説明

現像剤の製造方法

【課題】 有機溶媒を使用せず、均質な粒径を有する現像剤を製造する。
【解決手段】 分散液をオリフィス部が設けられたノズル部を有する高圧ホモジナイザー装置に通してトナー材料粒子を微粒化する工程を具備する現像剤の製造方法であって、散逸エネルギーEが1.0×1013≦ΔP・u/(2.5d)≦5.0×1014(J/m秒)で表される(但し、式中ΔPはオリフィス部の前とオリフィス部の圧力の差(Pa)、uはオリフィス部における流速(m/秒)、dはオリフィス径(m)である)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電印刷法、等における静電荷像、磁気潜像を現像するための現像剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重合トナーはスチレン系樹脂をバインダー樹脂として用いた系が主流であったが、低温定着性等の観点から、近年、ポリエステル系樹脂を使用したケミカルトナーが鋭意検討されている。ポリエステル系樹脂は一般的には乳化重合で得られないため、有機溶剤を用いた転相乳化や、特殊な乳化分散機による方法によって、ポリエステル系乳化液を得ていた。そのために副原料を使用したり、多量の界面活性剤を使用したりしていた。
【0003】
ケミカルトナーは一般的に微粒化液製造工程を経て、凝集・融着工程を実施する。しかしながら、複数の工程を経るためプロセスが複雑になる欠点がある。
【0004】
例えば溶融状態の樹脂を高速回転型連続式乳化分散機に導入することによってポリエステル系樹脂の乳化液を得ることが開示されているが、装置が複雑になり、またポリエステル樹脂の劣化が起こる危険性がある(例えば特許文献1参照)。また、ポリエステルを溶解させるために有機溶媒を使用すると、有機溶媒を回収する設備が必要であり環境への負荷が大きくなる(例えば特許文献2参照)。また、水中で重縮合反応を行う場合には、特殊な技術が必要な上、分子量を大きくすることが難しいという問題があった(例えば特許文献3参照)。
【0005】
一方、水系にて機械的剪断を用いた微粒化方法として、高圧ホモジナイザーを用いることが提案されているが、微粒化に最適な条件が明確でない(例えば特許文献4参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、有機溶媒を使用せず、均質な粒径を有する現像剤を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の現像剤の製造方法は、少なくともバインダー樹脂を含有するトナー材料粒子を水系媒体中に分散させ、トナー材料粒子の分散液を形成する工程、及び
該分散液をオリフィス部が設けられたノズル部を有する高圧ホモジナイザー装置に通し、該オリフィス部にて機械的せん断に供し、該トナー材料粒子を微粒化する工程を具備する現像剤の製造方法であって、
前記オリフィス部の前と前記オリフィス部の圧力の差をΔP(Pa)、前記オリフィス部における流速をu(m/秒)、前記オリフィス部の径をd(m)としたとき、下記式(1)で定義される散逸エネルギーEが1.0×1013〜5.0×1014(J/m秒)であることを特徴とする。
【0008】
E=ΔP・u/(2.5d) …(1)
【発明の効果】
【0009】
本発明を用いると、その均質な粒径を有する現像剤が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に使用される高圧ホモジナイザーの構成の一例を表す図である。
【図2】図1の微粒化部の一部を拡大した図である。
【図3】本発明の現像剤の製造方法の一例を表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の現像剤の製造方法は、少なくともバインダー樹脂を含有するトナー材料粒子を水系媒体中に分散させ、トナー材料粒子の分散液を形成する工程、及び分散液をオリフィス部が設けられたノズル部を有する高圧ホモジナイザー装置に通し、オリフィス部にて機械的せん断に供し、トナー材料粒子を微粒化する工程を具備する現像剤の製造方法であって、オリフィス部の前とオリフィス部の圧力の差をΔP(Pa)、オリフィス部における流速をu(m/秒)、オリフィス部の径をd(m)としたとき、下記式(1)で定義される散逸エネルギーEが1.0×1013〜5.0×1014(J/m秒)である。
【0012】
E=ΔP・u/(2.5d) …(1)
本発明によれば、水系媒体中でバインダー樹脂を高圧ホモジナイザーを用いて分散させる際に、上記式で表される散逸エネルギーを所定の範囲に維持して高圧ホモジナイザーを運転すると、バインダー樹脂のより均質な分散を行うことが出来る。バインダー樹脂の分散が均質であると、得られる現像剤は、その粒度分布がシャープになり、良好な帯電性を有し、高画質の画像を形成することが可能となる。
【0013】
(トナー分散液の製造装置)
本発明において、バインダー樹脂を乳化させて微粒化する工程において
マントン・ゴーリン式高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、マイクロフルイダイザー〔みずほ工業社製〕、ナノマイザー〔ナノマイザー社製〕、スターバースト〔スギノマシン社製〕、ジーナスPY〔白水化学株式会社製〕、NANO3000 〔美粒社製〕等の高圧ホモジナイザータイプを使用できる。なお、このうち、NANO3000、ナノマイザーはオリフィスタイプである。
【0014】
図1に、本発明に使用される高圧ホモジナイザーの構成の一例を表す図を示す。
【0015】
本発明に使用される高圧ホモジナイザー20は、例えば図1に示すように、昇圧部25、加熱部26、オリフィスを設けたノズル部を持つ微粒化部28、減圧部29、及び冷却部31の順に配置された装置構成を有することが好ましい。
【0016】
この高圧ホモジナイザー20は、ホッパータンク21、送液ポンプ22、高圧ポンプ25、高圧ポンプ25の上流側及び下流側にそれぞれ設けられた逆止弁23,24、加熱部26、微粒化部28、減圧部29、冷却部31、及び任意に減圧部33を順に配置した構成と、各部を接続する配管とを含む。
【0017】
ホッパータンク21は、分散液7を投入するタンクである。装置稼動時は、装置内に空気を送り込まないよう常に液を満たしておく必要が有る。処理液の粒子径が大きく、沈降性があるものの場合は、さらに攪拌機を設けることができる。
【0018】
送液ポンプ22は、高圧ポンプ25に分散液7を連続的に送るために設置する。また、高圧ポンプ25の上流側及び下流側に各々設けられた逆止弁23,24での詰まりを回避するためにも有効である。このポンプ22としては、例えばダイアフラムポンプ、チュービングポンプ、ギアポンプ等が使用できる。
【0019】
高圧ポンプ25は、プランジャー式ポンプであり、図示しない処理液入口及び処理液出口に逆止弁を有する。プランジャーの数は生産規模に応じ、1から10個使用される。脈流を極力減らすために、2個以上あることが好ましい。
【0020】
加熱部26は、オイルバス等の加熱器具内に熱交換面積を多くとるためにらせん状に形成された高圧配管27が設置されている。この加熱部26は、分散液7の流れる方向に対し、高圧ポンプ25の上流側または下流側のどちらでも問題が無いが、少なくとも微粒化部28の上流側である必要がある。高圧ポンプ25の上流側に加熱部26を設置する場合は、ホッパー21に加熱装置を付与しても良いが、高温下での滞留時間が長いため、バインダー樹脂の加水分解が起こり易くなる。
【0021】
微粒化部28には、強力なせん断をかけるための微小な径を有するノズルが含まれている。
【0022】
図2に、微粒化部28の一部を拡大した断面図を示す。
【0023】
図示するように、微粒化部28はノズル101を有し、ノズル101内に直径dのオリフィス部103を持つオリフィス板102が設けられている。
【0024】
ノズルの径及び形状は様々あるが、ノズル径は0.05mmから0.5mmが望ましく、形状は、通過型ノズル、または衝突型ノズルが好ましい。また、このノズルは多段で構成しても良く、多段にする場合は異なるノズル径を複数並べても良い。複数並べる方法は並列でも直列でも良い。ノズルの材質は高圧に耐えることが可能なダイヤモンド等が使用される。
【0025】
微粒化部28の後段に、減圧部29が設けられる。減圧部29を持つことにより、ノズル部101で最高圧に達した後、徐々に減圧することによって微粒子の凝集性をコントロールすることができる。また、減圧した後に冷却する構成は処理の安定性を増すので好ましい。処理圧は60から200MPaが好ましい。100から150MPaが特に好ましい。加熱温度は120℃から200℃が好ましい。150から190℃が特に好ましい。
【0026】
ノズル通過後は除々に減圧するのが処理の安定性上好ましい。
【0027】
1パス通過で所定の粒径にならないときは2から10パス通過で処理をして所定の粒径にする場合ができる。
【0028】
減圧部29の後段には冷却部26が設けられる。冷却部26には、冷水が連続的に流されるバス内に熱交換面積を多くとるためにらせん状に形成された配管27が設置されている。
【0029】
必要に応じ、上記冷却部26の後にさらに減圧部33を設けることができる。減圧部33の構成としては、微粒化部28のノズル径より、大きくかつ接続配管径より小さい流路を有するセル、または2方向バルブを1つ以上配置する。
【0030】
図3は、本発明の現像剤の製造方法の一例を表すフロー図を示す。
【0031】
図示するように、本発明の現像剤の製造方法の一例では、
まず、少なくともバインダー樹脂を含有する粗く粒状化された混合物を調製する(Act 1)。粗く粒状化された混合物は、例えばバインダー樹脂を含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を粉砕することにより得られる。粗く粒状化された混合物には、予めさらに着色剤を混合することが出来る。あるいは、着色剤を含有する粒子を分散液調製時にさらに添加することができる。
【0032】
粗く粒状化された混合物を水系媒体を混合して分散液を調製する(Act 2)。
【0033】
粒状化された混合物を図1及び図2に示す高圧ホモジナイザーを用いて機械的せん断に供し、該粒状化された混合物を微粒化して、微粒子を形成する(Act 3)。
【0034】
機械的せん断後、徐々に減圧することができる(Act 4)。
【0035】
凝集粒子を形成するために、混合液中に凝集剤を投入することができる。また、凝集粒子を融着するために、この混合液を例えばバインダー樹脂のガラス転移点に対して+5ないし+80℃位の温度に加温することができる。凝集粒子を形成する工程では、pHの調整、界面活性剤の添加、水溶性金属酸化物の添加、有機溶剤の添加、及び温度調整のうち少なくとも1つのプロセスを用いて微粒子を複数個凝集させることができる。これらのプロセスを調整することにより得られる凝集粒子の形状を制御することが可能である。
【0036】
凝集粒子は、好ましくは1〜15μmの体積平均粒子径を有する。
【0037】
凝集粒子は、好ましくは0.8〜1.0の円形度を有する。
【0038】
凝集粒子を形成した後、この混合液を例えば5℃ないしガラス転移点以下まで冷却することができる。(Act5)
その後、例えばフィルタープレスを用いて洗浄し(Act6)、乾燥する(Act7)ことにより、トナー粒子が得られる。
【0039】
(トナー分散液の製造条件)
従来よりオリフィス流れの微粒化機構は、オリフィス部での剪断流れによって微粒化が行われていると考えられてきた。これに対し、本発明者らは、オリフィス部の収縮流が関与して微粒化が行われることを見出し本発明をなすに至った。尚、収縮流の分散エネルギーについては、化学工学論文集VOL.25 NO.5 1992に記載がある。
【0040】
オリフィス部の収縮流の大きさは下記散逸エネルギーで表される。
【0041】
E=ΔP・u/(2.5d)… (1)
式中、ΔP(Pa):オリフィス部での圧力損失
u(m/秒):オリフィス部での平均流速
d(m):オリフィス径
この原理をトナー微粒化に適用したところ、散逸エネルギーが1.0×1013〜5.0×1014(J/m秒)であるとき、バインダー樹脂の微粒化が良好となる。
【0042】
散逸エネルギーが1.0×1013(J/m秒)以下のときは、均一な微粒化液が生成しない。また散逸エネルギーが5.0×1014(J/m秒)以上は高圧、高流速条件になるので、トナーの物性が変性してしまう危険性がある。また装置の物理的な制約から現実的にはこのような大きな散逸エネルギーの条件で実施することは難しい。
【0043】
また、好ましい散逸エネルギーは、1.0×1014ないし3.0×1014(J/m秒)である。
【0044】
以下、本発明に使用される材料について示す。
【0045】
(バインダー樹脂:ポリエステル樹脂)
本発明で用いるバインダー樹脂としては、ジカルボン酸成分とジオール成分をエステル化反応を経て、重縮合して得られるポリエステル系樹脂が好ましい。酸成分としてテレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の脂肪族カルボン酸、等が挙げられる。
【0046】
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチングリコール、トリメチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、ビスフェノールA等のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物等をあげることができる。
【0047】
また、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)やグリセリン等の3価以上の多価のカルボン酸や多価のアルコール成分を用いて、上記のポリエステル成分を架橋構造にしてもよい。
【0048】
これらは組成の異なる2種類以上のポリエステル樹脂を混合して使用してもよい。
【0049】
また低温定着性の観点から、上記ポリエステル樹脂は容易にガラス転移温度をコントロールできる非晶性を有していることが好ましい。
【0050】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は45℃以上70℃以下が好ましい。また、50℃以上65℃以下がより好ましい。ガラス転移温度が45℃より低いとトナーの耐熱保存性が悪化し、70℃より高いと低温定着性が悪化する傾向がある。ポリエステル樹脂の軟化点は80〜140℃の範囲が定着時のオフセット範囲から好ましい。ポリエステル樹脂の酸価は環境の変化に対する帯電性の観点から、1.0〜25.0mgKOH/gが好ましい。ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは5000以上50000以下が好ましい。また、ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは8000以上20000以下がより好ましい。
【0051】
(離型剤成分)
本発明において、トナーのバインダー樹脂に離型剤成分を配合する。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスおよびそれらの変性物、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、ライスワックスなどの植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろうのなどの動物系ワックス、モンタンワックス、オゲソライト、セレシンなどの鉱物系ワックス、リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドのなどの脂肪酸アミド、シリコーン系ワックス等が挙げられる。
【0052】
本発明においては、離型剤は特にアルコール成分とカルボン酸成分からなる成分のエステル結合を持つものが好ましい。アルコール成分としては高級アルコール、カルボン酸成分としては直鎖アルキル基を持つ飽和脂肪酸、モノエン酸、ポリエン酸等の不飽和脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸等が挙げられる。また不飽和多価カルボン酸としてマレイン酸、フタル酸、フマル酸、コハク酸、イタコン酸等が挙げられる。またこれらの無水物でも良い。
【0053】
離型剤の融点は低温定着性の観点から、60℃〜120℃、より好ましくは70℃〜110℃である。
【0054】
(着色剤)
本発明に用いる着色剤としては、カーボンブラックや有機もしくは無機の顔料や染料などが用いられる。特別な制約は無いが、カーボンブラックではアセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。また、顔染料としては、例えば、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、インドファストオレンジ、イルガジンレッド、ナフトールアゾ、カーミンFB、パーマネントボルドーFRR、ピグメントオレンジR、リソールレッド2G、レーキレッドC、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーンB、フタロシアニングリーン、キナクリドンなどが挙げられる。これらを単独で、あるいは混合して使用することもできる。
【0055】
(帯電制御剤)
本発明においては、摩擦帯電電荷量を制御するための帯電制御剤などを配合しても良い。帯電制御剤としては、含金属アゾ化合物が用いられ、金属元素が鉄、コバルト、クロムの錯体、錯塩、あるいはその混合物が好ましい。また、含金属サリチル酸誘導体化合物も用いられ、金属元素がジルコニウム、亜鉛、クロム、ボロンの錯体、錯塩、あるいはその混合物が好ましい。
【0056】
(外添剤)
本発明においては、トナー粒子に対して流動性や帯電性を調整するために、トナー粒子に対して0.01〜20重量%の無機微粒子を外添混合してもよい。このような無機微粒子としてはシリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム、酸化錫等を単独であるいは2種以上混合して使用することができる。無機微粒子は疎水化剤で表面処理されたものを使用することが環境安定性向上の観点から好ましい。またこのような無機酸化物以外に1μm以下の樹脂微粒子例えばポリシロキサン樹脂等の樹脂の微粒子をクリーニング性向上のために外添してもよい。
【0057】
(界面活性剤)
本発明において、例えばポリエステル系樹脂等のバインダー樹脂を乳化分散させる工程において、界面活性剤を使用することができる。
【0058】
アニオン性界面活性剤として、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルカンスルフォン酸塩等のスルフォン酸塩類、オレイン酸塩、ステアリン酸塩、パルチミン酸塩等の脂肪酸塩類、ラウリルサルフェート塩、ラウリルエーテルサルフェート塩等の硫酸エステル塩類、アルケニルコハク酸塩類などが挙げられる。
【0059】
カチオン性界面活性剤として、ラウリルアミン塩、オレイルアミン塩、ステアリルアミン塩等のアミン塩類、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩類などが挙げられる。
【0060】
非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ソルビダンモノラウレート、ソルビダンモノパルミレート、ソルビダンモノステアレート等のソルビダン脂肪酸エステル類などが挙げられる。界面活性剤の使用量は、トナー成分の固形分に対して1.0重量%〜10重量%が好ましい。界面活性剤の使用量が1.0重量%未満であると、微粒化液が良好な分散状態を示さない傾向があり、10重量%を超えると、後の洗浄工程で界面活性剤を洗浄で取り除くことが困難となる傾向がある。
【0061】
界面活性剤の種類としては、分散性と凝集性の観点からアニオン性界面活性剤が最も好ましい。非イオン性石鹸は分散性には優れるが、凝集しづらい傾向があるので単独使用は好ましくない。
【0062】
(塩基性物質)
本発明において、例えばポリエステル系樹脂等のバインダー樹脂を乳化分散させる工程において、塩基性物質を用いることができる。
【0063】
このような塩基性物質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、アンモニア水、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等のアミン類などが挙げられる。これらの中でポリエステル系樹脂の乳化分散効果という観点でアミン類が特に好ましい。
【0064】
本発明において、上記塩基性物質の使用量は、トナー成分の固形分に対して0.5重量%〜5.0重量%が好ましい。塩基性物質の使用量は、トナー成分の固形分に対して0.5重量%未満であると、バインダー樹脂のポリエステル樹脂が十分に中和されず、安定した微粒化分散液を製作することが困難となる傾向があり、5.0重量%を超えると、バインダー樹脂のポリエステル樹脂が加水分解される恐れがある。
【0065】
実施例
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、実施例によって本発明の範囲が制限されるものではない。
【0066】
(非晶性ポリエステル樹脂Aの製造)
テレフタル酸39部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド化合物61部、ジブチルスズ0.2部をエステル化反応槽に投入し、窒素雰囲気下で260℃、50KPaで5時間重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。ガラス点移温度Tgは60℃、軟化点は110℃、重量平均分子量は12000であった。
【0067】
(実施例1)
非晶質ポリエステル樹脂Aを90重量部、離型剤としてライスワックスを5重量部、シアン顔料を5重量部、2軸混練機で混練したものを粉砕して、トナーの粗粉砕物を得た。このトナー粗粉砕物100部、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤ネオゲンR(第一工業製薬社製)1.0部、ジメチルアミノエタノール2.1部、脱イオン水233部を添加し真空脱泡しながら十分に攪拌した。このポリエステル粗砕スラリーを高圧ホモジナイザ(美粒社製NANO3000)に通してトナー微粒子を形成した。装置は図1に示す通りに、昇圧部、加熱部、ノズル部、減圧部、冷却部からなる。操作条件は処理圧150MPa、加熱部の液温190℃、ノズル径0.13mm、処理量20L/Hで実施した。ノズル部の流速は計算から420m/秒、(1)式で定義される散逸エネルギーE=1.9×1014(J/m秒)であった。本装置に流した後、トナー微粒子液をコールターカウンター粒径測定器(ベックマンコールター社製)で測定すると体積平均粒径が0.63μmのものが得られた。
【0068】
このトナー微粒化液を固形分で20重量部になりように脱イオン水を加え、攪拌機付のガラス製セパラブルフラスコに仕込んだ。攪拌翼を300rpmで回転しながら、30℃で硫酸マグネシウム水溶液をポンプで連続滴下した。硫酸マグネシウム水溶液を固形分で2重量部入れ滴下終了後、65℃まで昇温した。
【0069】
65℃の状態でこの凝集溶液にノニオン性界面活性剤(花王社製、エマルゲン1108)1重量部を添加し、80℃まで昇温して30分間一定に保った。コールターカウンター(ベックマンコールター社製)粒径測定器で測定すると体積平均粒径が5.2μmであった。また、その粒径分布のCV値(標準偏差/平均粒径)が22%であることから、粒度分布がシャープであることがわかった。
【0070】
得られた粒子は、光学顕微鏡で観察したところ、融着も十分にされていた。
【0071】
冷却後得られた着色粒子を遠心分離機にて洗浄水の導電率が50μS/cmとなるまで洗浄し、真空乾燥機にて含水率が0.3重量%になるまで乾燥させた。乾燥後、疎水性シリカ(日本アエロジル社製、RX−200)2重量部、酸化チタン(チタン工業社製、STT−30EHJ)0.5重量部を着色粒子表面に付着させ、電子写真用トナーを得ることができた。
【0072】
得られた電子写真用トナーを用いて、東芝テック社製複合機e−STUDIO 4520cにより画像形成を行った。得られた画像は適性な濃度でかぶりの少ない高画質な画像が得られた。
【0073】
得られた結果を下記表1に示す。
【0074】
(実施例2)
実施例1と同様のトナー粗粉砕物100部、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤ペレックスOTP(花王社製)1.0部、ジメチルアミノエタノール2.1部、脱イオン水233部を添加し真空脱泡しながら十分に攪拌した。このポリエステル粗砕スラリーを実施例1と同様の高圧ホモジナイザ(美粒社製NANO3000)に通してトナー微粒子を形成した。操作条件は処理圧200MPa、加熱部の液温190℃、ノズル径0.13mm、処理量26L/Hで実施した。ノズル部の流速は計算から540m/秒、(1)式で定義される散逸エネルギーE=3.3×1014(J/m秒)であった。本装置に流した後、トナー微粒子液をコールターカウンター粒径測定器(ベックマンコールター社製)で測定すると体積平均粒径が0.45μmのものが得られた。このトナー微粒化液を実施例1と同様の処方で凝集・融着した。得られた粒径は体積平均径で5.5μmであった。
【0075】
そのcv値が20%であることから、粒度分布がシャープであることがわかった。
【0076】
得られた粒子は、光学顕微鏡で観察したところ、融着も十分にされていた。
【0077】
得られた電子写真用トナーを用いて、実施例1と同様にして画像形成を行い、得られた画像を評価したところ、適性な濃度でかぶりの少ない高画質な画像が得られた。
【0078】
得られた結果を下記表1に示す。
【0079】
(実施例3)
実施例1と同様のトナー粗粉砕物100部、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤ペレックスOTP(花王社製)1.0部、ジメチルアミノエタノール2.1部、脱イオン水233部を添加し真空脱泡しながら十分に攪拌した。このポリエステル粗砕スラリーを実施例1と同様の高圧ホモジナイザ(美粒社製NANO3000)に通してトナー微粒子を形成した。操作条件は処理圧50MPa、加熱部の液温190℃、ノズル径0.13mm、処理量14L/Hで実施した。ノズル部の流速は計算から290m/秒、(1)式で定義される散逸エネルギーE=4.5×1013(J/m秒)であった。本装置に流した後、トナー微粒子液をコールターカウンター粒径測定器(ベックマンコールター社製)で測定すると体積平均粒径が0.83μmのものが得られた。このトナー微粒化液を実施例1と同様の処方で凝集・融着した。得られた粒径は体積平均径で6.5μmであった。
【0080】
そのCV値が25%であることから、粒度分布がシャープであることがわかった。
【0081】
得られた粒子は、光学顕微鏡で観察したところ、融着も十分にされていた。
【0082】
得られた電子写真用トナーを用いて、実施例1と同様にして画像形成を行い、得られた画像を評価したところ、適性な濃度でかぶりの少ない高画質な画像が得られた。
【0083】
得られた結果を下記表1に示す。
【0084】
(実施例4)
実施例1と同様のトナー粗粉砕物100部、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤ネオゲンR(第一工業製薬社製)1.0部、水酸化ナトリウム0.9部、脱イオン水233部を添加し真空脱泡しながら十分に攪拌した。このポリエステル粗砕スラリーを実施例1と同様の高圧ホモジナイザ(美粒社製NANO3000)に通してトナー微粒子を形成した。操作条件は処理圧250MPa、加熱部の液温190℃、ノズル径0.13mm、処理量30L/Hで実施した。ノズル部の流速は計算から630m/秒、(1)式で定義される散逸エネルギーE=4.8×1014(J/m秒)であった。本装置に流した後、トナー微粒子液をコールターカウンター粒径測定器(ベックマンコールター社製)で測定すると体積平均粒径が0.31μmのものが得られた。このトナー微粒化液を実施例1と同様の処方で凝集・融着した。得られた粒径は体積平均径で5.3μmであった。
【0085】
そのCV値が18%であることから、粒度分布がシャープであることがわかった。
【0086】
得られた粒子は、光学顕微鏡で観察したところ、融着も十分にされていた。
【0087】
得られた電子写真用トナーを用いて、実施例1と同様にして画像形成を行い、得られた画像を評価したところ、適性な濃度でかぶりの少ない高画質な画像が得られた。
【0088】
得られた結果を下記表1に示す。
【0089】
(比較例1)
実施例1と同様のトナー粗粉砕物100部、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤ネオゲンR(第一工業製薬社製)1.0部、ジメチルアミノエタノール2.1部、脱イオン水233部を添加し真空脱泡しながら十分に攪拌した。このポリエステル粗砕スラリーを実施例1と同様の高圧ホモジナイザ(美粒社製NANO3000)に通してトナー微粒子を形成した。操作条件は処理圧50MPa、加熱部の液温190℃、ノズル径0.4mm、処理量14L/Hで実施した。ノズル部の流速は計算から31m/秒、(1)式で定義される散逸エネルギーE=1.5×1012(J/m秒)であった。本装置に流した後、トナー微粒子液をコールターカウンター粒径測定器(ベックマンコールター社製)で測定すると体積平均粒径が1.5μmで分布がブロードであり、均一な微粒化液が生成できなかった。このトナー微粒化液を実施例1と同様の処方で凝集・融着を試みたが、粗粒成分が多く、トナーを形成することができなかった。
【0090】
得られた結果を下記表1に示す。
【0091】
(比較例2)
実施例1と同様のトナー粗粉砕物100部、界面活性剤として非イオン性界面活性剤ハイテノールEA−177(第一工業製薬社製)1.0部、ジメチルアミノエタノール2.1部、脱イオン水233部を添加し真空脱泡しながら十分に攪拌した。このポリエステル粗砕スラリーを実施例1と同様の高圧ホモジナイザ(美粒社製NANO3000)に通してトナー微粒子を形成した。操作条件は実施例1と同様であった。本装置に流した後、トナー微粒子液をコールターカウンター粒径測定器(ベックマンコールター社製)で測定すると体積平均粒径が0.47μmのものが得られた。その後実施例1と同様の硫酸マグネシウムを用いて凝集を実施したが、未凝集物が多く発生した。
【0092】
得られた結果を下記表1に示す。
【0093】
(比較例3)
実施例1と同様のトナー粗粉砕物100部、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤ネオゲンR(第一工業製薬社製)1.0部、脱イオン水233部を添加し真空脱泡しながら十分に攪拌した。このポリエステル粗砕スラリーを実施例1と同様の高圧ホモジナイザ(美粒社製NANO3000)に通してトナー微粒子を形成した。操作条件は実施例1と同様であった。本装置に流した後、トナー微粒子液を観察すると固形分が液と分離して均一な微粒化液は得られなかった。
【0094】
得られた結果を下記表1に示す。
【表1】

【符号の説明】
【0095】
20…高圧ホモジナイザー、25…昇圧部、28…微粒化部、29,33…減圧部、31…冷却部、101…ノズル部、102…オリフィス板、103…オリフィス部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】
【特許文献1】特許第3351505号公報
【特許文献2】特開2007−114665公報
【特許文献3】特開2007−33769公報
【特許文献4】特開2007−187917公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともバインダー樹脂を含有するトナー材料粒子を水系媒体中に分散させ、トナー材料粒子の分散液を形成する工程、及び
該分散液をオリフィス部が設けられたノズル部を有する高圧ホモジナイザー装置に通し、該オリフィス部にて機械的せん断に供し、該トナー材料粒子を微粒化する工程を具備する現像剤の製造方法であって、
前記オリフィス部の前と前記オリフィス部の圧力の差をΔP(Pa)、前記オリフィス部における流速をu(m/秒)、前記オリフィス部の径をd(m)としたとき、下記式(1)で定義される散逸エネルギーEが1.0×1013〜5.0×1014(J/m秒)であることを特徴とする現像剤の製造方法。
E=ΔP・u/(2.5d) …(1)
【請求項2】
前記トナー材料粒子の分散液を、前記オリフィス部にて機械的せん断に供する前に、加圧及び加熱し、該機械的せん断に供した後減圧し、減圧後冷却に供することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トナー材料粒子はさらにワックス成分を含むことを特徴とする請求項1または2には記載の方法。
【請求項4】
前記バインダー樹脂は、ポリエステル系であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記水性媒体は、さらに塩基性物質を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基性物質は、その含有量がトナー固形分100重量部に対し1.0〜5.0重量部であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記水性媒体は、さらに界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記界面活性剤は、アニオン系であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記界面活性剤は、その含有量がトナー固形分100重量部に対して0.5〜5.0重量部であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記トナー材料粒子は、少なくともバインダー樹脂を含有するトナー材料を溶融混練し、得られた混練物を粉砕することにより得られることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−53556(P2011−53556A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203917(P2009−203917)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】