説明

犬釘打機用ランマ

【課題】犬釘打機の打撃力を、犬釘の軸部の軸線に集中させることを容易に行うことのできる犬釘打機用ランマを提供する。
【解決手段】犬釘打機用ランマ22は、犬釘打機本体21に装着される基端部を有する棒状シャンク51と、シャンク51の先端部にこれと一体的に設けられているストライカ53とよりなる。ストライカ53の先端面に犬釘頭部用位置決め凹所61が形成されている。
犬釘打機本体21と、犬釘打機本体21に装着されるランマ22とよりなる犬釘打機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、犬釘を用いて鉄道用レールを枕木に固定するための犬釘打機用ランマに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のランマとしては、犬釘打機本体に装着される基端部を有する棒状シャンクと、シャンクの先端部にこれと一体的に設けられているストライカとよりなり、ストライカの先端面全体が、シャンクの軸線と直交する方向に拡がる平坦面に形成されているものが知られている。犬釘打機本体としては、公知の電動ハンマと称されるものが用いられる。
【0003】
犬釘は、棒状軸部と、レール係合突起および楕円状頂面を有し、レール係合突起を軸部の一方の側に突出させるように軸部の頂部に連なる頭部とよりなる。頭部頂面のなす楕円楕円の長軸および短軸の交点と、軸部の軸心とは、偏心させられている。
【0004】
犬釘を打つ場合、頭部の頂面をストライカの先端面によって打撃することになる。その場合、頭部の頂面における軸部の軸心上に打撃力を集中させることが好ましいが、犬釘の軸部および頭部が上記の通り偏心させられているため、上記の打撃力を軸部の軸心に集中させることは容易ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、犬釘打機の打撃力を、犬釘の軸部の軸線に集中させることを容易に行うことのできる犬釘打機用ランマを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による犬釘打機用ランマは、犬釘打機本体に装着される基端部を有する棒状シャンクと、シャンクの先端部にこれと一体的に設けられているストライカとよりなり、ストライカの先端面に犬釘頭部用位置決め凹所が形成されているものである。
【0007】
この発明による犬釘打機用ランマでは、位置決め凹所によって、犬釘およびランマの位置決めをすることができるから、犬釘打機の打撃力を、犬釘の軸部の軸線に集中させることを容易に行うことができる。
【0008】
さらに、位置決め凹所の底に平坦状打撃面がシャンクの軸線と直交する方向に拡がっており、打撃面に、犬釘に対する逃げがシャンクの軸線上に位置させられるように形成されていると、逃げによって、犬釘頭部の頂面およびランマの打撃面間の接触面圧が高められるから、犬釘およびランマ間の位置ズレ防止効果を期待できる。
【0009】
また、逃げが、シャンクの軸線と同心の円筒状周面を有する窪みよりなると、逃げの周面開口端がエッジとなって、上記位置ズレ防止効果を一層高めることができる。
【0010】
また、位置決め凹所の周囲に円筒状位置決め面が打撃面と直交させられる方向に拡がっており、位置決め面の軸線が、シャンクの軸線に対して、棒状犬釘軸部の軸心と犬釘頭部のなす平面視楕円の長軸および短軸の交点との偏心量に相当する距離だけ偏心させられていると、位置決め凹所の周面が犬釘頭部の外周にそって拡がるから、位置決め精度を高めることができる。
【0011】
また、ストライカの先端面の位置決め凹所の半径方向外側に、ストライカの先端面からシャンクの軸線方向に突出させられた滑止めが設けられていると、犬釘の頭部からランマが滑り落ちることを防止できる。
【0012】
また、滑止めが、位置決め面の軸線を中心として位置決め面に沿ってのびた円を、シャンクの軸線および位置決め面の軸線を結ぶ直線と直交し且つ位置決め面の軸線を通る直線によって2分割された2つの半円のうち、逃げに近い側の半円上をのびていると、犬釘の頭部からランマが滑り落ちたとしても、作業中の犬釘を挟んでレールとは反対側にランマが滑り落ちるから、ランマがレールに損傷を与えることが避けられる。
【0013】
この発明による犬釘打機用は、犬釘打機本体と、犬釘打機本体に装着される上記の犬釘打機用ランマとよりなるものである。犬釘打機本体としては、公知の電動ハンマと称されるものを用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、犬釘打機の打撃力を、犬釘の軸部の軸線に集中させることを容易に行うことのできる犬釘打機用ランマ、及び前記ランマが釘打機本体に装着された犬釘打機が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の実施の形態を図面を参照しながらつぎに説明する。
図1は、作業者Oが犬釘打機11を用いて犬釘12によってレール13を枕木14に固定する作業の様子を示すものである。作業者Oは、犬釘打機11の背面側に立っている。枕木14およびレール13間にはタイプレート15が介在させられている。
【0016】
図1中、作業者Oの正面側を矢印Aで示しているが、以下、矢印Aで示す方向を前、これと反対側を後といい、左右とは、前方より見て、その左右の側を左右というものとする。
【0017】
犬釘打機11は、犬釘打機本体21と、犬釘打機本体21に着脱自在に装着され且つ犬釘打機本体21によって加振されるランマ22とよりなる。
【0018】
図2および図3に示すように、レール13は、上から順次連なるヘッド31、フランジ32およびベース33よりなる。タイプレート15の適所には貫通孔34が形成されている。これらの孔34に挿通させられた犬釘12によってレール13およびタイプレート15が枕木14に固定されている。
【0019】
図4および図5に、犬釘12が詳細に示されている。犬釘12は、横断面方形の棒状軸部41と、軸部41の頂部に連なる頭部42とよりなる。頭部42は、軸部41の一方の側に突出させているレール係合突起42a を有している。
【0020】
頭部42の頂面は、略楕円状をなしている。頭部42の頂面のなす楕円の長径および短径は、それぞれD1、D2である。軸部41の軸線をC1とし、頭部42の頂面のなす楕円の長軸および短軸の交点をC2とすると、同軸線C1および交点C2の偏心距離は、εである。
【0021】
図6において、ランマ22が、全体として、垂直棒状のものとして示されている。図6に示すランマ22の上端側が基端側であり、その下端側が先端側である。
【0022】
ランマ22は、上から順次連なる小径丸棒状シャンク51、大径丸棒状ボディ52および偏心丸棒状ストライカ53よりなる。
【0023】
シャンク51およびボディ52の軸線C3は、同心状となされているが、シャンク51およびボディ52の軸線C3に対して、ストライカ53の軸線C4は、距離ε' だけ偏心させられている。この偏心距離ε' は、上記犬釘12の偏心距離εに等しいか、ほぼ等しい。
【0024】
シャンク51の外面には回転方向位置決め用六面体部54が形成されている。シャンク51の六面体部54周辺部が犬釘打機本体21のソケット(図示しない)に挿入される。この状態で、六面体部54によって、ランマ22の回転方向の位置決めがなされ、図6において、矢印Aで示す方向がランマ22の前となる。
【0025】
図7および図8に、ストライカ53が詳細に示されている。ストライカ53の下端面には位置決め凹所61が形成されている。位置決め凹所61は、打撃面71および位置決め面72によって画定されている。打撃面71は、位置決め凹所61の底をシャンク51の軸線C3と直交する方向に拡がる平坦面である。位置決め面72は、打撃面71と直交させられる方向に拡がる円筒面である。打撃面71および位置決め面72の交差させられたコーナ部には丸み73が付けられている。円筒状位置決め面72の中心は、ストライカ53の軸線C4上にある。
【0026】
打撃面71には逃げ74が形成されている。逃げ74は、シャンク51の軸線C3と同心の円筒状周面75を有し、且つ、これと直交させられた平坦状底面76を有する窪みよりなる。
【0027】
図8に示すように、ストライカ53の先端面を底面側から見て、ストライカ53の先端面における位置決め凹所61の外側には滑止め81が設けられている。滑止め81は、ストライカ53の先端面からシャンク51の軸線C3方向に突出させられた一定の幅をもつ半円弧状のものである。
【0028】
滑止め81の位置について詳述すると、ストライカ53の先端面における位置決め凹所61の外側には円形状領域が残されており、その円形状領域は、直線L によって2つの半円形状領域に2分割されている。その直線L は、シャンク51の軸線C3および位置決め面72の中心C4を結ぶ直線と直交し且つ位置決め面72の中心C4を通ってのびている。分割された2つの半円弧状部のうち、逃げ74に近い側の半円弧状部に滑止め81がある。
【0029】
以下に、上記ランマの各部形状を、単なる一例として、具体的数字を挙げて説明する。
【0030】
犬釘頭部42の長径D1は、40mm、その短径D2は、32mmである。犬釘の偏心距離εおよびストライカの偏心距離ε' は、6mmである。位置決め面72の径D3は、42mm、その深さH1は、5mmである。逃げ74の径D4は、10mmである。滑止め81の高さH2は、5mmである。また、実際の作業性を考慮すると、ランマの重量は2.5kg〜3.0kg程度とすることが好ましく、特に3.0kg程度が好ましい。
【0031】
犬釘頭部42頂面における軸部41の軸線C1に対応する部分に、ランマ22の打撃面71における逃げ74の部分を接触させると、犬釘頭部42の長軸方向と、位置決め面72との間には2mm程度の隙間が生じることになる。
【0032】
このように犬釘および犬釘打機11をセットした状態で、犬釘に犬釘打機11によって打撃力を作用させると、その打撃力は、犬釘の軸部41の軸線方向に確実に集中させられる。そのため、犬釘打作業を容易に安全確実に行うことができ、作業効率が大幅に向上する。
【0033】
本発明の犬釘打機用ランマは、クロムモリブデン鋼鋼材などの合金鋼鋼材、例えばSCM435材を用いて、例えば次の工程により作製することができる。
(1) 旋盤にて下加工(荒加工)
(2) 焼入れ(熱処理)
(3) 旋盤にて仕上加工
(4) フライス加工
(5) 焼入れ(HS55〜60硬度)
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】犬釘を打つ状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すレールおよび枕木の断面図である。
【図3】同平面図である。
【図4】図1に示す犬釘を詳細に示す側面図である。
【図5】同平面図である。
【図6】図1に示す犬釘打機のランマの側面図である。
【図7】同ランマのストライカの詳細断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0035】
21 犬釘打機本体
51 シャンク
53 ストライカ
61 位置決め凹所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
犬釘打機本体に装着される基端部を有する棒状シャンクと、シャンクの先端部にこれと一体的に設けられているストライカとよりなり、ストライカの先端面に犬釘頭部用位置決め凹所が形成されている犬釘打機用ランマ。
【請求項2】
位置決め凹所の底に平坦状打撃面がシャンクの軸線と直交する方向に拡がっており、打撃面に、犬釘に対する逃げがシャンクの軸線上に位置させられるように形成されている請求項1に記載の犬釘打機用ランマ。
【請求項3】
逃げが、シャンクの軸線と同心の円筒状周面を有する窪みよりなる請求項2に記載の犬釘打機用ランマ。
【請求項4】
位置決め凹所の周囲に円筒状位置決め面が打撃面と直交させられる方向に拡がっており、位置決め面の軸線が、シャンクの軸線に対して、棒状犬釘軸部の軸心と犬釘頭部のなす平面視楕円の長軸及び短軸の交点との偏心量に相当する距離だけ偏心させられている請求項1〜3のいずれか1つに記載の犬釘打機用ランマ。
【請求項5】
ストライカの先端面の位置決め凹所の半径方向外側に、ストライカの先端面からシャンクの軸線方向に突出させられた滑止めが設けられている請求項4に記載の犬釘打機用ランマ。
【請求項6】
滑止めが、位置決め面の軸線を中心として位置決め面にそってのびた円を、シャンクの軸線および位置決め面の軸線を結ぶ直線と直交し且つ位置決め面の軸線を通る直線によって2分割された2つの半円のうち、逃げに近い側の半円上をのびている請求項4に記載の犬釘打機用ランマ。
【請求項7】
犬釘打機本体と、犬釘打機本体に装着される請求項1〜6のいずれか1つに記載の犬釘打機用ランマとを有する犬釘打機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−65507(P2010−65507A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235370(P2008−235370)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(504377002)株式会社アイエム (8)
【出願人】(390007607)大鉄工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】