説明

現場機器制御装置

【課題】鉄道用のLED式信号機の信号灯の誤点灯を検知する手法として、定格電流値を基準として検知する手法が一般的であるが、信号機ごとに基準値を設ける必要があり、また、定格電流値のみの基準では誤点灯を検知できない場合もある。よって、定格電流値の依存せずに、信号灯の誤点灯を検知する手法が課題となる。
【解決手段】LED式信号機のLED素子の断線回路数が増加すると電流値が減少する割合が小さくなる特性を利用して、現場機器制御装置2は信号機30の各灯器31に対して、点灯・滅灯制御をした時、信号灯にかかる電圧と、信号灯に流れる電流を電圧センサ22および電流センサ21で周期的に計測し、計測した電圧値・電流値から制御部11に定格電流値以外の基準で誤点灯検知機能を設けて、信号灯の誤点灯を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用信号機を制御する装置に関し、特に、信号灯の誤点灯の検知手法に関する。
【背景技術】
【0002】
現場機器制御装置から信号機に対して灯器の点灯指示を出力したとき、信号灯は抵抗Rとし、信号灯に印加する電圧をV、信号灯に流れる電流をIとすると、I=V/Rで、現場機器制御装置は電流Iを計測することにより、信号灯が点灯したことを検知していた。
【0003】
そこで、点灯を指示した灯器が正常に点灯し、その灯器から流れる電流をI1、点灯を指示していない灯器が誤って点灯し、その灯器から流れる電流をI2とすると、現場機器制御装置で計測する電流I3はI=I1+I2となる。
【0004】
VとRの変動が無ければ、Iは変動しないとの考えから、現場機器制御装置で計測した電流I3は定格下限値の2倍を必ず超えることから、現場機器制御装置は計測した電流値が定格下限値の2倍を超えたことにより、点灯を指示していない灯器が誤って点灯したことを検知していた。
【0005】
現在の鉄道用信号機の灯器は電球式からLED(Light EmittingDiode:発光ダイオード)式に移行しており、LED式信号機でも、使用する灯器により定格電流値は異なる。
【0006】
特許文献1には、LEDユニットを流れる電流値を検出して、その電流値が一定値以下の時に開閉制御部に滅灯指令を出力してLEDの誘導点灯を防止するLED信号灯制御回路が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、電流センサから出力される信号機の消費電流と、電圧監視装置から出力される送出端電圧とを同期監視し、信号機側到達電圧(着電圧)を計算し、断線故障電流値(断線故障限界値)を割り出して信号灯のLEDの故障判定をLEDを発光源に用いた多灯形色灯信号機の故障検知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−179829号公報
【特許文献2】特開2000−222686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の技術では、電流値の定格上限値が下限値の2倍以内なら、点灯を指示していない灯器が誤って点灯したときの電流値は2×定格下限値を超え、かつ、定格上限値を超えることから、矛盾することなく誤点灯を検知することができる。
【0010】
しかし、電流値の定格上限値が下限値の2倍を超える灯器では、灯器が誤って点灯しても、電流値は2×定格下限値を超えるが、定格上限値を必ず超えることができないため、電流値が定格内であるにもかかわらず、誤点灯を検知するという矛盾が発生してしまい、点灯を指示した灯器から出力される電流値を定格上限値の1/2以上となるよう調整しなければならないという、信号機の電流値調整作業に制約が生じる。このため、定格電流値に依存せず、信号灯の誤点灯を検知する手法が課題となる。
【0011】
LED式信号機は灯器内のLED素子の回路が複数個あり、LED信号機の特性として、図1のように、LED素子の断芯回路数が増加すると電流値が減少する割合が小さくなる特性がある。これにより、電圧値が一定の場合には断芯回路数が増加すると、(電圧値)/電流値の増加する割合は図2のように小さくなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の現場機器制御装置は、上記特性を利用して、現場機器制御装置にネットワークI/F部、制御部、DO(Digital Output)制御部、電圧センサ、電流センサを設けて、現場機器制御装置は各灯器に対して、点灯・滅灯制御をした時、信号灯にかかる電圧と、信号灯に流れる電流を周期的に計測し、計測した電圧値・電流値から(電圧値)/電流値を制御部にて算出する。
【0013】
電圧値および電流値の計測を周期的に行うことで、算出した(電圧値)/電流値の値はその都度変化することから、制御部にて変動率を算出し、その変動率が基準値を満たさない場合に、点灯を指示していない信号灯が誤点灯したことを検知する。これにより、信号灯の誤点灯検知を定格電流値に依存しないで行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、信号灯が誤点灯したときの検知方法として、信号灯の定格電流値を基準とせずに検知することができ、定格の異なった信号機が混在しても、信号機ごとの基準値を設けずに、信号機の誤点灯検知が可能となる。さらに、信号機の電流値調整作業の制約を緩和することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1はLED信号機の電流特性を示す図である。
【図2】図2はLED信号機の電圧/電流特性を示す図である。
【図3】図3は本発明で実施した事例のシステム構成を示す図である。
【図4】図4は本発明で実施した事例の現場機器制御装置構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例】
【0017】
図3は本発明を実施した時のシステム構成の概略図を示す。1台の電子連動装置1に対して、複数の現場機器制御装置2を設け、ネットワークを介して接続する。
【0018】
現場機器制御装置2はネットワークI/F部10、制御部11、I/O部12を有する装置で、現場機器3の種類に関係なく、複数の現場機器3を制御することが可能である。
【0019】
図4は、図3の現場機器3が信号機30の場合における現場機器制御装置2のI/O部12の詳細を示すもので、I/O部12はDO制御部20と電流センサ21と電圧センサ22を有する。
【0020】
現場機器制御装置2の制御部11はネットワークI/F部10を介して電子連動装置から制御情報を入力し、受信した制御情報からI/O部12のDO制御部20に対して、点灯または滅灯の制御情報を出力する。
【0021】
DO制御部20は制御部11から入力した制御情報において、点灯制御が入力されたとき、外部に接続している信号機30の灯器31に対して、信号を出力する。
【0022】
電流センサ21は外部に接続している信号機30からの出力電流を計測し、計測された電流値を制御部11に出力する。また、電圧センサ22は外部に接続している信号機30の信号灯電源32の電圧を計測し、計測された電圧値を制御部11に出力する。
【0023】
制御部11は電流センサ21および電圧センサ22から電流値および電圧値を入力し、それぞれが制御範囲外であれば、制御結果を電流値異常または電圧値異常として、ネットワークI/F部10を介して、電子連動装置1に出力する。
【0024】
制御部11は電流値および電圧値がそれぞれ制御範囲内のとき、(電圧値)/電流値を計算する。なお、(電圧値)/電流値をインピーダンス値(Z値)とする。
【0025】
電圧センサ22および電流センサ21では電圧値および電流値の計測を周期的に行うこととし、その都度インピーダンス値を制御部11にて算出する。算出したインピーダンス値はその都度変化することから、制御部11は前回算出したインピーダンス値をZ1、今回算出したインピーダンス値をZ2として、変動率を(Z2/Z1)×100にて算出する。
【0026】
制御部11は算出した変動率が基準値を満たさない時に、点灯を指示していない灯器が誤って誤点灯したことを検知し、その結果をネットワークI/F部10を介して、電子連動装置1に出力する。
【0027】
制御部11は電流値および電圧値がそれぞれ制御範囲内で、かつ変動率が基準値を満たしているときは、制御結果を正常として、ネットワークI/F部10を介して、電子連動装置1に出力する。
【0028】
以上により、信号灯が誤点灯したときの検知方法として、信号灯の定格電流値を基準とせずに検知することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 電子連動装置
2 現場機器制御装置
3 信号機等の現場機器
10 ネットワークI/F部
11 制御部
12 I/O部
20 DO制御部
21 電圧センサ
22 電流センサ
30 信号機
31 信号灯器
32 信号灯電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場機器を制御する現場機器制御装置において、ネットワークインタフェイス部と、制御部と、入出力部と、を備えており、前記現場機器の信号機を制御する入出力部は、デジタル出力制御部と電流センサと電圧センサとを有し、前記制御部は、前記信号灯の誤点灯検知機能に関して、LED信号機のLED素子の特性を利用した検知機能を有することを特徴とする現場機器制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現場機器制御装置において、
前記LED信号機のLED素子の特性は、LED素子の断芯回路数が増加すると、(電圧値の2乗/電流値)の値の増加する割合が小さくなる特性であることを特徴とする現場機器制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の現場機器制御装置において、
前記電流センサは外部に接続している前記信号機からの出力電流を計測して計測された電流値を前記制御部に出力し、また、前記電圧センサは外部に接続している前記信号機の信号灯電源の電圧を計測し、計測された電圧値を前記制御部に出力し、
前記制御部は、前記電流値及び電圧値がそれぞれ制御範囲内のときに、(電圧値の2乗/電流値)の値を計算することを特徴とする現場機器制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の現場機器制御装置において、
前記制御部は、計算した(電圧値の2乗/電流値)の値の変動率を計算し、算出した変動率が基準値を満たさない時に、点灯を指示していない灯器が誤点灯したことを検知し、その結果を前記ネットワークインタフェイス部を介して連動装置に出力することを特徴とする現場機器制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−126384(P2011−126384A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285507(P2009−285507)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】