの中から選択されることと、
− 前記繊維要素が連続したストランドであることと、
− 前記繊維要素は一組が3000から24000本のフィラメントから構成された連続したストランドであることと、
− 前記繊維要素は化学的な結合剤によって前記面に結合されることである。
【0010】
本発明の別の方法は、異なる方向に延在する数枚の繊維シートを重ねることと、これら重ねられたシートを相互に結合することから構成される段階を含み、前記シートの一枚の少なくとも一部が前述した方法によって製造されることを特徴とする予備的形成品の製造に関するものである。
【0011】
本発明はまた、異なる方向に延在した数枚の繊維シートを重ね、相互に結合させた予備的形成品であって、少なくとも一枚のシートはその幅が長手方向に変わる少なくとも一つの繊維要素を含有していることを特徴とする予備的形成品に関するものである。
【0012】
前述の方法はまた、本発明に適合する予備的形成品にも適用される。
【0013】
最後に、本発明はある面に少なくとも一つの繊維要素を位置させる装置であって、繊維要素を扱いかつ前進させる手段と、前記繊維要素の幅をその長手方向に変えうるようにする手段と、所望の方向に繊維要素を配置させる手段とを含む装置に関するものである。
【0014】
添付図面を参照して本発明を以下詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明においては、繊維要素の幅は変わるので、該繊維要素がその上に配置される面がたとえ複雑な形状であったとしても該面に適合した被覆を得ることができる。繊維要素の幅は、繊維要素に対して何ら切断作業を行わなくても繊維要素を多少広げたり、あるいは多少圧縮させることによって変えられる。繊維要素の幅は該繊維要素の同一性(integrity)を維持しながら、すなわち物質(matter)が喪失されることなく、一定数のフィラメントを使用して修正される。
【0016】
本発明においては、配置された繊維要素の幅を変えることによってその被覆の均質性が達成される繊維要素のシートを得ることができる。実際に、その上に繊維要素が配置される面を連続的に被覆するために本発明の特定の実行方法によれば、本発明は収束する方向に延在する隣接繊維要素の配置をその収束の方向における繊維要素の幅を減少させることに連携させることを提案している。
【0017】
本発明においては、繊維要素とは一組のフィラメントあるいは繊維であると理解される。このように、繊維要素は単一体(unit)であり、一組のストランドあるいはケーブルを備えるものではない。慣習的には、ケーブルはストランドよりも多数のフィラメントを含むものである。本発明の一部として使用される繊維要素は炭素、セラミック、ガラス、あるいはアラミドの中から選択される材料であることが好ましいが、その中でも炭素が特に好ましい。使用可能なセラミックは、例えばアルミナやジルコニアのような炭化珪素や酸化耐火物であることは明らかである。ストランドは一般的に3000から80000本のフィラメントを含有し、理想的には12000から24000本のフィラメントを含有する。炭素の場合、50000(50K)本以上のフィラメントを含有する繊維要素が一般に「ケーブル」と称され、「ストランド」は最大24000(24K)本のフィラメントを含有する繊維要素である。このように、ストランドとケーブルとの間の境界は特に一般的に材料成分によるので、それらの間には正確な境界は存在していないことは明らかである。特に好適な態様においては、本発明において使用される繊維要素は3から24K本の炭素ストランドである。構成繊維は非連続でも、熱分解されて(cracked)いてもよいが、連続であることが好ましい。これらの繊維要素は一般には平行六面体の横断面(parallelepiped transversal cross section)を示しており、従ってある幅と厚さを有し、平ストランドあるいは平ケーブルとして定性化されることが最も多い。例えば、3Kストランドは一般に1から3ミリメートルの幅を有し、12Kのストランドは3から8ミリメートルの幅を有し、24Kのストランドは5から12ミリメートルの幅を有している。従って、12000から24000本のフィラメントからなるストランドは1から12ミリメートルまでの幅を有することが最も多い。
【0018】
この種の繊維要素は一般にある幅のスプール(spools)として販売されている。繊維要素の幅を増大させたり、あるいは減少させるために数種の手段が利用可能である。前記繊維要素の幅はフィラメントを広げたり、円形バーの上を通したり、あるいは振動技術によって増大させることが可能である。例えば、ケーブルを広げるための数種の技術を提案している、SNECMAおよび本発明の出願人のための国際特許出願第98/44183号(WO 98/44183)を参照されたい。ストランドの幅はまた、二つの面の間で圧力を加えて通すことによっても減少させることが可能である。
【0019】
本発明においては、各繊維要素の中心繊維は繊維要素の縁部から等距離で繊維要素に沿って引かれた想像線に対応する。中心繊維はまた、繊維要素の横断面の等距離中心(isobarycentres)の幾何学的中心と定義することもできる。
【0020】
本発明においては、曲率線(lines of curvature)とは繊維要素がその上に配置される表面の線(surface lines)であり、その測地線の捩れ(geodesic torsion)はゼロである。従って、経線(meridians)と平行線とによって形成される二群の曲率線が回転面に対して存在し、母線(直線)とそれらの直交切線(orthogonal trajectories)である二群の曲率線も展開可能な面に対して存在している。本発明において、第一の場合における平行線の中線(median)と第二の場合における母線の中線とは長手方向の母線と称されている。
【0021】
本発明においては、少なくとも一つの繊維要素が配置されるが、該繊維要素の幅はその長さに亘って移動してみる限り、一定ではない。繊維要素の幅は、それが配置される面において繊維要素の中心繊維に対して横断方向に測定される。
【0022】
このことは、例えば空洞がつくられている面の上に繊維要素を配置する必要があり、かつ該繊維要素をその空洞に配置させる必要がある場合に有利である。
【0023】
本発明による方法は特に予備的形成品の生成において実行するのに適している。例えば、自動車産業や航空産業においては、面の少なくとも一部が曲線状の長手方向の母線Lに沿って延在し、その曲線状の長手方向の母線において長手方向の曲率線がその曲線状の長手方向の母線に対して横断方向に転位する間一定の曲率半径を有していないような予備的形成品を製造することが必要であることがよくある。以下の説明において、そのような面は「曲面」と称される。これは、面が少なくとも環状、楕円形あるいは切頭円錐形の部分を呈する場合である。面Sの少なくとも一部が曲形のある種の形成品を製造し、かつ満足な機械的特性を得るために、最も頻繁に行われる選択は長手方向の母線Lに対して非ゼロ角度(a non−zero angle)に沿って延在する繊維要素11から11までの少なくとも一枚のシート10を配置させることである。環状の面の一部を示す図1に示す例において、繊維要素11から11までは長手方向母線Lに対して90度の角度を形成するが、例えば60度あるいは45度の角度を形成することも可能である。配置面の長手方向母線Lは曲線であるので、従ってこの線Lに対して基本的に同一の角度で局所的に交差している11から11までの繊維要素は、平行ではなく、図1に示すように、最小の曲率半径Rを提供する面の部分に向かって収斂する。本発明においては、配置された繊維要素の幅は該繊維要素の長さに亘って変わる。このような変化は規則的であることが好ましい。繊維要素11から11までの幅のこのような変化によってそれらの中心繊維の間に存在する距離dを補正することを可能とする。繊維要素11は二つの連続する繊維要素の中心繊維12が収束するように配置される。繊維要素は、該繊維要素が配置されている面Sに対して平行に延在しかつ収束方向においてストランドの長さに亘って増大する幅lを伴って配置される。予備的形成品を構成する各シートにおいて、繊維要素は好ましくはそれらが配置される面全体を被覆するように相互に隣接して配置される。本発明の場合は隣接する繊維要素11から11までは二つの連続する繊維要素の間でできる空隙は最小量とし、および(または)重なりを最小にして並置されることが好ましい。本発明による方法は得られたシートに対して極めて均整の取れた面(regular surface)を保持し、一方材料の損失を制限することができる。
【0024】
図1に示す例においては、繊維要素は母線Lに対して横断方向で、かつ直角で交差する。より正確に言えば、前記繊維要素の線すなわち中心繊維12はそれらの交差点において母線Lの接線に対して直交している。図1に示すような環状の予備的形成品の場合、各繊維要素11の中心繊維12は基本的には輪の半径と一致し、従って輪の中心Cを通過する。図示例においては、繊維要素11の幅lは最小の曲率半径Rを有する面の部分から最大の曲率半径Rを有する面の部分まで半径方向変位の間増大する。更に、かつ有利に繊維要素11の幅lは二つの連続する繊維要素の中心繊維12を分離している距離dに比例して減少する。曲率半径Rに対応する環状面の外縁部において、この距離dは内縁部における距離dよりも大きい。被覆すべき面の完全な被覆を確実にするために、横断方向の繊維要素は全長に亘って並置され、かつ隣接して配置されることが好ましい。
【0025】
環状の予備的形成品の場合、横断方向の繊維要素11はそれらの中心繊維12が環状面において放射状に延在するように配置される。所定の初期幅lを有するストランドを内側半径Rおよび外側半径Rを備えた円形の面に半径方向に沿って配置させるためには、そしてもしもシートが均質であるとすれば、円形面に配置させるべきストランドの数(nbrF)は、ストランドの数で円周の弧の長さ(RからRまで変化するアルファ*R半径)を割ることによって、すなわちl=アルファ*R/nbrFによって計算される。更に、もしも外径Rにおける配置が均質のままであるとすれば、ストランドの幅lは曲率半径に正比例して変化する。繊維要素が環状の面に配置された場合、それらは図1に示すように同一の寸法のセグメントのように見えることが好ましい。
【0026】
図示例のように、環状面である場合、繊維要素の幅は全ての繊維要素に対して同じように修正される。その他の場合においては、異なる大きさおよび(または)方向に従って個々の各繊維要素の幅を修正することが可能である。
【0027】
繊維要素の幅はスプールを離れるときは一定である。繊維要素の幅は一般的にそれが対象面に配置される前に修正される。従って、繊維要素は配置される前に、長手方向にその幅を変えることを可能とする装置20を通過させる必要がある。繊維要素に沿って幅は円筒形要素22に形成された周辺スロート(peripheral throat)21に繊維要素を通過させることによって面に配置させる前にそれらの幅を変えることが可能であり、そのために通路(channel)の幅は円筒形要素の周りのスロートの内部で円筒体の周囲の半分に亘って変位とともにEの値からEの値まで増大し、次に円筒体の別の半分に亘って変位とともにEの値からEの値まで減少する。円筒形要素22に対して加える回転の関数として前記二つの値の間を含む中間値まで繊維要素の幅を同等に変えることができる。繊維要素の幅を調整できるようにする装置20に繊維要素を通過させる前の繊維要素の幅は例えば最大の広がり値Eに対応する。
【0028】
例えば、図2に示すように厚さの変わる2個のディスク24および25によって画成されている円筒形のバー23を前記装置20に対して使用することができる。このような製造上の変形実施例において、前記ディスクは繊維要素に対する幅可変の通路を構成するスロートの壁を画成する。組立体全体が円筒形要素の軸線の周りで回転される。次いで、繊維要素が平坦で、かつ前記円筒形要素の軸線に対して垂直の状態で到来するように送られるが、これは繊維要素がその幅を円筒形のバーに対して平行にして該バーに対して接線方向に到来することを意味する。繊維要素は、例えば回転する円筒形要素の周りを基本的には半回転あるいは四分の一回転した後出てくる。円筒形要素の回転速度は繊維要素の送り速度の関数として調整される。一般に、繊維要素は前記装置20を出るとき所望長さのセグメントを得るべく切断される。繊維要素の進行速度を前記円形バーの回転速度と同期化させることによって、幅が規則的にEの値からEの値まで増大する、あるいはEの値からEの値まで減少する所望長さのストランドのセグメントを得ることができる。同等に、幅がEとEの間で、但しこれらの二つの値に達することなく変化する所望長さのストランドのセグメントを得ることも可能である。
【0029】
このようにして得られた数個のセグメントを配置させる場合、それらを順次に、あるいは同時に配置させることが可能である。シートを形成するには、多数の繊維要素が並置関係で配置される。これらのセグメントは、それらがその上に配置される面全体を被覆し、かつ図1に示すように収束方向に延在するように好都合に配置される。収束方向に配置された繊維要素の幅の変化によってセグメントが正確に縁部を合わせて位置できるようにする。これらのセグメントは同じ繊維要素あるいは異なる繊維要素からつくることができる。
【0030】
繊維要素はいずれかの適当な方法、すなわち手作業で、あるいは自動装置によって配置させることができる。繊維要素は幅が増大する(あるいは減少する)セグメントの形態で配置される。一製造方法によれば、繊維要素のこれらのセグメントは、その長手方向の母線に沿って徐々に動いている運動面に送られ、かつ配置される。環状あるいは楕円形の面の場合、配置されるセグメントの幅に対応する回転速度でその軸線の周りを回転することによって配置面のこのような変位が行われる。
【0031】
予備的形成品の製造において、幅可変の繊維要素のシートが支持体すなわち成形面あるいは、例えば前記面の長手方向母線に沿って延在している繊維要素の先行シートの上に配置される。一般には、異なる方向に延在する繊維要素の数枚のシートが相互に結合される。各シートは、例えば本出願人によるフランス特許出願番号第2,853,914号(FR 2853914)に記載のもののような諸々の技術によってそれが配置される面に対して結合させることができる。
【0032】
繊維要素が配置されている面に繊維要素を接着させることは前記面に先に、あるいは繊維要素の配置と共に配置させた化学的接着剤によって行うことができる。一般に予備的形成品においては、該予備的形成品の全体重量(これは繊維要素+化学的接着剤を意味する)に対する化学的接着剤の重量パーセントは0.1から25%の間、好都合には3から10%の間で変動する。この機能を達成させるには、接着剤は例えば熱のような活性化を必要とし得る。使用可能な硬化剤は、接着剤、熱可塑性あるいは熱硬化性のパウダーあるいは樹脂である。粉末化あるいはコーティングによって繊維要素と、あるいは結合剤のストランドと馴染む接着剤を使用することによってハイブリッドの繊維要素を形成することも同等に可能である。これらの別の技術の詳細については、本出願人によるフランス特許第2,853,914号(FR 2853914)を参照されたい。
【0033】
繊維要素セグメント11の端は、曲面の一方あるいは双方の縁部に沿って、例えばこれらの縁部に位置された接着剤の帯片によって熱接着によって取り付けることができる。
【0034】
本発明による方法はまた、シートの一部分をつくるために実行することも可能なことは勿論である。直線で囲まれた部分を含む卵形の予備的形成品の場合、例えば、湾曲部分における横断方向シートの部分が本発明による方法によってつくられ、一方直線の部分は一定幅の平行な繊維要素を用いてつくられる。
【0035】
本発明の別の目的は予備的形成品の製造方法であって、該方法が異なる方向に延在する数枚の繊維シートを重ねることと、重ねられたシートを相互に結合することとから構成される段階を含み、前記シートの少なくとも一部分が前述したようにつくられる方法を提供することである。
【0036】
そのような予備的形成品は一般に、基本的に相互に対して、かつ面の長手方向母線に対して平行である繊維要素の少なくとも一枚のシートと、図1に示すように、長手方向母線に対して平行でない繊維要素の少なくとも一枚のシートとを有している。そのような予備的形成品は全体的に楕円形の曲がり(楕円形の予備的成形品の場合)あるいは同心円(環状の予備的形成品の場合)に沿って延在し、0度ストランドシートと称される繊維要素30から30までの第一のシートと、例えば放射状方向すなわち遠心方向に沿って前記第一のシートのストランドと交差する方向に延在し、先に述べたように幅が変わり、90度ストランドシートと称される繊維要素の第二のシートとを含み、前記曲がりあるいは円に沿って延在する繊維要素の別のシートと、例えば+60度、−60度、+45度あるいは−45度の非平行繊維要素の新しいシートと、その他とを含むというように、所望の厚さおよび形状が得られるまでシートを含めていくことができる。好適局面によると、本発明の目的はまた、丸窓をつくるのに適した形状の予備的形成品を得ることである。
【0037】
本発明の他の目的はある面に少なくとも1つの繊維要素を位置させる装置であって、繊維要素を扱い、かつ前進させたりする手段と、その長手方向における繊維要素の幅を変えることができる手段と、所望の方向に繊維要素を配置させる手段とを含む装置にも関するものである。
【0038】
本発明の変形実施例によれば、そのような装置は収束方向に沿って繊維要素のシートをある面に配置させる手段と、前記繊維要素を配置する前に収束方向において幅が減少する繊維要素を得る手段とを含む。
【0039】
本発明の好適な変形実施例においては、繊維要素の幅は、幅可変の円筒形要素22に形成された周辺スロート21を含み、特に通路の幅が円筒体の周囲の半分に亘って円筒形要素の周りを前記スロート内で変位するとEの値からEの値まで増大し、他の半分に亘って変位するとEの値からEの値まで減少するような装置20を使用して、配置前に変えることができる。
【0040】
本発明の装置は繊維要素を前述のように、前記装置20を通して送り、かつ前進させることによってその幅を調整することができる手段を含む。例えば、そのような手段はその間で繊維要素が前記装置20の出口を通過する2個の回転するローラの形態で存在しうる。繊維要素を独立した、すなわち断続したセグメントの形で配置できるようにするために前記繊維要素を切断する装置を前記装置20の出口において設けることもできる。
【0041】
繊維要素を配置させる手段は周知の現在の技術水準にある技術によっていずれかの適当な方法で実行することができる。
【0042】
本発明の別の変形実施例によると、本発明の装置は更に、繊維要素の配置された面に、あるいは繊維要素自体に接着剤を塗布する手段を含みうる。
【0043】
使用される接着剤の特性に応じて、それが本装置によって塗布されるか否かには関係なく、本装置はまた、例えば赤外線のような放射線源のようないずれかの適当は方法によって実行しうる接着剤活性化手段を含みうる。
【0044】
本発明による装置は本装置の種々の部分の制御および同期化を確実にする制御装置を含む。
【0045】
以下の二例は本発明による方法を例示できるようにする。
【0046】
第一の例は、内側の曲率半径が134ミリメートルで、外側の曲率半径が215ミリメートルである環状の舷窓用予備的形成品に12K 880Tex炭素繊維ストランドを放射状に配置させることに関するものである。そのような炭素繊維ストランドはそれらがスプールを出るときは5−6ミリメートルの幅を有している。この場合、配置されたストランドのセグメントは、予備的形成品の内部から外部まで放射状に動いている間に2.45ミリメートルから3.93ミリメートルまで均等に増大する幅を有しており、ストランドの間に重なりあるいは空隙なしに配置される。
【0047】
第二の例は内側の曲率半径が1500ミリメートルで、外側の曲率半径が1600ミリメートルである飛行機の胴体のビーム用の予備的形成品に12K 800 Tex炭素繊維ストランドを放射状に配置させることに関するものである。この場合、配置されたストランドのセグメントは幅が内側の曲率半径における4.13ミリメートルから外側の曲率半径における4.41ミリメートルまで均一に増大し、ストランド間には何ら重なり、あるいは空隙がないようにする幅を有する。
【0048】
前記の二例が12K 800 Tex ストランドの代わりに24K 1660 Tex ストランドを使用して繰り返されるとすれば、すべてのストランドの幅の値は倍になる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による方法を実行する一方法を示す。
【図2】本発明による繊維要素の幅を制御する手段の正面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 繊維要素のシート
11 繊維要素
20 幅変更装置
21 周辺スロート
22 円筒形要素
23 円筒形バー
S 面
L 母線
Ra 最小曲率半径
Rb 最大曲率半径
d 中心繊維間の距離
c 輪の中心
l 繊維要素の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある面(S)に少なくとも一本の繊維要素(11)を位置させる方法であって、前記繊維要素(11)が前記面(S)に配置され、前記面の少なくとも一部に結合される方法において、前記の配置された繊維要素(11)の幅(l)が長手方向に変わることを特徴とする繊維要素をある面に位置させる方法。
【請求項2】
多数の繊維要素(11から11まで)が非平行方向に配置され、前記繊維要素(11から11まで)の各々の幅が変わることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多数の繊維要素(11から11まで)が収束方向に配置され、前記繊維要素(11から11まで)の幅(l)が収束方向において減少することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維要素(11から11まで)の幅(l)が二つの連続した繊維要素の中心繊維を分離している距離(d)に比例して減少することを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記繊維要素(11から11まで)が配置される面(S)が曲線状の母線(L)に沿って長手方向に延在し、前記繊維要素(11から11まで)が長手方向母線(L)に対して交差しており、各繊維要素が前記母線に対する交差点において同一の非ゼロ角度を形成していることを特徴とする請求項2から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維要素(11から11まで)が前記母線(L)に対して90度、+60度、−60度、+45度、あるいは−45度の角度を形成することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記面(S)に配置された二つの連続した繊維要素の間に何ら空隙あるいは空洞が存在しないことを特徴とする請求項2から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記繊維要素(11から11まで)がそれらの長さ全体に亘って相互に対して隣接したセグメントの形態で配置されていることを特徴とする請求項2から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記繊維要素(11から11まで)が配置されている前記面(S)が環状の形であることを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記繊維要素(11から11まで)が炭素、セラミック、ガラス、あるいはアラミドの中から選択される材料であることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記繊維要素(11から11まで)が連続したストランドであることを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記繊維要素(11から11まで)は一組が3000から24000本のフィラメントから構成される連続したストランドであることを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記面(S)に対する前記繊維要素(11から11まで)の結合が化学的な結合剤によって達成されることを特徴とする請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
異なる方向に延在する繊維要素(11から11までと、30から30まで)の数枚の繊維要素のシートを重ねることと、これらの重ねられたシートを相互に結合することとから構成される段階を含む予備的形成品をつくる方法において、前記シートの一つの少なくとも一部分が請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法によってつくられることを特徴とする予備成形品をつくる方法。
【請求項15】
異なる方向に延在する数枚の繊維要素のシートを重ね、それらを相互に結合することからなる予備的形成品において、前記繊維要素のシートの少なくとも一枚がその幅が長手方向に変わる少なくとも一つの繊維要素を含むことを特徴とする予備的形成品。
【請求項16】
前記シートの少なくとも一枚が非平行方向に延在する多数の繊維要素(11から11まで)を含み、前記繊維要素(11から11まで)の各々の幅が長手方向に変わることを特徴とする請求項15に記載の予備的形成品。
【請求項17】
前記繊維要素(11から11まで)が収束方向に延在し、それらの幅が収束方向に減少していることを特徴とする請求項16に記載の予備的形成品。
【請求項18】
前記繊維要素(11から11まで)の幅が二つの連続する繊維要素の中心繊維を分離している距離に比例して減少することを特徴とする請求項17に記載の予備的形成品。
【請求項19】
前記繊維要素(11から11まで)が配置される前記面が曲線状の母線(L)に沿って長手方向に延在し、前記繊維要素(11から11まで)が前記長手方向母線(L)に対して交差するように配置され、各繊維要素が前記母線との交差点において同一の非ゼロ角度を形成していることを特徴とする請求項16から18までのいずれか1項に記載の予備的形成品。
【請求項20】
前記繊維要素(11から11まで)が前記母線(L)に対して90度、+60度、−60度、+45度あるいは−45度の角度に沿って延在していることを特徴とする請求項16から19までのいずれか1項に記載の予備的形成品。
【請求項21】
前記面に配置された二つの連続した繊維要素の間に何ら空隙あるいは空洞が存在しないことを特徴とする請求項16から20までのいずれか1項に記載の予備的形成品。
【請求項22】
前記繊維要素(11から11まで)がそれらの全長に亘り相互に対して隣接したセグメントの形態で配置されることを特徴とする請求項16から21までのいずれか1項に記載の予備的形成品。
【請求項23】
前記繊維要素がその上に配置される前記面(S)が環状の形状であり、前記繊維要素(11から11まで)が基本的に放射状に配置されることを特徴とする請求項16から22までのいずれか1項に記載の予備的形成品。
【請求項24】
予備的形成品を構成している前記繊維要素が炭素、セラミック、ガラス、あるいはアラミドの中から選択された材料であることを特徴とする請求項15から23までのいずれか1項に記載の予備的形成品。
【請求項25】
予備的形成品を構成している前記繊維要素が連続したストランドであることを特徴とする請求項15から24までのいずれか1項に記載の予備的形成品。
【請求項26】
予備的形成品を構成している前記繊維要素は一組が3000から24000本であるフィラメントから構成された連続したストランドであることを特徴とする請求項15から25までのいずれか1項に記載の予備的形成品。
【請求項27】
種々のシートが化学的結合剤によって相互に結合されていることを特徴とする請求項15から26までのいずれか1項に記載の予備的形成品。
【請求項28】
請求項15から27までのいずれか1項に記載の予備的形成品を熱可塑性、あるいは熱硬化性樹脂と結合させることによって得られた複合材料の部品。
【請求項29】
ある面に少なくとも一つの繊維要素を位置させる装置であって、繊維要素を制御し、かつ前進させる手段と、前記繊維要素の幅をその長手方向において変えることができる手段と、前記繊維要素を所望の方向に配置させる手段とを含むことを特徴とする繊維要素をある面に位置させる装置。
【請求項30】
ある面の上に繊維要素のシートを収束方向に沿って配置させる手段と、前記繊維要素を配置する前にその幅を収束方向に減少させる手段とを含むことを特徴とする請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記繊維要素の幅を変えることができる手段が円筒形要素(22)に形成された幅が可変である周辺スロート(21)を含むことを特徴とする請求項29または30に記載の装置。
【請求項32】
前記スロートの幅が、円筒体の周囲の半分に亘って円筒形要素の周りで前記スロートの内部で変位すると(E)の値から(E)の値まで増大し、次いで別の半分に亘って変位すると(E)の値から(E)の値まで減少することを特徴とする請求項31に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−39869(P2007−39869A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201426(P2006−201426)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(506255038)
【Fターム(参考)】