説明

球状シリカ粒子懸濁溶液とその製造方法、および球状シリカ粒子

【目的】球状シリカ粒子の従来の製造手法の中で、大粒の粒子と小粒の粒子の比率、これらの粒子の平均粒子径を特定範囲内で制御することを可能とする独立2峰性の粒径分布を有する球状シリカ粒子懸濁溶液とその製造方法、および球状シリカ粒子を提供する。
【構成】独立2峰性の粒径分布)を有する球状シリカ粒子の懸濁溶液であって、該懸濁溶液の調製が35℃以上溶媒の沸点以下で行われ、大粒粒子の平均粒子径(Dl)が900〜1800nm、小粒粒子の平均粒子径(Ds)が50〜400nmであり、DlとDsの比(Dl/Ds)が5〜20であり、小粒粒子の占める体積割合が20〜40%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状シリカ粒子懸濁溶液、とくに独立2峰性の粒径分布を有する球状シリカ粒子懸濁溶液とその製造方法、および球状シリカ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
球状シリカ粒子は、液晶ディスプレーのスペーサー材料用、高流動性シリカスラリー用、それを用いた鋳込み成型による焼結石英部材用など、多くの用途があり、用途に応じて、単分散状の粒子、互いに粒子分布が重なり合わない2種類の粒径分布、すなわち独立2峰性分布を有する粒子、2種類より多い粒径分布を有する多分散状の粒子が製造されている。
【0003】
例えば、とくに液晶ディスプレーのスペーサー材料として好適なシリカ粒子を得る方法として、互いに重なり合わない2種類の粒径分布(独立2峰性の粒径分布)をもつ球状シリカ粒子を分級して平均粒径の小さい方の分布の粒子を取り除き、得られた単分散状の粒子をシード粒子を成長させ、目的とする粒径の変動率が小さく(標準偏差が小さく)きわめて高い単分散性をそなえたシリカ粒子を製造する方法が提案されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
用途が液晶ディスプレーのスペーサー材料用の場合には、前記にように、高い単分散性が求められるが、用途によっては、独立2峰性あるいは2種類より多い粒径分布を有する多分散性に粒配したものが適している用途もある。例えば、高流動性シリカスラリーや、それを用いた鋳込み成型による焼結石英部材の作製においては、多分散性に粒配したシリカの方がスラリーの流動性が向上し、それにより得られる焼結石英部材の焼結性、緻密性を向上させることができることが見出されている。
【0005】
独立2峰性など多分散性の粒径分布を有する球状シリカ粒子を用いる場合でも、用途によっては、大粒の粒子と小粒の粒子の比率やこれらの粒子の平均粒子径が特定範囲内に調整されていることが重要となる場合があるが、これらの値を制御する手法を目的として提案されている従来技術は見出せない。
【0006】
大粒の粒子と小粒の粒子の比率やこれらの粒子の平均粒子径を特定範囲内に制御するために、粒径分布の異なる球状シリカ粒子を準備して、これらを混合する手法もあるが、特定の粒子径の球状シリカ粒子を入手することが容易ではないだけでなく、粒径比が離れてい2種類のシリカ粒子を凝集させずに均一に混合することもきわめて困難である。
【特許文献1】特許第2512835号公報
【特許文献2】特許第2529062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、独立2峰性の粒径分布を有する球状シリカ粒子の製造において、大粒の粒子と小粒の粒子の比率やこれらの粒子の平均粒子径を特定範囲内に調整し得る独立2峰性の粒径分布を有する球状シリカ粒子の製造方法を得るためになされたものであり、その目的は、球状シリカ粒子の従来の製造手法の中で、大粒の粒子と小粒の粒子の比率、これらの粒子の平均粒子径を特定範囲内で制御することを可能とする独立2峰性の粒径分布を有する球状シリカ粒子懸濁溶液とその製造方法、および球状シリカ粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための請求項1による球状シリカ粒子懸濁溶液は、互いに重なり合わない2種類の粒径分布(独立2峰性の粒径分布)を有する球状シリカ粒子の懸濁溶液であって、該懸濁溶液の調製が35℃以上溶媒の沸点以下で行われ、大粒粒子の平均粒子径(Dl)が900〜1800nm、小粒粒子の平均粒子径(Ds)が50〜400nmであり、DlとDsの比(Dl/Ds)が5〜20であり、小粒粒子の占める体積割合が20〜40%であることを特徴とする。
【0009】
請求項2による請求項1記載の球状シリカ粒子懸濁溶液の製造方法は、(1)ケイ素アルコキシドに対して、アルコール系溶媒、加水分解触媒としてアルカリ性成分を加えて攪拌し、ケイ素アルコキシドを加水分解して平均粒子径が1000nm以下の核となる核球状シリカ粒子の懸濁液を調製する工程と、(2)該核球状シリカ粒子の懸濁液に対して、ケイ素アルコキシドを加え、さらにアルコール系溶媒、加水分解触媒としてアルカリ性成分を加えて攪拌し、ケイ素アルコキシドを加水分解して大粒化した核球状シリカ粒子の懸濁液を調製する工程と、(3)該大粒化した核球状シリカ核粒子の懸濁液に対して、ケイ素アルコキシド、アルコール系溶媒、および加水分解触媒としてアルカリ性成分を加え、35℃以上前記溶媒の沸点温度未満の温度として攪拌し、ケイ素アルコキシドを加水分解して前記大粒化した核球状シリカ粒子をさらに大粒化するとともに、平均粒子径が400nm以下の小粒の球状シリカ粒子を生成させ、独立2峰性の粒径分布を有する球状シリカ粒子の懸濁溶液を調製する工程からなることを特徴とする。
【0010】
請求項3による球状シリカ粒子懸濁溶液の製造方法は、請求項2において、前記(1)の工程は、ケイ素アルコキシドの加水分解を25℃以上前記溶媒の沸点温度未満の温度で行って平均粒子径が400nm以下の核となる核球状シリカ粒子の懸濁液を調製し、前記(3)の工程でさらに大粒化した核球状シリカ粒子を平均粒子径900nm以上、生成する小粒の球状シリカ粒子を平均粒子径200nm以下とすることを特徴とする。
【0011】
請求項4による球状シリカ粒子は、請求項1記載の球状シリカ粒子懸濁溶液から得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、球状シリカ粒子の従来の製造手法の中で、大粒の粒子と小粒の粒子の比率、これらの粒子の平均粒子径を特定範囲内で制御することを可能とする独立2峰性の粒径分布を有する球状シリカ粒子懸濁溶液とその製造方法、および球状シリカ粒子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の最終目的とする独立2峰性の粒径分布を有する球状シリカ粒子は、その懸濁溶液から得られるものであり、球状シリカ粒子懸濁溶液の製造方法は以下の(1)〜(3)の工程からなる。(1)の工程は、ケイ素アルコキシドに対して、アルコール系溶媒、加水分解触媒としてアルカリ性成分を加えて攪拌し、ケイ素アルコキシドを加水分解して平均粒子径が1000nm以下の核となる核球状シリカ粒子の懸濁液を調製する工程である。生成するシリカ粒子の平均粒子径を1000nm以下とすることにより粒径が揃ったシリカ粒子が得られる。
【0014】
例えば、1重量部のケイ素アルコキシドに対して、5重量部のアルコールと2重量部の3重量%アルカリ性成分を加え、この溶液を攪拌してケイ素アルコキシドを加水分解して、核となる核球状シリカ粒子の懸濁液を調製する。この場合の調製温度と生成される球状シリカの粒子径(平均粒子径)との関係は図1に示すとおりであり、調製温度を変えることにより球状シリカの粒子径を調整し得る。(1)の工程においては、ケイ素アルコキシドの加水分解を25℃以上前記アルコール系溶媒の沸点温度未満の温度で行って平均粒子径が400nm以下の核となる核球状シリカ粒子の懸濁液を調製するのが好ましい。調整温度が25℃未満では反応速度が遅くなり、溶媒が揮発しないよう溶媒の沸点温度未満の温度とする。さらに好ましい調製温度は35℃以上溶媒の沸点未満の温度である。
【0015】
(2)の工程は、(1)の工程で得られた核球状シリカ粒子の懸濁液に対して、ケイ素アルコキシドを加え、さらにアルコール系溶媒、加水分解触媒としてアルカリ性成分を加えて攪拌し、ケイ素アルコキシドを加水分解して大粒化した核球状シリカ粒子の懸濁液を調製する工程
である。
【0016】
例えば、(1)の工程で得られた核球状シリカ粒子の懸濁液に対して、(1)の工程で用いたものの5倍以上、好ましくは10倍程度の量のケイ素アルコキシドを加え、アルコールおよび3%アンモニア水溶液を加えて攪拌し、ケイ素アルコキシドを加水分解して核球状シリカ粒子を大粒化させる。
【0017】
(3)の工程は、前記大粒化した核球状シリカ核粒子の懸濁液に対して、ケイ素アルコキシド、アルコール系溶媒、および加水分解触媒としてアルカリ性成分を加え、35℃以上溶媒の沸点以下の温度として攪拌し、ケイ素アルコキシドを加水分解して前記大粒化した核球状シリカ粒子をさらに大粒化するとともに、平均粒子径が400nm以下の小粒の球状シリカ粒子を生成させ、独立2峰性の粒径分布を有する球状シリカ粒子の懸濁溶液を調製する工程である。
【0018】
例えば、前記大粒化した核球状シリカ核粒子の懸濁液に対して、ケイ素アルコキシド、アルコールおよび3%アンモニア水溶液を加え、35℃以上溶媒の沸点温度未満の温度として攪拌し、ケイ素アルコキシドを加水分解する。加水分解により、前記大粒化した核球状シリカ粒子をさらに大粒化するとともに、平均粒子径が400nm以下、好ましくは200nm以下の小粒の球状シリカ粒子を生成させ、独立2峰性の粒径分布を有する球状シリカ粒子の懸濁溶液が調製される。
【0019】
(3)の工程においては、前記大粒化した核球状シリカ粒子を少なくとも平均粒子径900nmまで大粒化することが必要であり、核球状シリカ粒子が平均粒子径900nmまで大粒化すると小粒の球状シリカ粒子が生成してくる。核球状シリカ粒子の平均粒子径が900nm未満では小粒の球状シリカ粒子の生成はみられない。
【0020】
(3)の工程においても、生成する小粒の球状シリカ粒子の平均粒子径は、(1)の工程と同様に、調製温度により制御することができる。従って、得ようとする球状シリカ粒子の平均粒子径と比率に応じて、まず、(1)の工程において、調製温度を特定して生成する大粒の球状シリカ粒子の平均粒子径を特定し、この大粒の球状シリカ粒子を(2)および(3)の工程で、加水分解条件の調整により特定の大きさまで成長させ、同時に、(3)の工程において、調製温度を特定して生成する小粒の球状シリカ粒子の平均粒子径を特定することによって、得ようとする大粒粒子と小粒粒子の平均粒径および比率を持った独立2峰性の粒子径分布の球状シリカ粒子の製造を達成することができる。
【0021】
なお、(1)〜(3)の工程において使用するケイ素アルコキシド、溶媒としてのアルコール、加水分解触媒としてのアルカリ成分は公知であるが、調製原料のケイ素アルコキシドとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類のほか、メチルシリケート、エチルシリケートが好適に使用される。入手性や安全性の観点からはテトラエトキシシランの利用がとくに好ましい。
【0022】
溶媒に用いるアルコール類としては、水との混合が任意比率で行えるものがよく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノールなどの低級アルコールや、アミド系溶剤、アルキルスルホキシド、多価アルコール、アミノアルコール、セロソルブ類または多官能アクリレートなどが適用できる。
【0023】
前記アミド系溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N.N−ジメチルアセトアミド、N.N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。アルキルスルホキシドとしては、例えばジメチルスルホキシドが挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、グリセンリン、エチレングリコール、ジエチレングリコールが挙げられる。アミノアルコールとしては、例えば、エタノールアミン、2−ジエチルアミノエタノールが挙げられる。セロソルブ類としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。また、多官能アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートが挙げられる。
【0024】
上記の球状シリカ粒子懸濁液の製造方法によって、互いに重なり合わない2種類の粒径分布、すなわち独立2峰性の粒径分布を有する球状シリカ粒子の懸濁溶液であって、球状シリカ粒子のうち大粒粒子の平均粒子径(Dl)が900〜1800nm、小粒粒子の平均粒子径(Ds)が50〜400nmであり、DlとDsの比(Dl/Ds)が5〜20であり、小粒粒子の占める体積割合が20〜40%の球状シリカ粒子懸濁溶液が得られ、上記の数値範囲内において、Dl、Ds、DlとDsの比(Dl/Ds)、小粒粒子の占める体積割合を制御することができる。
【0025】
球状シリカ粒子のうち大粒粒子の平均粒子径(Dl)が900nm未満では、前記のように、(3)の工程において、小粒粒子の生成が行われず、1800nmを超えると、攪拌が困難となり、癒着し易くなる。さらに好ましい大粒粒子の平均粒子径(Dl)の制御範囲は900〜1600nmである。小粒粒子の平均粒子径(Ds)は50〜400nm、好ましくは50〜200nmであり、本発明においては50nm未満の小粒粒子の製造は難しい。DlとDsの比(Dl/Ds)が5〜20の範囲を外れると、充填密度に優れた球状シリカ粒子を得ることが難しくなる。小粒粒子の占める体積割合が20〜40%を外れた場合にも充填密度に優れた球状シリカ粒子を得ることが難しくなる。
【0026】
上記の球状シリカ粒子懸濁溶液を、溶媒のアルコールを蒸発させ、アンモニアなどアルカリ性成分を除いてシリカ粒子スラリーとし、これを乾燥することにより本発明の独立2峰性の粒径分布をそなえた球状シリカ粒子が得られる。得られる球状シリカ粒子においても、大粒粒子の平均粒子径(Dl)が900〜1800nm、小粒粒子の平均粒子径(Ds)が50〜400nm、好ましくは50〜200nmであり、DlとDsの比(Dl/Ds)が5〜20であり、小粒粒子の占める体積割合が20〜40%のものとなる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明し、その効果を実証する。これらの実施例は本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
実施例1
以下に示す(1)〜(3)の工程により 球状シリカ粒子懸濁溶液を調製した。
(1)の工程:テトラエトキシシラン35gと、エタノール175gを混合した後、3%アンモニア水溶液70gを加え、25℃の温度として1時間攪拌し、核となる球状シリカ核粒子の懸濁溶液を得た。
【0029】
(2)の工程:得られた球状シリカ核粒子の懸濁溶液に対して、(1)の工程で用いた量の10倍量のテトラエトキシシランを加え、さらにエタノールおよび3%アンモニア水溶液を加え、25℃の温度として1時間攪拌し、大粒化した球状シリカ核粒子の懸濁溶液を得た。
【0030】
(3)の工程:(2)の工程で得られた大粒化した球状シリカ核粒子の懸濁液からその全量の1/10を分取して、テトラエトキシシラン35gとエタノール175g、3%アンモニア水溶液70gを同時に加え、40℃の温度として1時間攪拌し、大粒化した球状シリカ核粒子をさらに大粒化するとともに、小粒の球状シリカ粒子を生成させた。
【0031】
実施例2
(1)および(2)の工程は実施例1と同様にして行い、(3)の工程を調製温度50℃に変えて行った。
【0032】
実施例3
(1)および(2)の工程は実施例1と同様にして行い、(3)の工程を調製温度80℃に変えて行った。
【0033】
比較例1
(1)〜(3)の工程における反応温度を0℃とした以外は、実施例1と同様の工程で行った。
【0034】
比較例2
(1)および(2)の工程は実施例1と同様にして行い、(3)の工程を調製温度25℃に変えて行った。
【0035】
実施例1〜比較例2で得られた球状シリカ粒子の大粒粒子の平均粒子径、その比(Dl/Ds)、全粒子に占める小粒粒子の体積割合を、以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
平均粒子径(Dl)および小粒粒子の平均粒子径(Ds)の測定:SEM写真より任意粒子を選び出し、その平均粒子径を求めた。
比(Dl/Ds):上記のようにして求めた平均粒子径の比を算出した。
全粒子に占める小粒粒子の体積割合:レーザー回折式の粒度分布測定装置による分析値より求めた。
なお、表1において、充填率とは、シリカ粒子の真密度を100%とした場合におけるシリカ粒子の充填密度である。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1においては、(1)の工程により核球状シリカ粒子の懸濁液が生成した。生成物は白色で均一な懸濁液であり、SEM写真から求めた核球状シリカ粒子の平均粒子径は374nmであった。固形分収量は14.7gであった。核球状シリカ粒子のSEM写真を図2に示す。
【0038】
ついで、(2)の工程により大粒化した核球状シリカ粒子の懸濁液が調製された。生成物は白色で均一な懸濁液であり、SEM写真から求めた大粒化した核球状シリカ粒子の平均粒子径は923nmであった。固形分収量は153.8gであった。大粒化した核球状シリカ粒子のSEM写真を図3に示す。
【0039】
続いて、(3)の工程により、独立2峰性の粒子径を有する球状シリカ粒子の懸濁溶液を得た。生成物は白色で均一な懸濁溶液であった。SEM写真から求めた平均粒子径は大粒子の平均径(Dl)は1479nm、小粒子の平均径(Ds)は283nmであり、Dl/Dsは5.23、レーザー回折式粒度分布測定の値から求めた小粒の体積割合は35%であった。
【0040】
さらに、生成した懸濁溶液の溶媒を蒸発させて得たシリカ粒子スラリーをさらに乾燥させた後のシリカ粒子固形物の充填密度は、シリカ粒子の真比重を100%とすると69%となり高充填になることが確認された。
【0041】
実施例2および実施例3で得られた懸濁溶液の溶媒を蒸発させて得たシリカ粒子スラリーをさらに乾燥させた後のシリカ粒子固形物の充填密度も、表1にみられるように、シリカ粒子の真比重を100%とした場合、それぞれ74%および71%となり高充填になることが確認された。実施例3で得られた球状シリカ粒子のSEM写真を図4に示す。
【0042】
これに対して、(1)〜(3)の工程における反応温度を0℃とした比較例1においては、原料のテトラエトキシシランの油状分離が生じ、独立二峰性の粒子径分布を有する球状シリカ粒子が生成されなかった。また、(3)の工程を調製温度25℃とした比較例3においては、反応中に溶媒の揮発が激しく、原料であるテトラエトキシシランが分離した。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ケイ素アルコキシドを加水分解して球状シリカ粒子の懸濁液を調製する場合の調製温度と生成される球状シリカの粒子径(平均粒子径)との関係を示すグラフである。
【図2】実施例1の(1)の工程で生成された核球状シリカ粒子のSEM写真である。
【図3】実施例1の(2)の工程で大粒化した核球状シリカ粒子のSEM写真である。
【図4】実施例3で得られた球状シリカ粒子のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重なり合わない2種類の粒径分布(独立2峰性の粒径分布、以下同じ)を有する球状シリカ粒子の懸濁溶液であって、該懸濁溶液の調製が35℃以上溶媒の沸点以下で行われ、大粒粒子の平均粒子径(Dl)が900〜1800nm、小粒粒子の平均粒子径(Ds)が50〜400nmであり、DlとDsの比(Dl/Ds)が5〜20であり、小粒粒子の占める体積割合が20〜40%であることを特徴とする球状シリカ粒子懸濁溶液。
【請求項2】
下記(1)〜(3)の工程からなることを特徴とする請求項1記載の球状シリカ粒子懸濁溶液の製造方法。
(1)ケイ素アルコキシドに対して、アルコール系溶媒、加水分解触媒としてアルカリ性成分を加えて攪拌し、ケイ素アルコキシドを加水分解して平均粒子径が1000nm以下の核となる核球状シリカ粒子の懸濁液を調製する工程。
(2)該核球状シリカ粒子の懸濁液に対して、ケイ素アルコキシドを加え、さらにアルコール系溶媒、加水分解触媒としてアルカリ性成分を加えて攪拌し、ケイ素アルコキシドを加水分解して大粒化した核球状シリカ粒子の懸濁液を調製する工程。
(3)該大粒化した核球状シリカ核粒子の懸濁液に対して、ケイ素アルコキシド、アルコール系溶媒、および加水分解触媒としてアルカリ性成分を加え、35℃以上前記溶媒の沸点温度未満の温度として攪拌し、ケイ素アルコキシドを加水分解して前記大粒化した核球状シリカ粒子をさらに大粒化するとともに、平均粒子径が400nm以下の小粒の球状シリカ粒子を生成させ、独立2峰性の粒径分布を有する球状シリカ粒子の懸濁溶液を調製する工程。
【請求項3】
前記(1)の工程は、ケイ素アルコキシドの加水分解を25℃以上前記溶媒の沸点温度未満の温度で行って平均粒子径が400nm以下の核となる核球状シリカ粒子の懸濁液を調製し、前記(3)の工程でさらに大粒化した核球状シリカ粒子を平均粒子径900nm以上、生成する小粒の球状シリカ粒子を平均粒子径200nm以下とすることを特徴とする請求項2記載の球状シリカ粒子懸濁溶液の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の球状シリカ粒子懸濁溶液から得られる球状シリカ粒子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−261902(P2007−261902A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91098(P2006−91098)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000173522)財団法人ファインセラミックスセンター (147)
【出願人】(000219576)東海カーボン株式会社 (155)
【Fターム(参考)】