説明

状態判定装置、蓄電装置、状態判定方法

【課題】電池の状態を判定する技術を提供する。
【解決手段】BMS20は、充電部26によって充電される二次電池12の状態を判定する装置であって、電流計22と電圧計24とCPU30を備える。CPU30は、制御部42及び計時部40として機能し、充電部26による二次電池12の定電流充電時間TCと定電圧充電時間TVを計時する。また、判定部44として機能し、定電流充電時間TCと定電圧充電時間TVを用いて判定値Jを算出し、この判定値を用いて二次電池12の状態を判定する。この充電装置10によれば、定電流充電時間TCと定電圧充電時間TVを用いて判定値Jを求めることで、二次電池12の状態の変化に伴う判定値Jの変化を二次電池12の状態の変化に伴う定電流充電時間TCの変化に比べて大きくすることができ、二次電池12の状態を精度よく判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化等の蓄電素子の状態を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二次電池などの繰り返し使用可能な蓄電素子が用いられている。蓄電素子は、電気自動車など現在その使用分野を広げている。
【0003】
このような蓄電素子では、使用回数が増えるに従って劣化により内部抵抗が増加したり、電池容量が減少したりすることがある。例えば、内部抵抗が増加すると、最大電圧や最大電力など蓄電素子に求められている性能を実現することができず、そのような電池を組み込んだ装置では、電圧低下による誤作動などが発生する虞がある。そのため、従来から、劣化等の電池の状態を判定する技術が知られている(例えば、引用文献1)。この技術では、定電流充電を行った定電流充電時間に基づいて電池の劣化を判定する技術が記載されている。この技術によれば、電池の容量を測定して電池の状態を判定する技術のように、完放電状態から完充電状態までの充電電流を充電時間に亘って継続して測定する必要がなく、比較的容易に電池の劣化を判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−286064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電素子の使用分野の広がりに応じて、電池状態の判定に対する精度向上が望まれている。本発明者らは、充電時間に基づいて電池状態を判定する方法について評価を重ねたところ、充電時間に基づく電池状態の判定には、判定精度の向上の余地が残されていることが解った。
【0006】
本発明は、蓄電素子の状態を判定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
蓄電素子の状態の変化に対する定電流充電時間、定電力充電時間及び定電圧充電時間を詳しく精査したところ、蓄電素子の劣化に伴って定電圧充電時間は増大する一方、定電流充電時間及び定電力充電時間は減少し、定電流充電時間及び定電力充電時間と定電圧充電時間とで蓄電素子の劣化に対するふるまいが異なるという知見を得た。本発明者らは、この知見を利用し、以下の状態判定装置等を創作するに至った。
【0008】
本明細書で開示する状態判定装置は、充電器によって充電される蓄電素子の状態を判定する状態判定装置であって、前記蓄電素子の充電電流を検出する電流検出部と、前記蓄電素子の充電電圧を検出する電圧検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記電流検出部によって検出される充電電流が一定である定電流充電時間、又は前記電流検出部及び前記電圧検出部によって検出される充電電力が一定である定電力充電時間を示す第1充電時間を取得する第1取得処理と、前記電圧検出部によって検出される充電電圧が一定である定電圧充電時間を示す第2充電時間を取得する第2取得処理と、前記第1充電時間と前記第2充電時間を用いて判定値を算出し、当該判定値を用いて前記蓄電素子の状態を判定する判定処理と、を実行する構成を有する。
【0009】
この状態判定装置では、蓄電素子の状態判定に用いる判定値を求める際に、定電流充電時間と定電力充電時間の一方の充電時間を示す第1充電時間と定電圧充電時間を示す第2充電時間を用いて判定値を算出する。例えば、第1充電時間から第2充電時間を減じて判定値を算出することで、蓄電素子の劣化に伴う判定値の変化を蓄電素子の劣化に伴う定電流充電時間の変化に比べて大きくすることができる。このように、第1充電時間と第2充電時間から判定値を求めることで、蓄電素子の状態変化による判定値の変化を顕著とすることができ、判定値を用いて蓄電素子の状態を精度よく判定することができる。
【0010】
この状態判定装置では、前記制御部は、前記第1充電時間と前記第2充電時間のうち、一方を他方で除して前記判定値を算出する構成としても良い。このように判定値を算出することで、蓄電素子の状態変化に伴う判定値の変化を蓄電素子の状態変化に伴う定電流充電時間の変化に比べて大きくすることができ、蓄電素子の状態を精度よく判定することができる。
【0011】
この状態判定装置では、前記制御部は、前記第1充電時間の取得を開始する際の前記蓄電素子のSOCである開始値を取得するSOC取得処理を更に実行する。ここで、「SOC(state of charge)」とは、蓄電素子の充電状態を示しており、満充電状態においてSOCが100%となり、完放電状態においてSOCが0%となる。前記制御部は、前記蓄電素子の基準状態のSOCを100%から差し引いた基準値を100%から前記開始値を差し引いた値で除した補正値を算出し、前記補正値に前記第1充電時間を積して補正充電時間を算出し、前記補正充電時間と前記第2充電時間とから前記判定値を算出する構成としても良い。
【0012】
この状態判定装置では、第1充電時間の取得を開始する際のSOCを取得し、第1充電時間とSOCを用いて補正充電時間を算出する。これにより、任意の充電状態において取得される第1充電時間を基準状態において取得される第1充電時間を意味する補正充電時間に換算することができ、第1充電時間の取得を開始する際のSOCによらず蓄電素子の状態を精度よく判定することができる。
【0013】
この状態判定装置では、記憶部を更に備え、前記制御部は、前記蓄電素子の状態を繰り返し判定するとともに、前記判定値を判定の順番に対応付けて前記記憶部に記憶し、今回算出された判定値と前回算出された判定値とを比較して前記蓄電素子の状態を判定する構成としても良い。
【0014】
この状態判定装置によれば、今回算出された判定値と前回算出された判定値とを比較して蓄電素子の状態を判定することで、前回の状態判定から今回の状態判定までの蓄電素子の状態変化を精度良く検出することができるとともに、状態判定装置自身の故障を診断することができる。
【0015】
なお、判定部で用いられる判定値は、前記第1充電時間と前記第2充電時間のうち、一方から他方を減じて算出されてもよければ、前記第1充電時間と前記第2充電時間を加えて和充電時間を算出し、前記第1充電時間を前記和充電時間で除して前記判定値を算出されてもよければ、前記第2充電時間を前記和充電時間で除して前記判定値を算出されても良い。
【0016】
本発明は、上記の状態判定装置と、蓄電素子と、を備える蓄電装置にも具現化される。本明細書に記載の蓄電装置によれば、第1充電時間と第2充電時間を用いて算出された判定値を用いて、蓄電素子の状態を精度よく判定することができる。
【0017】
また、本発明は、上記の状態判定装置を用いて実現される状態判定方法にも具現化される。本明細書に記載の状態判定方法は、充電器によって充電される蓄電素子の状態を判定する状態判定方法であって、一定の充電電流で充電される定電流充電時間、又は一定の充電電力で充電される定電力充電時間を示す第1充電時間を取得する第1取得工程と、前記第1取得工程後、一定の充電電圧で充電される定電圧充電時間を示す第2充電時間を取得する第2取得工程と、前記第1充電時間と前記第2充電時間とから判定値を算出する算出工程と、前記判定値を用いて前記蓄電素子の状態を判定する判定工程と、を備える。
【0018】
この状態判定方法では、蓄電素子の状態を判定するのに用いる判定値を算出する際に、第1充電時間と第2充電時間を用いて判定値を算出することで、蓄電素子の状態変化に伴う判定値の変化を蓄電素子の状態変化に伴う定電流充電時間の変化に比べて大きくすることができ、判定値を用いて蓄電素子の状態を精度よく判定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蓄電素子の状態を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の状態判定装置のブロック図
【図2】本実施形態の状態判定処理を示すフローチャート
【図3】実施形態1の状態判定処理を示すフローチャート
【図4】状態判定処理における二次電池に流れる電流の変化を示すグラフ
【図5】状態判定処理における二次電池に流れる電流の変化を示すグラフ
【図6】実施形態2の状態判定処理を示すフローチャート
【図7】状態判定処理における二次電池に与えられる電力の変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態について、図1ないし図5を用いて説明する。
1.状態判定装置の構成
図1は、本実施形態における充電装置10の構成を示す図である。充電装置10は、二次電池(蓄電素子の一例)12と接続されることで、当該二次電池12を充電するとともに、内在する電池管理装置(状態判定装置の一例であり、以下、BMS)20を用いて当該二次電池12の劣化等の状態を判定する。つまり、二次電池12とBMS20によって、二次電池12を充電するとともに、その状態を判定する蓄電装置38が構成されている。本実施形態では、二次電池12として、リチウムイオン電池を用いた例を示す。
【0022】
図1に示すように、充電装置10は、BMS20、BMS20の外部に配置された充電部(充電器の一例)26、及び充電用配線28を含む。充電部26は、外部電源14に接続されており、外部電源14から供給される電力を、接続端子16及び充電用配線28を介して二次電池12に供給する。
【0023】
BMS20は、中央処理装置(制御部の一例、以下、CPU)30、ROMやRAMなどのメモリ(記憶部の一例)32、アナログ−デジタル変換機(以下、ADC)34、温度計18、電流計(電流検出部の一例)22、電圧計(電圧検出部の一例)24、及びこれらをお互いに接続するバス36を備える。
メモリ32には、充電装置10の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されており、CPU30は、メモリ32から読み出したプログラムに従って、計時部40、制御部42、判定部44、取得部46等として機能し、各部の制御を行うとともに、充電部26に信号を送信する。
【0024】
温度計18は、接触式あるいは非接触式で二次電池12の温度を測定し、測定した温度Yをバス36を介してメモリ32に記憶する。電流計22は、充電用配線28を介して二次電池12に流れる充電電流(以下、電流)を所定期間毎に測定し、測定した電流値IをADC34に送信する。電圧計24は、二次電池12の両端に接続され、二次電池12の両端電圧である電圧値Vを直接測定し、測定した電圧値VをADC34に送信する。電圧計24では、充電用配線28を介さず、両端電圧を直接測定することで、充電用配線28の配線抵抗による影響を含まない正確な二次電池12の充電電圧(以下、電圧)を測定することができる。
【0025】
ADC34は、電流計22及び電圧計24に接続されており、電流計22及び電圧計24から送信されるアナログデータである電流値I及び電圧値Vを、デジタルデータに変換し、変換した電流値I及び電圧値Vを、バス36を介してメモリ32に記憶する。制御部42、判定部44及び取得部46として機能するCPU30は、メモリ32に記憶された当該電流値及び電圧値を用いて各々の処理を行う。
【0026】
さらに、充電装置10には、ユーザからの入力を受け付ける入力部50、充電装置10の状態や判定結果等を表示する液晶ディスプレイからなる表示部52が設けられている。
【0027】
2.状態判定処理
図2から図4を用いて、充電装置10を用いて二次電池12を充電する際に、BMS20で行われる劣化等の状態判定処理を説明する。本実施形態では、二次電池12は、定電流充電された後に定電圧充電される。図2、3は、CPU30で実行される状態判定処理のフローチャートである。図4は、当該処理において、二次電池12に流れる電流の変化を示すグラフである。なお、図4では、同一の劣化状態の二次電池12を用い、異なる2つの充電状態にて計測された電流の変化が示されており、実線は基準状態である完放電状態の二次電池12を充電した場合に二次電池12に流れる電流の変化を示し(この場合の経過時間を時間T1で示す)、一点鎖線はSOCが50%の二次電池12を充電した場合に二次電池12に流れる電流の変化を示している(この場合の経過時間を時間T2で示す)。
【0028】
CPU30は、ユーザから入力部50等を介して充電指示が入力されると、メモリ32に記憶されたプログラムに従って状態判定処理を開始する。CPU30は、処理を開始すると、取得部46として機能し、当該処理を開始した時点のSOC[%](開始値の一例)を取得する(S2)。メモリ32には、SOCと電圧値Vとが関連付けられて記憶されている。CPU30は、電圧計24を用いて処理開始時点における二次電池12の電圧値Vを測定し、測定された電圧値Vに関連付けられているSOCを処理開始時点のSOCとして取得する。後述して説明するように、S2において取得されるSOCは、定電流充電を開始する際に取得されるSOCでもあり、定電流充電時間TCの計測開始時のSOC(以後、充電開始時のSOC)ということができる。
【0029】
また、CPU30は、充電指示が入力されたことを充電部26に伝達する(S4)。充電部26は、これに伴って二次電池12の充電を開始する。充電部26は、充電を開始すると、まず、二次電池12に流れる電流を一定の基準電流値IKに設定し、二次電池12を定電流充電する。この際、CPU30は、計時部40として機能し、定電流充電時間TCの計測を開始する(S6)。メモリ32には、予め基準電流値IKが記憶されており、CPU30は、電流計22を用いて二次電池12に流れる電流を監視し、二次電池12に流れる電流の電流値Iが基準電流値IKとなってからの時間を計時する。また、CPU30は、温度計18を用いて二次電池12の温度Yを測定する(S8)。
【0030】
CPU30は、二次電池12の定電流充電が開始されると、制御部42として機能し、電圧計24を用いて二次電池12に印加される電圧を監視する(S10:NO)。メモリ32には、予め基準電圧値VKが記憶されており、CPU30は、二次電池12に印加される電圧が基準電圧値VK以上となった場合(S10:YES)、定電流充電時間TCの計測を終了し、計測された定電流充電時間TCをメモリ32に記憶する(S12)。
【0031】
充電部26は、二次電池12に印加される電圧が基準電圧値VK以上となると、二次電池12に印加される電圧を一定の基準電圧値VKに設定し、二次電池12を定電圧充電する。これによって、図4に示すように、定電圧充電開始直後は基準電流値IKであった二次電池12に流れる電流は、充電が進むにつれて単調に減少する。この際、CPU30は、計時部40として機能し、定電圧充電時間TVの計測を開始する(S14)。CPU30は、定電流充電時間TCの計測を終了してからの定電圧充電時間TVを計時する。
【0032】
CPU30は、二次電池12の定電圧充電が開始されると、制御部42として機能し、電流計22を用いて二次電池12に流れる電流を監視する(S16:NO)。メモリ32には、予め終端電流値IZが記憶されており、CPU30は、二次電池12に流れる電流が終端電流値IZ以下となった場合(S16:YES)、定電圧充電時間TVの計測を終了し、計測された定電圧充電時間TVをメモリ32に記憶する(S18)。充電部26は、二次電池12に流れる電流が終端電流値IZよりも低く設定されている充電終了電流値IXとなると、充電を終了する。
【0033】
ここで、終端電流値IZは、充電装置10の充電用配線28に発生することが予想されるノイズ等によって決定される。本実施形態では、終端電流値IZが、充電用配線28に発生するノイズによって生じる二次電池12に流れる電流の変動幅よりも大きな値に設定されている。そのため、不定期に発生するノイズにより定電圧充電時間TVの計測が終了することが抑制される。
【0034】
次に、CPU30は、取得されたSOC、測定された温度Y及び計測された充電時間TC、TVに基づいて二次電池12の劣化状態を判定する。この際、CPU30は、判定部44として機能する。
まず、CPU30は、基準値D及び補正値Cを算出する(S20)。基準値Dは、100%から基準状態のSOCを差し引いた値であり、本実施形態では、基準状態が完放電状態であるため、基準値Dは100%となる。また、補正値Cは、基準値Dを、100%からS2において取得された充電開始時のSOCを差し引いた値で除したものである。次に、CPU30は、測定された温度Yから温度パラメータαを設定する(S22)。温度パラメータαは、測定された温度Yが高い場合に小さく、測定された温度Yが低いほど大きくなるように変化する値である。CPU30は、定電流充電時間TCと補正値Cと温度パラメータαを用いて、補正充電時間THを以下のように算出する(S24)。
C=D/(100−SOC)
TH=TC×α×(100/(100−SOC))
【0035】
図4に実線で示すように、二次電池12が完放電状態である場合、つまり充電開始時のSOCが0%である場合、補正充電時間THは定電流充電時間TC1に温度パラメータαを乗じた値に等しい。また、図4に一点鎖線で示すように、充電開始時のSOCが50%である場合、補正充電時間THは定電流充電時間TC2の2倍に温度パラメータαを乗じた値となる。図4に示すように、SOCが50%の二次電池12の定電流充電時間TC2は、SOCが0%の二次電池12の定電流充電時間TC1の半分となる。そのため、補正充電時間THは、充電開始時のSOCによらず一定となる。そのため、補正充電時間THは、任意のSOCの二次電池12を用いて計測される定電流充電時間TCを、完放電状態の定電流充電時間TCに換算したものということができる。
【0036】
次に、CPU30は、定電圧充電時間TVを補正充電時間THで除して判定値Jを算出する(S26)。二次電池12が完放電状態である場合、判定値Jは定電圧充電時間TVを温度パラメータα及び定電流充電時間TCで除したものとなる。図4に示すように、定電圧充電時間TV(TV’)は、充電開始時のSOCによらず一定である。また、上述したように、補正充電時間THは、充電開始時のSOCによらず一定である。そのため、定電圧充電時間TV及び補正充電時間THから算出される判定値Jも、充電開始時のSOCによらず一定となる。
J=TV/TH
【0037】
メモリ32には、予め基準判定値JKが記憶されており、CPU30は、算出された判定値Jを基準判定値JKと比較し、二次電池12の状態を判定する(S28)。CPU30は、判定値Jが基準判定値JKよりも小さい場合(S28:YES)、二次電池12に劣化等の状態異常が発生していないと判定し(S30)、処理を終了する。一方、判定値Jが基準判定値JK以上である場合(S28:NO)、二次電池12に劣化等の状態異常が発生していると判定し(S32)、表示部52を介してユーザに報知し(S34)、処理を終了する。
【0038】
図5に、劣化状態の異なる2つの二次電池12を状態判定処理した際に測定された二次電池12に流れる電流の変化を示す。なお、図5は、いずれも完放電状態の二次電池12を用いて計測されたもので、実線は比較的劣化の進んでいない二次電池12を用いて測定された電流の変化を示し、二点鎖線は比較的劣化の進んだ二次電池12を用いて測定された電流の変化を示している。
【0039】
図5に示すように、二次電池12では、劣化が進むにつれて定電圧充電時間TVが増大する一方、定電流充電時間TCが減少する。そのため、状態判定処理において、定電圧充電時間TVを定電流充電時間TCで除して判定値Jを算出し、予め定められた基準判定値JKを用いて判定値Jを判定することで、劣化等の状態異常であることを精度良く判定することができる。
【0040】
3.本実施形態の効果
(1)本実施形態の充電装置10では、二次電池12の判定値Jを求める際に、定電流充電時間TCと定電圧充電時間TVを用いて判定値Jを算出する。具体的には、定電圧充電時間TVを定電流充電時間TCで除して判定値Jを算出することで、二次電池12の劣化に伴う判定値Jの変化を二次電池12の劣化に伴う定電流充電時間TCの変化に比べて大きくすることができ、二次電池12の状態を精度よく判定することができる。
【0041】
(2)本実施形態の充電装置10では、定電流充電時間TCと定電圧充電時間TVを計測することで二次電池12の状態を判定する。つまり、充電時間の計測機能を有する装置であれば実現可能であり、高速動作や高精度計測を必要としない。本実施形態の充電装置10によれば、ローコストかつ簡単なアルゴリズムで電池状態を精度よく判定することができる。
【0042】
(3)本実施形態の充電装置10では、二次電池12の状態判定処理を開始する際(つまり、二次電池12の定電流充電時間TCの計測を開始する際)の二次電池12のSOCを取得し、定電流充電時間TCと取得された充電開始時のSOCを用いて完放電状態からの定電流充電時間TCを意味する補正充電時間THを算出する。これにより、二次電池12の充電開始時のSOCによらず電池状態を精度よく判定することができる。
【0043】
(4)本実施形態の充電装置10では、二次電池12の判定値Jを求める際に、充電開始時の二次電池12の温度Yを測定し、測定された温度Yを用いて温度パラメータαを算出し、温度パラメータαを用いて判定値Jを算出する。一般に、定電流充電時間TCは、温度が低いと短くなり、温度が高いと長くなる傾向にある。また、定電圧充電時間TVは、温度が低いと長くなり、温度が高いと短くなる傾向になる。つまり、定電流充電時間TCと定電圧充電時間TVでは、その温度特性が異なる。そのため、判定値Jを算出する際に、温度パラメータαを用いることで、定電流充電時間TCと定電圧充電時間TVとの間の温度特性の差を、温度パラメータαの温度特性により相殺することができ、二次電池12の温度によらず電池状態を精度よく判定することができる。
【0044】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を、図6を用いて説明する。図6に示すように、本実施形態の充電装置10では、今回の状態判定処理で算出された判定値Jを、前回の状態判定処理で算出された判定値JOで除した比較判定値Hを用いて二次電池12の状態を判定する点で実施形態1の充電装置10と異なる。
【0045】
本実施形態の充電装置10では、特定の二次電池12に対して繰り返し状態判定処理を実行しており、CPU30は、算出される判定値Jをメモリ32に記憶する。また、CPU30は、当該二次電池12に対する状態判定処理の処理回数を計数しており、判定値Jをメモリ32に記憶する際、当該処理回数に関連付けて判定値Jを記憶する。以下の説明では、実施形態1と同一の内容については重複した記載を省略する。
【0046】
1.状態判定処理
CPU30は、判定値Jを算出する(S26)と、算出された判定値Jを当該状態判定処理の処理回数に関連つけてメモリ32に記憶する(S42)。また、CPU30は、メモリ32から前回の状態判定処理で記憶された判定値JOを読み出し(S44)、判定値Jを判定値JOで除して比較判定値Hを算出する(S46)。
H=J/JO
【0047】
メモリ32には、経年劣化による状態変化に基づいて設定された基準比較値HKが記憶されており、CPU30は、算出された比較判定値Hを基準比較値HKと比較する(S48)。CPU30は、比較判定値Hが基準比較値HKよりも小さい場合(S48:YES)、前回の状態判定処理から今回の状態判定処理の間に、破損等の経年劣化以上の状態変化が二次電池12に発生していないと判断し(S50)、処理を終了する。一方、比較判定値Hが基準比較値HK以上である場合(S48:NO)、二次電池12に破損等の経年劣化以上の状態変化が二次電池12に発生していると判定し(S52)、表示部52を介してユーザに報知し(S54)、処理を終了する。
【0048】
2.本実施形態の効果
本実施形態の充電装置10によれば、今回算出された判定値Jを前回算出された判定値JOで除した比較判定値Hを用いて二次電池12の状態を判定することで、前回の状態判定から今回の状態判定までの電池状態の変化を精度良く検出することができる。また、判定値Jが前回算出された判定値JOから大きく異なっている場合、つまり比較判定値Hが1から大きく異なっている場合、BMS自身の故障が発生していることがあり、比較判定値Hを用いて二次電池12の状態を判定することで、BMS自身の故障を診断することができる。
【0049】
<実施形態3>
本発明の実施形態3を、図7を用いて説明する。図7に示すように、本実施形態の充電装置10では、二次電池12は、定電力充電された後に定電圧充電される点で実施形態1の充電装置10と異なる。
【0050】
1.状態判定処理
本実施形態の充電装置10では、充電部26は、二次電池12の充電を開始すると、二次電池12に与えられる電力を一定の基準電力値WKに設定し、二次電池12を定電力充電する。この際、CPU30は、計時部40として機能し、電流計22を用いて二次電池12に流れる電流を監視するとともに電圧計24を用いて二次電池12に印加される電圧を監視し、二次電池12が定電力充電される定電力充電時間(第1充電時間の別例)TWの計測を開始する。
【0051】
CPU30は、二次電池12の定電力充電が開始されると、電圧計24を用いて二次電池12に印加される電圧を監視し、定電力充電において二次電池12に印加される電圧が基準電圧値VK以上となった場合、定電力充電時間TWの計測を終了し、計測された定電力充電時間TWをメモリ32に記憶する。
【0052】
充電部26は、二次電池12に印加される電圧が基準電圧値VK以上となると、二次電池12に印加される電圧を基準電圧値VKに設定し、二次電池12を定電圧充電する。この際、CPU30は、計時部40として機能し、二次電池12が定電圧充電される定電圧充電時間TVの計測を開始する。以後の処理は、実施形態1において定電流充電時間TCを用いて説明されていた内容を定電力充電時間TWに置き換えた内容となる。つまり、CPU30は、定電力充電時間TWから補正充電時間THを算出し、補正充電時間THと定電圧充電時間TVから判定値Jを算出する。そして、この判定値Jから二次電池12の状態を判定する。
【0053】
2.本実施形態の効果
図7に、劣化状態の異なる2つの二次電池12を状態判定処理した際に測定された二次電池12に流れる電流の変化を示す。なお、図7は、いずれも完放電状態の二次電池12を用いて計測されたもので、実線は比較的劣化の進んでいない二次電池12を用いて測定された電流の変化を示し、二点鎖線は比較的劣化の進んだ二次電池12を用いて測定された電流の変化を示している。
【0054】
図7に示すように、二次電池12では、定電圧充電において、二次電池12に流れる電流が減少し、二次電池12に与えられる電力も減少する。二次電池12では、劣化が進むにつれて定電圧充電時間TVが増大する一方、定電力充電時間TWが減少する。
【0055】
本実施形態の充電装置10では、二次電池12の判定値Jを求める際に、定電力充電時間TWと定電圧充電時間TVを用いて判定値Jを算出する。そのため、二次電池12の劣化に伴う判定値Jの変化を二次電池12の劣化に伴う定電力充電時間TW又は定電圧充電時間TVの変化に比べて大きくすることができ、二次電池12の状態を精度よく判定することができる。
【0056】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、充電装置10が1つのBMS20を有し、計時部40、制御部42、判定部44等の機能をBMS20が有する1つのCPU30によって実行する例を用いて示したが、本発明はこれに限られない。例えば、複数のCPUにより各部が構成されてもよければ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハード回路のみにより各部が構成されてもよい。さらには、単数又は複数のCPU及びASICによって、各部が構成されてもよい。
【0057】
(2)上記実施形態では、定電圧充電時間TVを定電流充電時間TCで除して判定値Jを算出する例を用いて説明を行ったが、判定値Jはこれに限られない。(i)定電流充電時間TCを定電圧充電時間TVで除して判定値Jを算出しても良い。(ii)定電圧充電時間TVから定電流充電時間TCを減じて判定値Jを算出しても良い。(iii)定電流充電時間TCから定電圧充電時間TVを減じて判定値Jを算出しても良い。(iv)定電圧充電時間TVを、定電圧充電時間TVと定電流充電時間TCを加えた総充電時間(和充電時間の一例)TMで除して判定値Jを算出しても良い。(v)定電流充電時間TCを総充電時間TMで除して判定値Jを算出しても良い。
(i)J=TC/TV (ii)J=TV−TC
(iii)J=TC−TV (iv)J=TV/TM
(v)J=TC/TM
【0058】
(3)上記実施形態では、SOCを取得する際に、充電開始前の二次電池12の電圧値Vを測定し、この電圧値VからSOCを取得する例を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限られない。例えば、当該二次電池12が充電装置10に接続された状態で使用されており、CPU30が継続的に二次電池12に充電される、あるいは二次電池12から放電される電流値Iを電流計22を用いて計測している場合には、この電流値Iを積算することでSOCを取得しても良い。
【0059】
(4)上記実施形態では、今回算出された判定値Jと前回算出された判定値JOを比較して二次電池12の状態を判定する例として、判定値Jを判定値JOで除して比較判定値Hを算出する例を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限られない。例えば、判定値JOを判定値Jで除して比較判定値Hを算出してもよければ、判定値Jと判定値JOとの差を比較判定値Hとして算出してもよい。さらには、判定値Jと判定値JOとの差をさらに判定値JOで除して比較判定値Hを算出してもよければ、判定値Jと判定値JOとの差を判定値Jで除して比較判定値Hを算出してもよい。
【0060】
(5)上記実施形態では、定電流充電時間TCや定電圧充電時間TVなどの充電時間を、BMS20に含まれる電流計22及び電圧計24により監視される電流値I及び電圧値Vが所定の条件になった場合に、CPU30が計時部40として機能し、計測して取得する例を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限られない。例えば、BMS20が入力部を介して自動車の電子制御ユニット(以下、ECU)などの外部装置に接続されており、定電流充電、定電力充電、及び定電圧充電の開始時や終了時等にこれらの外部装置から入力される信号を基準として、CPU30が計時部40として機能し、充電時間を計測して取得してもよい。
【0061】
(6)さらには、CPU30がこれらの充電時間を計測する必要もない。例えば、BMS20が入力部を介して自動車の電子制御ユニットなどの外部装置に接続されており、これらの外部装置からの充電時間の入力によりCPU30が充電時間を取得してもよい。
【0062】
(7)上記実施形態では、基準状態として完放電状態を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限られず、任意の状態を基準状態として選ぶことができる。この場合、基準値Dは、基準状態のSOCに応じて適宜変更される。
【符号の説明】
【0063】
10:充電装置、12:二次電池、18:温度計、20:BMS、22:電流計、24:電圧計、26:充電部、30:CPU、32:メモリ、34:ADS、38:蓄電装置、40:計時部、42:制御部、44:判定部、46:取得部、C:補正値、D:基準値、H:比較判定値、J:判定値、TC:定電流充電時間、TH:補正充電時間、TM:総充電時間、TV:定電圧充電時間、TW:定電力充電時間、α:温度パラメータ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電器によって充電される蓄電素子の状態を判定する状態判定装置であって、
前記蓄電素子の充電電流を検出する電流検出部と、
前記蓄電素子の充電電圧を検出する電圧検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記電流検出部によって検出される充電電流が一定である定電流充電時間、又は前記電流検出部及び前記電圧検出部によって検出される充電電力が一定である定電力充電時間を示す第1充電時間を取得する第1取得処理と、
前記電圧検出部によって検出される充電電圧が一定である定電圧充電時間を示す第2充電時間を取得する第2取得処理と、
前記第1充電時間と前記第2充電時間を用いて判定値を算出し、当該判定値を用いて前記蓄電素子の状態を判定する判定処理と、を実行する構成を有する状態判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の状態判定装置であって、
前記制御部は、前記第1充電時間と前記第2充電時間のうち、一方を他方で除して前記判定値を算出する、状態判定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の状態判定装置であって、
前記制御部は、
前記第1充電時間の取得を開始する際の前記蓄電素子のSOCである開始値を取得するSOC取得処理を更に実行し、
前記蓄電素子の基準状態のSOCを100%から差し引いた基準値を100%から前記開始値を差し引いた値で除した補正値を算出し、前記補正値に前記第1充電時間を積して補正充電時間を算出し、前記補正充電時間と前記第2充電時間とから前記判定値を算出する、状態判定装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の状態判定装置であって、
記憶部を更に備え、
前記制御部は、前記蓄電素子の状態を繰り返し判定するとともに、前記判定値を判定の順番に対応付けて前記記憶部に記憶し、今回算出された判定値と前回算出された判定値とを比較して前記蓄電素子の状態を判定する、状態判定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の状態判定装置であって、
前記制御部は、前記第1充電時間と前記第2充電時間のうち、一方から他方を減じて前記判定値を算出する、状態判定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の状態判定装置であって、
前記制御部は、前記第1充電時間と前記第2充電時間を加えて和充電時間を算出し、前記第1充電時間を前記和充電時間で除して前記判定値を算出する、状態判定装置。
【請求項7】
請求項1に記載の状態判定装置であって、
前記制御部は、前記第1充電時間と前記第2充電時間を加えて和充電時間を算出し、前記第2充電時間を前記和充電時間で除して前記判定値を算出する、状態判定装置。
【請求項8】
蓄電素子と、
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の状態判定装置と、
を備える蓄電装置。
【請求項9】
充電器によって充電される蓄電素子の状態を判定する状態判定方法であって、
一定の充電電流で充電される定電流充電時間、又は一定の充電電力で充電される定電力充電時間を示す第1充電時間を取得する第1取得工程と、
前記第1取得工程後、一定の充電電圧で充電される定電圧充電時間を示す第2充電時間を取得する第2取得工程と、
前記第1充電時間と前記第2充電時間とから判定値を算出する算出工程と、
前記判定値を用いて前記蓄電素子の状態を判定する判定工程と、
を備える状態判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−11590(P2013−11590A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−111279(P2012−111279)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】