説明

現像液容器

【課題】 現像液中に配置される部材を少なくして現像液の粘度を測定することができる現像液容器を提供することを目的とする。
【解決手段】
現像液を保持する保持容器と、回転することによって前記現像液を攪拌する攪拌手段と、前記攪拌手段へ回転駆動力を供給する駆動手段と、前記駆動手段による回転駆動力の供給を停止してから、前記攪拌手段の回転が停止するまでの時間を計測する時間計測手段と、を有し、前記時間計測手段により計測された時間から現像液の粘度を決定すること、を特徴とする現像液容器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式画像形成装置に使用される現像液を保持するための現像液容器であって、特に、現像液の粘度を検出する機能を有する現像液容器に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーを記録紙に転写して画像を形成する装置として、キャリア液中にトナーを含んだ現像液を現像ローラ表面に担持させ、この現像液を感光ドラムに供給して現像を行う湿式画像形成装置が知られている。湿式画像形成装置で用いられるトナーは、紛状のトナーを使用する乾式画像形成装置で用いられるトナーよりも微細である為、一般に湿式画像形成装置は乾式画像形成装置よりも高画質な画像を形成することができる。
【0003】
印刷される画像の濃淡は、現像液中のトナーの濃度によって変化する。印刷される画像を高品質に保つには、現像液中のトナーの濃度を一定値に保つ必要がある。現像液中のトナーの濃度を測定する方法としては、現像液中に光検出器を設置し、現像液容器外部から光を光検出器に向けて照射し、現像液を透過して光検出器で受光された光の強度から現像液中のトナーの濃度を検出する方法が一般的に採用されている。
【0004】
また、現像液中のトナーの濃度と現像液の粘度との相関性を利用して、現像液の粘度を測定することにより現像液中のトナーの濃度を検出する方法が知られている。例えば、特許文献1には、現像液の粘度を測定し、現像液中のトナーの濃度を測定する濃度測定装置が記載されている。
【特許文献1】特開平10−198176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には、現像液が静止している状態の現像液容器内に、回転移動する被抵抗部材(筒状)を配置し、該被抵抗部材に作用するトルクを測定することにより、現像液の粘度を算出し、現像液中のトナーの濃度変化を検出する装置が開示されている。しかし、現像液中に、粘度を測定するためのそのような被抵抗部材を配置させることは現像液の攪拌のさまたげとなってしまう。
【0006】
また、市販されている、例えば光検出器等の粘度センサは非常に高価であり、その体積も非常に大きく、現像液容器内に配置すると撹拌の妨げとなるという問題があった。また現像液中のトナーやキャリアには石油系の油が使用されているため、現像液容器内の現像液中に樹脂系、ゴム系の部品が使用されているセンサを設置すると、センサが変質したり、検出精度が低下するという問題もあった。
【0007】
本発明は、以上の事情に鑑み、現像液中に配置される部材を少なくして現像液の粘度を測定することができる現像液容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明では、現像液を保持する保持容器と、回転することによって前記現像液を攪拌する攪拌手段と、前記攪拌手段へ回転駆動力を供給する駆動手段と、前記駆動手段による回転駆動力の供給を停止してから、前記攪拌手段の回転が停止するまでの時間を計測する時間計測手段と、を有し、前記時間計測手段により計測された時間から現像液の粘度を決定すること、を特徴とする現像液容器を提供する。
【0009】
したがって、本発明によれば、現像液中に配置される攪拌手段の回転が停止するまでの時間を計測することにより現像液の粘度を決定することができる。攪拌手段の回転が停止するまでの時間を計測するためには現像液中にセンサを配置させる必要がないため、本発明の現像液容器は、現像液中に配置される部材を少なくして現像液の粘度を測定することができる。
【0010】
また、本発明に係る現像液容器においては、前記駆動手段は、前記攪拌手段へ回転駆動力を伝達する回転軸と、前記回転軸を回転させる駆動モータと、前記回転軸を回転中心とし、前記攪拌手段と一体的に回転するよう前記回転軸に備えられた慣性体と、を有し、前記慣性体を備えたことにより、前記駆動手段による回転駆動力の供給の停止後であっても、前記攪拌手段が現像液からの抵抗に反して、前記慣性体が備えられていない場合と比較して長時間回転可能であることを特徴とする。そして、特に、前記慣性体は、前記慣性体は、前記慣性体を除く現像液からの抵抗に反して回転する部材の質量の約3倍以上の質量を有することが好ましい。
【0011】
また、前記時間計測手段は、前記駆動手段による回転駆動力の供給を停止してから、前記慣性体が所定の回転速度となるまでの時間を計測することにより、前記攪拌手段の回転が停止したことを検知することを特徴とする。
【0012】
具体的には、前記慣性体は、円盤状であり、円周方向に沿って光検出位置と非光検出位置とを交互に配置し、光検出手段により前記光検出位置と前記非光検出位置とを検出することにより、前記慣性体の回転周期が測定されることを特徴とする。
【0013】
さらに、前記光検出位置が前記慣性体を貫通するように形成された孔であり、前記非光検出位置が前記慣性体の表面であることを特徴とする。この場合、前記光検出手段は、前記慣性体の表面及び裏面の近傍であり且つ前記光検出位置及び前記非光検出位置の通過する位置に備えられた、一組の発光素子と受光素子であることを特徴とする。
【0014】
或いは、前記光検出位置が前記慣性体上の光を反射させる位置であり、前記非光検出位置が前記慣性体上の光を反射しない位置であることを特徴とする。そして、前記光検出位置及び前記非光検出位置が、前記慣性体の周面に位置することを特徴とする。この場合、前記光検出手段は、前記光検出位置及び前記非光検出位置の通過する位置の近傍に備えられた、発光素子と前記光検出位置により反射した該発光素子が発光した光を受光する受光素子とを有することを特徴とする
【0015】
また、前記駆動手段は、さらに、前記攪拌手段および前記慣性体へ、前記攪拌手段が回転する回転方向にのみ回転駆動力を伝達させその反対の回転方向には回転駆動力を伝達させないよう機能するワンウェイクラッチを備えることを特徴とする。また、前記時間計測手段は、代替的には、前記駆動手段による回転駆動力の供給を停止してから、前記駆動モータに生じる逆起電力が所定の値になるまでの時間を計測することにより、前記攪拌手段の回転が停止するまでの時間を計測することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の現像液容器は、前記現像液の温度を測定する温度計測手段を備え、前記時間計測手段によって計測された時間と、前記温度計測手段によって計測された温度とに基づいて、現像液の粘度を検出すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、現像液中に配置される部材を少なくして現像液の粘度を測定することができる現像液容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、湿式プリンタ100の構成を示す側断面図である。湿式プリンタ100は、キャリア液中にトナーを含んだ現像液を現像ローラ表面に担持させて画像を形成する装置であって、コンピュータ等の外部機器から入力される文字・画像情報を、レーザビームを利用した電子写真法によって記録紙P1に印刷して出力する装置である。
【0019】
湿式プリンタ100は、文字・画像情報に応じて変調されたレーザ光を出力するレーザスキャニングユニット(Laser Scanning unit、以下、LSUと略記)30と、該レーザ光の照射により感光ドラム上に形成された静電潜像を電子写真法によって現像して、トナー像を生成する現像ユニット50と、現像ユニット50で現像されたトナー像を転写位置において記録紙P1上に転写する転写ユニット70と、搬送機構により搬送される記録紙P1上に転写されたトナー像を定着させる定着ユニット80と、記録紙P1を搬送する搬送ユニット90と、から構成されている。
【0020】
現像ユニット50は、保持ローラ51、現像液を計量するための計量ローラ52、計量ローラ52の表面の現像液を均一厚さにする計量ローラブレード52a、計量ローラ52から供給された現像液を担持する現像ローラ53、現像ローラ53表面から現像液を掻き取り除去する現像ローラクリーニングブレード53a、現像ローラ53を帯電させる現像ローラ用帯電コロナ54、LSU30からのレーザ光によって静電潜像が形成される感光ドラム55、感光ドラム55表面を一様に帯電させる感光ドラム用帯電コロナ57、感光ドラム55からキャリア液を回収するスクイーズドローラ58、現像ユニット50で発生した残留現像液を湿式プリンタ100内に配置された現像液容器(不図示)に戻すスクリュー59を有する。
【0021】
現像液が保持された現像液容器から現像液パイプ49を経由して供給された現像液は、保持ローラ51と計量ローラ52との転接部上方から供給される。計量ローラ52で計量された現像液は、現像ローラ53に塗布される。一方感光ドラム55では、感光ドラム用帯電コロナ57により一様な電位に帯電されたドラム表面にレーザ光が照射され、照射された部分は一様な電位に比べて電位が下がる。この一様な電位と比べて電位が下がった部分が静電潜像となる。現像ローラ53に塗布された現像液のトナーは帯電しており、感光ドラム55の静電潜像の部分に吸着される。こうして静電潜像は現像され、トナー像が形成される。
【0022】
転写ユニット70は、中間転写ローラ71と二次転写ローラ73とを有する。中間転写ローラ71はトナーと逆極性の電圧が印加されており、感光ドラム55表面のトナー像は、感光ドラム55と中間転写ローラ71との転接部において、中間転写ローラ71表面に一次転写される。二次転写ローラ73は、記録紙P1の搬送路を挟んで中間転写ローラ71と対向する位置に設置され、中間転写ローラ71よりも高電圧の逆極性の電圧が印加されている。そのためトナー像は二次転写ローラ73の方向に吸引され、中間転写ローラ71表面に転写されたトナー像は、二次転写ローラ73との転接部において記録紙P1に転写される。
【0023】
定着ユニット80は、記録紙P1を加熱するヒートローラ81と、搬送路を挟んでヒートローラ81と対向した位置に設置され、自身とヒートローラ81とによって記録紙P1を挟んで加圧するプレスローラ82とから構成されている。この定着ユニット80によって、記録紙P1上のトナー像は加熱及び加圧によって記録紙P1に定着される。
【0024】
搬送ユニット90は、ロール状の記録紙P1が設置されるロール軸91、記録紙P1を搬送する給紙駆動ローラ93、給紙駆動ローラ93と転接する給紙従動ローラ94、給紙駆動ローラ93を駆動する駆動モータ95、給紙センサ97を有する。記録紙P1は給紙駆動ローラ93により搬送され、記録紙P1が給紙センサ97を通過したときを基準として、LSU30の発光するタイミングが湿式プリンタ100の制御部で計算される。記録紙P1が給紙センサ97を通過したときを基準としてLSU30が発光するタイミングが制御されるので、記録紙P1の適切な位置に印刷を行なうことができる。
【0025】
次に、現像液が保持される現像液容器の配置について説明する。図2は、図1の背面方向から湿式プリンタ100を観察した側断面図である。湿式プリンタ100は、現像ユニット50に現像液を供給する現像液容器3A、現像液容器3Aに現像液を補給する現像液予備容器5、現像液容器3Aにキャリア液を補給するキャリア液予備容器7、現像液予備容器5から現像液を現像液容器3Aに搬送するのに使用される現像液補給ポンプ9、現像液容器3Aから現像液を現像ユニット50に搬送する現像液循環ポンプ11を有する。
【0026】
現像液容器3Aは、現像液を保持する保持容器3と現像液を攪拌する機能を有する攪拌装置4とを有する。保持容器3内の現像液の量が所定の量よりも減ると、現像液予備容器5から予備の現像液が保持容器3に補給される。湿式プリンタ100の動作中には、保持容器3内の現像液は、現像液循環ポンプ11によって現像ユニット50に搬送される。現像液循環ポンプ11の吐出口は現像液パイプ49に繋がっている。
【0027】
保持容器3及び現像液予備容器5内の現像液は、約30%がトナーで、残りの約70%がキャリア液となるように構成されている。印刷される画像等は、トナーの比率が高くなると濃くなり、低くなると淡くなる。保持容器3内の現像液のトナーの濃度は、現像液予備容器5から予備の現像液が保持容器3に、キャリア液予備容器7から予備のキャリア液が保持容器3に補給されて、現像液のトナーの濃度が一定に調整され、印刷される画像の品質が一定に保たれている。なお、後に説明する本発明の現像液容器(3B,3C,3D)は、現像液の粘度を測定する機構を備える。現像液の粘度を測定することにより、間接的に現像液の濃度を決定する。現像液容器により求められた現像液の濃度を用いて、湿式プリンタ100は現像液の濃度調整を行うことができる。
【0028】
湿式プリンタ100において使用される現像液は、比較的粘度が高い為、放置すると半固形物となり流動性が失われてしまう。したがって、現像液容器3Aでは、攪拌装置4によって現像液が攪拌される。保持容器3は側部開口部6を有する。前述した現像ユニット50にあるスクリュー59(図1参照)の軸の延長線上には開口部が形成されており、その開口部はパイプを通じて側部開口部6に繋がっている。すなわち、スクリュー59により搬送された現像液は、側部開口部6から現像液容器3に戻されるように構成されている。
【0029】
以下、本発明の実施形態の現像液容器について説明する。図3は、本発明の第一の実施形態の現像液容器3Bを示す斜視図である。なお、以下に説明する各実施形態の現像液容器は全て、図2に示す現像液容器3Aと置き換えられるものとする。現像液容器3Bは、保持容器103と攪拌装置104とを有する。図3は、現像液容器3Bの保持容器103の内部を観察できるように保持容器103の一部が取り除かれて示されている。保持容器103は、筒状の形状をしており、底部は閉塞され、上部は開口している。攪拌装置104は、駆動モータ119と、駆動モータ119により回転される回転軸113と、回転軸113が回転中心となるように回転軸113の一端に固定された攪拌部111と、回転軸113が回転中心となるように駆動モータ119付近に配置された「慣性体」としてのフライホイール115と、フライホイール115の回転中心上部に備えられたワンウェイクラッチ117と、フォトセンサ121とを有する。なお、攪拌部111は、図中矢印A方向に回転することにより現像液を攪拌する。
【0030】
また、回転軸113は、上部回転軸113aと下部回転軸113bとからなる。上部回転軸113aは駆動モータ119に直結されている。下部回転軸113bは、上部回転軸113aとは独立して回転可能であり、ワンウェイクラッチ117を介して上部回転軸113aと接続されている。また、フライホイール115は、下部回転軸113bに固定されている。ワンウェイクラッチ117は、図中矢印A方向の回転のみ、上部回転軸113aから下部回転軸113bへ伝達する。すなわち、駆動モータ119の回転駆動力により上部回転軸113aが図中矢印A方向に回転すると、ワンウェイクラッチ117を介して下部回転軸113bは上部回転軸113aと一体的に回転する。しかし、例えば、上部回転軸113aが逆方向に回転した場合には、下部回転軸113bには回転駆動力は伝達されず、上部回転軸113aのみ空回りする。つまり、駆動モータ119の停止トルクにより上部回転軸113aが無回転状態にあっても、下部回転軸113bは図中矢印A方向に自由に回転可能な状態となる。
【0031】
現像液の撹拌時には、駆動モータ119は回転軸113を矢印A方向に回転させる。その結果、現像液も矢印A方向に回転されて撹拌される。フライホイール115には、複数のスリット115aが設けられている。スリット115aは、フライホイール115の半径方向に沿って延びており、フライホイール115の回転方向に等間隔となるように設けられている。スリット115aは、フライホイール115の表面から裏面まで貫通するように形成された孔である。フォトセンサ121はコの字型であり、一端(端部121a)がフライホイール115の表面付近、他端(端部121b)がフライホイール115の裏面付近に位置するように配置されている。端部121aのフライホイール側にはLED等の光源が設置されており、端部121bのフライホイール側には受光素子が設置されている。フライホイール115が回転しているとき、スリット115aがフォトセンサ121を通過する間は、フォトセンサ121の受光素子はLEDからの光を受光することができる。
【0032】
次に、現像液の粘度の測定方法について説明する。駆動モータ119を所定時間駆動し駆動モータ119がオフされた後(すなわち、駆動モータ119の回転が停止した後)も、攪拌部111と回転軸113bとフライホイール115と(以後、慣性回転部と称する)は、慣性力により回転し続ける。その後、現像液の抵抗力によって慣性回転部は停止する。フライホイール115は、慣性回転部に回転慣性力を与える部材を広く含むものとする。またフライホイール115の質量は、フライホイール115以外の慣性回転部の質量の約3倍以上に設定されることが好ましい。このとき慣性回転部を停止させる力として駆動モータ119の抵抗力が影響しないように、フライホイール115と駆動モータ119との間には、ワンウェイクラッチ117が設けられている。ワンウェイクラッチ117は、駆動モータ119の回転の停止後に、駆動モータ119の停止トルクが、慣性回転部の円滑な回転を妨げることを防ぐ。
【0033】
例えば、安価なステッピングモータが駆動モータ119として使用される場合、ステッピングモータによっては停止トルク(静止状態を保持しようとする力)が非常に強いため、慣性回転部と駆動モータ119とが結合されていると、その停止トルクによる影響で慣性回転部がすぐに停止する。しかし、ワンウェイクラッチ117を設置することにより、駆動モータ119の停止トルクの伝達を排除できるので、安価なステッピングモータも含めた多種類のモータの中から駆動モータ119を選択可能となる。
【0034】
図4は、駆動モータ119がオフされてから慣性回転部が停止するまでの時間と、現像液の粘度との関係を概略的に示すグラフである。横軸は慣性回転部が停止するまでの時間を示し、縦軸は現像液の粘度を示す。グラフに示すように、慣性回転部が停止するまでの時間と粘度とには、停止時間が長くなるほど現像液の粘度が低いことを示す一次関数にほぼ近似できる相関性がある。よって、予め慣性回転部が停止するまでの時間と、現像液の粘度との関係をデータとして採取しておくことにより、慣性回転部が停止するまでの時間を測定することによって現像液の粘度を検出できる。また、現像液の粘度と現像液の温度とには、相関性があり、一般的に現像液の温度が高くなるほど粘度が低くなる傾向を示す。例えば、図4中a、b、cはそれぞれ、現像液がA℃、B℃、C℃(A<B<C)である場合の停止時間と粘度の特性を示している。よって、前記測定値と現像液容器内部に現像液に接するように設置された温度計の温度とを測定することにより、より正確に現像液の粘度を測定することができる。
【0035】
図5は、駆動モータ119がオフされる前後のフォトセンサの動作を示すタイミングチャートである。この図では、フォトセンサのオンは受光素子が光を受光している時、オフは受光素子が光を受光していない時を示すが、システムの構成によりフォトセンサのオンは受光素子が光を受光していない時、オフは受光素子が光を受光している時としてもよい。駆動モータ119がオンされているとき(すなわち、駆動モータ119が回転軸113に対して回転駆動力を供給しているとき)には、慣性回転部は等速で回転するので、フォトセンサはスリット115aの幾何的配置に従った周期でオン/オフされる。t1は、駆動モータ119のオフ後に、最初にフォトセンサを通過するスリット115aがフォトセンサを通過するのに要した時間を示す。t2、t3、tnは、それぞれ、2、3、n番目のスリット115aの通過時間を示す。tsは予め定められた定数であり、フォトセンサがオンされてから時間ts経過してもフォトセンサがオフに切り替わらない場合、フライホイール115を停止したものと見なす。つまり、フライホイール115が所定の回転速度以下になった場合、停止したものとみなされる。そして駆動モータ119のオフから、フォトセンサのオンの切り替えから時間tsが経過した時点までの時間が、慣性回転部の回転の停止にかかる時間tcとして検出される。
【0036】
同様に、T1は、駆動モータ119のオフ後に、フォトセンサが最初にオフになってから、次にオンになるまでに要した時間を示す(最初のスリット115aからその次のスリット115aまでの間隔に対応した時間)。T2、T3、Tnは、それぞれ、2、3、n番目のスリット115a間隔の通過時間を示す。Tsは予め定められた定数であり、フォトセンサがオフされてから時間Ts経過してもフォトセンサがオンに切り替わらない場合、フライホイール115を停止したものと見なす。そして駆動モータ119のオフから、フォトセンサのオフの切り替えから時間tsが経過した時点までの時間が、慣性回転部の回転の停止にかかる時間Tcとして検出されても良い。なお、tcやTcを検出するための制御回路や粘度を算出するための演算回路等は、フォトセンサ121中に備えられていてもよいし、現像液容器3B外の湿式プリンタ100の内部に備えられていてもよい。
【0037】
図6は、本発明の第二の実施形態の現像液容器3Cを示す斜視図である。なお、図3に示す現像液容器3Bに含まれる部材と同一の部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。現像液容器3Cは、保持容器103と攪拌装置204とを有する。攪拌装置204は、駆動モータ119と、回転軸113(回転軸113a及び113b)と、攪拌部111と、回転軸113が回転中心となるように駆動モータ119付近に配置されたフライホイール215と、ワンウェイクラッチ117と、反射センサ221とを有する。なお、攪拌部111は、図中矢印A方向に回転することにより現像液を攪拌する。
【0038】
フライホイール215は、円盤状の形状を有し、その円周端部には等間隔にマーキング215aが設けられている。マーキング215aは例えば、比較的淡い色を有するフライホイール215の周面を黒く塗りつぶすように形成されている。すなわち、フライホイール215の周面は、マーキング215aの存在する位置は相対的に光の反射率が低く、マーキング215aの存在しない位置は相対的に光の反射率が高くなる。反射センサ221は、フライホイール215の周面近傍に配置されている。また、反射センサ221は、光を照射する機能と、反射光を受光する機能とを有する。反射センサ221は、受光するとオフ、反射光を受光しないとオンされるものとする。フライホイール215が回転しマーキング215aが反射センサ221を通過すると、反射光は受光されず反射センサ221はオンされる。マーキング215aが反射センサ221を通過していない時は、反射センサ221はオフされる。
【0039】
駆動モータがオフされてから、フライホイール215が停止するまでの時間(所定の回転速度となるまでの時間)は、図5を用いて説明した方法と同様の方法で算出される。
【0040】
次に、駆動モータがオフされた後に、駆動モータに発生する逆起電力を用いて、現像液の粘度を測定する方法について説明する。図7は、本発明の第三の実施形態の現像液容器3Dを示す斜視図である。図6同様、図3に示す現像液容器3Bに含まれる部材と同一の部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
現像液容器3Dは、保持容器103と攪拌装置304とを有する。攪拌装置304は、駆動モータ319と、駆動モータ319により回転され且つ駆動モータ319を貫くように配置される回転軸313と、回転軸313が回転中心となるように回転軸313の一端に固定された攪拌部111と、回転軸313が回転中心となるように回転軸313の他端(駆動モータ319よりも上部)に固定されたフライホイール315とを有する。
【0042】
駆動モータ319がオフされ現像液の撹拌が停止された後も、攪拌部311と回転軸313とフライホイール315と(以後、慣性回転部と称する)は、慣性力により回転し続ける。慣性回転部は、現像液の抵抗力と駆動モータ319の停止トルクに逆らってわずかの間回転した後、停止する。この間、慣性回転部の回転力により、駆動モータ319には逆起電力が生じる。
【0043】
図8は、駆動モータ319のオフ後の経過時間と駆動モータ319に発生する逆起電力との関係を示すグラフである。横軸は、駆動モータ319がオフされてからの経過時間を示し、縦軸は、駆動モータに発生する逆起電力を示す。本実施形態では、逆起電力の電圧がVcとなる状態を慣性回転部が停止した状態とみなす。そして、電圧Vcとなるまでの経過時間tcを検出する。tcと現像液の粘度との関係を予め求めておくことにより、駆動モータがオフされたのち、慣性回転部が停止したとみなされるまでの時間tcを検出することにより、現像液の粘度を検出することができる。
【0044】
なお、現像液の粘度と、現像液のトナーの濃度とには、ほぼ線形的な比例関係があるため、現像液の粘度を検出することにより、現像液のトナーの濃度を検出することが可能となる。よって、現像液予備容器からの現像液と、キャリア液予備容器からのキャリア液とを現像液容器に、適量補充することにより現像液のトナーの濃度を一定に調節でき、印刷される画像の品質を一定に保つことが可能となる。
【0045】
また、本発明に係る現像液容器によれば、フライホイールの材質や形状(イナーシャ)を変更することにより、様々な粘度測定範囲を容易・安価に設定することができる。また、現像液中に粘度センサや光学式センサを配置する必要がないため、現像液の接触による影響を懸念することなく様々な材質のセンサを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】湿式プリンタの構成を示す側断面図である。
【図2】図1の背面方向から湿式プリンタを観察した側断面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態の現像液容器を示す斜視図である。
【図4】慣性回転部が停止するまでの時間と、現像液の粘度との関係を概略的に示すグラフである。
【図5】駆動モータがオフされる前後のフォトセンサの動作を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の第二の実施形態の現像液容器を示す斜視図である。
【図7】本発明の第三の実施形態の現像液容器を示す斜視図である。
【図8】駆動モータがオフされた後の経過時間と駆動モータに発生する逆起電力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
3A,3B,3C,3D 現像液容器
103,203,303,保持容器
4,104,204,304 攪拌装置
5 現像液予備容器
50 現像ユニット
70 転写ユニット
80 定着ユニット
90 搬送ユニット
100 湿式プリンタ
111 攪拌部
113,313 回転軸
115,215,315 フライホイール
115a スリット
117 ワンウェイクラッチ
119,319 駆動モータ
121 フォトセンサ
215a マーキング
221 反射センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像液を保持する保持容器と、
回転することによって前記現像液を攪拌する攪拌手段と、
前記攪拌手段へ回転駆動力を供給する駆動手段と、
前記駆動手段による回転駆動力の供給を停止してから、前記攪拌手段の回転が停止するまでの時間を計測する時間計測手段と、を有し、
前記時間計測手段により計測された時間から現像液の粘度を決定すること、を特徴とする現像液容器。
【請求項2】
前記駆動手段は、
前記攪拌手段へ回転駆動力を伝達する回転軸と、
前記回転軸を回転させる駆動モータと、
前記回転軸を回転中心とし、前記攪拌手段と一体的に回転するよう前記回転軸に備えられた慣性体と、を有し、
前記慣性体を備えたことにより、前記駆動手段による回転駆動力の供給の停止後であっても、前記攪拌手段が現像液からの抵抗に反して、前記慣性体が備えられていない場合と比較して長時間回転可能であることを特徴とする請求項1に記載の現像液容器。
【請求項3】
前記慣性体は、前記慣性体を除く現像液からの抵抗に反して回転する部材の質量の約3倍以上の質量を有することを特徴とする請求項2に記載の現像液容器。
【請求項4】
前記時間計測手段は、前記駆動手段による回転駆動力の供給を停止してから、前記慣性体が所定の回転速度となるまでの時間を計測することにより、前記攪拌手段の回転が停止したことを検知することを特徴とする請求項2または3に記載の現像液容器。
【請求項5】
前記慣性体は、円盤状であり、円周方向に沿って光検出位置と非光検出位置とを交互に配置し、光検出手段により前記光検出位置と前記非光検出位置とを検出することにより、前記慣性体の回転周期が測定されることを特徴とする請求項4に記載の現像液容器。
【請求項6】
前記光検出位置が前記慣性体を貫通するように形成された孔であり、前記非光検出位置が前記慣性体の表面であることを特徴とする請求項5に記載の現像液容器。
【請求項7】
前記光検出手段が、前記慣性体の表面及び裏面の近傍であり且つ前記光検出位置及び前記非光検出位置の通過する位置に備えられた、一組の発光素子と受光素子であることを特徴とする請求項6に記載の現像液容器。
【請求項8】
前記光検出位置が前記慣性体上の光を反射させる位置であり、前記非光検出位置が前記慣性体上の光を反射しない位置であることを特徴とする請求項5に記載の現像液容器。
【請求項9】
前記光検出位置及び前記非光検出位置が、前記慣性体の周面に位置することを特徴とする請求項8に記載の現像液容器。
【請求項10】
前記光検出手段が、前記光検出位置及び前記非光検出位置の通過する位置の近傍に備えられた、発光素子と前記光検出位置により反射した該発光素子が発光した光を受光する受光素子とを有することを特徴とする請求項8または9に記載の現像液容器。
【請求項11】
前記駆動手段は、さらに、前記攪拌手段および前記慣性体へ、前記攪拌手段が回転する回転方向にのみ回転駆動力を伝達させその反対の回転方向には回転駆動力を伝達させないよう機能するワンウェイクラッチを備えることを特徴とする請求項2から10のいずれかに記載の現像液容器。
【請求項12】
前記時間計測手段は、前記駆動手段による回転駆動力の供給を停止してから、前記駆動モータに生じる逆起電力が所定の値になるまでの時間を計測することにより、前記攪拌手段の回転が停止するまでの時間を計測することを特徴とする請求項2または3に記載の現像液容器。
【請求項13】
前記現像液の温度を測定する温度計測手段を備え、
前記時間計測手段によって計測された時間と、前記温度計測手段によって計測された温度とに基づいて、現像液の粘度を検出すること、
を特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の現像液容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−313320(P2006−313320A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68974(P2006−68974)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】