説明

現像剤、現像剤カートリッジ及び画像形成装置

【課題】画像形成装置のコストを低くすることができ、画像品位を向上させることができるようにする。
【解決手段】2種類の顔料のうちの一方の顔料は、平均粒子径において80〜180〔nm〕であるか、又は平均分散径において80〜1000〔nm〕である。そして、前記2種類の顔料のうちの他方の顔料は、平均粒子径において40〜80〔nm〕であるか、又は平均分散径において40〜800〔nm〕である。連続印刷を行ったところ、良好な画像を得ることができた。したがって、画像品位を向上させることができる。また、シリコーンオイル等のオイルを補給する必要がないので、画像形成装置を小型化することができ、画像形成装置のコストを低くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤、現像剤カートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置においては、光導電性物質から成る感光体ドラムの表面が、帯電ローラによって一様に、かつ、均一に帯電させられ、続いて、LEDヘッドによって露光されて、感光体ドラム上に静電潜像が形成される。そして、現像装置において前記静電潜像に現像剤としてのトナーが付着させられて可視像化され、トナー像が形成され、該トナー像は、転写ローラによって用紙に転写される。続いて、トナー像が転写された用紙は定着装置に送られ、該定着装置においてトナー像が加熱され、加圧されて用紙に定着させられる。そのために、前記定着装置は、トナー像のトナーを加熱して溶融させるための加熱ローラ、及びトナー像を加圧するための加圧ローラを備える。
【0003】
ところで、前記画像形成装置において使用されるトナーは、一般に、熱可塑性の樹脂に顔料から成る着色剤を溶融させて混合し、均一に分散させた後、微粉砕装置によって微粉砕処理を行い、分級機によって分級することにより製造される。
【0004】
そして、前記画像形成装置によってカラー画像を形成しようとする場合、色材の3原色であるイエロー、マゼンタ及びシアンの有彩色の3色のトナーを使用したり、該3色のトナーにブラックのトナーを加えた4色のトナーを使用したりして色再現を行うようにしている。この場合、目的とする色調のカラー画像を得ようとすると、各色のバランスを採ることが重要な課題になる。
【0005】
また、定着装置においては、カラー画像に光沢を持たせるために、また、用紙としてOHPシートを使用する場合に、特に透明性を持たせる必要がある。そこで、カラー画像の表面を平滑にするために、定着用のローラとして、シリコーンソフトローラ等が使用され、トナーと用紙との接触面積を大きくしている。
【0006】
そして、トナーを構成する樹脂として、分子量分布が狭いポリマーが使用されるが、この場合、トナー像を構成するトナー層の弾力性が低く、トナーが前記ローラに付着しやすいので、該ローラには多量のシリコーンオイルが供給され、トナー層とローラとの付着力を低下させ、離型性を確保するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−327350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の画像形成装置においては、前記ローラに多量のシリコーンオイルを供給しようとすると、画像形成装置が大型化してしまうだけでなく、オイル供給装置が消耗品として必要になり、その分、画像形成装置のコストが高くなってしまう。
【0008】
また、前記ローラに多量のシリコーンオイルを供給して、両面印刷を行おうとする場合、シリコーンオイルが付着した用紙の一方の面が、他方の面において印刷が行われる際に定着装置と接触するので、シリコーンオイルが定着装置に付着してしまい、定着不良が発生し、その結果、画像品位が低下してしまう。
【0009】
そこで、前記ローラに多量のシリコーンオイルを供給することなく、トナー層とローラとの離型性を確保するために、トナー中に大量の離型剤を添加することが考えられるが、その場合、現像装置内の圧力、摩擦等によってトナーから離型剤が滲(にじ)み出し、画像品位を低下させてしまう。
【0010】
また、シリコーンオイルが供給されなくなると、定着装置を通過した後の用紙において、トナーと用紙との収縮率の差から用紙にカールが発生しやすくなってしまう。そこで、カールが発生するのを防止するために、用紙に付着するトナーの量を少なくすることが考えられるが、その場合、トナーに添加される着色剤の量をその分多くする必要がある。したがって、トナーのコストが高くなってしまう。
【0011】
本発明は、前記従来の画像形成装置の問題点を解決して、画像形成装置のコストを低くすることができ、画像品位を向上させることができる現像剤、現像剤カートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのために、本発明の現像剤において、2種類の顔料のうちの一方の顔料は、平均粒子径において80〜180〔nm〕であるか、又は平均分散径において80〜1000〔nm〕である。
【0013】
そして、前記2種類の顔料のうちの他方の顔料は、平均粒子径において40〜80〔nm〕であるか、又は平均分散径において40〜800〔nm〕である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、現像剤において、2種類の顔料のうちの一方の顔料は、平均粒子径において80〜180〔nm〕であるか、又は平均分散径において80〜1000〔nm〕である。
【0015】
そして、前記2種類の顔料のうちの他方の顔料は、平均粒子径において40〜80〔nm〕であるか、又は平均分散径において40〜800〔nm〕である。
【0016】
この場合、連続印刷を行ったところ、良好な画像を得ることができた。したがって、画像品位を向上させることができる。
【0017】
また、シリコーンオイル等のオイルを補給する必要がないので、画像形成装置を小型化することができ、画像形成装置のコストを低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態における電子写真方式の画像形成装置の概念図、図2は本発明の実施の形態におけるイメージドラムカートリッジの断面図である。
【0020】
図において、11は矢印a方向に回転させられる像担持体としての感光体ドラム、12は、該感光体ドラム11に接触させて矢印b方向に回転させられ、図示されない電源によって電圧が印加されて感光体ドラム11の表面を帯電させる帯電装置としての帯電ローラであり、該帯電ローラ12に代えてスコロトロン、コロトロン等の非接触方式の帯電装置を使用することもできる。
【0021】
なお、前記感光体ドラム11の図示されない導電性支持体として、外径が30〔mm〕のアルミニウム製の金属パイプを使用し、該金属パイプに光導電層として、約0.5〔μm〕膜厚の電荷発生層、及び約18〔μm〕の膜厚の電荷輸送層を順次積層することによって形成された有機系感光体が使用される。
【0022】
また、前記導電性支持体として、アルミニウム製の金属パイプに代えて、ステンレス製、鋼鉄製等の金属パイプを使用することもできる。そして、本実施の形態においては、光導電層を、電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層することによって形成するようになっているが、電荷発生層及び電荷輸送層を同一層にすることによって形成することもできる。
【0023】
また、13は前記帯電ローラ12によって帯電させられた感光体ドラム11上に静電潜像を形成する露光装置としてのLEDヘッドであり、該LEDヘッド13は、図示されないLEDアレイとロッドレンズとを組み合わせることによって構成される。なお、露光装置として前記LEDヘッド13に代えてレーザ装置等を使用することもでき、該レーザ装置は、レーザと作像光学系とを組み合わせることによって構成される。そして、14は、前記感光体ドラム11に接触又は非接触に設定され、矢印c方向に回転させられ、現像剤としてのトナー16を現像領域に運び、前記静電潜像にトナー16を現像バイアスによって付着させ、静電潜像を可視像化してトナー像を形成する現像剤担持体としての現像ローラ、15は、該現像ローラ14に接触又は非接触に設定され、矢印d方向に回転させられ、トナー16を現像ローラ14に供給するトナー供給ローラ、17は該トナー供給ローラ15によって現像ローラ14に供給されたトナー16を薄層化する現像剤規制部材としての現像ブレードである。なお、前記現像ローラ14、トナー供給ローラ15及び現像ブレード17によって現像装置が構成される。
【0024】
本実施の形態においては、現像ローラ14として、シリコーンゴム、ウレタンゴム等の弾性体から成るスリーブ、アルミニウム、SUS等の金属製のスリーブ、セラミックス製のスリーブ等が使用され、トナー16の搬送性、帯電性等を向上させるために、表面に酸化、研磨、ブラスト処理等の表面処理を施したり、樹脂によるコーティング等を施したりする。
【0025】
また、現像ローラ14においてトナー層は、現像ブレード17を現像ローラ14の表面に当接させることによって形成される。前記現像ブレード17の材質は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、SUS等の弾性体が好ましく、トナー16の帯電量を調整するために弾性体中に有機物又は無機物を添加して分散させたものを使用することもできる。
【0026】
さらに、18は、前記感光体ドラム11に接触させて矢印e方向に回転させられ、図示されない電源によって電圧が印加され、可視像化された感光体ドラム11上のトナー像を、矢印h方向に搬送される用紙、OHPシート等の記録媒体としての用紙22に転写する転写装置としての転写ローラであり、該転写ローラ18に代えてスコロトロン、コロトロン等の非接触方式の転写装置を使用することもできる。また、19は、転写工程が終了し、用紙22にトナー像が転写された後に、感光体ドラム11上に残留したトナー16を除去するクリーニング部材としてのクリーニングブレードであり、本実施の形態においては、ゴムブレードを感光体ドラム11に接触させたブレードクリーニング方式のクリーニング装置が使用される。なお、クリーニング部材として前記クリーニングブレード19に代えて、感光体ドラム11に接触させて回転させながら、感光体ドラム11上に残留したトナー16を除去するローラ方式のクリーニング装置、ブラシ方式のクリーニング装置等を使用することもできる。
【0027】
そして、10は転写されたトナー像を用紙22に定着する定着装置であり、該定着装置10は、矢印f方向に回転させられ、図示されない電源からの熱の供給によって表面が加熱され、前記用紙22上に転写されたトナー像のトナー16を加熱して溶融させる加熱ローラ20、及び矢印g方向に回転させられ、溶融させられたトナー16を用紙22に押し付ける加圧ローラ21を備える。なお、前記加熱ローラ20及び加圧ローラ21によって定着用のローラが構成される。そして、本実施の形態においては、ローラ方式の定着装置10を使用するようになっているが、ベルトを使用したベルト方式、フィルムを使用したフィルム方式、発光エネルギーを利用するフラッシュ方式等の定着装置を使用することもできる。前記ローラ方式又はベルト方式の定着装置においては、シリコーンオイル等のオイルを補給することなく、オイルレス定着方式を使用することによってホットオフセット現象が発生するのを防止している。したがって、消耗品としてのオイル供給装置が不要になるので、その分、画像形成装置を小型化することができ、画像形成装置のコストを低くすることができる。
【0028】
なお、23aはブレードストッパ、23bはブレードホルダ、24はIDユニット、25はトナー16を収容する現像剤カートリッジとしてのトナーカートリッジである。
【0029】
前記画像形成装置においては、感光体ドラム11の表面を、帯電ローラ12によって一様に、かつ、均一に帯電させ、LEDヘッド13によって露光して感光体ドラム11上に静電潜像を形成し、該静電潜像を現像装置によって可視像化してトナー像を形成するとともに、該トナー像を転写ローラ18によって用紙22に転写し、定着装置10によって定着し、画像を形成する。
【0030】
本発明のトナーは、非磁性1成分のトナーであり、前記画像形成装置において前記トナー16として使用される。
【0031】
次に、前記構成のトナーカートリッジ25及び画像形成装置に使用されるトナー16の実施例について説明する。
【実施例】
【0032】
〔実施例1〕
バインダとして使用される樹脂、すなわち、バインダ樹脂としてのポリエステル樹脂(数平均分子量Mnが3700、ガラス転移点温度Tgが62〔℃〕)100重量部、帯電制御剤としてのサリチル酸錯体1.0重量部に、着色剤として、カーボンブラック「MOGUL−L」(CABOT社製)(平均粒子径が25〔nm〕)を所定の重量部、離型剤(バインダ樹脂より分子量が少ない成分、すなわち、低分子量成分)としてワックス、例えば、カルナバワックス(融点が80〔℃〕)を所定の重量部添加して混合物を得るとともに、該混合物をヘンシェルミキサーによって十分に攪拌(かくはん)し、混練した後、ロールミルによって120〔℃〕の温度で約3時間加熱し溶融させ、室温まで冷却した。このようにして得られた混練物を、微粉砕装置としての衝突板粉砕機「ディスパージョンセパレーター」(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて粉砕し、続いて、分級し、平均粒子径が8〔μm〕の粒子を得た。
【0033】
次に、前記粒子の表面に、流動化剤としてシリカR972(日本アエロジル社製)を2.0重量部添加し、最終的にトナーAを得た。
【0034】
また、スチレン80重量部、アクリル酸−n−ブチル20重量部に、帯電制御剤としてサリチル酸錯体1.0重量部、t−ドデシメルカプタン1.0重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0重量部、離型剤としてポリエチレンワックス(融点60〔℃〕)を所定の重量部、着色剤としてカーボンブラック「MOGUL−L」(CABOT社製)(平均粒径25〔nm〕)を所定の重量部加え、アトライター(「MA−01SC」、三井三池化工機社製)に投入し、15〔℃〕で10時間分散させ、重合性組成物を得た。
【0035】
そして、ポリアクリル酸8.0重量部、ジビニルベンゼン0.35重量部に溶解させたエタノール180重量部を用意し、これに蒸留水600重量部を加え、重合のための分散媒を用意した。該分散媒に重合性組成物を添加し、TKホモミキサー(「M型」、特殊機化工業社製)によって15〔℃〕、8000〔rpm〕の条件下で10分間分散させた。
【0036】
次に、得られた分散媒を1〔l〕のセパラブルフラスコ中に移し、窒素気流下において100〔rpm〕で攪拌しながら85〔℃〕で12時間反応させた。ここまでの段階で、前記重合性組成物の重合反応によって得られた分散媒を中間粒子という。
【0037】
続いて、該中間粒子の水系懸濁液中に、超音波発振器(「US−150」、株式会社日本精機製作所)によってメタクリル酸メチル9.25重量部、アクリル酸−n−ブチル0.75重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.1重量部、水80重量部から成る水乳濁液を調整した。該水乳濁液を9.0重量部滴下し、前記中間粒子を膨潤させた。滴下後、直ちに光学顕微鏡によって観察を行ったところ、乳濁液滴は全く見られず、膨潤が極めて短時間のうちに終了していることが確かめられた。
【0038】
そこで、窒素下において攪拌を続けながら2段目の重合として85〔℃〕で10時間反応させた。冷却後、0.5N塩酸水溶液によって分散媒を溶かし、濾(ろ)過及び水洗を経て、風乾した後、40〔℃〕で10時間、10〔mmHg〕で減圧乾燥し、風力分級機によって分級し、平均粒径7〔μm〕の粒子を得た。次に、前記粒子の表面に流動化剤としてシリカR972(日本アエロジル社製)を2.0重量部添加し、最終的にトナーBを得た。
【0039】
そして、トナーA及びBに対して透過型の電子顕微鏡による観察(以下「TEM観察」という。)を行ったところ、内包される着色剤の微粒子の平均分散径は25〜400〔nm〕であった。なお、分級された後の着色剤の微粒子は単体で存在するものばかりではなく、複数個集まり固まっているものもある。そこで、複数の粒子(着色剤)の集合体の径を平均分散径という。
【0040】
前記トナーA及びBを、図1に示される画像形成装置のトナー16として使用し、画像形成装置として、現像装置における高電圧制御と、定着装置10における定着温度制御とを自由に変えられるように改造したものを使用して実験を行った。
【0041】
まず、現像装置に印加される電圧を、用紙22上のトナー16の付着量が0.6〔mg/cm2 〕になるように調整し、用紙22として標準上質紙(J紙:ゼロックス社製)を使用し、各トナー16の画像濃度ρをXRite528(ステータスI)で測定し、着色剤の各粒径ごとの着色剤の添加量、すなわち、着色剤量と画像濃度ρとの関係を調べた。
【0042】
図3は本発明の実施の形態における着色剤量と画像濃度との関係を示す図である。なお、図において、横軸に着色剤量を、縦軸に画像濃度ρを採ってある。また、図において、●は粒径が25〔nm〕(平均分散径25〜400〔nm〕)の着色剤の着色剤量と画像濃度ρとの関係を、▲は粒径が50〔nm〕(平均分散径50〜600〔nm〕)の着色剤の着色剤量と画像濃度ρとの関係を、■は粒径が120〔nm〕(平均分散径120〜1000〔nm〕)の着色剤の着色剤量と画像濃度ρとの関係を表す。なお、前記各粒径は、平均粒子径で表される。
【0043】
図に示されるように、着色剤量を2〜7重量部にすると、通常の画像品位として使用可能な、良好な画像濃度ρ
1.3≦ρ≦1.7
にすることができる。
【0044】
この場合、画像濃度ρが1.3より低いと、印刷結果が薄いと判断され、かすれた印刷と視認され、画像濃度ρが1.7より高いと、印刷結果が濃いと判断され、ハーフトーンの印刷等は印刷が潰(つぶ)れたように視認される。
【0045】
次に、前述された方法で、平均粒子径が20〜50〔nm〕のカーボンブラックを4.0重量部添加し、離型剤の添加量、すなわち、離型剤量を調節して1、5、10、15重量部添加し、トナーA及びBを製造した。TEM観察を行ったところ、カーボンブラックの平均分散径は20〜600〔nm〕であった。各トナーA及びBについて、A4判の用紙22(図1)を横方向に搬送し、印刷デューティを5〔%〕として、5万枚の連続印刷による耐久印刷試験を行い、画像品位及び感光体ドラム11の表面の、トナーA及びB並びにトナー組成物が感光体ドラム11の表面上に溶け出して固着する現象、すなわち、フィルミングを観察した。
【0046】
平均粒子径が25〔nm〕(平均分散径25〜400〔nm〕)のカーボンブラックを使用して実験を行った結果を表1に示す。なお、平均粒子径が30〔nm〕(平均分散径30〜500〔nm〕)及び35〔nm〕(平均分散径35〜600〔nm〕)の各カーボンブラックを使用して実験を行った場合も、同様の結果が得られた。
【0047】
また、トナーAについて、融点が75〜85〔℃〕の他のカルナバワックスを使用して実験を行った場合も、トナーBについて、融点が55〜75〔℃〕の他のポリエチレンワックスを使用した場合も同様の結果が得られた。
【0048】
【表1】

【0049】
すなわち、トナーAにおいて離型剤量が1重量部及び5重量部、並びにトナーBにおいて離型剤量が1重量部である場合は、5万枚の連続印刷を行った後も画像品位が良好であり、感光体ドラム11の表面に異物が付着しているのが確認されず、フィルミングは発生しなかった。
【0050】
また、トナーAにおいて離型剤量が10重量部、並びにトナーBにおいて離型剤量が5重量部及び10重量部である場合は、4万枚の連続印刷を行ったときに、感光体ドラム11の表面に異物がわずかに付着しているのが確認されたが、画像品位は良好であった。5万枚の連続印刷を行った後も、ほとんど状態は変わらず、感光体ドラム11の表面に異物がわずかに付着しているのが確認されたが、画像品位は良好であった。
【0051】
そして、トナーA及びBにおいて離型剤量が15重量部である場合は、5000枚の連続印刷を行ったときに、感光体ドラム11の表面に異物がわずかに付着しているのが確認され、その後、更に5000枚の連続印刷を行ったときに、カラー画像上に異物の模様が確認された。そして、感光体ドラム11上の異物も大きく、はっきりと目視によって確認することができた。前記異物に対してTEM観察を行ったところ、トナーA及びBが感光体ドラム11に固着していることが分かった。さらに、赤外吸収分析(以下「IR分析」という。)を行ったところ、大量のトナーA及びBが感光体ドラム11に付着していることが分かった。
【0052】
このことから、離型剤量を15重量部以上にすると、感光体ドラム11上にトナーA及びBが固着し、フィルミングが発生することが分かる。
【0053】
次に、前記トナーA及びBのカーボンブラックの量を表す着色剤量(重量部)及び離型剤量(重量部)を調整して表2に示されるようなトナーA及びBを製造した。各トナーA及びBについて、A4判の用紙22を横方向に搬送し、印刷デューティを100〔%〕として、30枚の両面の連続印刷を行い、画像品位の低下の有無を目視によって確認したところ、表2に示されるような結果を得ることができた。
【0054】
【表2】

【0055】
なお、表2において、比γは、着色剤量と離型剤量との重量比を表す。
【0056】
表2の結果から、比γが
γ≧3.3
である場合、加熱ローラ20及び加圧ローラ21にわずかにトナーA及びBが付着して定着不良が発生するが、画像品位は良好であり、
0.5≦γ≦2.5
である場合、加熱ローラ20及び加圧ローラ21にトナーA及びBは付着せず定着不良が発生せず、画像品位は良好であった。
【0057】
したがって、定着不良が発生するのを防止し、画像品位を向上させるためには、離型剤量は1〜10重量部にされることが好ましく、比γは、
0.5≦γ≦5.0
に、好ましくは、
0.5≦γ≦2.5
にされる。
【0058】
また、表2において、定着マージンとは、定着温度が低すぎて定着不良が発生する(コールドオフセット)温度と、定着温度が高すぎて定着不良が発生する(ホットオフセット)温度との温度幅(差)のことであり、画像不良のない定着良好の定着器温度範囲で、定着器温度範囲が広いほど定着不良が発生しないことを表す。
【0059】
そして、◎は定着マージンが30〔℃〕以上であることを、○は定着マージンが10〜30〔℃〕であることを、×は定着マージンが10〔℃〕以下であることを示す。また、定着温度の振れ幅が定着マージン以内であれば定着不良は発生せず、良好に印刷を行うことができる。なお、定着装置10が非通紙状態から通紙状態になるときに定着温度の振れ幅が最大となる。このとき、高温高湿状態であっても、定着マージンが30〔℃〕以上であれば定着不良は発生しない。また、常温状態であれば、定着マージンが10〜30〔℃〕であれば定着不良は発生しない。
〔実施例2〕
バインダ樹脂としてのポリエステル樹脂(数平均分子量Mnが3700、ガラス転移点温度Tgが62〔℃〕)100重量部、帯電制御剤としてのサリチル酸錯体1.0重量部に、シアンの着色剤として、C.I.Pigment Blue15:3(平均粒子径が50〔nm〕)を所定の重量部、離型剤としてワックス、例えば、カルナバワックス(融点が80〔℃〕)を所定の重量部添加して混合物を得るとともに、該混合物をヘンシェルミキサーによって十分に攪拌し、混練した後、ロールミルによって120〔℃〕の温度で約3時間加熱し溶融させ、室温まで冷却した。このようにして得られた混練物を、微粉砕装置としての衝突板粉砕機「ディスパージョンセパレーター」(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて粉砕し、続いて、分級し、平均粒子径が8〔μm〕の粒子を得た。
【0060】
次に、前記粒子の表面に、シリカR972(日本アエロジル社製)を2.0重量部添加し、最終的にトナーCを得た。
【0061】
また、スチレン80重量部、アクリル酸−n−ブチル20重量部に、帯電制御剤としてサリチル酸錯体1.0重量部、t−ドデシメルカプタン1.0重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0重量部、離型剤としてポリエチレンワックス(融点60〔℃〕)を所定の重量部、シアンの着色剤としてC.I.Pigment Blue15:3(平均粒径50〔nm〕)を所定の重量部加え、アトライター(「MA−01SC」、三井三池化工機社製)に投入し、15〔℃〕で10時間分散させ、重合性組成物を得た。
【0062】
そして、ポリアクリル酸8.0重量部、ジビニルベンゼン0.35重量部に溶解させたエタノール180重量部を用意し、これに蒸留水600重量部を加え、重合のための分散媒を用意した。該分散媒に重合性組成物を添加し、TKホモミキサー(「M型」、特殊機化工業社製)によって15〔℃〕、8000〔rpm〕の条件下で10分間分散させた。
【0063】
次に、得られた分散媒を1〔l〕のセパラブルフラスコ中に移し、窒素気流下において100〔rpm〕で攪拌しながら85〔℃〕で12時間反応させた。ここまでの段階で、前記重合性組成物の重合反応によって得られた分散媒を中間粒子という。
【0064】
続いて、該中間粒子の水系懸濁液中に、超音波発振器(「US−150」、株式会社日本精機製作所)によってメタクリル酸メチル9.25重量部、アクリル酸−n−ブチル0.75重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.1重量部、水80重量部から成る水乳濁液を調整した。該水乳濁液を9.0重量部滴下し、前記中間粒子を膨潤させた。滴下後、直ちに光学顕微鏡によって観察を行ったところ、乳濁液滴は全く見られず、膨潤が極めて短時間のうちに終了していることが確かめられた。
【0065】
そこで、窒素下において攪拌を続けながら2段目の重合として85〔℃〕で10時間反応させた。冷却後、0.5N塩酸水溶液によって分散媒を溶かし、濾過及び水洗を経て、風乾した後、40〔℃〕で10時間、10〔mmHg〕で減圧乾燥し、風力分級機によって分級し、平均粒径7〔μm〕の粒子を得た。次に、前記粒子の表面に流動化剤としてシリカR972(日本アエロジル社製)を2.0重量部添加し、最終的にトナーDを得た。
【0066】
なお、分級された粒子に対してTEM観察を行ったところ、内包される着色剤の微粒子の平均分散径は50〜600〔nm〕であった。
【0067】
前記トナーC及びDを、図1に示される画像形成装置のトナー16として使用し、画像形成装置として、現像装置における高電圧制御と、定着装置10における定着温度制御とを自由に変えられるように改造したものを使用して実験を行った。
【0068】
まず、現像装置に印加される電圧を、用紙22上のトナー16の付着量が0.6〔mg/cm2 〕になるように調整し、用紙22として標準上質紙(J紙:ゼロックス社製)を使用し、各トナー16の画像濃度ρをXRite528(ステータスI)で測定し、着色剤の各粒径ごとの着色剤量と画像濃度ρとの関係を調べた。
【0069】
この場合も、図3に示されるように、着色剤量を2〜7重量部にすると、通常の画像品位として使用可能な、良好な画像濃度ρ
1.3≦ρ≦1.7
にすることができる。
【0070】
この場合、画像濃度ρが1.3より低いと、印刷結果が薄いと判断され、かすれた印刷と視認され、画像濃度ρが1.7より高いと、印刷結果が濃いと判断され、ハーフトーンの印刷等は印刷が潰れたように視認される。
【0071】
次に、前述された方法で、平均粒子径が40〜80〔nm〕のC.I.Pigment Blue15:3を4.0重量部添加し、離型剤量を調節して2、10、20、25重量部添加し、トナーC及びDを製造した。各トナーC及びDについて、A4判の用紙22を横方向に搬送し、印刷デューティを5〔%〕として、5万枚の連続印刷による耐久印刷試験を行い、画像品位及び感光体ドラム11の表面のフィルミングを観察した。なお、C.I.Pigment Blue15:3の平均分散径は40〜800〔nm〕であった。
【0072】
平均粒子径が50〔nm〕(平均分散径50〜600〔nm〕)のC.I.Pigment Blue15:3を使用して実験を行った結果を表3に示す。なお、平均粒子径が60〔nm〕(平均分散径60〜700〔nm〕)及び70〔nm〕(平均分散径70〜800〔nm〕)の各C.I.Pigment Blue15:3を使用して実験を行った場合も、同様の結果が得られた。また、C.I.Pigment Blue15:3に代えて、イエローの着色剤としてC.I.Pigment Yellow17を、マゼンタの着色剤としてC.I.Pigment Red57:1を使用して実験を行った場合も、同様の結果が得られた。さらに、トナーCにおいて融点が75〜85〔℃〕の他のカルナバワックスを使用して実験を行った場合も、トナーDにおいて融点が55〜75〔℃〕の他のポリエチレンワックスを使用して実験を行った場合も同様の結果が得られた。
【0073】
【表3】

【0074】
すなわち、トナーCにおいて離型剤量が2重量部及び10重量部、並びにトナーDにおいて離型剤量が2重量部である場合は、5万枚の連続印刷を行った後も画像品位が良好であり、感光体ドラム11の表面に異物が付着しているのが確認されず、フィルミングが発生しなかった。
【0075】
また、トナーCにおいて離型剤量が20重量部、並びにトナーDにおいて離型剤量が10重量部及び20重量部である場合は、4万枚の連続印刷を行ったときに、感光体ドラム11の表面に異物がわずかに付着しているのが確認されたが、画像品位は良好であった。5万枚の連続印刷を行った後も、ほとんど状態は変わらず、感光体ドラム11の表面に異物がわずかに付着しているのが確認されたが、画像品位は良好であった。
【0076】
そして、トナーC及びDにおいて離型剤量が25重量部である場合は、5000枚の連続印刷を行ったときに、感光体ドラム11の表面に異物がわずかに付着しているのが確認され、その後、更に5000枚の連続印刷を行ったときに、カラー画像上に異物の模様が確認された。そして、感光体ドラム11上の異物も大きく、はっきりと目視によって確認することができた。前記異物に対してTEM観察を行ったところ、トナーC及びDが感光体ドラム11に固着していることが分かった。さらに、IR分析を行ったところ、大量のトナーC及びDが感光体ドラム11に付着していることが分かった。
【0077】
このことから、離型剤量を25重量部以上にすると、感光体ドラム11上にトナーC及びDが固着し、フィルミングが発生することが分かる。
【0078】
次に、前記トナーC及びDのC.I.Pigment Blue15:3の量を表す着色剤量(重量部)及び離型剤量(重量部)を調整して表4に示されるようなトナーC及びDを製造した。各トナーC及びDについて、A4判の用紙22を横方向に搬送し、印刷デューティを100〔%〕として、30枚の両面の連続印刷を行い、画像品位の低下の有無を目視によって確認したところ、表4に示されるような結果を得ることができた。
【0079】
【表4】

【0080】
表4の結果から、比γが
γ≧6.67
である場合、加熱ローラ20及び加圧ローラ21にわずかにトナーC及びDが付着して定着不良が発生するが、画像品位は良好であり、
1.00≦γ≦5.00
である場合、加熱ローラ20及び加圧ローラ21にトナーC及びDは付着せず定着不良が発生せず、画像品位は良好であった。
【0081】
したがって、定着不良が発生するのを防止し、画像品位を向上させるためには、離型剤量は2〜20重量部にされることが好ましく、比γは、
1.00≦γ≦10.00
に、好ましくは、
1.00≦γ≦5.00
にされる。
【0082】
そして、◎は定着マージンが30〔℃〕以上であることを、○は定着マージンが10〜30〔℃〕であることを、×は定着マージンが10〔℃〕以下であることを示す。また、定着温度の振れ幅が定着マージン以内であれば定着不良は発生せず、良好に印刷を行うことができる。なお、定着装置10が非通紙状態から通紙状態になるときに定着温度の振れ幅が最大となる。このとき、高温高湿状態であっても、定着マージンが30〔℃〕以上であれば定着不良は発生しない。また、常温状態であれば、定着マージンが10〜30〔℃〕であれば定着不良は発生しない。
〔実施例3〕
バインダ樹脂としてのポリエステル樹脂(数平均分子量Mnが3700、ガラス転移点温度Tgが62〔℃〕)100重量部、帯電制御剤としてのサリチル酸錯体1.0重量部に、マゼンタの着色剤として、C.I.Pigment Red122(平均粒子径が120〔nm〕)を所定の重量部、離型剤としてワックス、例えば、カルナバワックス(融点が80〔℃〕)を所定の重量部添加して混合物を得るとともに、該混合物をヘンシェルミキサーによって十分に攪拌し、混練した後、ロールミルによって120〔℃〕の温度で約3時間加熱し溶融させ、室温まで冷却した。このようにして得られた混練物を、微粉砕装置としての衝突板粉砕機「ディスパージョンセパレーター」(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて粉砕し、続いて、分級し、平均粒子径が8〔μm〕の粒子を得た。
【0083】
次に、前記粒子の表面に、シリカR972(日本アエロジル社製)を2.0重量部添加し、最終的にトナーEを得た。
【0084】
また、スチレン80重量部、アクリル酸−n−ブチル20重量部に、帯電制御剤としてサリチル酸錯体1.0重量部、t−ドデシメルカプタン1.0重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0重量部、離型剤としてポリエチレンワックス(融点60〔℃〕)を所定の重量部、シアンの着色剤としてC.I.Pigment Red122を所定の重量部加え、アトライター(「MA−01SC」、三井三池化工機社製)に投入し、15〔℃〕で10時間分散させ、重合性組成物を得た。
【0085】
そして、ポリアクリル酸8.0重量部、ジビニルベンゼン0.35重量部に溶解させたエタノール180重量部を用意し、これに蒸留水600重量部を加え、重合のための分散媒を用意した。該分散媒に重合性組成物を添加し、TKホモミキサー(「M型」、特殊機化工業社製)によって15〔℃〕、8000〔rpm〕の条件下で10分間分散させた。
【0086】
次に、得られた分散媒を1〔l〕のセパラブルフラスコ中に移し、窒素気流下において100〔rpm〕で攪拌しながら85〔℃〕で12時間反応させた。ここまでの段階で、前記重合性組成物の重合反応によって得られた分散媒を中間粒子という。
【0087】
続いて、該中間粒子の水系懸濁液中に、超音波発振器(「US−150」、株式会社日本精機製作所)によってメタクリル酸メチル9.25重量部、アクリル酸−n−ブチル0.75重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.1重量部、水80重量部から成る水乳濁液を調整した。該水乳濁液を9.0重量部滴下し、前記中間粒子を膨潤させた。滴下後、直ちに光学顕微鏡によって観察を行ったところ、乳濁液滴は全く見られず、膨潤が極めて短時間のうちに終了していることが確かめられた。
【0088】
そこで、窒素下において攪拌を続けながら2段目の重合として85〔℃〕で10時間反応させた。冷却後、0.5N塩酸水溶液によって分散媒を溶かし、濾過及び水洗を経て、風乾した後、40〔℃〕で10時間、10〔mmHg〕で減圧乾燥し、風力分級機によって分級し、平均粒径7〔μm〕の粒子を得た。次に、前記粒子の表面に流動化剤としてシリカR972(日本アエロジル社製)を2.0重量部添加し、最終的にトナーFを得た。
【0089】
なお、分級された粒子に対してTEM観察を行ったところ、内包される着色剤の微粒子の平均分散径は120〜850〔nm〕であった。
【0090】
前記トナーE及びFを、図1に示される画像形成装置のトナー16として使用し、画像形成装置として、現像装置における高電圧制御と、定着装置10における定着温度制御とを自由に変えられるように改造したものを使用して実験を行った。
【0091】
まず、現像装置に印加される電圧を、用紙22上のトナー16の付着量が0.6〔mg/cm2 〕になるように調整し、用紙22として標準上質紙(J紙:ゼロックス社製)を使用し、各トナー16の画像濃度ρをXRite528(ステータスI)で測定し、着色剤の各粒径ごとの着色剤量と画像濃度ρとの関係を調べた。
【0092】
この場合も、図3に示されるように、着色剤量を2〜7重量部にすると、通常の画像品位として使用可能な、良好な画像濃度ρ
1.3≦ρ≦1.7
にすることができる。
【0093】
この場合、画像濃度ρが1.3より低いと、印刷結果が薄いと判断され、かすれた印刷と視認され、画像濃度ρが1.7より高いと、印刷結果が濃いと判断され、ハーフトーンの印刷等は印刷が潰れたように視認される。
【0094】
次に、前述された方法で、平均粒子径が80〜180〔nm〕のC.I.Pigment Red122を6.0重量部添加し、離型剤量を調節して2、10、20、25重量部添加し、トナーE及びFを製造した。各トナーE及びFについて、A4判の用紙22を横方向に搬送し、印刷デューティを5〔%〕として、5万枚の連続印刷による耐久印刷試験を行い、画像品位及び感光体ドラム11の表面のフィルミングを観察した。なお、C.I.Pigment Red122の平均分散径は80〜1000〔nm〕であった。
【0095】
平均粒子径が120〔nm〕(平均分散径120〜850〔nm〕)のC.I.Pigment Red122を使用して実験を行った結果を表5に示す。なお、平均粒子径が100〔nm〕(平均分散径100〜800〔nm〕)、140〔nm〕(平均分散径140〜900〔nm〕)及び160〔nm〕(平均分散径160〜1000〔nm〕)の各C.I.Pigment Red122を使用して実験を行った場合も、同様の結果が得られた。さらに、トナーEにおいて融点が75〜85〔℃〕の他のカルナバワックスを使用して実験を行った場合も、トナーFにおいて融点が55〜75〔℃〕の他のポリエチレンワックスを使用して実験を行った場合も同様の結果が得られた。
【0096】
【表5】

【0097】
すなわち、トナーEにおいて離型剤量が2重量部及び10重量部、並びにトナーFにおいて離型剤量が2重量部である場合は、5万枚の連続印刷を行った後も画像品位が良好であり、感光体ドラム11の表面に異物が付着しているのが確認されず、フィルミングが発生しなかった。
【0098】
また、トナーEにおいて離型剤量が20重量部、並びにトナーFにおいて離型剤量が10重量部及び20重量部である場合は、4万枚の連続印刷を行ったときに、感光体ドラム11の表面に異物がわずかに付着しているのが確認されたが、画像品位は良好であった。5万枚の連続印刷を行った後も、ほとんど状態は変わらず、感光体ドラム11の表面に異物がわずかに付着しているのが確認されたが、画像品位は良好であった。
【0099】
そして、トナーE及びFにおいて離型剤量が25重量部である場合は、5000枚の連続印刷を行ったときに、感光体ドラム11の表面に異物がわずかに付着しているのが確認され、その後、更に5000枚の連続印刷を行ったときに、カラー画像上に異物の模様が確認された。そして、感光体ドラム11上の異物も大きく、はっきりと目視によって確認することができた。前記異物に対してTEM観察を行ったところ、トナーE及びFが感光体ドラム11に固着していることが分かった。さらに、IR分析を行ったところ、大量のトナーE及びFが感光体ドラム11に付着していることが分かった。
【0100】
このことから、離型剤の添加量を25重量部以上にすると、感光体ドラム11上にトナーE及びFが固着し、フィルミングが発生することが分かる。
【0101】
次に、前記トナーE及びFのC.I.Pigment Red122の量を表す着色剤量(重量部)及び離型剤量(重量部)を調整して表6に示されるようなトナーE及びFを製造した。各トナーE及びFについて、A4判の用紙22を横方向に搬送し、印刷デューティを100〔%〕として、30枚の両面の連続印刷を行い、画像品位の低下の有無を目視によって確認したところ、表6に示されるような結果を得ることができた。
【0102】
【表6】

【0103】
表6の結果から、比γが
γ≧2.50
である場合、加熱ローラ20及び加圧ローラ21にわずかにトナーE及びFが付着して定着不良が発生するが、画像品位は良好であり、
0.29≦γ≦2.00
である場合、加熱ローラ20及び加圧ローラ21にトナーE及びFは付着せず定着不良が発生せず、画像品位は良好であった。
【0104】
したがって、定着不良が発生するのを防止し、画像品位を向上させるためには、離型剤量は2〜20重量部にされることが好ましく、比γは、
0.30≦γ≦4.00
に、好ましくは、
0.30≦γ≦2.00
にされる。
【0105】
そして、◎は定着マージンが30〔℃〕以上であることを、○は定着マージンが10〜30〔℃〕であることを、×は定着マージンが10〔℃〕以下であることを示す。また、定着温度の振れ幅が定着マージン以内であれば定着不良は発生せず、良好に印刷を行うことができる。なお、定着装置10が非通紙状態から通紙状態になるときに定着温度の振れ幅が最大となる。このとき、高温高湿状態であっても、定着マージンが30〔℃〕以上であれば定着不良は発生しない。また、常温状態であれば、定着マージンが10〜30〔℃〕であれば定着不良は発生しない。
〔実施例4〕
バインダ樹脂としてのポリエステル樹脂(数平均分子量Mnが3700、ガラス転移点温度Tgが62〔℃〕)100重量部、帯電制御剤としてのサリチル酸錯体1.0重量部に、第1のマゼンタの着色剤として、平均粒子径が80〜180〔nm〕のC.I.Pigment Red122(キナクリドン:平均粒子径が120〔nm〕)を所定の重量部、第2のマゼンタの着色剤として、平均粒子径が40〜80〔nm〕のC.I.Pigment Red57:1(カーミン6B:平均粒子径が50〔nm〕)を所定の重量部、離型剤としてワックス、例えば、カルナバワックス(融点が80〔℃〕)を所定の重量部添加して混合物を得るとともに、該混合物をヘンシェルミキサーによって十分に攪拌し、混練した後、ロールミルによって120〔℃〕の温度で約3時間加熱し溶融させ、室温まで冷却した。このようにして得られた混練物を、微粉砕装置としての衝突板粉砕機「ディスパージョンセパレーター」(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて粉砕し、続いて、分級し、平均粒子径が8〔μm〕のトナーを得た。なお、前記C.I.Pigment Red122及びC.I.Pigment Red57:1によって2種類の顔料が構成される。
【0106】
前記トナーを、図1に示される画像形成装置のトナー16として使用し、画像形成装置として、現像装置における高電圧制御と、定着装置10における定着温度制御とを自由に変えられるように改造したものを使用して実験を行った。
【0107】
まず、現像装置に印加される電圧を、用紙22上のトナー16の付着量が0.6〔mg/cm2 〕になるように調整し、用紙22として標準上質紙(J紙:ゼロックス社製)を使用し、各トナー16の画像濃度ρをXRite528(ステータスI)で測定し、C.I.Pigment Red122及びC.I.Pigment Red57:1の総量を5重量部として、各粒径ごとの着色剤量と画像濃度ρとの関係、色相、彩度等を調べた。
【0108】
そして、C.I.Pigment Red122だけを使用した場合、及びC.I.Pigment Red57:1だけを使用した場合についても、それぞれ5重量部として、各粒径ごとの着色剤量と画像濃度ρとの関係、色相、彩度等を調べた。実験を行った結果を表7に示す。
【0109】
この場合も、図3に示されるように、着色剤量を2〜7重量部にすると、通常の画像品位として使用可能な、良好な画像濃度ρ
1.3≦ρ≦1.7
にすることができる。
【0110】
この場合、画像濃度ρが1.3より低いと、印刷結果が薄いと判断され、かすれた印刷と視認され、画像濃度ρが1.7より高いと、印刷結果が濃いと判断され、ハーフトーンの印刷等は印刷が潰れたように視認される。
【0111】
表7においては、平均粒子径が120〔nm〕のC.I.Pigment Red122及び平均粒子径が50〔nm〕のC.I.Pigment Red57:1を使用した。なお、平均粒子径が100〔nm〕、140〔nm〕及び160〔nm〕の各C.I.Pigment Red122、並びに平均粒子径が50〔nm〕、60〔nm〕及び70〔nm〕の各C.I.Pigment Red57:1を使用して実験を行った場合も、同様の結果が得られた。
【0112】
【表7】

【0113】
すなわち、C.I.Pigment Red122だけを使用したトナーの場合、画像濃度ρが低くなるので、表7に示されるように、カルナバワックスを大量に添加する必要が生じる。ところが、前記実施例1〜3からも分かるように、大量の着色剤を添加すると、フィルミングが発生し、トナーのコストが高くなってしまう。また、C.I.Pigment Red57:1だけを使用したトナーの場合、シアンの色再現性が悪くなり、マゼンタは黄色みがかる。
【0114】
これらのことから、C.I.Pigment Red122及びC.I.Pigment Red57:1を使用したトナーは、C.I.Pigment Red122だけを使用したトナーより、C.I.Pigment Red122及びC.I.Pigment Red57:1の総量を少なくすることができるので、定着マージンも良くすることができ、かつ、シアンの色再現性もある程度良くなり、良好な画像を形成することができる。その結果、トナーのコストを低くすることができ、画像形成装置のコストを低くすることができる。
【0115】
そして、C.I.Pigment Red122に対するC.I.Pigment Red57:1の比をσとしたとき、比σを、
0.25≦σ≦1.50
にすると、画像品位を向上させることができる。
〔実施例5〕
バインダ樹脂としてのポリエステル樹脂(数平均分子量Mnが3700、ガラス転移点温度Tgが62〔℃〕)100重量部、帯電制御剤としてサリチル酸錯体1.0重量部に、シアンの着色剤として、C.I.Pigment Blue15:3(銅フタロシアニン)を3重量部、離型剤としてワックス、例えば、カルナバワックス(融点が80〔℃〕)を6重量部添加して混合物を得るとともに、該混合物をヘンシェルミキサーによって十分に攪拌し、混練した後、ロールミルによって120〔℃〕の温度で約3時間加熱し溶融させ、室温まで冷却した。このようにして得られた混練物を、微粉砕装置としての衝突板粉砕機「ディスパージョンセパレーター」(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて粉砕し、続いて、分級し、平均粒子径が8〔μm〕の粒子を得た。
【0116】
次に、前記粒子の表面に、シリカR972(日本アエロジル社製)を2.0重量部添加し、最終的にトナーを得た。また、トナーの体積平均粒子径に対する個数平均粒子径の比をηとすると、比ηは1.3であった。
【0117】
前記トナーを、図1に示される画像形成装置のトナー16として使用し、画像形成装置として、現像装置における高電圧制御と、定着装置10における定着温度制御とを自由に変えられるように改造したものを使用して実験を行った。
【0118】
まず、現像装置に印加される電圧を、用紙22上のトナー16の付着量が0.6〔mg/cm2 〕になるように調整し、クリーニングブレード19としてウレタンゴム材によって形成され、厚さtが1.8〔mm〕のものを使用し、前記現像装置に組み込んだ。前記クリーニングブレード19の線圧は0.8〜3.3〔gf/mm〕であった。
【0119】
そして、各トナー16について、A4判の用紙22を横方向に搬送し、印刷デューティを5〔%〕として、5万枚の連続印刷による耐久印刷試験を行い、画像品位及び感光体ドラム11の表面のフィルミングを観察した。実験を行った結果を表8に示す。
【0120】
【表8】

【0121】
すなわち、実施例8−1〜8−3、8−10、8−11の場合は、5万枚の連続印刷を行った後も画像品位が良好であり、感光体ドラム11の表面にトナー16が付着しているのが確認されず、フィルミングが発生しなかった。
【0122】
また、実施例8−4、8−6〜8−8の場合は、4万枚の連続印刷を行ったときに、感光体ドラム11の表面に異物がわずかに付着しているのが確認されたが、画像品位は良好であった。5万枚の連続印刷を行った後も、ほとんど状態は変わらず、感光体ドラム11の表面にトナー16がわずかに付着しているのが確認されたが、画像品位は良好であった。
【0123】
実施例8−5、8−9の場合は、5000枚の連続印刷を行ったときに、感光体ドラム11の表面に異物がわずかに付着しているのが確認され、その後、更に5000枚の連続印刷を行ったときに、カラー画像上に異物の模様が確認された。そして、感光体ドラム11上の異物も大きく、はっきりと目視によって確認することができた。前記異物に対してTEM観察を行ったところ、トナー16が感光体ドラム11に固着していることが分かった。さらに、IR分析を行ったところ、大量のトナー16が感光体ドラム11に付着していることが分かった。
【0124】
ところで、実施例8−3〜8−5の場合、5万枚の連続印刷を行ったときに、カラー画像に欠陥は生じなかった。現像装置においては、感光体ドラム11上の異物は極めてわずかであり、カラー画像上に影響を与えてはいなかった。
【0125】
また、実施例8−2、8−7〜8−10の場合、3万枚の連続印刷を行ったときに、カラー画像に縦筋が確認された。現像装置を調べたところ、カラー画像の縦筋に対応する位置に、帯電ローラ12上にトナー16が大量に付着していることが確認された。この場合、クリーニングブレード19が劣化してトナー16がすり抜け、帯電ローラ12にトナー16が付着することによって感光体ドラム11の帯電が妨げられ、感光体ドラム11に帯電不良が発生したからと考えられる。
【0126】
そして、実施例8−1、8−6、8−11の場合、3万枚の連続印刷を行ったときに、カラー画像上に用紙22の搬送方向に無数の2〜3〔mm〕の細長い抜け模様が確認された。現像装置においては、カラー画像の抜けに対応するように感光体ドラム11の表面に、円周方向に2〜3〔mm〕の細長い異物が付着した状態が目視によって確認された。TEM観察を行ったところ、トナー16が感光体ドラム11に固着していることが分かった。
【0127】
このように、実施例8−2〜8−4、8−7、8−8、8−10のように、クリーニングブレード19の線圧を1.0〜3.0〔gf/mm〕にすると、フィルミングが発生するのを防止することができ、クリーニングブレード19においてトナー16がすり抜けるのを防止することができ、画像品位を向上させることができる。
【0128】
なお、前記各実施例において使用されるトナー16は、結着樹脂、着色剤及び必要に応じて使用されるその他の添加剤を含有した着色粒子に、無機微粒子及び離型剤を添加し、混合することによって形成される。トナー16の平均粒子径は体積平均粒子径で、通常1〜30〔μm〕、好ましくは5〜15〔μm〕である。前記着色粒子を構成する着色樹脂としては特に限定されず、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等を使用することができる。
【0129】
また、グロス、オフセット性を向上させることを目的とする離型剤としては、ポリオレフィンワックス、パラフィンラテックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリプロピレン、ポリエチレン等を使用することができ、これらを単独で使用したり、併用したりすることができる。
【0130】
さらに、着色剤としては、特に限定されず、従来カラーのトナー用として使用されるカーボンブラック及び酸化鉄、顔料としては、C.I.Pigment Blue15:3、C.I.Pigment Blue15、C.I.Pigment Blue15:6、C.I.Pigment Blue68、C.I.Pigment Red122、C.I.Pigment Red57:1、2,9−ジメチルキナクリドン、C.I.Pigment Yellow17、C.I.Pigment Yellow81、C.I.Pigment Yellow154、Pigment Yellow185等を使用することができる。そして、他の添加剤として、無機微粒子のシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の個数平均粒子径が5〜1000〔nm〕のものを使用することができる。これらは疎水化されていてもよい。
【0131】
さらに、トナー16にはクリーニング助剤として、個数平均粒子径が0.1〜2.0〔μm〕のスチレン・アクリル樹脂微粒子、ステアリン酸亜鉛等のような高級脂肪酸金属塩を添加することもできる。無機微粒子の添加量としては、着色粒子に対して0.1〜2.0〔重量%〕にするのが好ましい。また、クリーニング助剤は、着色粒子に対して0.01〜1.0〔重量%〕添加するのが好ましい。
【0132】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の実施の形態における電子写真方式の画像形成装置の概念図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるイメージドラムカートリッジの断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における着色剤量と画像濃度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0134】
16 トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2種類の顔料のうちの一方の顔料は、平均粒子径において80〜180〔nm〕であるか、又は平均分散径において80〜1000〔nm〕であり、
(b)前記2種類の顔料のうちの他方の顔料は、平均粒子径において40〜80〔nm〕であるか、又は平均分散径において40〜800〔nm〕であることを特徴とする現像剤。
【請求項2】
前記平均粒子径又は平均分散径が大きい顔料に対する平均粒子径又は平均分散径が小さい顔料の比は、0.25〜1.5にされる請求項1に記載の現像剤。
【請求項3】
前記着色剤はマゼンタである請求項1又は2に記載の現像剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像剤を収容する現像剤カートリッジ。
【請求項5】
(a)像担持体と、
(b)該像担持体を帯電させる帯電装置と、
(c)該帯電装置によって帯電させられた前記像担持体に静電潜像を形成する露光装置と、
(d)該露光装置によって形成された静電潜像を可視像化する現像装置と、
(e)前記像担持体に形成された可視像を記録媒体に転写する転写装置と、
(f)転写後の可視像を記録媒体に定着する定着装置とを有するとともに、
(g)請求項4に記載の現像剤カートリッジが搭載される画像形成装置。
【請求項6】
(a)像担持体と、
(b)該像担持体を帯電させる帯電装置と、
(c)該帯電装置によって帯電させられた前記像担持体に静電潜像を形成する露光装置と、
(d)該露光装置によって形成された静電潜像を可視像化する現像装置と、
(e)前記像担持体に形成された可視像を記録媒体に転写する転写装置と、
(f)前記像担持体に接触させて配設され、転写後に像担持体に残った現像剤を除去するクリーニング部材とを有するとともに、
(g)該クリーニング部材の線圧は1.0〜3.0〔gf/mm〕にされ、
(h)請求項4に記載の現像剤カートリッジが搭載される画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−219554(P2007−219554A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134011(P2007−134011)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【分割の表示】特願2003−144356(P2003−144356)の分割
【原出願日】平成15年5月22日(2003.5.22)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】