説明

珪砂造粒体の製造方法

【課題】 金属シリコンを製造する際に原料として通常使用されている珪石を代替するために、珪石と同様の扱いができるような粒径の珪砂造粒体を連続的に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】 転動造粒機に珪砂とバインダーとを供給して珪砂造粒体を製造するに際し、上記転動造粒機を少なくとも2台準備し、第一段の転動造粒機に存在する造粒体中の、粒径が20mm以上の造粒体の割合が30重量%以下となるように、粒成長した中間造粒体を取り出し、次段の転動造粒機にて、前記中間造粒体に珪砂とバインダーとを供給して更に粒成長せしめて珪砂造粒体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転動造粒による珪砂造粒体の新規な製造方法に関する。詳しくは、平均粒径が20mm以上、特に、30〜200mm、更には、30〜100mm程度の比較的大きい粒径を有する珪砂造粒体を連続的に効率よく製造する方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に金属シリコンの製造は、原料にシリコン源である珪石、及び還元材として木炭、コークス、石炭、ウッドチップなどを使用し、これらの混合物をアーク炉内に原料層として充填して、2300〜2800Kの高温で加熱し、珪石を還元することによって行われる(非特許文献1参照)。
【0003】
上記珪石は、アーク炉内での通気性を確保するため、通常、平均粒径が30〜200mmのものが好適に用いられる。即ち、アーク炉内における珪石の主成分である二酸化珪素(SiO)の還元反応は、総括的には次の式(1)によって進行し、かかる還元反応の過程で、気相として一酸化炭素(CO)ガス及び一酸化珪素(SiO)ガスが発生し、それらの全部又は一部を、原料層を通してアーク炉上部の排気口より逃がす必要がある。
【0004】
SiO+2C→Si+2CO (1)
尚、実際には反応は複雑であり以下のような各素反応に分解され、これらの素反応が併行して起こっているものと考えられる。
【0005】
SiO+C→SiO+CO (2)
SiO+2C→SiC+CO (3)
SiO+3C→SiC+2CO (4)
SiO+SiC→2Si+CO (5)
SiO+2SiC→3Si+2CO (6)
SiO+C→Si+CO (7)
SiC+SiO→Si+SiO+CO (8)
Si+SiO→2SiO (9)
金属シリコンを製造する一般的な製造条件において、アーク炉内温度範囲での凝縮相はSiO、C、SiC、Siで、気相はCO、SiOである。炉内電極先端付近の高温部から式(2)の反応によりSiOガスが発生する。上部の原料層では、生成したSiOガスやCOガスが原料の隙間を上昇し排出される。この時、その通路には次の反応で析出物が付着する。
【0006】
3SiO+CO→SiO+SiC (10)
2SiO→Si+SiO(11)
一方、珪砂は珪石に比べて資源量が豊富であり、加えて採掘も容易であるので、金属シリコンの原料として珪石を代替できれは大きな利点となり得る。しかしながら、珪砂を前記原料として直接使用すると、アーク炉内への充填時に、珪石に比べて空隙が少なくなり、前記の式(10)、(11)の反応により沈着物が発生するとさらに空隙を減少させてしまう。そのため、続いて生成するCOやSiOのガス抜けを困難にすることが危惧される。前記の式(2)〜(8)からわかるようにCOが滞留してしまうと反応の進行が阻害されることになる。それは、SiCが炉底に沈着固化して操業トラブルの原因にもなる。
【0007】
上記珪砂を原料として使用する際の問題に対し、珪砂を所定の大きさに造粒して使用する方法が考えられる。
【0008】
一般に、粉末より造粒体を製造する方法として、転動造粒法が知られている。この方法は、転動により粉体粒子間隙に存在する液膜が接触し、その液膜の表面張力で、粉体自身の種々の結合力が作用しうる距離までひきつけられ、物理的または化学的な結合が形成される機構により造粒体が形成される。そのため、転動造粒法により得られる造粒体は、他の圧縮型造粒法、撹拌型造粒法、押出し造粒法等の造粒方法に比較して、圧縮強度において比較的高いものが得られ易く、前記珪石の代替品として有用であると考えられる。
【0009】
従来、上記転動造粒法による珪砂の造粒を試みた文献は見当たらないが、本発明者らの実験によれば、転動造粒により、前記アーク炉内での通気性を確保するために好ましい大きさ、例えば、平均粒径が30〜200mm程度のものを連続的に製造することが困難である。即ち、転動造粒機に珪砂とバインダーとを連続的に供給して上記目的とする大きさの珪砂造粒体を連続的に取り出そうとしても、造粒機内において、造粒体が連続して生成せず、粒径が増大するのみであった。そのため、珪砂造粒体が所定の大きさとなった際に、一旦造粒機を停止して、珪砂造粒体を取り出した後、再度、造粒を開始する必要があり、工業的な実施において、極めて効率が悪いという問題を有していた。
【0010】
尚、珪砂造粒体の製造以外に、転動造粒法によりジルコニア粉末を成形するに際し、撹拌造粒によって粒径2mm以下の造粒体を予め製造し、これを核として転動造粒機にて20mm以下の造粒体を形成することにより、ジルコニア球体を効率的に製造出来ることが開示されている(特許文献1参照)。
【0011】
しかしながら、上記方法の撹拌造粒によって得られる核は強度が低く、大粒径の造粒体に成長せしめる過程で、核の破壊が生じることがあり、小粒径の造粒体片が増大し、特に、本発明の対象とする珪砂においては、特に核の破壊が著しく起こることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−170206号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】工業加熱 第46巻第3号(2009)1〜11頁、「小型アーク炉の現状と課題」、安藤ら著
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、転動造粒機を使用して、粒径が20mmを超える造粒体を含み、特に、平均粒径が30〜100mm程度の比較的大粒径の珪砂造粒体を連続して製造することが可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、珪砂の転動造粒において、粒成長した造粒体が特定の大きさとなった後には、原料である珪砂とバインダーとを更に供給しても、核となる粒子が生成、粒成長し難くなり、既存の造粒体の粒成長のみが進行するため、連続的な製造が困難となるという知見を得た。そして、かかる知見に基づき、転動造粒により珪砂造粒体を製造する際、造粒工程を2段階以上に分け、第一段の転動造粒機において、前記特定の大きさに粒成長した造粒体を取り出し、転動造粒機内におけるかかる造粒体の割合を特定値以下に制限すること、及び、上記取り出した造粒体(中間造粒体)を別途用意した次段以降の転動造粒機において所望の粒径にまで成長させることにより、目的とする比較的大きい粒径の珪砂造粒体を連続的に製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
即ち、本発明は、転動造粒機に珪砂とバインダーとを供給して珪砂造粒体を製造するに際し、上記転動造粒機を少なくとも2台準備し、第一段の転動造粒機内に存在する造粒体中の、粒径が20mm以上の造粒体の割合が30重量%以下となるように、粒成長した中間造粒体を取り出し、次段の転動造粒機にて、前記中間造粒体に珪砂とバインダーとを供給して更に粒成長せしめて珪砂造粒体を得ることを特徴とする珪砂造粒体の製造方法である。
【0017】
尚、本発明において、造粒体の粒径は、粒子の長径を示すものである。また、平均粒径は、無作為抽出した50個の造粒体をサンプリングし、その粒径の算術平均として算出された値である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、粒径が20mmを超える珪砂造粒体、特に、平均粒径が30〜200mm、更には、50〜150mmの珪砂造粒体を転動造粒機により連続的且つ安定的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(珪砂)
本発明で用いる珪砂は特に制限されるものではないが、SiO含有量が90重量%以上である平均粒子径1000μm以下の粉状のものが好適に使用される。特に、金属シリコンの製造用原料として用いること等を考慮すると珪砂中の不純物は少ないほど好ましく、SiO含有量は94重量%以上が好ましく、さらに99重量%以上が特に好ましく、99.5重量%が最も好ましい。特に、珪砂中の不純物が少ない、高い純度の珪砂を使用することは、得られるシリコン中に残存する不純物含量を効果的に低減することができ好ましい。また、アーク炉内での加熱により、蒸発した不純物が炉の周壁や配管の壁に付着し、堆積し易くなるという問題をも防止することができ、アーク炉を長時間安定して使用することができる。
【0020】
また、珪砂は、必要に応じて粉砕して、平均粒子径1000μm以下、好ましくは、200μm以下、更に好ましくは、150μm以下で使用することが造粒性を高めるために効果的である。しかし、珪砂を過度に粉砕することは、粉砕にかかるエネルギーを多く必要とするばかりでなく、粉砕機との接触による汚染も懸念される。従って、珪砂は、平均粒子径が、5μm以上、好ましくは、20μm以上、更に好ましくは、50μm以上となるように、粒子径を調整することが好ましい。
また、珪砂の粒子径を小さくすることで粒子表面のシラノール基が増加し、その分、造粒体構造内の粒子間結合力が高まる傾向にあるが、本発明において特に好適な5μm以上、特に20μm以上、更には、50μm以上と、比較的大きい平均粒子径を下限値とする場合、これを前記した転動造粒機で普通に造粒すると、本発明の課題である、核の生成が起こり難いという現象が生じ易いため、かかる粒子径を有する珪砂を使用する場合、本発明は、特に効果的である。
【0021】
本発明において、前記平均粒子径の珪砂となるように、必要に応じて珪砂を粉砕する方法は、公知の粉砕機を用いて実施することができる。例えば、粉体工学便覧(粉体工学会編、昭和61年2月28日発行、日刊工業新聞社)503〜505頁の表1・10に記載されているスクリューミル;スタンプミルに代表される粉体層打槌式;ディスクミル、ピンミル、スクリーンミル、ハンマミル、遠心分級型ミル等の高速回転式衝撃粉砕機;ローラミルなどのロール転動型;ボールミル、振動ボールミル、遊星型粉砕機などのボール媒体ミル;塔式粉砕機、撹拌槽型、流通管型、アニュラ型などの媒体撹拌式粉砕機;他にもジェット粉砕機が利用できる。具体的に用いる粉砕機としては、粉砕に要するエネルギーがより少なく、粉砕時に混入する不純物がより少ないことが好ましく、例えばボールミル、振動ボールミル、遊星型粉砕機などのボール媒体ミル;塔式粉砕機、撹拌槽型、流通管型、アニュラ型などの媒体撹拌式粉砕機等の粉砕ボールを用いた粉砕機が好適に用いられる。
【0022】
(バインダー)
本発明で用いるバインダーは、珪砂の転動造粒に使用可能なバインダーであれば特に制限されず公知のものを用いることが出来る。このようなバインダーとしては、水や有機溶媒等の溶媒、無機バインダー、有機バインダー等が挙げられる。これらのバインダーは、それぞれ単独で用いることも出来るが、溶媒と無機バインダー及び/または有機バインダーを併用することが好ましく、上記溶媒として水を使用することがより好ましい。
【0023】
無機バインダーとして使用可能なものを例示するならば、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、アルミナセメント、フライアッシュ、白色セメント、ジェットセメント等のセメント類;無水石膏、半水石膏、二水石膏、排煙脱硫石膏等の石膏類;けい酸ソーダ1,2,3,4号、メタケイ酸等の水ガラス類;粘土、ベントナイト等の鉱物類;酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のカルシウム化合物が挙げられる。
【0024】
また、有機バインダーとして使用可能なものを例示するならば、デキストリン、コーンスターチ、そくい等のでん粉類;にかわ、カゼイン、大豆たん白等のたん白類;ラテックス、アラビアゴム等の天然ゴム類;ピッチ、加工タール、舗装タール等のタール類;ストレートアスファルト、ブローンアスファルト等のアスファルト類;ビニール、ポリビニールアルコール、アクリル、ポリアミド、ポリエチレン、セルロース等の熱可塑性レジン;ユリア、メラミン、フェノール、フラン、エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン等の熱硬化性レジン;ネオプレン、ニトリル、スチレン、ブチル、シリコーン等のエラストマ等が挙げられる。
【0025】
上記無機バインダー類及び有機バインダー類のうち、無機バインダーは、珪砂の造粒体が強度を維持することが要求される高温域においても効果が消失しない点で好ましい。中でも、カルシウム化合物は吸水による粘着性に基づく低温度域の造粒体強化機能の他、加熱することで珪砂と反応し焼結助剤としての造粒体強化機能も有するため、高温下での強度を維持することができ、前記アーク炉を使用した珪素の製造方法において、特に好適に使用することができる。
【0026】
以下、カルシウム化合物をバインダーとして使用する態様について詳細に説明するが、他のバインダーについても、公知の使用方法に基づいて適宜使用態様を決定することができる。
【0027】
上記カルシウム化合物の粒子径としては0.001〜20μmのものを使用するのが好ましい。より好ましくは0.001〜10μmである。また、カルシウム化合物粒子は凝集していても、後述する混合過程で凝集体の一部又は全部が解れるので、使用することができる。
【0028】
また、カルシウム化合物の添加割合は、珪砂100重量部に対して0.1〜5重量部とすることが望ましく、さらには0.5〜3重量部であればより好適である。ところで、この量はセメントクリンカ中のカルシウム化合物量と比べて全く少ないことがわかる。これは、本発明では珪砂表面にカルシウム化合物を接触させることが目的であり、言い換えれば珪砂表面を覆うだけのカルシウム化合物を添加すれば十分であり、その分、使用量を低く抑えることができる。そして、このようにカルシウム化合物の添加量を少なく抑えることができるため、これを原料として製造される金属シリコンの純度低下をも抑制できるという効果をもたらす。
【0029】
(転動造粒機)
本発明において、造粒に用いる転動造粒機は公知の転動造粒機が何ら制限を受けることなく用いられる。例えば、造粒便覧(日本粉体工業協会編、昭和50年5月30日発行、オーム社)のII編、2・6節に記載されているドラム型造粒機や皿型造粒機を採用して実施することができる。
【0030】
中でも、皿型造粒機は造粒工程の制御が容易であること等から好適に用いられる。皿型造粒機の皿形状としては普通皿型(たらい型)、多段皿型、球面皿型、頭切円錐型等が挙げられるが、多段皿型、球面皿型、頭切円錐型の造粒機は回転軸に沿って回転半径が異なることから造粒体が遠心力の違いによって自動的に分級されるため、粒径の揃った粒成長した造粒体を回転する皿の外周側から選択的に取り出すのに適している。
【0031】
本発明の転動造粒において、転動造粒装置への珪砂及びバインダーの供給操作は、公知の転動造粒において実施されている操作を特に制限なく実施することができる。例えば、珪砂の供給は粉体工学便覧(粉体工学会編、昭和61年2月28日発行、日刊工業新聞社)の567頁表5・1に分類されている供給機を使用して実施することができるが、供給量を制御し易い点で振動フィーダ、シェーキングフィーダーやスクリューフィーダを用いることが好ましい。また、バインダーの供給も同様に、振動フィーダ、シェーキングフィーダーやスクリューフィーダを使用することが好ましい。さらに、珪砂及びバインダーを予め混合し、振動フィーダ、シェーキングフィーダーやスクリューフィーダ等を用いて、同時に供給することも好ましく行われる。上記珪砂及びバインダーの供給は、連続的或いは断続的に行うことができる。
【0032】
また、造粒時に用いるバインダーの量も公知の方法に準じて適宜決定すればよい。例えば、バインダーとして、水を使用する場合、その量は粉体工学便覧(粉体工学会編、昭和61年2月28日発行、日刊工業新聞社)の599頁表8・3に分類されている固・液・気系の構造(以下、充てん域という)における策状域となるよう添加することが好ましい。充てん域が策状域にあると水が粒子間に介在し架橋液体として作用するからである。充てん域は珪砂に対する水の添加割合のみならず珪砂の粒度にも影響を受けるが、前述した平均粒子径の範囲であれば珪砂100重量部に対して水10〜30重量部を添加することで架橋液体として機能させることができる。
【0033】
また、水等の溶媒以外の固体のバインダーを使用する場合には、その添加量は珪砂100重量部に対して5〜20重量部とすることが好適である。
【0034】
(転動造粒)
本発明における珪砂造粒体の製造方法の特徴は、前記転動造粒機を少なくとも2台準備し、第一段の転動造粒機内に存在する粒径が20mm以上の造粒体の割合が、30重量%以下、好ましくは、20重量%以下、更に好ましくは、15重量%以下となるように、粒成長した中間造粒体を取り出すことにある。
【0035】
即ち、第一段の転動造粒器内に存在する20mm以上の粒子の割合が、上記範囲となるように造粒を行うことにより、転動造粒器内において、連続して(断続的に供給する操作も含む)供給される新たな珪砂、バインダーよりなる混合物より新しい核の生成、粒成長が起こり、該転動造粒器内において造粒体の数を確実に増加することができる。
上記第一段の転動造粒機において、転動造粒機内に存在する粒径が20mm以上の造粒体の割合を前記範囲内に調整する方法は、第一段の転動造粒機より粒成長した粒子を選択的に且つ連続して取り出すことによって行えばよい。具体的には、転動造粒装置においては、粒成長した造粒体は、回転する皿の外周部に存在するため、かかる部分において所定の大きさの造粒体(中間造粒体)を取り出す方法が好適に実施される。
【0036】
尚、上記第一段の転動造粒機からの中間造粒体の取り出しは、前記したように、該転動造粒機内に存在する粒径が20mm以上の造粒体の割合を低くするほど好ましいが、かかる造粒機内に存在する造粒体の粒径が、過度に小さい状態で取り出すと、次段の転動造粒機にて更に粒成長を行わせる際に、粒成長した造粒体により上記中間造粒体が破壊されることが懸念され、また、単位造粒機当たりの生産効率が低下する場合があるため、平均粒径10mm以上、特に、15mm以上、更には、20mm以上に粒成長した造粒体(中間造粒体)を取り出すことが好ましい。また、第一段の転動造粒機より取り出す中間造粒体の粒径が余り大きい場合、該造粒機中の20mm以上の造粒体の割合が前記範囲を超えるため、平均粒径30mm以下、好ましくは、25mm以下の造粒体を取り出すことが好ましい。
【0037】
尚、上記特定の大きさの造粒体を取り出す条件は、予め実験によって20mmの造粒体が前記範囲内、好ましくは、中間造粒体の平均粒径が前記範囲となるように取り出し条件、例えば、転動造粒機のコーンの傾き、回転数等を設定すればよい。
【0038】
本発明において、第一段の転動造粒機より取り出された中間造粒体は、次段以降の転動造粒機に供給され、ここで更に、珪砂とバインダーとを添加して粒成長を行い、目的とする平均粒径が20mm以上、特に、30〜200mm、更には、30〜100mmの平均粒径を有する珪砂造粒体を得る。
【0039】
即ち、本発明において、最終的に製造される珪砂造粒体の平均粒径が、20mm未満では取扱性が悪く、アーク炉内原料層をガスが通過するための十分な空隙を確保できないし、一方200mmを超える平均粒径の造粒体を製造するのはコスト・生産性の点で不利になる。
【0040】
(造粒体の加熱処理)
本発明の製造方法で得られた珪砂造粒体は、強度増大効果を高めるために加熱処理を施すことが好ましい。かかる加熱処理温度は100〜1600℃であることが好ましく、特に700〜1400℃がより好ましい。これには二つの作用が考えられる。まず一つは、カルシウム化合物と珪砂表面のシラノール基との反応が進む作用である。そしてもう一つには、表面反応に加えて焼結反応の進行が考えられる。後者の作用は、700℃以上の処理において発揮されるものと推定される。また、加熱処理の前に水分を蒸発させる目的で100〜200℃の温度で乾燥処理を施すこともできる。
【0041】
上記加熱処理に用いる装置には、例えば窯業操作(窯業読本変種委員会著、昭和48年9月20日発行、窯業協会)の5・1節に記載されている窯炉を採用して実施することができる。具体的には、倒炎式角窯、倒炎式丸窯、シャトルキルン、ベルキルンの不連続窯;輪窯、連続室窯、トンネル窯の連続窯;回転窯;抵抗炉などの電気炉が挙げられる。また乾燥には、例えば粉体工学便覧(粉体工学会編、昭和61年2月28日発行、日刊工業新聞社)591頁に分類されている箱型乾燥器、回転乾燥器が好適に使用できる。加熱処理や乾燥の雰囲気については、酸素などの酸化性ガスや窒素などの不活性ガスを使用することもできるが、大気中処理で十分である。
【0042】
上記加熱処理は、上記のように乾燥器や窯炉にて加熱処理を施すことができるが、転動造粒機に加熱機能が付帯している場合には、造粒と加熱処理を同時に実施してもよい。
【0043】
(造粒体の用途)
本発明の方法によって得られた珪砂造粒体の用途は、特に制限されず公知の用途に使用することが可能であるが、特に金属シリコン、フェロシリコン、及び炭化珪素の製造においてシリコン源の少なくとも一部として好適に使用することができる。中でも、金属シリコンのシリコン源に使用するのが特に好適である。
【0044】
金属シリコンの製造には、例えばシリコン源である珪砂造粒体を単独或いは珪石と併用して使用し、これに還元材として木炭、コークス、石炭、ウッドチップなどを混合して、アーク炉内で還元・溶融する方法が挙げられる。アーク炉内へは偏析のないよう十分に混合されて、必要量投入される。炉内では電極先端部がアーク放電により最も高温となり、その到達温度が2300〜2800Kとなるように通電することによってシリコン源が還元され、金属シリコン融液が炉の底部に溜る。アーク炉底部に溜まった金属シリコン融液は、流し口を酸素ガスなどで開孔し、取鍋に抽出される。そして金属シリコン融液が凝固する過程で不純物が比重差によってスラグとして分離される。スラグの全部または一部を取り除くことで、高純度の金属シリコン塊が得られる。アーク炉は、例えばシリコン原料調査研究成果報告書(昭和58年3月、(社)日本電子工業振興協会)の47〜55頁に記載されているような公知の構造、材質を有するものが特に制限なく使用される。
【0045】
フェロシリコンや炭化珪素の製造の場合には、前者では鉄源を所望の組成となるように別に所定量加える必要があり、また後者では前出の式(4)からわかるとおり還元材を炭素のモル当量がシリカの3倍以上となるよう多量に添加することになる。そして、当然ながら加熱温度についても、目的物に応じて調整が必要となる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0047】
実施例1
平均粒子径100μmの珪砂99kgとCa(OH)1kgを回転型ボールミルを用いて混合した。作製した原料粉をベルトコンベアーにより図1の頭切円錐型造粒皿型造粒機(コーン型造粒機)に1kg/minの速度で供給した。同時に0.2kg/minの供給速度で水を供給し、コーン回転速度18rpmの条件で転動造粒を行った。
上記転動造粒機の傾斜角度を調整して、転動造粒機内の20mm以上の造粒体割合が12重量%となる条件で造粒を行ったところ、転動造粒機より平均粒径15mmの中間造粒体を取り出すことができ、連続造粒が可能であった。
【0048】
尚、上記第一段の造粒機で製造された造粒体(中間造粒体)の取り出しは、遠心力で装置外に飛び出したものをガイドで捕捉することにより行った。
【0049】
次いで、第一段の転動造粒機より取り出された中間造粒体を第二段の造粒機へ誘導し、原料として供給した。
【0050】
第二段の転動造粒機では、前記中間造粒体0.1kg/min、前記原料粉供給速度1kg/min、水0.2kg/minの条件で各原料を供給し、コーン角度18rpmの条件で傾斜角度を目的の粒径の造粒体が得られる角度に調整して転動造粒を行った。第二段の転動造粒機からは、平均粒径30mmの造粒体連続的に取り出すことができ、連続造粒が可能であることが確認された。
【0051】
実施例2
実施例1において、第二段の転動造粒機における、中間造粒体の供給速度を0.03kg/minとし、目的の粒径の造粒体が得られる角度に傾斜角度を変更した以外、同様の条件にて造粒を行った。その結果、平均粒径40mmの造粒体を連続的に造粒することができた。
【0052】
実施例3
実施例1において、第二段の転動造粒機における、中間造粒体の供給速度を0.01kg/min、目的の粒径の造粒体が得られる角度に傾斜角度を変更した以外、同様の条件にて造粒を行った。その結果、平均粒径80mmの造粒体を連続的に造粒することができた。
【0053】
実施例4
原料粉を珪砂97.5kgとCa(OH)2.5kgとした以外、実施例2と同様の条件にて造粒を行った。その結果、平均粒径40mmの造粒体を連続的に造粒することができた。
【0054】
実施例5
原料粉を珪砂99kgとカルボキシルメチルセルロース(CMC)1kgとした以外、実施例2と同様の条件にて造粒を行った。その結果、平均粒径50mmの造粒体を連続的に造粒することができた。
【0055】
【表1】

【0056】
比較例1
実施例1の第一段の造粒において、転動造粒機の傾斜角度を変更して、転動造粒機より取り出す造粒体の粒径を一段で目的の大きさにしようとしたところ、転動造粒機内において、粒径20mm以上の造粒体割合が35重量%となり、その状態で更に原料を連続して供給しても、粒子の数が増えず、粒成長した造粒体が遠心力で装置外に飛び出すこと無く、造粒機内で20mm以上の造粒体の割合が増加するのみであり、連続造粒が不可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動造粒機に珪砂とバインダーとを供給して珪砂造粒体を製造するに際し、上記転動造粒機を少なくとも2台準備し、第一段の転動造粒機内に存在する造粒体中の、粒径が20mm以上の造粒体の割合が30重量%以下となるように、粒成長した中間造粒体を取り出し、次段の転動造粒機にて、前記中間造粒体に珪砂とバインダーとを供給して更に粒成長せしめて珪砂造粒体を得ることを特徴とする珪砂造粒体の製造方法。
【請求項2】
第一段の転動造粒機より取り出される中間造粒体の平均が10mm以上である請求項1記載の珪砂造粒体の製造方法。

【公開番号】特開2013−6711(P2013−6711A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138834(P2011−138834)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】