説明

特に車両座席用の部品

部品、特に車両座席用のウォブル機構は、少なくとも3つ、好ましくは4つの、相互に結合され、少なくともおおよそ相互に平行になるように方向を定められているプレート状の要素(E1,E2,E3,(E4))を備えている。また、少なくとも一部にて相互に結合しているところの要素対(E12,E23,(E34))は、それぞれ各要素が接触している領域内にて特に溶接により、直接的に相互に結合されている。本発明によれば、各要素対の少なくとも一つの要素は、同一要素対の他の要素に対して局所的なギャップ状の空間(ギャップサイズS)を与えるオフセットを有する。さらに次の要素への結合は、別の要素対を形成するように、前記空間の領域にて行われる。本発明はさらに、要素対を有するウォブル機構に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部品に関し、特に少なくとも3つ、好ましくは4つのプレート状の要素であって相互に結合され、少なくともおおよそ相互に平行になるように方向を定められ、そこで、少なくとも部分的に相互に接触している要素を備えている複数の前記要素の複数の対が、それぞれにあって各要素の接触している領域内にて特に溶接により、直接的に相互に結合している、車両座席のための部品に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願WO 2006/040276 A1 は、車両座席用の発明に関する部品を開示している。前記部品は、各シート状金属の下に直接的に配置されるシート状金属を、レーザ溶接手段によって結合し、プレート対を形成しながら、シート状様式にて相互に接触している概ね同一の厚さのシート状金属プレートの積層された配置を備える。もちろん、一番上のシート状金属は、上方から照射されるレーザビームに容易にアクセスできるが、下側に配置される複数のプレートの複数のペアの溶接は、それぞれ前記下側に配置されるシート状金属プレートの上に配置されるシート状金属プレート内のくぼみの領域及びレーザビームの作用場所を通して行なわれる。
【0003】
複合構造の小さな部品の場合、例えば車両座席の背もたれ傾斜調整機では、多数のくぼみを提供するために有効な構造空間はことによると効率的ではない。
【0004】
もちろん、裏側を合わせて配置して一緒に溶接した二つのシート状金属に、その後さらにシート状金属を前記二つのシート状金属の対の下に配置して、配置されたシート状金属を溶接し、所望の層の高さが得られるまで、この操作を繰り返すことも考えられる。しかし、溶接ビーズは、概して溶接領域にて盛り上がり、次に配置されるシート状金属に干渉するので、事前に複雑な方法で除去されなければならない。
【0005】
特許出願DE 10 2005 001 606から異なる厚さで相互に重ねて横たわる3枚のシート状金属プレートをレーザ溶接手段によって結合することが知られている。しかしながら、この操作は、前記レーザビームが最も薄いシート状金属プレート上に衝突し、さらに前記最も薄いシート状金属プレートを中央のシート状金属プレートを介して最も厚いシート状金属プレートに溶接するというような方法において、前記複数のシート状金属プレートの特殊なシーケンスを必要とする。さらに、熱のより低い適用及びそれに呼応して捩れが減少されるので、精度は単一の溶接シームの手段による三つのシート状金属プレートの結合のときよりも二つのシート状金属プレートを一緒に溶接するときの方が基本的に優れている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はとりわけおおよそ同一の厚さのプレート状の複数要素から層内に組み立てられる部品であって、前記複数要素間の結合が、前記部品内における利用可能な構造空間上の不利益な影響をできるだけ少なくする可能性を有している部品を提供するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、一般的なタイプの部品の場合には、それぞれの場合で各要素対の少なくとも一つの要素が、同一の要素対の他の要素について局所的な、ギャップ状空間(ギャップサイズs)を提供する屈曲を有し、さらに他の要素対が形成されながら、前記空間の領域内にて次の要素への結合が行なわれるということにより本発明にて解決される。
【0008】
本発明の格別の成果によれば、複数の要素の中央の対の接続領域に鏡面を伸ばしながら、複数の要素の二つの外側の対は、相互について鏡面反転仕様に形成される。相互に部分的に接触している複数の要素間の接続は、好ましくはレーザ溶接にて形成される。
【0009】
本発明は車両座席用の傾斜調整器への使用に特に適しており、特に第1取付部と前記第1取付部に対して角度が調整される第2取付部を有する、ウォブル機構内での使用に適している。この場合、中央要素対は好ましくは、前記外側要素が外部鋸歯が設けられた歯車として形成され、さらに内部鋸歯が設けられた取付プレートにかみ合う状態にそれぞれされる歯車として形成されるので、鋸歯が設けられた外側要素が前記第2取付部と関係している前記第1取付部を形成する。特に好ましい力の伝達がここにおいて以下のように得られる。設定された場所にあって、相互に噛み合う複数の歯車は、相互に整列されたり、あるいは負荷により引き起こされた歪が関係する部品間で定められた接触の方向にて起こるような方法でオフセットする。
【0010】
図は一例としての発明の具現化例を示すものであり、寸法的には異なる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の具体例に係る部品を示す図である。
【図2】本発明により作られた第1のウォブル機構を抜粋として示す図である。
【図3】本発明の他の具現化例に係るウォブル機構を抜粋として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示される部品は、概ね相互に平行に伸び、金属シートから作られ、さらにそれぞれの場合において、隣接する要素E1,E2及びE2,E3及びE3,E4が合計3つの要素対E21,E23及びE34を形成するところのプレート状要素E1,E2,E3を備える。好適な具現化例にあって、厚さdはE1からE4の全てで同一である。
【0013】
各要素対E12,E23、E34は、前記関連のある要素(例えばE3,E4)が直接にそれぞれ接触し、さらに溶接シームSによって相互に結合される第1の領域(要素対E34上のAで参照される)を有している。全ての要素対E12,E23,E34の溶接結合は、前記部品の一方側から(図1にあっては上部側から)前記レーザビームLの前記要素対E23及びE34への通過を許容する上部の複数の要素対E12,E23の開口Oを通して、レーザビームL手段により行なわれる。
【0014】
さらに、各要素対E12,E23,E34のE1からE4の少なくとも一つの要素には、一つの屈曲(要素対E34上のkによって参照される)、すなわち、前記プレート状の要素(ここではE4)が近接の要素(ここではE3)から第1の角度(この具体例では90°)で折曲がり、その後おおよそ同一の角度で反対方向に再び曲げ戻されるところの領域、が設けられる。前記屈曲kの他の側にあって、要素対E12,E23,E34を形成する複数の要素E1及びE2,E2及びE3、E3及びE4は相互にギャップ状の仕様で相互に空間的に離されているところの領域が、結果として、各要素対E12,E23,E34内にて作り出されている。要素対E34上にて、この領域はギャップサイズsを伴ってBにより参照されている。
【0015】
溶接ビーズWは前記領域B内の前記ギャップに展開するので、この設計は要素対(例えばE34)の前記溶接シームSの前記溶接ビーズWが近接する要素対(ここではE23)と干渉しないという効果を有する。さらに、図1に係る具現化例にあって、適切に広い設計を与えられることで前記開口Oはさらに必要な間隔を作り出す。それでも、前記ギャップは前記溶接シーム上に配置される前記複数の要素の歪を防ぐために有益である。さらに、例え各要素が許容誤差を持っていても、前記溶接された組み立て品の厚さは、補償仕様にて設計された屈曲kの手段によって非常に精密に設定される。
【0016】
図2に示され、複数の部品を除外した非常に単純化した形にて示されるウォブル機構1の場合において、開口Oは非常に複雑な構成なので提供されていないが、前記領域Bは特に重要な意味を持つ。
【0017】
前記背もたれの傾斜を調整するために提供され、さらに中央面2についておおよそ鏡面反転仕様に設計されたウォブル機構1は、当該座席の座席部に、例えば堅く結合された第1取付部3を備える。前記取付部3は、それぞれの場合において互いに直接接触する領域A及びそれぞれについて空間(ギャップサイズs)の領域Bを有する中央の要素対E23を備える。領域A,Bの間で、前記要素対E23の前記二つの要素E2,E3には、それぞれ互いに離れた方向に向かう屈曲K,K‘が設けられる。前記複数の要素E2及びE3は、直接接触の領域A内で溶接ビーズWによる溶接シームSの手段で互いに結合される。
【0018】
さらに外側に鋸状の歯車4,4‘として設けられたプレート状の要素E1及びE4は、要素対E12及びE34を形成するように外から要素対E23上に配置される。要素対E12及びE34は、溶接シームS’、S“手段によって同様につながれる。
【0019】
前記取付部3が製造される間、前記要素E2及びE3はまず第一にお互いに溶接される。前記外側の要素E1及びE4は次に前記組み立て体に配置され、さらに前記要素対E23に結合される。
【0020】
屈曲K、K‘手段によって、前記中央の要素対E23の溶接シームSの領域における前記歯車4、4’は、前記要素E2及びE3から離れるように空けて配置されるので、前記溶接用ビーズWはそれぞれの上で配置の干渉を起こさず、さらに早計には取り除かれない。
【0021】
外側歯車4、4‘は、前記背もたれに固定されている部品として、内部鋸歯に装備される取付プレート5、5’に噛み合う。前記内部鋸歯は、それぞれの場合にあって、噛み合うところの歯車4、4‘の外側鋸歯よりも多い少なくとも一歯を有する。この仕様によって、前記ウォブル機構1が作動されると、前記歯車4、4’は前記取付部5、5‘の内周に沿って回転する。
【0022】
この具体例の場合には、前記歯車4、4‘及び前記取付部5、5’の複数の歯は、(これは同一厚さdの半仕上げの製品から打ち抜かれた複数歯であるが、)無負荷の状態において、材料の全断面が力の伝達に用いられるように、複数歯の厚さdに関して常に十分に調整される。この具体例の場合には、前記取付プレート5、5‘の内部歯の他方側上の取付部3の方向を指し示す前方への突出6、6‘は、軸のガイダンスとして役立つ。
【0023】
図3に係る他の具体例にあって、前記取付プレート5、5‘は、前記歯の厚さdの1/5から1/10に、歯車4、4’に関する中央面2の方向に、内部にわずかに(オフセットv)後退されている。歯車4、4‘は、具体例にあっては同一であるが、その厚さが異なってもよく、それゆえ前記歯の領域にあっては完全にオーバーラップするわけではない。通常の負荷状態の下では、前記ウォブル機構1の調整の間の摩擦力は、この方法によって減らされる。前記ウォブル機構1の負荷が発生すると、前記オフセットvは前記取付部3の方向の歯車の終端にて、歯車の終端が前方突出6、6’及び/又は前記取付部3の追加の面取り部7、7‘に入るまで、内側に変位されることになる。これは、前記取付部5、5’の制御不可の拡がりを防ぐ。
【0024】
図3に係るウォブル機構は、異なった順序で溶接される。取付部3(要素E2、E3)の内部プレートは、(それらのプレートはまだ分離されたままであるが、)要素対E12及びE34(溶接シームS‘及びS’‘)が形成されながら、初めに取付プレート5、5‘に取り付けられる。要素対E12及びE34は、その後、重ねられ、さらに要素対E12及びE34は要素E2及びE3の領域内の取付プレート5、5’を溶接シームSに外部接続する。溶接ビーズW‘及びW“はそれゆえ、取付部3の空間sに向く。他の溶接シームS’”は、他の屈曲K“、K”‘の手段により、相互に要素E2、E3が接触状態になるところのベアリングスリーブ8との接触の領域における要素E2、E3に接続する。この目的のため、レーザビームLは取付プレート5’の小さな開口Oを通してガイドされる。
【0025】
このため、取付部3は大きな軸上の剛性及びベアリングスリーブ8との改善された接触を得る。
【符号の説明】
【0026】
d 厚さ
E1,E2,E3,E4 要素
E12,E23,E34 要素対
K,K‘,K“,K”’ 屈曲
L レーザビーム
O 開口
s ギャップサイズ
S,S‘,S“,S”’ 溶接シーム
v オフセット
W,W‘,W“,W”’ 溶接ビーズ
1 ウォブル機構
2 中央平面
3 取付部
4,4‘ 歯車
5,5“ 取付部
6,6‘ 前方凸部
7,7‘ 面取り面
8 ベアリングスリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品に関し、特に少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つのプレート状の要素(E1,E2,E3,(E4))であって相互に結合され、少なくともおおよそ相互に平行になるように方向を定められ、少なくとも一部にて相互に結合しているところの要素対(E12,E23,(E34))は、それぞれ各要素が接触している領域内にて特に溶接により、直接的に相互に結合され、
それぞれの場合、各要素対の少なくとも一つの要素は同一要素対の他の要素に対して局所的なギャップ状の空間(ギャップサイズS)を創り出す屈曲部(K,K‘)を有し、さらに次の要素への結合は、別の要素対を形成するように、前記空間の領域にて行われることを特徴とする部品。
【請求項2】
二つの外側の要素対(E12,E34)は、相互について鏡面反転仕様で形成され、鏡面(中央面2)は中央の要素対E23の結合領域に伸びていることを特徴とする請求項1記載の部品。
【請求項3】
相互に部分的に結合している複数の要素(E1からE4)間の接続は、レーザ溶接によってなされていることを特徴とする請求項1又は2記載の部品。
【請求項4】
前記部品は傾斜調整装置として設計され、特に第1の取付部(3)と、前記第1の取付部に対して角度調整される第2の取付部とを有するウォブル機構(1)として設計されることを特徴とする請求項1乃至3記載のいずれか一記載の部品。
【請求項5】
前記中央要素(E23)は、歯として設けられる外側要素(E1,E4)に結合される第1取付部(3)を形成することを特徴とする請求項4記載の部品。
【請求項6】
前記外側の要素(E1,E4)は、外部の歯に取り付けられ、互いを前記第2取付部の、内部の歯に取り付けられる取り付けプレート(5、5‘)にてかみ合う状態とされる歯車と(4、4’)として設計されることを特徴とする請求項5記載の部品。
【請求項7】
それぞれ相互に噛み合っている歯車(4、4‘)及び取付プレート(5、5’)の歯は、相互に整列されていることを特徴とする請求項6記載の部品。
【請求項8】
少なくとも一つののこぎり状とされた外部歯車(4、4‘)及び少なくとも一つの内部歯車取付部(5、5’)を備える、特に請求項6に係る、ウォブル機構の原型内の部品であり、相互にかみ合ったそれぞれにおける歯車(4、4‘)及び取付部(5、5’)の前記歯は相互について軸方向にずれていることを特徴とする部品。
【請求項9】
前記ウォブル機構は、中央プレート(2)に対して実質的に対照的に設計され、さらに前記取付プレート(5,5‘)は前記歯車(4、4’)に対して内部に、前記歯の領域における負荷イベント内の前記中央プレート(2)の方向における歪みに前記取付プレート(5,5‘)が耐える仕様におけるオフセットvだけずれていることを特徴とする請求項8記載のウォブル機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−507518(P2010−507518A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533677(P2009−533677)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008005
【国際公開番号】WO2008/049489
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(502156098)ジョンソン・コントロールズ・ゲー・エム・ベー・ハー (142)
【Fターム(参考)】