説明

珪酸塩の析出防止方法

【課題】界面活性剤の含有量が少ない水性組成物を、口径が小さい吐出口を有する手動式トリガースプレーヤーを具備した容器から噴射する際の、吐出口での珪酸塩の固化/析出を防止できる技術を提供する。
【解決手段】珪酸塩(a)を0.05質量%以上、界面活性剤(b)を1質量%未満、及び(a)以外のアルカリ剤(c)を0.6〜10質量%含有する水性組成物を、所定の手動式トリガースプレーヤーを具備した容器に充填して噴射する際に、前記水性組成物に、グリセリン(d)を、(a)/(d)の質量比が1/1〜1/100の質量比となるように配合して噴射することにより、前記吐出口における前記水性組成物からの珪酸塩(a)の析出を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー容器の吐出口における珪酸塩の析出防止方法、及びスプレー式洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
珪酸塩は通常硬質表面用洗浄剤組成物に防錆剤やアルカリ剤として用いられる。また、グリセリンは水性溶剤として水性組成物に配合される。これら成分を含有する組成物が開示されている技術としては、特許文献1〜3を参考にすることができる。
【特許文献1】特開2001−226695号公報、
【特許文献2】特開2002−146395号公報、
【特許文献3】特開2004−002861号公報、
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
珪酸塩は防錆剤やアルカリ剤として用いられ、特に対象物に金属が含まれる硬質表面洗浄剤や対象物を特定しない消臭剤においては重要な成分の一つである。また、硬質表面洗浄剤や消臭剤はトリガースプレーヤーなどを用いて噴霧して使用される場合が多い。一般に珪酸塩を含有する硬質表面洗浄剤組成物は界面活性剤を含有するものであるが、すすぎの必要がなく拭き取るだけの硬質表面用洗浄剤では、界面活性剤の含有量は低減されている。また、消臭剤においては香料を組成物に可溶化する目的で少量界面活性剤が用いられる場合がある。このような組成物をトリガースプレーヤーなどの口径の小さい吐出口から吐出を繰り返すと、吐出口に珪酸塩が固化/析出し、詰まりを生じるという課題が生じる。したがって、界面活性剤が極端に少ない水性組成物に珪酸塩を併用することは困難であった。
【0004】
特許文献1はエアゾールにおける使用であり、エアゾールは噴霧圧力が高いため、手動式トリガースプレーヤーにおける珪酸塩の固化/析出の問題は生じない。一方、特許文献2、3にはトリガースプレーヤーを用いた洗浄剤組成物が開示されているものの、界面活性剤が少ない系で生じる珪酸塩の固化/析出の課題やその解決手段についての示唆はない。
【0005】
本発明の課題は、界面活性剤の含有量が少ない水性組成物(硬質表面用洗浄剤組成物等)を、口径が小さい吐出口を有する手動式トリガースプレーヤーを具備した容器から噴射する際の、吐出口での珪酸塩の固化/析出を防止できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、珪酸塩(a)を0.05質量%以上、界面活性剤(b)を1質量%未満、(a)以外のアルカリ剤(c)を0.6〜10質量%含有する水性組成物を、口径が0.1mm〜1mmの吐出口を有する手動式トリガースプレーヤーを具備した容器に充填して噴射する際に、前記水性組成物に、グリセリン(d)を、(a)/(d)の質量比が1/1〜1/100の質量比となるように配合して噴射することにより、前記吐出口における前記水性組成物からの珪酸塩(a)の析出を防止する、珪酸塩の析出防止方法に関する。
【0007】
また、本発明は、珪酸塩(a)〔以下、(a)成分という〕を0.05質量%以上、界面活性剤(b)〔以下、(b)成分という〕を1質量%未満、(a)以外のアルカリ剤(c)〔以下、(c)成分という〕を0.6〜10質量%、グリセリン(d)〔以下、(d)成分という〕を含有し、(a)/(d)の質量比が1/1〜1/100である水性組成物を、口径が0.1〜1mmの吐出口を有する手動式トリガースプレーヤーを具備した容器に充填してなる、スプレー式洗浄剤に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、界面活性剤の含有量が少ない水性組成物(硬質表面用洗浄剤組成物等)を、口径が小さい吐出口を有する手動式トリガースプレーヤーを具備した容器から噴射する際の、吐出口での珪酸塩の固化/析出を防止できる技術が提供される。従って、本発明により、吐出口での珪酸塩の固化/析出が防止されたスプレー式洗浄剤、なかでも硬質表面用スプレー式洗浄剤を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
〔(a)成分〕
本発明に係る水性組成物には(a)成分として珪酸塩を含有する。珪酸塩としてはアルカリ金属珪酸塩が好適であり、下記一般式(1)で示される化合物が防錆性の点から好適である。
xM2O・ySiO2 (1)
〔式中、Mは周期律表のIa族元素、y/xは0.5〜3.5である。また、該化合物は結晶構造をとらないものが好適である。〕
【0010】
一般式(1)において、Mは周期律表のIa族元素から選ばれ、Ia族元素としては、Na、K等が挙げられる。これらは、単独であるいは、例えばNa2OとK2Oとが混合してM2O成分を構成していてもよい。また、一般式(1)において、y/xは0.5〜3.5であり、好ましくは1.5〜3である。y/xが0.5以上では耐水溶性が良好であり、y/xが3.5以下では、アルカリ能が高くアルカリ剤として十分な効果が得られる。
【0011】
(a)成分の好ましい例示としては、珪酸ソーダ1号、珪酸ソーダ2号、珪酸ソーダ3号等が挙げられる。
【0012】
〔(b)成分〕
(b)成分の界面活性剤とは、炭素数9〜18の炭化水素基を1つ以上有し、水中においてcmc(臨界ミセル濃度)を有する化合物が好ましく、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。
cmc(臨界ミセル濃度)を有する陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、石鹸、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸ジエステル塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩を挙げることができ、非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド、アミンオキサイドを挙げることができ、陽イオン界面活性剤としてはモノ又はジアルキルアミン及びそのポリオキシエチレン付加物、モノ又はジ長鎖アルキル第4級アンモニウム塩を挙げることができ、両性界面活性剤としてはカルボベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシスルホベタインを挙げることができる。
【0013】
〔(c)成分〕
(a)以外のアルカリ剤(c)としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、1−アミノ−2メチルプロパノールが挙げられ、モノエタノールアミン、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0014】
〔(d)成分〕
本発明に係る(d)成分はグリセリンであり、油脂などを加水分解して得られるグリセリンを用いることもでき、精製されたグリセリンや局法グリセリンを使用することもできる。
【0015】
<水性組成物>
本発明に係る水性組成物は、(a)成分を0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上含有する。また、固化/析出防止の点から、水性組成物中の(a)成分の含有量は、3質量%以下が好ましく、更に1質量%以下がより好ましい。
【0016】
また、本発明は、(b)成分である界面活性剤の含有量の少ない組成物の珪酸塩の固化/析出を防止する技術に関するものであり、水性組成物中の(b)成分の含有量は1質量%未満である。(b)成分としてアルキル基の炭素数が8〜14、グルコースの平均縮合度が1〜2のアルキルグリコシドを用いる場合には、水性組成物中、0.5質量%以下までの含有量とすることができる。
【0017】
また、本発明に係る水性組成物中の(c)成分の含有量は、0.6〜10質量%、好ましくは0.6〜7質量%、更に好ましくは0.6〜5質量%である。本発明に係る水性組成物は、20℃におけるpHが8以上であることが好ましく、pHが9以上であることがより好ましく、pHが10以上であることが更に好ましく、pHが14以下であることが好ましく、pHが12以下であることがより好ましい。(c)成分の含有量、種類によりpHを調整することが好ましい。
【0018】
本発明の水性組成物は(d)成分を(a)成分に対して特定比率含有することが、(a)成分の固化/析出の防止において優れた効果を得ることができる。すなわち、(a)成分と(d)成分の質量比は、(a)/(d)で1/1〜1/100、好ましくは1/1〜1/50、より好ましくは1/1〜1/30である。この質量比を満たした上で、(d)成分の水性組成物中の含有量は、0.05〜10質量%、更に0.1〜5質量%とすることができる。
【0019】
本発明に係る水性組成物は、上記(a)〜(d)成分と所望により配合される任意成分と水を含有する液体組成物であり、水溶液の形態が好ましい。水性組成物中の水の含有量は、好ましくは50〜97質量%、より好ましくは60〜97質量%、更に好ましくは70〜95質量%である。
【0020】
本発明に係る水性組成物は、手動式トリガースプレーヤーを具備した容器に充填して使用される。スプレー時の良好な吐出状態を確保するため、水性組成物のB型粘度計により測定した30℃における粘度は、300mPa・s以下が好ましく、より好ましくは100mPa・s以下であり、さらに好ましくは50mPa・s以下である。
【0021】
本発明に係る水性組成物は、珪酸塩を含有し界面活性剤の含有量が極端に少ない水性組成物であり、この特徴を生かした各種用途に応用することができるが、なかでもスプレー式洗浄剤、及びスプレー式消臭剤に応用することが好適である。スプレー式洗浄剤は、硬質表面用スプレー式洗浄剤とすることがより好適である。硬質表面用スプレー式洗浄剤では、硬質表面に適用後、リンス操作を必要とせず、布などで拭き取ることで洗浄することができる。
【0022】
スプレー式洗浄剤とする場合の水性組成物(以下、洗浄剤組成物という)は、(d)成分以外の有機溶剤〔以下、(e)成分という〕を含有することができる。(e)成分としては、アルコール、好ましくは炭素数1〜8のアルコール、グリコール、好ましくは炭素数1〜8のグリコール、アルキルグリコールエーテル、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルグリコールエーテル、アルキルグリセリルエーテル、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアルキルグリセリルエーテル、フェニルグリコールエーテルを挙げることができる。
【0023】
具体的にはアルコールとしてはエタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどを挙げることができ、グリコールとしてはエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ポリプロピレングリコールを挙げることができる。
【0024】
また、アルキルグリコールエーテル及びフェニルグリコールエーテルとしては下記一般式(2)の化合物を挙げることができる。
1−O[(C24O)m/(C36O)n]−R2 (2)
〔R1、R2は水素原子、1〜8のアルキル基又はフェニル基であり、R1、R2の両者が水素原子であるものを除く。m、nは0〜3の数であり、m+nは1〜3の数である。(C24O)と(C36O)の順序は問わない。〕
【0025】
また、アルキルグリセリルエーテルとしては下記一般式(3)の化合物を挙げることができる。
3−X (3)
〔R3は1〜8のアルキル基であり、Xはグリセリンの1つの水酸基から水素原子を除いた残基、又は平均付加モル数2〜10のポリグリセリンの1つの水酸基から水素原子を除いた残基である。〕
【0026】
また、フェニルグリコールエーテルの具体例としては、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、モノエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
【0027】
洗浄剤組成物は、(e)成分を0.01〜49質量%、更に0.1〜20質量%、より更に0.8〜10質量%含有することが好ましい。また、洗浄剤組成物における(d)成分と(e)成分の質量比は、洗浄力の観点から、(d)/(e)で50/1〜1/50が好ましく、より好ましくは10/1〜1/10、更に好ましくは5/1〜1/5である。
【0028】
一般に100℃以下の沸点を有する水と共沸混合物を形成する有機溶剤〔以下(e1)成分という〕、具体的にはエタノール又はイソプロパノールを含有する組成物は、乾燥が速くなるため、珪酸塩の固化/析出が促進される傾向があるが、本発明では(e1)成分を含有する組成物においても固化/析出を抑制することが可能であり、(e1)成分を1〜49質量%、更に2〜40質量%、より更に2〜20質量%含有する洗浄剤組成物においても本発明の効果を十分に得ることができる。
【0029】
本発明に係る本発明に係る洗浄剤組成物は、金属封鎖剤〔以下(f)成分という〕を含有することができるが、(f)成分も(a)成分と同様に固化/析出が危惧される成分である。しかしながら、本発明の(d)成分は、(f)成分の固化/析出も抑制することができる。本発明に係る洗浄剤組成物では、〔(a)成分+(f)成分〕/(d)成分の質量比が1/1〜1/120、更に1/1〜1/100、より更に1/1〜1/50であることが、配合安定性の観点から、好ましい。
【0030】
(f)成分の具体的例としては下記の化合物を挙げることができる。
(1)フィチン酸などのリン酸系化合物またはこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩。
(2)エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸及びその誘導体、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸などのホスホン酸またはこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩。
(3)2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸などのホスホノカルボン酸またはこれのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩。
(4)アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシンなどのアミノ酸またはこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩。
(5)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸、アルキルグリシン−N,N−ジ酢酸、アスパラギン酸−N,N−ジ酢酸、セリン−N,N−ジ酢酸、グルタミン酸二酢酸、エチレンジアミンコハク酸などのアミノポリ酢酸またはこれらの塩、好ましくはアルカリ金属塩、もしくはアルカノールアミン塩。
(6)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキメチル酒石酸などの有機酸またはこれらのアルカリ金属塩、もしくはアルカノールアミン塩。
(7)アミノポリ(メチレンホスホン酸)もしくはそのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、またはポリエチレンポリアミンポリ(メチレンホスホン酸)もしくはアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩を挙げることができる。
【0031】
これらの中で、上記(2)、(5)、及び(6)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、上記(5)、(6)からなる群より選ばれる少なくとも1 種がさらに好ましい。最も好ましい(f)成分はクエン酸又はその塩である。
【0032】
本発明に係る洗浄剤組成物は、(f)成分を0〜3質量%、更に0〜2質量%、より更に0〜1質量%含有することが好ましい。
【0033】
本発明に係る水性組成物はスプレー式消臭剤に応用することも好適である。スプレー式消臭剤とする場合の水性組成物(以下、消臭剤組成物という)は、(a)〜(d)成分と水の他に、更に(g)成分として消臭基剤を含有することができる。
【0034】
(g)成分としては、臭気源をマスキング又は相殺することにより消臭するマスキング性(ないし相殺性)消臭基剤、臭気化合物を包接することにより消臭する包接性消臭基剤、又は臭気化合物を吸着することにより消臭する吸着性消臭基剤等が挙げられる。一般に、マスキングは、中和や二重結合による反応等の化学反応による方法と臭覚に刺激を与える方法による行われる。合成香料、天然香料等の香料成分は、これらのいずれかもしくは両方の方法で消臭効果を発現する。また、フラボノイド、亜鉛化合物等は、臭気化合物と反応することにより消臭効果を発現する。本発明の消臭基剤は、これらの方法により消臭効果を発現するものに限定されず、また複数の機能を持つものでもよい。例えば、香料としての植物精油等の天然由来の混合物には、臭覚に刺激を与えることによる消臭と臭気化合物との反応による消臭との両方の機能を兼ね備えるものがある。
【0035】
本発明に係る消臭剤組成物には、消臭効果の高い香料成分を用いることが好ましく、具体的には、メチルイオノン、サリチル酸ヘキシル、イオノン、ヘディオン、フェノキシエタノール、アンバーコア、セドリルメチルエーテル、シネオール、カンファー、ピネン、リモネン、リナロール、酢酸リナロール、ネロール、酢酸ネリル、カルバクロール、チモール、シトロネロール、シトラール、ゲラニオール、サンタロール、ボルネオール、カルボン、酢酸ベンジル、オイゲノール、セドレン、酢酸ボルニル、メントール、メントン、メチルチャビコール、サイメン、プレゴール、アネトール、ツヨンから選ばれる1種以上の香料成分を用いることが好ましい。また、天然の香料成分として、セージオイル、タイムオイル、バジルオイル、ペパーミントオイル、ハッカオイル、ローズマリーオイル、ユーカリプタスオイル、マジョラムオイルセージ等を挙げることができる。香料成分を配合する場合は、消臭剤組成物中に0.001〜1質量%、特に0.005〜0.5質量%配合するのが好ましい。その他に、松、ヒバ、桧、杉、茶、山茶花、桃等の植物抽出エキスを香料成分と同様にして用いてもよい。
【0036】
本発明に係る消臭剤組成物において、(b)成分の界面活性剤は、上記香料成分を組成物中に可溶化あるいは乳化させる機能も担うが、その含有量は消臭対象物の汚染防止の観点から、0.5質量%以下が好適である。また、本発明に係る消臭剤組成物は、(e)成分である有機溶剤を含有することもでき、(e)成分、特に揮発性の高い(e1)成分の含有量は、1〜49質量%、更に2〜30質量%、より更に2〜10質量%が好ましい。また、(f)成分の金属封鎖剤、好適にはクエン酸又はその塩を、消臭効果を高める目的から、本発明に係る消臭剤組成物中に0.001〜1質量%、更に0.005〜0.5質量%含有することが好ましい。また、〔(a)成分+(f)成分〕/(d)成分の質量比が1/1〜1/120、更に1/1〜1/100、より更に1/1〜1/50であることが好ましい。
【0037】
本発明に係る消臭剤組成物は残部が水であり、その含有量は、好ましくは50〜98質量%、より好ましくは80〜98質量%、更に好ましくは90〜98質量%である。
【0038】
本発明は、上記特定の水性組成物を、口径が0.1〜1mmの吐出口を有する手動式トリガースプレーヤーを具備した容器(以下、スプレー容器という)に充填して噴射する際の、前記吐出口における前記水性組成物からの(a)成分である珪酸塩の固化及び/又は析出を防止するものである。本発明によれば、珪酸塩を配合した希薄な界面活性剤水溶液を用いたスプレー式洗浄剤やスプレー式消臭剤を繰り返し使用しても、吐出口における珪酸塩の固化及び/又は析出が防止できる。
【0039】
本発明で用いるスプレー容器は、良好な吐出状態を確保するため、孔径1mm以下、好ましくは0.5mm以下の吐出孔を有しているものである。吐出孔の形状、材質等は特に限定されるものではない。好適なトリガー式スプレーヤーとしては、特に実開平4−17855号公報、実開平4−37554号公報、特開平8−84945号公報及び特開平9−122547号公報記載の蓄圧機構を備えたトリガー式のスプレー装置が好ましい。
【0040】
本発明で用いるスプレー容器は、水性組成物を収容する収容部を有し、密閉した状態で保存できるものであれば、形状、材質、容量等は特に限定されるものではない。例えば、プラスチック、耐水加工を施した紙、金属等からなる、容量50〜5000ml程度のものを使用することができる。
【0041】
本発明に係るスプレー容器は、手動式トリガースプレーヤーを具備しており、使用時において、1度の噴霧における霧滴(液滴)の総数のうち、粒子径が1000μmを超えるものの数を1%以下、好ましくは500μmを超えるものの数を1%以下、さらに好ましくは200μmを超えるものの数を1%以下にすることができるものが好適である。また、同時に、1度の吐出における霧滴(液滴)の総数のうち、粒子径が10μm以下のものの数を1%以下にすることが好適である。このような噴霧粒径の制御は水性組成物の粘度及び吐出口の口径を調整することで実施することができ、具体的には水性組成物の30℃における粘度を1〜20mPa・s、好ましくは1〜10mPa・sであり、且つ吐出口の口径を0.1〜0.5mmとすることが好ましい。
【0042】
なお、このような粒子径分布は、例えば、レーザー回折式粒度分布計(日本電子製)により測定することができ、分布の%は全粒子の個数に対する該当する粒子の個数の割合とする。また、本発明の口径とは、吐出口が円形である場合には直径を示し、それ以外の形状の場合には、吐出口の面積を求め、その面積と同じ面積の円の直径として定義する。この口径は吐出口の内径であってもよい。
【0043】
本発明では上述の水性組成物を上述のトリガースプレーヤーを具備した容器に充填し、繰り返し噴霧を行っても、(a)成分、場合により(f)成分の固化/析出を防止することができ、詰まりを引き起こすことがない。
【0044】
本発明によれば、珪酸塩(a)を0.05質量%以上、界面活性剤(b)を1質量%未満、及び(a)以外のアルカリ剤(c)を0.6〜10質量%含有する水性組成物を、口径が0.1〜1mmの吐出口を有する手動式トリガースプレーヤーを具備した容器に充填して噴射する際に、前記水性組成物に、グリセリン(d)を、(a)/(d)の質量比が1/1〜1/100の質量比となるように配合して噴射することにより、前記吐出口の詰まりを防止する、水性組成物の噴射方法が提供される。
【0045】
また、本発明によれば、珪酸塩(a)を0.05質量%以上、界面活性剤(b)を1質量%未満、及び(a)以外のアルカリ剤(c)を0.6〜10質量%含有する水性組成物を、口径が0.1〜1mmの吐出口を有する手動式トリガースプレーヤーを具備した容器に充填して噴射する際に、前記水性組成物に、グリセリン(d)を、(a)/(d)の質量比が1/1〜1/100の質量比となるように配合して噴射する、手動式トリガースプレーヤーの吐出口の詰まり防止方法が提供される。
【実施例】
【0046】
実施例1〜7、比較例1〜2
表1に示す各成分を用い、実施例、比較例の水性組成物を得た。各水性組成物を用い、下記の方法により、トリガーのつまり、洗浄力、防錆性能の各試験を行った。結果を表1に示す。
【0047】
(トリガーのつまり)
トリガー式スプレーヤー容器としてガラスマジックリン(花王株式会社製、吐出口の口径0.5mm)をイオン交換水にて十分洗浄し、乾燥させたものに、各水性組成物はを充填した。10回スプレーした後、40℃で2週間放置し、再びスプレーしたときのトリガーのつまりを下記の基準で評価した。
3:つまりがなく、意図する方向にスプレーできる。
2:吐出口近辺に析出物があるので、意図する方向にスプレーできない。
1:つまりが発生し、トリガーを引いてもスプレーできない。
【0048】
(洗浄力)
天ぷら油200gを鉄板に均一に塗布し、180℃の温度で1時間焼き付け、殆ど乾いた膜を形成してモデル汚染板とした。このモデル汚染板に対してトリガー式スプレーヤー容器(上記と同じもの)に充填された各水性組成物をスプレーし、1分間放置した。その後、浮き上がった汚れを脱脂綿で軽く除去し、その洗浄の程度を下記の基準により評価した。なお、この操作を10回行い平均値で評価した。
5:完全な汚れ落ち
4:80%程度の汚れ落ち
3:60%程度の汚れ落ち
2:50%程度の汚れ落ち
1:30%程度の汚れ落ち
0:まったく汚れが落ちない。
【0049】
(防錆性能)
ガラス瓶に満たされた各水性組成物の液にアルミニウム板(1mm×20mm×50mm)を浸漬し、40℃で2週間保存した。アルミニウム板の表面の状態を観察し、下記基準を設け、評価した。
○:錆びが発生しない。
×:錆びが発生する。
【0050】
【表1】

【0051】
表1中の成分は以下のものである。また、pH調整剤の「調整量」は、水性組成物のpHを表1中の数値とするための量である。
・アルキルグリコシド:マイドール12、花王株式会社製
・アルキルアミンオキサイド:アルキル(炭素数12)ジメチルアミンオキサイド
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸Na:ポリオキシエチレン(エチレンオキシド平均付加モル数4)アルキル(炭素数12)エーテル硫酸ナトリウム
・EDTA.4Na:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸塩(a)を0.05質量%以上、界面活性剤(b)を1質量%未満、及び(a)以外のアルカリ剤(c)を0.6〜10質量%含有する水性組成物を、口径が0.1〜1mmの吐出口を有する手動式トリガースプレーヤーを具備した容器に充填して噴射する際に、前記水性組成物に、グリセリン(d)を、(a)/(d)の質量比が1/1〜1/100の質量比となるように配合して噴射することにより、前記吐出口における前記水性組成物からの珪酸塩(a)の析出を防止する、珪酸塩の析出防止方法。
【請求項2】
前記水性組成物中の界面活性剤(b)の含有量が0.5質量%以下である、請求項1記載の析出防止方法。
【請求項3】
珪酸塩(a)を0.05質量%以上、界面活性剤(b)を1質量%未満、(a)以外のアルカリ剤(c)を0.6〜10質量%、及びグリセリン(d)を含有し、(a)/(d)の質量比が1/1〜1/100である水性組成物を、口径が0.1〜1mmの吐出口を有する手動式トリガースプレーヤーを具備した容器に充填してなる、スプレー式洗浄剤。
【請求項4】
前記水性組成物中の界面活性剤(b)の含有量が0.5質量%以下である、請求項3記載のスプレー式洗浄剤。

【公開番号】特開2010−143953(P2010−143953A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319371(P2008−319371)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】