説明

現金自動取引システム

【課題】
利用者の同伴者による認証及び取引を行うことにより不正取引を未然に防ぐ。
【解決手段】
利用者に固有の情報及び取引される情報、及び利用者に対する同伴者に関する情報をホストコンピュータのファイル部に登録しておき、ATMの制御部は、ホストコンピュータから得た利用者に関する情報から同伴者の情報の有無を調べ、かつ操作部に利用者が同伴者による取引の要否を確認するための案内画面を表示し、利用者によって、同伴者による取引が必要であることが選択された場合、同伴者より操作部から入力された情報と、同伴者情報の所定の情報を照合することで、同伴者が正当な本人であることを認証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動取引システムに係り、特に郵便局や銀行等の金融機関で利用される現金の入出金等の取引を行う現金自動取引装置(以下、ATMという)における利用者の認証に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ATMを利用して現金の取引を行う場合、利用者によって入力された暗証番号を照合することにより正当な本人を認証する方法が用いられている。また、最近では、暗証番号の偽造を防止するために、より精巧な方法として利用者の生体情報を用いて認証することが実用化されている。
【0003】
生体認証に関しては、例えば、特許文献1(特開2006−172375公報)には、本人の生体認証が失敗した時、他の方法により本人認証を得ることを可能にする手段が提案されている。すなわち、本人の生体認証に失敗した時、その同伴者である関係人の顔を撮影して、その顔画像から本人および関係人の登録特徴量と撮影特徴量を比較してその一致度を算出し、本人の認証に失敗した時でも、その関係人の認証に成功したときには、本人の認証に成功したと判定する。
【0004】
【特許文献1】特開2006−172375公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術は、本人の認証が失敗したにも拘わらず関係人の介在により、認証を成立させる。そのため、例えば、同伴者の介在が必要な高齢者や身障者が第三者により不正な取引を強要された場合、または第三者に言葉巧みに利用者が騙されて不正な取引に誘導された場合などに対しては防止することができない。
【0006】
本発明の目的は、現金自動取引装置において不正取引への強要および誘導等があっても同伴者の認証を行うことにより不正取引を防止する現金自動取引システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る現金取引システムは、好ましくは、現金取引システムにおいて、取引のための案内の画面を表示し、かつ利用者による取引のための入力を行う操作部と、利用者が所持する、取引のために使用されるカードの情報を取得するカード機構部と、取引される現金を取り扱う現金取扱機構部と、取引きのための処理を行う第1制御部とを有する現金自動取引装置と、現金自動取引装置に接続され、利用者に固有の情報及び取引される情報、及び利用者に対する同伴者に関する情報を登録するファイル部と、利用者又は同伴者に対する取引処理を行う第2制御部を有するホストコンピュータと、を有し、
第1制御部は、ホストコンピュータから得た利用者に関する情報から同伴者の情報の有無を調べ、かつ操作部に利用者が同伴者による取引の要否を確認するための案内画面を表示し、
利用者によって、同伴者による取引が必要であることが選択された場合、第1制御部は、同伴者により操作部から入力された情報と、同伴者の情報に含まれる所定の情報を照合することで、同伴者が正当な本人であることを認証することを特徴とする現金自動取引システムとして構成される。
【0008】
また、現金自動取引システムにおいて、上記同伴者の認証は、利用者によって、同伴者による取引が必要であることが選択された場合、第1制御部は、同伴者により操作部から取得された生体情報と、同伴者が所持するカードに含まれるの情報を照合することで、同伴者が正当な本人であることを認証することを特徴とする現金自動取引システムとして構成される。
【0009】
更にまた、他の例として、前記第1制御部による同伴者の認証に代わって、ホストコンピュータの前記第2制御部が同伴者から取得された情報と、ファイル部に登録された同伴者の情報に含まれる所定の情報を照合することで同伴者の認証を行うことを特徴とする現金自動取引システムとして構成される。
また、一例では、同伴者による取引が必要であることが選択された場合であって、利用者に同伴者が同行していない旨の選択が操作部より入力された場合、前記第1制御部は、現金自動取引装置において係員の介在による案内画面を操作部に表示する現金自動取引システムとして構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、利用者に対する不正取引への強要および誘導等があっても正当な同伴者であることを認証した上で取引を許容することで、不正取引を未然に防ぐことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
図1は現金自動取引システムの構成を示す。
ATM1はネットワークを介してホストコンピュータ(以下、単にホストという)9に接続される。ホスト9はサーバ或いは上位装置と呼ばれることがある。
【0012】
ATM1は、利用者の要求する現金の入出金等の取引を自動的に実行する。それを実現するために、制御部2、操作部(入力・表示部)3、カード機構部・明細票機構部4、通帳機構部5、紙幣入出金機構部6、硬貨入出金機構部7、及び回線接続部8を有して構成される。
【0013】
操作部3は、取引に関する操作案内(ガイダンス)やアナウンス情報などを画面に表示する表示部、及び利用者の操作や指で押下された入力を受け付ける入力部により構成される。例えば、この操作部3はタッチパネル等により構成された入力表示部が一般的に使用され、表示画面には様々な情報を表示する。タッチパネルの場合、表示画面に表示された入力項目の押下を検知する機構を有している。
また、この例では、利用者の生体情報例えば指静脈を用いて認証を行うために、入力部には指静脈を読み取る読取部を備えている。
【0014】
カード機構部・明細書機構部4は、ATM1の取引時に使用されるキャッシュカードの挿入、排出動作、更にはキャッシュカードに付加された磁気ストライプ情報を読取り又は書込みする機能(例えば磁気ヘッド、磁気読書部)、およびカードエンボス部分のイメージの読取る機能を有する。更に、明細票機構部として、取引した内容を印字部で明細票に印字し、その明細票をATMの装置外へ排出する機構を有している。ここで、カード機構部と明細票機構部とはカード及び明細票を、利用者に対して同時に排出して渡せるように、同じユニット上に設けるのが望ましい。
なお、生体認証を行う場合、キャッシュカードとしてはICカードが好ましく、そのICメモリには利用者の生体情報が記憶されている。また、カード機構部はICカードのICメモリ内に記憶された情報(利用者の個人情報及び生体情報)を読み取る機能を有している。
【0015】
通帳機構部5は、現金の取引時に利用される通帳の挿入、排出の機構、その通帳に取引情報を印字する印字部、及び通帳の磁気ストライプ情報を読み取る磁気ヘッドを有する。
紙幣入出金機構部6及び硬貨入出金機構部7は、紙幣や硬貨(以下、総称して媒体という)の入出金機構、これら媒体の真偽を判定する鑑別器、媒体を搬送したり、収納するための機構を有している。
回線接続部8は、ホスト9の回線接続部11との間で、取引情報の送受信を行う。制御部2は、上記各部を制御し、取引に関するATM1内での処理を実行する。そのために、取引処理や認証を実行するプログラムや取引処理データを記憶する記憶部、及びプログラムを実行するCPUを有している。
【0016】
次に、ホスト9の構成について説明する。
ホスト9は、ATM1の回線接続部8と接続し、ATM1とのデータの送信又は受信を行う回線接続部11と、利用者の個人情報及びその取引情報を口座情報に関連付けて記憶する顧客情報ファイル13を保存するファイル部(記憶部)14と、ファイル部14に含まれるファイルを制御する顧客情報ファイル制御部12と、これら各部を制御するホストコンピュータ制御部10(以下、ホスト制御部)とを有する。顧客情報ファイル制御部12によって顧客情報ファイル13の情報の更新や照会などの様々な処理が実行される。
【0017】
なお、ファイル部14は、利用者の個人情報及びその取引情報を口座情報に関連付けて記憶する顧客情報ファイル13以外に他の種々のファイルが格納されることがある。また、ファイル部14は、異なる情報毎に複数のファイルに分けて管理することが望ましいが、この1つのファイル部に一つのファイルとして管理するようにしてもよい。また、制御部10内に顧客情報ファイル制御部12などの各制御部の機能を持たせ、制御部10によって各ファイルの処理等を実行してもよい。
【0018】
図4に顧客情報ファイル13の構成例を示す。
図示のように、顧客情報ファイル13は、顧客基本情報Aを基に、口座情報B、同伴者情報Cがツリー構造に形成される。
顧客基本情報Aには、利用者が口座を開設したときの店番1000、利用者に固有に付与された識別可能な顧客番号1001、住所1002、生年月日1003、及び同伴者の情報である同伴情報1004が含まれる。
【0019】
更に、利用者の口座情報Bには、利用者の保有している口座番号1005、預金残高1006および暗証番号1007が含まれる。
また、口座情報Bには同伴者情報Cが関連付けられる場合がある。同伴者が必要な場合とは、例えば当顧客が障害者の場合などである。同伴者情報Cには同伴者の口座情報1008および同伴者の暗証番号1009が含まれる。
【0020】
次に、利用者である同伴者の認証処理動作について説明する。
図3を参照して、ATMの取引における同伴者の認証処理を説明する。以下の例は、利用者が、取引として現金の引出しを選択する例である。
まず、ATM1の制御部2は、記憶部に記憶された案内画面の読み出して、操作部3の表示部に「いらっしゃい・取引選択」の初期画面を表示しておく(S100)。初期画面には、可能な取引項目として例えば、引出、預入、振込、残高照会、通帳印字、等が表示されている(この画面を取引選択画面という)。利用者はこれらの取引項目から「引出」を選択すると、その取引が開始する(S101)。
【0021】
利用者は、取引選択画面より引出を選択した後、カード機構部・明細票印字部4にキャッシュカードを挿入する(S102)。カード機構部はキャッシュカードの磁気ストライプ情報を読み取り、またICカードの場合にはICメモリ内に記憶された情報(利用者の個人情報及び生体情報)を読み取る。
次に、利用者は操作部3の画面に表示された案内に従って、入力部より暗証番号、金額を入力する(S103)。更に、入力部より生体情報を入力する。制御部2は入力された生体情報とICカードから取得した生体情報を照合することで利用者の生体認証を行う(S104)。次に、利用者は、操作部3より引出金額を入力すると(S105)、制御部2は入力された金額を表示部に表示して、利用者に対して引出金額の確認を行う(S106)。
【0022】
利用者による引出金額の確認が終わると、制御部2は、利用者が入力した情報を基に引出確認のためのデータを編集してホスト9へ送信し、ホスト9との間で引出のための中央交信を行う(S107)。なお、この中央交信に関しては、図3を参照して後述する。
【0023】
中央交信によりATM1はホスト9から確認の回答を受信する。その回答には、顧客の口座情報Bが含まれるが、場合によっては同伴者情報C(図4)が含まれることがある。制御部2は回答に同伴者情報Cが含まれるか否かで、当利用者に対する同伴者による操作が必要か否かの判定を行う(S108)。
【0024】
同伴者の要否判定で同伴者を不要と判定した場合、制御部2は取引を続行させ、引出金額の現金(例えば紙幣)を出金し(S109)、キャッシュカード及び明細票を排出する(S110)。そして、利用者が排出された現金を受け取ったことを検知すると、一連の引出取引を終了する(S111)。
【0025】
一方、制御部2が上記の同伴者要否判定で同伴者を必要と判定した場合(S108)、制御部2は操作部3に同伴者確認のための画面(図5(A))を表示し、利用者に同伴者が同行しているか否かの選択を促す(S112)。利用者は、同伴者の同行の有無に従い、表示画面の「はい」51、又は「いいえ」52を選択する。
【0026】
利用者により「同伴者あり」と選択された場合、制御部2は当利用者本人のキャッシュカードを排出して返却する(S113)。そして、同伴者のキャッシュカードを挿入させる(S114)。また、同伴者の暗証番号を入力させ、また、同伴者の生体情報を読み取る(S115)。そして、入力された暗証番号及び生体情報を、チェック、照合して同伴者の認証を行う。この場合、同伴者の暗証番号のチェックは、入力された暗証番号とホスト9からの回答に含まれる同伴者情報Cに含まれる暗所番号1009を比較することで行う。また、生体認証は、操作部3で読み取られた生体情報と同伴者の所持するICカードに記憶された生体情報を照合することで行う(S116)。
同伴者の認証の結果、同伴者の認証が成功した場合、制御部2は引出取引を続行し、ステップS109〜111の処理動作を行う。
【0027】
上記の同伴者の同行確認において、当利用者により「同伴者なし」が選択された場合、制御部2は、操作部3に係員介在のための画面(図5(B))を表示する。これにより、利用者は銀行の係員の介在を待つ。係員がATM1に来て、利用者本人と確認した場合(S117)、制御部2は取引を続行し、ステップS109〜111の処理動作を行う。
なお、この例ではATM1側で同伴者の口座番号および暗証番号のチェックを行ったが、このチェックはホスト9で行うことも可能である。
【0028】
次に、図3を参照して、ホストにおける処理動作について説明する。
制御部2は、引出確認のための中央交信を行う時(S107)、引出確認要求をホスト9に送信する(S200)。ホスト9はATM1から送信された引出要求を受付け、顧客情報ファイル制御部12により引出確認要求にセットされた、またはそれに含まれるキャッシュカードの口座番号内の店番、顧客番号をキーとし、顧客情報ファイル13の顧客基本情報Aから店番1000、顧客番号1001の検索およびATM1から受信した利用者の口座番号をキーとし、預金残高1006、暗証番号1007により取引可否を判定する(S202)。
【0029】
次に、ホスト9は、既に検索済みの顧客情報ファイル13の顧客基本情報から同伴要否1004により「同伴者要否」を判定する(S203)。ホスト9は、「取引可否」「同伴者要否」により引出確認回答を編集して、ATM1へ送信する(S204)。ATM1は、ホスト9から送信された引出確認回答を受付けて、図2に示す処理を実行する(S205)。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施例における現金自動取引システムの構成を示す図。
【図2】ATMにおける取引処理を示すフロー図。
【図3】ホストコンピュータにおける取引処理を示すフロー図。
【図4】顧客情報ファイル13の構成例を示す図。
【図5】同行者確認画面、及び係員介在画面の一例を示す図。
【符号の説明】
【0031】
1:ATM、2:制御部、3:操作部、4:カード機構部・明細票機構部、5:通帳機構部、6:紙幣入出金機構部、7:硬貨入出金機構部、8:回線接続部、9:ホストコンピュータ、10:ホストコンピュータ制御部、11:回線接続部、12:顧客情報ファイル制御部、13:顧客情報ファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現金取引システムにおいて、取引のための案内の画面を表示し、かつ利用者による取引のための入力を行う操作部と、利用者が所持する、取引のために使用されるカードの情報を取得するカード機構部と、取引される現金を取り扱う現金取扱機構部と、取引きのための処理を行う第1制御部とを有する現金自動取引装置と、
該現金自動取引装置に接続され、該利用者に固有の情報及び取引される情報、及び該利用者に対する同伴者に関する情報を登録するファイル部と、利用者又は同伴者に対する取引処理を行う第2制御部を有するホストコンピュータと、を有し、
該第1制御部は、ホストコンピュータから得た該利用者に関する情報から同伴者の情報の有無を調べ、かつ該操作部に該利用者が同伴者による取引の要否を確認するための案内画面を表示し、
該利用者によって、同伴者による取引が必要であることが選択された場合、該第1制御部は、該同伴者により該操作部から入力された情報と、該同伴者の情報に含まれる所定の情報を照合することで、該同伴者が正当な本人であることを認証することを特徴とする現金自動取引システム。
【請求項2】
現金取引システムにおいて、取引のための案内の画面を表示し、かつ利用者による取引のための入力を行う操作部と、利用者が所持する、取引のために使用されるカードの情報を取得するカード機構部と、取引される現金を取り扱う現金取扱機構部と、取引きのための処理を行う第1制御部とを有する現金自動取引装置と、
該現金自動取引装置に接続され、該利用者に固有の情報及び取引される情報、及び該利用者に対する同伴者に関する情報を登録するファイル部と、利用者又は同伴者に対する取引処理を行う第2制御部を有するホストコンピュータと、を有し、
該第1制御部は、ホストコンピュータから得た該利用者に関する情報から同伴者の情報の有無を調べ、かつ該操作部に該利用者が同伴者による取引の要否を確認するための案内画面を表示し、
該利用者によって、同伴者による取引が必要であることが選択された場合、該第1制御部は、該同伴者により該操作部から取得された生体情報と、該同伴者が所持する該カードに含まれるの情報を照合することで、該同伴者が正当な本人であることを認証することを特徴とする現金自動取引システム。
【請求項3】
前記第1制御部による同伴者の認証に代わって、該ホストコンピュータの前記第2制御部が該同伴者から取得された情報と、該ファイル部に登録された該同伴者の情報に含まれる所定の情報を照合することで同伴者の認証を行うことを特徴とする請求項1又は2の現金自動取引システム。
【請求項4】
同伴者による取引が必要であることが選択された場合であって、該利用者に同伴者が同行していない旨の選択が操作部より入力された場合、前記第1制御部は、該現金自動取引装置において係員の介在による案内画面を該操作部に表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの現金自動取引システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−198089(P2008−198089A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34975(P2007−34975)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】