説明

玉葱処理装置

【課題】玉葱の滞留を防止できる玉葱処理装置を提供する。
【解決手段】玉葱処理装置1は、玉葱Tを搬送する第2搬送手段4と、この第2搬送手段4による搬送途中で玉葱Tの根部T3を切断する根切断手段61とを備える。根切断手段61は、玉葱Tの根部T3を掻き上げて揃える根揃え部63と、その揃えた根部T3を切断する根切断部64とを有する。根切断手段61は、玉葱Tを根揃え部63側から根切断部64側に向けて送り出す送出部65を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玉葱の滞留を防止できる玉葱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された玉葱処理装置が知られている。
【0003】
この従来の玉葱処理装置は、玉葱の茎葉部を左右両側から挟んだ状態で玉葱を搬送する搬送手段と、この搬送手段による搬送途中で玉葱の根部を切断する根切断手段とを備えている。根切断手段は、左右1対の根伸ばしローラからなり玉葱の根部を揃える根揃え部と、この根揃え部によって揃えられた根部を切断する根切断部とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−99064号公報(図2、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の玉葱処理装置では、根切断手段の根揃え部から玉葱に作用する下向きの力が搬送抵抗となるため、その根揃え部による下向きの力が玉葱に大きく作用する場合に、玉葱が滞留してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、玉葱の滞留を防止できる玉葱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の玉葱処理装置は、玉葱を搬送する搬送手段と、この搬送手段による搬送途中で玉葱の根部を切断する根切断手段とを備え、前記根切断手段は、玉葱の根部を揃える根揃え部と、この根揃え部によって揃えられた根部を切断する根切断部と、玉葱を前記根揃え部側から前記根切断部側に向けて送り出す送出部とを有するものである。
【0008】
請求項2記載の玉葱処理装置は、請求項1記載の玉葱処理装置において、根切断手段の送出部は、互いに異なる方向に回転することにより玉葱を挟持しながら根揃え部側から根切断部側に向けて送り出す対をなす送出回転体を有するものである。
【0009】
請求項3記載の玉葱処理装置は、請求項2記載の玉葱処理装置において、各送出回転体は、玉葱の本体部に接触する弾性変形可能な複数の送出羽根を有するものである。
【0010】
請求項4記載の玉葱処理装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の玉葱処理装置において、根部切断手段は、玉葱の形状の違いに対応できるように搬送手段に対して上下動可能となっているものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、根切断手段が玉葱を根揃え部側から根切断部側に向けて送り出す送出部を有するため、玉葱の滞留を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る玉葱処理装置の側面図である。
【図2】(a)が同上玉葱処理装置の要部側面図で、(b)が第2搬送手段の正面図である。
【図3】同上玉葱処理装置の要部平面図である。
【図4】同上玉葱処理装置の挟持搬送手段の平面図である。
【図5】同上玉葱処理装置の第1搬送手段の平面図である。
【図6】同上第1搬送手段の側面図である。
【図7】同上玉葱処理装置の根切断手段の側面図である。
【図8】同上根切断手段の平面図である。
【図9】同上根切断手段の背面図である。
【図10】同上根切断手段の背面図である。
【図11】(a)〜(c)は同上根切断手段の動作説明図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に係る玉葱処理装置の送出部の平面図である。
【図13】本発明のさらに他の実施の形態に係る玉葱処理装置の送出部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1において、1は玉葱処理装置で、この玉葱処理装置1は、例えば無造作に投入された複数個の玉葱Tを列状に並べて整列搬送しながらその搬送途中で一定姿勢に揃えた後、不要な根部T3および茎葉部(茎部)T2を順次切断し、球状の本体部(実部)T1だけとなった玉葱Tを排出する定置型の玉葱調製機である。
【0015】
玉葱処理装置1は、例えば全体が前後方向に長手状をなすもので、図1ないし図3に示されるように、投入側である前側に位置して玉葱Tを載置搬送するローラ式の第1搬送手段3と、この第1搬送手段3の搬送方向下流に配設され排出側である後側に位置して玉葱Tを載置搬送するローラ式の搬送手段である第2搬送手段4と、搬送始端側が第1搬送手段3の上方にこの第1搬送手段3と近接して位置しかつ搬送終端側が第2搬送手段4の上方にこの第2搬送手段4と近接して位置するように配設され本体部T1を左右両側から挟んだ状態で玉葱Tを挟持搬送するベルト式の玉葱受渡手段である挟持搬送手段5とを備えている。
【0016】
第1搬送手段3は、玉葱Tを前後方向に沿った水平な搬送方向に搬送しながら、玉葱Tの姿勢を第1姿勢、すなわち例えば根部T3が搬送方向下流(斜め上方を含む)を向きかつ茎葉部T2が搬送方向上流(斜め下方を含む)を向く根下流向き姿勢(予備姿勢)にする。
【0017】
第2搬送手段4は、玉葱Tを第1搬送手段3の搬送方向と同じ搬送方向に搬送しながら、玉葱Tの姿勢を第1姿勢である根下流向き姿勢から第2姿勢、すなわち例えば根部T3が上方を向きかつ茎葉部T2が下方を向く根上向き姿勢(切断姿勢)にする。
【0018】
挟持搬送手段5は、根下流向き姿勢の玉葱Tを第1搬送手段3の搬送終端部から受け入れ、この受け入れた玉葱Tを根下流向き姿勢のままその本体部T1が左右両側から挟持された状態で第1搬送手段3の搬送方向と同じ搬送方向に所定距離だけ挟持搬送した後、その本体部T1の挟持解除によって玉葱Tを第2搬送手段4の搬送始端部へ根下流向き姿勢のまま渡す。つまり、挟持搬送手段5は、玉葱Tを根下流向き姿勢のまま第1搬送手段3上から第2搬送手段4上に受け渡すものである。
【0019】
これら3つの搬送手段である第1搬送手段3、挟持搬送手段5および第2搬送手段4の各搬送速度が同じ(略同じを含む)である。また、これら第1搬送手段3、挟持搬送手段5および第2搬送手段4は、平面視で一直線状に配設されている。
【0020】
図2に示されるように、第1搬送手段3の搬送面3aと第2搬送手段4の搬送面4aとが同じ(略同じを含む)高さ位置に位置する。なお、例えば図示しないが、第2搬送手段4の搬送面4aが第1搬送手段3の搬送面3aよりも若干低くてもよい。また、第1搬送手段3の搬送終端部と第2搬送手段4の搬送始端部との間には、所定の大きさの隙間6が存在する。
【0021】
そして、第1搬送手段3の搬送終端部から第2搬送手段4の搬送始端部への玉葱Tの乗り移りが挟持搬送手段5によって行われるが、この乗り移りの際に玉葱Tは自由落下しない。つまり、玉葱Tは、第1搬送手段3、挟持搬送手段5および第2搬送手段4によって、一定高さ位置を搬送方向に沿って一定速度で水平移動する。
【0022】
ここで、第1搬送手段3は、図1〜図3、図5および図6に示されるように、動力を受けて回行する例えば左右1対で対をなす無端体であるチェーン11と、これら両チェーン11間に左右方向の支軸13を介して回転可能に設けられ外周面に周方向の凹状部14が形成され玉葱Tを搬送方向に搬送しながらチェーン11に対する回転に基づく凹状部14と玉葱Tの茎葉部T2との係合により玉葱Tの姿勢を根下流向き姿勢にする筒状の複数の回転体である整列ローラ12とを有している。
【0023】
両チェーン11は、互いに離間対向して位置し、チェーン11の前端側が従動スプロケット15に巻き掛けられ、チェーン11の後端側が駆動スプロケット16に巻き掛けられている。両チェーン11間には複数の支軸13が互いに等間隔をおいて架設され、各支軸13によって整列ローラ12が回転可能に支持されている。つまり、両チェーン11間には、回行方向に並ぶ複数の整列ローラ12が支軸13を中心として回転可能に設けられている。なお、チェーン11は、上側に前後方向に沿った直線状の往路部18を有し、下側に前後方向に沿った直線状の復路部19を有している。
【0024】
整列ローラ12は、チェーン11の往路部18と平行に位置する前後方向長手状で板状の左右1対のローラ接触体(ローラガイド)21との接触によりこのローラ接触体21から力を受けてチェーン11に対して回転する。各ローラ接触体21は、整列ローラ12の下端部と接触してこの整列ローラ12を回行中のチェーン11に対して回転させるローラ接触面22を上面に有している。
【0025】
また、整列ローラ12は、例えば左右方向に軸方向を有する鼓形状に形成されている。整列ローラ12は、軸方向中央側の外周面に周方向の凹状部14を有し、この凹状部14に本体部T1が入り込むことにより玉葱Tが1列に整列する。整列ローラ12は、軸方向両端部にはローラ接触面22と接触する径大部23を有し、これら両径大部23間に凹状部14が位置している。この凹状部14は、径大部23よりも径小な円筒面24と、円筒面24の一端に連設された一方側截頭円錐面25と、円筒面24の他端に連設された他方側截頭円錐面26とを有している。また、搬送方向に互いに隣り合う整列ローラ12の凹状部14間には、空間部30が存在する。
【0026】
そして、チェーン11とともに回行する整列ローラ12によって搬送される玉葱Tは、整列ローラ12の回転(図6上、時計回り)により整列ローラ12の回転方向とは反対の方向に回転するが、茎葉部T2が空間部30に入り込んで凹状部14と引掛り係合すると、その反対の方向への回転が規制される。その結果、玉葱Tの姿勢が根下流向き姿勢となる。
【0027】
なお、根部T3は、柔軟性があり容易に変形するため、凹状部14とは係合しない。このため、玉葱Tは、茎葉部T2が凹状部14に引掛り係合するまで、つまり根下流向き姿勢になるまで、整列ローラ12の回転方向とは反対の方向に回転することとなる。また、例えば図示しないが、玉葱Tの茎葉部T2との接触により玉葱Tの姿勢を根下流向き姿勢にする茎葉接触体を整列ローラ12の上方或いは側方に設けてもよい。
【0028】
第2搬送手段4は、図1〜図3に示されるように、動力を受けて互いに異なる方向(互いに対向する側が下方に向かう方向)に回転することにより、玉葱Tを搬送方向に搬送しながら玉葱Tの姿勢を根下流向き姿勢から根上向き姿勢にする例えば左右1対で対をなす回転体である送りローラ31を有している。
【0029】
送りローラ31は、前後方向に軸方向を有する円筒状のローラ本体部32と、このローラ本体部32の外周面に突設された螺旋状の凸状部33とにて構成されている。凸状部33は、螺旋方向に例えば2列で並ぶ弾性変形可能な複数の突起34と、弾性変形可能な螺旋突条35とを有している。
【0030】
そして、互いに離間対向して位置する平行な両ローラ本体部32間には空間部36が存在し、玉葱Tの茎葉部T2は凸状部33との係合によりその空間部36に引き込まれ、その結果、玉葱Tの姿勢が根下流向き姿勢から根上向き姿勢に変わる。
【0031】
挟持搬送手段5は、図1〜図4に示されるように、動力を受けて互いに異なる方向(互いに対向する側が後方へ向かう方向)に回行することにより、第1搬送手段3からの根下流向き姿勢の玉葱Tをその本体部T1を左右両側から挟んだ状態として挟持搬送して第2搬送手段4へ根下流向き姿勢のまま渡す例えば左右1対で対をなす挟持体である挟持ベルト41を有している。
【0032】
無端状の挟持ベルト41は、例えば弾性変形可能な帯状のゴム等の弾性材にて構成されている。挟持ベルト41は、駆動回転体である駆動プーリ42と、従動回転体である従動プーリ43と、互いに間隔をおいて並ぶ回転可能な複数(例えば3つ)の押え体である押えプーリ44とに掛け渡されている。
【0033】
そして、互いに離間対向して位置する両挟持ベルト41は、互いに対向する側(玉葱Tと接触する側)に往路部45を有し、互いに対向する側とは反対側に前後方向に沿った直線状の復路部46を有している。往路部45は、弾性変形する前の状態で前後方向に沿って位置する直線状部分47と、搬送始端側ほど復路部46側に位置する搬送始端側傾斜状部分48と、搬送終端側ほど復路部46側に位置する搬送終端側傾斜状部分49とにて構成されている。
【0034】
また、互いに離間対向する搬送始端側傾斜状部分48間には、搬送方向に向かって徐々に縮幅する3角形状の玉葱受入用空間部51が存在し、互いに離間対向する搬送終端側傾斜状部分49間には、搬送方向に向かって徐々に拡幅する3角形状の玉葱渡し用空間部52が存在している。互いに離間対向する直線状部分47間には細長状の空間部50が存在し、この空間部50と第2搬送手段4の空間部36とが平面視で一直線上に位置している。
【0035】
押えプーリ44は、挟持ベルト41の往路部45の直線状部分47の内面に接触(圧接)している。押えプーリ44は、上下方向の軸53を中心として回動可能な略く字状の支持アーム54に回転可能に取り付けられている。つまり、押えプーリ44は、支持アーム54の先端部に上下方向の軸56を介してこの軸56を中心として回転可能に取り付けられている。
【0036】
支持アーム54の基端部には、この支持アーム54を介して押えプーリ44を玉葱T側に向けて付勢する付勢体である引張コイルばね55の一端部が取り付けられている。引張コイルばね55の他端部は、図示しない被取付部に取り付けられている。つまり、引張コイルばね55の付勢力によって、押えプーリ44の外周面の一部が挟持ベルト41の往路部45の内面に押し付けられている。
【0037】
なお、挟持ベルト41の搬送始端側の下端部は、第1搬送手段3の整列ローラ12の上端部に近接して位置している。挟持ベルト41の搬送終端側の下端部は、第2搬送手段4の送りローラ31の上端部に近接して位置している。
【0038】
そして、根下流向き姿勢の玉葱Tが第1搬送手段3の整列ローラ12によって玉葱受入用空間部51に供給されると、玉葱Tは、その本体部T1が両往路部45で挟持されて根下流向き姿勢が維持された状態のまま、両挟持ベルト41によって空間部50を通って挟持搬送される。この際、挟持ベルト41が弾性変形するとともに、押えプーリ44が引張コイルばね55の付勢力に抗して支持アーム54と一体となって軸53を中心として回動する。
【0039】
その後、玉葱Tは、玉葱渡し用空間部52に到達して両往路部45による挟持が解除されると、第2搬送手段4の送りローラ31上に根下流向き姿勢のまま乗り移る。この乗り移った玉葱Tは、送りローラ31上で根上向き姿勢になる。
【0040】
また、玉葱処理装置1は、図1に示されるように、第2搬送手段4の上方に配設され第2搬送手段4による搬送途中で第2搬送手段4にて搬送中の根上向き姿勢の玉葱Tの根部T3を切断する根切断手段61と、第2搬送手段4の下流に近接して配設され第2搬送手段4から搬出された根上向き姿勢の玉葱Tの茎葉部T2を切断する茎葉切断手段62とを備えている。
【0041】
ここで、根切断手段61は、図7〜図10にも示されるように、玉葱Tの根部T3を左右両側から挟んで掻き上げるようにして同一方向に揃える根揃え部(掻上部)63と、この根揃え部63によって同一方向に揃えられた根部T3をその根揃え部63の搬送方向下流の近接位置で切断する根切断部64と、根揃え部63から玉葱Tに作用する上向きの力(掻上力)が搬送抵抗となって玉葱Tが滞留しないように玉葱Tを根揃え部63側から根切断部64側に向けて強制的に送り出す送出部65とを有している。
【0042】
根揃え部63は、動力を受けて互いに異なる方向(互いに対向する側が上方に向かう方向)に回転することにより、玉葱Tの根部T3を左右両側から挟んで掻き上げるようにして同一方向に揃える例えば左右1対で対をなす根揃え回転体である根揃えローラ81を有している。
【0043】
なお、玉葱Tの根部T3は、本体部T1の尻から多方向にバラバラに伸びた不揃い状態の多数の糸状根毛で構成されているため、切り残しがないよう高精度で根切りを行うためには、根切断部64による切断に先立って根部T3を同一方向(略同一方向を含む)に揃える必要がある。
【0044】
根揃えローラ81は、前後方向に軸方向を有する円筒状のローラ本体部82と、このローラ本体部82の外周面に突設された複数の根揃え用の羽根部83とを有している。根揃えローラ81は、前後方向の回転軸84に固着されている。
【0045】
根切断部64は、動力を受けて互いに異なる方向(互いに対向する側が後方に向かう方向)に回転することにより、玉葱Tの根部T3を左右両側から挟むようにして切断する例えば左右1対で対をなす根切断刃86を有している。
【0046】
根切断刃86は、円板状に形成され、根揃えローラ81の後端部に近接して位置している。両根切断刃86は、平面視で互いに一部が重なり合うように配設されている。根切断刃86は、上下方向の回転軸87の下端部に固着されている。
【0047】
送出部65は、動力を受けて互いに異なる方向(互いに対向する側が後方に向かう方向)に回転(回行を含む)することにより、玉葱Tの本体部T1の上部を左右両側から挟持しながら玉葱Tを根揃え部63側から根切断部64側に向けて一定姿勢(根上向き姿勢)のまま押し出すように送り出す例えば左右1対で対をなす送出回転体91を有している。つまり、これら両送出回転体91は、根揃え部63で根揃えが行われている最中の玉葱Tを挟持して根切断刃86側に向けて送り出すものである。
【0048】
各送出回転体91は、上下方向の回転中心軸線Xを中心として回転可能に設けられている。そして、各送出回転体91は、回転中心軸線Xが中心を通る円板状の回転部材92と、この回転部材92の外周面から突出し回転中心軸線Xに対して放射状に位置する弾性変形可能な細長板状の複数の送出羽根93とを有している。
【0049】
送出羽根93の基端部が回転部材92の外周面に固着され、送出羽根93の先端部が自由端部となっている。送出羽根93は、例えばゴム等の弾性材からなるもので、長手方向中央側が回転方向前方に向かって凸となるような湾曲状に形成されている。そして、送出羽根93の先端側は、玉葱Tの本体部T1のうち上部(本体部のうち根部に近い部分)のみに接触する。また、回転部材92は、上下方向の回転軸94の下端部に固着されている。なお、回転部材92と送出羽根93とが別体のものには限定されず、例えば弾性材で回転部材92と送出羽根93とを一体成形したものでもよい。
【0050】
さらに、両送出回転体91のうちの一方の送出回転体91の送出羽根93の移動領域と、他方の送出回転体91の送出羽根93の移動領域とは、平面視で互いに一部が重なり合っている(図3参照)。つまり、この重なり合う領域で、両送出回転体91の送出羽根93によって、玉葱Tの本体部T1の上部が左右両側から挟持され、この挟持された状態で玉葱Tが根揃え部63による根揃え位置から根切断部64による根切断位置まで一定姿勢(根上向き姿勢)のまま挟持搬送される。なお、根揃え部63および根切断部64は平面視で送出羽根93の移動領域内に位置しており、送出羽根93は、根揃え部63および根切断部64の各下方近傍位置を移動する。
【0051】
また、根切断手段61は、玉葱Tの本体部T1の形状(球径)の違いに対応できるように、第2搬送手段4の送りローラ31の上方で第2搬送手段4の送りローラ31に対して水平姿勢のまま上下動可能(上下平行移動可能)となっている。
【0052】
つまり、根切断手段61は、左右方向の軸96を中心として上下回動可能な平行リンク97に取り付けられたカバー機能を兼ね備えた上下動フレーム部98を有し、この上下動フレーム部98によって根揃え部63、根切断部64および送出部65が支持されている。そして、根揃え部63、根切断部64および送出部65は、平行リンク97の上下回動に基づいて、送りローラ31に対して上下動フレーム部98とともに送りローラ31に対して上下に平行移動する。
【0053】
また、図7に示されるように、プーリ99に巻き掛けられたワイヤ100の一端部が平行リンク97に取り付けられ、このワイヤ100の他端部が重量軽減用の付勢体である引張コイルばね101に取り付けられている。そして、引張コイルばね101によって根切断手段61が上方に付勢され、根切断手段61の全体の重量が軽くなっている。このため、玉葱Tの本体部T1の上面が上下動フレーム部98のガイドアーム102の傾斜状の当接面103に当接することにより、根切断手段61の全体が玉葱Tによって押し上げられるようにして作用高さ位置まで上動する。なお、上下動フレーム部98は、玉葱Tの本体部T1の上面が摺接する摺接面104を下面に有し、玉葱Tが摺接面104から離れると、根切断手段61の全体が自重によってもとの待機高さ位置まで下動する。なお、根切断手段61は、根揃え部63、根切断部64、送出部65および上下動フレーム部98等にて構成されている。
【0054】
茎葉切断手段62は、円板状の刃受け部71と、この刃受け部71との間で玉葱Tの茎葉部T2を挟んで切断する円板状の回転刃部72とを有している。
【0055】
さらに、玉葱処理装置1は、装置枠70の前端部に取り付けられた投入用シュート73と、装置枠70の後端部に取り付けられた排出用シュート74とを備えている。茎葉部T2および根部T3を有する処理前の玉葱Tが投入用シュート73によって第1搬送手段3の整列ローラ12上に投入され、また、茎葉部T2および根部T3を有しない処理後の玉葱Tが排出用シュート74によって例えばコンテナ等の容器(図示せず)内に向かって排出される。なお、装置枠70の下端部には、複数のキャスタ75が取り付けられている。
【0056】
また、玉葱処理装置1は、各搬送手段3,4,5および各切断手段61,62を作動させる駆動手段76を備えている。駆動手段76は、駆動源であるモータ77と、このモータ77から出力される動力を各搬送手段3,4,5および各切断手段61,62まで伝達する動力伝達機構78とを有している。
【0057】
なお、動力伝達機構78は、図7および図9等に示すように、根揃え部63の回転軸84、根切断部64の回転軸87および送出部65の回転軸94の各々を同期回転させる伝動手段80を有している。この伝動手段80は、例えばシャフト、プーリ、ベルトおよびベベルギア等にて構成されている。
【0058】
次に、上記玉葱処理装置1の作用等を説明する。
【0059】
処理前の玉葱Tが投入用シュート73上を通って第1搬送手段3の整列ローラ12上に投入供給されると、玉葱Tは、整列ローラ12によって互いに間隔をおいて1列に整列した状態となって搬送され、この搬送途中で根下流向き姿勢となり、この根下流向き姿勢のまま挟持搬送手段5の両挟持ベルト41間に乗り移る。
【0060】
両挟持ベルト41間に乗り移ると、玉葱Tは、両挟持ベルト41によって整列ローラ12上から隙間6上を経て送りローラ31上まで根下流向き姿勢のまま左右両側のみから挟持されるようにして挟持搬送され、その後、両挟持ベルト41の挟持解除により第2搬送手段4の両送りローラ31上に根下流向き姿勢のまま乗り移る。
【0061】
両送りローラ31上に乗り移ると、玉葱Tは、送りローラ31によって搬送され、この搬送途中で根下流向き姿勢から根上向き姿勢と姿勢変化し、その後、根切断手段61によって玉葱Tの根部T3が切断される。
【0062】
この根切断手段61の動作を具体的に説明すると、図11(a)および(b)に示すように、根上向き姿勢の玉葱Tの本体部T1の上面が根切断手段61の上下動フレーム部98のガイドアーム102の当接面103に当接すると、その玉葱Tによって押し上げられることにより根切断手段61の全体が送りローラ31に対して作用高さ位置まで上動する。
【0063】
なお、玉葱Tの本体部T1の上面は、当接面103から離れると、次は上下動フレーム部98の摺接面104に摺接するが、本体部T1の上面が摺接面104と摺接している限り、根切断手段61の全体は玉葱Tの本体部T1の形状に応じた作用高さ位置に保持される。
【0064】
そして、まず、根上向き姿勢の玉葱Tの根部T3が、根揃え部63の両根揃えローラ81の羽根部83によって左右両側から掻き上げられて同一方向に揃えられる。
【0065】
このとき、玉葱Tに対して根揃えローラ81の羽根部83から上向きの掻上力が作用するが、玉葱Tは、掻上力によってその場で滞留することなく、送出部65の両送出回転体91の送出羽根93によって挟持搬送されて根揃え部63側から根切断部64側に向かって一定の根上向き姿勢のまま送り出される。
【0066】
つまり、玉葱Tは、根揃え部63の掻上力に基づく搬送抵抗に打ち勝って、送出部65による搬送力と送りローラ31による搬送力とによって、根揃え部63による根揃え位置から根切断部64による根切断位置まで、姿勢変更することなく搬送される。
【0067】
そして、玉葱Tが根切断位置に到達すると、直前の根揃え部63で揃えられた根部T3が根切断部64の両根切断刃86によって切断される。
【0068】
この根切断刃86による切断後、玉葱Tの本体部T1の上面が上下動フレーム部98の摺接面104から離れると、図11(c)に示すように、根切断手段61の全体が自重によってもとの待機高さ位置まで下動する。なお、その後、後続の玉葱Tが上下動フレーム部98の当接面103に当接すれば、次はその玉葱Tの形状に対応した作用高さ位置まで根切断手段61の全体が上動する。
【0069】
その後、この根部T3が切断された玉葱Tが送りローラ31にて搬送されてその搬送終端部から搬出されると、茎葉切断手段62によって玉葱Tの茎葉部T2が切断される。こうして、球状の本体部T1だけとなった玉葱Tは、排出用シュート74上を通って、例えば容器(図示せず)内に収容される。
【0070】
そして、このような玉葱処理装置1によれば、根切断手段61が玉葱Tを根揃え部63側から根切断部64側に向けて送り出す送出部65を有するため、根揃え部63から玉葱Tに作用する上向きの力で玉葱Tが停止することなく、第2搬送手段4の送りローラ31上での玉葱Tの滞留を防止できる。
【0071】
また、根切断手段61の送出部65は、互いに異なる方向に回転することにより玉葱Tを挟持しながら根揃え部63側から根切断部64側に向けて送り出す対をなす送出回転体91を有するため、玉葱Tを左右両側から挟持することで玉葱Tの一定姿勢を維持しつつ、玉葱Tを適切に送り出すことができる。
【0072】
さらに、送出回転体91は、この送出回転体91の回転支点である回転中心軸線Xに対して放射状に位置する弾性変形可能な複数の送出羽根93を有するため、玉葱Tの本体部T1を痛めることなく、適切に送り出すことができる。
【0073】
また、根部切断手段61の全体が玉葱Tの形状の違いに対応できるように第2搬送手段4に対して上下動可能となっているため、玉葱Tの本体部T1の大きさ等に拘らず、玉葱Tの滞留を防止でき、根部T3を精度良く適切に切断できる。
【0074】
さらに、根下流向き姿勢の玉葱Tを第1搬送手段3の整列ローラ12から受け入れこの受け入れた玉葱Tを左右1対の挟持ベルト41で挟持搬送して第2搬送手段4の送りローラ31へ自由落下させることなく根下流向き姿勢のまま渡す挟持搬送手段5を備えるため、玉葱Tが根下流向き姿勢を維持したまま送りローラ31上に乗り移ることとなり、玉葱Tが送りローラ31上で転がることがなく、玉葱Tを送りローラ31上で所望の根上向き姿勢である一定姿勢に揃えることができ、よって、根部T3および茎葉部T2を切断手段61,62にて適切に切断できる。
【0075】
また、挟持搬送手段5は、互いに対向して位置して玉葱Tを挟持搬送する左右1対の挟持ベルト41と、この各挟持ベルト41に接触する押えプーリ44と、この押えプーリ44を玉葱T側に向けて付勢する引張コイルばね55とを有するため、簡単な構成であるにも拘らず、玉葱Tを根下流向き姿勢のまま安定的に挟持搬送できる。
【0076】
さらに、第1搬送手段3、挟持搬送手段5および第2搬送手段4の各搬送速度が同じであるため、第1搬送手段3から挟持搬送手段5への乗り移りおよび挟持搬送手段5から第2搬送手段4の乗り移りの際における玉葱Tの滞留や姿勢変化等を適切に防止できる。
【0077】
なお、送出部65は、例えば図12および図13に示すように、玉葱Tの本体部T1を挟持しながら玉葱Tを根揃え部63側から根切断部64側に向けて送り出して根切断部64の搬送方向下流位置(根切断部64による根切断位置を越えた位置)まで一定姿勢のまま搬送する対をなす送出回転体91を有するものでもよい。
【0078】
図12に示す送出部65の送出回転体91の送出羽根93は、複数(例えば3つ)のプーリ等の回転部材111に掛け渡されたベルト等の無端回転部材112の外面に複数突設されている。つまり、この各送出回転体91は、無端回転部材112とこの無端回転部材112から突出した複数の送出羽根93とにて構成されたもので、駆動手段76側からの動力で直線部分を有した状態で所定方向に回転するようになっている。また、この送出部65は、搬送方向に向かって徐々に縮幅する3角形状の空間部113を搬送方向下流側に有している。そして、この構成では、図8の構成に比べて挟持距離を長くでき、また、送出部65からの搬出の際に、送出羽根93から玉葱Tに作用する挟持力が徐々に弱められるため、玉葱Tの姿勢が崩れにくい。
【0079】
図13に示す送出部65の送出回転体91の送出羽根93は、複数(例えば2つ)のプーリ等の回転部材114に掛け渡されたベルト等の無端回転部材115の外面に複数突設されている。つまり、この各送出回転体91は、無端回転部材115とこの無端回転部材115から突出した複数の送出羽根93とにて構成されたもので、駆動手段76側からの動力で直線部分を有した状態で所定方向に回転するようになっている。そして、この構成では、図8の構成に比べて挟持距離を長くでき、また、挟持強さが一定であるため、安定した挟持搬送が可能である。
【0080】
なお、例えば図示しないが、送出部63は、玉葱Tの本体部T1を挟持しながら玉葱Tを根揃え部63側から根切断部64側に向けて送り出して茎葉切断手段62による茎葉切断位置まで一定姿勢のまま搬送する対をなす送出回転体91を有するものでもよい。
【0081】
また、上記各実施の形態では、圃場から収穫された玉葱Tを切断処理する定置型について説明したが、例えば圃場の玉葱Tを収穫しながら切断処理する走行型の玉葱処理装置であってもよい。
【0082】
また、玉葱処理装置1は、玉葱Tを1列に並べて整列搬送しながら切断処理するものには限定されず、例えば玉葱Tを複数列に並べて整列搬送しながら切断処理するものでもよい。
【0083】
さらに、例えば第2搬送手段4の送りローラ31の外周面に螺旋状の切断刃を設けて、両送りローラ31間に玉葱Tの茎葉部T2を引き込んで切断するようにしてもよい。
【0084】
また、引張コイルばね55等の付勢体は、例えば押えプーリ44を搬送方向に対して直交する水平な方向に移動可能とし、この押えプーリ44の回転支点(軸56)を玉葱T側に付勢するもの等でもよい。
【0085】
なお、第1姿勢は、根下流向き姿勢には限定されず、例えば根部T3が搬送方向上流を向きかつ茎葉部T2が搬送方向下流を向く姿勢等でもよい。また、第2姿勢は、根上向き姿勢には限定されず、例えば根切断手段に応じた姿勢であればよい。そして、例えば第2姿勢が根下向き姿勢である場合には、根切断手段を第2搬送手段の下方に配設する。
【符号の説明】
【0086】
1 玉葱処理装置
4 搬送手段である第2搬送手段
61 根切断手段
63 根揃え部
64 根切断部
65 送出部
91 送出回転体
93 送出羽根
T 玉葱
T3 根部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玉葱を搬送する搬送手段と、
この搬送手段による搬送途中で玉葱の根部を切断する根切断手段とを備え、
前記根切断手段は、
玉葱の根部を揃える根揃え部と、
この根揃え部によって揃えられた根部を切断する根切断部と、
玉葱を前記根揃え部側から前記根切断部側に向けて送り出す送出部とを有する
ことを特徴とする玉葱処理装置。
【請求項2】
根切断手段の送出部は、互いに異なる方向に回転することにより玉葱を挟持しながら根揃え部側から根切断部側に向けて送り出す対をなす送出回転体を有する
ことを特徴とする請求項1記載の玉葱処理装置。
【請求項3】
各送出回転体は、玉葱の本体部に接触する弾性変形可能な複数の送出羽根を有する
ことを特徴とする請求項2記載の玉葱処理装置。
【請求項4】
根部切断手段は、玉葱の形状の違いに対応できるように搬送手段に対して上下動可能となっている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の玉葱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−44901(P2012−44901A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188586(P2010−188586)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】