説明

現像装置および画像形成装置

【課題】画像パターンに対応した現像パターンの成形時間が早く、表面状態が安定な現像パターンを有する、現像装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】ドラム基体101上に超音波硬化剤102xを塗布して、ドラム基体101上に超音波硬化剤を用いた現像パターン(版)を形成している。超音波硬化剤を用いた現像パターン(版)の形成に要する時間は、数秒程度であることから、現像パターンの形成に要する時間を早くすることができる。また、超音波硬化剤は空気による劣化が少ないことから、表面状態が安定な現像パターンを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像パターンに対応した現像パターンに液体付着性領域と液体非付着性領域とを形成する場合、現像パターンの材料に可逆媒体を利用して、画像パターンに対応した現像パターンを形成する方法が、下記の特許文献1から特許文献5に開示されている。
【0003】
特許文献1および特許文献2では、現像パターンの形成に光学反応を利用した可逆媒体が用いられている。具体的には、アゾベンゼンやアゾ色素等の材料を含有した層に、画像情報に応じて紫外線を選択的に照射して、シス−トランス光異性化反応を起こす方法を利用したり、ロイコ体を含有した層に画像情報に応じて紫外線を選択的に照射して、光イオン化反応を起こす方法を利用したりして、これらの材料の表面を親水性領域と疎水性領域とに変化させることで、現像パターンの形成を行なっている。
【0004】
また、特許文献3から特許文献5では、現像パターンの形成に化学反応を利用した可逆媒体が用いられている。具体的には、電界析出反応、電気吸着反応、または電気凝固反応を使って、支持体上に画像情報に応じて材料を付着形成させることによって現像パターンの形成を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−230232号公報
【特許文献2】特開平08―216368号公報
【特許文献3】特開平09―148715号公報
【特許文献4】米国特許第5,750,593号明細書
【特許文献5】米国特許第5,928,417号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1から特許文献5に開示された現像パターンの形成においては、光学反応および化学反応に約40分〜約60分程度の反応時間を要するため、現像パターンの形成に相当時間を要している。また、光学反応や化学反応を利用する材料は、現像パターンの表面状態が不安定になる傾向にあるため、現像パターンの成形の安定性に欠けるという課題がある。
【0007】
したがって、この発明の目的は、画像パターンに対応した現像パターンの成形時間が早く、表面状態が安定な現像パターンを有する、現像装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に基づいた現像装置においては、回転するドラム基体と、ドラム基体上に軟化状態の超音波硬化剤を塗布する超音波硬化剤塗布装置と、上記超音波硬化剤塗布装置の上記ドラム基体の回転方向の下流側に位置し、上記ドラム基体上に塗布された上記超音波硬化剤に超音波を照射して、上記超音波硬化剤を硬化状態にする超音波照射装置と、上記超音波照射装置の上記ドラム基体の回転方向の下流側に位置し、画像パターンに応じて上記ドラム基体上に塗布された上記超音波硬化剤を加熱して、上記画像パターンに応じて上記超音波硬化剤を軟化状態にする第1加熱装置と、上記第1加熱装置の上記ドラム基体の回転方向の下流側に位置し、上記超音波硬化剤の軟化部を回収する超音波硬化剤回収装置と、上記超音波硬化剤回収装置の上記ドラム基体の回転方向の下流側に位置し、上記ドラム基体上に液体インクを塗布するインク塗布装置とを備える。
【0009】
また、上記インク塗布装置は、上記ドラム基体上の、上記ドラム基体の表面が露出する上記ドラム基体表面と上記超音波硬化剤表面との相対的な液体接触角の違いに基づき、上記ドラム基体表面または上記超音波硬化剤表面に選択的に上記液体インクを付着させることで上記画像パターンを顕像化し、上記超音波硬化剤は、超音波の照射によって硬化状態となり、加熱によって軟化状態に戻る性質を有する機能性高分子ゲル剤である。
【0010】
他の形態では、上記超音波硬化剤塗布装置による、上記ドラム基体上への上記超音波硬化剤の塗布厚さは1μm〜10μmである。
【0011】
他の形態では、上記超音波硬化剤回収装置と上記インク塗布装置との間に位置し、上記ドラム基体に湿し水を塗布する湿し水塗布装置をさらに有し、上記湿し水塗布装置は、上記ドラム基体表面と上記超音波硬化剤表面との相対的な液体接触角の違いに基づき、上記ドラム基体表面または上記超音波硬化剤表面に選択的に上記湿し水を付着させ、上記インク塗布装置は、上記ドラム基体表面または上記超音波硬化剤表面の上記湿し水を付着していない部分に上記液体インクを付着させる。
【0012】
他の形態では、上記超音波硬化剤塗布装置による、上記ドラム基体上への上記超音波硬化剤の塗布厚さは5μm〜10μmであり、上記湿し水塗布装置は、上記ドラム基体表面に上記湿し水を付着させる。
【0013】
他の形態では、上記第2加熱装置の上記ドラム基体の回転方向の上流側に位置し、上記ドラム基体の上記湿し水を回収する湿し水回収装置を有する。
【0014】
他の形態では、上記インク塗布装置の上記ドラム基体の回転方向の下流側に位置し、ドラム基体上の硬化状態にある上記超音波硬化剤を加熱して、上記超音波硬化剤を軟化状態にする第2加熱装置をさらに備える。
【0015】
この発明に基づいた画像形成装置においては、上述の現像装置を有する。
【発明の効果】
【0016】
この発明に基づいた現像装置および画像形成装置によれば、画像パターンに対応した現像パターンの成形時間が早く、表面状態が安定な現像パターンを有する、現像装置および画像形成装置を提供することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態における画像形成装置の外観を示す外観図である。
【図2】実施の形態における画像形成装置に採用される現像装置を含む画像形成ユニットの構成を示す断面模式図である。
【図3】実施の形態における画像形成装置に採用される画像形成ユニットを用いた現像工程を示す第1模式断面図である。
【図4】実施の形態における画像形成装置に採用される画像形成ユニットを用いた現像工程を示す第2模式断面図である。
【図5】実施の形態における画像形成装置に採用される画像形成ユニットを用いた現像工程を示す第3模式断面図である。
【図6】実施の形態における画像形成装置に採用される画像形成ユニットを用いた現像工程を示す第4模式断面図である。
【図7】実施の形態における画像形成装置に採用される画像形成ユニットを用いた現像工程を示す第5模式断面図である。
【図8】実施の形態における画像形成装置に採用される画像形成ユニットを用いた現像工程を示す第6模式断面図である。
【図9】実施の形態における画像形成装置に採用される画像形成ユニットを用いた現像工程を示す第7模式断面図である。
【図10】実施の形態における画像形成装置に採用される画像形成ユニットを用いた現像工程を示す他の模式断面図である。
【図11】実施の形態における画像形成装置に採用される画像形成ユニットを用いた現像工程を示す他の模式断面図である。
【図12】実施の形態の画像形成装置に採用される現像装置を含む画像形成ユニットにおける、同一画像パターンを連続転写する場合の画像形成ユニットの構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に基づいた各実施の形態における現像装置および画像形成装置について、以下、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。また、各実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0019】
図1および図2を参照して、本実施の形態における画像形成装置1について説明する。なお、図1は、実施の形態における画像形成装置の外観を示す外観図、図2は実施の形態における画像形成装置に採用される現像装置10を含む画像形成ユニット100の構造を示す断面模式図である。
【0020】
(画像形成装置1)
画像形成装置1は、その上部側に、スキャナ53、フィーダ55が設けられている。フィーダ55は原稿をスキャナ53に送る。さらに、画像形成装置1の上面に操作部50が設けられている。
【0021】
画像形成装置1の下部側には、給紙部58が配置され、さらに画像形成装置1本体に付設するようにして大容量給紙部59が配置されている。画像形成装置1内部には、後述の画像形成ユニット100A(実施の形態2では画像形成ユニット100B)が設けられており、給紙部58または大容量給紙部59から搬送された記録媒体としての用紙に画像形成ユニット100Aによって画像が形成される。
【0022】
画像形成装置1本体に付設して後処理装置56が設置されており、画像形成がなされた用紙に所望の後処理(ステープル、パンチなど)を行えるようになっている。画像形成がなされ、必要に応じて後処理がなされた用紙はトレイ57に排出される。
【0023】
(画像形成ユニット100)
図2は、画像形成ユニット100の詳細を模式的に示した断面図である。画像形成ユニット100は、本実施の形態における現像装置10を含んでいる。以下、画像形成ユニット100の構成について説明する。また、図3から図12の現像工程を示す模式断面図を用いて超音波硬化剤の状態をあわせて説明する。
【0024】
画像形成ユニット100を構成する現像装置10は、ドラム基体101、超音波硬化剤塗布装置102、超音波照射装置103、第1加熱装置104、超音波硬化剤回収装置105、湿し水塗布装置110、インク塗布装置106、湿し水回収装置120、および第2加熱装置107を有する。
【0025】
また、上記現像装置10を有する画像形成ユニット100は、インク塗布装置106と第2加熱装置107との間の当接領域P1において、ドラム基体101に当接する円筒状のブランケットローラ108と、このブランケットローラ108に当接領域P2において当接する円筒状の圧胴109とをさらに備える。
【0026】
(ドラム基体101)
ドラム基体101は、回転する円筒状の形態を有する。ドラム基体101は直径が約φ200mmの円筒形状のアルミの表面を親水化処理したものを使用する。親水化処理は公知の種々方式が適用できるが、ここでは水溶媒中にプラチナ微粒子を分散させた溶液を、ディッピング法を用いて塗布した。水との接触角は5°以下、後述の超音波硬化剤(ゾル状態時)との接触角はおおよそ60°である。ドラム基体101は、周速度400mm/secで、図2において時計方向(R1方向)に回転している(図3参照)。
【0027】
(超音波硬化剤塗布装置102)
超音波硬化剤塗布装置102は、ドラム基体101上に軟化(ゾル)状態の超音波硬化剤102xを塗布する(図4参照)。超音波硬化剤塗布装置102は、直径約φ60mmの弾性ローラ102rとブレード102sとを有する。弾性ローラ102rは円筒状アルミの表面に厚さ5mmのウレタンゴムを撒きつけたものを用いた。硬度は30°〜40°(JIS規格に準拠)になるようにした。弾性ローラ102rは、ドラム基体101と従動回転している(反時計方向に500mm/sec)。
【0028】
弾性ローラ102r上の超音波硬化剤102xの塗布量は、ブレード102sによって制御している。ブレード102sはニッケル製の厚さ0.05mmの金属ブレードで、弾性ローラ102rの回転方向に対してトレール方向に当接させている。弾性ローラ102rとドラム基体101との当接圧力や、ブレード102sの当接圧力によって、ドラム基体101上の超音波硬化剤102xの塗布量を制御することができる。
【0029】
超音波硬化剤102xは、超音波を照射すると硬化(ゲル化)し、加熱すると軟化(ゾル化)して元に戻る材料を使用する。たとえば、刺激応答性の分子集合体である機能性高分子ゲル剤を用いる。より具体的には、超音波硬化剤102xとして、ベンタメチレン鎖を有するアンチ型2核バラジウム錯体の有機溶媒を用いる。溶媒にはトルエン、ブタノール、アセトン、酢酸エチルなどが使用できる。この金属錯体は溶液中で本来有するd−π共役による金属表面の安定化を犠牲にして、金属上で折れ曲がりを形成し分子内π−スタッキングで特異的に安定化する。
【0030】
この安定溶液に超音波を照射すると、金属本来の有するd−π安定化を回復して分子間π−スタッキングによる内部貫入して、連結型の分子集合を起こし硬化(ゲル化)する。ここでは溶媒に酢酸エチルを使用した。使用した溶剤の粘度は15m/秒、ぬれ性は34mN/mである。
【0031】
超音波硬化剤102xの塗布量は厚さにして1μm〜10μmが好ましい。1μm以下だと、超音波硬化剤102xをドラム基体101の全面に塗布しにくくなり、ドラム基体101の表面が露出する危険性がある。10μm以上だと、ドラム基体101上への現像パターン(版)の形成時に、表面の凹凸によって後述するブランケットローラ108への転写を阻害するようになる。
【0032】
また、湿し水110wをドラム基体101上のドラム基体表面101eに塗布し、液体インク106iをドラム基体101上の超音波硬化剤表面102eに塗布する場合は(図8参照)、超音波硬化剤102xの塗布量は厚さにして5μm〜10μmとするのが好ましい。10μm以下が好ましい理由は先述のとおりだが、5μm以上とすることで湿し水110wをドラム基体表面101eに安定して留めておく効果が利用できるため、安定した画像形成が可能となる。
【0033】
(超音波照射装置103)
超音波照射装置103は、超音波硬化剤塗布装置102のドラム基体101の回転方向R1の下流側に位置し、ドラム基体101上の超音波硬化剤102xの全面に超音波を照射して、超音波硬化剤102xを硬化(ゲル)状態102yにする(図5参照)。
【0034】
超音波は、0.45W/cm、40kHz程度である。超音波硬化剤102xの硬化時間は、数秒程度である。硬化時間に応じてドラム基体101を複数回回転させて超音波を照射し、超音波硬化剤102xを硬化させる。本実施の形態では、幅100mmの超音波照射で、ドラム基体101を3回転させて超音波硬化剤102xを硬化させた。
【0035】
(第1加熱装置104)
第1加熱装置104は、超音波照射装置103のドラム基体101の回転方向R1の下流側に位置し、画像パターンに対応してドラム基体101上に塗布された超音波硬化剤102xを所定の温度にまで部分加熱して、画像パターンに対応した部分のみの超音波硬化剤102xを軟化(ゾル)状態にする(図6参照)。
【0036】
第1加熱装置104は、平均抵抗800Ωの抵抗体を直線的に配置したヘッド(600dpi)で、ドラム基体101から約100μm〜約200μmの距離で近接配置して、硬化した超音波硬化剤102yを、約70℃以上に加熱させる。硬化した超音波硬化剤102yは加熱させられることによって、瞬時(100msec以下)に軟化(ゾル)する。
【0037】
(超音波硬化剤回収装置105)
超音波硬化剤回収装置105は、第1加熱装置104のドラム基体101の回転方向R1の下流側に位置する。超音波硬化剤回収装置105は、直径約φ60mmの発泡ウレタンゴムを表面に持つローラで、ドラム基体101に従動回転している(反時計方向に500mm/sec)。ドラム基体101上の超音波硬化剤102yのうち、第1加熱装置104で加熱した軟化(ゾル化)部102xは、超音波硬化剤回収装置105によって、ドラム基体101上から回収される(図7参照)。
【0038】
超音波硬化剤102yの軟化(ゾル化)部102xは、浸透率の違いに基づき、発泡ウレタンゴムで吸着浸透させ、ドラム基体101上から除去される。除去された超音波硬化剤102xは、超音波硬化剤回収装置105内に回収され(図示省略)、廃棄もしくは超音波硬化剤塗布装置102に送られ再利用する(図示省略)。
【0039】
(湿し水塗布装置110)
湿し水塗布装置110は、超音波硬化剤回収装置105のドラム基体101の回転方向R1の下流側に位置する。ドラム基体101上の超音波硬化剤102xが回収された部分には、湿し水塗布装置110によって湿し水110wが塗布される(図8参照)。
【0040】
図7を参照して、ドラム基体101上の超音波硬化剤表面102eは水に濡れにくい処理が施され、ドラム基体表面101eは親水処理が施されているため、湿し水110wは、ドラム基体表面101eと超音波硬化剤表面102eとの相対的な液体接触角の違いに基づき、選択的にドラム基体表面101eのみに付着する。湿し水塗布装置110は、公知のオフセット印刷機と同様なものが使用できる。
【0041】
(インク塗布装置106)
インク塗布装置106は、湿し水塗布装置110のドラム基体101の回転方向R1の下流側に位置し、ドラム基体101上に液体インク106iを塗布する(図9参照)。液体インク106iは、湿し水110wが塗布されているドラム基体表面101eには付着せず、超音波硬化剤表面102eのみに塗布される。
【0042】
インク塗布装置106は、同じく公知のオフセット印刷機と同様なものが使用できる。液体インク106iもまた同様に公知のオフセットインク(油性インク)が使用できる。
【0043】
なお、図10および図11に示すように、湿し水110wを用いない場合は、ドラム基体表面101eの表面をシリコーン系の樹脂などで撥油性にコートしておき、超音波硬化剤表面102eのみに液体インク106iを塗布したり(図10参照)、超音波硬化剤を撥油性にしておいて、ドラム基体表面101eにのみ液体インク106iを塗布させたりすることもできる(図11参照)。
【0044】
湿し水110wを用いない場合には、現像装置が簡略で環境特性に優れる。一方、湿し水110wを用いた場合には、確実な液体インク106iの塗布制御が可能となり、現像の安定性に優れる。
【0045】
ドラム基体101上に顕像化された画像パターン(インク像)は、公知のオフセット印刷機と同様に、当接領域P1でブランケットローラ108に転写される。さらに、ブランケットローラ108に転写された画像パターン(インク像)は、当接領域P2で、ブランケットローラ108と圧胴109との間に供給された記録媒体P(搬送方向F)に転写される。
【0046】
(第2加熱装置107)
第2加熱装置107は、インク塗布装置106のドラム基体101の回転方向の下流側に位置し、ドラム基体上の硬化(ゲル)状態にある超音波硬化剤102yを加熱して、超音波硬化剤102xを軟化(ゾル)状態にする。
【0047】
第2加熱装置107は、発熱体を表面に持ったローラや、内部にハロゲンランプ等の発熱体を持ったローラを使用することができる。ここでは内部に110wのハロゲンランプを持ったφ30のアルミローラを、ドラム基体101に微接触させて使用した。
【0048】
硬化(ゲル化)した超音波硬化剤102yは70℃で軟化(ゾル化)するが、加熱温度を120℃に設定し、湿し水110wを同時に蒸発させる場合には、後述の湿し水回収装置120を用いる必要はない。
【0049】
記録媒体Pへの転写後、ドラム基体101上の超音波硬化剤102yは、画像パターンを変更する時は、第2加熱装置107によって全面加熱され軟化(ゾル)状態にされ、再び超音波硬化剤塗布装置102によって、全面に超音波硬化剤102xが塗布され、以降先述と同様の工程を経てドラム基体101上に画像パターン(インク像)として他の顕像化された画像の形成が行なわれる。
【0050】
(湿し水回収装置120)
湿し水回収装置120は、第2加熱装置107のドラム基体101の回転方向の上流側に配設され、ドラム基体101の湿し水110wを回収する。湿し水回収装置120を用いない場合でも、第2加熱装置107によって湿し水110wを蒸発させることは可能である。
【0051】
湿し水回収装置120を用いる場合は、φ60mmの発泡ウレタンゴムを表面に持つローラで、ドラム基体101と従動回転させ、ドラム基体101上の湿し水110wを吸着浸透させる。
【0052】
湿し水回収装置120を第2加熱装置107の下流に配置すると、湿し水回収装置120が軟化(ゾル化)した超音波硬化剤102xも一緒に回収してしまうので好ましくなく、第2加熱装置107の上流側で、超音波硬化剤102yが硬化している状態で湿し水回収装置120を用いた湿し水110wの回収を実施するのが好ましい。
【0053】
(同一画像パターンを連続転写する場合)
上記においては、記録媒体Pへの転写後、ドラム基体101上の超音波硬化剤102yを、第2加熱装置107を用いて軟化(ゾル化)させて、現像パターン(版)を変更し、画像パターンを変更する場合について説明しているが、ドラム基体101上に形成された現像パターンを用いて、同一の画像パターンを連続転写することも可能である。この場合の現像装置10の最小の必要構成要素を図12に示す。動作させる必要のない装置については、理解を容易にするために図示を省略している。
【0054】
同一の画像パターンを連続転写する場合には、図12に示すように、画像形成ユニット100としては、ドラム基体101およびインク塗布装置106を用いる。湿し水塗布装置110および湿し水回収装置120は必要に応じて用いる。
【0055】
同一画像パターンを連続転写する場合には、ドラム基体101上に形成された超音波硬化剤の現像パターンの有無によって、公知のオフセット印刷機と同様に表面エネルギーの違いを使用した版として使用できるため、湿し水塗布装置110による湿し水の塗布を行ない、その後インク塗布装置106によるインクの塗布を行って画像を顕像化し、ブランケットローラ108に転写するという工程を繰り返すだけでよい。超音波硬化剤塗布装置102、超音波照射装置103、第1加熱装置104、超音波硬化剤回収装置105、および、第2加熱装置107は、動作させる必要はない。
【0056】
(作用・効果)
以上のようにして、本実施の形態における現像装置10によれば、ドラム基体101上に超音波硬化剤102xを塗布して、ドラム基体101上に超音波硬化剤を用いた現像パターン(版)を形成している。
【0057】
超音波硬化剤を用いた現像パターン(版)の形成に要する時間は、数秒程度であることから、現像パターンの形成に要する時間を早くすることができる。また、超音波硬化剤は空気による劣化が少ないことから、表面状態が安定な現像パターンを得ることができる。
【0058】
また、ドラム基体101上に形成された現像パターンは、容易に変更することができるため、電子写真やインクジェットのようなバリアブル印刷が可能となる。一方、ドラム基体101上に形成された現像パターンをそのままドラム基体101上に保持しておくこともできるため、液体インクの塗布のみを行って連続的に印刷動作をおこなうことで、既存のオフセット印刷機と同様に同一画像パターンの連続印刷を行なうことが可能となる。
【0059】
本実施の形態におけるドラム基体101上に形成された現像パターンは、表面性(ぬれ性)の違いで画像パターンの作製を可能としていることから、プリント動作を停めることなく現像パターンを変更できるため、平版印刷機と同じく高画質、高安定性を維持しながら、電子写真やインクジェットのようなバリアブル印刷が可能となる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 画像形成装置、10 現像装置、50 操作部、53 スキャナ、55 フィーダ、56 後処理装置、57 トレイ、58 給紙部、59 大容量給紙部、100 画像形成ユニット、101 ドラム基体、101e ドラム基体表面、102 超音波硬化剤塗布装置、102e 超音波硬化剤表面、102r 弾性ローラ、102s ブレード、102x 超音波硬化剤(ゾル)、102y 超音波硬化剤(ゲル)、103 超音波照射装置、104 第1加熱装置、105 超音波硬化剤回収装置、106 インク塗布装置、106i 液体インク、107 第2加熱装置、108 ブランケットローラ、109 圧胴、110 湿し水塗布装置、110w 湿し水、120 湿し水回収装置、P1,P2 当接領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するドラム基体と、
前記ドラム基体上に軟化状態の超音波硬化剤を塗布する超音波硬化剤塗布装置と、
前記超音波硬化剤塗布装置の前記ドラム基体の回転方向の下流側に位置し、前記ドラム基体上に塗布された前記超音波硬化剤に超音波を照射して、前記超音波硬化剤を硬化状態にする超音波照射装置と、
前記超音波照射装置の前記ドラム基体の回転方向の下流側に位置し、画像パターンに応じて前記ドラム基体上に塗布された前記超音波硬化剤を加熱して、前記画像パターンに応じて前記超音波硬化剤を軟化状態にする第1加熱装置と、
前記第1加熱装置の前記ドラム基体の回転方向の下流側に位置し、前記超音波硬化剤の軟化部を回収する超音波硬化剤回収装置と、
前記超音波硬化剤回収装置の前記ドラム基体の回転方向の下流側に位置し、前記ドラム基体上に液体インクを塗布するインク塗布装置とを備え、
前記インク塗布装置は、前記ドラム基体上の、前記ドラム基体の表面が露出する前記ドラム基体表面と前記超音波硬化剤表面との相対的な液体接触角の違いに基づき、前記ドラム基体表面または前記超音波硬化剤表面に選択的に前記液体インクを付着させることで前記画像パターンを顕像化し、
前記超音波硬化剤は、超音波の照射によって硬化状態となり、加熱によって軟化状態に戻る性質を有する機能性高分子ゲル剤である、現像装置。
【請求項2】
前記超音波硬化剤塗布装置による、前記ドラム基体上への前記超音波硬化剤の塗布厚さは1μm〜10μmである、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記超音波硬化剤回収装置と前記インク塗布装置との間に位置し、前記ドラム基体に湿し水を塗布する湿し水塗布装置をさらに有し、
前記湿し水塗布装置は、前記ドラム基体表面と前記超音波硬化剤表面との相対的な液体接触角の違いに基づき、前記ドラム基体表面または前記超音波硬化剤表面に選択的に前記湿し水を付着させ、
前記インク塗布装置は、前記ドラム基体表面または前記超音波硬化剤表面の前記湿し水を付着していない部分に前記液体インクを付着させる、請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
前記超音波硬化剤塗布装置による、前記ドラム基体上への前記超音波硬化剤の塗布厚さは5μm〜10μmであり、
前記湿し水塗布装置は、前記ドラム基体表面に前記湿し水を付着させる、請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記第2加熱装置の前記ドラム基体の回転方向の上流側に位置し、前記ドラム基体の前記湿し水を回収する湿し水回収装置を有する、請求項3または4に記載の現像装置。
【請求項6】
前記インク塗布装置の前記ドラム基体の回転方向の下流側に位置し、ドラム基体上の硬化状態にある前記超音波硬化剤を加熱して、前記超音波硬化剤を軟化状態にする第2加熱装置をさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載の現像装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の現像装置を有する、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−66429(P2012−66429A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211810(P2010−211810)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】