説明

特異的に保護された直交ランチオニン技術

本発明は、少なくとも1つの分子内架橋を含む分子内架橋ポリペプチドの合成法を提供する。本発明は、さらに、2つの分子内架橋を含む分子内架橋ポリペプチドの合成法であって、2つの分子内架橋が重なり合う環、連続する2つの環、または2つの埋め込まれている環の形成法を提供する。本発明は、また、ナイシンAを含むランチビオティックの合成法を提供する。さらに、本発明は、本明細書に開示された方法によって合成される分子内架橋ポリペプチド、および特異的に保護された直交ランチオニンを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、2005年8月12日に出願された米国特許出願第60/708,086号、および2006年5月26日に出願された米国特許出願第60/808,907号に基づく優先権を主張し、これらは両方ともその全体を参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
抗生物質の開発は、20世紀後半の医療活動に革命を起こした。この期間に、感染病による死亡率は顕著に減少した(Armstrong et al.,(1999)PAMA.281,61−66)。しかし、感染病に由来する死は、抗生物質耐性病原体の増加に並行して、着実に上昇している。多種多様の医学的に重要な細菌は、臨床感染の治療において通常用いられる抗生物質に対する耐性が上昇しつつある。この現象を実証する何千もの報告および書籍が、過去20年間の文献にある(Armstrong et al.,(1999)PAMA.281,61−66;Dessen et al.,(2001) Curr.Drug Targets Infect.Disord.1,11−16;Rapp(2000)Surg Infect(Larchmt).1,39−47;Benin&Dowell(2001) Antibiotic resistance and implications for the appropriate use of antimicrobial agents,Humana Press,Totowa,NJ)。
【0003】
抗生物質のより適切な使用を教示する必要があるが、さらに重要なことは、新規の抗生物質が必要とされているということである。バンコマイシンは、多くの重篤な細菌感染に対する最後の砦と考えられている。病原菌のバンコマイシン耐性株の発見は驚くべきことであり、それは、現在利用可能な薬剤で治療できない多剤耐性病原体の発生の前兆となる。新規な抗生物質がすぐに開発されない場合、事実上プレ抗生物質時代まで戻る可能性がある。
【0004】
ランチビオティック(クラスIバクテリオシン)と呼ばれる、小さい、構造的に新規なクラスの抗生物質があり、これはそれらの化学および生合成の相違に基づいて、5つのサブクラス、タイプA(I)、タイプA(II)、タイプB、2成分および構造が知られていないものに分類することができる。このクラスの抗生物質は数十年間知られているが、多くのランチビオティックは、強力かつ広範囲の活性を、特にグラム陽性菌に対して有することが知られているにも関わらず、感染病の治療における潜在的有用性については広範に試験されていない。この主な理由は、これらの分子の試験および商品化を可能にするために十分な費用効率の高い量を得ることが一般に困難なためである。
【0005】
ナイシンA(図1)は、ランチビオティック、およびランチビオティックに関連する化学的複雑性の数およびタイプの好例を提供する。ランチビオティックは含硫アミノ酸、ランチオニン(Lan、ala−S−ala)、および、しばしば3−メチルランチオニン(Melan、abu−S−ala)を豊富に含む。Lanはアラニン残基からなり、これはチオエーテル結合により結合して、生物活性に重要である環構造を形成する。典型的には、ランチビオティック上にこのような環が3〜5あり、多くの環はしばしば、互いに重なり合う。LanおよびMeLanは、常にメソ−立体化学を有すると考えられている。LanおよびMeLan残基に加え、2,3−ジデヒドロアラニン(Dha)、2,3−ジデヒドロブチリン(Dhb)、S−アミノビニル−D−システイン(AviCys)およびS−アミノ−D−メチルシステイン等の不飽和ランチオニン誘導体、ならびにD−アラニン、2−オキソプロピオニル、2−オキソブチリルおよびヒドロキシプロピオニル残基等の、他の翻訳後修飾アミノ酸(図2)があってもよい。ナイシンAのケースのように、LanおよびMeLanにより生成された環構造は重なり合っていてもよく(例えば、環DおよびE)、これはさらに分子に複雑性を加えている。
【0006】
グラム陽性菌は公知のランチビオティックの生合成に関与している。それらは、リボソームで合成されたプレプロペプチド上で作用する連続的な一連の酵素段階を用いて分子を成熟させる。修飾酵素のコードに関与する遺伝子は、典型的には8〜10KbのDNA断片上にクラスター形成され、染色体、プラスミドまたはトランスポゾンの一部として存在する。タイプA(I)のランチビオティックにおいては、lanA遺伝子によりコードされるリボソームで合成されるプレペプチド中の全てのセリンおよびスレオニン残基が、lanB遺伝子によってコードされる酵素によって脱水され、これらの脱水されたアミノ酸は、分子のカルボキシル末端に向かってより近い位置の隣接するシステイン残基とのチオエーテル結合の形成に関与する。この反応は、lanC遺伝子によって発現するタンパク質によって触媒される。エピデルミンおよびミュータシン1140等の特定のランチビオティックの場合には、C−末端のシステインはlanD遺伝子によって発現する酵素によってカルボキシル基が除去され、S−アミノビニル−D−システインに変換される。lanT遺伝子の生成物による細胞外輸送の後、修飾プレプロペプチドのリーダー配列がlanPによってコードされる細胞外プロテアーゼによって開裂され、成熟した抗生物質が生成する(Ra et al.,(1996)Microbiology−Uk.142,1281−1288;Kupke&Gotz(1996)Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology.69,139−150;Kuipers et al.,(1996)Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology.69,161−169)。
【0007】
十分な量または十分な純度でランチビオティックを得るのが難しいことが、治療用途における潜在的有用性を研究する試みの妨げとなっていた。今までに特徴づけられた約40のランチビオティック(Chatterjee et al.,(2005)Chemical Reviews.105,633 683)のうち、乳連鎖球菌(Streptococcus lactis)によって生成されるタイプA(I)のランチビオティックであるナイシンAのみが商業量で生成され、過去50年間、食品防腐剤としての広い用途が見出されてきた。有意な耐性発現のない、ナイシンAの長期にわたる広範な使用(DelvesBroughton et al.,(1996)Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology.69,193−202)は、種々の用途のためのさらなるランチビオティックの開発に大きな弾みをつけた。
【0008】
長年にわたり改良されてきた発酵工程を用いて、ナイシンAは大量生産される。ナイシンAの精製プロトコールは、最近、米国特許(USPA2004/0072333)として出願された。このプロトコールは、高価なプロテアーゼカクテル、それに続くカラムクロマトグラフィーを用いた。しかし、ナイシンA精製のための商業的に実現可能な方法は公表されていない。これは、治療用途のための純粋なナイシンAおよび他のランチビオティックの適切な生成方法を見出すことに目下の関心が集まっていることを証明する。
【0009】
種々の潜在的オプションが、ランチビオティックの大量生産のために存在する。材料費の観点から、発酵工程は、議論の余地なく最良の方法である。多くのランチビオティックを発酵させる最近の方法は、1リットルあたりμgの量で生産するが、薬剤開発のためには十分ではない。
【0010】
また、ランチビオティック修飾機構を用いたインビトロ生産が、タイプA(I)のランチビオティックにおいて探索された(Kupke&Gotz(1996)Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology.69,39−150;Kuipers et al.,(1996)Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology.69,161−169)。LanDを除いて、ランチビオティックプレプロペプチドの翻訳後修飾に関与する酵素は、無細胞溶解物において、または精製された物質としては活性がない(Kupke&Gotz(1996)Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology.69,139−150;10;Kupke&Gotz(1997)Journal of Biological Chemistry.272,4759−4762;Kupke et al.,(1992)Journal of Bacteriology.174,5354−5361;Kupke et al.,(1993)Fems Microbiology Letters.112,43−48;Kupke et al.,(1995)Journal of Biological Chemistry.270,11282−11289;Kupke et al.,(1994)Journal of Biological Chemistry.269,5653−5659)。タイプA(II)のランチビオティックの場合は、ラクチシン481のインビトロ合成が可能であることがScienceに最近報告されている。このグループおよびタイプBのランチビオティックに属する分子は、Dha、Dhb、Lan、およびMeLan残基を形成するために、1つのマルチヘッド酵素、LanMのみを用いる(Xie et al.,(2004)Science.303,679−681)。ラクチシン481の生合成に関する報告は、収量および純度に関する詳細な情報を全く提供しなかったが、それらの仕事はナノグラムスケールで実施された。この報告に開示されている進展は小さいが有意義な前進を意味し、これが賞賛を持って広く受け入れられたことは、治療薬としてランチビオティックを緊急に開発する必要性をさらに示している。
【0011】
ランチビオティックを商業規模で生産するための、適当な発現ベクターにクローニングされたlan遺伝子クラスターおよび非感受性宿主を用いる第三の選択肢は、システムの複雑さが原因ではないと思われ、関与する種々の遺伝子を異なるように調節する必要があると考えられる。ガリデルミン用のlan遺伝子クラスターは、この特定のランチビオティックの生産を向上するために、枯草菌(Bacillus subtilis)中へクローニングされた。しかし、遺伝子の調節部位が種によって異なることが知られていることから、この戦略によって収率が大幅に増すことはなく、全てのランチビオティックに適してはいない。関連するアプローチは、大腸菌(Eschrichia coli)中へクローニングされたミュータシン1140についての人工遺伝子を用いた。この人工遺伝子では、チオエーテル結合の形成に関与するセリンおよびスレオニン残基のための天然のコドンをシステインコドンに置換した。この修飾遺伝子はpET32にクローニングされ、ジスルフィド結合を最大にするために、大腸菌(E.coli)のOrigami株中で発現させた。ジスルフィド基から1つのイオウ原子を押しだし、それによりチオエーテルに変換するための新規な化学的方法が開発された。一般に、この方法は実現可能ではあるが、ジスルフィド結合の組み合わせが多く、活性型を非活性異性体から分離することが困難であるため、得られる収率は低い。
【0012】
しばしば重なり合う環構造は、ナイシンAおよび他のランチビオティックの生物活性に重要だが、合成的に克服するのが難しい。インビトロ合成法が、生物活性ペプチドを含む種々のランチオニンおよびランチビオティック合成のために広く研究されてきた。ランチビオティック合成という挑戦は骨の折れるものであり、今までのところ、総合的な合成方法は開発されていない。ランチオニン合成のいくつかの方法は文献に報告されている。これらは、塩基のまたは求核の条件を用いて、構築済みのペプチド中のシスチン単位をインサイチューで脱硫することを含む(Galande et al.,(2003)Biopolymers(Peptide Science)71,543−551;Galande&Spatola(2001)Letters in Peptide Science.8,247−251)。脱硫法は、ジアステレオ選択性の欠如および低収率のため、商業的には実現可能ではない。また、予め形成されたペプチド中にDha残基を生成し、続いてマイケル付加反応によりランチオニン環を形成する生体模倣法も用いられた。ペプチドの予備的構築は、おそらくジアステレオ選択的なマイケル付加をもたらす(Burage et al.,(2000)Chemistry A European Journal.6,1455−1466)。直交的に保護されたランチオニンを含む直鎖ペプチドを合成し、環化し、環状ペプチド生成物を開裂する、オキシム樹脂上でのペプチド環化も用いられている(Melacini et al.,(1997),J.Med.Chem.40,2252−2258;Osapay et al.,(1997)Journal of Medicinal Chemistry.40,2441−2251)。こうした方法は前途有望であるが、重なり合うチオエーテル環を有するランチビオティックを生成することはできない。大半の既知のランチビオティックが重なり合う環を含むことを考慮すれば、このことは特に重要となる。
【0013】
概念的に、生物学的アプローチおよび生物模倣法に関連する固相ペプチド合成(SPPS)法の修飾を含む、インビトロ合成法を開発する明らかな利点がある。第一に、分子組成物は生理学的なアミノ酸の正常なセットに限定されない。アミノ酸類似体の設計が可能であり、確立されている固相合成法を用いてそれを組み込むことができる。また、平行合成を加えることができ、これにより、劇的に候補基質数を増加させる。この方法はもっぱらインビトロで実施され、生物活性分子のインビボ合成から生じる多くの懸念は払拭される。例えば、発酵中の生産物の分解も、生産微生物における生物活性分子の細胞毒性も問題にならない。
【0014】
インビトロ合成という目的を達成するため、潜在的に適切な保護基を有する直交ランチオニンが、予め形成されたDhaへのシステインのマイケル付加等の種々のアプローチを用いて、SPPSに合わせて設計されている(Probert et al.,(1996)Tetrahedron Letters.37,1101−1104)。この方法はジアステレオマーの1:1混合物をもたらし、それ故、商業的価値がないことがわkった。保護システインによるセリンラクトンの開環も報告されているが、これはランチオニンおよびチオエステルの混合物をもたらす。アジリジンの開環が研究されてきたが、これはαおよびβ部位におけるアジリジンの開環によるレジオ異性体混合物を生産すると思われる(Dugave&Menez(1997)Tetrahedron−Asymmetry.8,1453−1465;Swali et al.,(2002)Tetrahedron.58,9101−9109)。最近の報告は、保護β−ブロモアラニンを用いて、適切に保護されたシステインをアルキル化することによりランチオニンを合成しうることを示唆するが、この方法では重なり合う環を有する分子は構築できない(Zhu(2003)European Journal of Organic Chemistry.20,4062−4072)。
【0015】
市販のSPPSのFmoc/Boc保護類似体は、合成ランチビオティックおよび他の立体配座制限生物活性ペプチドの課題を解決するのに十分ではないため、当該技術分野には、複数の環構造、および重なり合う構造を有する本質的な環構造を形成する、分子内架橋を有するペプチド合成が必要とされている。特に、大規模なランチビオティック合成のためのインビトロ法が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本発明は、下記工程を含む、少なくとも1つの分子内架橋を含む、分子内架橋したポリペプチドの合成法を提供する。
a)下記式
【化6】

(式中、Lは共有結合したアミノ酸側鎖を表し、D、EおよびGは、それぞれが異なる反応条件下で選択的に除去される保護基であり、保護基Dを除去するための反応条件は、ポリペプチド鎖の残りのアミノ酸のアミノ保護基を除去するための反応条件とは異なる)
で表される、特異的に保護された直交分子内架橋のフリーのカルボキシ末端を、固相担体、または任意に固相担体に結合していてもよいアミノ酸またはポリペプチドのフリーのアミノ末端に結合させる工程、
b)保護基Eを除去してフリーのアミノ末端を形成する工程、
c)フリーのアミノ末端にアミノ保護されたアミノ酸を加え、次いで、アミノ酸を脱保護して新規なフリーのアミノ末端を得る工程、
d)任意にc)を1回以上繰り返す工程、
e)保護基Gを除去してフリーのカルボキシ末端を形成する工程、
f)e)のフリーのカルボキシ末端をフリーのアミノ末端に結合する工程、
g)保護基Dを除去してフリーのアミノ末端を形成する工程、および
h)任意に、フリーのアミノ末端にアミノ保護されたアミノ酸を加え、次いでアミノ酸を脱保護して新規なフリーのアミノ末端を得る工程、および
i)任意にh)を1回以上繰り返す工程。
【0017】
本発明は、さらに、下記工程を含む、2つの重なり合う分子内架橋を含む、分子内架橋ポリペプチドの合成法を提供する。
a)下記式
【化7】

(式中、Lは共有結合したアミノ酸側鎖を表し、D、EおよびGは、それぞれが異なる反応条件下で選択的に除去される保護基であり、保護基Dを除去するための反応条件は、ポリペプチド鎖の残りのアミノ酸のアミノ保護基を除去するための反応条件とは異なる)
で表される、第一の特異的に保護された直交分子内架橋のフリーのカルボキシ末端を、
固相担体、または固相担体に場合により結合するアミノ酸またはポリペプチドのフリーのアミノ末端に共有結合させる工程、
b)保護基Eを除去してフリーのアミノ末端を形成する工程、
c)フリーのアミノ末端にアミノ保護されたアミノ酸を加え、次いで、アミノ酸を脱保護して新規なフリーのアミノ末端を得る工程、
d)任意にc)を1回以上繰り返す工程、
e)下記式
【化8】

(式中、Lは前述の通りであり、M、QおよびTは、それぞれが異なる反応条件下で選択的に除去される保護基であり、DおよびMは異なる条件下でのみ除去され、GおよびTは異なる条件下でのみ除去され、保護基Mを除去するための反応条件は、ポリペプチド鎖の残りのアミノ酸のアミノ保護基を除去するための反応条件とは異なり、EおよびQは、Dを除去する反応条件およびMを除去する条件とは異なる条件下で除去される)
で表わされる、第二の特異的に保護された直交分子内架橋のフリーのカルボキシ末端を、フリーのアミノ末端に共有結合させる工程、
f)保護基Qを除去してフリーのアミノ末端を形成する工程、
g)任意に、フリーのアミノ末端にアミノ保護されたアミノ酸を加え、次いでアミノ酸を脱保護して新規なフリーのアミノ末端を得る工程、
h)任意にg)を1回以上繰り返す工程、
i)第一の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Gを除去してフリーのカルボキシ末端を形成する工程、
j)フリーのカルボキシ末端をフリーのアミノ末端に結合する工程、
k)第一の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Dを除去してフリーのアミノ末端を形成する工程、
l)任意に、フリーのアミノ末端にアミノ保護されたアミノ酸を加え、次いでアミノ酸を脱保護して新規なフリーのアミノ末端を得る工程、
m)任意にl)を1回以上繰り返す工程、
n)第二の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Tを除去してフリーのカルボキシ末端を形成する工程、
o)フリーのカルボキシ末端をフリーのアミノ末端に結合する工程、
p)第二の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Mを除去してフリーのアミノ末端を形成する工程、
q)任意に、フリーのアミノ末端にアミノ保護されたアミノ酸を加え、次いでアミノ酸を脱保護して新規なフリーのアミノ末端を得る工程、および
r)任意にq)を1回以上繰り返す工程。
【0018】
さらに、本発明は、2つの分子内架橋を含む分子内架橋したポリペプチドの合成法であって、2つの分子内架橋が、本明細書に定義されるように、連続して2つの環を形成する方法、または2つの埋め込み環を形成する方法を提供する。本発明は、さらに、ナイシンAを含むランチビオティックの合成法を提供する。
【0019】
他の態様においては、本発明は、本明細書に開示された方法で合成された、分子内架橋したポリペプチドを提供する。
【0020】
さらなる態様においては、本発明は、下記式
【化9】

(式中、DおよびEは異なる保護基であり、例えば、Fmoc、AllocまたはIvDdeであり、Gは保護基であり、例えば、プロパルギルエステルまたはベンジルエステルである)
で表わされる、特異的に保護された直交分子架橋のランチオニンを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
固相ペプチド合成のための特異的に保護された直交ランチオニン技術(DPOLT)が本明細書に開示される。この技術は、その活性カルボキシルおよびアミノ保護基が特異的に除去される、種々の直交保護ペプチド架橋の大量生産に依存する。直交保護ペプチド架橋を、例えば固相ペプチド合成において用いて、分子内架橋形成環構造を含む、立体配座制限生物活性ペプチドを生成することができる。特に、DPOLTを用いて、2以上の分子内架橋を有し、重なり合う環構造を有するポリペプチドを合成することができる。
【0022】
限定されるものではないが、DPOLTは、複雑な構造を有するランチビオティック(重なり合う環構造を含む)を商業的に実現可能な方法でインビトロで生成することを可能にする。ランチビオティックペプチドの合成は、例えば、通常の固相ペプチド合成法を用いて、特異的に除去することができる保護基でその活性カルボキシルおよびアミノ基が直交的に保護されているランチオニン類似体をペプチドに取り込むことにより実施される。この方法は、例えば、治療用途のための新規な抗生物質を定常的に提供することを可能にする。
【0023】
略語
本明細書で用いられる場合、以下の略語は以下の意味を有する。
Alloc=アリルオキシカルボニル
Boc=t−ブトキシカルボニル
DMAP=ジメチルアミノピリジン
DMF=ジメチルホルムアミド
Fmoc=9−フルオレニルメトキシカルボニル
HMBC=異核多重結合相関
HMQC=異核多重量子相関
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
ivDde=1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソ−シクロヘキシリデン)−3−メチル−ブチル
LC−MS=液体クロマトグラフィー−質量分析
MS=質量分析
NMR=核磁気共鳴スペクトロスコピー
NOESY=核オーバーハウザー効果スペクトロスコピー
TFA=トリフルオロ酢酸
TLC=薄層クロマトグラフィー
TOCSY=全相関分光法
【0024】
分子内架橋ポリペプチド
本明細書に開示される方法は、ランチビオティックを含むがこれらに限定されない、分子内架橋ポリペプチドを合成するために用いることができる。本明細書で用いられる場合、用語「ポリペプチド」、「タンパク質」および「ペプチド」は、アミノ結合により結合したアミノ酸モノマーの鎖を含むポリマーを意味する。ポリペプチドは、1つのアミノ酸のα−炭素カルボキシル基と他のアミノ酸のアミノ基との縮合またはカップリング反応によって形成できる。そのため、鎖の1つの末端(アミノ末端)における末端アミノ酸はフリーのアミノ基を有するが、鎖のもう1つの末端(カルボキシ末端)における末端アミノ酸はフリーのカルボキシル基を有する。本発明の分子内架橋ポリペプチドは、任意に、アミノおよび/またはカルボキシ末端を含む種々の官能基または保護基によって、修飾または保護される。
【0025】
本明細書で用いられる場合、用語「分子内架橋ペプチド」または「分子内架橋ポリペプチド」は、少なくとも1つの分子内架橋を有するペプチド鎖を意味する。本明細書で用いられる場合、用語「分子内架橋」、「ペプチド架橋」、「分子内架橋部分」または「架橋」は、1つのペプチド鎖中に含まれるか、または1つのペプチド鎖中に取り込ませるために用意される2つのアミノ酸残基が、それらの側鎖を通じて相互に共有結合している場合に形成される構造を意味する。このような結合は内部架橋ポリペプチドを生成する。本明細書で用いられる場合、用語「環」または「環構造」は、分子内架橋したポリペプチドの架橋部分、すなわち、共有結合した2つのアミノ酸残基およびこれらの間のポリペプチド鎖、ならびにそれらの側鎖によって形成される共有結合を含む構造を意味する。
【0026】
本発明の分子内架橋ペプチドは一般式
【化10】

(式中、AはHまたはアミノ末端保護基であり、ZはHまたはカルボキシ末端保護基であり、Xは共有結合、1つのアミノ酸、または少なくとも2アミノ酸長のペプチド鎖であり、Rは、その側鎖を通して分子内架橋を形成するアミノ酸残基である)
を有する。1つの「X」ペプチド鎖中の側鎖、または異なる「X」ペプチド鎖中に位置するアミノ酸の間に、さらに分子内架橋があってもよい。
【0027】
本明細書で用いられる場合、用語「アミノ末端保護基」および「カルボキシ末端保護基」は、反応部位に付加することができ、かつ任意に反応部位本発明においては、それぞれアミノ基およびカルボキシ基)から除去することができ、反応部位以外の部位で化学物質を操作することを可能とする任意の化学部分を意味する。
【0028】
本発明の分子内架橋ポリペプチドのアミノ酸には、20種の天然に生ずるアミノ酸、ならびに非天然アミノ酸、アミノ酸類似体およびペプチド模倣薬が含まれてもよい(Spatola,(1983)in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins,Weinstein,ed.,Marcel Dekker,New York,p.267)。本発明において用いられるアミノ酸はすべて、D−またはL−光学異性体のいずれであってもよい。好適な実施形態においては、本発明の分子内架橋ポリペプチドには、任意の組み合わせで以下の残基の1つ以上が含まれる:2,3−ジデヒドロアラニン(Dha)、(Z)−2,3−ジデヒドロブチリン(Dhb)、ヒドロキシプロピオニル、2−オキソブチリル、および2−オキソプロピオニル(図2参照)。
【0029】
本発明の分子内架橋ペプチドが、2以上の分子内架橋を有し、広範囲の可能な構造を形成しうることが当業者によって理解されるだろう。例えば、2つの分子内架橋を含む分子内架橋ポリペプチドについては、分子内架橋は、以下に示すように、連続型、埋め込み型または重なり合い型であってもよい。
【0030】
【化11】

【0031】
2つの分子内架橋が重なり合っている場合、これは第二の分子内架橋の1つのアミノ酸が、一次アミノ酸配列において、第一の分子内架橋の2つのアミノ酸の間にあり、第二の分子内架橋のもう1つのアミノ酸が、第一の分子内架橋の両方のアミノ酸の前または後ろのいずれかにあることを意味する。2つの分子内架橋が連続している場合、これは第二の分子内架橋の両方のアミノ酸が、一次アミノ酸配列において、第一の分子内架橋の両方のアミノ酸の前または後ろにあることを意味する。2つの分子内架橋が埋め込まれている場合、これは第二の分子内架橋の両方のアミノ酸が、一次アミノ酸配列において、第一の分子内架橋の2つのアミノ酸の間にあることを意味する。
【0032】
分子内架橋ペプチドが3つ以上の分子内架橋を有する場合、より多くの可能な構造が形成され得る。例えば、複数の重なり合う環が存在し得る。非限定的な具体例において、分子内架橋ポリペプチドは5つの分子内架橋を有してもよく、5つの架橋のうち2つが重なり合う環構造を形成し、残りの3つの架橋が、互いに連続し、環と重なり合っている。ランチビオティック ナイシンAはこのような構造を表す(図1参照)。
【0033】
好適な実施形態においては、本発明の分子内架橋ポリペプチドはランチビオティックペプチドである。さらに好適な実施形態においては、本発明の分子内架橋ポリペプチドはナイシンAおよびその類似体である。
【0034】
特異的に保護される直交分子内架橋
本発明の直交的に保護される分子内架橋は以下の一般式
【化12】

(式中、Lは共有結合アミノ酸側鎖を表し、DおよびEは水素またはアミノ末端保護基であり、GおよびJは水素またはカルボキシ末端保護基である)
を有する。
【0035】
アミノ酸側鎖を含む結合は、チオエーテル、ジスルフィド、アミドまたはエーテルであってもよいが、これらに限定されない。好適な実施形態においては、分子内架橋はチオエーテル結合を含む。
【0036】
ポリペプチド合成における「特異的に保護された」または「直交的に保護された」分子内架橋の取り込みは、他の分子内架橋を含むペプチド鎖の他の部分の保護基の除去とは別に、その保護基の選択的な除去をもたらす。言い換えれば、特定の分子内架橋の保護基は、その開裂条件がポリペプチドの他の保護基または官能基の安定性を妨害することがないように選択される。これらの基の脱保護中の交差反応性は最小であり、標準的な質量分析技術によって監視できる。所望の生成物は、それらの不純物から、標準的なHPLCまたは他の技術によって精製することができる。開裂は、任意の選択された優先順位で行うことができる。
【0037】
保護基、および保護基を導入および除去する方法は、例えば、“Protective Groups in Organic Chemistry,”Plenum Press,London,N.Y.1973および“Methoden der organischen Chemie,”Houben−Weyl,4th edition,Vol.15/1,Georg−Thieme−Verlag,Stuttgart 1974およびTheodora W.Greene,“Protective Groups in Organic Synthesis,”John Wiley&Sons,New York 1981に開示されている。多くの保護基の特徴は、容易に除去できること、すなわち、望ましくない二次反応の発生なく、例えば、溶媒分解、還元、光分解により、有機パラジウムおよび有機コバルト触媒等の有機金属触媒の使用により、または生理的条件下で実施できることである。
【0038】
当該技術分野において多数の保護基が知られている。実例となる、非限定的な保護基のリストとしては、メチル、ホルミル、エチル、アセチル、t−ブチル、アニシル、ベンジル、トリフルオロアセチル、N−ヒドロキシスクシンイミド、t−ブトキシカルボニル、ベンゾイル、4−メチルベンジル、チオアニジル、チオクレジル、ベンジルオキシメチル、4−ニトロフェニル、ベンジルオキシカルボニル、2−ニトロベンゾイル、2−ニトロフェニルスルフェニル、4−トルエンスルホニル、ペンタフルオロフェニル、ジフェニルメチル、2−クロロベンジルオキシカルボニル、2,4,5−トリクロロフェニル、2−ブロモベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、トリフェニルメチル、および2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−6−スルホニルが挙げられる。種々の異なるタイプのアミノ保護基およびカルボキシ保護基については、例えば、米国特許第5,221,763号(1993年6月22日発行)、米国特許第5,256,549号(1993年10月26日発行)、米国特許第5,049,656号(1991年9月17日発行)、および米国特許第5,521,184号(1996年5月28日発行)を参照。
【0039】
標的の分子内架橋ポリペプチドの合成中に選択的に除去できる保護基であれば、保護基のどのような組み合わせをも用いることができる。好適な実施形態においては、アミノ末端保護基は、Fmoc、Alloc、およびIvDdeからなる群から選択される。他の好適な実施形態においては、カルボキシ末端保護基は、プロパルギルエステルおよびベンジルエステルからなる群から選択される。
【0040】
好適な実施形態においては、直交的に保護される分子内架橋は、直交的に保護されるランチオニンまたはランチオニン誘導体である。さらに好適な実施形態においては、直交的に保護される分子内架橋は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端保護ランチオニン(Lan)、β−メチルランチオニン(MeLan)、S−[(Z)−2−アミノビニル]−D−システイン(AviCys)、またはS−[(Z)−2−アミノビニル]−2−メチル−D−システインである(図2参照)。このような直交的に保護される分子内架橋は、当該技術分野における既知の方法で合成できる。
【0041】
さらに好適な実施形態においては、分子内架橋はランチオニンである。保護ランチオニンは、通常の方法を用いて、図3に示すように逆合成的に合成できる。ランチオニン生成物の立体化学は、この段階で、適切なアミノ酸、例えばシステインおよびセリンの正確な立体異性体から開始することにより確認できる。
【0042】
さらに好適な実施形態においては、分子内架橋は、ランチオニン1またはランチオニン2:
【化13】

であり、これらは例えば、それぞれ図5および図6に概説するように合成できる。簡単には、図5を参照すると、ランチオニン1については、D−セリンをそのアミノ末端保護Alloc誘導体に変換し、次いで、カルボキシ末端保護プロパルギルエステルに変換する。N(Alloc)−D−セリンプロパルギルエステルをその対応するβ−ブロモアラニン誘導体に変換する。この変換は、例えば、N(Alloc)−D−セリンプロパルギルエステルをジクロロメタンに溶解し、この溶液を1当量の四臭化炭素およびトリフェニルホスフィンで処理することにより実施できる。この反応は非常に穏やかであり、ヒドロキシルを臭化物に変換するために通常用いられている(Zhu(2003)European Journal of Organic Chemistry.20,4062−4072)。あるいは、合成は、トルエンまたはジクロロメタン等の溶媒中で三臭化リンを用い、その後弱塩基性の後処理を行って、所望のD−β−ブロモアラニンを得る(Olah et.al.(1980)Journal of Organic Chemistry.45,1638−1639)。他の方法も用いることができる。最終的に、β−ブロモアラニン誘導体は、適切なアルキル化条件下でFmoc−L−Cysと反応させ、ランチオニン1を形成する。ランチオニン2は、図6に概説するように、同様に合成できる。
【0043】
分子内架橋されたポリペプチドの合成
本発明の分子内架橋ポリペプチドは、固相ペプチド合成(SPPS)、溶液相ペプチド合成、天然の化学的連結、インテイン媒介タンパク質連結、および化学的連結またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない、直交的に保護される分子内架橋の使用および取り込みを与える任意の手段により合成できる。好適な実施形態においては、本発明の分子内架橋ポリペプチドは、標準的SPPSの改良版により合成できる。本発明の分子内架橋ポリペプチドは、手動のSPPSによっても、市販の自動化SPPSシンセサイザを用いることによっても合成できる。
【0044】
SPPSは、1960年代前半より当該技術分野において知られており(Merrifield,R.B.,J.Am.Chem.Soc.,85:2149−2154,1963)、広く用いられている。一般的アプローチにおいていくつか既知の変形がある(例えば、“Peptide Synthesis,Structures,and Applications”(c)1995 by Academic Press,Chapter 3 and White(2003)Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,A practical Approach,Oxford University Press,Oxfordを参照)。簡単には、固相ペプチド合成において、所望のC−末端アミノ酸残基を固相に結合させる。ペプチド鎖に加えるべき次のアミノ酸を、そのアミノ末端においてBoc、Fmoc、または他の適切な保護基で保護し、そのカルボキシ末端を標準的なカップリング試薬で活性化する。担体に結合したアミノ酸のフリーのアミノ末端を、次のアミノ酸と反応させ、2つのアミノ酸を結合する。伸長しつつあるペプチド鎖のアミノ末端を脱保護し、所望のポリペプチドが完成するまでこの工程を繰り返す。
【0045】
本発明の方法によれば、標準的SPPSに、特異的に保護される直交分子内架橋を組み込むことにより、分子内架橋ペプチドを合成できる。分子内架橋の一部ではないポリペプチド鎖の部分は、当該技術分野で既知の標準的SPPS技術により合成できる。好適な実施形態においては、アミノ末端をFmoc−またはBoc−保護したアミノ酸が用いられる。さらに好適な実施形態においては、Fmoc系のSPPSが用いられる。特異的に保護される直交分子内架橋は、その活性アミノおよびカルボキシ基の選択的脱保護により、ポリペプチド鎖中に取り込まれる。
【0046】
本発明の方法は、一般式III
【化14】

(式中、A、X、およびRは式Iについて上で定義した通りである)
で表わされるような1つの分子内架橋を有する、分子内架橋ポリペプチドを合成するために用いることができる。このようなポリペプチドは、一般式IV
【化15】

(式中、Lは共有結合アミノ酸側鎖を表し、DおよびEはアミノ末端保護基であり、Gはカルボキシ末端保護基である)
で表わされる1つの分子内架橋を用いて生成される。
【0047】
簡単には、分子内架橋は、そのフリーのカルボキシ末端を介して固相担体に結合したペプチド鎖に、または固相担体に直接結合される。さらなるアミノ酸を分子内架橋のフリーのアミノ末端に結合させ、次いでこれを脱保護する(Eの除去)。分子内架橋の残りのカルボキシ基の保護基(G)を除去し、カルボキシ基を、このように形成されたポリペプチド鎖のフリーのアミノ末端に結合させる。任意に、さらなるアミノ酸を順番に残りのアミノ基に加えてもよい。
【0048】
本発明のポリペプチドの合成中、任意の時点で、伸長しつつあるペプチド鎖上に、唯一の「フリーのアミノ末端」、およびこの前記フリーのアミノ末端に結合させるべき1つの「フリーのカルボキシ末端」が存在する。アミノ酸が追加され、脱保護されるたびに、フリーのアミノ末端は、追加されたアミノ酸によって遮断され、次に新しく追加されたアミノ酸が脱保護されると、新しいフリーのアミノ末端が形成される。当業者は、こうした状況では、1つのアミノ末端のみが存在することを理解するだろう。
【0049】
さらに具体的には、1つの分子内架橋を有する分子内架橋ポリペプチドの合成において、Dは、保護基Dの除去のための反応条件が、EまたはG、および/またはポリペプチド鎖の残りのアミノ酸のアミノ保護基の除去をもたらさないよう選択される。また、逆も適用される。言い換えると、非限定的な具体例として、Fmoc系のSPPSを用いてポリペプチドを合成する場合、Dは、E、Gおよび/またはFmocを除去しない条件下で選択的に開裂することができるよう選択される。同様に、DおよびGは、Fmoc除去のための条件がDまたはGの開裂をもたらさないように選択される。好適な実施形態において、アミノ保護基Eは、ポリペプチド鎖の、分子内架橋の一部ではないアミノ酸のアミノ保護基と同等である。従って、例えば、Fmoc系のSPPSが用いられる場合、Eは好ましくはFmocである。
【0050】
分子内架橋ポリペプチドの合成は、C−末端アミノ酸の固相担体への結合によって開始する。用語「固相担体」は、その上でポリペプチドが合成される任意の固相材料を意味する。固相担体は、「樹脂」、「固相」および「担体」等の用語を包含する。固相担体は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、およびポリアクリルアミド、さらにそれらのコポリマーおよびグラフト等の有機ポリマーから構成することができる。固相担体は、また、ガラス、シリカ、多孔性ガラス(CPG)、または容易な方法でアミノ酸が結合および開裂できる、適切な基を有する逆相シリカ等の無機物であってもよい。固相担体の立体配座は、ビーズ、球、粒子、顆粒、または表面であってもよい。表面は、平面、ほぼ平面、または非平面であってもよい。固相担体は多孔性または非孔性であってもよく、膨潤性または非膨潤性の特徴を有していてもよい。固相担体は、ウェル、くぼみまたは他の容器の形態に構成されていてもよい。複数の固相担体をアレイ状に構成してもよく、これは、ロボットによる試薬の送達のために、またはレーザー照射、および共焦点または偏向光収集による走査などの検出手段によりアドレス可能であってもよい。多数の固層担体が市販されている。最初のアミノ酸の固層担体への結合は、当該技術分野で既知の分析により、その完了を監視することができる。
【0051】
好適な実施形態においては、Fmocアミノ酸を用いて、ポリペプチド鎖を合成する。Fmocアミノ酸は市販されているか、当該技術分野において既知の方法により合成できる。標準的なSPPS法を用いて、追加のアミノ酸をポリペプチド鎖に追加できる。例えば、Fmocアミノ酸が用いられる場合、C末端アミノ酸のFmocアミノ保護基は、樹脂に結合した後に、例えば、DMF中の20%ピペリジンに暴露することによって除去できる。次のFmocアミノ酸は、標準的カップリング化学を用いてポリペプチド鎖に結合できる。反応性側鎖を有するアミノ酸は、目的とする分子内架橋ポリペプチドの合成の間にその側鎖が保護されたままであるように、適切な保護基を用いて保護することができる。カップリングおよび脱保護の工程は、適切なアミノ酸を用いて所望のように繰り返してもよい。このことにより、一般式IIIのXの合成が完了する。
【0052】
分子内架橋は、標準的カップリング化学により、伸長しつつあるポリペプチド鎖に結合させる。あるいは、分子内架橋が、分子内架橋ポリペプチドのC−末端に位置する場合、分子内架橋は、そのフリーのカルボキシ基を介して樹脂に直接結合できる。次いで、保護基Eを適切な条件下、例えば、EがFmocである場合にはDMF中の20%ピペリジンを用いて、選択的に除去する。一般式IIIを参照すると、まずRをポリペプチド鎖に結合させる。順次的な結合および脱保護により、1以上のアミノ酸が続いてポリペプチド鎖に追加され得る(一般式IIIのX)。
【0053】
次に、適切な条件下で保護基Gを選択的に除去する。好適な実施形態において、Gは、ジクロロメタン中のジコバルトオクタカルボニルを用いて開裂できるプロパルギル基、またはジクロロメタン中の木炭上のパラジウムおよびシクロヘキサジエンを用いる水素化プロトコールを用いて開裂できるベンジルエステルのいずれかである。このことにより、一般式IIIのRの付加は完了し、それにより、分子内架橋がポリペプチド中に完全に組み込まれ、環構造が形成される。
【0054】
次いで、適切な条件下で保護基Dを選択的に脱保護する。好適な実施形態において、Dは、ジクロロメタン中の20mol%のPd(PPhおよび20〜25当量のPhSiHを用いて開裂できるAlloc、またはDMF中の2〜10%ヒドラジンにより開裂できるivDdeである。次いで、分子内架橋ポリペプチドは連続的な結合および追加のアミノ酸(一般式III中のX)の脱保護により、伸長することができる。
【0055】
連続して複数の環を有する、すなわち2以上の分子内架橋を有する分子内架橋ポリペプチドは、1つの特異的に保護された分子内架橋を用いて同様に合成できる。任意に、その保護基のみが相互に異なる、特異的に保護された2以上の分子内架橋を用いて、複数の環を有するポリペプチドを合成することができる。その側鎖構造(例えば、LanおよびMeLan)において異なる複数の特異的に保護された分子内架橋を用いて、種々の分子内架橋部分を取り込むこともできる。このような、次の架橋における保護基は、ポリペプチド鎖に組み込まれた第一の分子内架橋における保護基と同一であっても異なってもよい。複数の環を連続して有する分子内架橋ポリペプチドは、第一の分子内架橋をポリペプチド鎖中に完全に組み込み、第一環構造を形成し、末端アミノ保護基を除去し、任意に追加のアミノ酸の順次の結合および脱保護によってポリペプチド鎖を伸長し、カルボキシ末端を介して第二の分子内架橋(第一の分子内架橋と同一または異なる)を完全に組み込み、任意にポリペプチドを伸長し、そして、所望によりこれらの工程を繰り返して標的の分子内架橋ポリペプチドを合成することにより、合成することができる。
【0056】
重なり合っているか、または埋め込まれている複数の環を有する、分子内架橋ポリペプチドについては、2以上の直交的に保護された分子内架橋を用いる必要がある。複数の、直交的に保護される分子内架橋の側鎖構造は同一であっても異なってもよいが、保護基は、それぞれのアミノおよびカルボキシ基の選択的脱保護を可能にするために特異的に直交的に保護されなければならない。そのような架橋の数は、重なり合うかまたは埋め込まれた環の数により異なる。例えば、分子内架橋されたポリペプチドの2つの環が互いに重なり合う場合、または1つが他方に埋め込まれている場合には、2つの異なる選択的に保護された直交分子内架橋が用いられる。例えば、3つの環が互いに重なり合う場合、または互いに埋め込まれている場合、3つの異なる特異的に保護された直交分子内架橋が用いられる。
【0057】
非限定的な具体例においては、目的とする分子内架橋ポリペプチドが2つの重なり合う環を有する場合、一般式VおよびVI
【化16】

(式中、LおよびLは共有結合したアミノ酸側鎖(LはLと同一であっても異なっていてもよい)を表し、D、M、EおよびQはアミノ末端保護基であり、GおよびTはカルボキシ末端保護基であり、DおよびMは異なる条件下でのみ開裂し、EおよびQは同じ条件下で開裂してもよく、EおよびQは、Dを開裂する条件およびMを開裂する条件とは異なる条件下で開裂し、GおよびTは異なる条件下でのみ開裂する)
で表わされる2つの特異的に保護された直交分子内架橋が用いられる。好適な実施形態においては、アミノ保護基EおよびQは、分子内架橋の一部ではないポリペプチド鎖のアミノ酸のアミノ保護基と同等である。従って、例えば、Fmoc系のSPPSを用いる場合、EおよびQは好ましくはFmocであるが、これに限定されない。このような状況では、EおよびQは、例えばBocであってもよい。
【0058】
本発明の方法によれば、2つの重なり合う環を含む分子内架橋ポリペプチドは、まず、C−末端アミノ酸を固相担体に結合させることにより合成できる。追加のアミノ酸を、任意に、標準的なSPPS法を用いてポリペプチド鎖に結合してもよい。好適な実施形態においては、ポリペプチド鎖の合成にはFmocアミノ酸が用いられる。反応性側鎖を有するアミノ酸は、目的とする分子内架橋ポリペプチドの合成の間中、その側鎖が保護されたままであるように適切な保護基で保護される。所望により、適切なアミノ酸を用いて、結合および脱保護の工程を繰り返してもよい。次いで、一般式Vで表わされる分子内架橋を、そのフリーのカルボキシ基を介して伸長しつつあるペプチド鎖に結合し、次いでEを開裂する。DおよびGは影響を受けない。好適な実施形態において、EはFmocである。次いで、任意に、標準的なSPPSに従って、結合および脱保護工程を繰り返すことにより、1つ以上のアミノ酸を順番にポリペプチドのフリーのアミノ末端に結合させることができる。次いで、一般式VIで表わされる分子内架橋を、そのフリーのカルボキシ基を介して伸長しつつあるペプチドに結合し、次いでQを開裂する。D、G、MおよびTは影響を受けない。好適な実施形態において、QはFmocである。再び、任意に、1つ以上のアミノ酸をポリペプチドのフリーのアミノ末端に順番に結合させてもよい。次いで、第一の環を形成するため適切な脱保護化学を用いてGを開裂し、得られたフリーのカルボキシ基を、ポリペプチド鎖のフリーのアミノ末端に結合する。保護基D、MおよびTは影響を受けない。次いで、保護基Dを適切な条件下で除去し、フリーのアミノ基を暴露する。Dの開裂中、保護基MおよびTは影響を受けない。次いで、任意に、追加のアミノ酸をポリペプチドのN−末端のフリーのアミノ基に結合してもよい。第二の環を形成し、それによって重なり合う環を形成するためには、適切な条件下でTを開裂し、得られたフリーのカルボキシ基をポリペプチド鎖のフリーのアミノ末端に結合させる。次いで、適切な条件下でMを開裂し、追加のアミノ酸を順番に結合させることにより、ポリペプチド鎖をさらに伸長させることができる。
【0059】
本発明の方法によれば、2つの埋め込まれた環を含む分子内架橋ポリペプチドは、一般式VおよびVIで表わされる2つの特異的に保護された直交分子内架橋を用いて同様に合成できる。2つの埋め込まれた環を含む分子内架橋ポリペプチドの合成は、2つの重なり合う環を含む分子内架橋ポリペプチドの合成と同様であるが、式VおよびVIで表わされる分子内架橋の脱保護および結合の順番においてのみ異なる。詳細には、式Vで表わされる分子内架橋は、そのカルボキシ末端を介して固相担体に結合したペプチド鎖のフリーのアミノ末端に結合させるか、または、式Vで表わされる分子内架橋を直接固相担体に結合させる。次いでEを開裂し、次いで、標準的なSPPSに従って、結合および脱保護工程を繰り返すことにより、1つ以上のアミノ酸を順番にポリペプチドのフリーのアミノ末端に結合させることができる。次いで、一般式VIで表わされる分子内架橋を、そのフリーのカルボキシ基を介して伸長しつつあるペプチド鎖に結合し、次いでQを開裂する。再び、任意に、1つ以上のアミノ酸をポリペプチドのフリーのアミノ末端に順番に結合してもよい。第一の環を形成するためには、適切な脱保護化学を用いてTを開裂し、得られたフリーのカルボキシ基をポリペプチド鎖のフリーのアミノ末端に結合する。次いで、適切な条件下で保護基Mを除去し、フリーのアミノ基を暴露させる。次いで、任意に追加のアミノ酸をポリペプチドのN−末端のフリーのアミノ基に結合させることができる。第二の環を形成し、それによって埋め込まれた環を形成するためには、適切な条件下でGを開裂し、得られたフリーのカルボキシ基をポリペプチド鎖のフリーのアミノ末端に結合させる。次いで、適切な条件下で保護基Dを開裂し、追加のアミノ酸を順番に結合させることにより、ポリペプチド鎖をさらに伸長させることができる。
【0060】
当業者は、さらに複雑な分子を前述の方法の変形によって同様に生成できることを認識するだろう。例えば、2つの重なり合う環および3つの追加の環を順番に有するポリペプチドは、重なり合う環を含む分子内架橋ポリペプチドの合成のために開示された方法と、連続した環を有する分子内架橋ポリペプチドの合成のために開示された方法とを組み合わせることによって合成できる。
【0061】
分子内架橋ポリペプチドの合成の間、任意に、合成の進行および精度を、MaldiおよびLC−MSを含むがこれらに限定されない、当該技術分野において既知の種々の技術によって監視してもよい。合成が完了した後、分子内架橋ポリペプチドは、適切な環境下で固相担体から開裂される。合成ペプチドが相当量のイオウを含む場合(例えば、ランチオニンを含むポリペプチド)、TFA/チオアニソール/水/フェノール/エタンジチオール(82.5/5/5/5/2.5)カクテルを用いてもよい。開裂反応の進行は、LC−MSまたは他の適切な技術によって周期的に監視してもよい。選択された側鎖保護基により、それらの開裂は樹脂からのポリペプチドの開裂の間に行ってもよく、または分離工程で行ってもよい。最終生成物は、例えば冷エーテルからの沈殿によって分離し、逆相HPLCを含むがこれに限定されない既知の方法により精製できる。
【0062】
本発明の分子内架橋ポリペプチドは、既知の技術によって、構造的におよび生化学的機能について解析できる。構造解析は、2次元NMRおよびX線結晶学を含むがこれらに限定されない技術によって実施できる。分子内架橋ポリペプチドは、60msの混合時間にて獲得される2次元NMR TOCSY(Braunschweiler&Ernst(1983),Journal of Magnetic Resonance 53,521−528)、および200ms、400ms、450msにて獲得されるNOESY(Kumar et.al.(1980),Biochem.Biophys.Res.Commun.95,1−6.Smith,J.L.(2002)Dissertation,University of Florida,Gainesville.Smith et.al.(2000),European Journal of Biochemistry 267,6810−6816)を用いて構造的に首尾よく解析される。
【0063】
好適な実施形態において、本発明の方法は、1以上のランチオニンまたはランチオニン誘導体を含む分子内架橋ポリペプチドの合成に用いられる。さらに好適な実施形態において、本発明の方法はランチビオティックの合成に用いられる。さらに好適な実施形態において、本発明の方法はナイシンAおよびその類似体の合成に用いられる。
【0064】
ナイシンAおよびその類似体は、既知の方法(Hillman et al.(1984),Infection and Immunity 44,141−144;Hillman et.al.(1998),Infection and Immuniy 66,2743−2749)を用いて生物学的活性を測定できる。本発明の方法によって合成されたナイシンAおよびその類似体の構造解析は、先に、Van De Yen ら(1991,European Journal of Biochemistry 202,1181−1188)によりNMRによって決定された、生物学的に生成されたナイシンAの三次元構造との比較により補助することができる。この初期の共有結合の構造決定の作業から得られたアミノ酸配置から、本発明の方法によって合成されたナイシンAおよびその類似体の構造決定のために共有結合を迅速に特徴づけ、全ての関連する長距離NOEを識別することが可能である。
【0065】
DPOLT技術の応用
DPOLTは、多くの専門分野にわたるアプローチから発生するプラットフォーム技術である。この技術を魅力のあるものにするいくつかの利点がある。第一に、その解析のための発酵および精製方法を工夫するために大量の時間および費用を供することなく、治療薬の領域における潜在用途についての相当数の候補ランチビオティックおよび他の生物活性ペプチドの急速な合成およびスクリーニングを可能にする。重なり合うチオエーテル架橋を含む約50種のランチビオティックがあり、毎年さらに発見されており、これらは本明細書に開示される方法によって合成できる。これらのランチビオティックには、A型(I)ランチビオティック ナイシンA、ナイシンZ、サブチリン、エリシンS、エリシンA、ストレプチン、エピデルミン、[Vall−Leu6]−エピデルミン、ガリデルミン、ミュータシン1140、ミュータシンB−Ny266、ミュータシンIII、ミュータシンI、Pep5、エピランシンK7、およびエピシジン280、A型(II)ランチビオティック ラクチシン481、バリアシン、ミュータシンII、ストレプトコッキンA−F22、サリバリシンA、[Lys2−Phe7]−サリバリシンA、プランタリシンC、サブランシン168、およびブチリビブリオシンOR79A、B型ランチビオティック シンナマイシン、デュラマイシン、デュラマイシンB、デュラマイシンC、クラマイシンC、アンコベニン、メリサシジン、アクタガルジン、Ala(O)−アクタガルジン、およびサブチロシンA、二成分ランチビオティック ラクチシン3147Al、ラクチシン3147A2、スタフィロコッキンC55α、スタフィロコッキンC55β、プランタリシンWα、プランタリシンWβ、サイトリシンL、サイトリシンLs;およびルミノコッキンA、カルノシンUI49、マセドシン、ボビシンHJ50、ヌカシンISK−1、およびSapBモルフォゲン等の他のランチビオティックが含まれる(例えば、Chatterjee et al.,2005.Chem.Rev.105,633−83を参照)。
【0066】
過去の経験から、多くのランチビオティックを発酵および精製する多くの方法はすぐに実施されないと思われる。50年以上前に発見されたナイシンAは、治療薬としての開発のための急速かつ適切な精製方法を発見するため、精力的に研究されている。最近の米国特許出願(米国特許出願2004/0072333)はこの目的を達成することを試みているが、種々の高価なプロテアーゼおよび複数の精製工程を用いている。DPOLTによって用いられるSPPS法は、費用効率のさらに高い方法で所望の目的を達成するようである。現在、オキシトシン、サンドスタチンおよびフューゼオン等のSPPS法を用いて合成される35種類以上の生物活性分子が市販されており、長期にわたる需要は確実に増えている。DPOLTの使用は、意図された目的のための新規かつ改良された治療薬を発見するための最適な方法を提供するコンビナトリアルライブラリアプローチであっても、アミノ酸およびそれらの類似体の部位特異的置換を可能にする。この点について、DPOLTは、重なり合う環を有する分子を合成する唯一存在する技術であり、種々の用途における使用のために、ランチビオティックに加え、種々の生物活性分子を生成する可能性を有する。DPOLTはインビトロ生成、例えば、通常の固相ペプチド合成法を用いて、商業的に実現可能な様式で生成される複雑な構造のランチビオティック(重なり合う環構造を有するものを含む)の生成を可能にする。
【0067】
DPOLTは、市販用途の新規ランチビオティックのスクリーニングおよび開発において2つの重要な利点をもたらす。発酵アプローチは、生成のための材料費の観点から明らかに好ましいが、このような方法を最適化するのに必要な時間および労力は、薬剤の発見の初期段階においてひどく高い。さらに、ナイシンAの場合のように、高収率発酵物の精製は容易に達成できない。最終生成物の精製は、通常、SPPSにおいて重要な問題ではない。DPOLTは、臨床試験のために急速な方法で、多くの潜在的に有用な化合物のスクリーニングを可能にするという利点を有する。有望と思われる化合物に関して、DPOLTは市場投入を早くし、また、発酵法の開発のために必要な時間および労力を提供することにより供給することができるかもしれない。活性の幅があまり広くない、薬物動態に欠点がある、毒性問題がある等の、さらなる開発のために必要な特徴を欠く化合物に関しては、DPOLTは、これらの化合物を急速かつ効率的に考慮から除くこと可能にする。最終的に、DPOLTは固相ペプチド合成に依存するため、菌耐性を克服する等の改良特性を有する類似体のスクリーニングおよび開発は簡単であろう。従って、この方法は、目的とする他のランチビオティックおよびペプチドに応用し、機能的に好ましくかつ経済的に有利な特性を有するものを特定することができる。
【0068】
DPOLTおよび本発明の方法によって合成されるランチビオティックについての最も順当な用途は、細菌感染の医学および獣医学的治療である。他にいくつか潜在用途もある。ランチビオティックは、食品保存および化粧品において用いるのに他の殺菌剤より定評ある魅力的な代替手段である(DelvesBroughton et al.,(1996)Antonie Van Leeuwenhoek International Journal of General and Molecular Microbiology.69,193−202;Rollema et al.,(1995)Applied and Environmental Microbiology.61,2873−2878;Liu&Hansen,(1990)Applied and Environmental Microbiology.56,2551−2558;Huot et al.,(1996)Letters in Applied Microbiology.22,76−79;Delvesbroughton,(1990)Food Technology.44,100;Delvesbroughton(1990)Journal of the Society of Dairy Technology.43,73−76;Delvesbroughton et al.,(1992)Letters in Applied Microbiology.15,133−136;Thomas&Wimpenny(1996)Applied and Environmental Microbiology.62,2006−2012;Sahl&Bierbaum(1998)Annual Review of Microbiology.52,41−79)。さらに、ランチビオティックは、局所的な殺菌剤、特に口腔衛生を促進するためのマウスリンスとして研究され、ある程度成功している(Howell et al.,(1993)Journal of Clinical Periodontology.20,335−339)。
【0069】
ランチビオティック薬剤は大きな可能性を有しており、おそらく医学界で非常に好評であろう。抗生物質使用のための市場は高いままであり、感染病が存在する限り存在するが、変異および菌耐性のために、ほとんどの抗生物質の全体的なライフサイクルは短い。ランチビオティックのタイプの抗生物質の利点は、それらが細菌の適応に比較的耐性であるという折り紙付きの業績を有し、他の構成物質に耐性のある多くの病原菌に対して強力な殺菌作用を有することがわかっていることである。
【0070】
本明細書の随所で参照された全ての特許、特許出願、および他の化学的または技術的文章は、全体として参考文献に組み入れられる。好適な実施形態の、現在代表的であるとして本明細書に開示された方法および組成物は、例示であって、本発明の範囲を限定するものとして意図されない。変形および他の用途は当業者に明らかであろう、本発明の精神に含まれる。本明細書に適切に例示して記載された本発明は、本明細書で特に開示されていない要素、限定のいずれかの非存在下で実施できる。従って、例えば、本明細書の各例においては、用語「含む」、「本質的に含む」および「から成る」は、慣習的な意味を変更せずに、他の2つの用語と置換できる。用いられる用語および表現は、説明の用語として限定なしで用いられ、提示および開示され、またはその一部である特徴の同等物を除外するような用語および表現の使用を意図しないが、種々の修飾が請求の範囲に記載されている本発明の範囲内で可能であると認識される。従って、本発明は実施形態および最適な特徴によって特異的に開示されているが、本明細書で開示された概念の修飾および変更は、明細書および添付した請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であると考えられることを理解すべきである。
【0071】
さらに、本発明の特徴または態様が、マーカッシュグループまたは代替え手段の他のグルーピングの点から記載される場合、当業者は、本発明はまた、マーカッシュグループまたは他のグループの個々のメンバーまたはサブグループのすべてについて記載されることを認識するだろう。
【0072】
以下の実施例に照らして本発明をよりよく理解できるが、これは説明のみを目的とし、多少なりとも本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0073】
実施例1:特異的に保護された直交ランチオニンの合成
A.Fmoc−Cysの合成
図4に概説したように、Fmoc保護システイン(図3、構造B)を、連続した2段階でL−シスチンから合成した。炭酸ナトリウム(4.6g,43.6mmol)およびL−シスチン(5.0g,20.8mmol)を水(200mL)に溶解した。得られた溶液を10℃に冷却した。FmocCl(11.85g,45.8mmol)をジオキサン(80mL)に溶解し、得られた溶液を、L−シスチン溶液に滴下して加えた。溶液を10℃で2時間撹拌し、徐々に室温まで加温した。高粘度の白色沈殿物を得、焼結ガラス漏斗で濾過した。生成物をジエチルエーテル(50mL)で粉砕し、真空下で2日間乾燥させた。白色粉末、N,N’−ビス(Fmoc)−L−シスチン(14.0g、収率98%)が得られた。
【0074】
N,N’−ビス(Fmoc)−L−シスチン(12.0g,17.5mmol)をメタノール(300mL)に溶解した。粒状亜鉛(12.0g)をこの溶液に加え、得られた混合物をマグネティックスターラーで激しく撹拌した。反応混合物に、トリフルオロ酢酸(75mL、1mol)を2時間かけて滴下して加え、室温で12時間撹拌した。反応をC−18逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)および薄層クロマトグラフィー(TLC、クロロホルム/メタノール/酢酸=30:1:0.1、v/v)により監視した。N,N’−ビス(Fmoc)−L−シスチンの消失時に、反応混合物を濾過し、ロータリーエバポレータで濃縮し、容量を約100mLまで減少させた。ジクロロメタン(400mL)を加え、混合物を2N塩化水素水溶液で洗浄した。水層をジクロロメタンで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶液の濃縮により、白色粉末、N−(Fmoc)−L−システインを得た(8.8g、73%)(図3および4、構造B)。
【0075】
B.N−(Alloc)−D−セリンプロパルギルエステルの合成
N−(Alloc)−D−セリンプロパルギルエステル(図3、構造A)の合成は以下のように実施した(図5参照)。D−セリン(10.5g、100mmol)および炭酸ナトリウム(11.1g、105mmol)を水(100mL)に溶解した。アセトニトリル(50mL)をこの溶液に加え、混合物を氷浴中で5℃まで冷却した。クロロギ酸アリル(11.7mL、13.3g、110mmol)を30分かけて滴下して加えた。反応混合物を徐々に室温まで加温し12時間撹拌した。混合物を真空で約100mLまで濃縮してアセトニトリルを除去し、残留物を0〜5℃に冷却した。濃厚HCl水溶液(約10mL)を加えることにより、溶液のpHを2.0に調整した。酢酸エチル(5×40mL)で生成物を抽出し、抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ロータリーエバポレータで溶媒を真空除去し、淡黄色の油状物質、N−(Alloc)−D−セリン(16.9g、89%)を得た。
【0076】
N−(Alloc)−D−セリン(16g、85mmol)をDMF(70mL)に溶解した。得られた溶液に重炭酸ナトリウム(7.9g、94mmol)を加えた。臭化プロパルギル(トルエン中80%、10.5mL、94mmol)を室温で20分かけて滴下して加えた。反応混合物を室温で2日間撹拌した。反応混合物を、ロータリーエバポレータで真空濃縮し、残留物を酢酸エチル(100mL)に溶解した。溶液を重炭酸ナトリウム水溶液(2×50mL)および水(2×50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。ロータリーエバポレータで溶媒を真空除去し、N−(Alloc)−D−セリンプロパルギルエステルを得た(18g、収率93%)。
【0077】
C.N−(ivDde)−D−セリン(ベンジル)エステルの合成
N−(ivDde)−D−セリン(図3、構造C)は、D−セリン、および以前に報告された方法(Akhrem,A.A.,et al.Synthesis 1978,925)を用いて、ピリジンの存在下でのジメドンと塩化イソバレリルとのO−アシル化、次いで形成された5,5−ジメチル−3−オキソシクロヘキサ−1−エニル 3−メチルブタノエートの塩化アルミニウムでの転位によって合成されたivDde−OHから生成した。特に、ジクロロメタン(50mL)中の塩化イソバレリル(13.5mL、13.3g、110mmol)溶液を、ジクロロメタン(150mL)中のジメドン(14g、100mmol)およびピリジン(9.7mL、9.5g、120mmol)の撹拌溶液に、15分かけて滴下して加えた。反応混合物を1.5時間撹拌し、2N塩酸水溶液(2×50mL)、水および飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥した。ロータリーエバポレータで溶媒を真空除去し、淡黄色の油状物質、5,5−ジメチル−3−オキソシクロヘキサ−1−エニル 3−メチルブタノエートを得た(22.4g、収率100%)。氷浴中で冷却した、ジクロロメタン(100mL)中の塩化アルミニウム(16.0g、120mmol)の撹拌した懸濁液に、5,5−ジメチル−3−オキソシクロヘキサ−1−エニル 3−メチルブタノエート(11.2g、50mmol)の溶液を30分かけて滴下して加えた。反応混合物を室温まで加温し、1時間撹拌した。次いで、反応混合物を、氷上で冷却しながら、37%塩酸水溶液(50mL)および氷(150g)の混合物に、温度が5℃を超えないようにゆっくりと注いだ。食塩水(200mL)を混合物に加え、生成物をジクロロメタン(6×50mL、抽出の完全性はTLCで確認した)を用いて抽出した。抽出物を食塩水(2×50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレータで真空濃縮した。粗生成物をヘキサン〜酢酸エチル:ヘキサン(1:10)の勾配を用いたシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーで精製し、淡黄色の油状物質、ivDde−OHを得た(10.5g、94%)。
【0078】
次いで、N−(ivDde)−D−セリンを以下のように合成した。メタノール(50mL)中のivDde−OH(1.1g,5mmol)およびD−セリン(0.6g,5.75mmol)の混合物に、N−エチルジイソプロピルアミン(3.4mL,2.6g,20mmol)を加えた。還流しながら、反応混合物を一晩撹拌した。TLC試験(酢酸エチル/ヘキサン1:4)は、フリーのivDde−OHがないことを示した。反応混合物を還流しながら一晩撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、ロータリーエバポレータで溶媒を真空除去した。残留物を水(40mL)に溶解し、5〜10℃に冷却し、2N塩酸水溶液を滴下して加えることにより、pH2まで酸性化した。混合物を室温で30分撹拌し、沈殿を濾過し、水で洗浄し、真空で乾燥して、白色の微結晶、N−(ivDde)−D−セリンを得た(1.5g、96%)。
【0079】
N−(ivDde)−D−セリンベンジルエステルは以下のように生成した。DMF(20mL)中のN−(ivDde)−D−セリン(0.93g、3mmol)および重炭酸ナトリウム(0.34g、4mmol)の混合物に、臭化ベンジル(0.43mL,0.62g,3.6mmol)を加え、混合物を室温で24時間撹拌した。混合物をロータリーエバポレータで真空濃縮し、残留物を酢酸エチル(40mL)に溶解した。溶液を水で洗浄し、水層を酢酸エチル(2×30mL)で抽出した。複合有機層を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(2×40mL)、および水(40mL)で洗浄した。有機層を炭酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレータで溶媒を真空除去し白色の針状物質、N−(ivDde)−D−セリンベンジルエステルを得た(1.03g、86%)。
【0080】
D.N−(Alloc)−D−β−ブロモアラニンプロパルギルエステルおよびN−(ivDde)−D−β−ブロモアラニンベンジルエステルの合成
対応する、N−(Alloc)−D−セリン(プロパルギル)エステルのβ−ブロモアラニン誘導体およびN(ivDde)−D−セリン(ベンジル)エステルを、ジクロロメタン(または同様の非プロトン性溶媒)中の1当量の適切なエステルに溶解し、この溶液を、1当量の四臭化炭素およびトリフェニルホスフィンで処理、合成する。TLCによって観察されるように、反応が完了するまで、反応物を室温で撹拌し、所望のβ−ブロモアラニン誘導体をフラッシュクロマトグラフィーで精製する。あるいは、トルエンまたはジクロロメタン等の溶媒中の三臭化リンを用い、次いで軽い簡単な処理を施すことで合成を行い、所望のD−β−ブロモアラニンを得る。ブロミル化に加え、トシル化または他の脱離基を、最終的に保護されたランチオニン生成のための以下に記載したアルキル化工程に用いてもよい。
【0081】
E.ランチオニン1および2の合成
ランチオニン1は、N(Alloc)−D−β−ブロモアラニンプロパルギルエステルを(Fmoc)−L−システインでアルキル化することにより合成する(図5)。ランチオニン2は、N(ivDde)−D−β−ブロモアラニンベンジルエステルを(Fmoc)−L−システインでアルキル化することにより合成する(図6)。
【0082】
それぞれのβ−ブロモアラニンは、(Fmoc)−L−システインを用いて以下のようにアルキル化する。1当量のβ−ブロモアラニンをジクロロメタン(または同様の非プロトン性溶媒)に溶解し、臭化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、またはAliquat336等の相間移動触媒の存在下、(Fmoc)システインで処理する。必要な触媒の量は5〜50mol%であり、最も効果的に良好な反応速度および混じりけのない生成物の形成を最適化できる。反応温度は、また10〜50℃の範囲に最適化できる。
【0083】
このようにして得られた生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、生成物の純度および同一性を、NMR、HPLC、質量分析および/またはTLCにより測定した。ランチオニン1および2の合成経路は比較的容易であり、生成物は、スケールアップおよび大量合成(>10g)が容易に達成できるように、安定していると予想される。
【0084】
実施例2:ランチオニン1および2を用いた、ランチビオティック ナイシンA類似体の合成
A.ナイシンA類似体の固相ペプチド合成
本発明によるナイシンA類似体(配列番号:2)は、以下に概説するように合成する。類似体は、位置33にデヒドロブタリンのアラニン置換、位置30および2にデヒドロアラニンを含む。天然のナイシンAと比べ、生成物の抗菌力スペクトラムおよび抗力に有意な効果のないことを示すエビデンスが相当数ある(Kuipers et al.,(1996);Devos et al.(1995),Molecular Microbiology 17,427−437;Sahl et al.(1995),European Journal of Biochemistry 230,827−853;Bierbaum et al.(1996),Applied and Environmental Microbiology 62,385−392)。
【0085】
特に示さない限り、全てのプロトコールは文献(White(2003)Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,A practical Approach,Oxford University Press,Oxford)に報告された標準的なFmoc SPPS法である。ナイシンAは、段階的な方法でそのカルボキシ末端から合成される(図1参照)。
1.Nα−Fmoc−Lys−Nε−t−ブチルオキシカルボニル−L−リジンのカルボキシルをCLEAR−Acid Resin(登録商標)(Peptide International)に結合する。樹脂を、反応完了を証明するためニンヒドリンで確認する。
2.DMF中の20%ピペリジンを用いて、室温でリジンのアミドに位置するFmoc基の脱保護を実施する。
3.それぞれの(市販)FmocL−アミノ酸を用いて、アラニン、バリン、ヒスチジン、イソロイシンおよびセリン(残基2〜6)の順に結合させるため、結合および脱保護の工程(1〜2)を繰り返す。ヒスチジン、リジンおよびセリン等のアミノ酸は、その置換基を保護するために、それぞれの反応性側鎖に結合したt−ブチル基を有する。
4.次の結合は直交ランチオニン1を用いて実施し、その後、直交ランチオニン1のFmoc基を、DMF中の20%ピペリジンを用いて除去する。
5.Fmocヒスチジン(残基8)を結合する。
6.DMF中の20%ピペリジンを用いてFmocヒスチジンを脱保護し、ヒスチジンを直交ランチオニン2に結合する。
7.ジクロロメタン中の二コバルトオクタカルボニルで直交ランチオニン1のプロパルギル基を開裂する。DMF中の20%ピペリジンを用いて、直交ランチオニン2のFmocアミノ末端を脱マスキングする。直交ランチオニン1の脱マスキングしたC−末端および直交ランチオニン2の脱マスキングしたN−末端を結合する。環Eの合成はこの工程で完了する。
8.ジクロロメタン中の20mol%のPd(PPhおよび20〜25当量のPhSiHでペプチジル樹脂を15〜20分間処理することにより、ランチオニン1のN(Alloc)基を除去する。
9.脱マスクしたN−末端をFmocアラニン(残基11)と結合する。アラニンのFmoc基を、DMF中の20%ピペリジンを用いて脱保護する。
10.ジクロロメタン中の木炭上のパラジウムおよびシクロヘキサジエンを用いた移動水素化プロトコールを用いてランチオニン2の残りのC−末端を脱保護する。
11.ランチオニン2の脱マスキングしたC−末端およびアラニンのN−末端(残基11)を結合する。重なり合う環EおよびDの合成はこの工程で完了する。正しい生成物が合成されたことを確認するため、少量の樹脂を取り、開裂カクテル(後述)を用いてペプチドを開裂する。得られたペプチドを、MaldiおよびLC−MSにより解析する。
12. DMF中の2〜10%ヒドラジンを用いてランチオニン2のivDdeを除去し、得られたフリーのアミノ末端をFmoc保護されたリジン、メチオニンおよびアスパラギン(残基13、14および15)で順番に伸長する。
13.ランチオニン1を、脱保護されたアスパラギンのN−末端に結合する(ランチオニン1またはランチオニン2のいずれかを、環C、BおよびAの合成を完了するために用いることができる)。
14.ランチオニン1のFmoc基を脱保護し、Fmocグリシン、メチオニン、アラニン、ロイシンおよびグリシン(残基17〜21)と順番に結合させ、環Cを形成する。
15.1当量の二コバルトオクタカルボニルを用いて、ランチオニン1のC−末端のプロパルギル基を除去し、グリシン(残基21)のN−末端と結合し、環Cを完成する。
16.ランチオニン1のN末端のAlloc基を、工程8に記載の方法で除去し、Fmocリジン(残基23)と結合する。
17.リジンのN−末端を脱保護し、ランチオニン1をリジンのN−末端に結合する。
18.ランチオニン1のFmoc基を脱保護し、FmocグリシンおよびFmocプロリン(残基25および26)と順番に結合する。
19.1当量の二コバルトオクタカルボニルを用いてランチオニン1のC−末端のプロパルギル基を除去し、プロリンの脱保護したN−末端と結合し、環Bを形成する。
20.前述の方法に従ってランチオニン1のN末端のAlloc基を除去し、ランチオニン1と結合する。
21.ランチオニン1のFmoc基を脱保護し、Fmocロイシン、アラニンおよびイソロイシン(残基29〜31)と順番に結合する。
22.1当量の二コバルトオクタカルボニルを用いてランチオニン1のC−末端のプロパルギル基を除去し、イソロイシンの脱保護したN−末端と結合し、環Aを形成する。
23.前述の方法に従って、ランチオニン1のN末端のAlloc基を除去し、
Fmocアラニンおよびイソロイシン(残基33および34)と順番に結合した。これにより、ナイシンA類似体の合成が完了する。
【0086】
B.合成ペプチドの樹脂からの開裂
合成ペプチドは相当量のイオウを含むため、TFA/チオアニソール/水/フェノール/エタンジチオール(82.5/5/5/5/2.5)を含むカクテルを、樹脂(White 2003)からのペプチドの開裂に用いた。樹脂をジクロロメタンで完全に洗浄し、微量のDMFおよび他の残りの有機物を除去し、前述のカクテルで処理した。開裂のための時点の最適化は、樹脂15〜20mgでの反応を実施し、それに続く18時間以内の1時間おきのLC−MSによって達成される。至適条件は、開裂のスケールアップに用いられる。開裂ペプチドを、冷エーテルに徐々に注ぎ、ペプチドを沈殿させた。沈殿したペプチドを冷エーテルで洗浄し、乾燥させた。
【0087】
開裂ペプチドの精製
1%TFAを含む水中で再構成することにより、ペプチドを精製する。溶液を、アセトニトリル:水の勾配、およびクォードテック検出器を有するBiorad HPLCを用いるC−18逆相カラムにかける。ピークを収集し、Maldi tofにより解析し、生成物の同一性を確認する。所望のペプチドを含む分画を収集し、凍結乾燥して精製された生成物を得る。純度は、HPLC、MSおよびNMRで測定される。
【0088】
実施例3:精製ナイシンA類似体の構造的および生物学的解析
A.ナイシンA類似体のバイオアッセイ
このようにして合成され、実施例1および3に示すように精製されたランチビオティックを等分し凍結乾燥した。得られた生成物の重量を測定し最終収率を計算した。ナイシンA類似体の生物活性を、当該技術分野で既知の、ナイシンA類似体の最小抑制および殺菌濃度の測定を可能にする遅延アンタゴニズムアッセイによって測定する(Hillman et.al.(1984),Infection and Immunity 44,141−144;Hillman et.al.(1998),Infection and Immunity 66,2743−2749)。天然のナイシンAと比較し、それぞれに固有の活性の特定を可能にする。バイオアッセイは以下のように実施する。
【0089】
ナイシンA活性について試験される分画の試料(20μL)を、96wellマイクロタイタープレート中のアセトニトリル:水(80:20)を用いて連続的に2倍希釈する。濃度範囲は20〜0.08μg/mLである。Micrococcus luteus株ATCC272LS(ストレプトマイシン100μg/mLに対して自然に耐性である)の一晩培養物を、トリプチカーゼソイブロス(Difco)に1:1000(約10cfu/mL)に希釈し、37℃で、OD600=0.2になるまで培養した。細胞600μLを、45℃まで冷却した15mLのトリプチカーゼソイブロストップアガー(0.75%寒天)に加え、ストレプトマイシン100μg/mL(ストレプトマイシンは、存在するナイシンAの活性量を測定する能力に影響を及ぼさずに存在する可能性のある汚染物の増殖を防止する)を含むトリプチカーゼソイアガーを含む大きなシャーレの表面に注いだ。表面の寒天をセットした後、試験される画分の2倍希釈の試料5μLをプレートの表面にスポットし、空気乾燥させる。
【0090】
プレートを37℃で24時間インキュベートし、指示菌の増殖阻害ゾーンを調べた。試料の力価を、指示菌M.luteusの明らかな増殖阻害をもたらす最高希釈の相互関係として取る。コントロールとして、真正ナイシンAを希釈し、前述のようにスポットする。濃度範囲は20〜0.08μg/mLである。これにより以前の工程で確立したようなこれらの化合物の純度のレベルをベースにした割合として、天然のナイシンAと関連する合成類似体の生物活性の測定を可能にする。
【0091】
合成および天然のナイシンAを用いたバイオアッセイは、多剤耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、Enterococcus faeclis、およびListeria monocytogenesを含む、少なくとも12種類のグラム陽性菌について実施される。試験を行う標的種として適している1以上の他の抗生物質も、比較のために並行して実施される。
【0092】
B.ナイシンA類似体の構造解析
ナイシンA類似体の三次元構造を、TOSCYおよびNOESY NMRを用いて、天然のナイシンAとの比較により決定する。合成および天然のナイシンA試料(3〜5mM)をHO/DO/3−(トリメチルシリル)−プロピオン酸−D4中で、全量700μLで、ナトリウム塩(TSP)(90.0:9.9:0.1%)を用いて作成する。NMRデータを、25℃で、冷凍器Bruker Avance spectrometerを用いて600MHzで収集し、搬送周波数を、遅延弛緩1.5秒中のプレ飽和によって抑制される水の共鳴に集中する。TOCSY実験は、MLEV−17配列を用いた60秒の混合時間で獲得される(Bax&Davis(1985),Journal of Magnetic Resonance 65,355−360)。NOESY実験は、200ms、400msおよび450msの混合時間で獲得される。HMQCおよびHMBC実験において逆位相コヒーレンスを生成または再び焦点を合わせるための遅延時間は、それぞれ3.5ms(140Hzカップリング)および60ms(8.5Hzカップリング)に調整される。
【0093】
全ての2Dデータは、獲得次元において2048の複合ポイントで、間接次元については256〜512の複合ポイントで収集する。全ての実験について位相敏感間接検波は、States−TPPI法(Marion et.al.(1989),Journal of Magnetic Resonance 85,393−399)を用いて実施する。H化学シフトはTSPを基準とする。四角形の余弦関数、または60°シフトを有する四角形の余弦関数(HMBCのH次元について)による両方の次元における、逆重畳積分、データの増加、いったんゼロ化し、フーリエ変換、基準線補正することにより、最初に残留する水のシグナルを除去することにより、データは、NMRpipe(Delaglio et.al.(1995),Journal of Biomolecular NMR 6,277−293)で処理される。データを、対話型コンピュータプログラムNMRView(Johnson&Blevins(1994),Journal of Biomolecular Nmr 4,603−614)を用いて解析する。H共鳴は、TOCSY(Braunschweiler&Ernst(1983),Journal of Magnetic Resonance 53,521−528)およびNOESY(Kumar et.al.(1980),Biochem.Biophys.Res.Commun.95,1−6)実験を用いる標準的方法(Wuthrich,K.(1986)NMR of Proteins and Nucleic Acids.,Wiley,New York)に従って割り当てられる。HMQC(Bax et. al.(1983),Journal of Magnetic Resonance 55,301−315;Muller(1979),Journal of the American Chemical Society 101,4481−4484)およびHMBC(Bax&Summers(1986),Journal of the American Chemical Society 108,2093−2094)実験を、TOCSYおよびNOESYスペクトルにおいて、あいまいないくつかの領域を明らかにするために用いる。
【0094】
リジン、イソロイシン、ロイシン、グリシンおよびアスパラギン残基は異なっており、2DのTOCSYおよびNOESY実験における割り当てを容易にするHスピン共鳴パターンを容易に特徴づける。これらの残基は最初に特定される。チオエーテル結合パターンは、長距離のβプロトンのNOE結合パターンによって証明される。長距離NOEは、おそらく、位置3および7、8および11、13および19、23および26、並びに25および28における残基間で識別可能である。長距離NOE(>i+2)は、Smithら、2002(Structural and Functional Characterization of the Lantibiotic Miitacin 1140,University of Florida,Gainesville)に開示されるように、3次元モデルのために用いられる。
【0095】
NOE交差ピーク強度はNMRViewで測定される。距離は、関係式rab=rcal(Vcal/Vab)を用いて計算される。式中、rabは原子ab間の距離であり、VabはNOESY aおよびb交差ピーク容積であり、rcalは既知の距離であり、vcalはNOESY校正交差ピークの対応する容積である。校正のために用いられる距離はイソロイシンのβプロトンである。残基間NOE交差ピークは計算の距離制限として用いられる。エネルギー井戸は、1kcal/mol/Åのより大きい、およびより小さい力定数を用いて定義される。
【0096】
全ての立体配座モデリングは、InsightIIソフトウェア(Accerlys,San Diego,CA)を用いて実施する。分子力学シミュレーションは、交差項を有するcvff力場、モースポテンシャル、および40Åのカットオフ距離を用い、誘電率4.0、500Kで真空にて実施される。ペプチドは、InsightIIにビルダ関数を用いて構成される。最初に、直鎖ペプチドが最小化され、次いで、制限されない分子力学が10ps実施される。この後、i+2またはそれ以上の距離制限のみが加えられる。i+2を超える距離制限が各チオエーテル環を生成する残基を充足する場合、分子力学シミュレーションは周期的に停止する。環Aが最初に形成され、次いで、環Bおよび環C、次いで絡み合った環DおよびEが形成される。チオエーテル環がいったん形成されると、i+1の距離制限が、i+2またはそれ以上の距離制限に加えられ、分子力学シミュレーションが、交差項を有するcvff力場、モースポテンシャルを用いて誘電率4.0、500Kで5n秒実施される。次いで、分子力学シミュレーションを、全ての制限とともにさらに20n秒間実施される。
【0097】
力学由来の履歴ファイルは、10p秒毎に記述される。1n秒から開始し100p秒毎に間隔があく履歴ファイルからの200の構造は、2000ステップを用いた全てのNMR制限で、次いで、共役勾配およびニュートン−ラフソンにより、0.01kcal/モル/Åのエネルギーの二乗平均平方根(RMS)勾配が到達するまで最小化されたエネルギーである。200のエネルギーが最小化された構造を、NMR制限妨害について確認する(Laskowski,R.A.,Rullmann,J.A.C.,MacArthur,M.W.,Kaptein,R.&Thornton,J.M.(1996)AQUA and PROCHECK−NMR:Programs for checking the quality of protein structures solved by NMR,Journal of Biomolecular Nmr.8,477−486)。エネルギーが最小化された構造は、Xクラスタープログラムを用いてファミリーにグループ分けされる(Shenkin,P.S.&McDonald,D.Q.(1994)Cluster−Analysis of Molecular−Conformations,Journal of Computational Chemistry.15,899−916)。立体配置は、VanDevenら、1991(European Journal of Biochemistry 202,1181−1188)に決定されたナイシンの天然構造と比較する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、環Eを形成する残基7と10との間、環Dを形成する残基9と12との間、環Cを形成する残基16と22との間、環Bを形成する残基24と27との間、環Aを形成する残基28と32との間の分子内架橋を含むナイシンA[配列番号:1]の構造を示す。環A、BおよびCは連続する環構造を例示し、環DおよびEは重なり合う環を例示する。また、合成したナイシンA類似体[配列番号:2]を示す。
【図2】図2は、翻訳後に修飾されるアミノ酸の非限定的な具体例を示す。
【図3】図3は、特異的に保護されたランチオニンを生成するための逆合成方法を示す。
【図4】図4は、Fmoc−保護システインの合成方法を示す。
【図5】図5は、N(Alloc)−D−β−ブロモアラニンプロパルギルエステルの合成を含む、直交的に保護されたランチオニン1の合成方法を示す。
【図6】図6は、N(ivdDe)−D−β−ブロモアラニンベンジルエステルの合成を含む、直交的に保護されたランチオニン2の合成方法を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの分子内架橋を含む、分子内架橋したポリペプチドを合成する方法であって、
a)下記式
【化1】

(式中、Lは共有結合したアミノ酸側鎖を表し、D、EおよびGは、それぞれが異なる反応条件下で選択的に除去される保護基であり、保護基Dを除去するための反応条件は、ポリペプチド鎖の残りのアミノ酸のアミノ保護基の除去のための反応条件とは異なる)
で表される、特異的に保護された直交分子内架橋のフリーのカルボキシ末端を、固相担体、または固相担体に結合していてもよいアミノ酸またはポリペプチドのフリーのアミノ末端に結合させ、
b)保護基Eを除去してフリーのアミノ末端を形成し、
c)前記フリーのアミノ末端にアミノ保護されたアミノ酸を加え、次いで、前記アミノ酸を脱保護して新規なフリーのアミノ末端を生成し、
d)任意にc)を1回以上繰り返し、
e)保護基Gを除去してフリーのカルボキシ末端を形成し、
f)e)のフリーのカルボキシ末端をフリーのアミノ末端に結合させ、
g)保護基Dを除去してフリーのアミノ末端を形成し、および
h)任意に、前記フリーのアミノ末端にアミノ保護されたアミノ酸を加え、次いで前記アミノ酸を脱保護して新規なフリーのアミノ末端を生成し、および
i)任意にh)を1回以上繰り返す、
の各工程を含む方法。
【請求項2】
2つの重なり合う分子内架橋を含む、分子内架橋ポリペプチドを合成する方法であって、
a)下記式
【化2】

(式中、Lは共有結合したアミノ酸側鎖を表し、D、EおよびGは、それぞれが異なる反応条件下で選択的に除去される保護基であり、保護基Dを除去するための反応条件は、ポリペプチド鎖の残りのアミノ酸のアミノ保護基の除去のための反応条件とは異なる)
で表される、第一の特異的に保護された直交分子内架橋のフリーのカルボキシ末端を、
固相担体、または固相担体に結合していてもよいアミノ酸またはポリペプチドのフリーのアミノ末端に共有結合させ、
b)保護基Eを除去してフリーのアミノ末端を形成し、
c)前記フリーのアミノ末端にアミノ保護されたアミノ酸を加え、次いで、前記アミノ酸を脱保護して新規なフリーのアミノ末端を生成し、
d)任意にc)を1回以上繰り返し、
e)下記式
【化3】

(式中、Lは前述した通りであり、M、QおよびTは、それぞれが異なる反応条件下で選択的に除去される保護基であり、DおよびMは異なる条件下でのみ除去され、GおよびTは異なる条件下でのみ除去され、保護基Mを除去するための反応条件は、ポリペプチド鎖の残りのアミノ酸のアミノ保護基の除去のための反応条件とは異なり、EおよびQは、Dを除去する反応条件およびMを除去する条件とは異なる条件下で除去される)
で表わされる、第二の特異的に保護された直交分子内架橋のフリーのカルボキシ末端を、フリーのアミノ末端に共有結合させ、
f)保護基Qを除去してフリーのアミノ末端を形成し、
g)任意に、前記フリーのアミノ末端にアミノ保護されたアミノ酸を加え、次いで前記アミノ酸を脱保護して新規なフリーのアミノ末端を生成し、
h)任意にg)を1回以上繰り返し、
i)第一の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Gを除去してフリーのカルボキシ末端を形成し、
j)前記フリーのカルボキシ末端を前記フリーのアミノ末端に結合させ、
k)第一の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Dを除去してフリーのアミノ末端を形成し、
l)任意に、前記フリーのアミノ末端にアミノ保護されたアミノ酸を加え、次いで前記アミノ酸を脱保護して新規なフリーのアミノ末端を生成し、
m)l)を1回以上任意に繰り返し、
n)第二の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Tを除去してフリーのカルボキシ末端を形成し、
o)前記フリーのカルボキシ末端を前記フリーのアミノ末端に結合させ、
p)第二の特異的に保護された直交分子内架橋の保護基Mを除去してフリーのアミノ末端を形成し、
q)任意に、前記フリーのアミノ末端にアミノ保護されたアミノ酸を加え、次いで前記アミノ酸を脱保護して新規なフリーのアミノ末端を生成し、および
r)任意にq)を1回以上繰り返す、
の各工程を含む方法。
【請求項3】
さらに、
a)固相担体に結合したポリペプチドのアミノ末端保護基を除去してフリーのアミノ末端を形成し、
b)下記式
【化4】

(式中、Lは共有結合したアミノ酸側鎖を表し、D、EおよびGは、それぞれが異なる反応条件下で選択的に除去される保護基であり、保護基Dを除去するための反応条件は、ポリペプチド鎖の残りのアミノ酸のアミノ保護基の除去のための反応条件とは異なる)
で表わされる、特異的に保護された直交分子内架橋を、フリーのアミノ末端に結合させ、
c)保護基Eを除去してフリーのアミノ末端を形成し、
d)前記フリーのアミノ末端にアミノ保護されたアミノ酸を加え、次いで、前記アミノ酸を脱保護して新規なフリーのアミノ末端を生成し、
e)任意にd)を1回以上繰り返し、
f)保護基Gを除去してフリーのカルボキシ末端を形成し、
g)f)のフリーのカルボキシ末端をフリーのアミノ末端と結合させ、
h)保護基Dを除去してフリーのアミノ末端を形成し、
i)任意に、前記フリーのアミノ末端にアミノ保護されたアミノ酸を加え、次いで前記アミノ酸を脱保護して新規なフリーのアミノ末端を生成し、
j)任意にi)を1回以上繰り返し、および
k)任意に工程b)〜j)を繰り返す、
の各工程を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ポリペプチドが2つの分子内架橋を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
2つの分子内架橋が、連続して2つの環を形成する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
2つの分子内架橋が、2つの環を形成し、1つの環が他方に埋め込まれている、請求項4記載の方法。
【請求項7】
特異的に保護された直交分子内架橋がランチオニンである、請求項2記載の方法。
【請求項8】
分子内架橋されたポリペプチドがランチビオティックである、請求項2記載の方法。
【請求項9】
D、E、MおよびQが、Fmoc、AllocおよびIvDdeから選択される、請求項2記載の方法。
【請求項10】
GおよびTが、プロパルギルエステルおよびベンジルエステルからなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項11】
分子内架橋が、β−メチルランチオニン(MeLan)、S−[(Z)−2−アミノビニル]−D−システイン(AviCys)、およびS−[(Z)−2−アミノビニル]−2−メチル−D−システインからなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項12】
ランチビオティックが、ナイシンA、ナイシンZ、サブチリン、エリシンS、エリシンA、ストレプチン、エピデルミン、[Val1−Leu6]−エピデルミン、ガリデルミン、ミュータシン1140、ミュータシンB−Ny266、ミュータシンIII、ミュータシンI、Pep5、エピランシンK7、エピシジン280、ラクチシン481、バリアシン、ミュータシンII、ストレプトコシンA−FF22、サリバリシンA、[Lys2−Phe7]−サリバリシンA、プランタリシンC、サブランシン168、ブチリビブリオシンOR79A、シンナマイシン、デュラマイシン、デュラマイシンB、デュラマイシンC、クラマイシンC、アンコベニン、メルサシジン、アクタガルジン、Ala(0)−アクタガルジン、スブチロシンA、ラクチシン3147A1、ラクチシン3147A2、スタフィロコッシンC55α、スタフィロコッシンC55β、プランタリシンWα、プランタリシンWβ、サイトリシンL、およびサイトリシンLからなる群から選択される、請求項8記載の方法。
【請求項13】
ランチビオティックがナイシンAまたはその類似体である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法により形成される、分子内架橋ポリペプチド。
【請求項15】
請求項2記載の方法により形成される、分子内架橋ポリペプチド。
【請求項16】
請求項3記載の方法により形成される、分子内架橋ポリペプチド。
【請求項17】
下記式:
【化5】

(式中、DおよびEは異なる保護基であり、Fmoc、AllocおよびIvDdeからなる群から選択され、Gはプロパルギルエステルおよびベンジルエステルからなる群から選択される保護基である)
で表される、特異的に保護された直交ランチオニン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−505981(P2009−505981A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526260(P2008−526260)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/031510
【国際公開番号】WO2007/022012
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(506047905)オラジェニックス,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】